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特許7509862鉄鉱石精鉱過程で生じる砂状尾鉱から粉末ケイ酸ナトリウムを得る方法
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  • 特許-鉄鉱石精鉱過程で生じる砂状尾鉱から粉末ケイ酸ナトリウムを得る方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】鉄鉱石精鉱過程で生じる砂状尾鉱から粉末ケイ酸ナトリウムを得る方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/32 20060101AFI20240625BHJP
   C04B 28/26 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
C01B33/32 ZAB
C04B28/26
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022505358
(86)(22)【出願日】2020-07-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-28
(86)【国際出願番号】 BR2020050261
(87)【国際公開番号】W WO2021035318
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-11-14
(31)【優先権主張番号】BR1020190180803
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BR
(73)【特許権者】
【識別番号】510277338
【氏名又は名称】ヴァーレ、ソシエダージ、アノニマ
【氏名又は名称原語表記】VALE S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】ジョルダンナ、シャモン、ボジェット
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンド、ソアレス、ラメイラス
【審査官】宮脇 直也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102583417(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109012517(CN,A)
【文献】特表2018-530673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/32
C04B 28/26
B09B 1/00 - 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄鉱石精鉱過程で生成される砂状尾鉱から粉末ケイ酸ナトリウムを得る方法であって、下記の工程:
a)鉄鉱石精鉱過程で生成される砂状尾鉱中に存在する40μm未満の粒径を有する超微細画分を除去する工程、
b)前記超微細画分を含まない材料から過剰な湿度を除去して、前記材料の湿度を最大15質量%にする工程、
c)過剰な湿度を除去した後に得られる材料を乾燥させる工程、
d)前記乾燥された材料に、33~38mol/Lの濃度の水酸化ナトリウム過飽和溶液を溶液2質量部に対して前記尾鉱が1質量部となる比率で添加する工程、
e)前記尾鉱と前記水酸化ナトリウム溶液とが均質化するまで混合して混合物を得る工程、
f)前記混合物を400~500℃の温度で熱処理し、その後、得られる材料を冷却する工程、および
