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特許7509934不飽和基含有樹脂、その製造方法、及びそれを含む組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】不飽和基含有樹脂、その製造方法、及びそれを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/02 20060101AFI20240625BHJP
   C08F 12/34 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
C08G61/02
C08F12/34
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022580245
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-26
(86)【国際出願番号】 KR2021017897
(87)【国際公開番号】W WO2022145749
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】10-2020-0185202
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】カン,ソン キュ
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ド キョン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,グァン チュン
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第02/083610(WO,A1)
【文献】特開平09-031006(JP,A)
【文献】特開平09-020819(JP,A)
【文献】特開2018-087322(JP,A)
【文献】特開2018-024856(JP,A)
【文献】特開昭63-068537(JP,A)
【文献】特表平03-503060(JP,A)
【文献】国際公開第2015/122398(WO,A1)
【文献】特開2016-108562(JP,A)
【文献】特開2007-197616(JP,A)
【文献】特開平08-199040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 2/00- 2/38
C08G61/00- 61/12
C08F 6/00-246/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるオリゴマー及びアルカリ金属イオンを含み、
下記化学式1のnが0であるオリゴマーの含量は、樹脂全体重量を基準に、80重量%以下であり、
前記アルカリ金属イオンの含量が1ないし15ppmである、不飽和基含有樹脂:
【化1】
前記化学式1において、
nは、0ないし10のうちから選択された整数であり、
ないしRは、互いに独立して、水素、少なくとも1つのR’で置換もしくは非置換のC-C20アルキル基、少なくとも1つのR’で置換もしくは非置換のC-C20アルケニル基、または少なくとも1つのR’で置換もしくは非置換のC-C20アルキニル基であり、
前述のRないしRのうち少なくとも一つは、1以上の不飽和基を含み、
前記R’は、重水素、-F、-Cl、-Brまたは-I;あるいは
重水素、-F、-Cl、-Br、-I、C-C10アルキル基、C-C10アルケニル基、C-C10アルキニル基、C-C10アルコキシ基、C-C10シクロアルキル基、C-C20アリール基、またはそれらのいずれかの組み合わせで置換もしくは非置換の、C-C10アルキル基、C-C10アルケニル基、C-C10アルキニル基、C-C10アルコキシ基、C-C10シクロアルキル基またはC-C20アリール基;である。
【請求項2】
前記アルカリ金属イオンは、Naイオン、Kイオン、またはそれらのいずれかの組み合わせである、請求項1に記載の不飽和基含有樹脂。
【請求項3】
ビニルベンジルハライドを3,000ppm以下の含量で含む、請求項1に記載の不飽和基含有樹脂。
【請求項4】
前述のRないしRは、互いに独立して、下記化学式2-1ないし2-3で表される基のうちから選択される、請求項1に記載の不飽和基含有樹脂:
【化2】
【化3】
【化4】
前記化学式2-1ないし2-3において、
ないしRは、互いに独立して、水素、重水素、-F、-Cl、-Br、-I、C-C10アルキル基、C-C10アルケニル基、C-C10アルキニル基またはC-C10アルコキシ基であり、
*は、隣接原子との結合部位である。
【請求項5】
下記化学式1Aで表示される、請求項1に記載の不飽和基含有樹脂:
【化5】
前記nは、0ないし10のうちから選択された整数である。
【請求項6】
重量平均分子量(M)が500ないし4,000g/モルである、請求項1に記載の不飽和基含有樹脂。
【請求項7】
下記化学式10-1で表される化合物を、反応溶媒下において、下記化学式10-2で表されるハライド化合物と反応させ、第1混合溶液を製造する段階(A)と、
前記第1混合溶液を中和し、第2混合溶液を製造する段階(B)と、
前記第2混合溶液を水分離し、樹脂を製造する段階(C)と、を含み、
前記反応溶媒は、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、環状炭化水素、環含有ケトン、脂肪族アルコール、酢酸アルキルまたはその混合物であり、
下記化学式1で表されるオリゴマーを含む不飽和基含有樹脂であって、下記化学式1のnが0であるオリゴマーの含量は、樹脂全体重量を基準に、80重量%以下であり、アルカリ金属イオンの含量が1ないし15ppmである、前記樹脂の製造方法:
【化6】
<化学式10-2>
(R10)X
【化7】
前記化学式1、並びに化学式10-1及び化学式10-2において、
nは、0ないし10のうちから選択された整数であり、
ないしR、及びR10は、互いに独立して、水素、少なくとも1つのR’で置換もしくは非置換のC-C20アルキル基、少なくとも1つのR’で置換もしくは非置換のC-C20アルケニル基、または少なくとも1つのR’で置換もしくは非置換のC-C20アルキニル基であり、
前述のRないしRのうち少なくとも一つは、1以上の不飽和基を含み、
Xは、ハロゲンであり、
前記R’は、重水素、-F、-Cl、-Brまたは-I;あるいは
重水素、-F、-Cl、-Br、-I、C-C10アルキル基、C-C10アルケニル基、C-C10アルキニル基、C-C10アルコキシ基、C-C10シクロアルキル基、C-C20アリール基、またはそれらのいずれかの組み合わせで置換もしくは非置換の、C-C10アルキル基、C-C10アルケニル基、C-C10アルキニル基、C-C10アルコキシ基、C-C10シクロアルキル基またはC-C20アリール基;である。
【請求項8】
前記段階(C)後、中和後に水分離して不純物を除去する段階(D)をさらに含む、請求項7に記載の不飽和基含有樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記段階(A)において、前記化学式10-1で表される化合物と、前記化学式10-2で表されるハライド化合物とのモル比は、1:0.7ないし1:1.5である、請求項7に記載の不飽和基含有樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記段階(A)は、アルカリ金属触媒下で行われる、請求項7に記載の不飽和基含有樹脂の製造方法。
【請求項11】
前記アルカリ金属触媒は、NaOH、KOH、またはその混合物である、請求項10に記載の不飽和基含有樹脂の製造方法。
【請求項12】
前記段階(B)は、無機酸、金属リン酸塩、またはそれらの混合物を含む中和剤下で行われる、請求項7に記載の不飽和基含有樹脂の製造方法。
【請求項13】
前記金属リン酸塩は、NaHPO、NaHPO、またはそれらの混合物である、請求項12に記載の不飽和基含有樹脂の製造方法。
【請求項14】
請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載の不飽和基含有樹脂、硬化剤及び硬化促進剤を含む、不飽和基含有樹脂組成物。
【請求項15】
ガラス転移温度(T)が160ないし190℃である、請求項14に記載の不飽和基含有樹脂組成物。
【請求項16】
前記不飽和基含有樹脂100重量部に対し、硬化剤0.1ないし50重量部、及び硬化促進剤0.0001ないし0.05重量部を含む、請求項14に記載の不飽和基含有樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不飽和基含有樹脂、その製造方法、及びそれを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ、半導体、ディスプレイ、通信機器のような多様な電子製品には、特定の電子回路が印刷された印刷回路基板(PCB:printed circuit board)が使用されている。基板上には、信号伝達のための配線(signal lines)、配線間の短絡などを防止するための絶縁膜(insulating layers)、スイッチング素子(switching element)などが形成されうる。
【0003】
印刷回路基板は、ガラスファイバ(glass cloth)に、エポキシ樹脂を含浸させ、半硬化させたプリプレグを、回路が形成された内層回路基板上に積層する方式によっても形成される。または、回路が形成された内層回路基板の回路パターン上に、絶縁層を相互に積層して基板を製造するビルドアップ(build-up)工法によっても製造される。このとき、該ビルドアップ工法は、ビアホール(via hole)を形成して配線密度を向上させ、レーザ加工などによって回路を形成するために、該印刷回路基板の高密度化及び薄膜化に利点を有する。
【0004】
最近、電子機器の軽薄短小化の趨勢により、印刷回路基板も、高集積化及び高密度化されることにより、電子機器の安定性及び信頼性のために、該印刷回路基板の電気的、熱的、機械的な安定性が、重要な要素になっている。
【0005】
印刷回路基板において、電子機器の小型化、薄膜化、高性能化の流れに伴い、配線ピッチの狭小化による高密度配線の実現が要求されている。そのために、既存のワイヤボンディング方式を代替し、半田ボールにより、半導体装置と配線基板とを接合させるフリップチップ接続方式が主に利用されている。
【0006】
フリップチップ接続方式は、配線基板と半導体装置との間に半田ボールを配し、全体を加熱することにより、半田をリフローさせて接合するために、耐引火性が高い絶縁材料が要求されている。
【0007】
それに加え、前述のところの電子機器の高性能化要求により、電子機器の内部における信号が高速化及び高周波化される傾向を示している。電気信号の伝送損失は、誘電損失係数(D:dielectric dissipation factor)及び周波数と比例する。周波数が高いほど、伝送損失は大きくなり、信号の減衰を呼び起こし、信号伝送の信頼性低下が生ずる。また、伝送損失が熱に変換され、発熱の問題も引き起こされる。従って、既存の絶縁材料より、誘電率と誘電損失係数とがさらに小さい絶縁材料が必要である。
【0008】
