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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】ガイドワイヤ
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/09 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
A61M25/09 516
A61M25/09 514
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022570837
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2020048057
(87)【国際公開番号】W WO2022137367
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【弁理士】
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】前田 葵
(72)【発明者】
【氏名】柘 賢太
【審査官】豊田 直希
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-070853(JP,A)
【文献】特開2011-000188(JP,A)
【文献】特開2012-135383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドワイヤであって、
長尺状の外形を有するコアシャフトと、
前記コアシャフトの先端部を取り囲んで配置された第1コイル体と、
前記第1コイル体よりも径方向外側に配置された第2コイル体と、
前記第2コイル体よりも径方向外側に配置された管状体と、
前記コアシャフトの先端と、前記第1コイル体の先端と、前記管状体の先端と、を固定する先端チップと、
を備え、
前記コアシャフトの長手方向において、
前記第2コイル体の先端は、前記第1コイル体の先端と基端との間に位置し、
前記第2コイル体の基端は、前記第1コイル体の基端よりも基端側に位置し、
前記第1コイル体の曲げ剛性は、前記第2コイル体の曲げ剛性よりも小さ
前記コアシャフトは、
基端から先端にかけて外径が細径化されたテーパ部と、
前記テーパ部よりも先端側に設けられた、平板状の外形を有する平板部と、を有し、
前記平板部の基端と、前記第2コイル体の先端とは、前記コアシャフトの長手方向における位置が一致する、ガイドワイヤ。
【請求項2】
ガイドワイヤであって、
長尺状の外形を有するコアシャフトと、
前記コアシャフトの先端部を取り囲んで配置された第1コイル体と、
前記第1コイル体よりも径方向外側に配置された第2コイル体と、
前記第2コイル体よりも径方向外側に配置された管状体と、
前記コアシャフトの先端と、前記第1コイル体の先端と、前記管状体の先端と、を固定する先端チップと、
を備え、
前記コアシャフトの長手方向において、
前記第2コイル体の先端は、前記第1コイル体の先端と基端との間に位置し、
前記第2コイル体の基端は、前記第1コイル体の基端よりも基端側に位置し、
前記第1コイル体の曲げ剛性は、前記第2コイル体の曲げ剛性よりも小さく、
さらに、前記コアシャフトの一部分と、前記第1コイル体の一部分と、前記第2コイル体の一部分と、前記管状体の一部分とを固定する中間固定部を備える、ガイドワイヤ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のガイドワイヤであって、さらに、
前記第2コイル体の先端部と、前記第1コイル体の一部分とを固定する第1固定部を備える、ガイドワイヤ。
【請求項4】
請求項に記載のガイドワイヤであって、
前記第1固定部は、さらに、前記第2コイル体の先端部と、前記コアシャフトの一部分とを固定する、ガイドワイヤ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のガイドワイヤであって

前記管状体の基端は、前記第2コイル体の基端よりも基端側に位置している、ガイドワイヤ。
【請求項6】
請求項に記載のガイドワイヤであって、さらに、
前記コアシャフトの一部分と、前記第1コイル体の一部分と、前記第2コイル体の一部分と、前記管状体の一部分とを固定する第2固定部を備える、ガイドワイヤ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のガイドワイヤであって、さらに、
前記先端チップと、前記管状体と、前記管状体よりも基端側に位置する前記コアシャフトと、の外表面と、を被覆する被覆層を備える、ガイドワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
血管や消化器官等にカテーテル等の医療用デバイスを挿入する際に用いられるガイドワイヤが知られている。例えば、特許文献1には、長尺状の芯線(以降「コアシャフト」とも呼ぶ)の先端部にコイル(以降「コイル体」とも呼ぶ)が装着され、芯線とコイルとがロウ材により固定されたガイドワイヤが開示されている。特許文献1のガイドワイヤでは、コイルにおいて、隣接する素線同士が密着した密着巻き部と、隣接する素線同士が離間したピッチ開き部とを設けることで、ロウ付け時にロウ材が流れることを抑制し、先端部の柔軟性を維持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-143077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ガイドワイヤは、狭窄または閉塞した病変部を通過しつつ、湾曲した血管内を進行する。このため、ガイドワイヤの先端側は、病変部や血管内壁による抵抗を受けて、U字状に折れ曲がることがある。この点、特許文献1に記載のガイドワイヤでは、先端側に折れ曲がりが生じた状態で、ガイドワイヤをさらに押し進めた場合に、ガイドワイヤの先端側の折れ曲がりが基端側へと拡大する(進展する)虞があるという課題があった。なお、このような課題は、血管系に限らず、リンパ腺系、胆道系、尿路系、気道系、消化器官系、分泌腺及び生殖器官といった、生体管腔内に挿入されるガイドワイヤの全般に共通する。
