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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】分析装置および分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/34 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
G01C21/34
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023205814
(22)【出願日】2023-12-06
【審査請求日】2023-12-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】397036309
【氏名又は名称】株式会社インターネットイニシアティブ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100195408
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】柿島 純
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-008659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の出発地点および目的地点を取得するように構成された設定情報取得部と、
前記車両が前記目的地点に到達するまでに通過する各ポイントでの、前記車両による進行方向の操作の履歴を含む出力シンボル系列を取得するように構成された出力シンボル取得部と、
前記出発地点から前記目的地点までに前記車両が通過する前記各ポイントを隠れ状態の有限集合とし、かつ、前記各ポイントでの前記車両による前記進行方向の操作を観測可能な出力シンボルの有限集合とした隠れマルコフモデルのパラメータが事前に推定された、学習済みの隠れマルコフモデルを記憶するように構成された記憶部と、
前記学習済みの隠れマルコフモデルを用いて、前記車両が前記各ポイントで、前記出力シンボル取得部によって取得された前記進行方向の操作の各々が行われる確率を求めるように構成された演算部と、
前記演算部により求められた、前記進行方向の操作の各々が行われる確率に基づいて、前記進行方向の操作のうち前記車両による操作の確率が最も高い進行方向の操作に応じて、前記目的地点までの走行ルートを決定するように構成された決定部と、
決定された前記走行ルートを提示するように構成された提示部と
を備え
前記出力シンボル取得部は、前記車両による各ポイントでの前記進行方向の操作を示す出力シンボル系列を学習データとして取得し、
さらに、前記学習データに対する尤度を最大にする、前記車両が所定のポイントから別のポイントに移動する確率である状態遷移確率分布、および、前記車両が前記各ポイントで、所定の前記進行方向の操作を行う確率であるシンボル出力確率分布を含む前記隠れマルコフモデルの前記パラメータを推定するように構成された学習部を備え、
前記学習済みの隠れマルコフモデルは、前記学習部によって推定された前記パラメータを備える
ことを特徴とする分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の分析装置において、
前記設定情報取得部は、前記車両が前記出発地点から前記目的地点に到達することができる複数の異なる走行ルートを取得し、
前記複数の異なる走行ルートの各々は、複数のポイントにより特定される
ことを特徴とする分析装置。
【請求項3】
請求項1に記載の分析装置において、
前記進行方向の操作は、前記車両における予め設定された複数のステアリング操作を含む
ことを特徴とする分析装置。
【請求項4】
車両の出発地点および目的地点を取得する設定情報取得ステップと、
前記車両が前記目的地点に到達するまでに通過する各ポイントでの、前記車両による進行方向の操作の履歴を含む出力シンボル系列を取得する出力シンボル取得ステップと、
前記出発地点から前記目的地点までに前記車両が通過する前記各ポイントを隠れ状態の有限集合とし、かつ、前記各ポイントでの前記車両による前記進行方向の操作を観測可能な出力シンボルの有限集合とした隠れマルコフモデルのパラメータが事前に推定された、学習済みの隠れマルコフモデルを記憶部に記憶する記憶ステップと、
前記学習済みの隠れマルコフモデルを用いて、前記車両が前記各ポイントで、前記出力シンボル取得ステップで取得した前記進行方向の操作の各々が行われる確率を求める演算ステップと、
前記演算ステップで求めた、前記進行方向の操作の各々が行われる確率に基づいて、前記進行方向の操作のうち前記車両による操作の確率が最も高い進行方向の操作に応じて、前記目的地点までの走行ルートを決定する決定ステップと、
決定された前記走行ルートを提示する提示ステップと
を備え
前記出力シンボル取得ステップは、前記車両による各ポイントでの前記進行方向の操作を示す出力シンボル系列を学習データとして取得し、
さらに、前記学習データに対する尤度を最大にする、前記車両が所定のポイントから別のポイントに移動する確率である状態遷移確率分布、および、前記車両が前記各ポイントで、所定の前記進行方向の操作を行う確率であるシンボル出力確率分布を含む前記隠れマルコフモデルの前記パラメータを推定する学習ステップを備え、
