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特許7509892付加製造物品の層内と層間の接着を改善する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】付加製造物品の層内と層間の接着を改善する方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/118 20170101AFI20240625BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20240625BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20240625BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240625BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240625BHJP
【FI】
B29C64/118
B29C64/314
B29C64/153
B33Y10/00
B33Y70/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022544110
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(86)【国際出願番号】 US2021019393
(87)【国際公開番号】W WO2021173652
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-11-04
(31)【優先権主張番号】62/981,854
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/981,937
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/985,007
(32)【優先日】2020-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514073570
【氏名又は名称】ジャビル インク
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】フライ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ロジャース,ルーク
(72)【発明者】
【氏名】ピーターソン,ザッカリー
(72)【発明者】
【氏名】レッシュ,レヴィ
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-517590(JP,A)
【文献】特表2016-532579(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107652671(CN,A)
【文献】Damien Rasselet et.al.,Reactive Compatibilization of PLA/PA11 Blends and Their Application in Additive Manufacturing,MATERIALS,2019年,Vol.12 issue 3 485,1-18
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造方法であって、
(i)縮合ポリマーを加熱して、有向の加熱の印加により融合された第1の層を形成し、それによって、該第1の層内の該縮合ポリマーを融合する工程、および
(ii)前記縮合ポリマーのそれに続く層を連続して堆積し、加熱して、該層内と該層間でそのようなそれに続く層を融合する工程であって、該縮合ポリマーの少なくとも一部が、中に物理的に混合されたまたはその上に堆積された鎖延長剤を有し、鎖延長剤のいずれも、前記加熱する工程の前に、該縮合ポリマーと反応していない工程、
を有してなる方法。
【請求項2】