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、ガイドワイヤの先端側に生じた折れ曲がりが基端側へと拡大する(進展する)ことを抑制することで、安全性を向上させたガイドワイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、ガイドワイヤが提供される。このガイドワイヤは、長尺状の外形を有するコアシャフトと、前記コアシャフトの先端部を取り囲んで配置された第1コイル体と、前記第1コイル体よりも径方向外側に配置された第2コイル体と、前記コアシャフトの先端と、前記第1コイル体の先端と、を固定する先端チップと、を備え、前記コアシャフトの長手方向において、前記第2コイル体の先端は、前記第1コイル体の先端と基端との間に位置し、前記第2コイル体の基端は、前記第1コイル体の基端よりも基端側に位置し、前記第1コイル体の曲げ剛性は、前記第2コイル体の曲げ剛性よりも小さい。
【0008】
この構成によれば、コアシャフトの長手方向において、第2コイル体の先端は、第1コイル体の先端と基端との間に位置し、第2コイル体の基端は、第1コイル体の基端よりも基端側に位置している。このため、ガイドワイヤは、先端側から基端側に向かって、コアシャフトが第1コイル体に取り囲まれた領域(以降「第1領域」とも呼ぶ)と、コアシャフトが第1コイル体と第2コイル体とに取り囲まれた領域(以降「第2領域」とも呼ぶ)と、を有する構成となる。ここで、本構成によれば、第1コイル体の曲げ剛性は、第2コイル体の曲げ剛性よりも小さいため、先端側の第1領域は、第2領域と比べて、曲げ剛性が小さくなる。この結果、ガイドワイヤの先端部が、病変部や血管内壁による抵抗を受けた際に、ガイドワイヤに生じる折れ曲がりを、第1領域内や、第1領域と第2領域との境界部で生じやすくできる。また、ガイドワイヤの先端部に生じた折れ曲がりが、基端側にある第2領域へと拡大(進展)することを抑制できる。したがって、本構成によれば、ガイドワイヤの安全性を向上できる。
【0009】
(2)上記形態のガイドワイヤでは、さらに、前記第2コイル体の先端部と、前記第1コイル体の一部分とを固定する第1固定部を備えてもよい。
この構成によれば、ガイドワイヤは、第2コイル体の先端部と、第1コイル体の一部分とを固定する第1固定部を備えるため、ガイドワイヤのトルク伝達性(手元部分におけるガイドワイヤへの操作を先端側へと伝達する性能)を向上できる。また、第1固定部を備えることにより、ガイドワイヤに生じる折れ曲がりを、第1固定部よりも先端側において生じやすくできる。この結果、ガイドワイヤの先端部に生じた折れ曲がりが、基端側にある第2領域へと拡大することをより一層抑制できる。
【0010】
(3)上記形態のガイドワイヤにおいて、前記第1固定部は、さらに、前記第2コイル体の先端部と、前記コアシャフトの一部分とを固定してもよい。
この構成によれば、第1固定部は、さらに、第2コイル体の先端部と、コアシャフトの一部分とを固定する。このため、ガイドワイヤに生じる折れ曲がりを、第1固定部よりも先端側において生じやすくでき、ガイドワイヤの先端部に生じた折れ曲がりが、基端側にある第2領域へと拡大することをより一層抑制できる。
【0011】
(4)上記形態のガイドワイヤにおいて、前記コアシャフトは、基端から先端にかけて外径が細径化されたテーパ部と、前記テーパ部よりも先端側に設けられた、平板状の外形を有する平板部と、を有し、前記平板部の基端と、前記第2コイル体の先端とは、前記コアシャフトの長手方向における位置が一致していてもよい。
この構成によれば、コアシャフトは、テーパ部よりも先端側において平板状の外形を有する平板部を有するため、ガイドワイヤのシェイピング性能(目的血管にガイドワイヤの先端部を導くために、ガイドワイヤの先端部に湾曲等の形状を付す際の、形状付けのしやすさを表す性能)を向上できる。また、コアシャフトは、基端から先端にかけて外径が細径化されたテーパ部を有するため、ガイドワイヤの先端側を柔軟にできる。さらに、平板部の基端と第2コイル体の先端とは、コアシャフトの長手方向における位置が一致しているため、第1領域と第2領域との剛性差をより大きくできる。この結果、ガイドワイヤに生じる折れ曲がりを、第1領域内や、第1領域と第2領域との境界部でより一層生じやすくでき、ガイドワイヤの先端部に生じた折れ曲がりが、基端側にある第2領域へと拡大することを、より一層抑制できる。したがって、本構成によれば、ガイドワイヤの安全性をより一層向上できると共に、ガイドワイヤの使い勝手を向上できる。
【0012】
(5)上記形態のガイドワイヤでは、さらに、前記第2コイル体よりも径方向外側に配置された管状体を備え、前記管状体の基端は、前記第2コイル体の基端よりも基端側に位置しており、前記先端チップは、さらに、前記管状体の先端を固定していてもよい。
この構成によれば、管状体の基端は、第2コイル体の基端よりも基端側に位置しているため、第2領域よりも基端側において、コアシャフトが管状体に取り囲まれた領域(以降「第3領域」とも呼ぶ)を形成できる。
【0013】
(6)上記形態のガイドワイヤでは、さらに、前記コアシャフトの一部分と、前記第1コイル体の一部分と、前記第2コイル体の一部分と、前記管状体の一部分とを固定する第2固定部を備えてもよい。
この構成によれば、ガイドワイヤは、コアシャフトの一部分と、第1コイル体の一部分と、第2コイル体の一部分と、管状体の一部分とを固定する第2固定部を備えるため、ガイドワイヤのトルク伝達性を向上できる。また、第2固定部によって、第1コイル体、第2コイル体、及び管状体がコアシャフトに固定されているため、第1コイル体、第2コイル体、及び管状体の位置が、長手方向に移動する(換言すれば、第1コイル体、第2コイル体、及び管状体が相互にずれる)ことを抑制できる。
【0014】
(7)上記形態のガイドワイヤでは、さらに、前記先端チップと、前記管状体と、前記管状体よりも基端側に位置する前記コアシャフトと、の外表面と、を被覆する被覆層を備えてもよい。
この構成によれば、ガイドワイヤは、先端チップと、管状体と、管状体よりも基端側に位置するコアシャフトと、の外表面と、を被覆する被覆層を備えるため、血管内におけるガイドワイヤの滑り性を向上できる。
