(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】電動弁及び冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20240625BHJP
F25B 41/35 20210101ALI20240625BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
F25B41/35
(21)【出願番号】P 2023097544
(22)【出願日】2023-06-14
(62)【分割の表示】P 2020016899の分割
【原出願日】2020-02-04
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 一也
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-241144(JP,A)
【文献】特開平11-325658(JP,A)
【文献】特開2018-159447(JP,A)
【文献】特開2019-023484(JP,A)
【文献】国際公開第2018/230159(WO,A1)
【文献】特開2012-47213(JP,A)
【文献】特開2019-7549(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0368618(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/00-27/12
31/00-31/05
F25B 31/00-31/02
39/00-41/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室及び弁座部を構成する弁本体と、前記弁座部に開口して弁体が移動する軸線方向に延びる弁ポートと、前記弁座部と接離して前記弁ポートの開度を変更するニードル部を有する前記弁体と、前記弁体を前記軸線方向に駆動させる駆動部と、を備えた電動弁であって、
前記弁ポートは、前記軸線を中心とした円周面を有する弁口と、前記弁口よりも拡径された拡径空間と、前記拡径空間よりも縮径された縮径空間と、を備え、
前記弁本体には、内部が前記弁口に連通して前記弁ポートの一部を構成する筒状の整流部材が設けられ、
前記整流部材の内周面は、複数段に縮径されて前記弁室とは反対側に延びて設けられ、前記複数段のうちの最も前記弁口側の部分は、前記拡径空間の少なくとも一部を構成するとともに、最も縮径された部分は、前記縮径空間を構成し、
前記弁口の直径をD1とし、前記弁体が前記弁座部に着座した状態で前記弁座部の着座部から前記ニードル部の先端までの長さをL1とした場合、L1/D1<1であることを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記整流部材における前記拡径空間と前記縮径空間との間には、前記拡径空間よりも内径が小さく、かつ、前記縮径空間よりも内径が大きい第2の縮径空間が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、請求項1または2に記載の電動弁が、前記膨張弁として用いられていることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルシステムなどに使用する電動弁及び冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、空気調和機では、ファンや圧縮機等の静音化が進み、更に、空気調和機の冷凍サイクルの配管内を流れる流体としての冷媒の騒音、特に膨張弁に用いられる電動弁における騒音を低減させる技術も開発され、実施に供されている(例えば、特許文献1等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の発明者は、研究の中で、電動弁における流体の流れに起因する騒音は、特に微開状態時には、弁口と連続する弁ポートの形状の他に弁口から入り込む弁体のニードル部の長さにも依存することを判明させ、弁口から入り込む弁体のニードル部の長さの特徴に合わせて弁口と連続する弁ポートの形状を工夫することで、騒音の低減が図れる可能性があることを見出した。
【0005】
なお、特許文献1に開示された発明をはじめとする従来技術では、弁口から入り込む弁体のニードル部の長さの特徴に合わせて弁口と連続する弁ポートの形状を工夫することで騒音を低減させるという思想の技術は未だ見聞されない。
【0006】
