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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】閉塞部材及び貫通孔の閉塞構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 5/02 20060101AFI20240625BHJP
   F16L 5/04 20060101ALI20240625BHJP
   A62C 3/16 20060101ALI20240625BHJP
   H02G 3/22 20060101ALI20240625BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
F16L5/02 D
F16L5/04
A62C3/16 B
H02G3/22
E04B1/94 D
E04B1/94 F
E04B1/94 T
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023057133
(22)【出願日】2023-03-31
(62)【分割の表示】P 2019167573の分割
【原出願日】2019-09-13
(65)【公開番号】P2023086749
(43)【公開日】2023-06-22
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】加藤 佳志
(72)【発明者】
【氏名】久保田 悠揮
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-100518(JP,A)
【文献】国際公開第2013/145790(WO,A1)
【文献】特開昭61-149681(JP,A)
【文献】特開2019-052527(JP,A)
【文献】特公昭49-026531(JP,B1)
【文献】独国特許出願公開第102013203173(DE,A1)
【文献】特開2014-047825(JP,A)
【文献】特開2014-045879(JP,A)
【文献】国際公開第2010/067637(WO,A1)
【文献】中国実用新案第204459484(CN,U)
【文献】特開2016-165356(JP,A)
【文献】独国実用新案第20017115(DE,U1)
【文献】特開2020-197237(JP,A)
【文献】特開2019-100519(JP,A)
【文献】特開2008-215625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 5/00
E04B 1/94
A62C 3/16
H02G 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防火区画壁に設けられた貫通孔の内面と、前記貫通孔に挿通された貫通部材の外面との間の空隙に収容されて前記空隙を閉塞する閉塞部材であって、
気泡を多数有するスポンジ状であり、圧縮変形可能な複数のブロック部が一方向に並ぶとともに、各ブロック部の厚さ方向の一端側で全てのブロック部が繋がり、前記一方向及び前記厚さ方向に直交する方向を奥行方向とすると、前記貫通孔が前記防火区画壁を貫通する方向と前記奥行方向が一致する状態で前記空隙に収容され、
前記一方向に隣り合う前記ブロック部の側面同士の間に、前記厚さ方向及び前記奥行方向に延びるスリットを有するとともに、前記一方向に並ぶ前記ブロック部はそれぞれ独立して圧縮変形可能であり、
前記スリットを区画する前記ブロック部の側面は、前記奥行方向及び前記厚さ方向に延びる仮想面に対し交差していることを特徴とする閉塞部材。
【請求項2】
前記スリットは、前記奥行方向の全体に亘って連続して延びている請求項1に記載の閉塞部材。
【請求項3】
防火区画壁に設けられた貫通孔の内面と、前記貫通孔に挿通された貫通部材の外面との間の空隙に収容されて前記空隙を閉塞する閉塞部材であって、
気泡を多数有するスポンジ状であり、圧縮変形可能な複数のブロック部が一方向に並ぶとともに、各ブロック部の厚さ方向の一端側で全てのブロック部が繋がり、前記一方向及び前記厚さ方向に直交する方向を奥行方向とすると、前記貫通孔が前記防火区画壁を貫通する方向と前記奥行方向が一致する状態で前記空隙に収容され、
前記一方向に隣り合う前記ブロック部の側面同士の間に、前記厚さ方向及び前記奥行方向に延びるスリットを有するとともに、前記一方向に並ぶ前記ブロック部はそれぞれ独立して圧縮変形可能であり、
前記一方向に並ぶ複数のブロック部に対して前記奥行方向にずれた位置であって、前記一方向に隣り合うブロック部の側面同士の間のスリットの奥行方向に延びる先に、別のブロック部が設けられ、
当該別のブロック部は、前記厚さ方向の一端側で前記一方向に並ぶ複数のブロック部と繋がるとともに、前記一方向に並ぶ複数のブロック部との間に、前記厚さ方向及び前記一方向に延びるスリットを有するとともに、前記一方向に並ぶ複数のブロック部とは独立して圧縮変形可能であり、
前記スリットを区画する前記ブロック部の側面は、前記奥行方向及び前記厚さ方向に延びる仮想面に対し交差している、又は前記奥行方向の途中で分断されていることを特徴とする閉塞部材。
【請求項4】
防火区画壁に設けられた貫通孔の内面と、前記貫通孔に挿通された貫通部材の外面との間の空隙に収容されて前記空隙を閉塞する閉塞部材であって、
気泡を多数有するスポンジ状であり、圧縮変形可能な複数のブロック部が一方向に並ぶとともに、各ブロック部の厚さ方向の一端側で全てのブロック部が繋がり、前記一方向及び前記厚さ方向に直交する方向を奥行方向とすると、前記貫通孔が前記防火区画壁を貫通する方向と前記奥行方向が一致する状態で前記空隙に収容され、
前記一方向に隣り合う前記ブロック部の側面同士の間に、前記厚さ方向及び前記奥行方向に延びるスリットを有するとともに、前記一方向に並ぶ前記ブロック部はそれぞれ独立して圧縮変形可能であり、
前記スリットは、前記奥行方向の全体に亘って連続して延びているとともに、前記厚さ方向から見て、湾曲している、又は複数個所で屈折している、又は前記スリットを区画する前記ブロック部の側面は、前記奥行方向及び前記厚さ方向に延びる仮想面に対し交差していることを特徴とする閉塞部材。
【請求項5】
防火区画壁に設けられた貫通孔の内面と、前記貫通孔に挿通された貫通部材の外面との間の空隙に収容されて前記空隙を閉塞する閉塞部材であって、
気泡を多数有するスポンジ状であり、圧縮変形可能な複数のブロック部が一方向に並ぶとともに、各ブロック部の厚さ方向の一端側で全てのブロック部が繋がり、前記一方向及び前記厚さ方向に直交する方向を奥行方向とすると、前記貫通孔が前記防火区画壁を貫通する方向と前記奥行方向が一致する状態で前記空隙に収容され、
前記一方向に隣り合う前記ブロック部の側面同士の間に、前記厚さ方向及び前記奥行方向に延びるスリットを有するとともに、前記一方向に並ぶ前記ブロック部はそれぞれ独立して圧縮変形可能であり、
前記スリットの前記奥行方向に延びる先に、前記一方向に並ぶ複数のブロック部とは前記厚さ方向の一端側のみで繋がっており、前記一方向に並ぶ複数のブロック部と独立して圧縮変形可能な別のブロック部が設けられ、かつ、前記スリットの前記奥行方向に延びる先に、当該別のブロック部の前記一方向に並ぶ複数のブロック部の側に向く側面からなり、前記一方向に並ぶブロック部の側面間により定められた前記スリットの幅より幅広である非連通面が位置していることを特徴とする閉塞部材。
【請求項6】
