(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】アドヒアランス/コンプライアンスモニターを備えたドライパウダー吸入器
(51)【国際特許分類】
A61M 15/00 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
(21)【出願番号】P 2022528670
(86)(22)【出願日】2020-11-17
(86)【国際出願番号】 EP2020082428
(87)【国際公開番号】W WO2021099328
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-07-15
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511148433
【氏名又は名称】ヴェクトュラ・デリヴァリー・ディヴァイスィズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・メリニオティス
(72)【発明者】
【氏名】ロジャー・クラーク
(72)【発明者】
【氏名】ダリル・コットン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ディーマー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・スミス
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・スワンベリー
(72)【発明者】
【氏名】セス・トーマス
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-538788(JP,A)
【文献】特表2018-501079(JP,A)
【文献】国際公開第2019/021254(WO,A1)
【文献】特表2013-538639(JP,A)
【文献】特表2000-508943(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0174348(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングおよびカバーを有するドライパウダー吸入器であって、前記カバーは、マウスピースを露出させるために、閉位置から開位置へ前記ハウジングに対して枢動可能であり、前記吸入器は、
患者のアドヒアランス情報及び/又はコンプライアンス情報を処理するためのモニターであって、前記アドヒアランス情報及び/又は前記コンプライアンス情報を測定するための1つまたは複数のセンサーを有するモニターとともに使用するために設計されているが、
前記モニターが存在しているかどうかにかかわらずパウダーをディスペンスするように動作しており、前記ハウジングは、前記モニターを前記吸入器の上に装着するための1つまたは複数のフォーメーションであって、前記モニターの1つまたは複数のフォーメーションに対応する1つまたは複数のフォーメーションを有しており、前記カバーが前記開位置にあるときに、前記カバーが、前記ハウジング上の前記フォーメーションを少なくとも部分的にカバーする、ドライパウダー吸入器。
【請求項2】
前記ハウジングの上の前記フォーメーションは、前記カバーが前記閉位置にあるときにアクセス可能である、請求項1に記載のドライパウダー吸入器。
【請求項3】
前記1つまたは複数のフォーメーションは、クリップ接続部である、請求項1または2に記載のドライパウダー吸入器。
【請求項4】
前記フォーメーションは、前記モニターを前記吸入器の上に取り外し可能に装着するように適合されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のドライパウダー吸入器。
【請求項5】
前記カバーの内側は、1つまたは複数のカムを有しており、前記1つまたは複数のカムは、前記カバーの位置および/または運動の方向を決定するために、前記モニターの外側上のスイッチを動作させるように設計されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のドライパウダー吸入器。
【請求項6】
第1の段階において、前記カバーを前記閉位置から中間位置へ移動させることは、ブリスターストリップが前進させられることを引き起こし、
第2の段階において、前記カバーを前記中間位置から前記開位置へ移動させることは、整合されたブリスターを穿孔器が穿孔することを引き起こす、請求項1から5のいずれか一項に記載のドライパウダー吸入器。
【請求項7】
前記ドライパウダー吸入器は、前記吸入器の上に装着されるモニターを含み、前記モニターは、センサーと、前記ハウジングの前記1つまたは複数のフォーメーションに対応し、且つ前記ハウジングの前記1つまたは複数のフォーメーションに接続する1つまたは複数のフォーメーションであって、前記モニターを前記吸入器の上に装着するための1つまたは複数のフォーメーションとを有しており、前記カバーが前記開位置にあるときに、前記カバーが、前記モニターを少なくとも部分的にカバーする、請求項1から6のいずれか一項に記載のドライパウダー吸入器。