g)前記冷却された材料を最終生成物として保管し、湿気の吸収を防ぐ工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記工程a)で得られる超微細画分を含まない材料が20~65質量%の範囲の固体割合を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程a)における超微細画分の除去が、サイクロンシステム、濃縮、遠心分離、またはこれらの単位操作の組み合わせによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記工程b)における過剰な湿度の除去が、濾過または遠心分離によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記工程c)において行われる乾燥が、回転型乾燥機または流動床乾燥機で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記工程f)において冷却された後の最終生成物の温度が60~75℃の範囲であり、前記工程g)において保管中の最終生成物の温度が60~75℃である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱物製造、特に鉄鉱石の処理における砂状尾鉱から粉末ケイ酸ナトリウムを製造する方法に関する。本発明は、建設業および道路舗装において主に用いられるジオポリマーおよびアルカリ活性化材料の製造に用いられる原材料の製造に関する。この尾鉱を利用することにより、大型ダムにおける尾鉱の廃棄による環境への影響を低減し、商業的に利用可能な生成物を得ることにより尾鉱に付加価値を与えることができる。
【従来技術】
【0002】
ケイ酸ナトリウムは、SiO(二酸化ケイ素またはシリカ)とNaO(酸化ナトリウム)との組み合わせによって得られる、一般式NaO.xSiO(xは2.06~3.87)の無機化合物である。ケイ酸ナトリウムは水溶液および固体の両方の形態で見られ、様々な産業分野におけるいくつかの用途、製品および工業プロセスで広く用いられている。
【0003】
水ガラスとしても知られているケイ酸ナトリウムファミリーは、酸化ナトリウム(NaO)およびシリカ(SiO)を含む様々な化合物、または重量比、固形分、密度および粘度が異なるケイ酸ナトリウムの混合物を特徴とする。これらの材料としては、特に、オルトケイ酸ナトリウム(NaSiO)、メタケイ酸ナトリウム(NaSiO)、ポリケイ酸ナトリウム([NaSiO)、ピロケイ酸ナトリウム(NaSi)等の形態で見られる一連の化合物が挙げられる。このような化合物は、ガラス質、無色および透明な特徴を有し、水溶性であり、粉末または粘性溶液の形態で市販されている。可溶性のものもあり、ほとんど不溶性のものもあり、不溶性の形態のものは加圧水により加熱することで容易に溶解する。
【0004】
ケイ酸ナトリウムは、中性およびアルカリ性溶液中で安定である。酸性溶液中では、ケイ酸塩イオンと水素イオンとが反応してケイ酸を形成し、加熱されると、硬くてガラス質の材料であるシリカゲルを形成する。
【0005】
ケイ酸ナトリウムの主な用途は接着剤/結合剤であり、特に、紙、木材、金属板、ガラス、磁器、光学用途、絶縁材料、耐火セメント、耐酸性(acid-proof)および酸抵抗性(acid-resistant)のセメント、ブリケット(briquette)等のいくつかのタイプの製造分野において非常に重要である。可溶性ケイ酸塩は、フッ化ケイ素またはシリカと反応して、鋼と同様に収縮と熱膨張が少ない酸抵抗性セメントを製造することもできる。
【0006】
鉱業において、ケイ酸ナトリウムは、特に、粘土、砂、石英、蛍石、カオリンの粒子の分散能のために適用され、粉砕段階における補助成分として作用する。また、修飾試薬として機能し、抑制剤および分散試薬として用いられるため、浮遊選鉱過程でも広く用いられる。硫化物の浮遊選鉱における使用が重視される。その基本的な特性のために、鉱山の酸排水の修復におけるゼオライト合成剤としての適用の参照もある。
【0007】
建設業では、ケイ酸ナトリウムは、壁、床およびスラブの防水材料の製造に用いられる。また、高温に抵抗性を有するため、セメントの硬化を促進する添加剤として、また壁の仕切りや防火扉の製造にも用いられる。また、断熱材の製造にも用いられる。また、化粧品や洗剤の製造において適用される可能性がある。
【0008】
当技術分野の専門家によって広く知られているように、ケイ酸ナトリウムの製造に用いられる最も一般的な工業的方法は:
・1300℃で炭酸ナトリウム(NaCO)をシリカと共に溶解させる方法;
・1300℃で硫酸ナトリウム(NaSO)をシリカと共に溶解させる方法;
・強く加熱された砂と塩化ナトリウムとの混合物中の水蒸気による方法;