しかしながら、従来、絶縁材料として多用されるエポキシ樹脂組成物及びその硬化物の場合、固有の特性により、誘電率と誘電損失係数とを低くすることが容易ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明者らは、前述の問題点を解決するために、多角的に研究を行った結果、所定含量範囲のアルカリ金属イオンを含み、一定程度レベルのオリゴマーを含む不飽和基含有樹脂を使用することにより、誘電率及び誘電損失係数が低くなり、ガラス転移温度特性が向上されることを確認し、本発明完成に至った。
【0010】
また、本発明の他の目的は、溶剤反応下において、水分離を介して不純物を除去し、生産コストを低くし、生産量が高いだけではなく、生産収率も向上された樹脂の製造方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、下記化学式1で表されるオリゴマー及びアルカリ金属イオンを含み、
下記化学式1のnが0であるオリゴマーの含量は、前記樹脂全体重量を基準に、80重量%以下であり、
前記アルカリ金属イオンの含量が1ないし30ppmである不飽和基(unsaturated group)含有樹脂を提供することである:
【0012】
【化1】
【0013】
前記化学式1において、
nは、0ないし10のうちから選択された整数であり、
ないしRは、互いに独立して、水素、少なくとも1つのR’で置換もしくは非置換のC-C20アルキル基、少なくとも1つのR’で置換もしくは非置換のC-C20アルケニル基、または少なくとも1つのR’で置換もしくは非置換のC-C20アルキニル基であり、
前述のRないしRのうち少なくとも一つは、1以上の不飽和基を含み、
前記R’は、重水素、-F、-Cl、-Brまたは-I;あるいは
重水素、-F、-Cl、-Br、-I、C-C10アルキル基、C-C10アルケニル基、C-C10アルキニル基、C-C10アルコキシ基、C-C10シクロアルキル基、C-C20アリール基、またはそれらのいずれかの組み合わせで置換もしくは非置換の、C-C10アルキル基、C-C10アルケニル基、C-C10アルキニル基、C-C10アルコキシ基、C-C10シクロアルキル基またはC-C20アリール基;である。
【0014】
本発明の他の態様は、下記化学式10-1で表される化合物を、反応溶媒下において、下記化学式10-2で表されるハライド化合物と反応させ、第1混合溶液を製造する段階(A)と、
前記第1混合溶液を中和し、第2混合溶液を製造する段階(B)と、
前記第2混合溶液を水分離し、樹脂を製造する段階(C)と、を含み、
前記反応溶媒は、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、環状炭化水素、環含有ケトン、脂肪族アルコール、酢酸アルキル、またはそれらの混合物であり、
下記化学式1で表されるオリゴマーを含む、不飽和基含有樹脂の製造方法を提供するものである:
【0015】
【化2】
【0016】
<化学式10-2>
(R10)X
【0017】
【化3】
【0018】
前記の化学式1、並びに化学式10-1及び化学式10-2において、
nは、0ないし10のうちから選択された整数であり、
ないしR、及びR10は、互いに独立して、水素、少なくとも1つのR’で置換もしくは非置換のC-C20アルキル基、少なくとも1つのR’で置換もしくは非置換のC-C20アルケニル基、または少なくとも1つのR’で置換もしくは非置換のC-C20アルキニル基であり、
前述のRないしRのうち少なくとも一つは、1以上の不飽和基を含み、
Xは、ハロゲンであり、
前記R’は、重水素、-F、-Cl、-Brまたは-I;あるいは
重水素、-F、-Cl、-Br、-I、C-C10アルキル基、C-C10アルケニル基、C-C10アルキニル基、C-C10アルコキシ基、C-C10シクロアルキル基、C-C20アリール基、またはそれらのいずれかの組み合わせで置換もしくは非置換の、C-C10アルキル基、C-C10アルケニル基、C-C10アルキニル基、C-C10アルコキシ基、C-C10シクロアルキル基またはC-C20アリール基;である。
【0019】
本発明のさらに他の態様は、前述の不飽和基含有樹脂、硬化剤及び硬化促進剤を含む組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、所定含量範囲のアルカリ金属イオンを含み、一定程度レベルのオリゴマーが存在すれば、不飽和基含有樹脂の誘電率及び誘電損失係数が低くなり、ガラス転移温度特性が向上されうる。
また、本発明は、溶剤反応下において、水分離を介して不純物を除去し、生産コストを低くし、生産量が高いだけではなく、生産収率も向上された樹脂の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例1による樹脂のゲル透過クロマトグラフィの結果である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のさまざまな実施例につき、本発明が属する技術分野における当業者が容易に実施することができるように、詳細に説明する。本発明は、さまざまな異なる形態に具現化されることもでき、ここで説明される実施例に限定されるものではない。
【0023】
本発明について、明確に説明するために、説明と係わりのない部分は、省略し、明細書全体を通じて、同一または類似した構成要素については、同一参照符号を付す。
また、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、それは、特別に反対となる記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むものであってもよいことを意味する。
【0024】