防火区画壁に設けられた貫通孔の内面と、前記貫通孔に挿通された貫通部材の外面との間の空隙に収容されて前記空隙を閉塞する閉塞部材であって、
気泡を多数有するスポンジ状であり、圧縮変形可能な複数のブロック部が一方向に並ぶとともに、各ブロック部の厚さ方向の一端側で全てのブロック部が繋がり、前記一方向及び前記厚さ方向に直交する方向を奥行方向とすると、前記貫通孔が前記防火区画壁を貫通する方向と前記奥行方向が一致する状態で前記空隙に収容され、
前記一方向に隣り合う前記ブロック部の側面同士の間に、前記厚さ方向及び前記奥行方向に延びるスリットを有するとともに、前記一方向に並ぶ前記ブロック部はそれぞれ独立して圧縮変形可能であり、
前記スリットは、前記厚さ方向から見て、前記奥行方向に対し異なる方向に傾斜し互いに交差する2種類の傾斜スリットを備えることを特徴とする閉塞部材。
【請求項7】
防火区画壁に設けられた貫通孔の内面と、前記貫通孔に挿通された貫通部材の外面との間の空隙に収容されて前記空隙を閉塞する閉塞部材であって、
気泡を多数有するスポンジ状であり、圧縮変形可能な複数のブロック部が一方向に並ぶとともに、各ブロック部の厚さ方向の一端側で全てのブロック部が繋がり、前記一方向及び前記厚さ方向に直交する方向を奥行方向とすると、前記貫通孔が前記防火区画壁を貫通する方向と前記奥行方向が一致する状態で前記空隙に収容され、
前記一方向に隣り合う前記ブロック部の側面同士の間に、前記厚さ方向及び前記奥行方向に延びるスリットを有するとともに、前記一方向に並ぶ前記ブロック部はそれぞれ独立して圧縮変形可能であり、
原形状態において、前記スリットを区画するよう対面した隣り合う前記ブロック部の側面は当接しており、
前記スリットを区画する前記ブロック部の側面は、前記奥行方向及び前記厚さ方向に延びる仮想面に対し交差している、又は前記奥行方向の途中で分断されていることを特徴とする閉塞部材。
【請求項8】
防火区画壁に設けられた貫通孔の内面と、前記貫通孔に挿通された貫通部材の外面との間の空隙に閉塞部材が収容されて構成される貫通孔の閉塞構造であって、
前記閉塞部材は、請求項1~請求項7のうちいずれか一項に記載の閉塞部材であって、
前記閉塞部材は、前記貫通部材の外面に接触する状態で前記空隙に収容されており、
前記貫通部材の外面に接触する少なくとも一つの前記ブロック部は、前記貫通部材の外面の接触に伴って圧縮変形していることを特徴とする貫通孔の閉塞構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防火区画壁に設けられた貫通孔の内面と、貫通孔に挿通された貫通部材の外面との間に収容される閉塞部材、及び貫通孔の閉塞構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築物における防火区画壁に、長尺の貫通部材としての配線・配管材を貫通させるために、防火区画壁には貫通孔が形成されるとともに、貫通孔を閉塞するための閉塞構造が設けられている。貫通孔の閉塞構造は、例えば、防火区画壁を挟んだ一方の壁表側で火災等が発生したとき、貫通孔を経由して他方側に火炎、煙、有毒ガスが流入するのを阻止するために設けられている。
【0003】
このような貫通孔の閉塞構造として、貫通孔の内面と配線・配管材の外面との間に閉塞部材を複数収容し、複数の閉塞部材によって貫通孔の内面と配線・配管材の外面との間の空隙を閉鎖するものがある。このような閉塞構造に用いられる閉塞部材としては、例えば、特許文献1に開示される耐火部材が挙げられる。
【0004】
特許文献1の耐火部材は、矩形平板状の基部と、基部に貼着されたシート材と、を有する。耐火部材は、基部の長手方向に複数のスリットを備える。基部は、複数のスリットによって複数のブロック部に分割されている。基部の長手方向に隣り合うブロック部同士は、連結部によって連結されている。そして、ブロック部は、それぞれ単独で圧縮変形可能であるとともに、圧縮変形した状態から原形状へ復帰するための反力を備える。
【0005】
耐火部材は、貫通孔の内面と配線・配管材外面との間に厚さ方向に圧縮変形させた状態で詰め込まれている。配線・配管材の外面に接する耐火部材は、厚さ方向に圧縮変形したブロック部毎に自身の反力によって、配線・配管材の外面に圧接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-100518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、ブロック部が厚さ方向に圧縮変形するのに伴いスリットが広がると、隣り合うブロック部の側面同士の間に防火区画壁を貫通する方向へ一直線に延びる隙間が形成されてしまい、隙間によって、貫通孔の一方側から他方側が視認できる状態になる虞がある。
【0008】
本発明の目的は、ブロック部が厚さ方向に圧縮変形したときに、防火区画壁を貫通する方向へ一直線に延びる隙間が形成されることを抑制できる閉塞部材、及び貫通孔の閉塞構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するための閉塞部材は、防火区画壁に設けられた貫通孔の内面と、前記貫通孔に挿通された貫通部材の外面との間の空隙に収容されて前記空隙を閉塞する閉塞部材であって、圧縮変形可能な複数のブロック部が一方向に並ぶとともに、各ブロック部の厚さ方向の一端側で全てのブロック部が繋がり、前記一方向及び前記厚さ方向に直交する方向を奥行方向とすると、前記貫通孔が前記防火区画壁を貫通する方向と前記奥行方向が一致する状態で前記空隙に収容され、前記一方向に隣り合う前記ブロック部の側面同士の間に、前記厚さ方向及び前記奥行方向に延びるスリットを有するとともに、前記一方向に並ぶ前記ブロック部はそれぞれ独立して圧縮変形可能であり、前記スリットを区画する前記ブロック部の側面は、前記奥行方向及び前記厚さ方向に延びる仮想面に対し交差していることを要旨とする。
【0010】
閉塞部材について、前記スリットは、前記奥行方向の全体に亘って連続して延びていてもよい。
上記問題点を解決するための閉塞部材は、防火区画壁に設けられた貫通孔の内面と、前記貫通孔に挿通された貫通部材の外面との間の空隙に収容されて前記空隙を閉塞する閉塞部材であって、圧縮変形可能な複数のブロック部が一方向に並ぶとともに、各ブロック部の厚さ方向の一端側で全てのブロック部が繋がり、前記一方向及び前記厚さ方向に直交する方向を奥行方向とすると、前記貫通孔が前記防火区画壁を貫通する方向と前記奥行方向が一致する状態で前記空隙に収容され、前記一方向に隣り合う前記ブロック部の側面同士の間に、前記厚さ方向及び前記奥行方向に延びるスリットを有するとともに、前記一方向に並ぶ前記ブロック部はそれぞれ独立して圧縮変形可能であり、前記一方向に並ぶ複数のブロック部に対して前記奥行方向にずれた位置であって、前記一方向に隣り合うブロック部の側面同士の間のスリットの奥行方向に延びる先に、別のブロック部が設けられ、当該別のブロック部は、前記厚さ方向の一端側で前記一方向に並ぶ複数のブロック部と繋がるとともに、前記一方向に並ぶ複数のブロック部との間に、前記厚さ方向及び前記奥行方向に延びるスリットを有するとともに、前記一方向に並ぶ複数のブロック部とは独立して圧縮変形可能であり、前記スリットを区画する前記ブロック部の側面は、前記奥行方向及び前記厚さ方向に延びる仮想面に対し交差している、又は前記奥行方向の途中で分断されていることを要旨とする。
【0011】
