(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】ノイズレベルを判定する診断装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20240625BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
G06F3/041 522
G06F3/041 660
G06F3/044 120
(21)【出願番号】P 2022578278
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 JP2022001703
(87)【国際公開番号】W WO2022163451
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2021014061
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】形屋 寛行
(72)【発明者】
【氏名】佐古田 恭庸
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-021518(JP,A)
【文献】特開2019-071020(JP,A)
【文献】特開2013-114326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03
G06F 3/041 - 3/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項10】
静電容量式のタッチパネルを診断する診断方法であって、
前記タッチパネルを区画する複数のノードの各々における信号強度を取得する信号強度取得ステップ(S1)と、
取得された各前記信号強度のうち、タッチ検出用閾値未満の前記信号強度の状態に基づいて、ノイズレベルを判定するノイズレベル判定ステップ(S2)と、
を含む診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量式のタッチパネルに印加されるノイズの状態を診断する診断装置および診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特開2016-004337号公報に開示されているように、タッチパネルを備えた工作機械が従来からある。静電容量方式のタッチパネルの場合、ノイズが印加されることで静電容量が変化する。そのため、動作環境およびタッチパネルの感度によってはタッチ操作が誤検出される可能性がある。
【発明の概要】
【0003】
ところで、複数の工作機械が稼働する工場等では、加工中の工作機械から発生するノイズが、加工中の工作機械の周囲に設置される工作機械に印加され易い。しかし、工作機械は、ノイズの状態を取得していない。
【0004】
そこで、本発明は、ノイズの状態を捉え得る診断装置および診断方法を提供することを目的とする。
【0005】
本発明の第1の態様は、静電容量式のタッチパネルを診断する診断装置であって、前記タッチパネルを区画する複数のノードの各々における信号強度を取得する信号強度取得部と、取得された各前記信号強度のうち、タッチ検出用閾値未満の前記信号強度の状態に基づいて、ノイズレベルを判定するノイズレベル判定部と、を備える。
【0006】
本発明の第2の態様は、静電容量式のタッチパネルを診断する診断方法であって、前記タッチパネルを区画する複数のノードの各々における信号強度を取得する信号強度取得ステップと、取得された各前記信号強度のうち、タッチ検出用閾値未満の前記信号強度の状態に基づいて、ノイズレベルを判定するノイズレベル判定ステップと、を含む。
【0007】
本発明の態様によれば、ノイズの状態を捉えることができる。すなわち、タッチ検出用閾値以上の信号強度は、タッチ操作に起因するものかノイズに起因するものか捉え難いのに対し、タッチ検出用閾値未満の信号強度は、タッチ操作の有無にかかわらず、タッチパネルに印加するノイズに影響して現れる。したがって、タッチ検出用閾値未満の信号強度に基づいてノイズレベルを判定することで、ノイズの状態を捉えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、タッチパネル装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、タッチパネルの構造を示す模式図である。
【
図3】
図3は、駆動部からY軸電極に入力される駆動パルス信号を示すグラフである。