本明細書に使用された用語「C-C20アルキル基」は、炭素数1ないし20の線状または分枝状の脂肪族炭化水素一価(monovalent)基を意味する。前記C-C20アルキル基は、望ましくは、1ないし10、さらに望ましくは、1ないし8の炭素数を有しうる。前記C-C20アルキル基は、非置換のものだけではなく、後述する一定の置換基によってさらに置換されたものも包括して称しうる。その具体例には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、3-ペンチル基、sec-イソペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、n-デシル基、イソデシル基、sec-デシル基、tert-デシル基などが含まれる。
【0025】
本明細書に使用された用語「C-C20アルケニル基」は、1以上の炭素・炭素二重結合を含む、2ないし20、望ましくは、2ないし10、さらに望ましくは、2ないし6の炭素原子数の、線状または分枝状の一価炭化水素基を意味する。前記アルケニル基は、炭素・炭素二重結合を含む炭素原子を介し、あるいは飽和された炭素原子を介して結合されうる。前記アルケニル基は、非置換のものだけではなく、後述する一定の置換基によってさらに置換されたものも包括して称しうる。前記アルケニル基の例として、ビニル基(エテニル基)、1-プロペニル基、2-プロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、ペンテニル基5-ヘキセニル基、ドデセニル基などを挙げることができる。
【0026】
本明細書に使用された用語「C-C20アルキニル基」は、1以上の炭素・炭素三重結合を含む、2ないし20、望ましくは、2ないし10、さらに望ましくは、2ないし6の炭素原子数の、線状または分枝状の一価炭化水素基を意味する。前記アルキニル基は、炭素・炭素三重結合を含む炭素原子を介し、あるいは飽和された炭素原子を介して結合されうる。前記アルキニル基は、後述する一定の置換基により、さらに置換されたものも包括して称しうる。例えば、前記アルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基などを挙げることができる。
【0027】
本明細書に使用された用語「C-C10アルコキシ基」は、-OA101(ここで、A101は、前記C-C10アルキル基である)の化学式を有する一価基を意味し、その具体例には、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基などが含まれる。
【0028】
本明細書に使用された用語「C-C10シクロアルキル基」は、3個ないし10個の環炭素の飽和または不飽和の、一価の単環、二環または三環の非芳香族炭化水素基を意味し、後述する一定の置換基により、さらに置換されたものも包括して称しうる。例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンタニル(adamantanyl)基、ノルボルナニル(norbornanyl)基(または、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル(bicyclo[2.2.1]heptyl)基、ビシクロ[1.1.1]ペンチル基(bicyclo[1.1.1]pentyl)基、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル(bicyclo[2.1.1]hexyl)基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基などを挙げることができる。
【0029】
本明細書に使用された用語「C-C20アリール基」は、6個ないし20個の環原子を有する、一価の単環、二環または三環の芳香族炭化水素基を意味し、後述する一定の置換基により、さらに置換されたものも包括して称しうる。前記アリール基の例として、フェニル基、ペンタレニル基、ナフチル基、アズレニル基、インダセニル基、アセナフチル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ヘプタレニル基、ナフタセニル基、ピセニル基、ヘキサセニル基、ペンタセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、オバレニル基などを挙げることができる。
【0030】
本明細書において、全ての化合物または置換基は、特別な言及がない限り、置換もしくは非置換のものであることができる。ここで、「置換された」というのは、水素原子が、重水素、-F、-Cl、-Br、-I、C-C10アルキル基、C-C10アルケニル基、C-C10アルキニル基、C-C10アルコキシ基、C-C10シクロアルキル基及びC-C20アリール基;
重水素、-F、-Cl、-Br、-I、C-C10アルキル基、C-C10アルケニル基、C-C10アルキニル基、C-C10アルコキシ基、C-C10シクロアルキル基及びC-C20アリール基のうちから選択された少なくとも一つで置換された、C-C10アルキル基、C-C10アルケニル基、C-C10アルキニル基、C-C10アルコキシ基、C-C10シクロアルキル基及びC-C20アリール基のうちから選択されたいずれか一つで置換されたものを意味する。
【0031】
本明細書において、「ICP-OES」分析は、下記の条件下で行われた:
Flush Pump rate:40rpm
Analysis Pump rate:40rpm
RF Power:1,350W
Auxilary Gas Flow:1L/min
Nebulizer Gas Flow:0.4L/min
Coolant Gas flow:14L/min
