(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】移動体
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
B66F9/24 C
(21)【出願番号】P 2023506428
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2021010558
(87)【国際公開番号】W WO2022195705
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 秀一郎
(72)【発明者】
【氏名】小田 琢也
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第206265696(CN,U)
【文献】中国実用新案第210162601(CN,U)
【文献】特開2019-147649(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2987760(EP,A1)
【文献】特開2020-132389(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0242089(US,A1)
【文献】国際公開第2016/199366(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00 - 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物を載置可能な載置面と、
前記載置面を昇降させる昇降装置と、
前記載置面の近傍に設けられ、昇降不能に固定された固定面と、
前記載置面が下降位置にあるときに前記載置面及び前記固定面の両方にわたって描かれた所定の模様と、
前記載置面及び前記固定面の両方が写った画像に基づいて、前記載置面の昇降位置の判定を行う判定装置と、
を備えた移動体。
【請求項2】
前記判定装置は、前記載置面及び前記固定面の両方が写った画像に基づいて、前記載置面に物が載っているか否かの判定も行う、
請求項1に記載の移動体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の移動体であって、
前記画像を撮像可能なカメラ
を備えた移動体。
【請求項4】
前記画像は、前記載置面及び前記固定面の両方を上方から斜め下向きに撮像した画像である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の移動体。
【請求項5】
前記画像は、前記載置面及び前記固定面の両方を上方から真下に向かって撮像した画像である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の移動体。
【請求項6】
前記移動体は、自走式移動体であり、
前記判定装置は、前記載置面及び前記固定面の両方が写った画像と前記模様から得られるパターンとのパターンマッチングの結果に基づいて、前記判定を行うものである、
請求項1~5のいずれか1項に記載の移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、移動体を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、自らの動力で移動可能な移動体としては、物を載置可能な載置面と、その載置面を昇降させる昇降装置とを備えたものが知られている。例えば、特許文献1に記載された移動体では、載置面を定期的に撮像した画像に基づいて載置面上に物があるか否かを判定し、物があったならば、現在画像とその直前の画像との差分画像を生成し、差分量に基づいて荷崩れなどの判定を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の移動体では、載置面の昇降位置を画像を用いて簡単に認識することはできなかった。
【0005】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、載置面の昇降位置を画像を用いて簡単に認識することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の移動体は、
物を載置可能な載置面と、
前記載置面を昇降させる昇降装置と、
前記載置面の近傍に設けられ、昇降不能に固定された固定面と、
前記載置面が下降位置にあるときに前記載置面及び前記固定面の両方にわたって描かれた所定の模様と、
前記載置面及び前記固定面の両方が写った画像に基づいて、前記載置面の昇降位置の判定を行う判定装置と、
を備えたものである。
【0007】
この移動体では、載置面及び固定面の両方が写った画像に基づいて、載置面の昇降位置の判定を行う。したがって、載置面の昇降位置を画像を用いて簡単に認識することができる。なお、「載置面の近傍」は、載置面の周囲であってもよいが、これに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】制御装置50の電気的接続を示すブロック図。
【
図4】パターンマッチングに用いられるパターンの説明図。
【
図8】載置面22に物60が載っているときの斜視図。
【
図9】別例のパターンマッチングに用いられるパターンの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の移動体の好適な実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。
図1は移動体10の概略構成を示す斜視図、
図2は車体12の平面図、
図3は制御装置50の電気的接続を示すブロック図、
図4はパターンマッチングに用いられるパターンの説明図である。なお、
図2にはカメラ40及び支持体46の図示を省略した。また、本明細書中で前後左右上下は、