【
図4】
図4は、タッチパネル上のノードを示す図である。
【
図5】
図5は、診断装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、各ノードにおける信号強度の分布を示すグラフである。
【
図7】
図7は、ノイズレベルの表示例を示す図である。
【
図8】
図8は、診断処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態〕
図1は、タッチパネル装置10の構成を示すブロック図である。オペレータは、画像等が表示された表示部12上を操作体で触れることで、タッチパネル装置10への入力を行う。操作体は、例えば、ユーザの指、スタイラス等である。タッチパネル装置10には、工作機械を制御する数値制御装置14が接続される。タッチパネル装置10は、数値制御装置14の入力装置として用いられる。
【0010】
タッチパネル装置10は、表示部12、表示制御部16、タッチパネル18、駆動部20、受信部22、駆動制御部24、信号強度取得部26、操作位置特定部28および記憶媒体30を有する。
【0011】
表示部12は、液晶ディスプレイ等である。表示部12は、数値制御装置14に指令を入力するためのアイコン、あるいは、数値制御装置14から送られてくる工作機械の状況を示す情報等を表示する。表示制御部16は、数値制御装置14の要求にしたがって表示部12を制御する。
【0012】
タッチパネル18は、静電容量式のタッチパネルである。なお、タッチパネル18は、静電容量式のタッチパネルのうち、相互容量方式のタッチパネルであってもよく、自己容量方式のタッチパネルであってもよい。本実施形態では、タッチパネル18は、静電容量式のタッチパネルのうちの相互容量方式のタッチパネルとする。タッチパネル18は、透明なフィルム状に形成され、表示部12の画面上に設けられる。タッチパネル18には、駆動部20および受信部22が接続されている。
【0013】
図2は、タッチパネル18の構造を示す模式図である。タッチパネル18は、X軸電極Ex[1]~Ex[m]とY軸電極Ey[1]~Ey[n]とを有する。X軸電極Ex[1]~Ex[m]は、X軸方向にm列設けられ、Y軸方向に延びるように配置される。Y軸電極Ey[1]~Ey[n]は、Y軸方向にn列設けられ、X軸方向に延びるように配置される。
【0014】
Y軸電極Ey[1]~Ey[n]には、駆動部20が接続される。駆動部20は、Y軸電極Ey[1]~Ey[n]の各々に駆動パルス信号を送信する。以下では、Y軸電極Ey[1]~Ey[n]を区別しない場合には、Y軸電極Eyと記載することがある。
【0015】
X軸電極Ex[1]~Ex[m]には、受信部22が接続される。受信部22は、X軸電極Ex[1]~Ex[m]の各々から電流信号を受信する。以下では、X軸電極Ex[1]~Ex[m]を区別しない場合には、X軸電極Exと記載することがある。
【0016】
駆動制御部24(
図1)は、駆動部20を制御して、設定周波数の駆動パルス信号をY軸電極Ey[1]からY軸電極Ey[n]まで逐次送信する。
図3は、駆動部20からY軸電極Eyに入力される駆動パルス信号を示すグラフである。駆動制御部24は、駆動部20を制御して、Y軸電極Eyの各々に、設定周波数の駆動パルス信号を120パルスずつ逐次送信する。駆動部20は、120パルスの駆動パルス信号を1回として、各Y軸電極Ey[1]~Ey[n]に周期的に駆動パルス信号を送信する。なお、駆動パルス信号のパルス数は120パルスに限らなくともよい。
【0017】
信号強度取得部26は、受信部22がX軸電極Exの各々から受信した電流信号から、タッチパネル18上のノードN[1、1]~N[m、n]の各々における信号強度を取得する。以下では、ノードN[1、1]~N[m、n]を区別しない場合には、ノードNと記載することがある。
【0018】
タッチパネル18が操作されていない状態では、タッチパネル18に操作体が接触していない。この場合、Y軸電極EyとX軸電極Exとの間に、駆動パルス信号に応じて電流が流れる。このとき、受信部22が受信したX軸電極Exの電流信号を変換した電圧信号の振幅は電圧V0となる。タッチパネル18が操作されている状態では、タッチパネル18に操作体が接触している。この場合、Y軸電極Eyと操作体との間にも駆動パルス信号に応じて電流が流れる。そのため、X軸電極Exに流れる電流は、タッチパネル18が操作されている状態では、タッチパネル18が操作されていない状態よりも小さくなる。このとき、受信部22が受信したX軸電極Exの電流信号を変換した電圧信号の振幅は電圧V0よりも小さくなる。信号強度取得部26は、電圧V0を基準電圧とし、各X軸電極Exの検出信号を取得する。検出信号は、具体的には、受信部22が受信した各Y軸電極Eyの電流を変換した電圧Vと、電圧(基準電圧)V0との差分(|V0-V|)に応じた信号である。