上記問題点を解決するための閉塞部材は、防火区画壁に設けられた貫通孔の内面と、前記貫通孔に挿通された貫通部材の外面との間の空隙に収容されて前記空隙を閉塞する閉塞部材であって、圧縮変形可能な複数のブロック部が一方向に並ぶとともに、各ブロック部の厚さ方向の一端側で全てのブロック部が繋がり、前記一方向及び前記厚さ方向に直交する方向を奥行方向とすると、前記貫通孔が前記防火区画壁を貫通する方向と前記奥行方向が一致する状態で前記空隙に収容され、前記一方向に隣り合う前記ブロック部の側面同士の間に、前記厚さ方向及び前記奥行方向に延びるスリットを有するとともに、前記一方向に並ぶ前記ブロック部はそれぞれ独立して圧縮変形可能であり、前記スリットは、前記奥行方向の全体に亘って連続して延びているとともに、前記厚さ方向から見て、湾曲している、又は複数個所で屈折している、又は前記スリットを区画する前記ブロック部の側面は、前記奥行方向及び前記厚さ方向に延びる仮想面に対し交差していることを要旨とする。
【0012】
上記問題点を解決するための閉塞部材は、防火区画壁に設けられた貫通孔の内面と、前記貫通孔に挿通された貫通部材の外面との間の空隙に収容されて前記空隙を閉塞する閉塞部材であって、圧縮変形可能な複数のブロック部が一方向に並ぶとともに、各ブロック部の厚さ方向の一端側で全てのブロック部が繋がり、前記一方向及び前記厚さ方向に直交する方向を奥行方向とすると、前記貫通孔が前記防火区画壁を貫通する方向と前記奥行方向が一致する状態で前記空隙に収容され、前記一方向に隣り合う前記ブロック部の側面同士の間に、前記厚さ方向及び前記奥行方向に延びるスリットを有するとともに、前記一方向に並ぶ前記ブロック部はそれぞれ独立して圧縮変形可能であり、前記スリットの前記奥行方向に延びる先に、前記一方向に並ぶ複数のブロック部とは前記厚さ方向の一端側のみで繋がっており、前記一方向に並ぶ複数のブロック部と独立して圧縮変形可能な別のブロック部が設けられ、かつ、前記スリットの前記奥行方向に延びる先に、当該別のブロック部の側面からなり、前記一方向に並ぶブロック部の側面間により定められた前記スリットの幅より幅広である非連通面が位置していることを要旨とする。
【0013】
上記問題点を解決するための閉塞部材は、防火区画壁に設けられた貫通孔の内面と、前記貫通孔に挿通された貫通部材の外面との間の空隙に収容されて前記空隙を閉塞する閉塞部材であって、圧縮変形可能な複数のブロック部が一方向に並ぶとともに、各ブロック部の厚さ方向の一端側で全てのブロック部が繋がり、前記一方向及び前記厚さ方向に直交する方向を奥行方向とすると、前記貫通孔が前記防火区画壁を貫通する方向と前記奥行方向が一致する状態で前記空隙に収容され、前記一方向に隣り合う前記ブロック部の側面同士の間に、前記厚さ方向及び前記奥行方向に延びるスリットを有するとともに、前記一方向に並ぶ前記ブロック部はそれぞれ独立して圧縮変形可能であり、前記スリットは、前記厚さ方向から見て、前記奥行方向に対し異なる方向に傾斜し互いに交差する2種類の傾斜スリットを備えることを要旨とする。
【0014】
上記問題点を解決するための閉塞部材は、防火区画壁に設けられた貫通孔の内面と、前記貫通孔に挿通された貫通部材の外面との間の空隙に収容されて前記空隙を閉塞する閉塞部材であって、圧縮変形可能な複数のブロック部が一方向に並ぶとともに、各ブロック部の厚さ方向の一端側で全てのブロック部が繋がり、前記一方向及び前記厚さ方向に直交する方向を奥行方向とすると、前記貫通孔が前記防火区画壁を貫通する方向と前記奥行方向が一致する状態で前記空隙に収容され、前記一方向に隣り合う前記ブロック部の側面同士の間に、前記厚さ方向及び前記奥行方向に延びるスリットを有するとともに、前記一方向に並ぶ前記ブロック部はそれぞれ独立して圧縮変形可能であり、原形状態において、前記スリットを区画するよう対面した隣り合う前記ブロック部の側面は当接しており、前記スリットを区画する前記ブロック部の側面は、前記奥行方向及び前記厚さ方向に延びる仮想面に対し交差している、又は前記奥行方向の途中で分断されていることを要旨とする。
【0015】
上記問題点を解決するための貫通孔の閉塞構造は、防火区画壁に設けられた貫通孔の内面と、前記貫通孔に挿通された貫通部材の外面との間の空隙に閉塞部材が収容されて構成される貫通孔の閉塞構造であって、前記閉塞部材は、上記に記載の閉塞部材であって、前記閉塞部材は、前記貫通部材の外面に接触する状態で前記空隙に収容されており、前記貫通部材の外面に接触する少なくとも一つの前記ブロック部は、前記貫通部材の外面の接触に伴って圧縮変形していることを要旨とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ブロック部が厚さ方向に圧縮変形したときに、防火区画壁を貫通する方向へ一直線に延びる隙間が形成されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)は実施形態の防火区画壁における貫通孔の閉塞構造を示す正面図、(b)は圧縮変形した閉塞部材を示す拡大図、(c)は積層された閉塞部材を示す正面図。
図2】閉塞部材を示す斜視図。
図3】閉塞部本体を示す平面図。
図4】閉塞部本体を示す斜視図。
図5】配線・配管材支持ラックに配線・配管材を支持させた状態を示す斜視図。
図6】配線・配管材に接触した閉塞部材を示す断面図。
図7】別例の閉塞部材を示す平面図。
図8】別例の閉塞部材を示す平面図。
図9】別例の閉塞部材を示す平面図。
図10】別例の閉塞部材を示す平面図。
図11】別例の閉塞部材を示す平面図。
図12】別例の閉塞部材を示す斜視図。
図13】別例の閉塞部材を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、閉塞部材及び貫通孔の閉塞構造を具体化した一実施形態を図1図6にしたがって説明する。
図1(a)又は図5に示すように、コンクリート製の防火区画壁Wには、正面から見て矩形状の貫通孔Waが設けられている。貫通孔Waは、防火区画壁Wを厚さ方向に貫通している。貫通孔Waには、貫通部材として、複数本の配線・配管材11が挿通されている。なお、配線・配管材11とは、建築物内に配設される配線(制御用ケーブル、同軸ケーブル、光ケーブル等)及び配管材(合成樹脂製可撓電線管、鋼製電線管等)の総称のことである。配線・配管材11は、長尺状である。本実施形態では、径の異なる配線・配管材11が貫通孔Waに挿通されている。
【0019】
配線・配管材11は、配線・配管材支持ラック20によって下方から支持されている。なお、配線・配管材支持ラック20は、長尺な梯子状である。配線・配管材支持ラック20は、一対の長尺部材20aと、一対の長尺部材20aに架け渡された複数の支持部材20bとを有する。配線・配管材支持ラック20は、一対の長尺部材20aが貫通孔Waに挿通され、かつ一対の長尺部材20aが左右方向に対向した状態で配設されている。貫通孔Wa内には支持部材20bは配設されず、防火区画壁Wの厚み方向両面より外側に支持部材20bが配設されている。そして、複数の支持部材20bによって配線・配管材11が支持されている。
【0020】
図1(a)に示すように、貫通孔Waの内面と、配線・配管材11の外面との間の空隙Kに閉塞部材30が収容されることにより貫通孔Waの閉塞構造が形成されている。本実施形態では、空隙Kに収容される部材は、全て閉塞部材30であり、複数の閉塞部材30によって空隙Kが閉塞されている。
【0021】
図2に示すように、閉塞部材30は、閉塞部本体31と、閉塞部本体31に貼着されたシート材41と、を有する。閉塞部本体31は、一方向に並ぶ複数のブロック部34と、全てのブロック部34を厚さ方向Zの一端側で繋ぐ連結部33と、閉塞部本体31を複数のブロック部34に区画する複数のスリット32とを備える。
