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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】電気分解槽用の電極構造体
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/00 20210101AFI20240625BHJP
   C25B 1/26 20060101ALI20240625BHJP
   C25B 9/63 20210101ALI20240625BHJP
   C25B 9/77 20210101ALI20240625BHJP
   C02F 1/461 20230101ALI20240625BHJP
【FI】
C25B9/00 C
C25B1/26 C
C25B9/63
C25B9/77
C02F1/461 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022577567
(86)(22)【出願日】2021-06-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-31
(86)【国際出願番号】 KR2021007712
(87)【国際公開番号】W WO2022039364
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】10-2020-0103860
(32)【優先日】2020-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0131649
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516357351
【氏名又は名称】テックウィン カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TECHWIN Co., LTD
【住所又は居所原語表記】(Songjeong-dong) 60, Jikji-daero 474beon-gil, Heungdeok-gu, Cheongju-si, Chungcheongbuk-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ブン イク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョン シク
(72)【発明者】
【氏名】チョ,テ シン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ドン ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】キム,テ ウ
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-197585(JP,A)
【文献】特開昭60-125386(JP,A)
【文献】特開昭47-019342(JP,A)
【文献】特開昭53-108899(JP,A)
【文献】特開2004-143481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00-9/77
C02F 1/461
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極板と、
前記電極板の一面に前記電極板の周面に沿って具備された流路ガイドと、
電極構造体の下部で前記電極板及び前記流路ガイドを貫通する下部通孔と、
前記流路ガイド及び前記下部通孔を連通させる第1の流路と、
前記電極構造体の上部で前記電極板及び前記流路ガイドを貫通する上部通孔と、
前記流路ガイド及び前記上部通孔を連通させる第2の流路と、
前記電極板の一面の中で前記流路ガイドが具備されない反応部と、
前記流路ガイドの下部内壁、上部内壁、及び側部内壁の中で提供される、前記反応部及
び前記流路ガイドを連通させる第3の流路と、
前記電極板の他面に具備された冷却ジャケットと、
を含
前記反応部は、前記流路ガイドの前記下部内壁に具備された前記第3の流路を介して、
前記反応部に流入した液体状の物質が電気分解される活性部と、前記活性部の上部に位
置して前記活性部で生成された気体状の物質が滞留する非活性部と、を含み、