前記鎖延長剤が、エポキシド、無水物またはカルボン酸からなる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記縮合ポリマーが、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートまたはその組合せである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記縮合ポリマーが、フィラメントまたは粉末に形成され、前記鎖延長剤で被覆される、請求項1から3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記縮合ポリマーが少なくとも2つの化学的に異なる縮合ポリマーからなる、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記縮合ポリマーがポリアミドとポリエステルからなり、その一方または両方が、前記鎖延長剤で被覆または物理的に混合されている、請求項4記載の方法。
【請求項7】
付加製造方法であって、
(i)縮合ポリマーを加熱して、有向の加熱の印加により融合される第1の層を形成し、それによって、該第1の層内の該縮合ポリマーを融合する工程、および
(ii)前記縮合ポリマーのそれに続く層を連続して堆積し、加熱して、該層内と該層間でそのようなそれに続く層を融合する工程であって、該縮合ポリマーは、鎖延長剤で端部がキャッピングされた第1の縮合ポリマーと、第2の縮合ポリマーとからなり、該鎖延長剤は、該第1の縮合ポリマーと1の官能価を、該第2の縮合ポリマーと2以上の官能価を有する、工程、
を有してなる方法。
【請求項8】
前記第1の縮合ポリマーがポリアミドであり、前記第2の縮合ポリマーがポリエステルである、請求項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縮合ポリマーの付加製造に関する。特に、本発明は、付加製造中に鎖を延長させる縮合ポリマー(例えば、ポリアミドおよびポリエステル)に関する。
【背景技術】
【0002】
押出し、フイルムブロー成形、射出成形などの従来の方法によって造形品を形成するために、縮合ポリマーが使用されてきた。これらの過程において、ポリマーは、溶融され、実質的に剪断されて、ポリマーの開裂と分子量の未制御の損失が結果としてもたらされ、造形品(例えば、ブロー成形ボトルおよび押出管)の形成中に変形を生じる。一般に、それぞれ、特許文献1および2においてポリエステルおよびポリエチレンテレフタレートについて記載されているように、分子量の損失を元に戻して、十分に高い溶融強度および溶融粘度を実現するために、鎖延長剤が添加される。
【0003】
熱可塑性ポリマーの付加製造では、典型的に、層状パターンの局部溶融を必要とし、この溶融により、その後、続く層が融合され、支持される。加熱されたノズルに引き込まれ、溶融され、次いで押し出される熱可塑性フィラメントを使用し、押し出されたフィラメントが冷却の際に互いに融合することによって、3D部品を形成するために、一般に、プラスチックジェットプリンティングとも呼ばれる溶融フィラメント製造(FFF)が使用されてきた(例えば、特許文献3および4を参照のこと)。
【0004】
同様に、粉末床内の粉末を選択的に焼結することによって、3D部品を製造するために、選択的レーザ焼結または溶融(SLSまたはSLM)が使用されてきた(例えば、特許文献5を参照のこと)。この方法において、高温に維持された粉末床は、COレーザまたは他の電磁放射線源を使用して選択的に焼結される。最初の層が一旦焼結されたら、さらなる粉末層が計量しながら供給され、所望の3D部品が製造されるまで、選択的焼結が繰り返される。粉末を焼結または溶融しなければならないので、SLSは、反りやスランピングなく焼結を行い、特に層間に所望の融合を達成できるようにする非常に際だった特徴を有する熱可塑性ポリマーの使用および複雑な装置の必要性により制限されてきた。
【0005】
局部加熱および製造されている部品が形成されている間にそれ自体を支持する必要性のために、層内、および特に層間の結合の強度は、一般に、モノリスの成形(例えば、射出成形)塊から形成された部品よりも低い。加熱を局所化し、溶融し、形成されている部品を支持するための十分な強度を取り戻す能力により決定される制約のために、層内と層間の強度(Z方向または構築方向の強度と称される)は、全方向に高性能の機械的性質を要求する付加製造部品にとって問題となってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第4246378号明細書