・高温高圧下、水酸化ナトリウム(NaOH)溶液中で、シリコン鉱物(砂、玉髄、オパール、珪藻土等)をオートクレーブ加熱する方法
である。
【0009】
炭酸ナトリウムとシリカ(砂)との反応によるケイ酸ナトリウムの製造は、高いオーブン温度を維持するための多大なエネルギーを消費するため、エネルギー集約的な方法である。
【0010】
ケイ酸ナトリウムを製造するための標準的な方法は、シリカ(SiO)と、炭酸ナトリウム(NaCO)、またはまれに硫酸ナトリウム(NaSO)と混合し、高温(1200~1500℃)のオーブンで高圧下で溶融することからなる。2番目の方法は、高温高圧下で、ケイ酸塩材料(砂、玉髄、オパール、珪藻土等)を水酸化ナトリウム(NaOH)溶液に溶解することを含み、この最後の方法は、ブラジルでより一般的である。
【0011】
ガラス体混合物は、蒸気および水を注入して、オートクレーブ内で高圧にさらされる。次いで、透明で、わずかに粘性で、無臭で、完全に水溶性の液体が形成される。強アルカリ性であるその溶液は、すべての使用および保管条件において安定である。溶液を乾燥させて、水和ケイ酸ナトリウム結晶が形成される。生成されたケイ酸塩の最終的な特性はSiO/NaOHの関係に依存し、上記の過程中にNaOHを添加することで変化し、反応:
NaCO+nSiO→NaO.nSiO+CO
によって要約される。
【0012】
ケイ酸ナトリウムは3つの成分を含む:主成分であるシリカ;酸化ナトリウムに代表されるアルカリ;および水和特性を付与する水。
【0013】
可溶性ケイ酸ナトリウムは、ケイ酸塩ポリマーである。重合度が高いほど、SiOの四面体により共有される酸素原子の割合が高くなり;したがって、「シリカモジュール」と呼ばれるSiO/NaO比が高くなり、1.6~3.75の間で変化する。4を超えるモジュールを有するケイ酸塩を生成できる場合でも、実際には溶解度は非常に低くなる。ケイ酸塩のSiO/NaO比は、一般に質量で表され、生成物の物理的および化学的特性とその機能的活性を決定する。この比率の変化により、ケイ酸ナトリウムの複数の用途が可能になる。SiO/NaO比が増大すると、粘度が増大し、溶液のpHが低下する。濃度の増大に伴い、溶液は固体になるまで粘度が増大する。このため、シリカモジュールが高い市販の溶液は、総固形分濃度が低くなる。
【0014】
両方の方法で同じ物理的および化学的仕様を有する製品が得られることを考慮して、溶融および熱水による両方の方法によるケイ酸ナトリウムの従来の製造フローチャートを図1に示す。
【0015】
第1の方法(a)によれば、炭酸塩および砂の溶融は、1,500℃の温度のオーブンで行われる。次いで、この溶融により得られる生成物(100%ケイ酸ナトリウム)は、オートクレーブに送られ、水が添加される。圧力下でケイ酸塩が溶解され、ケイ酸ナトリウム溶液となり、次いで濾過される。
【0016】
溶融による方法(a)で起こる化学反応は:
NaCO+xSiO→NaO.xSiO+CO
NaO.xSiO+nHO→NaO.xSiO.nH
である。
【0017】
水熱による方法(b)によれば、苛性ソーダと砂とが混合され、高圧および高温下で反応器に注がれ、そこで下記の反応が起こる:
2NaOH+xSiO+(n-1)HO->NaO.xSiO.nH
【0018】
炭酸ナトリウムを用いる方法では、通常、水酸化ナトリウムは、最終生成物中のNaO含有量のバランスをとるためにのみ添加される。コロイドの形で既存のシリカを除去するためにろ過が行われる。
【0019】
ケイ酸ナトリウムを製造するための様々な代替供給源の探索において、鉄鉱石抽出において、主に砂質の、非常に微細な砂に類似の固体成分から構成される異なる鉱石加工段階から生じる大量の尾鉱が生成されることに留意されたい。
【0020】
鉱石尾鉱の利点は、それらの化学的特性が通常の砂に非常に類似していることであり、それは砂(SiO)の代わりにそれらを使用する可能性を高める。
【0021】
精鉱された鉄鉱石材料に匹敵する量で生成されるこれらの砂質残留物は、ダムに貯蔵されるか、または採掘ピットを埋めるために用いられる。したがって、通常の砂との類似性と組み合わされた前記残留物の利用可能性は、それをいくつかの産業セグメント、特に建設産業向けの製品の製造における原料として提供する可能性がある。
【0022】
