(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】ガス化システム
(51)【国際特許分類】
C10J 3/72 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
C10J3/72 G
(21)【出願番号】P 2023077693
(22)【出願日】2023-05-10
(62)【分割の表示】P 2019130899の分割
【原出願日】2019-07-16
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】澤田 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】杉村 枝里子
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-58600(JP,A)
【文献】特開2014-125508(JP,A)
【文献】特開2004-195459(JP,A)
【文献】特開2009-66588(JP,A)
【文献】特開2005-112956(JP,A)
【文献】特開2007-39613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10J 3/72
C10K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物をガス化するガス化システムであって、
内部に供給される被処理物を加熱して熱分解ガスを生成するガス化炉と、
前記ガス化炉から前記熱分解ガスが供給され、前記熱分解ガスを熱源流体を利用して間接加熱しつつ改質することにより、改質ガスを生成するガス改質炉と、
前記ガス化炉または/および前記ガス改質炉において回収されるチャーを燃焼させるとともに、燃焼排ガスを前記熱源流体として前記ガス改質炉に供給する燃焼炉と、
前記ガス化炉または/および前記ガス改質炉において回収されるチャーを貯留する貯留部と、
前記貯留部からチャーを前記燃焼炉に供給するチャー供給機構と、
前記ガス改質炉から排出された前記改質ガスを、前記燃焼炉と、前記改質ガスを用いた発電を行う発電部とに分配するガス分配部と、
前記チャー供給機構による前記燃焼炉へのチャーの供給量を調整するとともに、前記ガス分配部により、前記改質ガスを前記燃焼炉に供給させる制御部と、
を備えることを特徴とするガス化システム。
【請求項2】
請求項1に記載のガス化システムであって、
前記貯留部において、チャーの貯留量が測定されており、
前記制御部が、前記貯留部から前記燃焼炉に供給されるチャーが不足すると判定する場合に、前記ガス分配部により、前記改質ガスを前記燃焼炉に供給させることを特徴とするガス化システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のガス化システムであって、
前記ガス化炉が、ロータリーキルンであり、
前記燃焼炉が、前記ガス改質炉において回収されるチャーを燃焼させることを特徴とするガス化システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載のガス化システムであって、
前記ガス改質炉において内部に水蒸気を供給することにより、触媒を利用することなく、前記熱分解ガスの水蒸気改質が行われ、
前記ガス改質炉で利用される前記熱源流体の温度が、900℃以上であることを特徴とするガス化システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載のガス化システムであって、
前記改質ガスをガスエンジンで燃焼させて得られる排ガスが、前記ガス化炉における熱源として利用されることを特徴とするガス化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バイオマス等の被処理物をガス化することが行われている。例えば、特許文献1のガス化発電システムでは、ガス発生炉においてバイオマスを熱分解して可燃性の熱分解ガスを発生させ、ガス改質炉において当該熱分解ガスが改質される。また、当該システムでは、ガス改質炉で改質された熱分解ガス(改質ガス)の一部がガス燃焼器にて燃焼され、この燃焼によって発生した熱が、ガス改質炉の加熱、および、改質剤としての水の気化に利用される。改質剤としての水は、ガス改質炉内に噴霧される。
【0003】