【0022】
閉塞部本体31は、閉塞部材30と同形状の矩形平板状の基材を、その厚さ方向Zに切り込んで長手方向Xへ複数のスリット32を形成しつつ連結部33を形成し、基材を複数のブロック部34に分割することで形成されている。スリット32は、長手方向Xに隣り合うブロック部34の側面同士の間に形成されている。スリット32は、基材に形成した切り込みであるため、複数のブロック部34を一方向に寄せ集めると閉塞部本体31は基材と同じ矩形平板状になる。よって、閉塞部本体31の全体形状を基材と同じ矩形平板状として説明する。ブロック部34が並ぶ一方向は、閉塞部本体31の長手方向Xと一致する。
【0023】
図4に示すように、閉塞部本体31の6つの側面のうち、最も面積が大きい矩形状の2つの面のうち1つを第1面31aとし、残りの1つを第2面31bとする。第1面31aと第2面31bを繋ぐ直線Lが延びる方向は上記した厚さ方向Zである。第1面31a及び第2面31bは、閉塞部本体31の厚さ方向Zの両端に位置する面である。言い換えると、第1面31a及び第2面31bは、閉塞部本体31の厚さ方向Zの両側の面である。閉塞部本体31の第1面31a及び第2面31bに沿い、かつ長手方向Xに直交する方向を閉塞部本体31の奥行方向Yとする。
【0024】
閉塞部本体31の6つの側面のうち、奥行方向Yの一端に位置する面を第1長側面311とし、奥行方向Yの他端に位置する面を第2長側面312とする。また、閉塞部本体31の6つの側面のうち、長手方向Xの一端に位置する面を第1短側面313とし、長手方向Xの他端に位置する面を第2短側面314とする。第1面31a及び第2面31bにおいて、長手方向Xに延びる一対の側縁を長側縁31cとし、奥行方向Yに延びる一対の側縁を短側縁31dとする。
【0025】
図1(a)に示すように、閉塞部材30は、厚さの異なる2種類が存在し、場合によっては、厚さの薄い閉塞部材30を第1閉塞部材30Aと記載し、第1閉塞部材30Aより厚い閉塞部材30を第2閉塞部材30Bと記載する。
【0026】
閉塞部本体31は、熱膨張性能を有する発泡体からなり、具体的には、閉塞部本体31は、母材に熱膨張性材料が均一に分散された発泡体からなる。このような閉塞部本体31は、母材に熱膨張性材料と発泡剤が混練された母材材料における発泡剤のみを発泡させて得られたものである。本実施形態では、熱膨張性材料として膨張黒鉛が使用され、母材として、ポリマーが使用され、より具体的には、合成ゴムが使用されている。合成ゴムとしてはクロロプレンゴムが使用されている。なお、合成ゴムとしては、クロロプレンゴムの他に、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、天然ゴム(NR)、合成天然ゴム(IR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)が挙げられる。
【0027】
また、発泡剤の発泡開始温度は130~200℃であり、膨張黒鉛の発泡開始温度は120~300℃である。本実施形態では、発泡剤として、熱膨張性材料(膨張黒鉛)よりも発泡開始温度が低いものを使用する。例えば、発泡開始温度が250℃の膨張黒鉛を使用した場合は、発泡開始温度が160℃の発泡剤を使用する。
【0028】
閉塞部本体31の製造方法としては、例えば、クロロプレンゴムに膨張黒鉛及び発泡剤を均一に分散させて母材材料を調整した後、膨張黒鉛が膨張しないように、膨張黒鉛が膨張する温度より低い温度で母材材料を加熱し、発泡剤を発泡させる。
【0029】
閉塞部本体31は、発泡剤の発泡によって形成された微細な気泡を多数有するスポンジ状であり、気泡は閉塞部本体31の内部及び表面に多数存在している。また、発泡クロロプレンゴムにより、閉塞部本体31はゴム弾性を有する。閉塞部本体31は、厚さ方向Z、長手方向X及び奥行方向Yのいずれの方向にも圧縮変形可能である。閉塞部本体31は、圧縮変形させた状態から原形状に復帰しようとする反力を備える。
【0030】
閉塞部本体31は、膨張黒鉛を含むため、所定温度(例えば250℃)以上の熱を受けると体積が加熱前の数倍以上に膨張する。よって、閉塞部本体31は、発泡クロロプレンゴムによって圧縮変形可能とされ、膨張黒鉛によって熱膨張可能とされている。
【0031】
図3又は図4に示すように、厚さ方向Zに沿って第1面31aを見た場合、スリット32は、第1面31aの一対の長側縁31c同士を連結するように奥行方向Y全体に亘って緩やかに湾曲して延びるとともに、閉塞部本体31の長手方向Xへ等間隔おきに存在する。厚さ方向Zに沿って第1面31aを見た場合、各スリット32は、両方の長側縁31cから、第1短側面313に位置する一方の短側縁31dに向けて緩やかに膨らみ、奥行方向Yの中央付近で最も膨らむように湾曲する形状である。スリット32は、閉塞部本体31の第1長側面311から第2長側面312に至るまで、閉塞部本体31の奥行方向Yの全体に亘って延びている。
【0032】
なお、閉塞部本体31の長手方向両端に位置するブロック部34のうちの一方は、平坦面である第1短側面313を有し、他方は、平坦面である第2短側面314を有するが、それ以外のブロック部34は、第1短側面313又は第2短側面314を有さない。このため、閉塞部本体31の長手方向両端に位置するブロック部34以外の複数のブロック部34は、閉塞部本体31の長手方向Xに沿った寸法、及び厚さ方向Zに沿った寸法が同じである。各ブロック部34は、それぞれ独立して厚さ方向Z、長手方向X及び奥行方向Yへ圧縮変形可能であるとともに、圧縮変形した状態から原形状へ復帰するための反力を備える。
【0033】
図2又は図4に示すように、ブロック部34は、基材を切り込んでスリット32を形成したときに形成された側面に非連通面34aを備える。本実施形態では、非連通面34aは、湾曲面である。上記したように、スリット32は、閉塞部本体31の両方の長側縁31cから短側縁31dに向けて緩やかに膨らみ、奥行方向Yの中央付近で最も膨らむように湾曲する形状である。このため、スリット32を形成することで形成された非連通面34aは、閉塞部本体31の第1長側面311及び第2長側面312から第1短側面313に向けて緩やかに膨らむように湾曲する形状である。
【0034】
ここで、図3に示すように、奥行方向Y及び厚さ方向Zに延びる平面を仮想面Mとして設定する。厚さ方向Zに第1面31aを見た場合、非連通面34aは、仮想面Mに対し交差する。つまり、非連通面34aは、奥行方向Yに沿って一直線状に延びていない。
【0035】
閉塞部本体31の厚さ方向Zへのスリット32の寸法を深さとすると、全てのスリット32において深さは同じである。また、スリット32は、閉塞部本体31の第2面31bまでは到達していない。このため、スリット32によって区画された複数のブロック部34は、スリット32よりも第2面31b寄りの部分、つまり閉塞部本体31の厚さ方向Zの一端寄りの部分を構成する連結部33で繋がっている。したがって、閉塞部本体31は、厚さ方向Zの一端寄りに連結部33を備える。全てのスリット32の深さは同じであるため、閉塞部本体31の厚さ方向Zに沿った連結部33の寸法も同じである。閉塞部本体31の厚さ方向Zに沿った連結部33の寸法である厚さは、スリット32の深さより小さい。そして、連結部33は、人の手、及び鋏、カッター等の手動切断工具で切断できる。
【0036】
