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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】擁壁構造物
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/02 20060101AFI20240625BHJP
   E02D 17/20 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
E02D29/02 308
E02D17/20 102A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023513921
(86)(22)【出願日】2021-08-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-26
(86)【国際出願番号】 KR2021011414
(87)【国際公開番号】W WO2022071666
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】10-2020-0126847
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】523067735
【氏名又は名称】ハン ス キム
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】ハン ス キム
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-323943(JP,A)
【文献】特開2005-146623(JP,A)
【文献】特開2011-231466(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0030726(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-0752152(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0027528(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/02
E02D 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土嚢を構成する面のうち、最も広い面積を有する上下面部と、前記上下面部の間で土嚢の側面を形成する長辺側面部及び短辺側面部とを含む土嚢が構成される擁壁構造物であって、
前記土嚢の長辺側面部が地面に向かうように配置され、前記地面に対して上下方向に前記長辺側面部が接するように、前記土嚢を積み上げ、
前記地面に対して左右方向に前記短辺側面部が接するように、前記土嚢が並べられ、
積み上げられた前記土嚢の後方に配置される補助擁壁とを含み、
前記土嚢により積み上げられた擁壁は、第1の層を構成する土嚢の接触領域上に、第2の層の土嚢が位置するように築造され、
前記補助擁壁は、砂利が含まれた採石層を含み、前記採石層上には、固定ネットが構成され、
前記土嚢の長辺側面部に配置されて、上下に積み上げられた土嚢の結合力を増加するための連結板を更に含み、
前記連結板は、前記土嚢の長辺側面部よりも小さいサイズからなり、前記連結板の上面と下面にはそれぞれ、複数の円錐状突起が形成され、前記円錐状突起は、前記連結板の上面と下面で互いに異なる位置に構成されることを特徴とする擁壁構造物。
【請求項2】
前記土嚢は、横辺が30cm、縦辺が70cm、高さは15cmのサイズで形成され、
前記補助擁壁の後方には、砂利又は現場土が固められた土壌と、前記土壌上に配置されたジオグリッドとが構成されることを特徴とする請求項に記載の擁壁構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、擁壁構造物に関し、より詳しくは、少ない数の土嚢(soil bag)を用いて擁壁を構築することで、コストを顕著に減らすことができ、擁壁としての強度を保証すると共に、優れた排水効果を有する擁壁構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、擁壁は、道路沿いや山すそなどのように、土壌の圧力により土壌が崩れる現象が発生する地域に土壌の遺失を防止して、その堅固性と安定性を確保できるように設置される構造物を意味する。
【0003】
現在、擁壁の設置方式と種類は、非常に多様であり、最も伝統的な方式では、施工地点上に鋼鉄網を設置した後、再度混合したコンクリートを注入して、これを固形化する方式がある。しかし、このような方式は、その施工規模が非常に大きいだけでなく、施工の難易度も高く、また、混合したコンクリートが固形化する時間が比較的長いため、工期が長くなるという不都合を有している。