また、特許文献2では、内筒および外筒を有する外熱キルン炉が開示されており、内筒内に供給された廃棄物が、内筒と外筒との間に形成された環状の加熱流路を流通する高温ガスにより間接的に加熱され、熱分解される。当該高温ガスは、熱分解ガスの一部を熱風発生炉で燃焼させて得られる。
【0004】
なお、特許文献3に開示される回転式熱処理炉では、外筒と内筒との間の空間が、外筒から延出して内筒に及ぶ仕切り壁によって、2つの加熱室に分割される。当該2つの加熱室には異なる熱量の熱媒体が流通される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-348155号公報
【文献】特開2008-249212号公報
【文献】特開2012-87943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1のシステムでは、改質ガスの燃焼により発生した熱がガス改質炉の加熱に利用されるが、この場合、発電に利用する改質ガスの量が少なくなる、すなわち、発電に利用する改質ガスの生産効率が低くなる。したがって、改質ガスの生産効率を向上する手法が求められている。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、改質ガスの生産効率を向上することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、被処理物をガス化するガス化システムであって、内部に供給される被処理物を加熱して熱分解ガスを生成するガス化炉と、前記ガス化炉から前記熱分解ガスが供給され、前記熱分解ガスを熱源流体を利用して間接加熱しつつ改質することにより、改質ガスを生成するガス改質炉と、前記ガス化炉または/および前記ガス改質炉において回収されるチャーを燃焼させるとともに、燃焼排ガスを前記熱源流体として前記ガス改質炉に供給する燃焼炉と、前記ガス化炉または/および前記ガス改質炉において回収されるチャーを貯留する貯留部と、前記貯留部からチャーを前記燃焼炉に供給するチャー供給機構と、前記ガス改質炉から排出された前記改質ガスを、前記燃焼炉と、前記改質ガスを用いた発電を行う発電部とに分配するガス分配部と、前記チャー供給機構による前記燃焼炉へのチャーの供給量を調整するとともに、前記ガス分配部により、前記改質ガスを前記燃焼炉に供給させる制御部とを備える。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のガス化システムであって、前記貯留部において、チャーの貯留量が測定されており、前記制御部が、前記貯留部から前記燃焼炉に供給されるチャーが不足すると判定する場合に、前記ガス分配部により、前記改質ガスを前記燃焼炉に供給させる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のガス化システムであって、前記ガス化炉が、ロータリーキルンであり、前記燃焼炉が、前記ガス改質炉において回収されるチャーを燃焼させる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載のガス化システムであって、前記ガス改質炉において内部に水蒸気を供給することにより、触媒を利用することなく、前記熱分解ガスの水蒸気改質が行われ、前記ガス改質炉で利用される前記熱源流体の温度が、900℃以上である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載のガス化システムであって、前記改質ガスをガスエンジンで燃焼させて得られる排ガスが、前記ガス化炉における熱源として利用される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、チャーを燃焼させて得られる燃焼排ガスを利用して熱分解ガスの改質を行うことにより、改質ガスの生産効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一の実施の形態に係るガス化システム1の構成を示す図である。ガス化システム1は、バイオマス等の被処理物をガス化して、発電等に利用するシステムである。ガス化システム1は、ガス化炉2と、ガス改質炉3と、制御部10とを備える。制御部10は、CPU等を有するコンピュータであり、ガス化システム1の全体制御を担う。
【0016】
ガス化炉2は、ロータリーキルンであり、内筒21と、外筒22とを備える。内筒21は、中心軸J1を中心とする筒状であり、例えば金属材料(合金を含む。以下同様。)により形成される。典型的には、中心軸J1に垂直な内筒21の断面形状は、円形である。当該断面形状は、ほぼ円形と捉えられる場合には、多角形等であってもよい。内筒21は、回転機構(図示省略)により中心軸J1を中心として回転する。