図1(a)に示すように、第1閉塞部材30Aの長手方向Xへの寸法は、第2閉塞部材30Bの長手方向Xへの寸法より短い。なお、第1閉塞部材30A及び第2閉塞部材30Bの長手方向Xへの寸法は、同じでもよいし、第1閉塞部材30Aの方が第2閉塞部材30Bより長くてもよい。第1閉塞部材30Aのスリット32の数は、第2閉塞部材30Bのスリット32の数より多く、第1閉塞部材30Aのブロック部34の数は、第2閉塞部材30Bのブロック部34の数より多い。第1閉塞部材30Aの長手方向Xに沿ったブロック部34の寸法は、第2閉塞部材30Bの長手方向Xに沿ったブロック部34の寸法より小さい。また、第1閉塞部材30Aの連結部33の厚さは、第2閉塞部材30Bの連結部33の厚さより小さい。
【0037】
図2に示すように、シート材41は、スリット32を除いた第1面31aの全体、及び第2面31bの全体に貼着されている。シート材41は、不織布製である。第1面31aに貼着されたシート材41は、スリット32に沿って分断されている。このため、ブロック部34毎に独立してシート材41が貼着されている。なお、スリット32は、閉塞部本体31の第1面31aと同じ大きさのシート材41を基材の段階で第1面31aとなる位置に貼着した後、シート材41及び基材に切り込みを入れることで形成されている。よって、スリット32を形成すると同時に、シート材41が各ブロック部34に対応する大きさに切断されている。
【0038】
次に、貫通孔Waの閉塞構造の形成方法について説明する。
まず、図5に示すように、防火区画壁Wに配線・配管材11を貫通させるための貫通孔Waを形成する。次に、貫通孔Waに配線・配管材支持ラック20を配設する。次に、配線・配管材支持ラック20の複数の支持部材20bに複数本の配線・配管材11を支持させるとともに、防火区画壁Wに配線・配管材11を貫通させる。
【0039】
次に、貫通孔Waの内面と配線・配管材11の外面との間の空隙Kに複数の閉塞部材30を収容する。このとき、閉塞部材30の長手方向Xが左右方向に延び、かつ厚さ方向Zが上下方向に延びるように閉塞部材30を貫通孔Waの空隙Kに収容する。また、貫通孔Waの貫通方向へは閉塞部材30を1つだけ収容する。また、各閉塞部材30は、当該閉塞部材30の奥行方向Yが、防火区画壁Wにおける貫通孔Waの貫通方向と一致するように空隙Kに収容される。なお、左右方向とは、防火区画壁Wを正面から見た場合での左右方向であり、貫通孔Waの長手方向と一致する。配線・配管材11の外面に接触する閉塞部材30は第1閉塞部材30Aを使用し、それ以外の閉塞部材30は第2閉塞部材30Bを使用する。
【0040】
図1(a)に示すように、貫通孔Waの下側から上に向けて第2閉塞部材30Bを積み重ねていく。また、貫通孔Waの左右方向に第2閉塞部材30Bを並べていく。左右方向において、第2閉塞部材30Bの長手方向Xへの寸法より短い隙間が形成された場合は、長尺部材20aと貫通孔Waの内面との間には、その隙間の寸法より若干長くなるように閉塞部材30を切断し、その切断した閉塞部材30を隙間に詰め込む。なお、以下の説明において、切断された閉塞部材30を隙間用閉塞部材35と記載する。
【0041】
左右方向に並設された第2閉塞部材30B及び隙間用閉塞部材35それぞれは、長手方向Xに圧縮されるとともに、圧縮状態から原形状に復帰しようとする反力が発生する。この反力により、左右方向に隣り合う第2閉塞部材30B同士及び隙間用閉塞部材35と長尺部材20aが互いに圧接する。なお、図示しないが、左右方向に第2閉塞部材30Bと隙間用閉塞部材35が隣り合う場合は、それら第2閉塞部材30Bと隙間用閉塞部材35が互いに圧接する。つまり、左右方向に並んだ各第2閉塞部材30B及び隙間用閉塞部材35の反力を利用して、互いに圧接させている。
【0042】
そして、配線・配管材11の外面に接触する閉塞部材30には第1閉塞部材30Aを使用する。このとき、図1(b)に示すように、配線・配管材11の外面に対し、第1閉塞部材30Aの第1面31a側のシート材41に貼着された両面テープTを接触させる。
【0043】
また、図1(c)に示すように、上下方向に第2閉塞部材30Bを積み重ねるとき、又は第1閉塞部材30Aに第2閉塞部材30Bを積み重ねるとき、積み重ねた方向に隣り合う第2閉塞部材30B同士、及び第1閉塞部材30Aと第2閉塞部材30Bとは、両面テープTにより互いに接合する。なお、本実施形態において、配線・配管材11の外面と、貫通孔Waの内面との対面方向は上下方向であり、第1閉塞部材30A及び第2閉塞部材30Bは、上下方向に複数積層されている。よって、上下方向が積層方向となる。
【0044】
最後に、左右方向の各列において、積層方向最上段の第1閉塞部材30A又は隙間用閉塞部材35と貫通孔Waの内面との間に第2閉塞部材30Bを挿入する。そして、第2閉塞部材30Bを、圧縮変形させた状態で隙間に詰め込むと、上下方向に積層された閉塞部材30それぞれが、厚さ方向Zに圧縮変形するとともに、圧縮変形した状態から原形状に復帰しようとする反力が発生する。また、配線・配管材11の外面と第1閉塞部材30Aとの間に隙間用閉塞部材35を詰め込む。
【0045】
そして、上下方向に積層された全ての第1閉塞部材30Aと第2閉塞部材30Bに発生した反力を利用して第1閉塞部材30Aを配線・配管材11の外面に圧接させる。すなわち、積層方向に隣り合う第1閉塞部材30A同士、第2閉塞部材30B同士、隙間用閉塞部材35と第2閉塞部材30B、及び第1閉塞部材30Aと第2閉塞部材30Bを互いに圧接させる。その結果、第1閉塞部材30Aには、配線・配管材11に向けて反力Fが発生し、第1閉塞部材30Aが配線・配管材11に向けて付勢され、第1閉塞部材30Aが配線・配管材11に圧接する。
【0046】
図1(b)に示すように、第1閉塞部材30Aに発生した反力Fは、シート材41を介した第1面31aを、配線・配管材11の外面に押し付ける力として作用する。すると、第1閉塞部材30Aの各ブロック部34は、それぞれシート材41を介して配線・配管材11の外面の形状に合わせて変形する。配線・配管材11が大径になるほど、配線・配管材11に接触するブロック部34の厚さ方向Zへの圧縮量が多くなり、配線・配管材11が小径になるほど、配線・配管材11に接触するブロック部34の厚さ方向への圧縮量は少なくなる。また、左右方向に沿って配線・配管材11の径も異なるが、各ブロック部34は、第1閉塞部材30Aの長手方向Xに沿って配線・配管材11の径に追従して圧縮変形する。
【0047】
その結果、貫通孔Waの内面と配線・配管材11の外面との間の空隙Kが、第1閉塞部材30Aと、第2閉塞部材30Bと、隙間用閉塞部材35と、によって閉塞される。また、配線・配管材支持ラック20における長尺部材20aの外面に対しても隙間用閉塞部材35、第2閉塞部材30B又は第1閉塞部材30Aが圧接する。なお、閉塞部材30及び隙間用閉塞部材35で閉塞できない微細な隙間は耐火パテPを充填する。その結果、防火区画壁Wにおける貫通孔Waの閉塞構造が完成する。
【0048】
次に、貫通孔Waの閉塞構造について説明する。
図1(b)又は図6に示すように、貫通孔Waの閉塞構造において、配線・配管材11に接触する第1閉塞部材30Aは、ブロック部34の圧縮変形に伴い、閉塞部本体31の長手方向Xに隣り合うブロック部34同士の間隔が広がるように変形している。圧縮変形しているブロック部34は、厚さ方向Zに沿って変形形状が異なっている。このため、スリット32が広がり、防火区画壁Wの両方の壁表では、閉塞部本体31の長手方向Xに隣り合うブロック部34同士の間に隙間が形成されている。言い換えると、圧縮変形しているブロック部34同士、及び圧縮変形しているブロック部34と、当該圧縮変形しているブロック部34に長手方向Xに隣り合うブロック部34との間には、隙間が形成されている。
【0049】