【0004】
このような従来の擁壁構造の不都合を補うために、現在は、袋を積み上げて擁壁を完成する方法がよく使用されており、このような方法の場合、前記袋に砂・土などを満たした後、これを縦又は横に互いに連結して積み上げて、擁壁を完成する構造であり、ここで、互いに隣接した袋の間に連結固定部品を設置して、袋が互いに滑ることなく、より堅固に固定できるようにしている。
【0005】
しかし、前記連結固定部品を用いて、互いに隣接した袋を連結固定して完成した擁壁構造が、激しい雨風を耐えるほどの強度を備えておらず、黄沙現象のような砂風などのような劣悪な環境では、壁体が容易に毀損する現象が発生するという問題点を見出した。
【0006】
また、砂や土が満たされた土嚢という物品を用いて、擁壁を積み上げる場合も多く、例えば、図1及び図2に示しているように、複数の土嚢1を横に並べ、その上に土嚢を再度積み上げることで、擁壁を形成することも多い。
【0007】
従来使用されている土嚢は、横又は縦のいずれか1つの長さが長いので、所定の厚さを有する形状からなり、図1及び図2に示しているように、土嚢を横辺より長さの長い縦辺同士接するように隣接して配置するか、横辺同士接するように隣接して配置し、その上に土嚢を積み上げて、擁壁を築造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】中国実用新案出願番号ZL 200620054736.8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、土嚢の数を顕著に少なく使用して、擁壁築造にコストを格段に減らすと共に、構造物としての強度も増加することができる擁壁構造物を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の擁壁構造物は、土嚢本体を構成する面のうち、最も広い面積を有する上下面部と、前記上下面部の間で土嚢本体の側面を形成する長辺側面部及び短辺側面部とを含む土嚢が構成される擁壁構造物であって、前記土嚢の長辺側面部が地面に向かうように配置され、前記地面に対して上下方向に前記長辺側面部が接するように、前記土嚢を積み上げ、前記地面に対して左右方向に前記短辺側面部が接するように、前記土嚢が並べられ、積み上げられた前記土嚢の後方に配置される補助擁壁とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の擁壁構造物によると、使用する土嚢の数を減らすと共に、高い高さの擁壁を築造することができ、補助擁壁と共に堅固であり、優れた排水効果も達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】従来の方法により、土嚢で擁壁を築造した状態を示す図である。
図2】従来の方法により、土嚢で擁壁を築造した状態を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る擁壁構造物を構成する土嚢を示す図である。
図4】本発明の実施形態により擁壁を構成することを説明するための図である。
図5】本実施形態により築造される擁壁構造物の断面を示す図である。
図6】本実施形態により土嚢と補助擁壁からなる擁壁構造物にジオグリッドを使用する場合を示す図である。
図7】本実施形態の補助擁壁に不織布又は凹凸が形成されたプラスチックプレートが用いられる場合を示す図である。
図8】本発明の実施形態に係る連結板の構成を示す図である。
図9】本発明の他の実施形態に係る連結板の構成を示す図である。
図10】本発明の他の実施形態に係る連結板の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図3は、本発明の実施形態に係る擁壁構造物を構成する土嚢を示す図である。
【0014】
本発明における土嚢10は、耐久性のあるジオテキスタイル(geotextile)材料と、水が保護嚢と土嚢を通して流入され、種が発芽する織物で作られる。そして、これらの保護嚢と土嚢には、微細な土粒子と発芽可能な植物の種などが含まれる。
【0015】
土嚢10は、横辺(A)、縦辺(B)、及び高さ(C)を有し、縦辺(B)の長さが横辺(A)よりも長い長方形状からなる。例えば、横辺(A)は、約30cmであり、縦辺(B)は、約70cmであり、高さ(C)は、約15cmのサイズで形成される。
【0016】
参考として、土嚢に土を満たす前には、400mm×880mmであり、土を満たした後は、300mm×700mm×150mmのサイズからなる。
【0017】
土嚢10は、本体を形成する土嚢本体20と、土嚢本体20の両側に所定厚さで突設される複数の土嚢翼30とを含む。土嚢翼30には、他の構造物、例えば、鉄網やジオグリッドを、フックを通じて連結できるように、連結孔31が所定の間隔を置き、2つがそれぞれ形成される。
【0018】