【請求項8】
前記モニターの上の前記1つまたは複数のフォーメーションは、クリップ接続部であり、前記クリップ接続部は、前記吸入器の上の対応するクリップ接続部と接続する、請求項7に記載のドライパウダー吸入器。
【請求項9】
前記モニターは、前記吸入器の上に取り外し可能に装着される、請求項7または8に記載のドライパウダー吸入器。
【請求項10】
前記モニターは、内側面および外側面を有しており、前記内側面は、前記モニターがその上に装着される前記吸入器の前記ハウジングの形状にマッチしており、前記外側面は、前記カバーの回転によって画定されるカーブに対応している、請求項7から9のいずれか一項に記載のドライパウダー吸入器。
【請求項11】
前記モニターは、その外側にスイッチを有しており、前記スイッチは、前記カバーの内側上のカムによって動作させられ、前記モニターは、前記スイッチの状態に基づいて、前記カバーの位置および/または運動の方向を決定するように構成されている、請求項5に従属する請求項7から10のいずれか一項に記載のドライパウダー吸入器。
【請求項12】
前記モニターは、前記マウスピースの上の患者の吸入をセンシングするための圧力センサーをさらに含む、請求項7から11のいずれか一項に記載のドライパウダー吸入器。
【請求項13】
前記モニターは、前記センサーからの情報を処理および/または記憶するためのコントローラーおよびメモリーと、情報を外部デバイスに伝達するための通信手段とをさらに含む、請求項7から12のいずれか一項に記載のドライパウダー吸入器。
【請求項14】
請求項1から6のいずれか一項に記載のドライパウダー吸入器、および、
前記モニターであって、前記モニターは、
前記センサーと、前記ハウジングの前記1つまたは複数のフォーメーションに対応し、且つ前記ハウジングの前記1つまたは複数のフォーメーションに接続する1つまたは複数のフォーメーションであって、前記モニターを前記吸入器の上に装着するための1つまたは複数のフォーメーションとを有しており、前記モニターが前記吸入器の上に装着されているときに、および、前記カバーが前記開位置にあるときに、前記カバーが前記モニターを少なくとも部分的にカバーするようになっている、ドライパウダー吸入器およびモニター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入のための活性物質を含有するドライパウダーのための吸入器に関する。とりわけ、本発明は、吸入器、ならびに、患者のアドヒアランスおよび/またはコンプライアンスをモニタリングするためのモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
ドライパウダー吸入器(DPI: dry powder inhaler)は、薬剤を投与するための魅力的な方法を提供し、たとえば、気道の局所疾患を治療し、または、肺を介して血流に薬物を送達する。薬剤は、一般に、たとえば、複数のブリスターを有するストリップなど、個々の用量として提供される。典型的に、ユーザーがキャップまたはカバーを開け、マウスピースにアクセスすることによって、次いで、アクチュエーター(たとえば、ボタンまたはレバーなど)を動作させ、パウダーを解放することによって、最後に、マウスピースを通して吸入することによって、用量がディスペンスされる。いくつかの吸入器(「open-inhale-close」吸入器として知られる)において、カバー自身がアクチュエーターであり、別個の作動レバーまたはボタンが存在しないようになっている。吸入器は、通常、空気が流入することを可能にするベントと、使用された用量の数、または、使用されるために残っている用量の数を表示する用量カウンターとを有している。
【0003】
治療の有効性は、患者が吸入器を正しく処方された通りに使用することに依存する。結果的に、患者アドヒアランス(すなわち、患者が1日当たりに処方された数(たとえば、1日に1回または2回)の用量を服用するかどうか)およびコンプライアンス(すなわち、患者が彼らの吸入器を正しく使用しているかどうか、たとえば、彼らが、パウダーを同伴させるのに十分に強力に吸入し、肺に到達する粒子へとそれらを分散させるかどうか)をモニタリングすることに関心が高まっている。
【0004】
DPIは、典型的に、1ヶ月分の医薬の供給を含有している。アドヒアランス/コンプライアンスモニターは、通常は、高価なセンサー、電子機器などを含有しているので、それらは、吸入器に取り外し可能に連結する別個のアドオンモジュールとして提供されることが多い。したがって、吸入器の中の医薬が使い果たされたときに、モニターは取り外され、次いで、新しい吸入器に再び取り付けられ得る。
【0005】