【0019】
図4は、タッチパネル18上のノードN[1、1]~N[m、n]を示す図である。各ノードNは、タッチパネル18上を格子状に区画した1つの区画に相当する。各ノードNは、1組のY軸電極EyとX軸電極Exに対応付けられている。
図4には、ノードNの境界を示す線が記載されているが、実際のタッチパネル18にはノードNの境界を示す線は見えていない。
【0020】
信号強度取得部26は、駆動部20が駆動パルス信号を送信したY軸電極Eyの列と、受信部22が電流信号を受信したX軸電極Exの列との組み合わせに対応する1つのノードNを特定する。信号強度取得部26は、特定したノードNを構成するX軸電極Exの検出信号の強度を、特定したノードNにおける信号強度として取得する。例えば、駆動部20がY軸電極Ey[3]に駆動パルス信号を送信し、受信部22がX軸電極Ex[4]の電流信号を受信した場合には、信号強度取得部26は、ノードN[4、3]を特定する。この場合、信号強度取得部26は、ノードN[4、3]を構成するX軸電極Ex[4]の検出信号の強度を、ノードN[4、3]における信号強度として取得する。
【0021】
操作位置特定部28は、信号強度取得部26が取得した各ノードNにおける信号強度に基づいて、操作位置を特定する。操作位置特定部28が操作位置を特定する手法は、既知の手法のなかから任意に選択し得る。したがって、ここでの説明は省く。
【0022】
なお、表示制御部16、駆動制御部24、信号強度取得部26および操作位置特定部28は、記憶媒体30に記憶されているプログラムを、タッチパネル装置10が有するプロセッサに対して実行させることで実現されてもよい。
【0023】
本実施形態では、タッチパネル18を診断する診断装置50が数値制御装置14に備えられる。
図5は、診断装置50の構成を示すブロック図である。診断装置50は、CPU、MPU等のプロセッサ52と、ROM、RAM、ハードディスク等の各種のメモリを含む記憶媒体54とを有する。診断装置50は、プロセッサ52に対して、記憶媒体54に記憶される診断プログラムを実行させる。診断プログラムが実行されると、プロセッサ52は、信号強度取得部56、ノイズレベル判定部58およびノイズレベル通知部60として作動する。なお、信号強度取得部56、ノイズレベル判定部58およびノイズレベル通知部60の少なくとも1つがASIC、FPGA等の集積回路によって実現されてもよい。また、信号強度取得部56、ノイズレベル判定部58およびノイズレベル通知部60の少なくとも1つが、ディスクリートデバイスを含む電子回路によって構成されてもよい。
【0024】
信号強度取得部56は、複数のノードNの各々における信号強度を取得する。信号強度取得部56は、タッチパネル装置10の信号強度取得部26が取得した各ノードNにおける信号強度を、信号強度取得部26から受け取ってもよい。また、信号強度取得部56は、信号強度取得部26と同様に、受信部22がX軸電極Exの各々から受信した電流信号から、各ノードNにおける信号強度を取得してもよい。
【0025】
ノイズレベル判定部58は、信号強度取得部56で取得された各ノードNにおける信号強度に基づいて、ノイズレベルを判定する。
図6は、各ノードNにおける信号強度の分布を示すグラフである。
図6では、タッチ操作時にノイズが発生した場合が例示されている。
【0026】
タッチ検出用閾値TH以上の信号強度は、タッチ操作に起因するものかノイズに起因するものか捉え難い。一方、タッチ検出用閾値TH未満の信号強度は、タッチ操作の有無にかかわらず、タッチパネル18に印加するノイズに影響して現れる。特に、タッチ検出用閾値TH未満、かつ、タッチ検出用閾値THに最も近い信号強度SSは、ノイズの程度を推し量る指標として信頼性が高いパラメータの1つになり得る。ノイズレベル判定部58は、この信号強度SSの大きさに基づいてノイズレベルを判定する。
【0027】
本実施形態では、ノイズレベル判定部58は、タッチ検出用閾値THに対する信号強度SSの大きさの比率を求める。ノイズレベル判定部58は、求めた比率が20%未満である場合には、ノイズレベルを1段階(低段階)として判定する。一方、ノイズレベル判定部58は、求めた比率が20%以上50%未満である場合には、ノイズレベルを2段階(中段階)として判定する。他方、ノイズレベル判定部58は、求めた比率が50%以上80%未満である場合には、ノイズレベルを3段階(高段階)として判定する。なお、ノイズレベルの段階数は、3段階以外であってもよく、当該段階に割り当てる比率範囲は、上記の範囲以外であってもよい。