そこで、本発明の目的は、弁口から入り込む弁体のニードル部の長さの特徴に合わせて弁口と連続する弁ポートの形状を工夫することで、流体の流れに起因する騒音を低減させることができる電動弁及び冷凍サイクルシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電動弁は、弁室及び弁座部を構成する弁本体と、前記弁座部に開口して弁体が移動する軸線方向に延びる弁ポートと、前記弁座部と接離して前記弁ポートの開度を変更するニードル部を有する前記弁体と、前記弁体を前記軸線方向に駆動させる駆動部と、を備えた電動弁であって、前記弁ポートは、前記軸線を中心とした円周面を有する弁口と、前記弁口よりも拡径された拡径空間と、前記拡径空間よりも縮径された縮径空間と、を備え、前記弁本体には、内部が前記弁口に連通して前記弁ポートの一部を構成する筒状の整流部材が設けられ、前記整流部材の内周面は、複数段に縮径されて前記弁室とは反対側に延びて設けられ、前記複数段のうちの最も前記弁口側の部分は、前記拡径空間の少なくとも一部を構成するとともに、最も縮径された部分は、前記縮径空間を構成し、前記弁口の直径をD1とし、前記弁体が前記弁座部に着座した状態で前記弁座部の着座部から前記ニードル部の先端までの長さをL1とした場合、L1/D1<1であることを特徴とする。
【0008】
この際、前記整流部材における前記拡径空間と前記縮径空間との間には、前記拡径空間よりも内径が小さく、かつ、前記縮径空間よりも内径が大きい第2の縮径空間が形成されていることが好ましい。
【0009】
本発明の冷凍サイクルシステムは、圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、前記いずれかの電動弁が、前記膨張弁として用いられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電動弁および冷凍サイクルシステムによれば、弁ポートにおける流体の流れに起因する騒音を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電動弁を示す縦断面図である。
【
図2】前記電動弁の要部を拡大して示す縦断面図である。
【
図3】前記電動弁を微開状態として、冷媒の流れを説明するための説明図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る電動弁の要部を拡大して示す縦断面図である。
【
図5】本発明の第3実施形態に係る電動弁の要部を拡大して示す縦断面図である。
【
図6】本発明の冷凍サイクルシステムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1実施形態に係る電動弁を
図1~
図3に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態の電動弁10Aは、弁本体1と、弁体2と、駆動部としてのステッピングモータ3と、弁ポート14と、を備えている。なお、以下の説明における「上下」の概念は
図1の図面における上下に対応する。
【0013】
弁本体1は、筒状の弁ハウジング部材1Aと、弁ハウジング部材1Aの内部に固定される弁ガイド部材1Bと、弁ハウジング1Aの上部に固定される円筒状のケース4と、ケース4の上端開口部に固定される支持部材5と、を有している。
【0014】
弁ハウジング部材1Aは、その内部に略円筒状の弁室1Cが形成され、側面側から弁室1Cに連通する第1の継手管11が取り付けられている。また、弁ハウジング部材1Aには、弁座部13の中央部に円柱状の弁口である第1ポート14a(
図2参照)が形成されている。また、弁ハウジング部材1Aの上端部には、下記の弁ガイド部材1Bを囲うようにリム1bが形成されている。さらに、弁ハウジング部材1Aの底面側にリング状のフランジ部15aを有する略円筒状の整流部材15が取り付けられている。そして、弁室1Cに連通する第2の継手管12が、整流部材15のフランジ部15aに当接するとともに、
弁ハウジング部材1Aの底部にろう付けにより取り付けられている。第1の継手管11から流体としての冷媒が流入した場合には、弁室1Cを介して第2の継手管12から冷媒が流出される。なお、弁ハウジング部材1Aの第1ポート14aと、整流部材15の円筒状の内周面とが連続することで弁ポート14が形成され、この弁ポート14の詳細については後述する。
【0015】
弁ガイド部材1Bは、弁ハウジング部材1Aの上部から弁室1C内に挿通されるように圧入して取り付けられており、この弁ガイド部材1Bには、軸線Lを中心として弁ガイド孔16が形成されている。ケース4は、弁ハウジング部材1Aのリム1bの外周に嵌合するように組み付けられ、リム1bをかしめるとともに、底部外周をろう付けすることにより弁ハウジング部材1Aに固着されている。
【0016】
支持部材5は、ケース4の上端開口部に固定金具41を介して溶接固定されている。この支持部材5の中心には、弁ポート14等の軸線Lと同軸に形成された雌ねじ部5aと、雌ねじ部5aの下側に形成されたねじ溝がない軸受部5bと、が設けられており、下方に雌ねじ部5a及び軸受部5bの外周よりも径の大きな円筒状のガイド孔5cが形成されている。さらに、支持部材5の上部外周には、螺旋状のガイド溝5dが形成されている。