【0015】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、ガイドワイヤ、ガイドワイヤに装着されるコイル体及び管状体の組、及びこれらの製造方法などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態のガイドワイヤの構成を例示した説明図である。
図2】ガイドワイヤの先端側の一部分(図1:破線枠内)の拡大図である。
図3図2のA-A線における横断面構成を例示した説明図である。
図4】第1コイル体の構成を例示した斜視図である。
図5】曲げ剛性の測定方法について例示した説明図である。
図6】第2実施形態のガイドワイヤの構成を例示した説明図である。
図7】第3実施形態のガイドワイヤの構成を例示した説明図である。
図8】第4実施形態のガイドワイヤの構成を例示した説明図である。
図9】第5実施形態のガイドワイヤの構成を例示した説明図である。
図10】第6実施形態のガイドワイヤの構成を例示した説明図である。
図11】第7実施形態のガイドワイヤの構成を例示した説明図である。
図12】第8実施形態のガイドワイヤの構成を例示した説明図である。
図13】第9実施形態のガイドワイヤの構成を例示した説明図である。
図14】第10実施形態のガイドワイヤの構成を例示した説明図である。
図15】第11実施形態のガイドワイヤの構成を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態のガイドワイヤ1の構成を例示した説明図である。ガイドワイヤ1は、血管等にカテーテル等の医療デバイスを挿入する際に用いられる医療器具である。ガイドワイヤ1は、第1コイル体10と、第2コイル体20と、第3コイル体30と、コアシャフト40と、第1固定部51と、第3固定部53と、第4固定部54と、先端チップ61と、基端側固定部62とを備えている。ガイドワイヤ1は、後述する構成を有することにより、ガイドワイヤ1の先端部が、血管内にある病変部や血管内壁による抵抗を受けた際に、ガイドワイヤ1に生じる折れ曲がりが基端側へと拡大(進展)することを抑制し、安全性を向上できる。なお、以降の例では、血管を例示して説明するが、ガイドワイヤ1は、血管系に限らず、リンパ腺系、胆道系、尿路系、気道系、消化器官系、分泌腺及び生殖器官といった、生体管腔内に挿入して使用できる。
【0018】
図1では、ガイドワイヤ1の中心を通る軸を軸線O(一点鎖線)で表す。図1の例では、軸線Oは、第1~第3コイル体10,20,30及びコアシャフト40の各中心を通る軸とそれぞれ一致している。しかし、軸線Oは、上述の各構成部材の各中心軸と相違していてもよい。図1には、相互に直交するXYZ軸を図示する。X軸はガイドワイヤ1の長手方向に対応し、Y軸はガイドワイヤ1の高さ方向に対応し、Z軸はガイドワイヤ1の幅方向に対応する。図1の左側(-X軸方向)をガイドワイヤ1及び各構成部材の「先端側」と呼び、図1の右側(+X軸方向)をガイドワイヤ1及び各構成部材の「基端側」と呼ぶ。また、ガイドワイヤ1及び各構成部材の長手方向(X軸方向)における両端のうち、先端側に位置する一端を「先端」と呼び、基端側に位置する他端を「基端」と呼ぶ。また、先端及びその近傍を「先端部」と呼び、基端及びその近傍を「基端部」と呼ぶ。先端側は生体内部へ挿入され、基端側は医師等の術者により操作される。これらの点は、図1以降においても共通する。
【0019】
図2は、ガイドワイヤ1の先端側の一部分(図1:破線枠内)の拡大図である。図3は、図2のA-A線における横断面構成を例示した説明図である。図1に示すように、コアシャフト40は、軸線Oに沿って延びる長尺状の外形を有している。コアシャフト40は、先端から基端に向かって、平板部41と、テーパ部42と、太径部43とを有している。
【0020】
平板部41は、コアシャフト40の最も先端側に配置されている。平板部41は、ガイドワイヤ1の軸線Oと同軸に延びる長尺状であり(図1図2)、図3に示す横断面において、Y軸方向の長さがZ軸方向の長さよりも短い、平板状の外形を有する部分である。図2に示すように、平板部41の先端は、先端チップ61によって、第1コイル体10及び第3コイル体30と固定されている。平板部41の基端には、テーパ部42が接続している。また、図2に示すように、軸線O方向(換言すれば、コアシャフト40の長手方向)における、平板部41の基端の位置Bは、第2コイル体20の先端の位置Bと一致している。なお、本実施形態において「一致」とは、概ね一致していることを意味し、製造誤差等に起因した差異を許容する。
【0021】
平板部41は、術者がガイドワイヤ1の先端部に湾曲などの形状を付す際、形状付けを容易にするための部材であり「リボン」とも呼ばれる。なお、平板部41の外径(図3のY軸方向及びZ軸方向の長さ)、軸線O方向の長さ、及び横断面形状は、任意に決定できる。なお、平板部41と、テーパ部42及び太径部43とは同軸でなくてもよい。この場合、平板部41の基端側の一側面と、テーパ部42の先端側の一側面とが接合されてもよい。また、平板部41は省略されてもよい。
【0022】
図1に示すように、テーパ部42は、平板部41と太径部43との間に配置されている。テーパ部42は、基端から先端にかけて外径が細径化された、略円錐台形状の部分である。図2に示すように、テーパ部42の先端には平板部41が接続しており、テーパ部42の基端には太径部43が接続している。なお、テーパ部42の外径、軸線O方向の長さ、及び横断面形状は、任意に決定できる。
【0023】
太径部43は、コアシャフト40の最も基端側に配置されている。太径部43は、基端から先端にかけて略一定の外径を有する略円柱形状の部分である。太径部43の外径は、テーパ部42の最も太径の部分と同一である。なお、本実施形態において「同一」とは、概ね同じであることを意味し、製造誤差等に起因した差異を許容する意味である。図2に示すように、太径部43の先端にはテーパ部42が接続している。太径部43の基端部は、術者によって把持され、操作される。なお、太径部43の外径、軸線O方向の長さ、及び横断面形状は、任意に決定できる。
【0024】