尾鉱のリサイクルに関する関心は、尾鉱に関連する負の環境影響の低減に向けられた研究の主題となっている。ブラジルでは、鉱業によって生成されるかなりの量の尾鉱に対する関心が際立っている。具体的には、鉄鉱石の加工により発生する廃棄物については、再利用と付加価値の重要性が高まっている。
【0023】
鉱石抽出中に生成される大量の尾鉱に直面して考えられる利益を考慮すると、前記尾鉱の使用の可能性は、環境へのプラスの影響を生み出し、したがって、ダムにおけるその貯蔵が抑制され、またはそのような施設の大きさおよび容量が大幅に低減される。
【0024】
ケイ酸塩材料の供給源としての新しい原料の観点から、ケイ酸ナトリウムを得るための他の方法が調査されてきた。技術水準は、以下の例のようにケイ酸ナトリウムの製造方法に関連する出版物を含む。
【0025】
2001年3月6日に出願された文献PI0101413-7は、Helio Jose da SilvaおよびPaolo Giuseppe Cominiによって創出された発明である「ケイ酸ナトリウムおよび/またはアルミン酸ナトリウムシリカを製造する方法」を提示している。低コストの原材料、すなわち加工廃棄物からケイ酸ナトリウムを製造する方法が開示されており、材料自体が反応性であるため、エネルギーを投入する必要がないことが開示されている。それは基本的に、鉄鋼および金属加工プロセス(溶鉱炉および鉄鋼加工)から生じるスラグと、水酸化ナトリウム(NaOH)、炭酸ナトリウム(NaCO)またはトロナ(NaCO.NaHCO)等のアルカリ性物質との浸出(leaching)により構成される。ケイ酸ナトリウムの形成反応が起こるように熱処理、すなわち熱冶金を含む本発明の方法で示されるものとは対照的に、この文献は、ケイ酸ナトリウムおよび/またはアルミン酸ナトリウムシリカを生成するための、エネルギーを投入する必要のない浸出反応を伴う水冶金プロセスについて記載されている。
【0026】
Ferreira, M.J.(2013)は、Universidade Federal de Santa Catarinaにおける卒業後プログラムの化学工学における「解膠剤として用いられる籾殻灰(籾殻灰)からのアルカリ浸出によるケイ酸ナトリウムの取得」と題した修士論文において、ケイ酸ナトリウムを得るために、籾殻燃焼プロセスから得られる灰を用いている。このプロセスには、水酸化ナトリウムを用いたアルカリ浸出によるシリカの抽出、ケイ酸ナトリウムおよび残留籾殻灰の生成が含まれている。抽出は、1.5Nおよび3.0Nの水酸化ナトリウム濃度で、80℃および90℃の温度で行われた。研究した各濃度について、1時間および2時間で反応を評価した。可溶性ケイ酸塩は、2.04~2.83のシリカモジュールを示した。このようにして得られたケイ酸塩について、密度、粘度およびシリカの割合を測定した。したがって、実験的に生成されたケイ酸ナトリウムが、0.40%のセラミック原料の解膠剤として、0.37%の市販のケイ酸塩と比較して試験された。このプロセスは、熱冶金プロセスの代わりに、ケイ酸ナトリウムを得るために湿式製錬(アルカリ浸出)を用いるため、本発明とは異なる。
【0027】
「キンバーライト尾鉱からケイ酸ナトリウムを製造するための方法」と題された、Council of Scientific and Industrial Researchに代わって2006年3月14日に出願された米国特許第7,335,342号は、ダイヤモンド採掘中の固形廃棄物として生成されたキンバーライト尾鉱からケイ酸ナトリウムを製造する方法を示している。この方法は、可溶性不純物を除去するための酸性手段によるキンバーライト尾鉱の反応と、それに続く開放系または閉鎖系でのアルカリ溶液によるキンバーライト尾鉱の消化とを含み、商業的に用いられるケイ酸ナトリウムを得る。
【0028】
この文献は、典型的な組成が:SiO 30~32% Al 2~5%;TiO 5~8%;CaO 8~10%;MgO 20~24%;Fe 5~11%であり;強熱減量(PF)が15%である固体のダイヤモンド鉱物尾鉱(キンバーライト)の用途を示す。
【0029】