前記液体状の物質の表面の下に位置した前記第3の流路は、前記第1の流路を介して
前記流路ガイドの内部に流入した原料物質が、前記活性部に移動する経路、前記活性部で
生成された液体状の電解生成物が前記流路ガイドの内部に移動する経路、および前記流
路ガイドの内部に移動した液体状の電解生成物中の一部が、前記活性部に循環されて戻
る経路を提供し、
前記液体状の物質の表面上に位置した前記第3の流路は、前記気体状の物質が前記流
路ガイドの内部に流入する経路を提供する、電極構造体。
【請求項2】
前記電極板及び前記冷却ジャケットは、同一の材質からなる、請求項に記載の電極構
造体。
【請求項3】
前記流路ガイドの内壁の面積に対する前記第3の流路の面積の割合は、0.05~0.95である、請求項に記載の電極構造体。
【請求項4】
前記反応部の面積に対する前記活性部の面積の割合は、0.1~0.9である、請求項に記載の電極構造体。
【請求項5】
請求項に記載の前記電極構造体と、
前記電極板の一面に対向して具備された隔膜と、を含む、電気分解槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気分解槽用の電極構造体及びこれを含む電気分解槽に関する。
【背景技術】
【0002】
次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)は、上下水処理、廃水処理、海水電解、及び船舶平衡水処理、農食品及び食資材殺菌消毒など種々の分野に適用されている。
【0003】
このような次亜塩素酸ナトリウムは、その濃度によって、低濃度の次亜塩素酸ナトリウム製造システム及び高濃度の次亜塩素酸ナトリウム製造システムを用いて製造される。
【0004】
濃度が0.4~1.0%である低濃度次亜塩素酸ナトリウムは、塩水を接触式電極反応が行われる無隔膜式電気分解槽を通過させて得られる。濃度が2%以上の高濃度次亜塩素酸ナトリウムは、陽極と陰極が隔膜によって画成された隔膜式電気分解槽で生成された塩素ガスと苛性ソーダを反応させて得られる。
【0005】
塩水を用いた隔膜式電気分解槽では、陽極と陰極を結合して組み立てるために、フッ素系樹脂からなる部品を利用する場合がある。このようなフッ素系樹脂は、耐食性には優れる反面、熱によって変形されやすいので、長期間運転時漏液及び/または漏気の原因になることができる。よって、これを改善して設備を簡素化するために金属材質だけで電気分解槽を構成することもある。
【0006】
図1は、従来の電気分解槽を示した模式図である。図1を参照すると、次亜塩素酸ナトリウムを製造するための従来の電気分解槽は、陰極室1と、陽極室3と、前記陰極室と陽極室とを区切るための隔膜2とを含んでなり、陰極室1及び陽極室3は、それぞれ陰極生成物及び陽極生成物を循環させる陰極タンク(図示せず)及び陽極タンク(図示せず)を含むことができ、前記陽極タンク及び前記陰極タンクから気体生成物及び液体生成物を分離する。このように、陰極生成物及び陽極生成物を循環させることで電気分解槽の内部で生成されるガスを速かに排出し、発生する熱を外部の熱交換器によって吸収することができる。
【0007】
また、前記陽極室及び前記陰極室でそれぞれ生成された塩素ガス及び苛性ソーダは、前記陽極タンク及び前記陰極タンクを経て反応槽(図示せず)に移動して反応する ことで次亜塩素酸ナトリウムが生成される。
【0008】
また、生成された次亜塩素酸ナトリウムのpHを12以上に維持させて安定に貯蔵できるように反応槽及び/または次亜塩素酸ナトリウムタンクに苛性ソーダを注入するための苛性ソーダタンク及び注入装置が具備されて、次亜塩素酸ナトリウムの貯蔵する間の副産物の生成を抑制するための冷却システムがさらに具備される。
【0009】
このように、次亜塩素酸ナトリウムを製造するための従来の電気分解槽は、陽極タンクから排出される陽極水によって周辺環境が汚染されるという問題、製造された高濃度の次亜塩素酸ナトリウムの安定した貯蔵のための多数の設備(タンク、配管など)が複雑に構成されることによってメンテナンスに対する負担が加重されるという問題があり、電気分解によって生成される塩素ガス、水素ガス、苛性ソーダなどは、有害化学物質と指定された危険物質であるから、これらを外部へ露出した配管を介して移送、循環させる場合、事故、破損時無駄な危険をもたらすことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前述した従来の技術の問題点を解決するためのもので、本発明の目的は、電気分解槽及びこれを含む設備を全体的に簡素化すると同時に、物質を移送及び/または循環させるための配管が外部へ露出することを最小化してメンテナンス及び管理が便利であり、事故、破損による危険を軽減させることができる電極構造体及びこれを含む電気分解槽を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、電極板と、前記電極板の一面に前記電極板の周面に沿って具備された流路ガイドと、を含む電極構造体を提供する。
