(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】気密確認装置
(51)【国際特許分類】
G01M 3/02 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
G01M3/02 C
(21)【出願番号】P 2023126058
(22)【出願日】2023-08-02
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】521475989
【氏名又は名称】川崎車両株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】粥川 真樹
(72)【発明者】
【氏名】矢野 忠寛
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】久保田 浩貴
(72)【発明者】
【氏名】森下 悠佑
(72)【発明者】
【氏名】津田 卓哉
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第2884173(CN,Y)
【文献】中国実用新案第203224338(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第107543660(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106500922(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00 - 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査面に配置される溶接部の気密確認装置であって、
前記検査面とともに内部空間を画定し、前記内部空間を開放する開口を有する箱体と、
前記箱体と前記検査面との間を封止するパッキンと、を備え、
前記箱体は、
前記内部空間を開放する穴を有する箱体本体部と、
前記開口を画定する周縁部と、
前記周縁部とは異なる部分に配置され、
前記穴を閉鎖し且つ前記箱体本体部とは別体であり、前記検査面を外部から視認可能な透明窓と、
前記内部空間に連通し、真空引き装置に接続される真空引きポートと、
前記内部空間に連通し、液体を流入させる給液ポートと、
鉛直方向上向き側に突出する気泡溜部と、を有し、
前記箱体本体部は、前記穴の周縁部のうち前記気泡溜部に隣接する隣接辺において前記透明窓を受け止める支持部を有し、
前記パッキンは、前記周縁部もしくは前記周縁部の外周側に位置
し、
前記透明窓は、前記気泡溜部に近づくにつれて鉛直方向上向きに傾斜し、
前記支持部は、前記穴の前記周縁部の前記隣接辺の一部から前記穴に向けて部分的に突出している、気密確認装置。
【請求項2】
前記真空引きポートは、前記箱体の鉛直上向き方向となる側に配置されている、請求項1に記載の気密確認装置。
【請求項3】
前記透明窓は、前記開口に対向するように配置されている、請求項1又は2に記載の気密確認装置。
【請求項4】
前記箱体の前記周縁部は、前記検査面の凹凸形状に合致させる凹凸形状を有する、請求項1又は2に記載の気密確認装置。
【請求項5】
検査面に配置される溶接部の気密確認装置であって、
前記検査面とともに内部空間を画定し、前記内部空間を開放する開口を有する箱体と、
前記箱体と前記検査面との間を封止するパッキンと、を備え、
前記箱体は、
前記開口を画定する周縁部と、
前記周縁部とは異なる部分に配置され、前記検査面を外部から視認可能な透明窓と、
前記内部空間に連通し、真空引き装置に接続される真空引きポートと、
前記内部空間に連通し、液体を流入させる給液ポートと、を有し、
前記パッキンは、前記周縁部もしくは前記周縁部の外周側に位置し、
前記箱体は、前記パッキンが前記検査面に押し当てられる向きに、前記開口の前記周縁部の内周部から突出した突起を有する