提案された経路は、ケイ酸ナトリウムを生成するためのシリカの供給源としてのキンバーライト尾鉱の使用を含む。最初に、尾鉱を洗浄工程にかけ、18%w/vの塩酸により、1:4の比率で、95~100℃の温度で3~5時間浸出させる。その期間の後、パルプを中性のpHレベルに達するまでろ過および洗浄する。続いて、苛性ソーダによる消化にかけられ、95~190℃の温度の閉鎖系、または沸騰温度の開放系において、3~4時間で、固液比1:4で、8~10重量%のNaOH溶液を材料に添加して、必要な特性を備えるケイ酸ナトリウムを得る。
【0030】
文書の提案とは異なり、本発明では、ケイ酸ナトリウムは、水酸化ナトリウムと浮遊選鉱尾鉱との約45℃の温度での2.5時間の反応によって得られる。尾鉱の残留酸化鉄と混合された粉末ケイ酸ナトリウム(NaSiO)が得られる。
【0031】
また、環境への影響が少ない製造工程を伴うPortland cementに関する代替材料の探索が、世界中の研究とともに増加していることにも留意されたい。上記の材料の中には、Portland cementと同様の機能を有するセメントバインダーであるジオポリマーがある。現在、ジオポリマーは、Portland cementの製造のために排出される二酸化炭素ガスの量の5分の1しか排出しないため、関心が高まっている。Portland cement産業は、産業部門の中で、二酸化炭素ガスの2番目に大きな排出源である。これらのバインダーは、シリカおよびアルミナが豊富な材料のアルカリ活性化によって得られ、メタカオリンおよび工業用残留物が注目されている。ジオポリマーを得るためにシリカの量を増大させるためには、メタカオリンにケイ酸ナトリウム(またはカリウム)の形態でシリカを添加する必要がある。
【0032】
ジオポリマーは、アルカリ性の水酸化物またはケイ酸塩を含む塩基性活性化溶液を受けるシリコンおよび酸化アルミニウムを含む固体反応性鉱物から得られる、耐性が増大した無機ポリマーである。
【0033】
ジオポリマーは、セメントの代替として、ならびにCO排出量の削減を促進するものとして、建設業界において多くの用途を有する製品である。ひび割れや熱融解がなく、舗装や道路の維持費の削減にもつながり、修正維持の頻度が大幅に減少するため、舗装での使用は非常に有効である。
【0034】
本発明はさらに、ジオポリマー製造の代替案を提示し、鉄鉱石精鉱過程に由来する砂状尾鉱が、同じ尾鉱から製造されるケイ酸ナトリウムと共に骨材として用いられる。上記の尾鉱からジオポリマーを得ることは、尾鉱の貯蔵面積を減らし、ダムをなくすための代替手段と見なされている。
【発明の目的】
【0035】
本発明は、その全体的な目的として、ジオポリマーの製造に用いるための、シリカの供給源として、鉄鉱石精鉱過程から砂状尾鉱からケイ酸ナトリウムを得る方法を提供することである。
【0036】
本発明のさらなる目的は、主要な環境影響をもたらす鉄鉱石加工設備における尾鉱を減少させることであり、この尾鉱を利用して、それを商業製品に変換することである。
【0037】
したがって、本発明の別の目的は、ダムにおける鉱石加工尾鉱の廃棄によって生じる環境への影響を低減することであり、それは、この材料をケイ酸塩材料の供給源として利用してケイ酸ナトリウムを生成することによって可能になる。
【発明の概要】
【0038】
本発明は、その好ましい実施形態において、以下の工程を含む、鉄鉱石精鉱過程から生成される砂状尾鉱から粉末ケイ酸ナトリウムを得るための方法を開示する:
a)鉄鉱石精鉱過程で生成される砂状尾鉱中に存在する、スラリーとも呼ばれる超微細画分(粒径40μm未満)を除去する工程;
b)スラリーを含まない材料から過剰な湿度を除去する工程;
c)過剰な湿度を除去した後に得られる材料を乾燥させる工程;
d)乾燥された材料に、33~38mol/Lの濃度の水酸化ナトリウム溶液を溶液2質量部に対して尾鉱が1質量部となる比率で添加する工程;
e)尾鉱と水酸化ナトリウム溶液とを適切な装置で混合し、完全な均質化を確保する工程;
f)混合物を400~500℃の温度で熱処理し、その後、得られる材料を冷却する工程;および
g)冷却された材料を最終生成物として保管し、吸湿性による湿気の吸収を防ぐ工程。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明は、以下の図面に基づいて詳細に説明される:
【0040】
図1図1は、溶融工程(a)または水熱工程(b)からのケイ酸ナトリウムの製造の簡略化されたブロック図を示す;