貫通孔Waの閉塞構造において、閉塞部本体31の長手方向Xに隣り合う非連通面34aは、湾曲面であり、仮想面Mに対し交差している。つまり、非連通面34aは、奥行方向Yに沿って一直線状に延びていない。このため、防火区画壁Wの一方の壁表側から隙間を見た場合、視線Sの先には、圧縮変形しているブロック部34の非連通面34a、及び圧縮変形したブロック部34に隣接するブロック部34の非連通面34aの両方が存在し、隙間より視線Sの先には、いずれかの非連通面34aが視認される。つまり、ブロック部34が変形し、隙間が形成されていても、その隙間は非連通面34aによって塞がれ、隙間が貫通孔Waが防火区画壁Wを貫通する方向へ連続して一直線状に延びることはない。つまり、隙間を通して防火区画壁Wの一方の壁表側から他方の壁表側を視認不能とすべく、隙間の奥行方向Yの先には閉塞部材30が有する非連通面34aが位置している。よって、防火区画壁Wの一方の壁表側から他方の壁表側が視認できない。
【0050】
次に、貫通孔Waの閉塞構造の作用を説明する。
建築物において、防火区画壁Wの一方の壁表側で火災等が発生した場合、長手方向Xに隣り合うブロック部34同士の間の隙間が、火炎、煙、有毒ガス、熱の経路となることが抑制される。
【0051】
配線・配管材11が燃焼したとする。このとき、配線・配管材11の外面に圧接するのは第1閉塞部材30Aである。そして、配線・配管材11から発生する熱によって第1閉塞部材30Aが即座に焼失してしまうことはなく、第1閉塞部材30Aは熱を受けて膨張する。また、第1閉塞部材30Aの周囲の第2閉塞部材30B及び隙間用閉塞部材35も熱を受けて膨張する。
【0052】
すると、膨張した第1閉塞部材30A、第2閉塞部材30B及び隙間用閉塞部材35によって、配線・配管材11と貫通孔Waとの間が密封閉鎖される。すなわち、配線・配管材11の外面と貫通孔Waの内面との間の隙間が火炎、煙、有毒ガス、熱の経路となることが防止され、防火区画壁Wの他方の壁表側へ火炎、煙、有毒ガス、熱が伝わることが防止される。
【0053】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)閉塞部材30において、長手方向Xに隣り合うブロック部34の側面に設けられた非連通面34aは湾曲面である。このため、貫通孔Waの閉塞構造において、配線・配管材11に対する閉塞部材30の圧接により、閉塞部材30のブロック部34が圧縮変形し、隣り合うブロック部34同士の間でスリット32が広がり隙間ができても、隙間の奥行方向Yの先には非連通面34aが位置し、隙間が、防火区画壁Wの厚さ方向に沿って一直線状に延びることはない。その結果、防火区画壁Wの一方の壁表側から他方の壁表側が視認できない。よって、貫通孔Waを一直線に貫通する隙間が形成されることを抑制できる。
【0054】
(2)基材を切り込んでスリット32を形成するとともに非連通面34aを形成する。非連通面34aは湾曲面であるため、基材の切り込みが行いやすく、スリット32及び非連通面34aを形成しやすい。
【0055】
(3)ブロック部34は、矩形平板状の基材を切り込んでスリット32を形成することで形成される。このため、ブロック部34及びスリット32を有する閉塞部材30を簡単に製造できる。
【0056】
(4)閉塞部材30は熱膨張性材料を含む。このため、火災発生時は、膨張した閉塞部材30によって、配線・配管材11と貫通孔Waとの間が密封閉鎖される。
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0057】
○ 閉塞部材30が圧縮変形し、隣り合うブロック部34同士の間でスリット32が広がり隙間ができても、隙間が、防火区画壁Wの厚さ方向に沿って一直線に延びず、隙間を通して防火区画壁Wの一方の壁表側から他方の壁表側を視認不能とすることができれば、以下のように構成してもよい。つまり、隙間を形成することになるスリット32及び非連通面34aの形状は任意に変更してもよいし、適宜組み合わせてもよい。その具体例を下記に挙げる。
【0058】
図7に示すように、厚さ方向Zに沿って第1面31aを見た場合、各スリット32及び各非連通面34aは、「く」の字状に屈曲する形状でもよい。この場合、奥行方向Y及び厚さ方向Zに延びる仮想面Mを設定した場合、スリット32及び非連通面34aは仮想面Mに交差する。
【0059】
非連通面34aは、長側縁31cに対し傾斜の向きが異なる2つの側面34bを備える。このため、スリット32が広がって隙間が形成されても、隙間を視認したときは、奥行方向Yに交差する2つの側面34bのうち、視認側に位置する一方の側面34bが視認できるだけであり、隙間が防火区画壁Wの厚さ方向へ連続して一直線に延びることはない。その結果、隙間を通して防火区画壁Wの一方の壁表側から他方の壁表側が視認不能となる。なお、視認できる側面34bは、圧縮変形しているブロック部34に加え、当該圧縮変形しているブロック部34に対し長手方向Xに隣り合うブロック部34の側面34bでもある。
【0060】
よって、圧縮変形しているブロック部34と、当該圧縮変形しているブロック部34に対し長手方向Xに隣り合うブロック部34との間に形成された隙間は、奥行方向Yにおいて、圧縮変形しているブロック部34の非連通面34aによって塞がれている。
【0061】
図8に示すように、厚さ方向Zに沿って第1面31aを見た場合、各スリット32及び各非連通面34aは、奥行方向Yに沿ってクランク状に延びる形状でもよい。この場合、奥行方向Y及び厚さ方向Zに延びる仮想面Mを設定した場合、スリット32及び非連通面34aは仮想面Mに交差する。なお、スリット32及び非連通面34aは、クランク状以外にも奥行方向Yに沿って複数箇所で屈曲していてもよい。
【0062】
非連通面34aは、奥行方向Yに延びる3つの第1側面341を長手方向Xにずらして備えるとともに、奥行方向Yに隣り合う第1側面341同士を長手方向Xに繋ぐ第2側面342を2つ備える。仮想面Mに対しては、非連通面34aのうちの第2側面342が交差している。スリット32が広がって隙間が形成されても、隙間を視認したときは、隙間の奥行方向Yの先には第2側面342が視認できるだけであり、隙間が防火区画壁Wの厚さ方向へ連続して一直線に延びることはない。その結果、隙間を通して防火区画壁Wの一方の壁表側から他方の壁表側が視認不能となる。
【0063】
なお、視認できる第2側面342は、圧縮変形しているブロック部34の第2側面342、又は圧縮変形していないブロック部34の第2側面342である。よって、圧縮変形しているブロック部34と、当該圧縮変形しているブロック部34に対し長手方向Xに隣り合うブロック部34との間に形成された隙間は、圧縮変形しているブロック部34又は圧縮変形していないブロック部34の非連通面34aによって塞がれている。
【0064】
図9に示すように、閉塞部材30は、厚さ方向Zに沿って第1面31aを見た場合、一対の長側縁31cそれぞれに対し傾斜する第1傾斜スリット321a及び第2傾斜スリット321bを備えるとともに、第1傾斜スリット321a及び第2傾斜スリット321bを区画する傾斜非連通面36を備える。一対の長側縁31cそれぞれに対し傾斜する複数の傾斜スリットのうち半数の第1傾斜スリット321aは、全て長側縁31cに対し同じ方向に傾斜し、かつ奥行方向Yの途中まで延びる。複数の傾斜スリット321a,321bのうちの残りの半数の第2傾斜スリット321bは、上記した第1傾斜スリット321aに対し、長手方向Xに隣り合うとともに交差するように傾斜し、かつ奥行方向Yの途中まで延びている。