【0012】
一実施形態において、前記電極板の他面に具備された冷却ジャケットをさらに含むことができる。
【0013】
一実施形態において、前記電極板及び前記冷却ジャケットは、同一の材質からなることができる。
【0014】
一実施形態において、前記電極構造体の下部で前記電極板及び前記流路ガイドを貫通する下部通孔と、前記流路ガイド及び前記下部通孔を連通させる第1の流路と、をさらに含むことができる。
【0015】
一実施形態において、前記電極構造体の上部で前記電極板及び前記流路ガイドを貫通する上部通孔と、前記流路ガイド及び前記上部通孔を連通させる第2の流路と、をさらに含むことができる。
【0016】
一実施形態において、前記電極板の一面の中で前記流路ガイドが具備されない反応部と、前記流路ガイドを連通させる第3の流路と、をさらに含むことができる。
【0017】
一実施形態において、前記第3の流路は、前記流路ガイドの下部内壁、上部内壁、及び側部内壁の中で少なくとも一つに具備されることができる。
【0018】
一実施形態において、前記流路ガイドの内壁の面積に対する前記第3の流路の面積の割合は、0.05~0.95であることができる。
【0019】
一実施形態において、前記反応部は、前記反応部に流入した液体状の物質が電気分解される活性部と、前記活性部の上部に位置して前記活性部で生成された気体状の物質が滞留する非活性部と、を含み、前記反応部の面積に対する前記活性部の面積の割合は、0.1~0.9であることができる。
【0020】
本発明の他の一態様は、前記電極構造体と、前記電極板の一面に対向して具備された隔膜と、を含む電気分解槽を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様による電極構造体は、電極板と、前記電極板の一面に前記電極板の周面に沿って具備されて電気分解槽に対する物質の流出入経路を提供する流路ガイドと、を含むことで、電気分解槽及びこれを含む設備を全体的に簡素化すると同時に、物質を移送及び/または循環させるための配管が外部に露出することを最小化してメンテナンス及び管理が便利であり、事故、破損による危険を軽減させることができる。
【0022】
本発明の効果は、前記した効果に限定されるものではなくて、本発明の詳細な説明または請求範囲に記載された発明の構成から推論可能なすべての効果を含むものと理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、従来の電気分解槽を示した模式図である。
図2図2は、本発明の一実施形態による電極構造体を示す模式図である。
図3図3は、本発明の一実施形態による電極構造体が多段で結合された形態を示した模式図である。
図4図4は、図3(a)のB領域の背面を示した模式図である。
図5図5は、図3(a)のC領域の背面を示した模式図である。
図6図6(a)及び図6(b)は、それぞれ図4のD及びE方向から見た流路ガイドの下部内壁及び側部内壁の平面図である。
図7図7は、図6のF方向から見た流路ガイドの上部内壁の平面図である。
図8図8(a)及び図8(b)は、それぞれ本発明の一実施形態による反応部の平面図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本発明を説明する。しかし、本発明は様々な異なる形態で具現されることができ、したがって、ここで説明する実施形態に限定されるものではない。そして、図面において、本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、明細書の全般に亘って同様な部分に対しては同様な符号を付した 。
【0025】
明細書の全般において、ある部分が他の部分と「連結」されているとされるとき、これは「直接に連結」されている場合だけではなく、その中間に他の部材を介在して「間接的に連結」されている場合も含む。また、ある部分がある構成要素を「含む」とされるとき、これは特別に反対の意味で記載される別途の記載がない限り、他の構成要素を排除するものではなく、他の構成要素をさらに具備することができるということを意味する。
