(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】波形表示装置
(51)【国際特許分類】
G05B 19/406 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
G05B19/406 Z
(21)【出願番号】P 2022546328
(86)(22)【出願日】2021-08-31
(86)【国際出願番号】 JP2021031857
(87)【国際公開番号】W WO2022050254
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2020149974
(32)【優先日】2020-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】手塚 淳一
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-022688(JP,A)
【文献】特開2016-207156(JP,A)
【文献】国際公開第2013/118179(WO,A1)
【文献】特開2003-330512(JP,A)
【文献】特開2021-096525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B19/18-19/416
G05B19/42-19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械を制御する制御装置から、前記工作機械の駆動軸のモータ位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記工作機械の前記駆動軸の軸構成を示す軸情報を設定する軸情報設定部と、
前記位置情報取得部により取得された前記モータ位置情報及び前記軸情報設定部に設定された前記軸情報に基づいて、前記工作機械に装着された工具の
進行方向に沿う複数の工具先端点
の座標から、ワークの加工面である基準面に対する前記工具先端点の垂直方向の距離を求め、それぞれの前記工具先端点を結ぶ線によって、前記工具先端点の軌跡を算出し
、前記加工面の凹凸情報を表す複数の並列する波形
線として表示する工具軌跡表示部と、
前記工具軌跡表示部によって表示された前記工具先端点の軌跡に関する分析対象位置を
、前記複数の並列する波形
線に対して、1点以上の点、もしくは複数の点を結ぶ線分として設定する分析対象設定部と、
前記分析対象設定部によって設定された前記分析対象位置を含む立体からなる分析対象範囲を生成して表示する分析対象範囲生成部と、
前記分析対象範囲生成部によって生成された前記分析対象範囲に含まれる測定点を、前記工具先端点の軌跡の中から選別して
拡大表示する測定点選別部と、を備える波形表示装置。
【請求項2】
前記分析対象範囲は、前記工具の進行方向ベクトルに沿う方向を縦、前記進行方向ベクトルと前記工具の工具ベクトルとに対して垂直な方向を横、前記縦及び前記横によって形成される面に垂直な方向を高さとする立体である、請求項1
に記載の波形表示装置。
【請求項3】
前記分析対象範囲は、直方体形状である、請求項
2に記載の波形表示装置。
【請求項4】
前記分析対象範囲の表面は曲面である、請求項
2に記載の波形表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波形表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械は、加工プログラムに基づく数値制御装置からの指令に応じて工具を移動させ、ワークに対する切削加工を行う。切削加工では、工具先端点がワークの加工面に対して描く軌跡が、加工品質に直接影響する。そのため、従来、加工プログラムから加工軌跡データを生成して画面表示させ、設計通りの加工動作が実現できるか否かを目視確認できるようにすることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
工具の動きがワークの加工面に与える影響を分析する場合は、工具先端点の軌跡上の複数の測定点の中から、分析対象となる測定点を含む範囲を指定する必要がある。しかしながら、ワークの加工面上において、分析対象となる測定点を含む範囲は時間的に不連続であるため、単純な操作で範囲を指定することが難しい。
【0005】