前記学習済みの隠れマルコフモデルは、前記学習ステップで推定された前記パラメータを備える
ことを特徴とする分析方法。
【請求項5】
請求項に記載の分析方法において、
前記設定情報取得ステップは、前記車両が前記出発地点から前記目的地点に到達することができる複数の異なる走行ルートを取得し、
前記複数の異なる走行ルートの各々は、複数のポイントにより特定される
ことを特徴とする分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置および分析方法に関し、特に、車両の走行ルートの分析技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両などに搭載されるカーナビゲーションシステムが知られている。例えば、特許文献1は、車両の現在位置から目的地までの距離が最短となる走行ルートや最短時間で目的地まで到達する走行ルートを設定して、車両のルート案内を行う技術を開示する。また、特許文献1では、信号機の有無や交差点の有無、車両の施設への入りやすさなどから、車両がより効率的に目的地に到達するルートが設定されている。
【0003】
ここで、車両を運転するドライバーであるユーザは、最短時間や最短距離に基づいて画一的に設定された案内ルートに対して、案内に沿った道路とは異なる抜け道などを頻繁に使用して走行する場合がある。しかし、特許文献1が開示するカーナビゲーションシステムによるルート設定では、ユーザごとの運転の傾向に合わせて個別化された走行ルートを提示することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-220265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来の技術によれば、ユーザごとの運転の傾向に合わせた走行ルートを提示することができなかった。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、ユーザごとの運転の傾向に合わせた走行ルートを提示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明に係る分析装置は、車両の出発地点および目的地点を取得するように構成された設定情報取得部と、前記車両が前記目的地点に到達するまでに通過する各ポイントでの、前記車両による進行方向の操作の履歴を含む出力シンボル系列を取得するように構成された出力シンボル取得部と、前記出発地点から前記目的地点までに前記車両が通過する前記各ポイントを隠れ状態の有限集合とし、かつ、前記各ポイントでの前記車両による前記進行方向の操作を観測可能な出力シンボルの有限集合とした隠れマルコフモデルのパラメータが事前に推定された、学習済みの隠れマルコフモデルを記憶するように構成された記憶部と、前記学習済みの隠れマルコフモデルを用いて、前記車両が前記各ポイントで、前記出力シンボル取得部によって取得された前記進行方向の操作の各々が行われる確率を求めるように構成された演算部と、前記演算部により求められた、前記進行方向の操作の各々が行われる確率に基づいて、前記進行方向の操作のうち前記車両による操作の確率が最も高い進行方向の操作に応じて、前記目的地点までの走行ルートを決定するように構成された決定部と、決定された前記走行ルートを提示するように構成された提示部とを備える。
【0008】
また、本発明に係る分析装置において、前記設定情報取得部は、前記車両が前記出発地点から前記目的地点に到達することができる複数の異なる走行ルートを取得し、前記複数の異なる走行ルートの各々は、複数のポイントにより特定されてもよい。
【0009】
また、本発明に係る分析装置において、前記出力シンボル取得部は、前記車両による各ポイントでの前記進行方向の操作を示す出力シンボル系列を学習データとして取得し、さらに、前記学習データに対する尤度を最大にする、前記車両が所定のポイントから別のポイントに移動する確率である状態遷移確率分布、および、前記車両が前記各ポイントで、所定の前記進行方向の操作を行う確率であるシンボル出力確率分布を含む前記隠れマルコフモデルの前記パラメータを推定するように構成された学習部を備え、前記学習済みの隠れマルコフモデルは、前記学習部によって推定された前記パラメータを備えていてもよい。
【0010】
また、本発明に係る分析装置において、前記進行方向の操作は、前記車両における予め設定された複数のステアリング操作を含んでいてもよい。
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明に係る分析方法は、車両の出発地点および目的地点を取得する設定情報取得ステップと、前記車両が前記目的地点に到達するまでに通過する各ポイントでの、前記車両による進行方向の操作の履歴を含む出力シンボル系列を取得する出力シンボル取得ステップと、前記出発地点から前記目的地点までに前記車両が通過する前記各ポイントを隠れ状態の有限集合とし、かつ、前記各ポイントでの前記車両による前記進行方向の操作を観測可能な出力シンボルの有限集合とした隠れマルコフモデルのパラメータが事前に推定された、学習済みの隠れマルコフモデルを記憶部に記憶する記憶ステップと、前記学習済みの隠れマルコフモデルを用いて、前記車両が前記各ポイントで、前記出力シンボル取得ステップで取得した前記進行方向の操作の各々が行われる確率を求める演算ステップと、前記演算ステップで求めた、前記進行方向の操作の各々が行われる確率に基づいて、前記進行方向の操作のうち前記車両による操作の確率が最も高い進行方向の操作に応じて、前記目的地点までの走行ルートを決定する決定ステップと、決定された前記走行ルートを提示する提示ステップとを備える。