しかし、モニターは、吸入器の動作と干渉してはならない。たとえば、吸入器の適正な作動および成功的な用量送達を保証するために、カバーおよびアクチュエーター(存在する場合には)の運動は、中断されないようにしなければならない。そのうえ、空気ベントおよび用量カウンターは、妨害されないようにしなければならない。これらの制約は、モニターを吸入器に取り付けるための可能な場所を制限する。したがって、典型的に、モニターは、動作の間にユーザーが保持するパーツの上にフィットしなければならない。たとえば、特許文献1および特許文献2は、特定のドライパウダー吸入器のための取り外し可能なアドヒアランスモニターを開示している。しかし、モニターの存在は、吸入器を動作させている間に患者がどのようにおよびどこで吸入器を保持するかということに影響を与え、それは、単独の吸入器と比較して異なるユーザーインターフェースを結果として生じさせる。これは、一部の患者にとって混乱を招くものである可能性があり、患者がモニターを除去することを選ぶことを結果として生じさせる可能性がある。そのうえ、これらの制約に起因して、モニターを取り付けることおよび取り外すことは、簡単でない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2016/111633号
【文献】国際公開第2014/204511号
【文献】国際公開第13/175177号
【文献】国際公開第13/175176号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、この問題に対処し、第1の態様において、ハウジングおよびカバーを有するドライパウダー吸入器であって、カバーは、マウスピースを露出させるために、閉位置から開位置へハウジングに対して枢動可能であり、吸入器は、1つまたは複数のセンサーを有するモニターとともに使用するために設計されており、ハウジングは、モニターを吸入器に取り付けるための1つまたは複数のフォーメーションを有しており、カバーが開位置にあるときに、カバーが、フォーメーションを少なくとも部分的にカバーする、ドライパウダー吸入器を提供する。したがって、開位置では、カバーは、モニターが装着されている場所を少なくとも部分的にカバーしている。換言すれば、モニターが吸入器の上に装着されているときに、および、カバーが完全に開けられているときに、カバーは、モニターを少なくとも部分的にカバーしている。
【0008】
第2の態様において、本発明は、第1の態様の吸入器とともに使用されるように設計されているモニターであって、モニターは、センサーと、モニターを吸入器に取り付けるためのフォーメーションとを有しており、モニターが吸入器の上に装着されているときに、および、カバーが完全に開けられているときに、カバーがモニターを少なくとも部分的にカバーするようになっている、モニターを提供する。
【0009】
本発明は、吸入器を使用するときに、患者がモニターに触れる必要がないという利点を有している。実際に、患者は、吸入のためにカバーが開位置にあるときにモニターに触れることを阻止または防止される。その理由は、モニターが少なくとも部分的にカバーの下に位置しているからである。それによって、カバーは、たとえば、不注意な除去および事故的な損傷から、モニターを保護する。ハウジングの上のフォーメーションは、好ましくは、カバーが閉位置にあるときにアクセス可能である。
【0010】
ハウジングおよびモニターの上のフォーメーションは、モニターを吸入器の上に位置決めする機能、および、モニターを吸入器に取り付ける機能を果たす。フォーメーションは、機械的であることが可能であり、たとえば、1つもしくは複数のクリップ接続部(たとえば、モニターの上のペグもしくはクリップなど)、および、吸入器の上の対応する孔部もしくはスロットであることが可能であり、または、その逆も同様に可能である。1つの実施形態では、吸入器のハウジングは、1つまたは複数のクリップを有しており、1つまたは複数のクリップは、カバーが閉位置にあるときにアクセス可能であり、カバーが開位置にあるときに、カバーによって少なくとも部分的にカバーされている。フォーメーションは、1つまたは複数のスクリューによる吸入器へのモニターの取り付けを促進させることが可能である。また、モニターは、磁石によって吸入器の上に位置決めされ、および/または、吸入器に取り付けられることも可能である。
【0011】
好適な実施形態において、モニターは、吸入器の上に取り外し可能に装着可能である。
【0012】
センサーは、カバーの位置および/または運動の方向を決定するための光学センサーであることが可能である。カバーの内側は、マーキングを有することが可能であり、マーキングは、カバーの位置および/または運動の方向を決定するために、モニターによって読み取られるように設計されている。センサーは、マーキングを読み取るように構成され得、モニターが、カバーの位置および/または運動の方向を決定することができるようになっている。代替的に、カバーの内側は、1つまたは複数のカムを有することが可能であり、1つまたは複数のカムは、カバーの位置および/または運動の方向を決定するために、モニターの上のスイッチを動作させるように設計されている。