【0017】
内筒21において、中心軸J1に平行な軸方向における一端には、投入口211が設けられる。内筒21には、被処理物が投入口211から投入される。被処理物は、例えば、一般廃棄物、産業廃棄物、下水汚泥、木質バイオマス等である。
図1のガス化システム1では、被処理物は、受入設備11により受け入れられ、スクリューフィーダ12により内筒21内に投入される。
【0018】
内筒21の内部では、被処理物が後述の熱源流体を用いて、例えば350~500℃で間接加熱される。これにより、被処理物が熱分解し、ガス化する。すなわち、熱分解ガスが生成される。熱分解ガスは、ガスのみならず、タールの蒸気および粉体のチャー等も含む。内筒21の内部では、熱分解ガスに含まれないチャー(上記粉体のチャーよりも大きいチャー)も発生する。ガス化炉2では、例えば、図示省略の攪拌羽根が内筒21の内周面に設けられ、被処理物が攪拌されつつ、投入口211とは反対側(後述の排出口212側)に送られる。中心軸J1は、水平方向に平行であってもよく、水平方向に対して傾斜してもよい。
【0019】
内筒21において、軸方向における他端(投入口211とは反対側の端部)には、排出口212が設けられる。熱分解ガスおよびチャーは、排出口212から内筒21外に排出される。排出口212は、分離部25に接続される。分離部25は、上下方向に延びる管である。分離部25では、熱分解ガスは上方に向かって流れ、第1接続流路14に流入する。熱分解ガスに含まれないチャーは、下方に向かって落下し、チャー貯留部29にて貯留される。なお、当該チャーは、ガス化炉2によるガス化後に得られる残渣である。
【0020】
外筒22は、中心軸J1を中心とする筒状であり、内筒21の周囲を囲む。外筒22も、内筒21と同様に、例えば金属材料により形成される。外筒22は、内筒21の外周面との間に筒状空間を形成する。中心軸J1を中心とする径方向において、内筒21と外筒22との間の幅、すなわち上記筒状空間の幅は、外筒22の全長に亘ってほぼ一定である。軸方向における外筒22の両端部には、環状壁221,222が設けられる。環状壁221,222は、中心軸J1を中心とする円環状の部材であり、外筒22から内筒21に向かって突出する。また、軸方向における外筒22の中央近傍には、仕切壁223が設けられる。仕切壁223は、中心軸J1を中心とする円環状の部材であり、外筒22の内周面から内筒21に向かって突出する。環状壁221,222における内筒21側の端面、および、仕切壁223における内筒21側の端面は、例えば摺動部材を介して内筒21の外周面と接する。これにより、環状壁221,222および仕切壁223と内筒21との間には、シール構造が形成される。
【0021】
外筒22と内筒21との間の上記筒状空間は、仕切壁223により軸方向に2つに分割される。分割された2つの空間には、後述するように、熱源流体が供給されるため、以下、当該2つの空間を「第1加熱部23」および「第2加熱部24」という。第1加熱部23は、内筒21の投入口211側の部位に対向し、当該部位を加熱する。第2加熱部24は、内筒21の排出口212側の部位に対向し、当該部位を加熱する。
【0022】
外筒22には、第1流入口231、第1流出口232、第2流入口241および第2流出口242が形成される。第1流入口231は、仕切壁223の近傍に設けられ、第1加熱部23に接続する。第1流出口232は、投入口211側の環状壁221の近傍に設けられ、第1加熱部23に接続する。第1流入口231に供給される第1熱源流体は、熱源流路である第1加熱部23を流れて、第1流出口232から排出される。第2流入口241は、排出口212側の環状壁222の近傍に設けられ、第2加熱部24に接続する。第2流出口242は、仕切壁223の近傍に設けられ、第2加熱部24に接続する。第2流入口241に供給される第2熱源流体は、熱源流路である第2加熱部24を流れて、第2流出口242から排出される。第1熱源流体および第2熱源流体の詳細については後述する。
【0023】
第1加熱部23および第2加熱部24では、内筒21内における被処理物の送り方向とは反対の方向に熱源流体が流れ、向流式の熱交換が行われる。第1加熱部23における温度分布は、第1流入口231から第1流出口232に向かって漸次低くなり、内筒21内の被処理物は、例えば350℃まで第1加熱部23により加熱される。第2加熱部24における温度分布は、第2流入口241から第2流出口242に向かって漸次低くなり、内筒21内の被処理物は、例えば500℃まで第2加熱部24により加熱される。なお、内筒21の外周面に螺旋状の案内羽根が設けられ、第1流入口231から第1加熱部23に供給される第1熱源流体が、第1流出口232に向かって内筒21の周囲を螺旋状に流されてもよい(第2加熱部24において同様)。