【0028】
このように、ノイズレベル判定部58は、タッチ検出用閾値THに対する信号強度SSの大きさの比率に基づいてノイズレベルを判定する。したがって、ノイズレベル判定部58は、タッチパネル18に対して実際に印加されるノイズに近似するノイズレベルを判定することができる。また、信号強度SSの大きさそのものでノイズレベルを判定する場合に比べて正確なノイズレベルを取得することができる。
【0029】
ノイズレベル通知部60は、ノイズレベル判定部58で判定されたノイズレベルを通知する。ノイズレベル通知部60は、スピーカ、発光部および表示部12の少なくとも1つを用いて、ノイズレベルを通知する。これにより、タッチパネル18を操作する操作者に対して、ノイズの状態を把握させることができ、また、ノイズによりタッチ操作の誤検出が起きる指標を提示することができる。
【0030】
なお、ノイズレベル通知部60は、スピーカを用いる場合、スピーカに接続されるスピーカ制御部を制御することで、ノイズレベル判定部58で判定されたノイズレベルを通知する。例えば、ノイズレベル通知部60は、スピーカからノイズレベルに応じた音量でブザーを出力させてもよく、スピーカからノイズレベルを発音させてもよい。
【0031】
ノイズレベル通知部60は、発光部を用いる場合、発光部に接続される発光制御部を制御することで、ノイズレベル判定部58で判定されたノイズレベルを通知する。例えば、ノイズレベル通知部60は、ノイズレベルに応じた明るさまたは色で発光部を発光させてもよく、ノイズレベルに応じた単位時間あたりの点滅数で発光部を点滅させてもよい。
【0032】
ノイズレベル通知部60は、表示部12を用いる場合、表示部12に接続される表示制御部16を制御することで、ノイズレベル判定部58で判定されたノイズレベルを通知する。
図7は、ノイズレベルの表示例を示す図である。例えば、ノイズレベル通知部60は、表示部12に診断画面IMを表示させる。また、ノイズレベル通知部60は、診断画面IMにおけるノイズレベルの表示欄F1に、ノイズレベルに応じて高さが異なるレベルバーLBを表示させる。
【0033】
なお、ノイズレベル通知部60は、表示部12を用いる場合、信号強度取得部56で取得された複数のノードNにおける信号強度を時系列で表示させてもよい。例えば、ノイズレベル通知部60は、ノイズの時間変化を表示するための診断画面IM内の表示欄F2にグラフを表示させる。グラフでは、例えば、縦軸が信号強度を示し、横軸が時間を示す。また、ノイズレベル通知部60は、信号強度取得部56で複数のノードNにおける信号強度が周期的に取得されるたびに、複数のノードNの信号強度の平均を算出し、算出した平均を表示欄F2のグラフにプロットして表示欄F2に波形WFを表示させる。このようにして、ノイズレベル通知部60は、信号強度取得部56で取得された複数のノードNの信号強度の平均を時系列で表示させる。これにより、タッチパネル18を操作する操作者に、ノイズが多く発生し易い時間帯等の傾向を把握させることができる。
【0034】
また、ノイズレベル通知部60は、表示部12を用いる場合、ノイズレベル判定部58で判定されたノイズレベルに関するメッセージを表示させてもよい。例えば、ノイズレベル通知部60は、診断画面IM内の表示欄F3に、ノイズレベル判定部58の判定結果、または、ノイズレベル判定部58の判定結果に応じた注意喚起を示す文字を表示させる。これにより、タッチパネル18を操作する操作者に、ノイズが発生する状況等を分かり易く伝えることができる。
【0035】
次に、診断装置50の診断方法を説明する。
図8は、診断処理の手順を示すフローチャートである。
【0036】
ステップS1において、信号強度取得部56は、複数のノードNの各々における信号強度を取得する。複数のノードNの各々における信号強度が取得されると、診断処理はステップS2に移行する。
【0037】
ステップS2において、ノイズレベル判定部58は、ステップS1で取得された各信号強度のうち、タッチ検出用閾値TH未満であり、かつ、タッチ検出用閾値THに最も近い信号強度SSを検出する。また、ノイズレベル判定部58は、タッチ検出用閾値THに対する信号強度SSの大きさの比率を求め、求めた比率に基づいてノイズレベルを判定する。ノイズレベルが判定されると、診断処理はステップS3に移行する。
【0038】