【0026】
以下、添付図面を参照して本発明の実施例を詳しく説明する。
【0027】
図2は、本発明の一実施形態による電極構造体を示した模式図である。図2を参照すると、本発明の一態様による電極構造体は、電極板1、3と、前記電極板の一面に前記電極板の周面に沿って具備された流路ガイド5と、を含むことができ、前記電極板の他面に具備された冷却ジャケット4をさらに含むことができる。
【0028】
前記電極板は、陽極板3または陰極板1であることができ、前記電極板が陽極板である場合(図2b)及び陰極板である場合(図2a)、それぞれ前記電極板を基準とした冷却ジャケット4及び前記流路ガイド5の位置は相互逆転されることができる。
【0029】
前記電極構造体を含む電気分解槽において、前記電極板は、金属材質、例えば、チタン、ステンレス鋼などからなることができる。
【0030】
前記流路ガイド5は、前記電極板1、3の一面に前記電極板1、3の周りに沿って具備されることができ、その内部に沿って物質が移動することができる中空構造を有することができる。また、前記流路ガイド5に形成された通孔及び流路は、前記電極板1、3の一面の中で前記流路ガイド5が具備されない内部領域へ原料物質を流入させるだけでなく、前記内部領域で生成された電解生成物を外部へ流出させることができる。
【0031】
前記冷却ジャケット4は、前記電極板1、3の一面に具備されてその内部を貫通する冷媒、例えば、冷却水が電解反応によって発生した熱を直ちに吸収することができ、これによって、従来のように電気分解槽での発熱を制御するために具備された陽極生成物及び/または陰極生成物循環ライン及び/またはこのような循環ライン上に具備された熱交換器を省略して設備を簡素化することができる。
【0032】
前記電極板1、3と前記冷却ジャケット4とは同じ材質からなることができる。前記冷却ジャケット4は、前記電極板1、3の一面に具備され、前記電極構造体が多段で結合される場合、前記電極板、より具体的に、陰極板1と陽極板3との間に介在されるので、前記陰極板1及び陽極板3が相互絶縁されないように所定の伝導性を有することが好ましい 。
【0033】
前記冷却ジャケット4は、前記陰極板1及び/または陽極板3の少なくとも一面と溶接などによって結合され、前記陰極板1及び/または陽極板3と同じ材質からなることができる。溶接によって結合された前記冷却ジャケット4は、基本的に、電気分解槽で発生した熱を吸収、解消するとともに前記陰極板1及び陽極板3を電気的に連結させることができる。
【0034】
一方、前記冷却ジャケット4は、前記電極板1、3にて電気分解反応が行われる領域、すなわち、後述する反応部及び/または活性部を部分的に及び/または全体的にカバーするように具備されることができる。
【0035】
図3は、本発明の一実施形態による電極構造体が多段で結合された形態を示した模式図である。図3aを参照すると、「冷却ジャケット4-陰極板1-流路ガイド5-隔膜2-流路ガイド5-陽極板3」を含む単位構造が多段で結合されて電気分解槽を構成することができる。
【0036】
図4は、図3aのB領域の背面を示した模式図である。図4を参照すると、前記電極構造体は、前記電極構造体の下部で前記電極板1及び前記流路ガイド5を貫通する下部通孔6と、前記流路ガイド5及び前記下部通孔6を連通させる第1の流路7と、をさらに含むことができる。例えば、前記第1の流路7は、前記流路ガイド5の内部及び前記下部通孔6の側壁を連通させることができる。
【0037】
図3bは、図3aのA方向から見た電気分解槽の平面図である。図3bを参照すれば、前記単位構造は、前記陰極板1の下部通孔と、前記陽極板3の下部通孔とがそれぞれ重なり合うように多段で結合されることができる。
【0038】
前記陰極板1及び陽極板3の前記下部通孔6を介して原料物質が前記電気分解槽に流入することができる。具体的に、前記原料物質は、前記下部通孔6を介して前記電極板1、3に対して実質的に垂直方向に電気分解槽の内部に流入することができ、このような原料物質は、前記下部通孔6の側壁及び前記流路ガイド5の内部を連通させる前記第1の流路7を介して前記流路ガイド5の内部に流入することができる。
【0039】