【0013】
1つの実施形態では、カバーの開放運動は、2つの段階を有しており、第1の段階において、カバーを閉位置から中間位置へ移動させることは、ブリスターストリップが前進させられることを引き起こし、第2の段階において、カバーを中間位置から開位置へ移動させることは、整合されたブリスターを穿孔器が穿孔することを引き起こす。
【0014】
モニターは、内側面および外側面を有することが可能であり、内側面は、モニターがその上に装着されるように設計されている吸入器のハウジングの形状にマッチしており、外側面は、カバーの回転によって画定されるカーブに対応している。
【0015】
モニターは、ブリスターストリップの上のコードを読み取るためのセンサー(好ましくは、光学センサー)を有することが可能である。光学センサーは、コードを読み取るように構成され得、モニターが、ブリスターストリップの位置および/または運動の方向を決定することができるようになっている。
【0016】
モニターは、ブリスターストリップの上のコードを読み取るセンサーによって、カバーの開放移動の第1の段階の間のブリスターストリップの位置および/または運動の方向を決定することが可能であり、また、カバーの内側にあるマーキングを読み取るセンサーによって、第2の段階の間のカバーの位置および/または運動の方向を決定することが可能である。代替的に、モニターは、その外側にスイッチを有することが可能であり、スイッチは、吸入器のカバーの内側にあるカムによって動作させられ、モニターは、スイッチの状態に基づいて、カバーの開放移動の第1の段階および第2の段階の両方において、カバーの位置および/または運動の方向を決定するように構成され得る。
【0017】
モニターは、マウスピースの上の患者の吸入をセンシングするための圧力センサーを追加的に有することが可能である。
【0018】
モニターは、センサーからの情報を処理および/または記憶するためのコントローラーおよびメモリーと、情報を外部デバイス(たとえば、コンピューターまたはスマートフォンなど)に伝達するための通信手段とを有することが可能である。
【0019】
第3の態様において、本発明は、第1の態様の吸入器および第2の態様のモニターの組合せ、たとえば、吸入器およびモニターを含むキットなどを提供する。好ましくは、モニターは、吸入器の上に装着される。
【0020】
ここで、本発明は、図を参照してさらに説明されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】Handihaler(登録商標)吸入器のための従来技術のアドヒアランスモニターを示す図である。
【
図1B】Handihaler(登録商標)の上の適切な場所にある
図1Aのモニターを示す図である。
【
図2A】Ellipta(登録商標)吸入器のための従来技術のアドヒアランスモニターを示す図である。
【
図2B】Ellipta(登録商標)の上の適切な場所にある
図2Aのモニターを示す図である。
【
図3A】Diskus(登録商標)吸入器のための従来技術のアドヒアランスモニターを示す図である。
【
図3B】Diskus(登録商標)の上の適切な場所にある
図3Aのモニターを示す図である。
【
図4A】カバーが閉位置にあり、マウスピースがカバーされるようになっている、本発明による吸入器およびモニターを示す図である。
【
図4B】カバーが開位置にあり、マウスピースが露出されてモニターがカバーされるようになっている、
図4Aの吸入器を示す図である。
【
図4C】モニターが除去され、カバーが開かれた状態の、
図4Aの吸入器を示す図である。
【
図4D】吸入器から除去されたモニターを示す図である。
【
図4E】吸入器から除去されたモニターを示す図である。
【
図5A】その外側にスイッチを有するモニターの第2の実施形態を示す図である。
【
図5B】スイッチを作動させるカムをその内側に有するマウスピースカバーの第2の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ドライパウダー吸入器の文脈において、「アドヒアランス」という用語は、通常、患者が1日当たりに処方された数の用量を服用するかどうかを指すために使用される(たとえば、1日に1回または2回)。「コンプライアンス」という用語は、通常、患者がそれらの吸入器を正しく使用しているかどうかを指すために使用される(たとえば、彼らが、パウダーを同伴させるのに十分に強力に吸入し、肺に到達する粒子へとそれらを分散させるかどうか)。結果的に、モニターは、それが使用するセンサーのタイプ、および、どのようにそれらが構成されているかにしたがって、アドヒアランスおよび/またはコンプライアンスを測定するように設計され得る。本出願において、「モニター」という用語は、したがって、1つまたは複数のセンサーを有するモジュールを指しており、1つまたは複数のセンサーは、アドヒアランスおよび/またはコンプライアンスに関する情報を測定および捕捉するように設計されている。しかし、モニターは、たとえば、ブリスター/カプセルを穿孔するかもしくは開けること、パウダーの凝集を解くこと、または、呼吸作動メカニズムを提供することなど、医薬を投与することに関連付けられる機能のいずれも実施しない。したがって、吸入器は、モニターが存在しているかどうかにかかわらず、パウダーをディスペンスするように動作する。