、気密確認装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶接部の気密性が保たれているか否かの検査に用いられる気密確認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、溶接が行われた溶接部に対し、気密性のない部位があるか否かの検査のための溶接部漏洩検査用真空室形成装置が開示されている。特許文献1の溶接部漏洩検査用真空室形成装置においては、溶接部に対し予め石鹸水が塗布され、その上からパッキンと板状のパッキン固定部とによって溶接部を囲む真空室が形成され、そこで真空室の真空引きが行われる。溶接部に気密性不良があったときには、負圧により真空室に外部との圧力差により空気が侵入する。その際に空気が石鹸水の塗布された部分を通過するので、気密性不良のある位置で泡が生成される。泡の有無を確認することにより、気密性不良の部位があるか否かの検査が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1においては、石鹸水の塗布作業が必要であるし、気密性不良の部位があったときに、そこから泡が単発的に出るだけなので、泡がすぐに割れたときに検査者が泡を見落とす可能性がある。また、塗布される石鹸水に限りがあるので、泡が割れたり吹き飛んだりすると、そこで石鹸水が不足し、気密性不良があってもそこで引き続き泡が生成されなくなる。そのため、特許文献1に開示された溶接部漏洩検査用真空室形成装置を用いて検査を行ったとしても、気密性不良の生じた位置を検出することが難しい。
【0005】
そこで本開示の一形態では、簡易な構成でありながら溶接部に気密性不良の部位があったときに、その位置をより正確に認識できる気密確認装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る気密確認装置は、検査面に配置される溶接部の気密確認装置であって、前記検査面とともに内部空間を画定し、前記内部空間を開放する開口を有する箱体と、前記箱体と前記検査面との間を封止するパッキンと、を備え、前記箱体は、前記開口を画定する周縁部と、前記周縁部とは異なる部分に配置され、前記検査面を外部から視認可能な透明窓と、前記内部空間に連通し、真空引き装置に接続される真空引きポートと、前記内部空間に連通し、液体を流入させる給液ポートと、を有し、前記パッキンは、前記周縁部もしくは前記周縁部の外周側に位置する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、溶接部の気密性が保たれていない場合に、液体の内部に検査面から発生する気泡が連続的に生成され続けるので、溶接部において気密性が保たれていない部位の位置をより正確に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る気密確認装置の斜視図である。
【
図2】
図1の気密確認装置の検査中の断面図である。
【
図3】
図1の気密確認装置における支持部の周辺について拡大して示した斜視図である。
【
図4】
図1の気密確認装置の検査中の斜視図である。
【
図5】別の実施形態における気密確認装置についての斜視図である。
【
図6】更に別の実施形態における気密確認装置についての側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係る気密確認装置について、添付図面を参照して説明する。
図1に、実施形態に係る気密確認装置1についての斜視図を示す。
図2に、実施形態に係る気密確認装置1について、幅方向D1の略中央の位置で、上下方向及び前後方向に延びた面に沿った気密確認装置1の断面図を示す。以下、気密確認装置1の幅方向をD1とし、水平面内で幅方向D1に直交する方向を前後方向D2とする。
【0010】
気密確認装置1は、ワークにおける、溶接の行われた溶接部について、気密性が保たれているか否かの検査を行う際に用いられる、溶接部の気密確認のための装置である。気密確認装置1は、箱体2を備えている。箱体2は、溶接部Pの気密確認のための検査が行われる際に、溶接済ワークWにおける検査の行われる検査面Sを上から覆うように、溶接済ワークW上に配置される。従って、検査の際には、溶接済ワークWの溶接部Pの検査面Sが、箱体2によって囲まれる。ここでは、検査面Sは、溶接部Pのうち、箱体2によって覆われた部分のことをいうものとする。
【0011】