【0065】
第1傾斜スリット321aと第2傾斜スリット321bは、奥行方向Yの中央付近で突き合わされている。傾斜の向きが異なる第1傾斜スリット321aと第2傾斜スリット321bが長手方向Xへ交互に設けられることにより、厚さ方向Zに沿って第1面31aを見た場合、奥行方向Yの両側にパンタグラフ状にスリットが形成されている。
【0066】
閉塞部材30の閉塞部本体31は、第1傾斜スリット321aと第2傾斜スリット321bに囲まれた菱形状ブロック部50を複数備えるとともに、菱形状ブロック部50に対し、奥行方向Yに隣り合う三角形状ブロック部51を複数備える。閉塞部本体31は、長手方向Xに隣り合う三角形状ブロック部51の傾斜非連通面36同士の間に、第1傾斜スリット321a及び第2傾斜スリット321bを備える。ブロック部としての菱形状ブロック部50、及び三角形状ブロック部51は、それぞれ圧縮変形可能であるとともに長手方向Xに並んでいる。
【0067】
また、傾斜の向きの異なる傾斜非連通面36は、互いに交差するとともに、閉塞部本体31における奥行方向Yの中央付近で繋がっている。そして、閉塞部本体31の奥行方向Yの中央部には、長手方向Xに沿って波形状に延びる分断部39が設けられている。分断部39は、第1傾斜スリット321a及び第2傾斜スリット321bを、奥行方向Yの中央付近で分断している。そして、分断部39を構成する傾斜非連通面36も、仮想面Mに対し交差している。
【0068】
したがって、第1傾斜スリット321a又は第2傾斜スリット321bが広がって隙間が形成されても、隙間を視認したときは、隙間の奥行方向Yの先には第1傾斜スリット321a又は第2傾斜スリット321bを区画する傾斜非連通面36が視認できるだけであり、隙間が防火区画壁Wの厚さ方向へ連続して一直線に延びることはない。つまり、圧縮変形している三角形状ブロック部51同士の間に形成された隙間が、奥行方向Yにおいて、圧縮変形している三角形状ブロック部51によって塞がれている。その結果、隙間を通して防火区画壁Wの一方の壁表側から他方の壁表側が視認不能となる。
【0069】
図10に示すように、厚さ方向Zに沿って第1面31aを見た場合、スリット32及び非連通面34aは、奥行方向Yの全体に亘って延びるとともに長側縁31cに対し傾斜する形状でもよい。この場合、長側縁31cに対するスリット32及び非連通面34aの傾斜角度は大きい方が好ましい。傾斜角度が大きいほど、一つのブロック部34において、配線・配管材11に接触して圧縮変形する部分と、圧縮変形しない部分とが併存することになる。つまり、圧縮変形しているブロック部34において、奥行方向Yにおいて変形形状が異なる。
【0070】
すると、万一、スリット32の傾斜に沿って隙間が形成されたとしても、一つのブロック部34において、奥行方向Yに圧縮変形した部分と圧縮変形しない部分とが併存する。このため、それら圧縮変形した部分と圧縮変形しない部分との境で隙間が断絶され、隙間の奥行方向Yの先には非連通面34aが視認できるだけであり、隙間がブロック部34の側面に沿って連続して一直線に延びることがなくなる。その結果、隙間を通して防火区画壁Wの一方の壁表側から他方の壁表側が視認不能となる。
【0071】
なお、スリット32及び非連通面34aの傾斜角度が大きくなりすぎると、スリット32及び非連通面34aが長側縁31cに平行に近くなり、ブロック部34が奥行方向Yに並ぶことになり好ましくない。よって、長側縁31cに対するスリット32及び非連通面34aの傾斜角度は、一つのブロック部34が配線・配管材11に対し接触したとき、圧縮変形しない部分が形成される最小角度に設定されるのが好ましい。
【0072】
図10の2点鎖線Nに示すように、第1長側面311に位置するスリット32の第1端32Aを、奥行方向Yに沿って第2長側面312に移動させた点を仮想点Rとする。この仮想点Rと、第2長側面312に位置するスリット32の第2端32Bとの距離をスリット長さHとする。このスリット長さHが配線・配管材11の直径より長くなるようにスリット32及び非連通面34aの傾斜角度を調整することで、配線・配管材11が径方向全体に亘ってブロック部34に接触しても、ブロック部34には、圧縮変形する部分と圧縮変形しない部分が形成される。
【0073】
図11に示すように、厚さ方向Zに沿って第1面31aを見た場合、スリット32及び非連通面34aは、奥行方向Yの途中で分断されていてもよい。この場合、閉塞部本体31には、長手方向Xへ直線状に延びる複数本の切れ込み38が奥行方向Yに間隔を空けて設けられ、奥行方向Yに隣り合う切れ込み38同士の間には長手方向X全体に延びる長尺ブロック部60が形成されている。長尺ブロック部60は、奥行方向Yの両側の側面に非連通面61を備える。閉塞部本体31には、長手方向Xに延びる切れ込み38に対し交わるように第1長側面311及び第2長側面312から切れ込み38に至るスリット32が設けられる。各スリット32は、長側縁31cに対し傾斜している。
【0074】
このように構成した場合、貫通孔Waの閉塞構造において、配線・配管材11に対する閉塞部材30の圧接により、閉塞部材30が圧縮変形し、隣り合うブロック部34同士の間でスリット32が広がり隙間ができる場合がある。しかし、奥行方向Yの先に位置して隙間から視認できるのは、切れ込み38を区画する長尺ブロック部60の非連通面61や、スリット32を区画する非連通面34aである。したがって、隙間が、防火区画壁Wの厚さ方向に沿って一直線状に延びることはない。その結果、隙間を通して防火区画壁Wの一方の壁表側から他方の壁表側が視認不能となる。
【0075】
なお、図11に示す形態において、スリット32は、長側縁31cに対し傾斜しておらず、奥行方向Yへ直線状に延びていてもよい。このように構成した場合、貫通孔Waの閉塞構造において、配線・配管材11に対する閉塞部材30の圧接により、閉塞部材30が圧縮変形し、隣り合うブロック部34同士の間でスリット32が広がり隙間ができる場合がある。しかし、奥行方向Yの先に位置して隙間から視認できるのは、閉塞部本体31において切れ込み38を区画する長尺ブロック部60の非連通面61である。したがって、隙間が、防火区画壁Wの厚さ方向に沿って一直線状に延びることはない。その結果、隙間を通して防火区画壁Wの一方の壁表側から他方の壁表側が視認不能となる。
【0076】
図12に示すように、厚さ方向Zに沿って第1面31aを見た場合、スリット32及び非連通面34aは、長側縁31cに対し傾斜しておらず、奥行方向Yへ直線状に延びていてもよい。また、閉塞部本体31は、全てのスリット32よりも奥行方向Yの第2長側面312側に長尺ブロック部60を備える。各スリット32は、第1長側面311から長尺ブロック部60に至るまで奥行方向Yへ直線状に延びており、奥行方向Yの途中で分断されている。
【0077】
このように構成した場合、複数のブロック部34は、それぞれ配線・配管材11との接触によって独立して圧縮変形である。長尺ブロック部60は、配線・配管材11との接触によって、長手方向Xの全体に亘って変形しやすい。つまり、ブロック部34と長尺ブロック部60とでは、厚さ方向Z及び奥行方向Yにおいて変形形状が異なる。
【0078】