【0023】
特許文献1は、取り外し可能なアドヒアランスモニターを開示しており、それは、特定のドライパウダー吸入器(すなわち、Handihaler(登録商標)およびEllipta(登録商標))のために遡及的に設計されている(
図1および
図2にそれぞれ示されている)。特許文献2は、Diskus(登録商標)ドライパウダー吸入器のためのアドヒアランスモニターを開示している(
図3に示されている)。
図1A、
図2A、
図3Aは、モニター100、200、300を単独で示している。
図1B、
図2B、
図3Bは、それぞれのケースにおいて吸入器110、210、310に取り付けられているそれらを示している。
【0024】
モニター100をHandihaler(登録商標)110に取り付けるために、ユーザーは、アクチュエーターボタン130を最初にして、吸入器をモニターの中へ所定の角度でスライドさせなければならず、吸入器の上部縁部が、リテイニングキャッチの下にフィットするようになっている。次いで、外向きの圧力が、モニターに印加され、さらなるリテイニングキャッチが屈曲し、吸入器がモニターの中へフィットすることを可能にするようになっている。次いで、カバーおよびマウスピースが、枢動させられて開き、パウダーを含有するカプセルを挿入することが可能である。次いで、アクチュエーターボタン130が押圧され、カプセルを穿孔する。モニターは、スイッチ140およびタイマーを有しており、スイッチ140は、カバーが開閉されるときに活性化させられ、タイマーは、キャップの開け閉めの間の時間を記録する。この時間が規定された範囲(たとえば、3秒から10秒の間など)の中にある場合には、吸入が行われたと見なされる。
【0025】
モニター200は、締まり嵌めによってEllipta(登録商標)吸入器210に取り付けられる。モニターは、スイッチ240およびタイマーを有しており、スイッチ240は、カバーが開閉されるときに活性化させられ、タイマーは、キャップの開け閉めの間の時間を記録する。また、それは、透明なセクション250を有しており、吸入器の上のラベルが隠されないようになっている。吸入器を動作させるために、カバー220が枢動させられ、それは、マウスピースを露出させ、また、ブリスター割り出しおよび開放メカニズムを作動させる。また、モニターは、作動または吸入を検出するための音響センサーを有することが可能である。
【0026】
Diskus(登録商標)吸入器310のためのモニター300は、吸入器の上部部分および底部部分の上にフィットするクリップとして構成され得る。吸入器を動作させるために、カバー320が開けられ、次いで、アクチュエーターレバー330が押圧される。モニターは、運動センサーを有しており、運動センサーは、運動が典型的な吸入器の使用に特有のものであるかどうかを決定する。また、モニターは、温度センサー340を有しており、温度センサー340は、マウスピースにおける患者の口の存在を検出することが可能である。
【0027】
それぞれのケースにおいて、モニターは、カバーまたはアクチュエーターボタン/レバーと干渉してはならないので、それらは、吸入器の他のパーツ(すなわち、動作の間にユーザーが保持するパーツ)の上にフィットするように設計されている。結果的に、患者は、吸入器を動作させている間にモニターを保持しなければならず、単独の吸入器と比較して異なるユーザー体験を結果として生じさせる。そのうえ、患者が吸入の間にモニターを保持するという事実は、モニターの不注意な除去またはそれへの事故的な損傷につながる可能性がある。
【0028】
本発明による吸入器およびモニターが、
図4に示されている。
図4Aは、モニターが取り付けられており、マウスピースカバーが閉位置にある状態の吸入器を示している。
図4Bは、マウスピースカバーが開位置にある状態の吸入器を示しており、マウスピースを見ることができるようになっており、また、モニターがカバーされるようになっている。
図4Cは、モニターが除去されており、マウスピースカバーが開位置にある状態の吸入器を示している。
図4Dおよび
図4Eは、吸入器から取り外されたモニターを示している。
【0029】