【0012】
また、本発明に係る分析方法において、前記設定情報取得ステップは、前記車両が前記出発地点から前記目的地点に到達することができる複数の異なる走行ルートを取得し、前記複数の異なる走行ルートの各々は、複数のポイントにより特定されてもよい。
【0013】
また、本発明に係る分析方法において、前記出力シンボル取得ステップは、前記車両による各ポイントでの前記進行方向の操作を示す出力シンボル系列を学習データとして取得し、さらに、前記学習データに対する尤度を最大にする、前記車両が所定のポイントから別のポイントに移動する確率である状態遷移確率分布、および、前記車両が前記各ポイントで、所定の前記進行方向の操作を行う確率であるシンボル出力確率分布を含む前記隠れマルコフモデルの前記パラメータを推定する学習ステップを備え、前記学習済みの隠れマルコフモデルは、前記学習ステップで推定された前記パラメータを備えていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、学習済みの隠れマルコフモデルを用いて、車両が各ポイントで進行方向の操作の各々を行う確率を求め、求められた確率に基づいて、各ポイントでの車両による操作の確率が最も高い進行方向の操作に応じた目的地点までの走行ルートを決定する。そのため、ユーザごとの運転の傾向に合わせた走行ルートを提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る分析装置を含む分析システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、本実施の形態に係る分析装置による学習処理を説明するための図である。
図3図3は、本実施の形態に係る分析装置が取得する出力シンボル系列を説明するための図である。
図4図4は、本実施の形態に係る分析装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図5図5は、本実施の形態に係る分析装置の学習処理を示すフローチャートである。
図6図6は、本実施の形態に係る分析装置の演算処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図1から図6を参照して詳細に説明する。
【0017】
[分析システムの構成]
図1は、本発明の実施の形態に係る分析装置1を備える分析システムの構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る分析システムは、車両2による走行ルートの傾向を分析し、分析結果に基づいて最適な走行ルートを決定し、提示する。
【0018】
分析システムは、分析装置1および車両2を備える。図1に示す分析装置1は、車両2が備える車載装置として構成されるが、ネットワーク側に設けられたクラウドシステム等として構成してもよい。
【0019】
車両2は、自動車、原動機付自動車、自動二輪車などが含まれる。車両2は、ステアリングホイール2a、センサ20、GPSモジュール21、ECU(Electronic Control Unit)22、表示装置23、通信インターフェース24、および地図データベース25を備える。ステアリングホイール2aは、車両2の進行方向を操作するステアリング機構を構成する。なお、以下においては、車両2は、ドライバー(ユーザ)によって手動運転される場合を例示して説明する。
【0020】
ステアリングホイール2aは、車両2のドライバーによって回転操作されると、回転運動が車両2の左右方向の往復運動に変換され、車両2の前輪の角度を変える。ステアリングホイール2aの回転量に応じて、車両2の前輪の角度が変わることで、車両2の進行方向が操作される。
【0021】
本実施の形態では、車両2の進行方向の操作の例として、車両2を右方向に旋回させるステアリングホイール2aの操作(右回転)、左方向に旋回させるステアリングホイール2aの操作(左回転)、および進行方向が変化しない直進の操作(回転なし)の3種類の操作を用いる。右回転および左回転のステアリングホイール2aの回転角度および回転角度に対する前輪の回転角度は事前に規定される。
【0022】
センサ20は、地磁気センサ、ジャイロセンサ、加速度センサ、車速センサ、カメラやLiDARなどの各種センサを備える。センサ20によって、車両2の方向、傾斜角度、移動距離などが検出され、車両2の位置の特定に利用される。また、車両2は、GPS機能を有するGPSモジュール21を備える。GPSモジュール21によって受信されるGPS衛星の絶対位置および時刻に基づいて、車両2の現在位置が特定される。
【0023】
ECU22は、車両2のステアリング制御、駆動制御、ブレーキ制御、カーナビゲーションなどを、ECU22に組み込まれたソフトウェアによって実行する。本実施の形態では、ECU22は、車載ネットワークNWを経由して分析装置1と連携する。ECU22は、ステアリングECU、駆動ECU、ブレーキECU、カーナビゲーションECUなどの各種ECUで構成され、各ECUは車載ネットワークNWを介して連携する。また、本実施の形態では、ドライバーによるステアリングホイール2aのステアリング操作の履歴が、車両2の図示されないメモリに記憶される。