図5は、図3aのC領域の背面を示した模式図である。図5を参照すれば、前記電極構造体は、前記電極構造体の上部で前記電極板1及び前記流路ガイド5を貫通する上部通孔8と、前記流路ガイド5及び前記上部通孔8を連通させる第2の流路9と、をさらに含むことができる。例えば、前記第2の流路9は前記流路ガイド5の内部及び前記上部通孔8の側壁を連通させることができる。
【0040】
図3bを参照すると、前記単位構造は、前記陰極板1の上部通孔と、前記陽極板3の上部通孔がそれぞれ重なり合うように多段で結合されることができる。
【0041】
前記陰極板1及び陽極板3の前記上部通孔8を介して、陰極生成物及び陽極生成物がそれぞれ前記電気分解槽から流出されることができる。具体的に、電解生成物、すなわち、陰極生成物及び陽極生成物は、前記上部通孔8を介して前記電極板に対して実質的に垂直方向に電気分解槽の外部へ流出されることができ、このような陰極生成物及び陽極生成物は、前記上部通孔8の側壁及び前記流路ガイド5を連通させる前記第2の流路9を介して前記電極板の面方向に沿って前記上部通孔8に流出されて下流に具備された後続設備に移送されることができる。
【0042】
前記電極構造体は、前記電極板1の一面の中で前記流路ガイドが具備されていない反応部13及び前記流路ガイド5を連通させる第3の流路をさらに含むことができる。
【0043】
前記第3の流路は、前記反応部に向かって前記流路ガイド5の内壁に具備されることができる。前記第3の流路は、前記流路ガイド5の内部及び前記反応部13を連通させて両者間に物質が移動可能な経路を提供することができる。
【0044】
前記第3の流路は、前記流路ガイドの下部内壁、側部内壁及び上部内壁の中で少なくとも一つに具備されることができる。
【0045】
図6a及び図6bは、それぞれ図4のD及びE方向から見た流路ガイドの下部内壁及び側部内壁の平面図である。
【0046】
図6aを参照すると、前記第3の流路10は、前記流路ガイドの前記下部内壁5’に、既に設定済みの間隔で離隔された2以上のもので具備されることができ、これによって、前記流路ガイド5の内部及び前記反応部13の中で、後述する活性部間の物質の移動が均一に行われるようにすることができる。図6bを参照すると、前記第3の流路11は、前記流路ガイドの前記側部内壁5’に既に設定済みの間隔で離隔された2以上のもので具備されることができ、これによって前記流路ガイド5の内部及び前記反応部13間の物質の移動が均一に行われるようにすることができる。
【0047】
図7は、図6のF方向から見た流路ガイドの上部内壁の平面図である。
図7を参照すると、前記第3の流路12は、前記流路ガイドの前記上部内壁5’に既に設定済みの間隔で離隔された2以上のもので具備されることができ、これによって、前記流路ガイド5の内部及び前記反応部13の中で、後述する非活性部間の物質の移動が均一に行われるようにすることができる。前記流路ガイド5の前記上部内壁5’に具備された前記第3の流路12を介して前記流路ガイド5の内部に移動した電解生成物は、前記第2の流路9及び前記上部通孔8を介して電気分解槽の外部に流出されることができる。
【0048】
前記流路ガイドの内壁5’の面積に対する前記第3の流路10、11、12の面積の割合は、0.05~0.95、好ましくは、0.1~0.9、より好ましくは、0.2~0.8であることができる。
【0049】
前記流路ガイドの内壁5’の面積に対する前記第3の流路10、11、12の面積の割合が0.05、0.1、0.2未満であれば、前記流路ガイド5の内部及び前記反応部13間の物質の移動を妨げることができ、0.95、0.9、0.8超えであれば、物質の移動とそれによるバランスを制御しにくいばかりでなく、前記流路ガイド5の耐久性が低下する恐れがある。
【0050】
図8aは、本発明の一実施形態による反応部の平面図であり、図8bは、図8aのG-G’による断面図である。図8aを参照すると、前記反応部13は、前記反応部13に流入した液体状の物質が電気分解される活性部14と、前記活性部14の上部に位置して前記活性部14で生成された気体状の物質が滞留する非活性部15と、を含むことができる。
【0051】
図8bを参照すれば、前記非活性部15は、前記反応部13を構成する前記電極板1であってもよく、前記活性部14は、前記反応部13の下端から既に設定済みの高さまで具備されることができる。前記活性部14は、金属系の板、シート、フィルムなどが溶接、接着などによって前記反応部13の下部に結合されたもの、及び/または金属系触媒が前記反応部13の下部にコート、ドープなどによって導入されたものであってもよい。