【文献】米国特許第7544387号明細書
【文献】米国特許第5121329号明細書
【文献】米国特許第5503785号明細書
【文献】米国特許第5597589号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、特にZ方向または構築方向における、ポリアミドなどの熱可塑性ポリマーの付加製造部品の性質を改善する方法を提供することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
層内、および特に層間の、ポリアミドおよびポリエステルなどの縮合ポリマーの接着を改善する付加製造方法が発見された。この方法は、異なる縮合ポリマーであって、そのような異なるポリマーの層内、または層間で十分に接着しないことがある縮合ポリマーを3D印刷するためにも使用することができる。
【0009】
本発明の第1の態様は、付加製造方法であって、
(i)縮合ポリマーを加熱して、有向の加熱の印加により融合された第1の層を形成し、それによって、その第1の層内の縮合ポリマーを融合する工程、および
(ii)縮合ポリマーのそれに続く層を連続して堆積し、加熱して、層内と層間でそのようなそれに続く層を融合する工程であって、縮合ポリマーの少なくとも一部が、中に混合されたまたはその上に堆積された鎖延長剤を有する工程、
を有してなる方法である。
【0010】
本発明の第2の態様は、鎖延長剤がその中で物理的に混合された、またはその上に堆積された縮合ポリマーフィラメントまたは粉末を含む、付加製造に有用な組成物である。
【0011】
本発明の第3の態様は、縮合ポリマーおよび鎖延長剤の複数の層からなる物品であって、それらの層は互いに融合され、鎖延長剤は、層内よりも、層間で高濃度で存在する、物品である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここに提示された説明および解説は、当業者に本発明、その原理、およびその実用的応用を知らせることが意図されている。記載された本開示の具体的な実施の形態は、網羅的である、または本開示の範囲を限定することを意図していない。
【0013】
前記方法は、付加製造プロセスで縮合ポリマーを加熱して、第1とその後の層を形成する工程を含む。付加製造プロセスは、層内と層間でポリマーを融合するために加熱を利用するどのようなプロセスであってもよい。説明に役立つ例としては、溶融フィラメント製造(FFF)、熱溶解積層法(FDM)、直接ペレット押出((direct pellet extrusion)DPE)、および選択的レーザ焼結(SLS)およびマルチジェットフュージョン(MJF)などの粉末床方法が挙げられる。一例として、FFFの場合、FFF用フィラメントは、フィラメント押出プロセス中に小分子で被覆されることがある。同様に、本開示は、その材料が大規模付加製造((big area additive manufacturing)BAAM)に使用される、直接ペレット押出特性に適用できる。本発明の方法およびポリマーは、直接ペレット押出に使用するのに特に有用であり、これらは、典型的に、それに続く層の各々の堆積の間の部品のより大規模でより大掛かりな冷却に基づく。
【0014】
加熱中の縮合ポリマーは、その中に混合された、またはその上に堆積された鎖延長剤を有する。ここでの混合されたとは、鎖延長剤が、縮合ポリマーと実質的に物理的に混合されていることを意味する。言い換えると、鎖延長剤の多くとも約10質量%しか、縮合ポリマーまたは縮合ポリマー中に存在するであろう任意の他の添加剤と反応していない。鎖延長剤の多くとも1質量%しか反応していないことが望ましく、さらに、鎖延長剤のいずれも反応していないことが望ましい。鎖延長剤の混合は、鎖延長剤が縮合ポリマーとどの大きい程度までも反応できる温度より低い温度で、適切な方法を利用してもよい。例示の混合方法は、粉末を混合する公知の方法(例えば、マラー、リボンブレンダー、V型ミキサーまたは高強度ミキサー)または混練押出機であってよい。
【0015】
層を堆積させる工程は、同じ縮合ポリマーを利用しても、または複数の縮合ポリマーを利用してもよい。例えば、層内または別々の層中で、複数の縮合ポリマーが堆積されることがある。特別な実施の形態において、縮合ポリマーは、鎖延長剤で端部がキャッピングされた第1の縮合ポリマーおよび第2の縮合ポリマーからなり、その鎖延長剤は、第1の縮合ポリマーに関する1の官能価および第2の縮合ポリマーに関する2以上の官能価を有する。官能価は、下記に記載されている。