ステップS3において、ノイズレベル通知部60は、ノイズレベル判定部58で判定されたノイズレベルを通知する。ノイズレベルが通知されると、診断処理は終了する。
【0039】
以上のように本実施形態の診断装置50および診断方法は、タッチパネル18を区画する複数のノードNの各々における信号強度のうち、タッチ検出用閾値TH未満の信号強度の状態に基づいて、ノイズレベルを判定する。タッチ検出用閾値TH未満の信号強度は、タッチ操作の有無にかかわらず、タッチパネル18に印加するノイズを反映する(
図6参照)。したがって、タッチ検出用閾値TH未満の信号強度の状態に基づいてノイズレベルを判定することで、ノイズの状態を捉えることができる。
【0040】
タッチ検出用閾値TH未満の信号強度のうち、タッチ検出用閾値THに最も近い信号強度SSは、ノイズの程度を推し量る指標として信頼性が高いパラメータの1つになり得る。本実施形態の診断装置50および診断方法は、タッチ検出用閾値THに対する信号強度SSの大きさの比率に基づいてノイズレベルを判定する。これにより、タッチパネル18に対して実際に印加されるノイズに近似するノイズレベルを判定することができる。
【0041】
さらに、本実施形態の診断装置50および診断方法は、判定したノイズレベルを通知する。これにより、タッチパネル18を操作する操作者に対して、ノイズの状態を把握させることができる。また、ノイズによりタッチ操作の誤検出が起きる指標を提示することができる。
【0042】
〔変形例〕
上記の実施形態は、下記のように変形してもよい。
【0043】
(変形例1)
ノイズレベル判定部58は、オペレータの操作に応じて、比率の基準値、ノイズレベルの段階数、および、当該段階に割り当てる比率範囲との少なくとも1つを設定してもよい。このようにした場合、タッチパネル18が配置される環境等に応じて、ノイズレベルの判定の尺度を変更することができる。なお、比率の基準値は、実施形態では、タッチ検出用閾値THである。また、オペレータによる操作装置としては、タッチパネル18、工作機械に設けられる操作盤等が挙げられる。
【0044】
(変形例2)
ノイズレベル判定部58は、信号強度SSの大きさそのものに基づいてノイズレベルを判定してもよい。このようにしても、実施形態と同様に、タッチパネル18に対して実際に印加されるノイズに近似するノイズレベルを判定することができる。
【0045】
(変形例3)
タッチ検出用閾値TH未満、かつ、タッチ検出用閾値THよりも小さい閾値STH(
図6参照)以上の信号強度SSN(
図6参照)の数は、ノイズを推し量る指標として信頼性が高いパラメータの1つになり得る。したがって、ノイズレベル判定部58は、信号強度SSNの数に基づいてノイズレベルを判定してもよい。
【0046】
ノイズレベル判定部58は、信号強度SSNの数そのものでノイズレベルを判定してもよい。このようにした場合、タッチパネル18に対して実際に印加されるノイズに近似するノイズレベルを判定することができる。また、ノイズレベル判定部58は、基準値に対する信号強度SSNの数の比率でノイズレベルを判定してもよい。このようにした場合、タッチパネル18の大きさ等の影響を受けることなくノイズレベルを判定することができる。したがって、信号強度SSNの数そのものでノイズレベルを判定する場合よりも、タッチパネル18に対して実際に印加されるノイズのノイズレベルを判定することができる。
【0047】
なお、基準値に対する信号強度SSNの数の比率でノイズレベルを判定する場合、ノイズレベル判定部58は、オペレータの操作に応じて、基準値を設定してもよい。このようにした場合、タッチパネル18が配置される環境等に応じて、ノイズレベルの判定の尺度を変更することができる。なお、オペレータによる操作装置としては、タッチパネル18、工作機械に設けられる操作盤等が挙げられる。
【0048】
ノイズレベル判定部58は、信号強度SSと、信号強度SSNの数との双方に基づいてノイズレベルを判定してもよい。例えば、ノイズレベル判定部58は、基準値に対する信号強度SSの大きさの比率に、信号強度SSNの数に応じた係数を乗算し、乗算結果に基づいて、例えば実施形態のようにノイズレベルを3段階で判定し得る。
【0049】
(変形例4)
ノイズレベル通知部60は、信号強度取得部56で取得された複数のノードNの信号強度の強度分布(
図6参照)を時系列で表示させてもよい。このようにしても、ノイズが多く発生し易い時間帯等の傾向を把握させることができる。
【0050】
なお、ノイズレベル通知部60は、複数のノードNの信号強度の平均を時系列で表示させるとともに、複数のノードNにおける信号強度の強度分布を時系列で表示させてもよい。