【0017】
弁体2は、下側先端にニードル部21が設けられたロッド軸22と、ロッド軸22の上端部を保持する弁ホルダ6と、を有している。
【0018】
ロッド軸22は、弁ガイド部材1Bの弁ガイド孔16内に軸線L方向に摺動可能に挿入されている。また、ロッド軸22の上端部には、フランジ部23が形成されている。なお、ロッド軸22に設けられたニードル部21は、弁体2が最下方に移動した全閉状態時に弁座部13に着座するニードル部21の着座面部21aに連なって、その先端側に向かうに従い縮径するように多段に面取りされたイコールパーセント特性を有する形状である。また、後述するように、本実施形態では、ニードル部21は、着座した状態で弁座部13の弁座面13aに位置するニードル部21の着座面部21aが当接する弁座部13の着座部131からこのニードル部21の先端までの長さL1と、第1ポート14aの径D1と、がL1/D1≒0.5の関係を有するものである。
【0019】
弁ホルダ6は、筒状の円筒部61の下端にボス部62が固着されるとともに、円筒部61内にバネ受け63と圧縮コイルバネ64とワッシャ65とを備えている。そして、弁ホルダ6は、ボス部62の挿通孔62a内にロッド軸22の上端部が挿通されるとともに、フランジ部23をボス部62に当接させてロッド軸22の上端部を保持している。さらに、弁ホルダ6は、支持部材5のガイド孔5cに挿通され、軸線L方向に摺動可能に支持されている。
【0020】
駆動部としてのステッピングモータ3は、キャン7と、キャン7内に設けられたマグネットロータ31と、ロータ軸32と、不図示のステータコイルと、ステッピングモータ3の回転ストッパ機構と、を有している。
【0021】
キャン7は、ケース4の上端に溶接などによって気密に固定され、支持部材5、及び後述するマグネットロータ31を収納している。マグネットロータ31は、外周部を多極に着磁されており、その中心にロータ軸32が固定されている。ロータ軸32は、その下端部が、弁ホルダ6の円筒部61の上端部を貫通し、バネ受け63の上面に当接するとともに、抜け止め用のフランジ部32cが、ワッシャ65を介して円筒部61内に保持されている。また、ロータ軸32は、中間部に縮径部32bが形成され、その上側表面に雄ねじ部32aが形成されている。この雄ねじ部32aは、支持部材5の雌ねじ部5aに螺合され、これらの雄ねじ部32a及び雌ねじ部5aによって、駆動部のネジ送り機構が構成さ
れ、弁体2が軸線L方向に進退駆動されるようになっている。ステータコイルは、キャン7の外周に配設されており、このステータコイルにパルス信号が与えられることにより、そのパルス数に応じてマグネットロータ31が回転されてロータ軸32が回転するようになっている。
【0022】
ステッピングモータ3の回転ストッパ機構は、半径方向外向きに突出する爪部81を有するコイル状の従動スライダ8を有し、この従動スライダ8が支持部材5のガイド溝5d内に螺合されて構成されている。マグネットロータ31が回転すると、マグネットロータ31の内側の突出部が爪部81に当接し、従動スライダ8は、マグネットロータ31の回転に追従して回転するとともに、ガイド溝5dに案内されて上下動し、ガイド溝5dの最下部又は最上部に追従スライダ8の端部が当接すると、マグネットロータ31の回転が強制的に停止されるようになっている。
【0023】
弁ポート14は、
図2に示すように、軸線Lを中心とした円周面を有する弁口としての第1ポート14aと、第1ポート14aの下流側に連続し、第1ポート14aよりも拡径された円周面を有する拡径空間151と、拡径空間151の下流側に連続し、拡径空間151よりも縮径された円周面を有する縮径空間152と、を有して構成されている。
【0024】
弁口としての第1ポート14aは、直径がD1で軸線L方向の長さがL0であり、拡径空間151は、直径がD2で軸線L方向の長さがL2であり、縮径空間152は、直径がD3で軸線方向の長さがL3である。そして、本実施形態では、弁体2が弁座部13の着座部131に着座した状態で弁座部13の着座部131からニードル部21の先端までの長さL1は、L1/D1≒0.5の関係を有し、L1/D1<1の関係を満たし、拡径空間151の直径D2と長さL2とが、L2/D2≒0.75の関係を有し、L2/D2<1の関係を満たしている。
【0025】
ここで、弁口としての第1ポート14aは、弁座13に軸線Lを中心として形成されている。拡径空間151で直ちに冷媒の流速を減速させる必要があることから、第1ポート14aの長さL0は、その直径D1よりも小さいことが好ましい。そこで、本実施形態では、第1弁ポート14aの軸線L方向の長さL0が、約0.1D1とされている。