【0016】
ある実施の形態において、鎖延長剤は、溶媒内に溶解される、もしくは鎖延長剤またはポリマーと反応しない溶媒内に分散されることがあり、それには、例えば、水または低分子アルコール(例えば、メタノール、エタノールまたはイソプロピルアルコール)、炭化水素(例えば、ヘキサン、ヘプタンなど)、または縮合ポリマーで被覆するまたはそれと混合するために後で使用される他の容易に蒸発する溶媒が含まれることがある。ある実施の形態において、鎖延長剤は、付加製造プロセス中に形成されているそれに続く層の上に別々に堆積されることがある。そのような堆積は、噴霧などにより行うことができる。特別な実施の形態において、縮合ポリマーは、フィラメントの形態にあることがあり、フィラメントは、次いで、形成されているときに、例えば、それに鎖延長剤の溶液、ディスパージョンを噴霧することにより、または出てくるフィラメントに鎖延長剤を環式噴霧/静電塗装することにより、もしくは任意の冷却装置(冷却浴または送風機)と組み合わせて、被覆される。あるいは、出てくる縮合ポリマーフィラメントは、鎖延長剤の溶液、ディスパージョンまたは流動化粉末床に通して、線引きされることがある。
【0017】
鎖延長剤は、付加製造中に縮合ポリマーを融合するために使用される温度よりも十分に高い沸点を有する、液体であっても、固体であってもよいが、固体であることが好ましい。説明すると、沸点は、少なくとも約250℃、275℃、300℃であることが望ましいであろう。
【0018】
縮合ポリマーは、当業者に公知で市販のものなど、どの適切な縮合ポリマーであってもよい。有用なポリマーの例としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアセタールまたはその組合せが挙げられる。ポリマーが、ポリアミド、ポリエステル、またはポリカーボネートであることが望ましい。縮合ポリマーは、直鎖状であっても、分岐していてもよい。縮合ポリマーが直鎖状であることが望ましい。ポリアミドの例としては、ポリアミド6、ポリアミド6/66共重合体、ポリアミド6/66/12共重合体、およびポリアミド6/12共重合体などの宇部興産株式会社から入手できるものが挙げられる。ポリエステルの例としては、ポリエチレンテレフタレートおよび商標名CELANEXでCelaneseから入手できるものなど、他の市販のポリエステルが挙げられる。ポリカーボネートの例としては、商標名CALIBREでTrinseo S.A.から入手できるものが挙げられる。ポリエステルの例としては、LASERおよびARRAYの商標名でAlpek S.A.B.から入手できるものなどの、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)が挙げられる。
【0019】
鎖延長剤は、縮合ポリマーと反応し、延長させるのに有用な、どの鎖延長剤であってもよい。鎖延長剤の例としては、エポキシド、カルボン酸、アルコール、無水物、アミン、イソシアネート、アジリジン、オキサゾリン、または亜リン酸エステルからなるものが挙げられる。
【0020】
鎖延長剤は、異なる縮合ポリマーと2回以上反応して、特定の縮合ポリマーを延長させる能力を有することができる、および/または付加製造プロセス中に異なる縮合ポリマーを接続できると理解されよう。例えば、無水物は、ポリアミドを端部キャッピングする(1の官能価)のに特に有用であり、ここに引用される、Thomas Fry等の「CHAIN SCISSION TO MAKE IMPROVED POLYMERS FOR 3D PRINTING」と題する、同時に出願された同時継続出願に記載されており、この無水物は、ポリエステルと2回反応することができる(2の官能価)。
【0021】
この同時継続出願において、縮合ポリマーは、それにより縮合ポリマーが開裂され、端部キャッピング化合物により端部がキャッピングされる熱に先に曝されており、この端部キャッピング化合物は、ここに記載された鎖延長剤または他の縮合ポリマーと反応性である(例えば、ポリアミドは、端部がキャッピングされているが、ここに記載されたように一緒に付加製造される場合、ポリエステルと反応性である)。そのような挙動を示す例示の無水物としては、無水フタル酸、無水テトラブロモフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水スルホフタル酸、無水トリメリット酸、無水1,8-ナフタル酸が挙げられる。