Additional Gas Flow:0.1L/min
本明細書において、「GC」分析は、下記の条件下で行われた:
Column:HP-5(Agilent),0.25μm,30mX0.320mm
Injection:Split Ratio 50,Total flow 56ml/min,Pressure 80.9kPa
Temperature:Oven Temp 60℃=>5min Holding->280℃(20℃/min)=>5min Holding Injection Temp 280℃
Carrier Gas:N 20ml/min,H 30ml/min,Air 30ml/min
Detector:300℃,FID
Injection Volume:1μl
Sample:0.1~0.15g/20ml(THF)
Run Time:25min
【0032】
本発明の一態様による不飽和基(unsaturated group)含有樹脂は、下記化学式1で表されるオリゴマー及びアルカリ金属イオンを含み、下記化学式1のnが0であるオリゴマーの含量は、樹脂全体重量を基準に、80重量%以下であり、アルカリ金属イオンの含量が1ないし30ppmである:
【0033】
【化4】
【0034】
ここで、nが0であるオリゴマーの含量は、ゲル透過クロマトグラフィ(GPC)によっても分析される。
【0035】
ここで、アルカリ金属イオンの含量は、誘導結合プラズマ発光分析器(ICP-OES:inductively coupled plasma optical emission spectrometry)によっても分析される。
【0036】
一般的には、不飽和基含有樹脂に、アルカリ金属イオン(ナトリウム、カリウムイオンなど)が含まれれば、絶縁性が劣悪になり、信頼性が落ちるので、望ましくない。しかしながら、本出願の発明者らは、アルカリ金属イオンを、所定範囲の含量で含む場合、信頼性及び絶縁性の影響が少なく、むしろ耐熱性が向上される効果を発揮するということを確認した。
【0037】
前述のように、本発明の不飽和基含有樹脂は、アルカリ金属イオンの含量が、1ないし30ppm範囲であることを満足することにより、耐熱性が向上される効果を発揮することができる。例えば、前記不飽和基含有樹脂は、アルカリ金属イオンの含量が、5ないし20ppm範囲であることができる。
【0038】
それを外れ、アルカリ金属イオンの含量が1ppm未満である場合、所望レベルの耐熱性向上効果を発揮し難いという問題点があり、30ppmを超える場合、電気的絶縁性及び信頼性が阻害され、耐熱性も阻害されるという問題点がある。
【0039】
一具体例によれば、前記アルカリ金属イオンは、Naイオン、Kイオン、またはそれらのいずれかの組み合わせであることができる。例えば、前記アルカリ金属イオンは、Naイオンであることができる。
【0040】
一具体例によれば、前記不飽和基含有樹脂は、ビニルベンジルハライド(vinyl benzyl halide)を、3,000ppm以下の含量で含むものであることができる。例えば、前記ビニルベンジルハライドは、ビニルベンジルクロリド(VBC)であることができる。
【0041】
ここで、前記ビニルベンジルハライドの含量は、気体クロマトグラフィ(GC)によっても分析される。
【0042】
前記ビニルベンジルハライドの含量が3,000ppmを超える場合、電気的信頼性及び絶縁性が阻害されるという問題点がある。
【0043】
例えば、樹脂において、ビニルベンジルハライドの含量は、1ないし3,000ppmであることができる。
【0044】
前記化学式1において、RないしRは、互いに独立して、水素、少なくとも1つのR’で置換もしくは非置換のC-C20アルキル基、少なくとも1つのR’で置換もしくは非置換のC-C20アルケニル基、または少なくとも1つのR’で置換もしくは非置換のC-C20アルキニル基であり、前述のRないしRのうち少なくとも一つは、1以上の不飽和基を含む。
【0045】
一具体例によれば、前述のRないしRは、1以上の不飽和基を含むものであることができる。
例えば、前述のRないしRは、同一であるか、あるいは異なってもいる。
【0046】
一具体例によれば、前述のRないしRは、C-C10アルケニル基で置換されたC-C20アリール基で置換されたC-C20アルキル基であることができる。
【0047】
一具体例によれば、前述のRないしRは、互いに独立して、下記化学式2-1ないし2-3で表される基のうちからも選択される:
【0048】
【化5】
【0049】
【化6】
【0050】
【化7】
【0051】
前記化学式2-1ないし2-3において、
ないしRは、互いに独立して、水素、重水素、-F、-Cl、-Br、-I、C-C10アルキル基、C-C10アルケニル基、C-C10アルキニル基またはC-C10アルコキシ基であり、
*は、隣接原子との結合部位である。
【0052】
例えば、前記不飽和基含有樹脂は、下記化学式1Aで表されうる:
【0053】
【化8】
【0054】
前記nは、0ないし10のうちから選択された整数である。
【0055】
前記化学式1において、nは、0ないし10のうちから選択された整数である。
例えば、前記nは、0ないし5のうちから選択された整数であることができる。
【0056】
一具体例によれば、前記化学式1において、nが0であるオリゴマーの含量は、前記樹脂全体重量を基準に、80重量%以下であることができる。
【0057】
前記nが0であるオリゴマーの含量が80重量%以下であることにより、誘電率は、さらに低くなり、ガラス転移温度がさらに高くなるという効果を発揮することができる。
例えば、前記nが0であるオリゴマーの含量は、前記樹脂全体重量を基準に、20ないし80重量%であることができる。
【0058】