そこで、工具軌跡に関して分析したい位置を選択するだけで、分析対象の範囲を簡単に指定できるようにすることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、工作機械を制御する制御装置から、前記工作機械の駆動軸のモータ位置情報を取得する位置情報取得部と、前記工作機械の前記駆動軸の軸構成を示す軸情報を設定する軸情報設定部と、前記位置情報取得部により取得された前記モータ位置情報及び前記軸情報設定部に設定された前記軸情報に基づいて、前記工作機械に装着された工具の工具先端点の軌跡を算出して波形として表示する工具軌跡表示部と、前記工具軌跡表示部によって表示された前記工具先端点の軌跡に関して分析対象位置を設定する分析対象設定部と、前記分析対象設定部によって設定された前記分析対象位置を含む立体からなる分析対象範囲を生成して表示する分析対象範囲生成部と、前記分析対象範囲生成部によって生成された前記分析対象範囲に含まれる測定点を、前記工具先端点の軌跡の中から選別して表示する測定点選別部と、を備える波形表示装置である。
【発明の効果】
【0007】
一態様によれば、工具軌跡に関して分析したい位置を選択するだけで、分析対象の範囲を簡単に指定できる波形表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る数値制御システムの機能的構成例を示す機能ブロック図である。
【
図2】工具先端点と基準面との関係の一例を示す図である。
【
図3】工具先端点の軌跡に関する分析対象位置を含む立体からなる分析対象範囲の一例を模式的に示す図である。
【
図4】波形表示装置の表示処理を示すフローチャートである。
【
図5】分析対象範囲が表示された画面の一例を示す図である。
【
図6】分析対象範囲内の測定点が選別して表示された画面の一例を示す図である。
【
図7】湾曲した分析対象範囲の一例を示す図である。
【
図8】表面が楕円球面からなる分析対象範囲の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一実施形態について図面を用いて説明する。
図1に示すように、数値制御システムは、工作機械100と、数値制御装置200と、波形表示装置300と、を有する。これらの工作機械100、数値制御装置200及び波形表示装置300は、図示しない接続インターフェースを介して互いに直接接続される。また、これらの工作機械100、数値制御装置200及び波形表示装置300は、LAN(Local Area Network)やインターネット等の図示しないネットワークを介して相互に接続されてもよい。
【0010】
工作機械100は、数値制御装置200の数値制御によって動作する1つ以上のサーボモータを含む駆動軸(図示せず)を有する。工作機械100は、数値制御装置200の動作指令に基づく動作状態を示す情報を数値制御装置200にフィードバックする。動作状態を示す情報は、駆動軸の位置を示すサーボモータの位置情報(以下、モータ位置情報という。)を含む。モータ位置情報は、具体的には、数値制御装置200からサーボモータに対して出力されるモータ指令位置の情報と、そのモータ指令位置によってサーボモータが駆動したときのモータ実位置の情報と、を含む。
【0011】
数値制御装置200は、工作機械100の動作を制御する。この数値制御装置200は、当業者にとって公知の制御装置である。
【0012】
波形表示装置300は、位置情報取得部301、軸情報設定部302、工具軌跡表示部303、分析対象設定部304、分析対象範囲生成部305、及び測定点選別部306を有する。
【0013】
なお、波形表示装置300は、
図1の機能ブロックの動作を実現するために、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置(図示せず)を備える。さらに、波形表示装置300は、各種の制御用プログラムを格納したROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)等の補助記憶装置(図示せず)、及び、演算処理装置がプログラムを実行する際に一時的に必要とされるデータを格納するためのRAM(Random Access Memory)等の主記憶装置(図示せず)を備える。
【0014】
波形表示装置300において、演算処理装置は、補助記憶装置からOSやアプリケーションソフトウェアを読み込み、読み込んだOSやアプリケーションソフトウェアを主記憶装置に展開させながら、これらのOSやアプリケーションソフトウェアに基づいた演算処理を行う。この演算結果に基づいて、波形表示装置300が各ハードウェアを制御する。これによって、
図1の機能ブロックによる処理は実現される。つまり、波形表示装置300の各機能は、ハードウェアとソフトウェアとが協働することによって実現される。
【0015】
位置情報取得部301は、ワークの加工中における工作機械100の駆動軸の位置を示すモータ位置情報を数値制御装置200から、所定の周波数でサンプリングして取得する。位置情報取得部301は、取得したモータ位置情報を工具軌跡表示部303に出力する。
【0016】
軸情報設定部302には、工作機械100の駆動軸の軸構成を示す軸情報が設定される。軸情報には、工作機械100に装着される工具の種類、工具の長さ、工具の形状等の情報が含まれる。軸情報設定部302は、軸情報を工具軌跡表示部303に出力する。