コアシャフト40は、超弾性合金(「擬弾性合金」とも呼ばれる)により形成されている。超弾性合金としては、例えば、NiTi合金や、NiTiと他の金属との合金を例示できる。なお、コアシャフト40のうち、平板部41は、超弾性合金よりも塑性変形しやすい材料により形成されてもよい。超弾性合金よりも塑性変形しやすい材料としては、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス合金を例示できる。また、太径部43よりも基端側には、さらに、手元側コアシャフトが設けられていてもよい。手元側コアシャフトは、例えば、超弾性合金よりも塑性変形しやすい材料により形成できる。
【0025】
図2に示すように、第1コイル体10は、コアシャフト40の先端部を取り囲んで配置されている。具体的には、第1コイル体10は、平板部41と、テーパ部42の先端側の一部分と、を取り囲んで配置されている。第1コイル体10の先端は、先端チップ61によって、コアシャフト40及び第3コイル体30と固定されている。第1コイル体10の基端は、第3固定部53によって、コアシャフト40と固定されている。なお、第1コイル体10のコイル平均径(第1コイル体10の外径と内径の平均径)、及び第1コイル体10の長さは、任意に決定できる。
【0026】
図4は、第1コイル体10の構成を例示した斜視図である。図4に示すように、本実施形態の第1コイル体10は、8本の素線11を多条巻きにした多条コイルであり、一定の外径を有する略円筒形状である。第1コイル体10は、例えば、芯金上に8本の素線11を互いに接触するように密に撚り合せた後、公知の熱処理方法を用いて残留応力を除去し、芯金を抜き取ることで形成できる。このようにして形成された第1コイル体10は、図4に示すように、内腔10h(破線)を有する多条コイルとなる。素線11の材料は、素線21と同じであってもよく、異なっていてもよい。なお、第1コイル体10には、任意の態様を採用でき、例えば、第1コイル体10を構成する素線11の本数は8本に限らず、任意に決定できる。第1コイル体10は多条コイルに限らず、1本の素線を単条に巻回して形成される単条コイルであってもよく、複数本の素線を撚り合せた撚線を単条に巻回して形成される単条撚線コイルであってもよく、複数本の素線を撚り合せた撚線を複数用い、各撚線を多条に巻回して形成される多条撚線コイルであってもよい。
【0027】
図2に示すように、第2コイル体20は、第1コイル体10よりも径方向の外側に配置されており、コアシャフト40の一部分(図示の例では、テーパ部42の先端側の一部分)と、第1コイル体10の基端側の一部分と、を取り囲んでいる。軸線O方向(換言すれば、コアシャフト40の長手方向)において、第2コイル体20の先端は、第1コイル体10の先端と基端との間に位置している。第2コイル体20の先端は、第1固定部51によって、第1コイル体10と固定されている。また、軸線O方向において、第2コイル体20の基端は、第1コイル体10の基端よりも基端側に位置している。第2コイル体20の基端は、第4固定部54によって、コアシャフト40と固定されている。
【0028】
第2コイル体20は、図4で説明した第1コイル体10と同様に、複数(例えば8本)の素線21を多条巻きにした多条コイルであるが、第2コイル体20は、多条コイルに限らず、単条コイルであってもよく、単条撚線コイルであってもよく、多条撚線コイルであってもよい。なお、第2コイル体20のコイル平均径(第2コイル体20の外径と内径の平均径)、及び第2コイル体20の長さは、任意に決定できる。
【0029】
第3コイル体30は、第2コイル体20よりも径方向の外側に配置されており、コアシャフト40の一部分(図示の例では、平板部41と、テーパ部42の先端側の一部分)と、第1コイル体10と、第2コイル体20と、を取り囲んでいる。軸線O方向において、第3コイル体30の先端は、第1コイル体10の先端と同一の位置にある。第3コイル体30の先端は、先端チップ61によって、コアシャフト40及び第1コイル体10と固定されている。また、軸線O方向において、第3コイル体30の基端は、第2コイル体20の基端よりも基端側に位置している。第3コイル体30の基端は、基端側固定部62によって、コアシャフト40と固定されている。
【0030】
第3コイル体30は、1本の素線を単条に巻回して形成される単条コイルである。しかし、第3コイル体30は、単条コイルに限らず、多条コイルであってもよく、単条撚線コイルであってもよく、多条撚線コイルであってもよい。なお、第3コイル体30のコイル平均径(第3コイル体30の外径と内径の平均径)、及び第3コイル体30の長さは、任意に決定できる。なお、第3コイル体30は「管状体」に相当する。
【0031】
第1コイル体10を構成する素線11と、第2コイル体20を構成する素線21と、第3コイル体30を構成する素線31とは、任意の材料により形成できる。素線11、素線21、及び素線31は、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス合金、NiTi合金等の超弾性合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、コバルト合金等の放射線透過性合金、金、白金、タングステン、これらの元素を含む合金(例えば、白金-ニッケル合金)等の放射線不透過性合金で形成することができる。素線11と、素線21と、素線31とは、同じ材料により形成されていてもよく、異なる材料により形成されていてもよい。本実施形態では、素線11の外径Φ11と、素線21の外径Φ21と、素線31の外径Φ31との大小関係は、Φ11<Φ21<Φ31である。しかし、これらの大小関係は、任意に決定でき、例えば、Φ11=Φ21<Φ31でもよく、Φ11=Φ21=Φ31でもよい。
【0032】
なお、本実施形態では、第1コイル体10の外周面と第2コイル体20の内周面とが接触し、第2コイル体20の外周面と第3コイル体30の内周面とが接触している。しかし、第1コイル体10の外周面と第2コイル体20の内周面とは離間していてもよく、第2コイル体20の外周面と第3コイル体30の内周面とは離間していてもよい。
【0033】