本実施形態においては、箱体2は、3Dプリンタを用い、樹脂によって形成される。箱体2が3Dプリンタを用いて形成されるので、それぞれの溶接部の気密性の確認のための検査を行う部位に合わせて、それぞれの箱体2の形状を製造することができる。これにより、気密確認を行う部位ごとに合わせた形状の箱体2を容易に製造することができる。箱体2は、3Dプリンタ以外で形成されるものも含まれる。
【0012】
箱体2は、内側の内部空間3を画定するように構成されている。また、箱体2は、内部空間3を外部に開放する開口4を有している。箱体2は、開口4から内側に凹んだ凹状に構成されている。開口4は、箱体2の周縁部5によって画定されている。箱体2の周縁部5には、パッキン6が設けられている。パッキン6は、箱体2と検査面Sとの間を封止するために、箱体2に取り付けられている。これにより、箱体2の開口4から内部空間3に貯留された液体が外部に漏れることを防ぐことができる。パッキン6は、箱体2と検査面Sとの間を封止するために、柔軟な材料によって形成されている。本実施形態においては、例えば、パッキン6は、スポンジ体に接着のためのテープ面が形成されたスポンジテープによって形成されている。なお、本実施形態においては、パッキン6は、箱体2における開口4の周縁部5に設けられるように構成されているが、パッキン6は、開口4の周縁部5の外周側に位置していてもよい。つまり、パッキン6は、液体が内部空間3から漏れることを防ぐことができる位置に配置されていればよい。
【0013】
本実施形態においては、箱体2は、箱体本体部2aと、箱体本体部2aとは別体の透明窓2bと、を有している。箱体本体部2aは、内部空間3を開放する穴2cと、穴2cを画定する周縁部2dとを有している。透明窓2bは、周縁部2dの外側から嵌め込まれた後、全周シールが施されている。これによって、透明窓2bが、穴2cを閉鎖するように、箱体本体部2aに取り付けられている。透明窓2bは、外部から内部空間3を視認可能とするように、透明な材料によって構成されている。また、本実施形態では、透明窓2bは、板状に形成されている。本実施形態では、例えば、透明窓2bは、板状の透明樹脂、例えばポリカーボネートによって形成されている。
【0014】
本実施形態においては、透明窓2bは、検査面に対向する位置に設けられている。従って、本実施形態においては、透明窓2bは、箱体2において、検査面の上方に位置している。つまり、透明窓2bは、開口4に対向するように配置されている。これにより、本実施形態においては、透明窓2bは、開口4の周縁部5とは異なる部分に配置されている。
【0015】
箱体2は、透明窓2bの設けられた位置よりも上方に向かって突出すると共に、前後方向D2の一方側に設けられた突出部8を有している。突出部8は、気泡溜部9を形成している。気泡溜部9は、内部空間3の一部として、箱体2の突出部8によって画定されている。従って、気泡溜部9は、内部空間3の内部において、鉛直方向上向き側に突出した位置に設けられている。突出部8には、内部空間3の気泡溜部9に連通し、真空引き装置に接続される真空引きポート10が設けられている。
【0016】
真空引きポート10は、例えば真空ポンプといった真空引き装置に、空気を流通させることが可能な空気供給管11を介して接続されている。従って、真空引き装置を作動させることによって、気泡溜部9から強制的に空気を排出させることができる。それによって、内部空間3を低圧にすることができる。また、真空引き装置から排出される空気の量を調節することによって内部空間3の内部の圧力を調節することが可能に構成されている。尚、本例では真空引き装置として、真空エジェクタを採用している。
【0017】
本実施形態においては、真空引きポート10は、箱体2において突出部8の頂部に設けられ、箱体2の鉛直上向き方向となる側に配置されている。本実施形態では特に、真空引きポート10は、箱体2において、内部空間3の最も高い位置に連通するように設けられている。
【0018】
本実施形態においては、透明窓2bは、前後方向D2の一方に向かうにつれて上方に向かうように傾斜して箱体2に設けられている。つまり、透明窓2bは、気泡溜部9に近づくにつれて鉛直方向上方となるように傾斜している。本実施形態においては、
図2に示されるように、透明窓2bは、箱体2の前後方向D2において、箱体2の前後方向D2の他方側の端部15と、突出部8の前後方向D2の他方側の端部8aとの間の略全体を占めている。
【0019】