【0017】
工具軌跡表示部303は、位置情報取得部301により取得されたモータ位置情報と、軸情報設定部302により取得された軸情報とに基づいて、工具先端点の軌跡を算出する。工具先端点の軌跡は、加工プログラムに基づいて工作機械100が動作した場合に、工作機械100に装着された工具の先端が描く移動経路である。具体的には、工具軌跡表示部303は、サンプリングされたモータ位置情報と軸情報とに基づいて、各工具先端点の座標(Xt,Yt,Zt)を算出する。座標の算出方法は、周知の方法を用いることができる。
【0018】
工具軌跡表示部303には、ワークにおける目標の加工面である基準面を示す下記式(1)のパラメータa,b,c,dが設定されている。
ax+by+cz=d・・・(1)
【0019】
このパラメータは、例えば、波形表示装置300に接続されるPC又はタブレット端末等の外部装置を用いたユーザからの入力操作によって設定される。なお、式(1)の基準面の法線ベクトルは、工具ベクトルとの内積が正になる方向とする。工具ベクトルは、工作機械100に装着された工具の先端から根元に向かうベクトルである。
【0020】
工具軌跡表示部303は、工具先端点の座標(Xt,Yt,Zt)から、工具先端点から基準面までの垂直方向の距離を算出する。具体的には、工具軌跡表示部303は、複数の工具先端点の各々の座標(Xt,Yt,Zt)と、下記式(2)とを用いて、工具先端点から基準面までの垂直方向の距離Lを算出する。
L=(aXt+bYt+cZt-d)/(a2+b2+c2)1/2・・・(2)
【0021】
式(2)により算出される距離Lは、工具先端点が、基準面に対して法線ベクトルが向く側にある場合、正の極性を示し、工具先端点が、基準面に対して法線ベクトルが向く側と反対側にある場合、負の極性を示す。
【0022】
図2は、複数の工具先端点と基準面との関係の一例を示す図である。
図2には、基準面に対する4つの工具先端点1~4の垂直方向の距離L1~L4が示されている。各工具先端点1~4を結ぶ線(
図2中の破線)が工具先端点の軌跡である。工具先端点の軌跡は加工面の凹凸情報を表している。
【0023】
工具軌跡表示部303は、このようにして算出した工具先端点の軌跡を、液晶モニタ等の表示装置(図示せず)によって波形として画面表示する。サンプリングされたモータ位置情報に基づく工具先端点は、
図3に示す複数の測定点310を構成する。しかし、ワーク加工時の工具の先端は、工作機械100の動作によって、加工面に対する位置を変えながら相対的に移動する。そのため、工具先端点の軌跡は、
図3に示すように、表示装置(図示せず)の画面上に複数の並列する波形線320として表示される。
【0024】
表示装置(図示せず)は、波形表示装置300に備えられていてもよいし、数値制御装置200に備えられていてもよい。また、表示装置(図示せず)は、数値制御装置200又は波形表示装置300に有線又は無線によって接続されるPC(Personal Computer)又はタブレット端末等の外部装置に備えられていてもよい。
【0025】
分析対象設定部304は、工具軌跡表示部303によって表示された工具先端点の軌跡に関する分析対象位置を設定する。分析対象位置は、後述の分析対象範囲生成部305による分析対象範囲の生成位置を指定するための位置情報であり、ユーザからの入力操作によって設定される。工具先端点の軌跡に関する分析対象位置は、軌跡上の任意の測定点310の位置に制限されず、隣り合う測定点310,310の間又は隣り合う波形線320,320の間であってもよい。
【0026】
分析対象位置の具体的な設定方法としては、工具先端点の軌跡が表示された画面上において、ユーザが操作するマウス、タッチパネル又はペンタブレット等のポインティングデバイスによって、1以上の点が選択された際に、その点の位置を分析対象位置として設定する方法が挙げられる。
図3は、工具先端点の軌跡上の複数の測定点310のうちの一つの測定点310aがユーザによって選択されることによって、その測定点310aが分析対象位置330として設定された様子を示している。分析対象位置330は、ユーザによって工具先端点の軌跡に関する複数の点を結ぶ線分が選択された際に、その線分の位置によって設定されてもよい。分析対象設定部304は、このようにしてユーザによって選択された位置を分析対象位置330として設定する。
【0027】
分析対象範囲生成部305は、分析対象設定部304によって設定された分析対象位置330に基づいて、その分析対象位置330を含む分析対象範囲340を工具先端点の軌跡上に生成し、表示装置(図示せず)によって表示する。工具先端点の軌跡は、ワークの加工面の凹凸情報を表すため、分析対象範囲340は、加工面の凹凸を含み得る形状である必要がある。そのため、分析対象範囲340は、分析対象位置330とその周囲の複数の測定点310とを含む立体からなる。立体からなる分析対象範囲340において、縦は、工具の進行方向ベクトルに沿う方向である。横は、工具の進行方向ベクトルと工具の工具ベクトルとに対して垂直な方向である。高さは、縦及び横によって形成される面に垂直な方向である。