【0022】
ある実施の形態において、ポリアミドとポリエステルの混合物が使用されることがあり、この場合、ポリアミドは、層内または別々の層中にあり、端部がキャッピングされ、ポリアミドとポリエステルからなる層内のポリエステルで延長されることがある。同様に、ポリアミドの別々の層が、鎖延長剤を通じて、別のポリエステル層と結合されることがある。端部キャッピング化合物は、難燃性、紫外線抵抗性、もしくは異なるポリマーまたは反応基とのさらなる反応を経る能力のような他の機能性など、所望の特性または特徴を与える有用な化学基を導入することもできる。
【0023】
実例として、左側のPETは、無水ピロメリット酸(PMDA)と2回反応し(二官能性)、続いて、架橋する(四官能性)ことができる。
【0024】
【化1】
【0025】
ポリエステルとポリアミドの官能価を有する以下の鎖延長剤が、実例として示されている。
【0026】
【表1】
【0027】
鎖延長剤は、当該技術分野に公知であり、以下の高分子鎖延長剤により示されるようなものなど、適切な高分子鎖延長剤であってもよい。
【0028】
【表2】
【0029】
先に記載されたような鎖延長剤は、使用する特定の縮合ポリマーに応じて、異なる官能価を有することがある。鎖延長剤の官能価は2から4であり、縮合ポリマーの少なくとも1つが、付加製造中に所望の鎖延長および結合を実現することが望ましい。
【0030】
ある実施の形態において、鎖延長剤は、固体であり、粉末の形態にある。鎖延長剤は、例えば、SLSに使用するための、粉末である縮合ポリマーと混合されることが望ましく、鎖延長剤の粉末は、縮合ポリマー粒子の粒径よりも小さい。先に記載されたように、鎖延長剤は、溶かされるかまたは分散され、混合されることがあり、溶媒は、溶液またはディスパージョン(スラリー)から堆積するための公知のどの方法によって除去されてもよい。縮合ポリマー粉末、フィラメント、ペレットなどは、層内と層間に所望の結合を実現するのに十分な鎖延長剤がある限り、鎖延長剤により完全に被覆されても、一部が被覆されてもよく、その量は、典型的に質量で要求される量に関して、下記に記載されている。縮合ポリマー粉末を鎖延長剤粉末で被覆するために、例えば、V型ミキサー、マラーミキサー、リボンブレンダー、および高強度ミキサー(例えば、MicronNobilta High Intensity Mixer)を含む、当該技術分野に公知のものなど、どの適切な乾燥粉末ミキサーを使用してもよい。
【0031】
典型的に、鎖延長剤粉末は、固体である場合、平均粒径または最大値(D100)または(D90)を有し、これは、すなわち、粉末平均粒径、最小サイズ(D)または(D10)(すなわち、さらに下記に記載されているレーザ回折法、画像解析などの公知の技術により測定される相当球径)のサイズの多くとも1/2、1/4、または1/10である。その上、鎖延長粒子の平均サイズまたは最大粒子(D100)は、縮合ポリマーフィラメントの直径または縮合ポリマーペレットの最小平均寸法と比べて、同様に小さい。
【0032】
フィラメントのサイズは、FFFに使用する縮合ポリマーに適したどのサイズであってもよく、典型的に、約0.1mmから約3、2、1、または0.5mmであることがある。縮合ポリマーのSLSに有用な典型的な粉末サイズは、体積で、約1マイクロメートル(μm)、10μm、20μmまたは30μmから、150μm、125μm、100μmまたは90μmの(D50)であることがある。同様に、粉末の一貫した加熱と融合を可能にするために、体積で、多くとも300μm、200μmまたは150μmのD90、および少なくとも0.1μm、0.5μmまたは1μmのD10を有することが望ましい。D90は、粒子の90体積%がそのサイズ以下である、粒径分布における粒径(相当球径)を意味する。同様に、D50は、粒子の少なくとも50体積%がそのサイズより小さい、粒径分布における粒径(相当球径)を意味し、D10は、粒子の少なくとも10体積%がそのサイズより小さい、粒径分布における粒径(相当球径)を意味する。粒径は、例えば、レーザ回折または十分な数の粒子(約100から約200の粒子)の顕微鏡写真の画像解析を含む、当該技術分野に公知のものなど、どの適切な方法により決定してもよい。代表的なレーザ回折計に、Microtrac S3500などのMicrotracにより製造されるものがある。