【0026】
拡径空間151は、軸線Lを中心として、弁座13に設けられた第1テーパ部14bと、弁座部13と整流部材15とに連続して設けられた第2ポート14cとにより形成されている。そして、本実施形態では、拡径空間151の軸線L方向の長さL2は、約0.75D2である。なお、長さL2は、L1-L0≦L2<D2の関係を満たすことが好ましい。すなわち、長さL2は、少なくとも弁体2が着座部131に着座した状態でニードル部21の先端が拡径空間151内に位置する長さであればよく、拡径空間151の直径D2未満であることが好ましい。縮径空間152は、整流部材15に設けられた第3ポート14dと、第2テーパ部14eとにより形成されている。そして、本実施形態では、縮径空間152の軸線L方向の長さL3は、約2.8L2である。なお、長さL3は、0.3L2≦L3≦7.5L2の関係を満たすことが好ましい。
【0027】
また、本実施形態では、拡径空間151の直径D2は、約1.1D1である。なお、直径D2は、1.1D1≦D2≦1.4D1の関係を満たすことが好ましい。本実施形態では、縮径空間152の直径D3は、D1と同一である。なお、直径D3は、D3≦D1の関係を満たすことが好ましい。
【0028】
以上の本実施形態によれば、着座した状態でニードル部21の着座面部21aが当接する弁座部13の着座部131からニードル部21の先端までの長さL1がL1/D1<1の関係を有するニードル部21の場合、
図3に示すように、ニードル部21を微小に離座
させて微開状態のときに、第1ポート14aとニードル部21との間の隙間から流入した冷媒は、実線の矢印で表したように、ニードル部21から剥離して安定しない流れが多く生じるが、拡径空間151の直径D2と長さL2とがL2/D2<1の関係を有することで、冷媒は拡径空間151で流速が減速されたのち、速やかに縮径空間152に流れ込み整流化され、冷媒の流れに起因する騒音をさらに低減させることができる。
【0029】
本実施形態では、各数値が、好ましい数値範囲内にあるため、上記した効果を十分に奏することができる。例えば、縮径空間152の長さL3が、上記した数値範囲以内になく、0.3L2未満の場合、騒音が発生する場合があるが、本実施形態によれば、その虞を低減することができる。
【0030】
次に、
図4に基づき、本発明の第2実施形態に係る電動弁10Bについて説明する。本実施形態の電動弁10Bは、第1実施形態の電動弁10Aと同様に、弁本体1と、弁体2と、駆動部としてのステッピングモータ3と、弁ポート14と、を備えている。電動弁10Bでは、弁体2の一部構成が第1実施形態の電動弁10Aと相違している。以下、相違点について詳しく説明する。
【0031】
本実施形態の電動弁10Bでは、弁体2のロッド部22が、第1実施形態の電動弁10Aのロッド部22よりも細い径に設定されている。
【0032】
本実施形態、すなわち、この電動弁10Bの弁ポート14において、拡径空間151の直径D2と、その長さL2との関係は、L2/D2≒0.9となっており、L2/D2<1の関係を満たし、また、縮径空間152の長さL3は、約3L2となっており、0.3L2≦L3≦7.5L2の関係を満たしている。このように本実施形態の電動弁10Bにおいても、第1実施形態の電動弁10Aと略同様の条件を満足することから、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0033】
次に、
図5に基づき、本発明の第3実施形態に係る電動弁10Cについて説明する。本実施形態の電動弁10Cは、第1実施形態の電動弁10Aと同様に、弁本体1と、弁体2と、駆動部としてのステッピングモータ3と、弁ポート14と、を備えている。電動弁10Cでは、弁ポート14の一部構成が電動弁10Aと相違している。以下、相違点について詳しく説明する。
【0034】
本実施形態の電動弁10Cでは、弁ポート14により、軸線Lを中心として、拡径空間151と、拡径空間151の下流側に連続し、拡径空間151よりも若干縮径された第2の縮径空間152Aと、第2の縮径空間152Aの下流側に連続し、第2の縮径空間152Aよりも縮径された縮径空間152と、が形成されている。すなわち、弁ポート14は、拡径空間151と、第2の縮径空間152Aと、縮径空間152と、の3段階で内径が変化し、この点が電動弁10Aと相違している。
【0035】