【0024】
車両2が備えるセンサ20、GPSモジュール21、ECU22、表示装置23、通信インターフェース24、および地図データベース25は、カーナビゲーションシステム2Aを構成する。分析装置1は、カーナビゲーションシステム2Aを制御するECU22(カーナビゲーションECU)と車載ネットワークNWを介して連携する。カーナビゲーションシステム2Aは、表示装置23としてディスプレイおよびタッチパネルを備える。カーナビゲーションシステム2Aは、さらに、図示されないスピーカ、コネクタなどを備える。
【0025】
本実施の形態において、カーナビゲーションシステム2Aは、分析装置1に対して車両2の自車位置や目的地点、および地図データ等を提供する。また、カーナビゲーションシステム2Aは、分析装置1によって決定された走行ルートおよび自車位置を地図データベース25の地図データ上に反映するマップマッチング処理を行うことができる。分析装置1は、カーナビゲーションシステム2Aを制御するECU22、すなわちカーナビゲーションECUに対して、決定された走行ルートを表示装置23の地図データ上に表示させることができる。
【0026】
地図データベース25は、例えば、日本全土の道路地図データや、それに付随する各種施設や店舗等の施設データ等を記憶する。例えば、地図データは地図上の道路を線で表現した道路ネットワークからなり、交差点、分岐点等に基づいて道路を複数の区間に分割した区間データとして与えられることができる。各区間は、始点および終点の経度および緯度からなる位置情報、長さ、道路の幅や種別などのデータが含まれる。なお、地図データベース25は、分析装置1が備える構成であってもよい。
【0027】
車両2は、図1に示すように、地図データベース25に登録されている道路Rを走行し、現在位置である出発地点「START」から道路Rに沿って配置されたポイントpを通過しながら目的地点「GOAL」まで走行する。ポイントpは、図1の例に示すように、交差点や分岐点ごと、あるいは、道路を複数の区間に分割した1つまたは複数区間ごとなどの固定的な位置に配置することができる。あるいは、設定された時間間隔(例えば、1~数秒間)で車両2が到達する道路Rの各位置をポイントpとして設定することができる。また、時間間隔により設定する場合には、車両2の速度などに応じて時間の間隔は任意に設定できる。いずれの場合でも、ポイントpは経度および緯度を含む地図上の位置が特定される。
【0028】
車両2の現在位置は、直前のポイントpでの車両2における右回転、左回転、または回転なしのいずれかのステアリング操作に起因するものとする。以下においては、説明の簡単のため、直前のポイントpで車両が右回転の操作を行った場合、必ずある一つの特定のポイントpに到達するものと仮定する。図1の例では、出発地点「START」から、次に到達するポイントp「1」で右回転のステアリング操作が行われた場合、車両2はポイントp「2」に到達し、ポイントp「2」でさらに左回転のステアリング操作が行われる。その後、車両2はポイントp「3」に到達する。このように、車両2による各ポイントpでのステアリング操作が順次行われて、最終的には目的地点に到達する。
【0029】
本実施の形態に係る分析システムでは、機械学習モデルとして隠れマルコフモデルを用いて、車両2が出発地点から目的地点に到達することのできる全ての走行ルートに含まれるポイントpの各々で、車両2によって行われる確率が最も高いステアリング操作を求める。さらに、各ポイントpでの右回転、回転なし、および左回転のステアリング操作の確率に基づいて、出発地点から目的地点に向かう際に通過するポイントpを特定し、推奨される走行ルートを決定し、提示する。
【0030】
[分析装置の機能ブロック]
分析装置1は、設定情報取得部10、設定情報記憶部11、出力シンボル取得部12、学習部13、演算部14、決定部15、パラメータ記憶部(記憶部)16、および提示部17を備える。
【0031】
設定情報取得部10は、車両2の出発地点および目的地点を取得する。また、設定情報取得部10は、車両2が出発地点から目的地点に到達することができる複数の異なる走行ルートを取得する。より詳細には、設定情報取得部10は、車両2のカーナビゲーションシステム2Aにおいて入力された目的地点の情報載ネットワークNWを介して取得する。また、設定情報取得部10は、車両2のセンサ20やGPSモジュール21のデータにより特定された自車の現在位置を出発地点として車載ネットワークNWを介して取得することができる。
【0032】
設定情報取得部10は、地図データベース25の地図データに基づいて、出発地点の位置から目的地点の位置までの全走行ルートを取得する。例えば、車載ネットワークNWを介して、カーナビゲーションシステム2Aから全走行ルートを取得することができる。また、設定情報取得部10は、全走行ルートの各々を、車両2が通過する複数のポイントpとして特定する。前述したように、ポイントpは、所定の道路Rの分割区間ごと、交差点や分岐点ごと、あるいは、所定の時間間隔(例えば、1~数秒ごと)で車両2が到達する位置などとすることができる。
【0033】
設定情報記憶部11は、ポイントpの設定情報や出発地点および目的地点を記憶する。また、設定情報記憶部11は、地図データベース25の地図データと、車両2が通過する各ポイントpの識別情報や位置情報とを関連付けて記憶する。