一具体例によれば、前記不飽和基含有樹脂は、重量平均分子量(M)は、500ないし4,000g/モルであることができる。
【0059】
前記重量平均分子量は、不飽和基含有樹脂の適用分野と関連があり、例えば、電子材料分野に適用するとき、その機能を十分に発揮することができる範囲である。前記重量平均分子量が前記範囲未満であるならば、他の樹脂との相溶性が良好ではなく、使用し難くなり、それと反対に、前記範囲を超えれば、溶媒との相溶性が低下され、電気的絶縁性及び信頼性が阻害され、応用が困難にもなる。
【0060】
本発明の他の一態様による不飽和基含有樹脂の製造方法は、下記化学式10-1で表される化合物を、反応溶媒下において、下記化学式10-2で表されるハライド化合物と反応させ、第1混合溶液を製造する段階(A)と、
前記第1混合溶液を中和し、第2混合溶液を製造する段階(B)と、
前記第2混合溶液を水分離し、樹脂を製造する段階(C)と、を含み、
前記反応溶媒は、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、環状炭化水素、環含有ケトン、脂肪族アルコール、酢酸アルキル、またはそれらの混合物でもあり、
前記樹脂は、下記化学式1で表されるオリゴマーを含む:
【0061】
【化9】
【0062】
<化学式10-2>
(R10)X
【0063】
【化10】
【0064】
前記化学式1及び化学式10-1において、n、RないしRに係わる内容は、上述の箇所を参照しても理解され、
前記化学式10-2において、R10に係わる内容は、RないしRについて定義された箇所を参照しても理解される。
【0065】
前記環状炭化水素は、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルトルエン、シクロヘキサン、またはそれらの組み合わせであることができる。
【0066】
前記環含有ケトンは、アセトヘキサン、アセトフェノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロペンタノン、またはそれらの組み合わせであることができる。
【0067】
前記脂肪族アルコールは、メタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、2-メトキシエタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、またはそれらの組み合わせであることができる。
【0068】
前記酢酸アルキルは、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、またはそれらの組み合わせであることができる。
【0069】
前記化学式10-2において、Xは、ハロゲンである。
【0070】
例えば、前記Xは、-F、-Cl、-Brまたは-Iであることができる。例えば、前記Xは、-Clであることができる。
【0071】
一具体例によれば、前記段階(C)後、中和後に水分離して不純物を除去する段階(D);をさらに含むものであることができる。
【0072】
一具体例によれば、前記段階(A)において、前記化学式10-1で表される化合物とハライド化合物とのモル比は、1:0.7ないし1:1.5であることができる。
【0073】
例えば、前記段階(A)反応は、40ないし80℃の温度において行うことができる。前記温度が40℃未満である場合、反応速度が過度に遅く、樹脂製造に長期間が必要となり、80℃超過の場合、過度に速い反応速度により、過反応が進められてしまうため望ましくない。
【0074】
一具体例によれば、前記段階(A)は、アルカリ金属触媒下で行うことができる。
【0075】
例えば、前記アルカリ金属触媒は、NaOH、KOH、またはその混合物であることができる。前記アルカリ金属触媒の濃度は、0.001ないし50重量%であることができる。
【0076】
一具体例によれば、前記段階(B)は、中和剤であるならば、特別に限定されるものではないが、硫酸、リン酸、塩酸のような無機酸だけではなく、金属リン酸塩などの下で行うことができる。例えば、前記中和剤は、金属リン酸塩であることができる。
【0077】
例えば、前記金属リン酸塩は、NaHPO4、NaHPO、またはそれらの混合物であることができる。
【0078】
一具体例によれば、前記段階(D)は、水分離時、水を単独で使用することができる。
他の具体例によれば、前記段階(D)は、水分離時、水に加え、炭素数2ないし6である脂肪族アルコール(エチルアルコール、イソプロパノール、n-ブタノールなど)を追加し、水分離を容易にすることができる。そのとき、前記水と非プロトン性極性溶媒との比率は、100:0~40:60であることができる。
【0079】
従来には、不飽和基を導入したジシクロペンタンジエン(DCPD)・フェノール系樹脂の製造において、メタノールのような逆溶媒(anti-solvent)を使用した沈澱法を使用したが、それは、工程コストが高く、単位別生産量が低いだけではなく、生産収率も低いという問題点があった。
【0080】
また、溶媒としてアセトンを使用する場合、水分離されないという問題点があった。
【0081】
本発明による樹脂の製造方法は、反応溶媒として、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、環状炭化水素、環含有ケトン、脂肪族アルコール、酢酸アルキル、またはそれらを含む混合溶媒を使用することにより、沈澱法ではなく、溶媒反応下において、水分離を介して不純物を除去することができる。また、中和段階を経ながら、工程コストを節減し、生産量と生産収率とを向上させることができる。
【0082】
本発明のさらに他の一態様による不飽和基含有樹脂組成物は、前述の不飽和基含有樹脂、硬化剤及び硬化促進剤を含む。