【0024】
ガス改質炉3は、改質炉本体31と、本体加熱部32と、チャー回収部33と、水蒸気噴出部35とを備える。改質炉本体31は、例えば略円筒状であり、金属材料により形成される。
図1の例では、改質炉本体31は上下方向に延びており、改質炉本体31の上部に流入口311が設けられ、下部に流出口312が設けられる。流入口311は、第1接続流路14に接続し、流出口312は、第2接続流路16に接続する。ガス化炉2からの熱分解ガスは、第1接続流路14および流入口311を介して改質炉本体31の内部に流入する。第1接続流路14では、熱分解ガスに対して酸化ガスや水蒸気等が供給されることはなく、燃焼反応や改質反応は生じないため、ガス化炉2からの熱分解ガスがそのままの状態でガス改質炉3に供給される。当該熱分解ガスは、流出口312に向かって改質炉本体31の内部を流れ、流出口312を介して第2接続流路16へと排出される。
【0025】
本体加熱部32は、改質炉本体31の周囲にて、後述の第3熱源流体が流れる流路を形成する。第3熱源流体により、改質炉本体31の内部を流れる熱分解ガスが、間接的に加熱される。本実施の形態における第3熱源流体の温度は、900℃以上である。第3熱源流体の温度は、例えば1400℃以下である。改質炉本体31の内部では、熱分解ガスは、ガス化炉2よりも高い温度、例えば700℃以上、好ましくは800℃以上に加熱される。熱分解ガスは、例えば1100℃以下である。改質炉本体31の内部の熱分解ガスが、所望の温度に加熱されるように、改質炉本体31および本体加熱部32の形状は、適宜変更されてよい。
【0026】
水蒸気噴出部35は、例えば、複数の噴出口が設けられた管であり、改質炉本体31に設けられる。
図1の例では、水蒸気噴出部35は、改質炉本体31の上端に設けられる。水蒸気噴出部35には、後述のボイラ41から水蒸気が供給され、複数の噴出口から水蒸気が改質炉本体31の内部に噴出(供給)される。
【0027】
以上のように、ガス改質炉3の内部では、熱分解ガスに水蒸気が供給されるとともに、熱分解ガスおよび水蒸気が加熱される。その結果、熱分解ガスに含まれる炭化水素ガス等が、水蒸気改質反応により、水素(H2)や一酸化炭素(CO)等のガスに転換される(すなわち、水蒸気改質される)。また、熱分解ガスに含まれるタールおよび粉体のチャーも、水蒸気改質される。ガス改質炉3における水蒸気改質により得られたガス、すなわち改質ガスは、流出口312に到達し、第2接続流路16へと排出される。第2接続流路16は、後述のガス分配部52に接続される。
【0028】
チャー回収部33は、改質炉本体31の下端部に設けられる。チャー回収部33は、例えば、下方に向かうに従って内径が漸次小さくなる円錐状である。改質炉本体31では、例えば流出口312にフィルタが設けられており、フィルタ上に改質ガスに含まれるチャー(水蒸気改質されなかったチャー)が堆積する。改質炉本体31では、フィルタに対する払い落とし動作が一定周期で行われ、フィルタ上のチャーが、チャー回収部33において回収されて貯留される。改質炉本体31では、後述するように、他の機構によりチャーの回収が行われてよい。
【0029】
ガス化システム1は、ボイラ41と、ガス精製部42と、ガスエンジン43と、煙突44と、空気予熱器46と、燃焼炉51と、ガス分配部52とをさらに備える。ガス分配部52は、第1分岐管521と、第2分岐管522と、第1ダンパ523と、第2ダンパ524とを備える。第2接続流路16は、第1分岐管521と第2分岐管522とに分岐する。第1ダンパ523および第2ダンパ524は、第1分岐管521および第2分岐管522にそれぞれ設けられる。第1分岐管521は、ボイラ41に接続される。第2分岐管522は、燃焼炉51に接続される。ガス分配部52は、第1ダンパ523および第2ダンパ524を制御することにより、第2接続流路16を流れる改質ガスを、ボイラ41と燃焼炉51とに分配可能である。後述するように、ボイラ41へと供給される改質ガスは、発電部であるガスエンジン43へと導かれ、発電に利用される。したがって、ガス分配部52は、改質ガスを用いた発電を行うガスエンジン43と、燃焼炉51とに改質ガスを実質的に分配する。
【0030】