【0034】
出力シンボル取得部12は、車両2が目的地点に到達するまでに通過する各ポイントpでの、車両2によるステアリング操作(進行方向の操作)の履歴を含む出力シンボル系列を取得する。また、出力シンボル取得部12は、車両2による各ポイントpでのステアリング操作を示す出力シンボル系列を学習データとして取得する。具体的には、出力シンボル取得部12は、車載ネットワークNWを介して、車両2で記録されているステアリング操作の履歴を取得する。
【0035】
出力シンボル取得部12によって取得されたステアリング操作の履歴により、車両2が通過する各ポイントpを含む走行過程で、右回転、回転なし、および左回転のうちどのステアリング操作を行ったかを観測データとして把握することができる。
【0036】
学習部13は、出力シンボル取得部12によって取得された学習データに対する尤度を最大にする、車両2が所定のポイントから別のポイントに移動する確率である状態遷移確率分布A、および、車両2が各ポイントpで、所定のステアリング操作を行う確率であるシンボル出力確率分布Bを含む隠れマルコフモデルのパラメータを推定する。
【0037】
前述したように、本実施の形態に係る分析装置1は、機械学習モデルとして隠れマルコフモデル(Hidden Markov Model:HMM)を採用する。隠れマルコフモデルは、マルコフ過程に従って変化する状態変数に依存した観測値である出力シンボルを確率的にとらえるモデルである。すなわち、複数の状態の間を移動する確率変数が、各時点でどの状態にあるかを推定することができるモデルである。
【0038】
より具体的には、学習部13は、車両2の進行方向の変更により所定の時間ステップごとに通過する各ポイントpを隠れ状態の有限集合とし、かつ、車両2が各ポイントpで行ったステアリング操作を観測可能な出力シンボルの有限集合とした隠れマルコフモデルを用いる。
【0039】
図2の(a)は、本実施の形態で採用される隠れマルコフモデルを説明するための図である。図2の(a)に示すように、本実施の形態ではLeft-to-Right HMMを用いる。Left-to-Right HMMは、状態が必ず左から右に遷移し、次の状態に遷移すると前の状態へは戻ることができないエルゴード性がないとの仮定に基づくモデルである。図2の(a)に示す各円は、車両2が現在位置の出発地点から目的地点に到達するまでに通過し得る全てのポイントpを示している。車両2が通過するポイントpは、直接観測することができない隠れ状態を示し、状態の集合S={S,…,S,…,S}で表される。
【0040】
また、図2の(a)の例では、車両2は、初期状態である現在位置あるいは出発地点から、最終状態である目的地点まで各ポイントpを通過して移動する。各状態のループは自己ループを示しており、例えば、車両2が停止していることを示す。また、図2の(a)では、車両2が隠れ状態である各ポイントpにおいて、右回転、回転なし、左回転のステアリング操作を行った確率、すなわち唯一観測することができる出力シンボル系列の出力確率が、b(1),b(2),…,b(k)で示されている。なお、本実施の形態では、前述したように、K={1(右回転),2(回転なし),3(左回転)}の3種類が設定される。すなわち、出力シンボル系列の出力確率は、状態Sである各ポイントpで、車両2が予め設定されたk=3種類のステアリング操作の各々を行う確率である。
【0041】
このように、状態Sで表されるポイントpからシンボルOで表されるステアリング操作が出力されると考えることができる。なお、図2の(a)の状態遷移図は、3種類のステアリング操作(k=3)に対応して、各状態から3つの矢印で示すように、k=1(右回転)、2(回転なし)、3(左回転)の操作が行われ得ることがトレリス図として示されている。
【0042】
隠れマルコフモデルのパラメータは、上記の隠れ状態の集合S、および出力シンボルの種類K={1,2,…,k}の他に、出力シンボルの集合O={O,O,…,O}、初期状態確率の集合π={π}、最終状態の集合、状態遷移確率の集合A={ai,j}、およびシンボル出力確率の集合B={b(O)}を含む。
【0043】
初期状態確率πの総和は、次式(1)で表されるように、1を満たす。これは、Left-to-Right HMMでは、初期状態i=0のみで始まることによる。
【数1】
【0044】
最終状態に関し、Left-to-Right HMMでは、最後の状態は、ただ一つのみである。
【0045】
状態遷移確率ai,jは、状態Sから状態Sに遷移する確率であり、ある状態Sから遷移する可能性のあるすべての状態Sへの状態遷移確率の総和は次式(2)で示すように1を満たす。
【数2】
【0046】
シンボル出力確率b(O)は、前述したように状態Sで出力シンボルOを出力する確率を示し、ある状態Sから遷移するときに出力されうる全てのシンボルのシンボル出力確率の総和は、次式(3)で示すように1を満たす。なお、出力シンボルOは、時刻tにおいて観測される出力シンボルである。
【数3】
【0047】
上記のように定義される隠れマルコフモデルをλ=(A,B,π)と表す。学習部13は、隠れマルコフモデルλの状態遷移確率分布Aおよびシンボル出力確率分布Bのパラメータを推定する。隠れマルコフモデルでは、出力シンボル系列からは隠れ状態系列は直接観測できないため、直接最尤推定を行うことが困難である。そのため、学習部13は、EM(Expectation-maximization)アルゴリズムと呼ばれる最尤法に基づく繰り返し演算によってこれらのパラメータを推定する。学習部13は、特に、隠れマルコフモデルに対するパラメータの推定に適応したものとしてよく知られているEMアルゴリズムの一つである、Baum-Welchアルゴリズムを用いて状態遷移確率分布Aおよびシンボル出力確率分布Bのパラメータを推定する。