図1に示した通りである。
【0010】
移動体10は、車体12の前後左右に4つの車輪14~17が取り付けられた自走式の無人搬送車(AGV)であり、予め床面に貼られた誘導用の磁気テープに沿って移動する。前方の左右二つの車輪14,15は操舵可能な従動輪であり、後方の左右二つの車輪16,17は個別のモータ16a,17a(
図3参照)で回転駆動される駆動輪である。移動体10は、直進する際には左右の車輪16,17を同じ回転速度で回転させ、旋回する際には左右の車輪16,17をそれぞれ異なる回転速度で回転させる。モータ16a,17aは、車体12に搭載された図示しない充電可能なバッテリによって給電される。
【0011】
移動体10は、荷台20と、昇降装置30と、カメラ40と、制御装置50(
図3参照)とを備える。
【0012】
荷台20は、車体12の上面であり、荷物を載置可能で昇降可能な載置面22と、載置面22の周囲に昇降不能に固定された固定面24とを備える。載置面22と固定面24とは、境界線23によって分離されている。載置面22は、車体12の中央に昇降可能に嵌め込まれた載置台26の上面である。荷台20には、所定の模様28が描かれている。模様28は、載置面22が下降位置にあるときに載置面22及び固定面24の両方にわたって描かれたものである。本実施形態では、模様28は、
図2に示すように、種々の大きさの白色長方形と黒色長方形とをランダムに配置したものとした。
【0013】
昇降装置30は、載置台26の下方に配置され、図示しないロッドを伸縮させることにより載置台26を昇降させる装置である。載置台26が昇降装置30によって持ち上げられていないとき、載置面22は固定面24と同一平面になる下降位置に位置決めされる。載置台26が昇降装置30によって持ち上げられたとき、載置面22は上昇位置に位置決めされる。
【0014】
カメラ40は、支持体46に取り付けられている。支持体46は、車体12から水平方向(後方)に延びだしたあと上方に延びだしたL字状の部材であり、上端にカメラ40を支持している。カメラ40は、レンズを備えたCCDカメラであり、上方から斜め下向きに載置面22及び固定面24を撮像可能となっている。カメラ40によって撮像される画像は、載置面22及び固定面24の両方を上方から斜め下向きに撮像した画像である。
【0015】
制御装置50は、
図3に示すように、CPU51やROM52、RAM53、ストレージ54などを含む汎用のコンピュータである。CPU51は、各種処理を実行する。ROM52は、処理プログラムなどを記憶する。RAM53は、データなどを一時的に記憶する作業領域である。ストレージ54は、データやファイルなどを読み出し可能に記憶する保存領域である。ストレージ54は、後述するパターンマッチングに用いられるパターンP1,P2(
図4A及び
図4B参照)を保存している。パターンP1は、模様28の全体を上方から斜め下向きに見たときの図柄である。パターンP2は、模様28のうち載置面22に描かれた部分のみを上方から斜め下向きに見たときの図柄である。制御装置50からは、モータ16a,17aへの駆動信号や昇降装置30への昇降信号、カメラ40への指令信号などが出力される。制御装置50には、カメラ40からの画像信号などが入力される。制御装置50は、本開示の移動体が備える判定装置に相当する。
【0016】
次に、移動体10の使用例について説明する。
図5は、昇降位置判定ルーチンのフローチャートである。昇降位置判定ルーチンのプログラムは、制御装置50のROM52に記憶されている。制御装置50のCPU51は、所定タイミングで昇降位置判定ルーチンのプログラムをROM52から読み出して実行する。所定タイミングとしては、例えば非常停止時や電源オン時、電源オフ時、動作開始時などが挙げられる。また、昇降位置判定とは、載置面22が上昇位置にあるか下降位置にあるかを判定することをいう。
【0017】
CPU51は、昇降位置判定ルーチンを開始すると、まず、カメラ40のシャッタをオンしてカメラ40に画像を撮像させ、その撮像画像を読み込む(S110)。
【0018】
図6は載置面22が下降位置にあるときの斜視図である。
図6に示すように、載置面22が下降位置にあるとき、載置面22と固定面24とは同一面上に位置している。カメラ40に写る撮像範囲42は、
図6の1点鎖線の枠内、つまり、載置面22及び固定面24の両方が写る範囲である。このとき、カメラ40によって撮像された画像44には、上方から斜め下向きに見た模様28の全部が写っている。
【0019】
図7は載置面22が上昇位置にあるときの斜視図である。
図7に示すように、載置面22が上昇位置にあるとき、載置面22は固定面24よりも上方に位置している。このとき、カメラ40によって撮像された画像44には、上方から斜め下向きに見た模様28の全部は写っていないが、その模様28のうち載置面22に描かれた部分は写っている。
【0020】
図8は載置面22に運搬物が載っているときの斜視図である。
図8に示すように、載置面22に物60が載っているとき、模様28は物60によって隠される。このとき、カメラ40によって撮像された画像44には、上方から斜め下向きに見た模様28の全部は写っておらず、その模様28のうち載置面22に描かれた部分も写っていない。なお、
図6~
図8はカメラ40及び支持体46の図示を省略した。
【0021】
次に、CPU51は、読み込んだ撮像画像の中にパターンP1(
図4A)と一致するところがあるか否かを判定する(S120)。
図6~
図8に示した画像44のうち、パターンP1と一致するところがあるのは、
図6の画像44である。S120で撮像画像の中にパターンP1と一致するところがあったならば、CPU51は、載置面22は下降位置にあると判定し(S130)、本ルーチンを終了する。
【0022】
一方、S120で撮像画像の中にパターンP1と一致するところがなかったならば、CPU51は、撮像画像の中にパターンP2(