ガス化システム1では、第2接続流路16を流れる改質ガスの大部分は、第1分岐管521を流れ、ボイラ41に流入する。ボイラ41では、内部を流通する水と改質ガスとの熱交換により、水蒸気が得られる。水蒸気は、既述のように、水蒸気噴出部35に供給される。水蒸気の一部は、蒸気タービンの駆動等に利用されてもよい。改質ガスは、ボイラ41からガス精製部42に流入する。ガス精製部42では、改質ガスに対して冷却、ダストおよびミストの除去、脱塩、脱硫等の精製処理が行われる。精製処理後の改質ガスは、例えば50℃程度であり、図示省略の誘引ファンを介してガスエンジン43に供給される。
【0031】
ガスエンジン43では、改質ガスを燃料として発電が行われる。ガスエンジン43において改質ガスを燃焼させて得られる排ガスは、ガス化炉2における第1加熱部23の第1流入口231に供給される。すなわち、ガスエンジン43の排ガスが、第1熱源流体として第1加熱部23にて利用される。当該排ガスの温度は、例えば400~500℃である。第1加熱部23により、内筒21の投入口211側の部位が加熱され、内筒21内の被処理物が間接加熱される。排ガスは、第1流出口232から排出され、煙突44を介して大気へ排出される。
【0032】
燃焼炉51は、チャー貯留部29に接続され、チャー貯留部29にて貯留されるチャーが内部に供給される。また、燃焼炉51は、チャー回収部33に接続され、チャー回収部33にて貯留されるチャーが内部に供給される。好ましいガス化システム1では、チャー貯留部29およびチャー回収部33のそれぞれには、図示省略のチャー供給機構が設けられる。制御部10が、チャー供給機構を制御することにより、チャー貯留部29およびチャー回収部33のそれぞれから燃焼炉51へのチャーの供給量が調整可能である。燃焼炉51の内部には、空気予熱器46から高温の空気が供給される。これにより、内部のチャーが燃焼し、高温の燃焼排ガスが発生する。
【0033】
燃焼炉51には、ガス分配部52の第2分岐管522も接続される。好ましいガス化システム1では、チャー貯留部29およびチャー回収部33のそれぞれにおいて、チャーの貯留量も測定されており、制御部10において、燃焼炉51に供給するチャーが不足すると判定される場合には、改質ガスが第2分岐管522を介して燃焼炉51に供給される。ガス分配部52では、チャーの貯留量にかかわらず、一定量の改質ガスが、燃焼炉51に供給されてもよい。
【0034】
燃焼炉51は、第3接続流路17を介してガス改質炉3の本体加熱部32に接続される。燃焼炉51において発生した燃焼排ガスは、第3熱源流体として本体加熱部32に供給される。本体加熱部32に流入する第3熱源流体の温度は、好ましくは1000℃以上である。燃焼排ガスは、改質炉本体31の内部を流れる熱分解ガスの間接加熱(熱分解ガスの改質)に利用される。ガス改質炉3では、燃焼排ガスが改質炉本体31の内部の熱分解ガスに混ざることはない。
【0035】
本体加熱部32は、第4接続流路18を介してガス化炉2における第2加熱部24の第2流入口241に接続される。本体加熱部32を通過した燃焼排ガスは、第2熱源流体として第2加熱部24に供給される。これにより、内筒21の排出口212側の部位の第2加熱部24による加熱が実現され、内筒21内の被処理物が間接加熱される。第2加熱部24を通過した燃焼排ガスは、第2流出口242から排出され、空気予熱器46内に流入する。空気予熱器46では、内部を流通する空気と燃焼排ガスとの熱交換により、高温の空気が得られる。当該高温の空気は、既述のように、燃焼炉51におけるチャー等の燃焼に利用される。空気予熱器46を通過した燃焼排ガスは、煙突44を介して大気へ排出される。
【0036】
以上に説明したように、ガス化システム1のガス化炉2では、内部に供給される被処理物を間接加熱して熱分解ガスが生成される。ガス改質炉3では、ガス化炉2から供給される熱分解ガスを、熱源流体を利用して間接加熱しつつ改質することにより、改質ガスが生成される。また、ガス化炉2およびガス改質炉3において回収されるチャーが燃焼炉51にて燃焼され、燃焼排ガスが熱源流体としてガス改質炉3に供給される。このように、ガス化システム1では、チャーを燃焼させて得られる燃焼排ガスを利用して熱分解ガスの改質を行うことにより、改質ガスのみを燃焼させて間接加熱用の燃焼排ガスを得る場合に比べて、改質ガスの生産効率を向上することができる。その結果、ガス化システム1における、改質ガスを利用した発電の効率も向上することができる。
【0037】