【0048】
学習部13は、以下の第1ステップから第6ステップまでのBaum-Welchアルゴリズムの学習ステップを実行する。
【0049】
[第1ステップ]
まず、学習部13は、設定情報取得部10により取得された車両の現在位置または出発地点および目的地点の位置に基づく全ての走行ルート、および各走行ルートにおいて車両2が通過するポイントpから、図2の(a)に示す状態遷移図を設定する。
【0050】
[第2ステップ]
次に、学習部13は、状態遷移確率分布Aおよびシンボル出力確率Bの初期値を設定する。学習部13は、任意の値を初期値として用いることができる。
【0051】
[第3ステップ]
次に、出力シンボル取得部12は、学習データの出力シンボル系列O={O,O,…,O}を決定する。学習データは、出力シンボル取得部12によって取得される、車両2が各ポイントpで行ったステアリング操作の出力シンボル系列である。出力シンボル取得部12は、図3に示すように、車両2が出発地点から目的地点まで走行する過程で、所定の時間ステップごとに行ったステアリング操作の操作履歴として、時刻tのシンボル出力系列Oを決定する。なお、時間ステップは、任意の時間間隔として設定することができる。また、学習部13がシンボル出力系列Oを決定する構成であってもよい。
【0052】
[第4ステップ]
次に、学習部13は、Forwardアルゴリズムの変数であるgridの値をα(i)として次式(4)によって定義し、各αの計算を行う。
【数4】

上式(4)において、j=1,2,…,n-1である。
【0053】
[第5ステップ]
次に、学習部13は、Backwardアルゴリズムの変数であるgridの値をβ(t)として次式(5)により定義し、各βの計算を行う。
【数5】

ここで、j=1,2,…,n-1である。
【0054】
[第6ステップ]
続いて、学習部13は、時刻tにおける状態Sから状態Sへの遷移確率Γ(i,j)の計算を行い、状態遷移確率ai,jおよびシンボル出力確率b(O)の再計算を行う。
【数6】

上式(8)においてt∈0は、時刻tにおけるシンボル出力Oが0であることを示す。
【0055】
その後、学習部13は、上記の第4ステップから第6ステップまでを繰り返し、パラメータが変化しない、あるいは尤度が変化しなくなった点を収束点とし、その時の状態遷移確率分布Aおよびシンボル出力確率分布Bを推定値として採用する。Baum-Welchアルゴリズムにおいては、第6ステップで遷移確率Γ(i,j)を状態遷移確率ai,jとシンボル出力確率b(O)から計算する手続きがEMアルゴリズムの期待値(E)ステップに対応する。また、第6ステップにおいてシンボル出力確率b(O)を遷移確率Γ(i,j)から再計算する手続きがEMアルゴリズムの最大化(M)ステップに対応する。
【0056】
図1に戻り、演算部14は、学習済みの隠れマルコフモデルを用いて、車両2が各ポイントpで、出力シンボル取得部12によって取得されたステアリング操作の各々が行われる確率を求める。
【0057】
より具体的には、演算部14は、例えば、図2の(b)に示すように、3種類の出力シンボルである右回転、回転なし、および左回転のステアリング操作の各々についての各状態Sでのシンボル出力確率b(1),b(2),b(3)を求める。例えば、状態Sに対応するポイントpにおいて、車両2が右回転のステアリング操作、回転なしのステアリング操作、および左回転のステアリング操作を行う確率は、それぞれ、b(1)=0.3、b(2)=0.6、b(3)=0.1と求められる。このようにして、演算部14は、学習済みの隠れマルコフモデルを用いて、目的地点まで到達することができる全走行ルートの各ポイントpで車両2の各ステアリング操作を行う確率を求める。
【0058】
決定部15は、演算部14により求められた、車両2が各ポイントpでステアリング操作の各々を行う確率に基づいて、3種類のステアリング操作のうち車両2による操作の確率が最も高いステアリング操作に応じて、目的地点までの走行ルートを決定する。例えば、図2の(a)の状態遷移図および(b)の各状態での確率値に示すように、決定部15は、i=0におけるポイントpでの右回転、回転なし、および左回転のステアリング操作が行われる確率を、b(1)=0.7、b(2)=0.2、b(3)=0.1と求める。
【0059】
この場合、決定部15は、右回転に係るステアリング操作であるb(1)=0.7の確率が最も高いため、車両2が次の時間ステップでは、直前のポイントpから右方向に進んだ場合に到達するポイントp(例えば、S)での各ステアリング操作の確率のうち最も確率が高いステアリング操作である(b(2)=0.6)回転なし、即ち直進する経路が決定される。
【0060】
決定部15は、出発地点から目的地点までに車両2が通過するポイントpおよび各ポイントpでのステアリング操作から、車両2における走行ルートの選択傾向に応じた個別化された走行ルートを決定することができる。
【0061】
パラメータ記憶部16は、学習部13によってパラメータが推定された学習済みマルコフモデルを記憶する。