箱体2は、内部空間3に連通する給液ポート12を有している。給液ポート12は、内部に液体を流通させることが可能な液体供給管13に接続されている。液体供給管13は、例えば、液体が貯留されたタンクに接続されている。また、液体供給管13には、液体供給管13の内部の液体の流量を調節することが可能な流量調節バルブ14が設けられている。本実施形態においては、内部空間3に貯留する液体として水が用いられている。尚、本例において給液ポート12は箱体本体部2aの開口4の近傍であって、上面視で真空引きポート10と重ならない位置に設けられている。
【0020】
箱体本体部2aは、穴2cの周縁部2dのうち気泡溜部9に隣接する隣接辺2eにおいて透明窓2bを受け止める支持部2fを有している。
図3に、支持部2fの周辺について拡大した斜視図を示す。本実施形態においては、支持部2fは、穴2cの周縁部2dにおける気泡溜部9に隣接する隣接辺2eの一部から、穴2cに向けて部分的に突出している。つまり、本実施形態においては、支持部2fは、隣接辺2eの幅方向D1の全体に亘って設けられているわけではなく、幅方向D1の一部でのみ設けられている。本実施形態においては、支持部2fは、隣接辺2eの幅方向D1の中央部付近の一部でのみ設けられている。
【0021】
箱体2の箱体本体部2aは、パッキン6が検査面Sに押し当てられる向きに、箱体2における開口4の周縁部5の内周部5aから突出した突起16を有している。周縁部5における内周部5aから検査面Sに向けられて突起16が設けられているので、パッキン6の水平方向の内側に突起16が位置する。つまり、箱体2における周縁部5において、パッキン6の幅方向D1及び前後方向D2の内側に突起16が設けられている。
【0022】
上記のように構成された気密確認装置1が用いられて溶接済ワークWの溶接部Pの気密性が保たれているか否かの検査が行われる。
図4に、気密確認装置1を用いて、溶接部Pの気密性が保たれているか否かの検査が行われている状態の斜視図が示されている。検査の際には、溶接部Pの検査面Sを囲むようにパッキン6を溶接済ワークWの検査面Sに載置した状態で、真空引きポート10を通じて内部空間3の真空引きが行われる。そして、内部空間3から空気が排出されて内部空間3の内部の圧力が真空又は低圧になり、パッキン6が検査面6に密着しているのが確認できたら、流量調節バルブ14を開いて給液ポート12を通じて内部空間3に液体を供給する。これにより、箱体2の真空又は低圧の内部空間3に液体を溜めることができる。
【0023】
箱体2がパッキン6を介して溶接済ワークWの溶接部Pの検査面Sに当てがわれ、内部空間3に液体が貯留されている状態において、溶接部Pの気密性が保たれていなければ、溶接部Pを介して、内部空間3と外部との差圧により内部空間3に空気が流入する。従って、溶接部Pの裏側に存在する空気が、溶接部Pを介して、内部空間3に入り込む。内部空間3には液体が貯留されているので、内部空間3に入り込んだ空気は気泡Bとなって、検査者に対し可視化される。そのため、検査者は、気泡Bを視認することにより、溶接部Pにおいて気密性が保たれていない箇所を特定することができる。その一方、溶接部Pの気密性が保たれている場合には、溶接部Pは空気を通さない。そのため、真空又は低圧の内部空間3に液体が貯留された状態で箱体2が溶接済ワークWの溶接部Pの検査面Sに当てがわれても、気泡Bは発生せず気密性が保たれていると判定できる。従って、検査者は、気泡の有無および発生場所を確認することにより、溶接部Pの気密性が保たれているか否かの判定と、気密性が保たれていない箇所の特定をすることができる。
【0024】
上記実施形態によれば、検査面Sの溶接部Pに溶接不良があって気密性が保たれていない場合には、液体の内部に溶接部Pから発生する気泡Bが連続的に生成され続ける。検査者は、透明窓2bから内部空間3の状態を目視で確認し、気泡Bの有無を確認することにより、溶接部Pの気密性が保たれているか否かを検査することができる。また、気泡Bが発生しているときには、気泡Bの発生位置を確認することにより、溶接不良があって気密性が保たれていない位置を特定することができる。このとき、気泡Bは、液体の内部で連続的に発生することになるので、検査者は、気泡Bの存在を見落とさずに、気泡Bを認識することができる。
【0025】