そして、配線・配管材11との接触によってブロック部34及び長尺ブロック部60が圧縮変形した場合、奥行方向Yの第1長側面311側において、圧縮変形しているブロック部34と、長手方向Xに隣り合うブロック部34との間に形成される隙間が広がる。しかし、奥行方向Yの第2長側面312側では長尺ブロック部60が厚さ方向Z及び奥行方向Yに変形する。つまり、ブロック部34と長尺ブロック部60とで厚さ方向Z及び奥行方向Yに変形形状が異なる。よって、隙間が広がっても、隙間における奥行方向Yの先には厚さ方向Zにほとんど変形していない長尺ブロック部60が位置し、当該長尺ブロック部60によって隙間が塞がれている。なお、隙間の先に視認できる長尺ブロック部60の一部を非連通面61とする。その結果、隙間が、防火区画壁Wの厚さ方向に沿って一直線状に延びることはなく、隙間を通して防火区画壁Wの一方の壁表側から他方の壁表側が視認不能となる。
【0079】
なお、各スリット32と長尺ブロック部60との境界に切れ込みを設け、長尺ブロック部60における、奥行方向Yの両側の側面のうち第1長側面311側に非連通面61を設けてもよい。この場合、切れ込みによって、各ブロック部34を長尺ブロック部60から分離するため、各ブロック部34が圧縮変形しやすくなる。
【0080】
このように構成した場合、奥行方向Yの第1長側面311側において、圧縮変形しているブロック部34と、長手方向Xに隣り合うブロック部34との間に形成される隙間が広がっても、隙間における奥行方向Yの先には非連通面61が位置し、隙間が塞がれる。その結果、隙間が、防火区画壁Wの厚さ方向に沿って一直線状に延びることはなく、隙間を通して防火区画壁Wの一方の壁表側から他方の壁表側が視認不能となる。
【0081】
図13に示すように、閉塞部材70は、閉塞部本体31の長手方向Xに隣り合うブロック部34の側面同士の間に、厚さ方向Z及び奥行方向Yに延びるスリット71を有するとともに、長手方向Xに並ぶブロック部34はそれぞれ独立して圧縮変形可能である。
【0082】
スリット71の厚さ方向Zへの寸法である深さは、第1長側面311で最も深く、第2長側面312で最も浅くなっている。そして、スリット71の深さは、奥行方向Yに沿って第1長側面311から第2長側面312に向かうに従い徐々に浅くなっており、スリット71は厚さ方向Zに傾斜している。つまり、スリット71の深さは、奥行方向Yに変化している。このため、連結部33の厚さは、第1長側面311で最も薄く、第2長側面312で最も厚くなっている。そして、連結部33の厚さは、奥行方向Yに沿って第1長側面311から第2長側面312に向かうに従い徐々に厚くなっている。
【0083】
このように構成した場合、各ブロック部34において、スリット71が浅い部分ほど厚さが薄くなり圧縮変形しにくいが、スリット71が深い部分ほど厚さが厚くなり圧縮変形しやすい。つまり、スリット71の深さが奥行方向Yに変化することで、ブロック部34には厚さ方向Zにおいて圧縮変形しにくい部分と圧縮変形しやすい部分とが併存する。
【0084】
その結果、ブロック部34において、圧縮変形しやすい部分は、配線・配管材11の形状に追従して圧縮変形しやすい一方で、長手方向Xに隣り合うブロック部34との間に隙間が広がりやすい。一方、ブロック部34において、圧縮変形しにくい部分は、配線・配管材11の形状に追従して圧縮変形しにくく、配線・配管材11との間には隙間が形成されやすいが、長手方向Xに隣り合うブロック部34との間の隙間が広がりにくい。
【0085】
よって、隙間が広がりやすい箇所と、隙間が広がりにくい箇所とが奥行方向Yに重なり、隙間が、防火区画壁Wの厚さ方向に沿って一直線状に延びることはない。
言い換えると、ブロック部34が圧縮変形しやすい箇所は、複数本ある配線・配管材11同士の隙間に入り込んだり、配線・配管材11の形状に追従して変形するため、厚さ方向Zにおいて配線・配管材11から離れた箇所では、長手方向Xに隣り合うブロック部34同士の間で隙間が広がりやすい。
【0086】
一方、ブロック部34が圧縮変形しにくい箇所は、配線・配管材11同士の隙間に入り込んだり、配線・配管材11の形状に追従したりしにくいため、長手方向Xに隣り合うブロック部34同士の間で隙間が広がりにくい。つまり、圧縮変形しているブロック部34は、厚さ方向Zにおいて変形形状が異なっている。したがって、厚さ方向Zにおいて、隙間が広がった箇所と隙間が広がっていない箇所が、厚さ方向Zにずれて形成されるため、隙間が、防火区画壁Wの厚さ方向に沿って一直線状に延びることはない。
【0087】
なお、図13に示す形態において、スリット71は厚さ方向Zに傾斜していたが、スリット71は傾斜していなくてもよい。例えば、スリット71の深さは、奥行方向Yに沿って第1長側面311から奥行方向Yの中央に向けて浅くなった後、奥行方向Yの中央から第2長側面312に向かうに従い徐々に深くなっていてもよい。要は、スリット71の深さが奥行方向Yに変化していれば、変化の仕方は適宜変更してもよい。
【0088】
○ 閉塞部材30は、複数のブロック部34と、複数のブロック部34を一方向に並べた状態に繋いで一体化すべく、各ブロック部34に貼着されたシート材41と、から構成してもよい。この場合、シート材41は、各ブロック部34の厚さ方向Zの一面のみに貼着される。
【0089】
○ 閉塞部材30は、閉塞部本体31のみで構成され、シート材41はなくてもよい。
○ シート材41は、閉塞部本体31の第2面31bのみに貼着されていてもよいし、第1面31aのみに貼着されていてもよい。
【0090】
○ 実施形態では、第1閉塞部材30Aと第2閉塞部材30Bを併用したが、閉塞部材30の厚さを1種類だけとし、同じ厚さの閉塞部材30のみを使用してもよい。
○ 貫通孔Waの閉塞構造において、貫通孔Waの内面と配線・配管材11の外面との間の空隙Kに収容される閉塞部材30は、配線・配管材11に接触するものだけとし、配線・配管材11に接触しない箇所では閉塞部材30以外の部材を収容してもよい。閉塞部材30以外の部材としては、スリットを有していない板状や塊状の部材であったり、圧縮変形しない材料からなる部材であったりしてもよい。
【0091】
○ 配線・配管材11の径が小さい場合は、閉塞部材30の複数のブロック部34のうちの1つだけが圧縮変形していてもよい。
○ 閉塞部材30のスリット32の数は、適宜変更してもよい。
【0092】
○ 閉塞部材30のスリット32は、長手方向に等間隔おきに形成されていなくてもよい。
○ 閉塞部材30の複数のスリット32の深さは、全て同じでなく、異なっていてもよい。
【0093】
○ スリット32の深さは、閉塞部本体31の厚さの半分より小さくてもよい。
○ 閉塞部材30の厚さを3種類以上設定してもよい。この場合であっても、配線・配管材11の外周面に接する閉塞部材30の厚さを最も薄くするのが好ましい。
【0094】
○ 閉塞部材30は、施工前はスリット32を備えておらず、施工時に、シート材41及び基材を同時に切り込んでスリット32を形成してもよい。
○ 防火区画壁Wの貫通孔Waは矩形孔状でなく、円孔状や、楕円孔状であってもよい。
【0095】
○ 防火区画壁Wはコンクリート製でなくてもよい。
○ 配線・配管材11の径が小さい場合、配線・配管材11の外面に接触する閉塞部材30において、圧縮変形するブロック部34の数は一つであってもよい。
【0096】
一方、配線・配管材11の径が大きい場合、配線・配管材11の外面に接触する閉塞部材30において、圧縮変形するブロック部34の数は実施形態より多くてもよい。
【符号の説明】
【0097】
K…空隙、M…仮想面、W…防火区画壁、X…一方向としての長手方向、Y…奥行方向、Z…厚さ方向、Wa…貫通孔、11…貫通部材としての配線・配管材、30,70…閉塞部材、32,71…スリット、34…ブロック部、34a…側面としての非連通面、61…非連通面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13