【0062】
提示部17は、決定部15により決定された、車両2の走行ルートを提示する。提示部17は、例えば、車載ネットワークNWを介して、車両2のカーナビゲーションシステム2Aに各ポイントpの位置を地図データに反映した走行ルートを通知することができる。さらに、ECU22は、車両2の位置および走行ルートを地図データ上に表示させて、表示装置23から出力させることができる。さらに、車両2のカーナビゲーションシステム2Aは、目的地点までの最短距離あるいは最短時間に基づいて画一的に算出された走行ルートとともに、決定部15が決定したユーザの運転の傾向に基づく走行ルートをユーザが選択可能な複数の走行ルートの1つとして表示させることができる。
【0063】
[分析装置のハードウェア構成]
次に、上述した機能を有する分析装置1を実現するハードウェア構成の一例について、図4を用いて説明する。
【0064】
図4に示すように、分析装置1は、例えば、バス101を介して接続されるプロセッサ102、主記憶装置103、通信インターフェース104、補助記憶装置105、入出力I/O106を備えるコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。
【0065】
主記憶装置103には、プロセッサ102が各種制御や演算を行うためのプログラムが予め格納されている。プロセッサ102と主記憶装置103とによって、図1に示した設定情報取得部10、出力シンボル取得部12、学習部13、演算部14、決定部15など分析装置1の各機能が実現される。
【0066】
通信インターフェース104は、分析装置1と各種外部電子機器との間をネットワーク接続するためのインターフェース回路である。
【0067】
補助記憶装置105は、読み書き可能な記憶媒体と、その記憶媒体に対してプログラムやデータなどの各種情報を読み書きするための駆動装置とで構成されている。補助記憶装置105には、記憶媒体としてハードディスクやフラッシュメモリなどの半導体メモリを使用することができる。
【0068】
補助記憶装置105は、分析装置1が実行する学習プログラムを格納するプログラム格納領域を有する。補助記憶装置105によって、図1で説明した設定情報記憶部11、パラメータ記憶部16が実現される。さらには、例えば、上述したデータやプログラムなどをバックアップするためのバックアップ領域などを有していてもよい。
【0069】
入出力I/O106は、外部機器からの信号を入力したり、外部機器へ信号を出力したりする入出力装置である。
【0070】
[分析装置の動作]
次に、上述した構成を有する分析装置1の動作を、図5および図6のフローチャートを参照して説明する。図5は、分析装置1による隠れマルコフモデルの学習処理を示すフローチャートである。図6は、分析装置1による、パラメータが推定された学習済みの隠れマルコフモデルを用いた演算処理を示すフローチャートである。
【0071】
まず、図5を参照して、分析装置1による学習処理を説明する。はじめに、設定情報取得部10は、車両2の現在位置または出発地点、および目的地点を含む設定情報を取得する(ステップS1)。具体的には、設定情報取得部10は、車載ネットワークNWを介して、カーナビゲーションシステム2Aにおいて設定された目的地点および特定された車両の現在位置を取得することができる。
【0072】
次に、設定情報取得部10は、車両2の出発地点と目的地点とに基づいて、設定情報記憶部11および車両2の地図データベース25の地図データを参照して全走行ルートを設定する(ステップS2)。ステップS2において、設定情報取得部10は、さらに、目的地点までの全走行ルートの各々を、車両2が通過する複数のポイントpにより特定する。例えば、地図データの分割区分ごとや、交差点や分岐点ごと、あるいは、一定時間間隔ごとに車両2が到達する位置をポイントpとして配置することができる。
【0073】
次に、出力シンボル取得部12は、車両2による各ポイントpでのステアリング操作を示す出力シンボル系列を学習データとして取得する(ステップS3)。具体的には、出力シンボル取得部12は、車載ネットワークNWを介して、車両2において記録されているステアリング操作の履歴を取得することができる。
【0074】
次に、学習部13は、ステップS3で取得された学習データに対する尤度を最大にする隠れマルコフモデルのパラメータを推定する(ステップS4)。具体的には、学習部13は、上述したBaum-Welchアルゴリズムの第1ステップから第6ステップまでの処理を実行し、状態遷移確率分布Aおよびシンボル出力確率分布Bを含むパラメータを推定する。
【0075】
ステップS4で推定されたパラメータは、学習済み隠れマルコフモデルとしてパラメータ記憶部16に記憶される(ステップS5)。
【0076】
次に、図6を参照して、分析装置1による学習済み隠れマルコフモデルを用いた演算処理について説明する。
【0077】
まず、演算部14は、パラメータ記憶部16から学習済みの隠れマルコフモデルをロードする(ステップS10)。次に、出力シンボル取得部12は、車両2によるステアリング操作の履歴を含む出力シンボル系列を取得する(ステップS11)。
【0078】
次に、演算部14は、学習済みの隠れマルコフモデルを用いて、車両2が各ポイントpで、ステップS11で取得されたステアリング操作の各々が行われる確率を求める(ステップS12)。演算部14は、例えば、図2の(b)に示すように、車両2が、各状態Sに対応するポイントpの各々で行うステアリング操作の確率値b(1)、b(2)、b(3)を算出する。