【0051】
(変形例5)
ノイズレベル通知部60は、備えられなくてもよい。ノイズレベル通知部60が備えられなくても、信号強度取得部56およびノイズレベル判定部58によりノイズの状態を捉えることができる。
【0052】
(変形例6)
診断装置50は、タッチパネル装置10に接続される汎用のパーソナルコンピュータに備えられてもよく、タッチパネル装置10に備えられてもよい。
【0053】
(変形例7)
上記の実施形態および変形例1~6は、矛盾の生じない範囲で任意に組み合わされてもよい。
【0054】
〔発明〕
以下に、上記の実施形態および変形例1~7から把握し得る発明として、第1の発明および第2の発明を記載する。
【0055】
(第1の発明)
第1の発明は、静電容量式のタッチパネル(18)を診断する診断装置(50)であって、タッチパネルを区画する複数のノード(N)の各々における信号強度を取得する信号強度取得部(56)と、取得された各信号強度のうち、タッチ検出用閾値(TH)未満の信号強度の状態に基づいて、ノイズレベルを判定するノイズレベル判定部(58)と、を備える。タッチ検出用閾値以上の信号強度は、タッチ操作に起因するものかノイズに起因するものか捉え難いのに対し、タッチ検出用閾値未満の信号強度は、タッチ操作の有無にかかわらず、タッチパネルに印加するノイズに影響して現れる。したがって、タッチ検出用閾値未満の信号強度に基づいてノイズレベルを判定することで、ノイズの状態を捉えることができる。
【0056】
ノイズレベル判定部は、タッチ検出用閾値未満であり、かつ、タッチ検出用閾値に最も近い信号強度(SS)の大きさに基づいてノイズレベルを判定してもよい。これにより、タッチパネルに対して実際に印加されるノイズに近似するノイズレベルを判定することができる。
【0057】
ノイズレベル判定部は、基準値に対する信号強度の大きさの比率に基づいてノイズレベルを判定してもよい。これにより、タッチパネルの大きさ等の影響を受けることなくノイズレベルを判定することができる。したがって、信号強度の大きさそのものでノイズレベルを判定する場合よりも、タッチパネルに対して実際に印加されるノイズに近似するノイズレベルを判定することができる。
【0058】
ノイズレベル判定部は、オペレータの操作に応じて、基準値、ノイズレベルの段階数、および、ノイズレベルの各段階に割り当てる信号強度の範囲の少なくとも1つを設定してもよい。これにより、タッチパネルが配置される環境等に応じて、ノイズレベルの判定の尺度を変更することができる。
【0059】
基準値は、タッチ検出用閾値であってもよい。これにより、タッチ操作とノイズとを区別し易くなる。
【0060】
ノイズレベル判定部は、タッチ検出用閾値未満であり、かつ、タッチ検出用閾値よりも小さい閾値(STH)以上の信号強度の数に基づいてノイズレベルを判定してもよい。これにより、タッチパネルに対して実際に印加されるノイズに近似するノイズレベルを判定することができる。
【0061】
診断装置は、ノイズレベルを通知するノイズレベル通知部(60)を備えてもよい。これにより、タッチパネルを操作する操作者に対して、ノイズの状態を把握させることができ、また、ノイズによりタッチ操作の誤検出が起きる指標を提示することができる。
【0062】
ノイズレベル通知部は、ノイズレベルとともに、取得された複数のノードにおける信号強度を時系列で表示させてもよい。これにより、タッチパネルを操作する操作者に対して、ノイズが多く発生し易い時間帯等の傾向を把握させることができる。
【0063】
ノイズレベル通知部は、タッチパネルが設けられる表示部(12)の画面にノイズレベルを表示させてもよい。これにより、タッチパネルを操作する操作者に対して、タッチ操作させながらノイズレベルを把握させることができる。
【0064】
(第2の発明)
第2の発明は、静電容量式のタッチパネルを診断する診断方法である。診断方法は、タッチパネルを区画する複数のノードの各々における信号強度を取得する信号強度取得ステップ(S1)と、取得された各信号強度のうち、タッチ検出用閾値未満の信号強度の状態に基づいて、ノイズレベルを判定するノイズレベル判定ステップ(S2)と、を含む。タッチ検出用閾値以上の信号強度は、タッチ操作に起因するものかノイズに起因するものか捉え難いのに対し、タッチ検出用閾値未満の信号強度は、タッチ操作の有無にかかわらず、タッチパネルに印加するノイズに影響して現れる。したがって、タッチ検出用閾値未満の信号強度に基づいてノイズレベルを判定することで、ノイズの状態を捉えることができる。