【0052】
前記反応部13に充填された前記液体状の物質が前記反応部13の下部に具備された前記活性部14でのみ電気分解されるようにするためには、前記活性部14及び前記非活性部15をそれぞれ異なる金属材質で構成する必要がある。例えば、前記非活性部15、すなわち、前記電極板1はチタン、ステンレス鋼などを含むことができ、その下部の表面に具備された前記活性部14は、白金、イリジウムなどを含むことができる。
【0053】
前記反応部13の下部及び上部を、それぞれ前記活性部14及び前記非活性部15に区切ることにより、前記流路ガイド5の前記側部内壁に具備された前記第3の流路11を介した物質の移動は、その位置、すなわち、高さによることになる。
【0054】
前記電極板1の前記反応部13には、前記流路ガイド5の前記下部内壁及び側部内壁に具備された前記第3の流路10、11を介して流入した原料物質と電解生成物を含む液体が既に設定済みの水位、好ましくは、前記活性部14の上端まで満たされることができるので、前記流路ガイド5の前記側部内壁のうち低い領域、すなわち、前記活性部14の少なくとも一方、好ましくは、両側に具備された前記第3の流路11は、前記液体の水面の下に位置することができ、それに比べて相対的に高い領域、すなわち、前記非活性部15の少なくとも一方、好ましくは、両側に具備された前記第3の流路11は、前記液体の水面の上に位置することができる。
【0055】
前記流路ガイド5の前記側部内壁の中で前記活性部14の少なくとも一方、すなわち、前記液体の水面の下に位置した前記第3の流路11は、前記流路ガイド5の前記下部内壁に具備された前記第3の流路10とともに前記第1の流路7を介して前記流路ガイド5の内部に流入した原料物質が前記電極板の前記活性部14に移動する経路を提供することができ、同時に、前記活性部14で生成された液体状の電解生成物が前記流路ガイド5の内部に移動する経路を提供することができる。
【0056】
前記流路ガイド5の内部に移動した液体状の電解生成物は、前記下部通孔6を介して前記流路ガイド5の内部に流入する原料物質などが提供する圧力によって、前記第2の流路9及び前記上部通孔8で上向きに移動して電気分解槽の外部へ流出されることができる。
【0057】
また、前記流路ガイド5の内部に移動した液体状の電解生成物中の一部は、前記下部内壁に具備された前記第3の流路10及び/または前記側部内壁の中で前記活性部14の少なくとも一方、すなわち、前記液体の水面の下に位置した前記第3の流路11を介して再び前記活性部14に循環されて戻ることができる。このように、液体状の電解生成物のうちの一部を前記活性部14へ循環させることで電解効率を一層向上させることができる。
【0058】
前記流路ガイド5の前記側部内壁の中で前記非活性部15の少なくとも一方、すなわち、前記液体の水面の上に位置した前記第3の流路11は、前記流路ガイド5の前記上部内壁に具備された前記第3の流路12とともに前記活性部14で生成された気体状の電解生成物が前記流路ガイド5の内部に移動する経路を提供することができる。前記流路ガイド5の内部に移動した気体状の電解生成物は前記第2の流路9及び前記上部通孔8を介して電気分解槽の外部に流出されることができる。
【0059】
前記反応部13の下部及び上部がそれぞれ前記活性部14と前記非活性部15とに区切られる場合、前記反応部13に満たされた原料物質及び電解生成物を含む液体の水面と前記上部内壁が既に設定済みの間隔で離隔されることができ、前記反応部13の上端、具体的に、前記非活性部15に所定の空間を形成することができる。
【0060】
このような空間は、電気分解反応によって生成された気体状の生成物を、前記液体の水面の上に具備された前記第3の流路11、12、前記第2の流路9及び前記上部通孔8を介して 円滑に排出させることができる。
【0061】
前記活性部14には前記流路ガイド5の前記下部内壁に具備された前記第3の流路10を介して流入した原料物質及び電解生成物を含む液体が既に設定済みの水位で満たされることができる。
【0062】
前記液体の水位があまり高くなると、前記活性部14で生成された気体状の電解生成物が滞留可能な空間が狭くなる可能性があり、それによって、前記電気分解槽の内部圧力を制御しにくく、前記流路ガイド5の前記側部内壁に具備された第3の流路11の大部分が前記液体の水面の下に浸され、このような気体状の電解生成物が外部へ排出される経路が適正に提供されにくいという問題がある。