また、上記実施形態によれば、真空引きポート10は、箱体2において突出部8に設けられ、箱体2の鉛直上向き方向となる側に配置されているので、真空引きポート10に液体が入り込むのを防ぐことができる。従って、真空引きの際に、液体によって真空引きポート10からの空気の排出が阻害されるのを防ぐことができる。
【0026】
また、上記実施形態によれば、透明窓2bが、箱体2の開口4に対向するように、検査面Sの上方に配置されているので、透明窓2bを介して気泡Bが生成されている位置を容易に視認することができる。従って、検査面Sの溶接部Pに気密性不良がある場合に、液体の内部で気泡Bが連続的に生成されている位置を目視によって確認することにより、溶接不良が生じている位置を正確に認識することができる。
【0027】
また、上記実施形態によれば、気泡溜部9が箱体2の鉛直方向上向き側の位置に、鉛直方向上方に突出して設けられているので、気泡溜部9を、透明窓2bよりも鉛直方向上方の位置に配置することができる。従って、箱体2の内部空間3において、液体を透明窓2bに接するようになるまで溜めることができる。本実施形態においては、内部空間3の内部に液体が貯留されたときに、透明窓2bの上下方向の全体に亘って、液体が透明窓2bに接するように、液体が内部空間3に貯留されている。これにより、内部空間3に液体が貯留されたときに、透明窓2bが曇ったり水滴の付着によって視認性が低下したりすることを防ぐことができる。
【0028】
また、上記実施形態によれば、透明窓2bが、気泡溜部9に近づくにつれて鉛直方向上向きに傾斜しているので、溶接部Pの気密性不良がある場合に発生した気泡Bが、検査面Sから液体内部を上昇して透明窓2bに到達した後に、透明窓2bを伝って気泡溜部9に導かれる。従って、気泡Bが透明板部の位置に溜まることを防ぐことができる。これにより、気密性不良の位置で発生し、そこから上昇した気泡Bが、透明窓2bの内側の位置に残ることを防ぐことができ、透明窓2bに残った気泡Bが検査者による視認性を低下させることを防ぐことができる。
【0029】
また、上記実施形態によれば、箱体本体部2aが、穴2cの周縁部2dのうち気泡溜部9に隣接する隣接辺2eにおいて透明窓2bを受け止める支持部2fを有しているので、透明窓2bが支持部2fによって支持され、透明窓2bを箱体本体部2aに対してより確実に固定させることができる。また、支持部2fは、穴2cの周縁部2dの隣接辺2eの一部から穴2cに向けて部分的に突出しているだけであり、隣接辺2eの全体に亘って穴2cに向けて突出しているわけではない。本実施形態においては、
図3に示されるように、支持部2fは、箱体本体部2aの幅方向D1の中央付近の領域A1でのみ穴2cに向けて突出しているだけなので、隣接辺2eから支持部2fが突出していない領域A2が存在する。そのため、気泡Bが透明窓2bを伝って気泡溜部9に向けて上昇してきたときに、隣接辺2eにおける支持部2fが突出していない領域A2で、気泡Bを気泡溜部9に向けて逃がすことができる。例えば、気密性不良のある位置で発生した気泡Bは、
図3の矢印D3及びD4に示されるように、支持部2fを避けて、支持部2fが突出していない領域A2を通り、気泡溜部9へ向かって移動することができる。従って、気密性不良のある位置で発生した気泡Bが、液体の内部を上昇して透明窓2bに到達し、そこから透明窓2bに沿って気泡溜部9へ移動する過程で、気泡Bが支持部2fの位置で溜まることを防ぐことができる。これにより、支持部2fの周辺で溜まった気泡Bによって透明窓2bでの検査者による視認性が低下することを防ぐことができる。
【0030】
また、上記実施形態によれば、箱体2の箱体本体部2aが開口4の周縁部5の内周部5aから突出した突起16を有しているので、内部空間3の負圧によってパッキン6が内部空間3に向かって引っ張られ、パッキン6の位置がずれることを防ぐことができる。従って、箱体2と検査面Sとの間にパッキン6がより確実に存在することになり、パッキン6によって検査面Sと箱体2との間から液体が漏れることを防ぐことができる。これにより、内部空間3における低圧の状態を維持することができる。
【0031】