先端チップ61は、第3コイル体30の先端に配置され、第3コイル体30の先端と、コアシャフト40の先端と、第1コイル体10の先端とを一体的に保持している。基端側固定部62は、第3コイル体30の基端に配置され、第3コイル体30の基端と、コアシャフト40の一部分(具体的には、テーパ部42の一部分)とを一体的に保持している。第1固定部51は、第2コイル体20の先端に配置され、第2コイル体20の先端と、第1コイル体10の一部分とを一体的に保持している。第4固定部54は、第2コイル体20の基端に配置され、第2コイル体20の基端と、コアシャフト40の一部分(具体的には、テーパ部42の一部分)とを一体的に保持している。第3固定部53は、第1コイル体10の基端に配置され、第1コイル体10の基端と、コアシャフト40の一部分(具体的には、テーパ部42の一部分)とを一体的に保持している。
【0034】
先端チップ61、基端側固定部62、第1固定部51、第3固定部53、及び第4固定部54は、任意の接合剤、例えば、銀ロウ、金ロウ、亜鉛、Sn-Ag合金、Au-Sn合金等の金属はんだや、エポキシ系接着剤などの接着剤によって形成できる。先端チップ61、基端側固定部62、第1固定部51、第3固定部53、及び第4固定部54とは、それぞれ同じ接合剤を用いて形成されてもよく、互いに異なる接合剤を用いて形成されてもよい。なお、先端チップ61、基端側固定部62、第1固定部51、第3固定部53、及び第4固定部54は、レーザ溶接により形成されてもよい。
【0035】
図5は、曲げ剛性の測定方法について例示した説明図である。上述したガイドワイヤ1において、第1コイル体10の曲げ剛性は、第2コイル体20の曲げ剛性よりも小さい。本実施形態において、曲げ剛性の測定は、図5で説明する片持ち梁試験により行う。具体的には、図5(A)に示すように、把持具4を用いて、測定対象物5を支持する。把持具4から突出した測定対象物5の任意の場所に、測定器2の荷重センサ3を接触させて配置する。このとき、測定対象物5と荷重センサ3の接触点Pと、把持具4の端面(測定器2に面した側の端面)との間は、所定の間隔aとする。その状態で、図5(B)に示すように、接触点Pを力点として、把持具4を所定の量下降させる。そして、把持具4が所定の変位量yに達した際の、荷重センサ3の計測値を、当該測定対象物5の曲げ剛性とする。このようにして測定した第1コイル体10の曲げ剛性は、第2コイル体20の曲げ剛性よりも小さい。
【0036】
本実施形態のガイドワイヤ1は、図2に示すように、先端側から基端側に向かって、第1領域R1と、第2領域R2と、第3領域R3とを有している。第1領域R1は、コアシャフト40が、第1コイル体10に取り囲まれた領域である。図示の例では、軸線O方向における第1領域R1の先端は、先端チップ61の基端の位置と一致し、第1領域R1の基端は、第2コイル体20の先端の位置と一致する。第2領域R2は、コアシャフト40が、第1コイル体10と、第2コイル体20とに取り囲まれた領域である。図示の例では、軸線O方向における第2領域R2の先端は、第2コイル体20の先端の位置と一致し、第2領域R2の基端は、第2コイル体20の基端の位置と一致する。第3領域R3は、コアシャフト40が、第3コイル体30に取り囲まれた領域である。図示の例では、軸線O方向における第3領域R3の先端は、第2コイル体20の基端の位置と一致し、第3領域R3の基端は、基端側固定部62の先端の位置と一致する。
【0037】
図5で説明した通り、第1コイル体10の曲げ剛性は、第2コイル体20の曲げ剛性よりも小さい。このため、ガイドワイヤ1の第1領域R1の曲げ剛性は、第2領域R2の曲げ剛性よりも小さい(曲げ剛性:第1領域R1<第2領域R2)。また、第2領域R2から第3領域R3にかけて延びるテーパ部42は、先端側から基端側にかけて、徐々に太くなっているため、徐々に剛性が高くなっていく。このため、ガイドワイヤ1の第2領域R2の曲げ剛性は、第3領域R3の曲げ剛性よりも小さい(曲げ剛性:第2領域R2<第3領域R3)。このように、本実施形態のガイドワイヤ1は、最も先端側にある第1領域R1の曲げ剛性が最も小さく、次いで、第2領域R2、第3領域R3の順に曲げ剛性が大きくなる。なお、テーパ部42の形状を調整して、第2領域R2の曲げ剛性と、第3領域R3の曲げ剛性とを等しくしてもよい(曲げ剛性:第2領域R2=第3領域R3)。
【0038】
以上のように、第1実施形態のガイドワイヤ1によれば、コアシャフト40の長手方向(軸線O方向)において、第2コイル体20の先端は、第1コイル体10の先端と基端との間に位置し、第2コイル体20の基端は、第1コイル体10の基端よりも基端側に位置している。このため、ガイドワイヤ1は、先端側から基端側に向かって、上述した第1領域と第2領域とを有する構成となる。ここで、第1コイル体10の曲げ剛性は、第2コイル体20の曲げ剛性よりも小さいため、先端側の第1領域R1は、第2領域R2と比べて、曲げ剛性が小さくなる。この結果、ガイドワイヤ1の先端部が、病変部や血管内壁による抵抗を受けた際に、ガイドワイヤ1に生じる折れ曲がりを、第1領域R1内や、第1領域R1と第2領域R2との境界部で生じやすくできる。また、ガイドワイヤ1の先端部に生じた折れ曲がりが、基端側にある第2領域R2へと拡大(進展)することを抑制できる。したがって、本実施形態のガイドワイヤ1によれば、安全性を向上できる。
【0039】
また、第1実施形態のガイドワイヤ1は、第2コイル体20の先端部と、第1コイル体10の一部分とを固定する第1固定部51を備えるため、ガイドワイヤ1のトルク伝達性(手元部分におけるガイドワイヤ1への操作を先端側へと伝達する性能)を向上できる。また、第1固定部51を備えることにより、ガイドワイヤ1に生じる折れ曲がりを、第1固定部51よりも先端側において生じやすくできる。この結果、ガイドワイヤ1の先端部(すなわち、第1領域R1)に生じた折れ曲がりが、基端側にある第2領域R2へと拡大することをより一層抑制できる。
【0040】
さらに、第1実施形態のガイドワイヤ1によれば、コアシャフト40は、テーパ部42よりも先端側において平板状の外形を有する平板部41を有するため、ガイドワイヤ1のシェイピング性能(目的血管にガイドワイヤ1の先端部を導くために、ガイドワイヤ1の先端部に湾曲等の形状を付す際の、形状付けのしやすさを表す性能)を向上できる。また、コアシャフト40は、基端から先端にかけて外径が細径化されたテーパ部42を有するため、ガイドワイヤ1の先端側を柔軟にできる。さらに、平板部41の基端と第2コイル体20の先端とは、コアシャフト40の長手方向における位置が一致している(図2:位置B)ため、第1領域R1と第2領域R2との剛性差をより大きくできる。この結果、ガイドワイヤ1に生じる折れ曲がりを、第1領域R1内や、第1領域R1と第2領域R2との境界部でより一層生じやすくでき、ガイドワイヤ1の先端部に生じた折れ曲がりが、基端側にある第2領域R2へと拡大することを、より一層抑制できる。したがって、ガイドワイヤ1の安全性をより一層向上できると共に、ガイドワイヤ1の使い勝手を向上できる。