【0083】
一具体例によれば、前記不飽和基含有樹脂組成物は、ガラス転移温度(T)が160ないし190℃であることができる。例えば、前記不飽和基含有樹脂組成物は、ガラス転移温度(T)が170ないし190℃であることができるが、それに限定されるのではない。前記ガラス転移温度は、熱機械分析(TMA)を利用し、厚み5~10mmに切った試験片を、一定昇温環境で加熱するとき、相転移が起こることによる物質の膨脹量温度によって描いて測定した値である。前記ガラス転移温度範囲において、前記不飽和基含有樹脂組成物は、優秀な耐熱性を有しうる。
【0084】
前記不飽和基含有樹脂組成物は、10GHzにおいて、誘電率(D)が3.7未満であることができる。また、前記不飽和基含有樹脂組成物は、10GHzにおいて、誘電損失係数(D)が0.006未満であることができる。
【0085】
前記不飽和基含有樹脂100重量部に対し、硬化剤0.1ないし50重量部、及び硬化促進剤0.0001ないし0.05重量部を含むものであることができる。
【0086】
前記硬化剤が前記範囲内に含まれる場合、適切な硬化速度を有するという長所がある。前記硬化促進剤は、0.0001重量部未満である場合、硬化反応が円滑になされず、0.05重量部超過の場合、過反応が起こってしまい、望ましくない。
【0087】
前記硬化剤は、本発明が属する分野で一般的に使用されるものを使用することができ、例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC:triallyl isocyanurate)、ビスマレイミド(bismaleimide)、イソシアヌレートなどを挙げることができる。例えば、イソシアヌレート、ビスマルレイド、及びそれらの混合物を使用することができ、例えば、トリアリルイソシアヌレートを使用することができる。
【0088】
前記硬化促進剤も、本発明が属する分野で一般的に使用されるものを使用することができ、例えば、過酸化ジクミル(DCP:dicumyl peroxide)、過酸化ベンゾイル(benzoyl peroxide)のような過酸化物と、アゾビスイソブチロニトリル(azobisisobutyronitrile)のような一般的なラジカル開始剤とを挙げることができる。
【0089】
前述の本発明による組成物は、組成物内に含まれる不飽和基含有樹脂が、低い誘電率と、高いガラス転移温度とを有することにより、絶縁性及び耐熱性を向上させ、絶縁材の使用が要求される全ての分野に使用されうる。
【0090】
本明細書において「R’」は、
重水素、-F、-Cl、-Brまたは-I;あるいは
重水素、-F、-Cl、-Br、-I、C-C10アルキル基、C-C10アルケニル基、C-C10アルキニル基、C-C10アルコキシ基、C-C10シクロアルキル基、C-C20アリール基、またはそれらのいずれかの組み合わせで置換もしくは非置換の、C-C10アルキル基、C-C10アルケニル基、C-C10アルキニル基、C-C10アルコキシ基、C-C10シクロアルキル基またはC-C20アリール基;である。
【0091】
以下、本発明の効果に係わる理解の一助とするために、製造例、実施例、比較例及び実験例を記載する。ただし、下記記載は、本発明の内容及び効果に係わる一例に該当するのみ、本発明の権利範囲及び効果は、それらに限定されるのではない。
【実施例
【0092】
実施例1:不飽和基含有樹脂1の製造
窒素でパージした(purge)3Lの3口フラスコに、ジシクロペンタンジエン(DCPD)・フェノール(KPE-F6135(コーロン社製)、n=0であるオリゴマー(n=0である部分):25wt%)300gと、メチルエチルケトン(MEK)1,000gとを投入し、ビニルベンジルクロリド(VBC、ortho:para=2:8)330gを投入した後、50℃まで昇温させた。
【0093】
次に、50%水酸化ナトリウム水溶液200gを、2~3時間にかけて徐々に投入した。投入完了後、50℃で24時間反応させ、冷却を施した。冷却後、NaHPOで中和した後、熱湯を投入し、水分離を施した。その後、熱湯を何回か投入し、未反応物及び副産物を除去した後、真空減圧下において、メチルエチルケトン(MEK)溶剤を脱気させて除去した。
【0094】
収量は、498gであり、Na含量は、15ppmであり、残留ビニルベンジルクロリドは、2,000ppmであり、n=0である部分は、25%であり、分子量は、1,430g/モルであった。
【0095】
実施例2:不飽和基含有樹脂2の製造
実施例1の条件において、ジシクロペンタンジエン(DCPD)・フェノール(KPE-F6115(コーロン社製)、n=0である部分:40wt%)に変更したことを除いて、全ての過程は、同一である。
【0096】
収量は、492gであり、Na含量は、10ppmであり、残留ビニルベンジルクロリドは、1,840ppmであり、n=0である部分は、40%であり、分子量は、1,120g/モルであった。
【0097】
実施例3:不飽和基含有樹脂3の製造
実施例1の条件において、ジシクロペンタンジエン(DCPD)・フェノール(KPE-F6095(コーロン社製)、n=0である部分:70wt%)に変更したことを除いて、全ての過程は、同一である。
【0098】
収量は、495gであり、Na含量は、14ppmであり、残留ビニルベンジルクロリドは、2,620ppmであり、n=0である部分は、70%であり、分子量は、834g/モルであった。
【0099】
比較例1:ジシクロペンタンジエン(DCPD)・フェノールを利用して製造された樹脂
実施例1の条件において、ジシクロペンタンジエン(DCPD)・フェノール(n=0である部分:100wt%)に変更したことを除いて、全ての過程は、同一である。