なお、上記実施形態においては、溶接部Pの検査面Sが幅方向D1及び前後方向D2に沿ってほぼまっすぐに延びた面であり、それに合わせて、箱体2の開口4の周縁部5及びパッキン6が幅方向D1及び前後方向D2に沿ってまっすぐに延びた形態について説明したが、上記実施形態に限定されない。検査面Sが凹凸を有する形状である場合には、箱体2の周縁部5は、検査面Sの凹凸形状に合致させる凹凸形状を有していてもよい。
【0032】
図5に、検査面Sが凹凸形状を有している場合の、気密確認装置1A及び検査面Sの斜視図を示す。
図5に示されるように、溶接部Pにおいては、凹凸を有する板材と平板とが、隅肉溶接によって接合されている。そのため、板材が凹凸形状を有していると共に、検査面Sが隅肉溶接の行われる位置で凹凸形状を有している。本実施形態においては、板材の凹凸形状に合わせて気密確認装置1Aにおける開口4の周縁部5が凹凸形状を有すると共に、検査面Sの凹凸形状に合わせて、気密確認装置1Aにおける開口4の周縁部5が凹凸形状を有するように、気密確認装置1Aが構成されている。本実施形態においては、箱体2における前後方向D2の端面17の一部が、上下方向の上方に向かって凹むように、凹凸形状を有している。また、本実施形態においては、箱体2における幅方向D1のほぼ中央部において、箱体2の前後方向D2の端面17が、上方に向かって凹んだ凹部18を有するように、気密確認装置1Aが構成されている。また、本実施形態においては、端面17の凹部18は、幅方向D1の両端部において、内側に向かうにつれて上方に向かうようにテーパ状に形成されている。また、箱体2の前後方向D2の端面17が凹部18を有しているのに合わせ、パッキン6が凹部18に沿って上方に凹むように配置されている。また、板材の凹凸形状に合わせて形成された凹凸とは別に、隅肉溶接が行われることによって形成された凹凸に合わせて箱体2の前後方向D2の端面17が段差部21を有するように、気密確認装置1Aが構成されている。
【0033】
箱体2の周縁部5が溶接済ワークWにおける溶接部Pの検査面Sの段差部21による凹凸形状に合致する凹凸形状を有しているので、検査面Sに凹凸がある場合でも、箱体2を検査面Sの凹凸形状に沿わせることができる。また、箱体2の周縁部5が板材の凹凸形状に合致する凹凸形状を有しているので、板材に凹凸がある場合でも、箱体2を板材の凹凸形状に沿わせることができる。従って、液体が箱体2と検査面Sとの隙間から漏れるのを防ぐことができる。従って、パッキン6を介して箱体2を検査面Sに当てがうだけで箱体2の内部空間3に液体が貯留された状態が維持され、内部空間3に液体が貯留された状態で溶接部Pの気密性が保たれているか否かの検査を行うことができる。これにより、内部空間3に貯留された液体の内部で気泡Bの有無を確認することによって溶接部Pの気密性が保たれているか否かの検査を行うことができ、より精度の高い検査を行うことができる。
【0034】
本実施形態においては、溶接部Pは、鉄道車両の屋根板の一部であり、鉄道車両の屋根板の溶接部Pについて、気密性が保たれているか否かの検査を行う場合に、気密確認装置を用いることが例示的に記されている。鉄道車両の屋根板には、凹凸形状を有しているものがある。従って、鉄道車両の屋根板において、溶接部Pの気密性が保たれているか否かの検査が行われる場合には、溶接部Pの検査面Sは、凹凸形状を有していることがある。本実施形態においては、溶接部Pの検査面Sが凹凸形状を有していたとしても溶接部Pの気密性が保たれているか否かの検査を行うことが可能なので、本実施形態の気密確認装置は、凹凸のある鉄道車両の屋根板の溶接部Pにおける検査面Sについての気密性が保たれているか否かの検査を行う場合に好適である。
【0035】
また、上記実施形態においては、透明窓2bは、箱体2の箱体本体部2aにおいて、検査面Sの上方に位置している形態について説明したが、上記実施形態に限定されない。
図6に、透明窓19が、箱体2の開口4の周縁部5から上方に向かって延びた側面20に設けられた気密確認装置1Bの側面図が示されている。
図6に示されるように、透明窓19が、箱体2の幅方向D1の端部に位置する側面20に設けられている。検査者は、透明窓19を通じて、内部空間3の内部の状態を、箱体2の幅方向D1の外側から、箱体2を側面視するように目視によって確認する。このように、透明窓19は検査面Sの上方に位置していなくてもよく、透明窓19は検査面Sに対向する位置に設けられていなくてもよい。