【0033】
鎖延長剤は、付加製造物品の所望の特徴に応じて有用である、どの量で使用してもよい。典型的に、その量は、縮合ポリマーおよび鎖延長剤の約0.001質量%、0.01質量%、0.1質量%から約5質量%、3質量%または2質量%までであることがある。
【0034】
付加製造物品を形成する場合、その物品は、鎖延長剤を使用せずに製造された同じ縮合ポリマーと比べて改善されたZ方向強度を有する。典型的に、その強度は、少なくとも約10%、20%、30%または50%増加している。
【0035】
縮合ポリマーをどの有用な添加剤と混合して、当該技術分野で公知のものなどの物品を製造してもよい。説明すると、縮合ポリマーは、物品を製造するときに有用であり得るさらに別の成分と混合することができる。さらに別の成分は、1種類以上の染料、顔料、強化剤、レオロジー改質剤、充填剤、補強剤、増粘剤、乳白剤、阻害剤、蛍光マーカー、熱分解低下剤、耐熱性付与剤、界面活性剤、湿潤剤、または安定剤であってよい。
【0036】
ある実施の形態において、縮合ポリマーは、充填剤と混合される(例えば、溶融され、乾燥配合された充填剤とブレンドされる)。充填剤は、当該技術分野で公知のものなど、どの有用な充填剤であってもよい。充填剤の例としては、セラミック、金属、炭素(例えば、グラファイト、カーボンブラック、グラフェン)、印刷温度で溶融も、分解もしない高分子微粒子(例えば、架橋した高分子微粒子、加硫ゴム微粒子など)、植物系充填剤(例えば、木材、堅果の殻、穀物および籾殻の粉または粒子)が挙げられる。例示の充填剤としては、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、珪灰石、粘土、硫酸カルシウム、マイカ、無機ガラス(例えば、シリカ、アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、アルカリアルミノケイ酸塩など)、酸化物(例えば、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、シリカ「石英」、およびカルシア)、炭化物(例えば、炭化ホウ素および炭化ケイ素)、窒化物(例えば、窒化ケイ素、窒化アルミニウム)、酸窒化物、酸炭化物の組合せ、またはそれらの組合せが挙げられる。特定の実施の形態において、充填剤は、タルク、粘土鉱物、細断無機ガラス、金属、または炭素繊維、ムライト、マイカ、珪灰石、もしくはその組合せなどの針状充填剤を含む。特別な実施の形態において、充填剤はタルクまたは珪灰石からなる。
【0037】
充填剤の量は、付加製造物品などの物品を製造するのにどの有用な量であってもよい。例えば、充填剤は、縮合ポリマー、充填剤および任意の他の成分の20質量%、30質量%、40質量%、または50質量%から90質量%の量で存在することがある。
【0038】
ある実施の形態において、鎖延長剤は、縮合ポリマーに用いられた充填剤の表面反応基とも反応することがあり、これは、付加製造物品において所望の性質(例えば、剛性および強度)を実現するのに役立つことがある。説明すると、充填剤粒子の表面は、無機ケイ質充填剤に一般的に見られるような、ヒドロキシル基(例えば、Si-OH)からなることがある。説明すると、これらは、下記に示されるように、鎖延長剤と反応することができる。
【0039】
【化2】
【0040】
前記方法は、SLSなどの付加製造プロセスに使用される縮合ポリマーを元の状態に戻すためにも使用することができる。SLSには、溶融温度をわずかに下回る高温で保持すべき粉末床が必要であるので、焼結されない粉末の使用は、SLSプロセスに再利用される場合、うまく機能しないことがある。これらの粉末は、ここに記載されたような鎖延長剤と混合またはそれで被覆することによって、元の状態に戻り、その後、例えば、SLSプロセスに使用できることが分かった。
【0041】