【0041】
図2図2は、本発明による、鉄鉱石精鉱過程で生成される砂状尾鉱からの粉末ケイ酸ナトリウムの製造工程の簡略化されたブロック図を示す;
【0042】
図3図3は、砂状尾鉱から得られるケイ酸ナトリウムを用いてジオポリマーを得る工程を示す;
【0043】
図4図4は、得られたケイ酸ナトリウムのX線回折図を示す。
【発明の詳細な説明】
【0044】
本発明は異なるモデルに影響を受けてもよく、図面および以下の詳細な議論は、本明細書が本発明の原理の例と見なされなければならず、本発明をここでの規定に限定することを意図しないという理解の下で、好ましい実施形態を示す。
【0045】
本発明の特許請求される主題は、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に開示される材料および方法が異なる詳細および手順を含み得るので、非限定的な例として以下に詳述されるべきである。特に明記されていない限り、以下に説明するすべての部とパーセンテージは重量測定値である。
【0046】
本発明の主なアプローチは、その構成において高シリカ(SiO)含有量を有する材料からケイ酸ナトリウムを製造するための方法に関連し、前記材料は、鉄鉱石精鉱過程によって生成される浮遊選鉱尾鉱である。
【0047】
好ましい実施形態では、本発明のケイ酸ナトリウムの製造方法は、シリカ含有材料の供給源として、通常の砂と同様の特性を有し、この製造方法において用いられ、シリカ源としての砂の代わりに用いられる、浮遊選鉱による鉄鉱石精鉱により生成する砂状尾鉱が用いられる。
【0048】
別の好ましい実施形態では、本発明のケイ酸ナトリウムの製造方法は、以下の工程を含む:
a)鉄鉱石精鉱過程で生成される砂状尾鉱中に存在する、スラリーとも呼ばれる超微細画分(粒径40μm未満)を除去する工程;
b)スラリーを含まない材料から過剰な湿度を除去するする工程;
c)過剰な湿度を除去した後に得られる材料を乾燥させる工程;
d)乾燥された材料に、33~38mol/Lの濃度の水酸化ナトリウム溶液を溶液2質量部に対して尾鉱1質量部となる比率で添加する工程;
e)尾鉱と水酸化ナトリウム溶液とを適切な装置で混合し、完全な均質化を確保する工程;
f)混合物を400~500℃の温度で熱処理し、その後、得られる材料を冷却する工程;および
g)冷却された材料を最終生成物として保管し、吸湿性による湿気の吸収を防ぐ工程。
【0049】
この方法は、砂状尾鉱中に存在する、スラリーとも呼ばれる超微細材料(粒度40μm未満)の除去から始まり、これは、サイクロンシステム、濃縮または遠心分離により行われ、より適切にはこれらの単位操作の組み合わせにより行われ、その結果、続く処理に適した粒径の材料が得られる。
【0050】
超微細画分の除去後、20~65(質量)%の範囲の固形分を有するスラリーを含まない材料が、濾過または遠心分離によって行われる脱水工程に送られ、乾燥の次の工程のための材料が調製される。濾過の目的は、材料の湿度を最小限に抑えることであり、これにより、エネルギー消費量が削減される。得られたケーキの湿度は、微細材料の存在に加えて、組成物中に存在する鉱物にも関係する。この単位操作は、好ましくは、湿度が最大15質量%のケーキを生成し、この値は制限されない。
【0051】
したがって、材料の過剰な湿度を確実に除去するために、以下の乾燥工程が重要である。この工程はいくつかの方法により行うことができるが、固体材料の最も一般的な方法は熱交換に基づくものであり、本発明の場合、それは好ましくは直接(対流)または間接(伝導)法によるものである。乾燥は標準的な乾燥機により行われ、例えば、回転式または流動床式の乾燥機である。工業的に用いられる乾燥温度は、特に酸化の問題がない材料である場合、最大105℃であるが、用いられる機器のタイプや必要な時間に応じて決定される。気象条件や保管場所によっては、屋外での乾燥も可能である。
【0052】
乾燥後、乾燥された材料に、33~38mol/Lの濃度の水酸化ナトリウム溶液を溶液2部に対して乾燥材料1部の質量比で添加し、ペーストを得る。材料の均一性との効率的な混合を確保するためにブレンダーが用いられる。混合は、約2分間絶えず行われ、熱損失は生じない。
【0053】