【0079】
次に、決定部15は、ステップS12で求められた確率値に基づいて、複数のステアリング操作のうち、車両2による操作の確率が最も高いステアリング操作に応じて、目的地点までの走行ルートを決定する(ステップS13)。例えば、決定部15は、図1に示すように、出発地点から最初のポイントp「1」でのステアリング操作(右回転)に応じて、次のポイントp「2」を走行ルートとして決定する。決定部15は、同様にポイントp「2」でのステアリング操作に応じて、さらに次のポイントp「3」をルートとして決定し、目的地点に到達するまでに車両2が通過する全てのポイントpおよびポイントpを通過する順番により、走行ルートを決定することができる。
【0080】
次に、提示部17は、ステップS13で決定された走行ルートを、車載ネットワークNWを介して車両2に提示する(ステップS14)。例えば、提示部17は、カーナビゲーションシステム2Aに対して、決定された走行ルートを通知することができる。
【0081】
以上説明したように、本実施の形態に係る分析装置1によれば、出発地点から目的地点までに車両2が通過する各ポイントpを隠れ状態の有限集合とし、かつ、各ポイントpでの車両2による進行方向の操作を観測可能な出力シンボルの有限集合とした隠れマルコフモデルのパラメータを推定する。さらに、学習済みの隠れマルコフモデルの演算を行い、各ポイントpで、出力シンボル取得部12によって取得された進行方向の操作の各々が行われる確率を求める。そのため、ユーザごとの運転の傾向に合わせた走行ルートを提示することができる。
【0082】
なお、上述した分析装置1では、隠れマルコフモデルのパラメータの推定に係る学習処理を、Baum-Welchアルゴリズムにより行う場合について説明した。しかし、隠れマルコフモデルのパラメータの推定は、Baum-Welchアルゴリズムに限定されない。例えば、構造化変分推論やViterbiアルゴリズムを用いてもよい。
【0083】
また、上述した実施の形態に係る分析装置1は、車両2に搭載されてカーナビゲーションシステム2Aと連携する構成を例示したが、これに限定されない。例えば、分析装置1は、車載されているカーナビゲーションシステム2Aの一部として構成することができる。あるいは、分析装置1は、V2N(Vehicle to Network)通信によって車両2と通信を行うクラウドネットワークとして構成することができる。
【0084】
また、上述した実施の形態では、車両2はドライバーによってステアリング操作が行われる手動運転を前提として説明した。しかし、車両2は自動運転に対応する場合が含まれる。この場合、分析装置1は、自動運転を行う車両2において設定された走行計画に対してユーザが変更を加える経路指定の傾向を分析する。さらに、分析装置1は走行ルートの提示とともに、自動運転における各ポイントpでのステアリング制御として、演算部14が求めた、最も確率の高いステアリング操作を実行する構成とすることができる。
【0085】
また、上述した実施の形態では、車両2の進行方向の操作として、ステアリング操作を例に挙げて説明したが、車両2の進行方向の操作は、車両2の進行方向の変化が特定される操作情報であれば、ステアリング操作に限定されない。
【0086】
また、上述した実施の形態では、車両2のステアリング操作として、右回転、回転なし、および左回転の3種類を例示したが、ステアリング操作あるいは進行方向の操作は、これに限定されない。
【0087】
以上、本発明の分析装置および分析方法における実施の形態について説明したが、本発明は説明した実施の形態に限定されるものではなく、請求項に記載した発明の範囲において当業者が想定し得る各種の変形を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0088】
1…分析装置、10…設定情報取得部、11…設定情報記憶部、12…出力シンボル取得部、13…学習部、14…演算部、15…決定部、16…パラメータ記憶部、17…提示部、2…車両、2a…ステアリングホイール、20…センサ、21…GPSモジュール、22…ECU、23…表示装置、25…地図データベース、101…バス、102…プロセッサ、103…主記憶装置、24、104…通信インターフェース、105…補助記憶装置、106…入出力I/O、NW…車載ネットワーク。
【要約】
【課題】ユーザごとの運転の傾向に合わせた走行ルートを提示することを目的とする。
【解決手段】
分析装置1は、車両2の出発地点および目的地点を取得する設定情報取得部10と、車両2が目的地点に到達するまでに通過する各ポイントpでの、進行方向の操作の履歴を含む出力シンボル系列を取得する出力シンボル取得部12と、出発地点から目的地点までに車両2が通過する各ポイントpを隠れ状態の有限集合とし、かつ、各ポイントpでの車両2による進行方向の操作を観測可能な出力シンボルの有限集合とした隠れマルコフモデルのパラメータが事前に推定された、学習済みの隠れマルコフモデルを記憶するパラメータ記憶部16と、学習済みの隠れマルコフモデルを用いて、車両2が各ポイントpで、出力シンボル取得部12によって取得された進行方向の操作の各々が行われる確率を求める演算部14とを備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6