以上の電動弁10Cの弁ポートにおいて、拡径空間151の直径D2と、その長さL2との関係は、L2/D2≒0.8となっており、L2/D2<1の関係を満たし、縮径空間152と第2の縮径空間152Aの合計の長さL3は、約2.6L2となっており、0.3L2≦L3≦7.5L2の関係を満たしている。このように本実施形態の電動弁10Cにおいても、第1実施形態の電動弁10Aと略同様の条件を満足することから、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。なお、第2の縮径空間152Aの直径D3aは、約1.1D1となっており、縮径空間152の直径D3は、D1と同一である。本実施形態のように、中間部に第2の縮径空間152Aを有する場合は、最下部の縮径空間152の直径D3が、D3≦D1となる関係を満たしていればよい。
【0036】
次に、本発明の冷凍サイクルシステムを
図6に基づいて説明する。
図6は、本発明の冷凍サイクルシステムの一例を示す図である。
図6において、符号100は前記各実施形態の電動弁10A~10Cを用いた膨張弁であり、200は室外ユニットに搭載された室外熱交換器、300は室内ユニットに搭載された室内熱交換器、400は四方弁を構成する流路切換弁、500は圧縮機である。電動弁100、室外熱交換器200、室内熱交換器300、流路切換弁400、および圧縮機500は、それぞれ導管によって図示のように接続され、ヒートポンプ式の冷凍サイクルを構成している。なお、アキュムレータ、圧力センサ、温度センサ等は図示を省略してある。
【0037】
冷凍サイクルの流路は、流路切換弁400により冷房運転時の流路と暖房運転時の流路の2通りに切換えられる。冷房運転時には、
図6に実線の矢印で示したように、圧縮機500で圧縮された冷媒は流路切換弁400から室外熱交換器200に流入され、この室外熱交換器200は凝縮器として機能し、室外熱交換器200から流出された液冷媒は膨張弁100を介して室内熱交換器300に流入され、この室内熱交換器300は蒸発器として機能する。
【0038】
一方、暖房運転時には、
図6に破線の矢印で示したように、圧縮機500で圧縮された冷媒は流路切換弁400から室内熱交換器300、膨張弁100、室外熱交換器200、流路切換弁400、そして、圧縮機500の順に循環され、室内熱交換器300が凝縮器として機能し、室外熱交換器200が蒸発器として機能する。膨張弁100は、冷房運転時に室外熱交換器200から流入する液冷媒、または暖房運転時に室内熱交換器300から流入する液冷媒を、それぞれ減圧膨張し、さらにその冷媒の流量を制御する。なお、
図6においては、冷房運転時に室外熱交換器200から液冷媒が膨張弁100の第1の101に流入し、暖房運転時には、室内熱交換器300からの液冷媒が膨張弁100の第2の継手管102に流入するように冷凍サイクルに膨張弁100を設けているが、これに限らず、冷房運転時に室外熱交換器200からの液冷媒が膨張弁100の第2の継手管102に流入し、暖房運転時には室内熱交換器300からの液冷媒が膨張弁100の第1の継手管101に流入するように膨張弁100を冷凍サイクルに設けてもよい。
【0039】
以上の本発明の冷凍サイクルシステムによれば、上記したように、本実施形態の電動弁10A,10B,10Cは、流体としての冷媒の流れに起因する騒音を低減させることができるので、運転時により静音化された冷凍システムとすることができる。
【0040】
以上、図面を参照して、本発明を実施するための形態を第1~3実施形態に基づいて詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0041】
例えば、上記した第1~3実施形態では、弁体2のニードル部21の形状を、下側先端に向かうに従い縮径するように多段に面取りをしたイコールパーセント特性を有する形状としたが、これに限定されず、ニードル部21を、先端に向かうに従い縮径する曲面や円錐などの形状にして実施してもよい。
【0042】
また、上記した第1~3実施形態では、整流部材15を用いて弁ポート14を形成したが、これに限定されず、整流部材15の部分を、弁本体1と一体成型して弁ポート14を形成するようにして実施してもよい。
【0043】
さらに、上記した第1~3実施形態では、電動弁10A,10B,10Cを、冷凍サイクルシステムの膨張弁として使用したが、これに限定されず、例えば、ビル用のマルチエアコン等の室内機側の絞り装置等、他のシステムにも適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
10A,10B,10C 電動弁
1 弁本体
1A 弁ハウジング部材
1B 弁ガイド部材
1C 弁室
2 弁体
21 ニードル部
21a 着座面部
22 ロッド部
3 ステッピングモータ(駆動部)
13 弁座部
131 着座部
13a 弁座面
14 弁ポート
14a 第1ポート(弁口)
14b 第1テーパ部
14c 第2ポート
14d 第3ポート
14e 第2テーパ部
151 拡径空間
152 縮径空間
152A 縮径空間
100 膨張弁
200 室外熱交換器(凝縮器、蒸発器)
300 室内熱交換器(凝縮器、蒸発器)
400 流路切換弁
500 圧縮機