【0041】
さらに、第1実施形態のガイドワイヤ1によれば、第1固定部51は、第1コイル体10と第2コイル体20とを固定する一方、コアシャフト40を固定していないため、ガイドワイヤ1の柔軟性を維持できる。同様に、第3固定部53は、第1コイル体10とコアシャフト40とを固定する一方、第2コイル体20と第3コイル体30とを固定していないため、ガイドワイヤ1の柔軟性を維持できる。同様に、第4固定部54は、第2コイル体20とコアシャフト40とを固定する一方、第3コイル体30を固定していないため、ガイドワイヤ1の柔軟性を維持できる。
【0042】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態のガイドワイヤ1Aの構成を例示した説明図である。第2実施形態のガイドワイヤ1Aは、第1実施形態で説明した構成において、第1固定部51に代えて第1固定部51Aを備える。第1固定部51Aは第2コイル体20の先端に配置され、第2コイル体20の先端と、第1コイル体10の一部分とに加えてさらに、コアシャフト40の一部分(図示の例では、テーパ部42の先端部)を固定し、一体的に保持している。
【0043】
このように、ガイドワイヤ1Aの構成は種々の変更が可能であり、第1固定部51Aは、第1コイル体10及び第2コイル体20だけでなく、コアシャフト40を固定してもよい。また、第1固定部51Aは、第2コイル体20の先端と、第1コイル体10の一部分とに加えてさらに、第3コイル体30の一部分を固定してもよい。このような第2実施形態のガイドワイヤ1Aにおいても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第2実施形態のガイドワイヤ1Aによれば、第1固定部51Aは、さらに、第2コイル体20の先端部と、コアシャフト40の一部分とを固定する。このため、ガイドワイヤ1Aに生じる折れ曲がりを、第1固定部51Aよりも先端側(すなわち、第1領域R1)において生じやすくでき、ガイドワイヤ1Aの先端部に生じた折れ曲がりが、基端側にある第2領域R2へと拡大することをより一層抑制できる。
【0044】
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態のガイドワイヤ1Bの構成を例示した説明図である。図7では、第3実施形態のガイドワイヤ1Bについて、図2のA-A線における横断面構成を例示している。第3実施形態のガイドワイヤ1Bは、第1実施形態で説明した構成において、コアシャフト40に代えてコアシャフト40Bを備える。コアシャフト40Bは、第1実施形態で説明した平板部41に代えて、細径部41Bを備える。細径部41Bは、基端から先端にかけて略一定の外径を有する略円柱形状の部分であり、図7に示すように略円形の横断面を有している。細径部41Bの外径は、テーパ部42の最も細径の部分と同一である。
【0045】
このように、コアシャフト40Bの構成は種々の変更が可能であり、第1実施形態で説明した平板部41を有していなくてもよい。また、コアシャフト40Bは、第3実施形態で説明した細径部41Bを有しておらず、テーパ部42の先端が、先端チップ61によって固定されていてもよい。このような第3実施形態のガイドワイヤ1Bにおいても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0046】
<第4実施形態>
図8は、第4実施形態のガイドワイヤ1Cの構成を例示した説明図である。第4実施形態のガイドワイヤ1Cは、第1実施形態で説明した各構成に加えてさらに、第2固定部52を備える。
【0047】
第2固定部52は、軸線O方向において、第1固定部51と第3固定部53との間に配置されている。換言すれば、第2固定部52は、第2コイル体20の先端よりも基端側、かつ、第1コイル体10の基端よりも先端側の、任意の場所に配置されている。第2固定部52は、コアシャフト40の一部分(具体的には、テーパ部42の一部分)と、第1コイル体10の一部分と、第2コイル体20の一部分と、第3コイル体30の一部分とを固定し、一体的に保持している。第2固定部52は、先端チップ61等と同様に、任意の接合剤、例えば、銀ロウ、金ロウ、亜鉛、Sn-Ag合金、Au-Sn合金等の金属はんだや、エポキシ系接着剤などの接着剤によって形成できる。
【0048】
このように、ガイドワイヤ1Cの構成は種々の変更が可能であり、コアシャフト40と、第1~第3コイル体10,20,30とを固定する第2固定部52を有していてもよい。このような第4実施形態のガイドワイヤ1Cにおいても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第4実施形態のガイドワイヤ1Cによれば、コアシャフト40の一部分と、第1コイル体10の一部分と、第2コイル体20の一部分と、第3コイル体30(管状体)の一部分とを固定する第2固定部52を備えるため、ガイドワイヤ1Cのトルク伝達性を向上できる。また、第2固定部52によって、第1コイル体10、第2コイル体20、及び第3コイル体30がコアシャフト40に固定されているため、第1コイル体10、第2コイル体20、及び第3コイル体30の位置が、長手方向に移動する(換言すれば、第1コイル体10、第2コイル体20、及び第3コイル体30が相互にずれる)ことを抑制できる。
【0049】
<第5実施形態>
図9は、第5実施形態のガイドワイヤ1Dの構成を例示した説明図である。第5実施形態のガイドワイヤ1Dは、第4実施形態で説明した構成において、第1固定部51を備えていない。このように、ガイドワイヤ1Dの構成は種々の変更が可能であり、上述した固定部の一部分を省略してもよい。図示の例では、第1固定部51を省略することとしたが、第1固定部51に代えて、または第1固定部51と共に、第3固定部53や、第4固定部54を省略してもよい。このような第5実施形態のガイドワイヤ1Dにおいても、上述した第1,第4実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0050】