図4に示されている吸入器は、特許文献3に説明されているタイプの「open-inhale-close」吸入器であり、それは、ギアメカニズムを有しており、ギアメカニズムは、マウスピースカバーをブリスターストリップ割り出しメカニズムにおよび穿孔器にも選択的に連結している。閉位置から中間位置(開放の第1の段階)へカバーを移動させることは、割り出しメカニズムがブリスターストリップを前進させることを引き起こす。次いで、未使用のブリスターが穿孔器の下の適切な位置に来ると、割り出しメカニズムが解除される。マウスピースカバーを中間位置から完全に開いた位置(第2の段階)へ移動させることは、整合されたブリスターを穿孔器が穿孔することを引き起こす。次いで、ユーザーは、マウスピースを通して吸入し、穿孔されたブリスターの中のパウダーをエーロゾル化する。しかし、本発明は、このタイプの吸入器に限定されず、たとえば、特許文献4に説明されているように、パッシブマウスピースカバーおよび別個の作動レバーを有する吸入器とともに、または、ブリスターストリップの代わりにブリスターディスクを有する吸入器とともに等しく使用され得る。
【0030】
本発明の吸入器は、好ましくは、パウダー化された薬剤を含有するブリスターのストリップと、アクチュエーターによって動作させられる、ブリスターストリップを前進させるための、および、ブリスターを開けるためのメカニズムとを有している。開放メカニズムは、適切には、マウスピースの下側に装着される穿孔器である。アクチュエーターは、割り出しメカニズムを駆動し、ブリスターを移動させて穿孔器と整合した状態にし、次いで、ハウジングに対してマウスピースを移動させ、穿孔器が、整合されたブリスターを穿孔するようになっている。アクチュエーターは、レバーであることが可能であり、レバーは、ブリスターストリップの割り出しおよびブリスターの穿孔を引き起こす。しかし、好ましくは、アクチュエーターは、カバーの一部として形成されており(または、カバーに接続されており)、カバーの回転が、ブリスターストリップの割り出しおよびブリスターの穿孔を引き起こすようになっている。吸入器は、それぞれの作動ごとに1つのブリスターを割り出して穿孔するように構成され得る。代替的に、それは、それぞれの作動ごとに2つの(または、それ以上の)ブリスターを割り出して穿孔することが可能である。たとえば、それは、2つの(または、それ以上の)異なる製剤または薬剤を同時に送達することが可能である。
【0031】
図4に示されている吸入器1は、2つのシェルパーツ2、3から構成されており、2つのシェルパーツ2、3は、一緒に接合され、ハウジングを形成し、ハウジングは、ブリスターストリップを含有している。取り外し可能なモニター40が、吸入器の一方の側に取り付けられている。マウスピースカバー4が、ハウジングの上に装着されている。カバー4は、閉位置(
図4A)から完全に開いた位置(
図4B)へおおよそ100°にわたって回転させられ得、閉位置では、それは、マウスピースをカバーして保護しており、完全に開いた位置では、マウスピース5は露出されており、ユーザーが所定の用量の薬剤を吸入することができるようになっている。
【0032】
モニターが吸入器に取り付けられると、ユーザーは、それに触れる必要がない。カバーが閉位置にあるときには、モニターは、カバーを開けるときに患者が保持しない吸入器の一部に位置付けされている(吸入器がこのエリアに保持されていたとすれば、患者の指がカバーの開放移動を妨害することとなる)。結果的に、ユーザーインターフェースは、モニターが存在していないときと全く同じである。そのうえ、吸入のためにカバーが開位置にあるときに、モニターは、カバーの下に位置しており、それが事故的な損傷または不注意な除去から保護されるようになっている。
【0033】
モニターの内側面は、(モニターがその上に装着される)吸入器のハウジングの形状にマッチしている。外側面は、カバーの回転によって画定されるカーブに対応するように設計されている。換言すれば、それは、カバーの回転軸線を中心とする円弧として形状決めされており、カバーの内部表面の半径よりもわずかに小さい半径を有している。したがって、カバーが開けられるときに、カバーの内部表面とモニターの外側面との間に小さいクリアランスギャップ(約0.5~1mm)が存在している。これは、それがカバーの下にフィットしなければならないという制約の中で、モニターの体積を最大化する。カバーのカーブの継続部として出現することによって、外側面は、ユーザーがモニターを正しい位置に装着することを補助するための視覚的な合図も提供する。
【0034】
図4Cは、モニターが除去された状態の吸入器を示している。モニターが取り付けられていたハウジングの壁部12の中に、オリフィス11を見ることができる。その目的は、下記に説明されている。また、モニターを装着するためのスロット13を見ることができる。壁部12の底部に向けて位置付けされている第2のスロットが存在しているが、これは、
図4Cでは見ることができない。その理由は、それがカバー4によって隠されているからである。
【0035】
モニターは、その外側にある凹部の中に位置付けされている外部光学センサー44を有している(