【0036】
溶接済ワークWにおける溶接部Pの検査面Sの形状によっては、検査面Sを溶接済ワークWの一部が上から覆うように溶接済ワークWが構成されていることが考えられる。そのような場合に、気密確認装置が、箱体2における検査面Sの上方に透明窓が配置されている構成であれば、溶接済ワークWの一部によって検査面Sが隠され、箱体2の上方から透明窓を見るだけでは気泡Bの発生位置を目視によって確認できないことが考えられる。そのため、検査面Sにおいて、気密性の保たれていない位置がどこであるかを確認できないことが考えられる。
【0037】
図6に示されるように、透明窓19が箱体2の側面20に設けられていることにより、溶接済ワークWの一部が検査面Sを上から覆うように構成されていても、透明窓19を介して気泡Bの発生位置を目視によって確認することができる。従って、溶接済ワークWの一部が検査面Sを覆うように構成されている場合であっても、気泡Bの発生位置を確認することにより、気密性の保たれていない位置がどこなのかを認識することができる。
【0038】
図6に示されるように、透明窓19が箱体2の側面20に設けられている場合には、気泡Bは、透明窓19を伝って移動するわけではないので、透明窓19の上方の位置に気泡Bが溜まったとしても、それによって透明窓19の視認性が低下することはない。そのため、透明窓19が箱体2の側面20に設けられている場合には、箱体2あるいは透明窓2bは、前後方向D2の一方に向かうにつれて上方に向かうように傾斜していなくてもよい。
【0039】
なお、上記実施形態においては、真空引きポート10が箱体2において内部空間3の最も高い位置に連通するように設けられ、真空引きポート10が箱体2の最も高い位置に接続されている形態について説明した。しかしながら、上記実施形態に限定されない。真空引きポート10は、内部空間3の最も高い位置以外の位置で内部空間3に連通するように箱体2に設けられてもよい。また、真空引きポート10は、箱体2の最も高い位置に接続されていなくてもよい。真空引きポート10を介して内部空間3の空気が外部に排出され、内部空間3についての真空引きが行われる際に、真空引きポート10に液体が流入しなければよい。そのため、真空引きポート10は、内部空間3において、液体が貯留されることが想定される空間よりも上方の位置に設けられることが望ましい。また、真空引きポート10への液体の流入を防ぐのであれば、真空引きポート10は、給液ポート12よりも高い位置に設けられることが望ましい。
【0040】
また、上記実施形態においては、透明窓が検査面Sの上方を覆う位置に設けられる場合には、透明窓は、前後方向の一方に向かうにつれて上方に向かうように傾斜している形態について説明したが、上記実施形態に限定されない。透明窓は、検査面Sの上方を覆う位置に設けられている場合であっても、気密性が保たれているか否かを確認するうえで必ずしも傾斜していなくてもよい。
【0041】
また、上記実施形態においては、支持部2fは、箱体本体部2aの幅方向D1の中央付近の領域A1でのみ穴2cに向けて突出している形態について説明したが、上記実施形態に限定されない。支持部2fは、箱体本体部2aの幅方向D1のいずれかの端部付近でのみ穴2cに向けて突出している形態であってもよい。また、支持部2fは、その他の位置で穴2cに向けて突出している形態であってもよい。また、気泡が支持部2fに溜まってもよい場合には、支持部2fは、幅方向D1の全体の領域に亘って穴2cに向けて突出している形態であってもよい。
【0042】
また、上記実施形態においては、箱体に透明窓が1つのみ設けられた形態について説明したが、上記実施形態に限定されない。箱体に複数の透明窓が設けられてもよい。その場合、例えば、箱体における、検査面Sに対向し検査面Sの上方を覆う面と、箱体の側面との両方に、透明窓が設けられてもよい。
【0043】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかし、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。例えば、1つの実施形態中の一部の構成又は方法を他の実施形態に適用してもよく、実施形態中の一部の構成は、その実施形態中の他の構成から分離して任意に抽出可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれる。