【0100】
収量は、493gであり、Na含量は、16ppmであり、残留ビニルベンジルクロリドは、1,950ppmであり、n=0である部分は、100%であり、分子量は、495g/モルであった。
【0101】
比較例2:ジシクロペンタンジエン(DCPD)・クレゾールを利用して製造された樹脂
実施例1の条件において、ジシクロペンタンジエン(DCPD)・クレゾール(n=0である部分:100wt%)に変更した以外には、全ての過程は、同一である。
【0102】
収量は、496gであり、Na含量は、17ppmであり、残留ビニルベンジルクロリドは、2,340ppmであり、n=0である部分は、100%であり、分子量は、534g/モルであった。
【0103】
比較例3:逆溶媒を利用して製造された樹脂
米国登録特許4,824,920の実施例に開示された方法により、KPE-F6115(コーロン社製)(n=0である部分:40wt%)を使用して製造した。
【0104】
収量は、450gであり、Na含量は、0.5ppmであり、残留ビニルベンジルクロリドは、1,650ppmであり、n=0である部分は、40%であり、分子量は、1,142g/モルであった。
【0105】
樹脂組成物の製造
前述の実施例1ないし3、及び比較例1ないし3による樹脂を利用した組成物(ワニス(varnish))を、下記表1に記載されているような含量で混合して製造した。
【0106】
前記ワニスを製造する具体的な内容は、以下の通りである。
【0107】
硬化剤は、多官能基であるトリアリルイソシアヌレート(TAIC)を使用し、硬化促進剤としては、過酸化ジクミル(DCP)を使用した。また、ワニスの固形分を60重量%に合わせるために、メチルエチルケトン(MEK)を追加投入した。下記表1に、それぞれ実施例1ないし3、及び比較例1ないし3で製造された樹脂を利用した組成物の配合比が示されている。
【0108】
【表1】
【0109】
評価例1:重量平均分子量(M )測定
ゲル透過クロマトグラフィ(GPC)(Waters707(Waters))により、ポリスチレン換算重量平均分子量(M)を求めた。測定する重合体は、4,000ppmの濃度になるように、テトラヒドロフランに溶解させ、該ゲル透過クロマトグラフィ(GPC)に100μlを注入した。該ゲル透過クロマトグラフィ(GPC)の移動相は、テトロヒドロフランを使用し、1.0mL/分の流速で流入し、分析は、35℃で行った。カラムは、Waters HR-05,1,2及び4Eを直列に連結した。検出器としては、RI and PAD detectorを利用し、35℃で測定した。
【0110】
評価例2:Na含量測定
下記条件下において、ICP-OES分析により、Na含量を測定した。
Flush Pump rate:40rpm
Analysis Pump rate:40rpm
RF Power:1,350W
Auxilary Gas Flow:1L/min
Nebulizer Gas Flow:0.4L/min
Coolant Gas flow:14L/min
Additional Gas Flow:0.1L/min
【0111】
評価例3:誘電率測定
【0112】
(1)プリプレグ(prepreg)の製造
前述の実施例1ないし3、及び比較例1ないし3で製造された樹脂を利用したワニスに、ガラスファイバを含浸させ、常温で1時間自然乾燥させた後、155℃オーブンで乾燥させ、プリプレグを製造した。
【0113】
(2)銅箔積層板の製造
前述の製造されたプリプレグ3枚を重ね、先後に、銅箔(1オンス)を被せ、195℃において40kgf/cm圧力下で120分間プレッシングして製造した。
【0114】
(3)誘電率の測定
前述の製造された銅箔積層板を1cm×1cmに切った後、銅箔を剥がし、CDMS100(AET.INC)を使用し、10GHz下の条件において、誘電定数(D)及び誘電損失(D)を測定した。具体的な測定条件は、以下の通りである。
測定周波数:10GHz
測定温度:25~27℃
測定湿度:45~55%
測定試料厚:5~10mm
【0115】
評価例4:ガラス転移温度(T )の測定
前記評価例3によって製造された銅箔積層板を5mmX5mmに切った後、銅箔を剥がし、TMAQ400(TA Instruments社製)を利用して測定した。具体的な測定条件は、以下の通りである。
測定温度:25~300℃
昇温温度:10℃/分
測定湿度:45~55%
測定試料厚:5~10mm
【0116】
前述の方法で測定された物性を、下記表2に記載した。
【0117】
【表2】
【0118】
前述の表2に明示されているように、実施例1ないし3の樹脂組成物は、比較例1ないし2の樹脂組成物に比較し、ガラス転移温度及び誘電特性がすぐれているということを確認することができた。それは、オリゴマーの含量が、誘電特性及びガラス転移温度の向上に寄与するということを意味する。また、実施例2の樹脂は、比較例3に比較し、収量が多く、誘電特性は、類似しているが、ガラス転移温度が高いということを確認することができた。それは、本発明による製造方法が、さらに効率的であるということを意味し、同じ物質であるとしても、本発明に開示されたアルカリ金属イオンの含量により、ガラス転移温度が向上されるということを確認することができた。
【0119】
従って、本発明による、一定レベルのオリゴマーとアルカリ金属イオンとが含まれた不飽和基含有樹脂は、誘電特性及びガラス転移温度がすぐれているという効果を発揮し、特定工程を介し、従来より収率が高いだけではなく、優秀な特性を発揮することができる。
【0120】
本発明の単なる変形または変更は、いずれも当該分野の当業者により、容易に実施され、そのような変形や変更は、いずれも本発明の領域に含まれるとすることができる。
図1