図4Dに示されている)。このセンサーは、マウスピースカバーが完全に開かれたかどうかを決定するために使用されている。カバーは、その内部表面の上にマーキング(たとえば、成形されているかまたはエンボス加工されている)を有しており、それは、開放の第2の段階の間に外部光学センサーによって読み取られる。したがって、モニターは、ブリスターが穿孔されるようにカバーが完全に開けられたかどうかを決定することが可能であり、または、穿孔の前に作動が中止されたかどうかを決定することが可能である。これは、「open-inhale-close」吸入器に関するさらなる利点を提供する:(カバーが開位置にあるときに)カバーの下に位置付けされているモニターを有することは、患者が吸入器を実際に作動させたかどうか、または、彼らがカバーを部分的にのみ開き、次いで、それを再び閉めたかどうかを決定する簡単な方式を提供する。2つのそのようなセンサーは、カバーの内側にある2パートコードと組み合わせて使用され得る。これは、モニターが4つの状態の間を区別することを可能にし、カバーの運動の方向が決定され得るようになっており、同様に、その位置も決定され得るようになっている。
【0036】
モニターの内側面(すなわち、モニターが取り付けられているときに吸入器に当接する側部)が、
図4Eに示されている。モニター40は、2つのクリップ41を有しており、クリップ41は、ハウジングの中の対応するスロット13(
図4Cでは、そのうちの1つのみを見ることができる)の中へフィットし、それによって、吸入器に取り付けられているときに、モニターを適切な場所に保持する。モニターは、圧力センサー42を有しており、圧力センサー42は、内側面の上の凹部の中に位置付けされている。圧力センサーは、オリフィス11に当接しており、オリフィス11は、ハウジングの中のチャネルを介してマウスピースにつながっている。それによって、モニターは、マウスピースの中の圧力を測定し、ユーザーの吸入を検出することが可能である。また、モニターは、3つの内部光学センサー46(たとえば、フォトマイクロセンサー)を有することが可能である。これらは、ブリスターストリップの上のコード(たとえば、印刷されたバーコード)を読み取り、ディスペンスされた用量の数、または、ディスペンスされるために残っている用量の数が、決定され得るようになっている。
【0037】
モニターは、吸入器とは別個に供給され得、1つのモニターが、多くの異なる吸入器とともに使用され得るようになっている。クリップおよびスロットは、(締まり嵌めによって)モニターが吸入器の上に取り外し可能に装着されることを可能にする。代替的に、モニターは、吸入器に固定して取り付けられ得、そのケースでは、クリップは、たとえば、超音波溶接によって、スロットの上に溶接され得る。
【0038】
開放の第1の段階の間のカバーの位置は、モニターの内側にある光学センサー46によってモニタリングされ得、それは、ブリスターストリップの上のコードの運動を検出する。モニタリングは、ブリスターストリップが移動しない第2の段階に関して、外部光学センサーに引き渡される。外部光学センサーは、割り出しメカニズムが解除される直前にスイッチオンされ、そのポイントにおいて、カバーは、外側光学センサーをカバーするのに十分に枢動している。これは、バッテリー電力を節約する。その理由は、外部光学センサーが、必要なときにのみスイッチオンされるからである。また、それは、誤った読み取りを防止する(そうでなければ、たとえば、ユーザーが外側センサーの上に自分の指を置く場合に、誤った読み取りが起こる可能性がある)。
【0039】
別の実施形態では(
図5Aおよび
図5Bに示されている)、モニターは、外部光学センサーを有するのではなく、その代わりに、2つのスイッチ81、82を有している。カバーの内側は、2つの対応するカム91、92を有しており、それらは、カバーが開けられるときに、スイッチと接触したり接触しなくなったりし、スイッチが状態を変化させることを引き起こす。それぞれのカムは、それぞれのスイッチにおいて2つの状態の変化を引き起こし、したがって、カバーが完全に開けられているときに、8つのスイッチ状態の変化が存在している。これは、直交ロジックの2つの完全なサイクルを提供し、それは、モニターがカバーの運動の方向(開放または閉鎖)を決定することを可能にする。スイッチ状態のそれぞれの変化が、開閉運動の第1および第2の段階の両方にまたがる異なる開放角度において起こるように、スイッチおよびカムが配置されている。モニターは、スイッチ状態の変化をカウントし、変化が起こる既知の角度からカバーの位置を決定する。結果的に、開放の第1の段階の間にカバーの位置を決定するために、ブリスターストリップの運動を使用する必要はない。それにもかかわらず、モニターは、ブリスターストリップの上のコードを読み取るための内部光学センサーを有することが可能であり、モニターが用量数を決定することができるようになっている。カムおよびスイッチは、ブリスターが穿孔されるようにカバーが完全に開けられたかどうか、または、穿孔の前に作動が中止されたかどうかを、モニターが決定することを可能にする。また、モニターは、吸入を検出するための圧力センサーを有することが可能である。
【0040】