【0028】
図3は、分析対象位置330を含む直方体からなる分析対象範囲340の例を示している。この分析対象範囲340に含まれる複数の測定点310bが、分析対象の測定点である。直方体からなる分析対象範囲340の向き、すなわち、分析対象範囲340の縦方向は、工具の進行方向ベクトルV1に沿って配置されている。そのため、ワークの加工面の状態を、工具の進行方向に沿って適確に分析することができる。
【0029】
図3に示す分析対象範囲340は、その内側に分析対象位置330としてユーザによって選択された1つの測定点310aとその周囲の8つの測定点310bとの合計9個の測定点を含む大きさを有する。しかし、分析対象範囲340の縦×横×高さの大きさは、分析対象範囲340内に、分析対象位置330を含む複数の測定点310bを含み得る大きさであれば、制限されない。分析対象範囲340の大きさに関する情報は、分析対象範囲生成部305又は波形表示装置300内に設けられる記憶部(図示せず)に予め設定される。記憶部に設定される分析対象範囲340の大きさは、1種類に制限されず、ワークの加工面の形状に応じた複数種類であってもよい。
【0030】
測定点選別部306は、分析対象範囲生成部305によって生成された分析対象範囲340に含まれる波形線320上の測定点を、工具先端点の軌跡の中から選別し、表示装置(図示せず)によって表示する。すなわち、測定点選別部306は、分析対象範囲生成部305によって
図3に示すように分析対象範囲340が生成された場合に、その分析対象範囲340を表示装置(図示せず)の画面に拡大表示する。これによって、ユーザは、分析対象範囲340内のワークの加工面の様子を目視で容易に確認し、分析することができる。
【0031】
次に、波形表示装置300における具体的な表示処理動作について、
図4のフローチャートを用いて説明する。以下のフローチャートに示す波形表示装置300の表示動作は、工作機械100によってワークに対して実際に加工を行う前に、ユーザからの指示に基づいて実行される。
【0032】
まず、波形表示装置300は、位置情報取得部301によって、数値制御装置200から、ワークの加工中における工作機械100の駆動軸の位置を示すモータ位置情報をサンプリングして取得する。波形表示装置300は、そのモータ位置情報と、軸情報設定部302に設定される工作機械100の駆動軸の軸構成を示す軸情報とを、工具軌跡表示部303に出力する(ステップS1)。
【0033】
次に、波形表示装置300は、工具軌跡表示部303において、モータ位置情報と軸情報とに基づいて、工具先端点の軌跡を算出し(ステップS2)、算出した工具先端点の軌跡を表示装置(図示せず)の画面上に表示する(ステップS3)。
【0034】
ステップS3において、表示装置(図示せず)上に工具先端点の軌跡が表示された後、波形表示装置300は、ユーザからの分析対象位置の選択があるかどうかを判断する(ステップS4)。
【0035】
図5は、工具先端点の軌跡を表す複数の波形線320上に、ユーザによって分析対象位置330が選択された状態の画面SCを示している。この画面SCにおいて、分析対象位置330は、ユーザによって選択された2点を結ぶ線分によって示されている。工具先端点の軌跡を表す波形線320は、ワークの多角形からなる加工面を示している。
【0036】
このように、ステップS4において、ユーザからの分析対象位置330の選択があった場合(ステップS4;YES)、波形表示装置300は、分析対象設定部304において、ユーザによって選択された位置を分析対象位置330として設定した後、分析対象範囲生成部305において、その分析対象位置330に基づく分析対象範囲340を生成し、画面SCに表示する(ステップS5)。
図5に示すように、分析対象範囲340は、工具先端点の軌跡を表す複数の波形線320に重ねて表示される。なお、ステップS4において、ユーザからの分析対象位置330の指定がなかった場合(ステップS4:NO)、処理はステップS4を繰り返し、ユーザからの分析対象位置330の指定を待つ。
【0037】
ステップS5において分析対象範囲340が生成された後、波形表示装置300は、測定点選別部306において、画面SCに表示された分析対象範囲340内に含まれる複数の測定点を選別し、画面SCに拡大して表示する(ステップS6)。
【0038】
図6は、分析対象範囲340内の測定点が選別して表示された画面SCの一例を示している。分析対象範囲340内の複数の測定点は、画面SC上において工具先端点の軌跡を表す複数の波形線350として表わされる。この複数の波形線350は、