ある実施の形態において、付加製造物品は、それらの層が互いに結合されている場合、より高濃度の鎖延長剤を示す。例えば、層が結合されている場所にある層の深さの10%以内では、鎖延長剤の濃度は、バルク層の鎖延長剤の濃度よりも、少なくとも5%、10%、またさらには20%高いことがある。そのような勾配は、以下に限られないが、NMR、赤外、ラマンなどを含む、公知のセクショニングおよび化学的湿式または分光技術により決定することができる。
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
実施形態1
付加製造方法であって、
(i)縮合ポリマーを加熱して、有向の加熱の印加により融合された第1の層を形成し、それによって、該第1の層内の該縮合ポリマーを融合する工程、および
(ii)前記縮合ポリマーのそれに続く層を連続して堆積し、加熱して、該層内と該層間でそのようなそれに続く層を融合する工程であって、該縮合ポリマーの少なくとも一部が、中に混合されたまたはその上に堆積された鎖延長剤を有する工程、
を有してなる方法。
実施形態2
前記鎖延長剤が、エポキシド、カルボン酸、アルコール、無水物、アミン、イソシアネート、アジリジン、オキサゾリン、または亜リン酸エステルからなる、実施形態1に記載の方法。
実施形態3
前記鎖延長剤が、エポキシド、無水物またはカルボン酸からなる、実施形態1または2に記載の方法。
実施形態4
前記鎖延長剤が、エポキシドまたは無水物からなる、実施形態3に記載の方法。
実施形態5
前記縮合ポリマーが、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアセタールまたはその組合せからなる、実施形態1から4いずれか1つに記載の方法。
実施形態6
前記縮合ポリマーが、前記ポリアミド、前記ポリエステル、前記ポリカーボネートまたはその組合せである、実施形態5に記載の方法。
実施形態7
前記縮合ポリマーが、フィラメントに形成され、前記鎖延長剤で被覆される、実施形態1から6いずれか1つに記載の方法。
実施形態8
前記縮合ポリマーが、粉末に形成され、前記鎖延長剤で被覆される、実施形態1から6いずれか1つに記載の方法。
実施形態9
前記鎖延長剤が、無水テトラブロモフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、無水1,8-ナフタル酸、無水物フタル酸、無水スルホフタル酸、フェニレンビスオキサゾリン、ピロメリット酸二無水物、またはビスフェノールA-ジグリシジルエーテルテトラエポキシドテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンの内の1つ以上からなる、実施形態1から8いずれか1つに記載の方法。
実施形態10
前記鎖延長剤が、2から4の官能価を有する、実施形態1から9いずれか1つに記載の方法。
実施形態11
前記鎖延長剤の量が、前記縮合ポリマーおよび該鎖延長剤の0.01質量%から5質量%である、実施形態1から10いずれか1つに記載の方法。
実施形態12
前記付加製造方法が、粉末床付加製造方法、溶融フィラメント製造、または直接ペレット押出である、実施形態1から11いずれか1つに記載の方法。
実施形態13
前記縮合ポリマーが、充填剤を、該ポリマーおよび該充填剤の少なくとも約25質量%から90質量%の量で有する、実施形態1から12いずれか1つに記載の方法。
実施形態14
前記縮合ポリマーが少なくとも2つのポリマーからなり、これらのポリマーの内の少なくとも1つがこれらのポリマー内の別のものと異なる、実施形態1から13いずれか1つに記載の方法。
実施形態15
前記異なる縮合ポリマーが化学的に異なる、実施形態14に記載の方法。
実施形態16
前記縮合ポリマーがポリアミドとポリエステルからなり、その一方または両方が、前記鎖延長剤で被覆または混合されている、実施形態1から15いずれか1つに記載の方法。
実施形態17
前記ポリアミドとポリエステルが、前記鎖延長剤で被覆されたフィラメントである、実施形態16に記載の方法。
実施形態18
前記付加製造方法がFFFである、実施形態16または17に記載の方法。
実施形態19
前記縮合ポリマーが、第1の縮合ポリマーであって、それにより該縮合ポリマーが開裂され、該第1の縮合ポリマーとの1の官能価を有する鎖延長剤で端部がキャッピングされる熱に以前に曝された第1の縮合ポリマーと、前記第1の縮合ポリマーの端部をキャッピングする前記鎖延長剤と反応できる第2の縮合ポリマーとからなる、実施形態1から18いずれか1つに記載の方法。
実施形態20