【0044】
ここで、箱体からの排液のための構成を加えたひとつの変形例を挙げてみる。本実施形態で示した真空引き装置をもう1セット用意し、給液ポート12の対面辺りに排液ポートを新たに設置する。用意した真空引き装置を、その排液ポートに接続し、更にホースにつなげることで、ホースから排液することができる。さらにホースを給液用タンクにつなげれば液体を循環させることができるので、経済的である。また、作業場近辺に水道設備等がない場合であっても、タンク1杯の水さえあれば作業可能である。
【0045】
排液の手順はこうである。内部空間3の真空状態を維持しつつ、真空引きポート10の圧力よりも排液ポートの圧力が低くなるように両ポートの圧力を所望の圧力差となるように調整すればよい。これにより内部空間の液体が排液ポートから吸引されて内部空間3から排液可能となる。以上である。
【0046】
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
【0047】
[項目1]
検査面に配置される溶接部の気密確認装置であって、
前記検査面とともに内部空間を画定し、前記内部空間を開放する開口を有する箱体と、
前記箱体と前記検査面との間を封止するパッキンと、を備え、
前記箱体は、
前記開口を画定する周縁部と、
前記周縁部とは異なる部分に配置され、前記検査面を外部から視認可能な透明窓と、
前記内部空間に連通し、真空引き装置に接続される真空引きポートと、
前記内部空間に連通し、液体を流入させる給液ポートと、を有し、
前記パッキンは、前記周縁部もしくは前記周縁部の外周側に位置する気密確認装置。
【0048】
[項目2]
前記真空引きポートは、前記箱体の鉛直上向き方向となる側に配置されている、項目1に記載の気密確認装置。
【0049】
[項目3]
前記透明窓は、前記開口に対向するように配置されている、項目1又は2に記載の気密確認装置。
【0050】
[項目4]
前記箱体の前記周縁部は、前記検査面の凹凸形状に合致させる凹凸形状を有する、項目1乃至3のいずれかに記載の気密確認装置。
【0051】
[項目5]
前記箱体は、鉛直方向上向き側に突出する気泡溜部を有する、項目1乃至4のいずれかに記載の気密確認装置。
【0052】
[項目6]
前記透明窓は、前記気泡溜部に近づくにつれて鉛直方向上向きに傾斜している、項目5に記載の気密確認装置。
【0053】
[項目7]
前記箱体は、前記内部空間を開放する穴を有する箱体本体部と、前記穴を閉鎖し且つ前記箱体本体部とは別体の前記透明窓と、を有し、
前記箱体本体部は、前記穴の周縁部のうち前記気泡溜部に隣接する隣接辺において前記透明窓を受け止める支持部を有し、
前記支持部は、前記穴の前記周縁部の前記隣接辺の一部から前記穴に向けて部分的に突出している、項目6に記載の気密確認装置。
[項目8]
前記箱体は、前記パッキンが前記検査面に押し当てられる向きに、前記開口の前記周縁部の内周部から突出した突起を有する、項目1乃至7のいずれかに記載の気密確認装置。
【符号の説明】
【0054】
1、1A、1B 気密確認装置
2 箱体
2a 箱体本体部
2b 透明窓
2c 穴
2d 周縁部
2e 隣接辺
2f 支持部
3 内部空間
4 開口
5 周縁部
5a 内周部
6 パッキン
8 突出部
9 気泡溜部
10 真空引きポート
12 給液ポート
16 突起
18 凹部
19 透明窓
B 気泡
S 検査面
P 溶接部
W 溶接済ワーク
【要約】
【課題】簡易な構成でありながら溶接不良の部位があったときに、溶接不良のある位置をより正確に認識できる気密確認装置を提供する。
【解決手段】気密確認装置は、検査面に配置される溶接部の気密確認装置であって、前記検査面とともに内部空間を画定し、前記内部空間を開放する開口を有する箱体と、前記箱体と前記検査面との間を封止するパッキンと、を備え、前記箱体は、前記開口を画定する周縁部と、前記周縁部とは異なる部分に配置され、前記検査面を外部から視認可能な透明窓と、前記内部空間に連通し、真空引き装置に接続される真空引きポートと、前記内部空間に連通し、液体を流入させる給液ポートと、を有し、前記パッキンは、前記周縁部もしくは前記周縁部の外周側に位置する。
【選択図】
図1