図5に示される分析対象範囲340内の工具先端点の軌跡を拡大表示したものである。したがって、ユーザは、この画面SCに表示される複数の波形線350からなる工具先端点の軌跡を観察することによって、ワークの加工面の凹凸状態を目視で容易に確認することができる。このようにして測定点が選別されて表示された後、波形表示装置300は、表示処理動作を終了する。
【0039】
なお、測定点選別部306において、画面SCに表示される測定点(複数の波形線350)は、基準面に対する凹凸の程度に応じたグラデーションによって色分け表示されてもよい。これによれば、ユーザは、ワークの加工面の凹凸状態を目視によってさらに容易に確認することができる。
【0040】
以上のように、本実施形態の波形表示装置300は、工作機械100を制御する数値制御装置200から、工作機械100の駆動軸のモータ位置情報を取得する位置情報取得部301と、工作機械100の駆動軸の軸構成を示す軸情報を設定する軸情報設定部302と、位置情報取得部301により取得されたモータ位置情報及び軸情報設定部302に設定された軸情報に基づいて、工作機械100に装着された工具の工具先端点の軌跡を算出して波形として表示する工具軌跡表示部303と、工具軌跡表示部303によって表示された工具先端点の軌跡に関する分析対象位置330を設定する分析対象設定部304と、分析対象設定部304によって設定された分析対象位置330を含む立体からなる分析対象範囲340を生成して表示する分析対象範囲生成部305と、分析対象範囲生成部305によって生成された分析対象範囲340に含まれる測定点を、工具先端点の軌跡の中から選別して表示する測定点選別部306と、を備える。これによれば、工具軌跡に関して分析したい位置を選択するだけで、分析対象となる測定点を含む範囲を簡単に指定することができる。したがって、ワークの加工面に対するユーザの分析作業が大幅に簡略化される。
【0041】
本実施形態において、分析対象設定部304は、1以上の点によって分析対象位置330を設定している。これによれば、ユーザは、画面上で分析したい位置を1以上の点によって選択するだけで、所定の範囲の加工面の分析を容易に行うことができる。
【0042】
また、本実施形態において、分析対象設定部304は、複数の点を結ぶ線分によって分析対象位置330を設定してもよい。これによれば、ユーザは、画面上で分析したい位置を線分によって選択するだけで、所定の範囲の加工面の分析を容易に行うことができる。
【0043】
分析対象範囲340は、工具の進行方向ベクトルに沿う方向を縦、進行方向ベクトルと工具の工具ベクトルとに対して垂直な方向を横、縦及び横によって形成される面に垂直な方向を高さとする立体によって構成されている。これによれば、ワークの加工面の凹凸状態が確実に分析可能である。
【0044】
本実施形態における分析対象範囲340は、直方体形状である。直方体形状の分析対象範囲340は、縦、横及び高さを設定することによって容易に生成可能である。しかし、分析対象範囲340は、ワークの加工面の形状に応じて様々な形状を有することができ、直方体形状に制限されない。
【0045】
例えば、ワークの加工面がインペラのブレードのように曲面形状である場合は、分析対象範囲340の表面は、
図7に示すように、ワークの加工面の形状に応じた曲面であってもよい。
図7は、立体からなる分析対象範囲340のうち、Z軸方向に面する2つの表面がそれぞれ曲面340a,340bによって構成されている。すなわち、この分析対象範囲340は、曲面340aと曲面340bとに囲まれた範囲を分析対象範囲とする。
【0046】
曲面340aは、下記式(3)によって表される。曲面340bは、下記式(4)によって表される。
z=a0x2+a1y2+a2xy+a3x+a4y+a5・・・(3)
z=b0x2+b1y2+b2xy+b3x+b4y+b5・・・(4)
ここで、xmin<x<xmax,ymin<y<ymaxである。
【0047】
図7に示す分析対象範囲340は、Y軸方向に湾曲しているが、X軸方向には湾曲していない。また、曲面340aと曲面340bとは、Z軸に沿う同一方向に凸状に湾曲している。しかし、分析対象範囲340の曲面からなる表面は、ワークの加工面の形状に応じて、X軸方向及びY軸方向に湾曲し、Z軸方向に沿う相反する方向に凸状に湾曲する球面であってもよい。
図8は、表面が楕円球面からなる分析対象範囲340を示している。楕円球面は、下記式(5)によって表される。
ax
2+by
2+cz
2=d・・・(5)
【0048】
なお、図示しないが、分析対象範囲340の曲面からなる表面は、Z軸方向に沿って凹状に湾曲していてもよく、また、Z軸方向に沿う一方向のみに凸状又は凹状に湾曲していてもよい。
【符号の説明】
【0049】
100 工作機械
200 数値制御装置
300 波形表示装置
301 位置情報取得部
302 軸情報設定部
303 工具軌跡表示部
304 分析対象設定部
305 分析対象範囲生成部
306 測定点選別部
330 分析対象位置
340 分析対象範囲