前記鎖延長剤が、前記縮合ポリマー上に別々に堆積される、実施形態1から19いずれか1つに記載の方法。
実施形態21
前記鎖延長剤が、前記縮合ポリマーを加熱する工程の前に、該縮合ポリマー内に混合されるか、またはその上に堆積される、実施形態1から19いずれか1つに記載の方法。
実施形態22
実施形態1から21いずれか1つに記載の方法により製造された付加製造物品。
実施形態23
鎖延長剤がその中に物理的に混合された、またはその上に堆積された縮合ポリマーフィラメントまたは粉末から作られた、付加製造に有用な組成物。
実施形態24
前記縮合ポリマーが、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアセタールまたはその組合せからなる、実施形態22に記載の組成物。
実施形態25
前記縮合ポリマーが、前記ポリアミド、前記ポリエステル、前記ポリカーボネートまたはその組合せである、実施形態24に記載の組成物。
実施形態26
前記鎖延長剤が、エポキシド、カルボン酸、アルコール、無水物、アミン、イソシアネート、アジリジン、オキサゾリン、または亜リン酸エステルからなる、実施形態22から25いずれか1つに記載の組成物。
実施形態27
前記鎖延長剤が、エポキシド、無水物またはカルボン酸からなる、実施形態26に記載の組成物。
実施形態28
前記鎖延長剤が、エポキシドまたは無水物からなる、実施形態27に記載の組成物。
実施形態29
前記鎖延長剤が前記無水物からなる、実施形態28に記載の組成物。
実施形態30
前記鎖延長剤が、前記縮合ポリマーおよび該鎖延長剤の0.01質量%から5質量%の量で存在する、実施形態22から29いずれか1つに記載の組成物。
実施形態31
前記鎖延長剤が周囲条件で固体である、実施形態22から30いずれか1つに記載の組成物。
実施形態32
前記鎖延長剤が、前記縮合ポリマー内に物理的に混合された、またはその上に堆積された粉末である、実施形態22から31いずれか1つに記載の組成物。
実施形態33
前記縮合ポリマーが粉末またはフィラメントであり、前記鎖延長剤が、該縮合ポリマーの粉末の平均サイズの多くとも1/4、または該縮合ポリマーのフィラメントの直径の多くとも1/4である平均粒径を有する、実施形態22から32いずれか1つに記載の組成物。
実施形態34
前記鎖延長剤が、前記縮合ポリマーの粉末のD 10 サイズの多くとも1/4、または前記縮合ポリマーのフィラメントの直径の多くとも1/4であるD 90 サイズを有する、実施形態33に記載の組成物。
実施形態35
前記鎖延長剤が、前記フィラメントの直径の約1/4より大きい粒子を実質的に有さない、実施形態32または34に記載の組成物。
実施形態36
縮合ポリマーおよび鎖延長剤の複数の層からなる物品であって、該層は互いに融合され、該鎖延長剤は、該層内よりも該層間でより高い濃度で存在する、物品。
実施形態37
付加製造方法であって、
(i)縮合ポリマーを加熱して、有向の加熱の印加により融合される第1の層を形成し、それによって、該第1の層内の該縮合ポリマーを融合する工程、および
(ii)前記縮合ポリマーのそれに続く層を連続して堆積し、加熱して、該層内と該層間でそのようなそれに続く層を融合する工程であって、該縮合ポリマーは、鎖延長剤で端部がキャッピングされた第1の縮合ポリマーと、第2の縮合ポリマーとからなり、該鎖延長剤は、該第1の縮合ポリマーと1の官能価を、該第2の縮合ポリマーと2以上の官能価を有する、工程、
を有してなる方法。
実施形態38
前記鎖延長剤が、前記第2の縮合ポリマーと2から4の官能価を有する、実施形態37に記載の方法。
実施形態39
前記第1の縮合ポリマーがポリアミドであり、前記第2の縮合ポリマーがポリエステルである、実施形態37または38に記載の方法。
実施形態40
前記鎖延長剤が無水物からなる、実施形態37から39いずれか1つに記載の方法。
実施形態41
前記鎖延長剤が、無水フタル酸、無水テトラブロモフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水スルホフタル酸、無水トリメリット酸、無水1,8-ナフタル酸、またはその組合せである、実施形態37から40いずれか1つに記載の方法。
実施形態42
前記第1の縮合ポリマーおよび前記第2の縮合ポリマーが別々の層で堆積される、実施形態37から41いずれか1つに記載の方法。