得られた混合物は加熱工程に送られ、そこで回転炉が400~500℃の処理温度で用いられる。混合物の加熱は、10℃/分の平均加熱速度で、非限定的な好ましい滞留時間2.5時間で行われる。熱処理後、材料はシェルタイプまたはチューブタイプの熱交換器で冷却段階にかけられる。冷却後、粉末ケイ酸ナトリウム、すなわち本発明の最終生成物の温度は、60~75℃の範囲でなければならない。この生成物は、吸湿性が高いために湿気を吸収しないように、密閉された場所または容器に保管する必要がる。
【実施例
【0054】
粉末ケイ酸ナトリウムの製造を目的として、鉄鉱石加工尾鉱サンプルを用いて試験ベンチ規模の試験を行った。得られた結果は、ジオポリマーの製造に用いるのに適したケイ酸ナトリウムを得る可能性を示している。
【0055】
この試験において、VGR1およびVGR2として識別される、鉄鉱石精鉱設備からの2つの浮遊選鉱尾鉱が用いられた。サンプルの化学組成を表1に示す。
【表1】
【0056】
まず、尾鉱パルプを注ぎ、サイフォンによって40μm未満の超微細画分を含む上澄みを分離した。デカンテーションされ、濃縮された材料を、100℃の温度で24時間ストーブ乾燥にかけた。乾燥後、材料を分解して均質化した。
【0057】
ケイ酸ナトリウム調製シーケンスにおいて、乾燥および均質化された材料に、1:2の乾燥材料/溶液の質量比で、37mol/Lの濃度のNaOH溶液を添加した。
【0058】
混合物を溶鉱炉に入れ、10℃/分の速度で450℃まで加熱し、温度を2.5時間維持した。この熱処理の生成物は、粉末状で得られるケイ酸ナトリウムであった。この工程の後、生成物を室温で冷却し、密閉容器に保管し、吸湿性による環境からの吸水を防いだ。
【0059】
粉末ケイ酸ナトリウムを特性化する目的で、X線回折およびX線蛍光手法を行った。回折図を図4に示す。
【0060】
表2は、得られた粉末ケイ酸ナトリウムの化学組成を示す。SiO/NaO比が1.60~3.75の範囲である市販のケイ酸塩とは異なり、SiO/NaO比が1よりも低いことに留意する必要がある。結合ペーストを得るための水の添加により、ジオポリマーを形成するために、メタカオリンまたは他のイオン源からアルミン酸塩およびケイ酸塩イオンの溶解に必要なアルカリ性媒体が提供されるため、過剰量のNaOがこの生成物の重要な特徴である。
【表2】
【0061】
鉄鉱石精鉱過程からの砂状尾鉱から生成された、本発明に記載された方法により得られた粉末ケイ酸ナトリウム(NaSiO)は、例えば、道路舗装に適用されるジオポリマーの製造に用いることができ、その取得過程を図3のブロック図に示す。
【0062】
図3によれば、提示された手法によって得られた粉末ケイ酸ナトリウムを、浮遊選鉱尾鉱と共に、メタカオリンまたは他のアモルファス粉末ケイ酸アルミニウム源と混合する。その後、この混合物に水を添加してペーストを生成し、これを成形して硬化したモノリスを得る。この材料は、Portland cement mortarの代わりに用いることができ、この種のセメントでは不可能な、尾鉱の割合が高いという追加の利点を有する。得られたジオポリマーは、建設業または歩道や道路の舗装工事に用いることができる。代替のシリカ含有源からこのジオポリマーを得ることは研究の対象であり、その使用には、Portland cement mortarの製造と非常に類似したプロセスを特徴とすることに加えて、高アルカリ溶液の取り扱いを回避するというさらなる利点を有する。
【0063】
したがって、本発明のいくつかの実施形態のみが示されたが、本発明の本質および範囲から逸脱することなく、いくつかの省略、置換および修正が当業者によって実施され得ることが理解される。本明細書に記載される実施形態は、すべての側面において、例示的かつ非限定的なものとしてのみ考慮されなければならない。
【0064】
実質的に同じ方法で、同じ結果を達成するために同じ機能を達成する要素のすべての組み合わせは、本発明の範囲内であると明確に述べられている。記載された実施形態の要素を別の実施形態に置き換えることもまた、完全に意図され、考慮されている。
【0065】
図面は必ずしも縮尺どおりではなく、本質的に概念的なものにすぎないことも理解されなければならない。したがって、その意図は、添付の請求項の範囲の規定に限定されるべきである。
図1
図2
図3
図4