<第6実施形態>
図10は、第6実施形態のガイドワイヤ1Eの構成を例示した説明図である。第6実施形態のガイドワイヤ1Eは、第1実施形態で説明した構成において、第3コイル体30に代えてチューブ体30Eを備える。
【0051】
チューブ体30Eは、先端と基端とに開口を有し、内側に両開口を連通する内腔を有する、略円筒形状の部材である。チューブ体30Eは、任意の樹脂材料や、任意の金属材料により形成できる。チューブ体30Eは、第1実施形態の第3コイル体30と同様に、第2コイル体20よりも径方向の外側に配置されており、コアシャフト40の一部分と、第1コイル体10と、第2コイル体20と、を取り囲んでいる。チューブ体30Eの先端は、先端チップ61によって、コアシャフト40及び第1コイル体10と固定され、チューブ体30Eの基端は、第2コイル体20の基端よりも基端側に位置し、基端側固定部62によって、コアシャフト40と固定されている。本実施形態では、チューブ体30Eが「管状体」に相当する。
【0052】
このように、ガイドワイヤ1Eの構成は種々の変更が可能であり、素線を巻回することで形成されたコイル体に代えて、チューブ体30Eを用いて、第1コイル体10及び第2コイル体20を覆う構成であってもよい。なお、ガイドワイヤ1Eの先端側の形状維持の観点から、チューブ体30Eの厚さT30は、素線11の外径Φ11よりも大きくてもよく、素線21の外径Φ21よりも大きくてもよい。しかし、チューブ体30Eの厚さT30は、外径Φ11と、Φ21との少なくとも一方よりも小さくてもよい。このような第6実施形態のガイドワイヤ1Eにおいても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第6実施形態のガイドワイヤ1Eによれば、血管内におけるガイドワイヤ1Eの滑り性を向上できる。
【0053】
<第7実施形態>
図11は、第7実施形態のガイドワイヤ1Fの構成を例示した説明図である。第7実施形態のガイドワイヤ1Fは、第6実施形態で説明した構成において、さらに、被覆層70を備えている。被覆層70は、先端チップ61の外表面と、チューブ体30Eの外表面と、基端側固定部62の外表面と、基端側固定部62よりも基端側に位置するコアシャフト40の外表面と、を被覆する薄膜である。被覆層70は、例えば、親水性又は疎水性の樹脂により形成できる。被覆層70の膜厚は任意に決定できる。
【0054】
このように、ガイドワイヤ1Fの構成は種々の変更が可能であり、上述しない他の構成(例えば、被覆層70)をさらに備えていてもよい。このような第7実施形態のガイドワイヤ1Fにおいても、上述した第1,第6実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第7実施形態のガイドワイヤ1Fによれば、ガイドワイヤ1Fは、先端チップ61と、チューブ体30E(管状体)と、チューブ体30Eよりも基端側に位置するコアシャフト40と、の外表面と、を被覆する被覆層70を備えるため、血管内におけるガイドワイヤ1Fの滑り性をさらに向上できる。
【0055】
<第8実施形態>
図12は、第8実施形態のガイドワイヤ1Gの構成を例示した説明図である。第8実施形態のガイドワイヤ1Gは、第1実施形態で説明した構成において、第3コイル体30に代えて第3コイル体30Gを備え、基端側固定部62に代えて基端側固定部62Gを備える。
【0056】
第3コイル体30Gは、コアシャフト40の全体と、第1コイル体10と、第2コイル体20と、を取り囲んでいる。軸線O方向において、第3コイル体30Gの先端は、第1コイル体10の先端と同一の位置にあり、第3コイル体30Gの基端は、コアシャフト40の基端と同一の位置にある。なお、本実施形態において「同一」とは、概ね同じであることを意味し、製造誤差等に起因した差異を許容する意味である。基端側固定部62Gは、第3コイル体30Gの基端に配置され、第3コイル体30Gの基端と、コアシャフト40の基端(具体的には、太径部43の基端)とを一体的に保持している。
【0057】
このように、ガイドワイヤ1Gの構成は種々の変更が可能であり、コアシャフト40の全体が管状体(図示の例では、第3コイル体30G)に取り囲まれた構成であってもよい。また、ガイドワイヤ1Gでは、さらに、第3コイル体30Gの一部分と、太径部43の一部分とを固定する固定部を有していてもよい。このような第8実施形態のガイドワイヤ1Gにおいても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第8実施形態のガイドワイヤ1Gによれば、全体が管状体に覆われたガイドワイヤ1Gを提供できる。
【0058】
<第9実施形態>
図13は、第9実施形態のガイドワイヤ1Hの構成を例示した説明図である。第9実施形態のガイドワイヤ1Hは、第1実施形態で説明した構成において、コアシャフト40に代えてコアシャフト40Hを備える。コアシャフト40Hは、第1実施形態で説明した平板部41に代えて平板部41Hを備える。平板部41Hは、軸線O方向(換言すれば、コアシャフト40Hの長手方向)における長さが、第1実施形態で説明した平板部41よりも長い。このため、平板部41Hの基端の位置B2は、第2コイル体20の先端の位置B1よりも基端側となる。
【0059】
このように、コアシャフト40Hの構成は種々の変更が可能であり、平板部41Hの基端の位置B2は、第2コイル体20の先端の位置B1と一致しなくてもよい。図示の例では、第1実施形態で説明した平板部41よりも長い平板部41Hを例示したが、平板部41Hの長さは、第1実施形態で説明した平板部41よりも短くてもよい。この場合、平板部41Hの基端の位置B2は、第2コイル体20の先端の位置B1よりも先端側となる。このような第9実施形態のガイドワイヤ1Hにおいても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第9実施形態のガイドワイヤ1Hによれば、形状付けのためのリボンとして機能する部分の長さを、自由に変更できる。
【0060】
<第10実施形態>