【0063】
したがって、前記活性部14に満たされた液体の水面の上にこのような気体状の電解生成物が円滑に滞留、排出できる空間が形成されるように、前記反応部13の面積に対する前記活性部14の面積の割合を既に設定済みの範囲に設計することができる。
【0064】
例えば、前記反応部13の面積に対する前記活性部14の面積の割合は、0.1~0.9、好ましくは、0.2~0.8、より好ましくは、0.3~0.7であることができる。
【0065】
本発明の他の一態様は、前記電極構造体と、前記電極板の一面に対向して具備された隔膜と、を含む電気分解槽を提供する。
【0066】
図3aを参照されば、「冷却ジャケット4-陰極板1-流路ガイド5-隔膜2-流路ガイド5-陽極板3」を含む単位構造が多段で結合されて電気分解槽を構成することができる。
【0067】
前記単位構造が多段で結合された電気分解槽での物質の移動及び反応は、塩水の電気分解を介した次亜塩素酸ナトリウムの生成過程も基づいて下記のように例示されることができる。
【0068】
陽極板3の一周面に沿って具備された流路ガイド5の内部に流入した塩水は、流路ガイド5の下部内壁に具備された第3の流路及び側部内壁の中で低い領域に具備された第3の流路を介して陽極板の活性部に流入することができる。
【0069】
陰極板1の一周面に沿って具備された流路ガイド5の内部に流入した精製水は流路ガイド5の下部内壁に具備された第3の流路及び側部内壁の中で低い領域に具備された第3の流路を介して陰極板の活性部に流入することができる。
【0070】
陽極板及び陰極板に既に設定済みの電圧を印加すれば、陽極板の活性部で塩素ガス(Cl)が発生し、ナトリウムイオンが隔膜を介して陰極板の活性部に移動して陰極板の活性部で苛性ソーダ(NaOH)及び水素ガス(H)が発生する。
【0071】
陽極板の活性部で生成された塩素ガス及びその他液状の生成物は、流路ガイド5の側部内壁及び上部内壁に具備された第3の流路を介して流路ガイドの内部に移動した後、第2の流路及び上部通孔を介して電気分解槽の外部に流出されることができる。
【0072】
陰極板の活性部で生成された水素ガス、苛性ソーダ水溶液及びその他液状の生成物は流路ガイド5の側部内壁及び上部内壁に具備された第3の流路を介して流路ガイドの内部に移動した後、第2の流路及び上部通孔を介して電気分解槽の外部へ流出されることができる。
【0073】
このように、前記電極構造体及びこれを含む電気分解槽は、電極板、前記電極板の一面に具備されて電解反応によって発生した熱を吸収する冷却ジャケットと、前記電極板の一面に前記電極板の周面に沿って具備されて電気分解槽に対する物質の流出入経路を提供する流路ガイドと、を含むことで、電気分解槽及びこれを含む設備を全体的に簡素化するととともに、物質を移送及び/または循環させるための配管が外部へ露出することを最小化してメンテナンス及び管理が便利であり、事故、破損による危険を軽減させることができる。
【0074】
前述の本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を持つ者は、本発明の技術的思想や要旨を変更することなく他の具体的な形態に容易に変形可能であるということを理解することができるはずである。したがって、前述した実施形態は、すべての面で例示的なものであり限定的なものではないと理解しなければならない。例えば、単一型のものと説明されている各構成要素は、分散して実施されてもよく、同様に、分散したものと説明されている構成要素も、結合された形態で実施されてもよい。
【0075】
本発明の範囲は、後述する特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲の意味及び範囲、並びにその均等概念から導出されるすべての変更又は変形された形態も本発明の範囲に含まれるものと解釈されなければならない。
【符号の説明】
【0076】
1 陰極板(または陰極室)
2 隔膜
3 陽極板(または陽極室)
4 冷却ジャケット
5 流路ガイド
5’ 流路ガイドの内壁
6 下部通孔
7 第1の流路
8 上部通孔
9 第2の流路
10、11、12 第3の流路
13 反応部
14 活性部
15 非活性部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8