また、ガス化システム1は、ガス改質炉3から排出された改質ガスを、燃焼炉51と、ガスエンジン43とに分配するガス分配部52をさらに備える。これにより、燃焼炉51においてチャーが足りている場合には、改質ガスの全部または大部分をガスエンジン43に供給して発電に利用し、燃焼炉51においてチャーが不足している場合には、改質ガスの一部を燃焼炉51に供給することが可能となる。その結果、ガス改質炉3の加熱に必要な熱量の燃焼排ガスを容易に確保することができる。
【0038】
ガス化炉2では、第1加熱部23により内筒21の投入口211側の部位が加熱され、第2加熱部24により、第1加熱部23よりも高い温度で内筒21の排出口212側の部位が加熱される。このように、二段加熱式のキルン炉を採用することにより被処理物を適切に加熱して、熱分解ガスを効率よく生成することができる。また、改質ガスをガスエンジン43で燃焼させて得られる排ガスが、第1加熱部23における熱源として利用されることにより、改質ガスをより効率よく生成することができる。さらに、ガス改質炉3を通過した燃焼排ガスが、第2加熱部24における熱源として利用されることにより、改質ガスをより一層効率よく生成することができる。
【0039】
ガス化炉2の内部では、ガスエンジン43からの排ガス等が混ざることなく、間接加熱により熱分解ガスが生成される。また、ガス改質炉3の内部には、酸化剤が供給されず、ほぼ無酸素状態で熱分解ガスの改質が行われる。その結果、可燃性ガスの濃度が高い好ましい改質ガスを生成することが可能となる。
【0040】
上記ガス化システム1では様々な変形が可能である。
【0041】
燃焼炉51では、必ずしもガス化炉2において回収されるチャー、および、ガス改質炉3において回収されるチャーの双方が燃焼される必要はなく、ガス化炉2またはガス改質炉3の一方で回収されるチャーのみが燃焼されてもよい。すなわち、燃焼炉51では、ガス化炉2または/およびガス改質炉3において回収されるチャーが燃焼されればよい。
【0042】
ガス化システム1では、被処理物を間接加熱して熱分解ガスを生成する、ロータリーキルン以外の構造のガス化炉2が用いられてもよい。一方、ロータリーキルンであるガス化炉2では、内部で被処理物を攪拌するため、ガス化炉2からガス改質炉3に向かう熱分解ガスに粉体のチャーが混ざりやすくなる。したがって、ガス化炉2がロータリーキルンである場合には、燃焼炉51が、ガス改質炉3において回収されるチャーを燃焼させることが好ましいといえる。また、ロータリーキルンであるガス化炉2では、必ずしも2つの加熱部23,24が設けられる必要はなく、単一の加熱部により、内筒21内の被処理物が間接加熱されてもよい。ガス化炉2における加熱は、間接加熱に限定されず、酸素富化ガス等の燃焼用ガスがガス化炉内に供給され、燃焼することで加熱が行われてもよい。
【0043】
ガス改質炉3では、例えば、サイクロン式の回収機構によりチャーの回収が行われてもよい。この場合、改質炉本体31の内部において上部から下方に突出する筒状の流出口312が設けられる。流入口311から流入する熱分解ガスは、改質炉本体31の内周面に沿うように内部に吹き込まれ、筒状の流出口312の周囲を旋回しつつ下方へと向かう。熱分解ガスに含まれるチャーは、チャー回収部33へと落下し、回収(貯留)される。一方、熱分解ガスは、筒状の流出口312の下端から流出口312に流入して上方へと流れ、第2接続流路16へと排出される。このように、サイクロン式の回収機構を採用する場合でも、改質炉本体31の内部を流れる熱分解ガスは、流出口312に到達するまでに水蒸気改質され、改質ガスが生成される。
【0044】
ガス改質炉3では、触媒を利用して熱分解ガスが改質されてもよい。触媒を利用した熱分解ガスの改質では、水蒸気改質に比べて低い温度(例えば800~1000℃)に熱分解ガスが加熱される。触媒としては、例えば、Si、Al、Ni、Fe、Cr、Mo、W、Mn、Co、Cu、Pd、Pt、Zn、Ru、Rhから選ばれる少なくとも1つの元素を含む物質(例えば、酸化物)を用いることが可能である。一方、触媒を利用しない上記実施の形態では、ガス化システム1の製造コストを削減することが可能である。
【0045】
改質ガスを用いた発電を行う発電部は、ガスエンジン43以外に、ガスタービン式、または、燃料電池(固体酸化物形燃料電池(SOFC)等)式のものであってもよい。また、改質ガスは、燃料ガスとして様々な用途に用いられてよく、さらに、液体に変換することにより液体燃料として用いられてもよい。
【0046】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0047】
1 ガス化システム
2 ガス化炉
3 ガス改質炉
43 ガスエンジン
51 燃焼炉
52 ガス分配部