図14は、第10実施形態のガイドワイヤ1Iの構成を例示した説明図である。第10実施形態のガイドワイヤ1Iは、第1実施形態で説明した構成において、第2コイル体20に代えて第2コイル体20Iを備え、基端側固定部62に代えて基端側固定部62Iを備え、第4固定部54を備えていない。
【0061】
軸線O方向において、第2コイル体20Iの先端は、第1コイル体10の先端と基端との間に位置しており、第2コイル体20Iの基端は、第3コイル体30の基端と同一の位置にある。なお、本実施形態において「同一」とは、概ね同じであることを意味し、製造誤差等に起因した差異を許容する意味である。基端側固定部62Iは、第3コイル体30の基端に配置され、第3コイル体30の基端と、第2コイル体20Iの基端と、コアシャフト40の一部分とを一体的に保持している。図14に示すように、第10実施形態のガイドワイヤ1Iでは、コアシャフト40が第3コイル体30のみに取り囲まれた領域である、第3領域R3が存在しない。
【0062】
このように、ガイドワイヤ1Iの構成は種々の変更が可能であり、第2コイル体20Iの基端と、第3コイル体30の基端とが同一の位置にあり、第3領域R3が存在しなくてもよい。また、ガイドワイヤ1Iでは、さらに、第3固定部53よりも基端側において、コアシャフト40の一部分と、第2コイル体20Iの一部分と、第3コイル体30の一部分とを固定する固定部を設けてもよい。このような第10実施形態のガイドワイヤ1Iにおいても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0063】
<第11実施形態>
図15は、第11実施形態のガイドワイヤ1Jの構成を例示した説明図である。第11実施形態のガイドワイヤ1は、第1実施形態で説明した構成において、先端チップ61に代えて先端チップ61Jを備えると共に、第1実施形態で説明した第3コイル体30と基端側固定部62とを備えていない。
【0064】
ガイドワイヤ1Jは、第3コイル体30を備えていないため、第1コイル体10の先端側の一部分と、第2コイル体20とは、第3コイル体30によって覆われておらず、露出している。また、ガイドワイヤ1Jは、第1領域R1と第2領域R2とを有する一方、第3領域R3(コアシャフト40が第3コイル体30に取り囲まれた領域)を有していない。先端チップ61Jは、第1コイル体10の先端に配置され、第1コイル体10の先端と、コアシャフト40の先端とを一体的に保持している。なお、ガイドワイヤ1Jは、さらに、親水性又は疎水性の被覆層を有してもよい。この場合、被覆層は、先端チップ61Jの外表面と、第1コイル体10の先端側の一部分(図15:露出部分)の外表面と、第2コイル体20の外表面と、第1固定部51の外表面と、第4固定部54の外表面と、第4固定部54よりも基端側に位置するコアシャフト40の外表面と、を被覆する薄膜とできる。
【0065】
このように、ガイドワイヤ1Jの構成は種々の変更が可能であり、第3コイル体30が省略されて、第3領域R3を有さない構成とされてもよい。このような第11実施形態のガイドワイヤ1Jにおいても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第11実施形態のガイドワイヤ1Jによれば、ガイドワイヤ1Jを細径化できると共に、ガイドワイヤ1Jを構成する部材の数を減らすことにより、ガイドワイヤ1Jの製造工数及び製造コストを低減できる。
【0066】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0067】
[変形例1]
上記第1~11実施形態では、ガイドワイヤ1,1A~1Jの構成の一例を示した。しかし、ガイドワイヤ1の構成は種々の変更が可能である。例えば、ガイドワイヤ1のコアシャフト40には、ガイドワイヤ1に求められる性能に応じて、細径部、太径部、偏平部、テーパ部等が適宜設けられてもよく、上述した平板部41やテーパ部42を備えていなくてもよい。例えば、ガイドワイヤ1Cについて、第1固定部51と、第2固定部52と、第3固定部53と、第4固定部54と、のうちの少なくとも1つ以上は、省略されてもよい。
【0068】
[変形例2]
上記第1~11実施形態では、第1~第3コイル体10,20,20I,30,30G、及び、チューブ体30Eの構成の一例を示した。しかし、これらの構成は種々の変更が可能である。例えば、第1コイル体10及び/または第2コイル体20に代えて、略円筒形状のチューブ体を用いてもよい。例えば、第1コイル体10と、第2コイル体20と、第3コイル体30と、の少なくとも1つ以上は、略円筒形状のチューブ体の肉厚部に埋設された態様であってもよい。
【0069】
[変形例3]
第1~11実施形態のガイドワイヤの構成、及び上記変形例1,2のガイドワイヤの構成は、適宜組み合わせてもよい。例えば、第3~11実施形態のガイドワイヤ1において、第2実施形態で説明した第1固定部51Aを備えてもよい。例えば、第2,4~11実施形態のガイドワイヤ1において、第3実施形態で説明した細径部41Bを備えてもよい。例えば、第2,3,5~10実施形態のガイドワイヤ1において、第4実施形態で説明した第2固定部52を設けてもよい。例えば、第2~5,8~10実施形態のガイドワイヤ1において、第6実施形態で説明したチューブ体30Eを備えてもよい。例えば、第2~6,8~10実施形態のガイドワイヤ1において、第7実施形態で説明した被覆層70を備えてもよい。例えば、第2~7,9,10実施形態のガイドワイヤ1において、第8実施形態で説明した第3コイル体30Gを備えてもよい。
【0070】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0071】
1,1A~1J…ガイドワイヤ
2…測定器
3…荷重センサ
4…把持具
5…測定対象物
10…第1コイル体
11…素線
20,20I…第2コイル体
21…素線
30,30G…第3コイル体
30E…チューブ体
31…素線
40,40B,40H…コアシャフト
41,41H…平板部
41B…細径部
42…テーパ部
43…太径部
51,51A…第1固定部
52…第2固定部
53…第3固定部
54…第4固定部
61,61J…先端チップ
62,62G,62I…基端側固定部
70…被覆層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15