この実施形態は、すべての開放角度におけるカバーの内側とモニターの外側との間の緊密なフィットに起因して、カムおよびスイッチの配置が簡単に実装できるという利点を有している。そのうえ、モニターの電力消費が、2つの理由のために低減される。第1に、外部光学センサーに対する必要性がない。第2に、スイッチのうちの1つが状態を変化させるときにはいつでも、モニターがスイッチオンされるかまたはスリープ状態から目を覚まされ得る。これは、モニターが永続的にスイッチオンされる必要性を回避する。
【0041】
モニターは、コントローラーおよびメモリー(たとえば、適切なマイクロプロセッサー)を有することが可能であり、それらは、患者の吸入器の使用法に関して、センサーから読み取られた情報を処理および/または記憶するように構成されている。また、モニターは、アドヒアランス/コンプライアンス情報を(たとえば、bluetoothを介して)外部デバイス(たとえば、コンピューターまたはスマートフォンなど)に伝達するための通信手段を含むことが可能である。次いで、情報は、適切なソフトウェア(たとえば、スマートフォンアプリ)によって、患者および/または医療専門家に表示され得る。情報は、追加的にまたは代替的に、その後の尋問のためにモニターの上に記憶され、または、たとえば、オンラインヘルスプラットフォームに、ワイヤレスで伝達され得る。
【0042】
薬剤は、吸入による投与に適切であり、たとえば、呼吸器疾患の治療に適切である。それは、薬学的に活性な材料の以下のクラスのうちの1つまたは複数を含むことが可能である:抗コリン薬、アデノシンA2A受容体アゴニスト、β2-アゴニスト、カルシウムブロッカー、IL-13阻害薬、ホスホジエステラーゼ-4-阻害薬、キナーゼ阻害薬、ステロイド、CXCR2、タンパク質、ペプチド、Anti-IG-Eなどのような免疫グロブリン、核酸(とりわけ、DNAおよびRNA)、モノクロナール抗体、小分子阻害薬、および、ロイコトリエンB4アンタゴニスト。薬剤は、賦形剤、たとえば、微細な賦形剤および/またはキャリア粒子(たとえば、ラクトース)など、および/または、添加剤(たとえば、ステアリン酸マグネシウム、リン脂質、またはロイシン)を含み得る。
【0043】
適切なβ2-アゴニストは、アルブテロール(サルブタモール)、好ましくは、アルブテロール硫酸塩;カルモテロール、好ましくはカルモテロール塩酸塩;フェノテロール;ホルモテロール;ミルベテロール、好ましくは、ミルベテロール塩酸塩;メタプロテレノール、好ましくは、メタプロテレノール硫酸塩;オロダテロール;プロカテロール;サルメテロール、好ましくは、サルメテロールキシナホ酸塩;カルモテロール;テルブタリン、好ましくは、テルブタリン硫酸塩;ビランテロール、好ましくは、ビランテロールトリフェニル酢酸塩、または、インダカテロール、好ましくは、インダカテロールマレイン酸塩を含む。
【0044】
適切なステロイドは、ブデソニド;ベクロメタゾン、好ましくは、ベクロメタゾンジプロピオン酸塩;シクレソニド;フルチカゾン、好ましくは、フルチカゾンフランカルボン酸エステル;モメタゾン、好ましくは、モメタゾンフランカルボン酸エステルを含む。1つの態様では、方法は、液体エーロゾルの存在下において、モメタゾン(好ましくは、モメタゾンフランカルボン酸エステル)をジェットミルすることを含む。
【0045】
適切な抗コリン薬は、アクリジニウム、好ましくは、アクリジニウム臭化物;グリコピロニウム、好ましくは、グリコピロニウム臭化物;イプラトロピウム、好ましくは、イプラトロピウム臭化物;オキシトロピウム、好ましくは、オキシトロピウム臭化物;チオトロピウム、好ましくは、チオトロピウム臭化物;ウメクリジニウム、好ましくは、ウメクリジニウム臭化物;臭化ダロトロピウム;またはタラフェナシンを含む。
【0046】
活性材料は、たとえば、サルメテロールキシナホ酸塩およびフルカチゾンプロピオン酸エステル;ブデソニドおよびホルモテロールフマル酸塩二水和物グリコピロレートおよびインダカテロールマレイン酸塩;グリコピロレート、インダカテロールマレイン酸塩、およびモメタゾンフランカルボン酸エステル;フルチカゾンフランカルボン酸エステルおよびビランテロール;ビランテロールおよびウムクリジニウム臭化物;フルチカゾンフランカルボン酸エステル、ビランテロール、およびウムクリジニウム臭化物などのような2重または3重の組合せを含むことが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 吸入器
2 シェルパーツ
3 シェルパーツ
4 マウスピースカバー
5 マウスピース
11 オリフィス
12 壁部
13 スロット
40 モニター
41 クリップ
42 圧力センサー
44 外部光学センサー
46 内部光学センサー
81 スイッチ
82 スイッチ
91 カム
92 カム
100 モニター
110 吸入器
130 アクチュエーターボタン
140 スイッチ
200 モニター
210 吸入器
220 カバー
240 スイッチ
250 透明なセクション
300 モニター
310 吸入器
320 カバー
330 アクチュエーターレバー
340 温度センサー