図4B)と一致するところがあるか否かを判定する(S140)。
図6~
図8に示した画像44のうち、パターンP1とは一致しないがパターンP2と一致するところがあるのは、
図7の画像44である。
図6~
図8に示した画像44のうち、パターンP1ともパターンP2とも一致しないのは
図8の画像44である。S140で撮像画像の中にパターンP2と一致するところがあったならば、CPU51は、載置面22は上昇位置にあると判定し(S150)、本ルーチンを終了する。
【0023】
一方、S140で撮像画像の中にパターンP2と一致するところがなかったならば、CPU51は、載置面22に物60が載っていると判定し(S160)、本ルーチンを終了する。
【0024】
CPU51は、本ルーチンを終了したあと、判定した結果に応じた処理を実行してもよい。例えば、CPU51は、移動体10の動作開始前に昇降位置判定ルーチンを実行し、載置面22が下降位置にあると判定したときには、特に何もせず、載置面22が上昇位置にあると判定したときには、載置面22が下降位置まで下降するように昇降装置30を制御してもよい。また、移動体10の動作開始前に載置面22に物60が載っていたときには、CPU51は載置面22から物60を下ろすように図示しないスピーカを用いて音声を出力してもよい。
【0025】
以上説明した移動体10によれば、制御装置50は載置面22及び固定面24の両方が写った画像に基づいて載置面22の昇降位置の判定を行う。したがって、載置面22の昇降位置を撮像画像を用いて簡単に認識することができる。
【0026】
また、制御装置50は、載置面22及び固定面24の両方が写った画像に基づいて、載置面22に物60が載っているか否かの判定も行う。そのため、載置面22に物60が載っているか否かも撮像画像を用いて簡単に認識することができる。
【0027】
更に、移動体10は、画像を撮像可能なカメラ40を備えている。そのため、移動体10は自らが備えるカメラ40によって載置面22及び固定面24の両方が写った画像を撮像することができる。
【0028】
更にまた、載置面22の昇降位置の判定に用いる画像は、載置面22及び固定面24の両方を上方から斜め下向きに撮像した画像であるため、その画像に基づいて載置面22の昇降位置を判定しやすい。
【0029】
そして、移動体10は自走式であるため、手動で押したり引いたりする必要がない。
【0030】
そしてまた、制御装置50は、パターンマッチングの結果に基づいて載置面22の昇降位置を判定する。すなわち、制御装置50は、載置面22及び固定面24の両方が写った画像44の中にパターンP1と一致するところがあったならば、載置面22は下降位置にあると判定し、パターンP1とは一致しないがパターンP2と一致するところがあったならば、載置面22は上昇位置にあると判定する。そのため、簡単かつ正確に昇降位置を判定することができる。
【0031】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0032】
例えば、上述した実施形態では、載置面22及び固定面24の両方を上方から斜め下向きに撮像した画像44を用いて載置面22の昇降位置を判定したが、特にこれに限定されない。例えば、カメラ40の向きを調整して、載置面22及び固定面24の両方を上方から真下に向かって撮像した画像を用いて載置面22の昇降位置を判定してもよい。その場合、載置面22が下降位置にあるときの載置面22上の模様をパターンP3(
図9A参照)とし、載置面22が上昇位置にあるときの載置面22上の模様をパターンP4(
図9B参照)として、それぞれストレージ54に保存する。パターンP4は、カメラ40に近い載置面22の模様であるため、パターンP3よりも拡大率が大きい。制御装置50は、カメラ40の載置面22及び固定面24の両方を上方から真下に向かって撮像した画像の中にパターンP3と一致する部分があったならば載置面22は下降位置にあると判定し、パターンP4と一致する部分があったならば載置面22は上昇位置にあると判定する。なお、この場合においてカメラ40のレンズは、テレセントリックレンズ以外のレンズ(例えばCCTVレンズ)を使用する。テレセントリックレンズは遠近感が得られないからである。
【0033】
上述した実施形態では、移動体10がカメラ40を備えていたが、移動体10がカメラ40を備えていなくてもよい。その場合、移動体10の移動経路の所定の場所に外部カメラを設置しておき、制御装置50が昇降位置判定ルーチンを実行する際にその外部カメラの近傍に移動体10が移動し、外部カメラによって載置面22及び固定面24の両方が写った画像が撮像されるようにしてもよい。
【0034】
上述した実施形態では、移動体10として、自走式のAGVを例に挙げて説明したが、特にAGVに限定されるものではない。例えば、移動体として、周囲を検知して自由なルートで移動するAMRを採用してもよいし、自走式ではなく手動で移動させる台車を採用してもよい。
【0035】
上述した実施形態では、模様28として、種々の大きさの白色長方形と黒色長方形とをランダムに配置したものを採用したが、特にこれに限定されない。例えば、模様として、幾何学模様(多角形や円などを組み合わせた模様)を採用してもよいし、絵柄(人物画や風景画など)を採用してもよいし、文字(アルファベットなど)を採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本開示の移動体は、例えば物を運搬するために利用可能である。
【符号の説明】
【0037】
10 移動体、12 車体、14~17 車輪、16a,17a モータ、20 荷台、22 載置面、23 境界線、24 固定面、26 載置台、28 模様、30 昇降装置、40 カメラ、42 撮像範囲、44 画像、46 支持体、50 制御装置、51 CPU、52 ROM、53 RAM、54 ストレージ、 60 物、 P1~P4 パターン。