特に、土嚢10の土嚢本体20は、土嚢本体を構成する面のうち、最も広い面積を有する上下面部11と、前記上下面部の間で土嚢本体の側面を形成する長辺側面部12と、短辺側面部13とを含む。
【0019】
短辺側面部13は、前記土嚢本体を構成する面のうち、最も小さい面積を有し、このような構成により、前記土嚢本体は、全体として直方体形状からなる。
【0020】
本発明では、このような土嚢10の形状自体に対する特徴よりは、従来の擁壁において、上下面部11が地面に接し、上下面部が互いに接するように積み上げる工法とは異なり、長辺側面部12が地面に接し、長辺側面部12が互いに接するように積み上げる工法を提案する。
【0021】
図4は、本発明の実施形態により擁壁を構成することを説明するための図である。
【0022】
図4に示しているように、本実施形態の擁壁構造物は、複数の土嚢10を上下方向には、長辺側面部12が向かい合うように積み上げ、左右方向には、短辺側面部13が接するように築造する特徴を有する。
【0023】
そして、図示しているように、第1の層10Aの土嚢の長辺側面部12が地面に接するように配置した後は、第1の層10A上に土嚢を、長辺側面部同士が接するように築造し、第1の層10Aの土嚢の接触領域上に、第2の層10Bの土嚢が位置するように築造する。
【0024】
図5は、本実施形態により築造される擁壁構造物の断面を示す図であり、図6は、本実施形態により土嚢と補助擁壁からなる擁壁構造物にジオグリッドを用いる場合を示す図である。図7は、本実施形態の補助擁壁に不織布又は凹凸が形成されたプラスチックプレートが用いられる場合を示す図である。
【0025】
前述したように、各土嚢は、長辺側面部12が上下方向に接するように築造され、前記土嚢と共に、擁壁としての堅固性を増加するために、補助擁壁50が構成される。
【0026】
従来には、土嚢の上下面が重なるように築造して擁壁を完成し、擁壁の堅固性を更に加えるために、ジオグリッドを更に構成することがある。本実施形態においても、このようなジオグリッドが使用可能であるが、本発明は、従来の土嚢からなる擁壁を、より少ない数の土嚢を使用すると共に、堅固性をさらに強化するために、土嚢と共に補助擁壁50が構成される。すなわち、補助擁壁50は、従来のジオグリッドに代るものではなく、前記土嚢と共に、擁壁構造物として外壁を構成するものである。そこで、従来のジオグリッドを後方にさらに設置することは、状況によって選択可能である。
【0027】
補助擁壁50は、土嚢から形成された擁壁と共に、擁壁構造物を形成するものであって、擁壁構造物としての堅固性を加え、排水が円滑に行われるようにする。このために、補助擁壁50は、砂利などの採石層から構成され、前記採石層の上部には、採石層内部に異物などの排水を妨害する物質が投入されることを抑制するための不織布が更に形成される。
【0028】
すなわち、図7は、土嚢10と補助擁壁を上から見た状態であり、土嚢10の後方に補助擁壁を形成するに際して、不織布60が配置され、不織布60上に砂利などの採石層が構成され、不織布又は複数のホールが形成されたプラスチックプレートが、補助擁壁の中間に多数設置されると、擁壁構造物の側面(図7において、左右)にも配置が可能となるメリットがある。
【0029】
補助擁壁50と土嚢10を固定するために、固定ネットが構成され、前記固定ネットは、連結板70により、補助擁壁50と土嚢10を固定する。上下方向の土嚢10の間に連結板70が構成され、前記固定ネットも、連結板70により、土嚢10側と補助擁壁50側に両端部が結合される。
【0030】
連結板70については、添付の図面と共に後述する。
【0031】
一方、図6及び図7に示しているように、本発明において、上下及び左右に築造された土嚢10と共に、補助擁壁50は、擁壁構造物として役割を果たし、このような擁壁の後方に、従来に使用しているジオグリッド300を用いることも可能である。
【0032】
すなわち、土嚢10と補助擁壁50を含む擁壁の後方に、砂利又は現場土などの土壌を固め、その上部にジオグリッド300を配置することを繰り返すことで、全体構造物の堅固性を更に増加することができる。
【0033】
図6に示しているように、本発明は、崩壊の危険があるか、録画する必要がある場所に、外壁としての役割を果たす擁壁に関するものであって、補助擁壁を土嚢と分離して区分してはいけない。すなわち、補助擁壁は、上下及び左右に築造された土嚢と共に、外観を形成する擁壁を構成するからである。
【0034】
図8は、本発明の実施形態に係る連結板の構成を示す図である。
【0035】
本実施形態の連結板70は、土嚢の縦辺と高さによって形成される側面に置かれ、土嚢の側面(長辺側面部)に少なくとも1つ以上の連結板70が配置されるように、連結板70の長辺は、土嚢の縦辺70cmよりも小さく形成され、連結板の短辺は、土嚢の高さ15cmよりも小さく形成される。
【0036】
より望ましくは、土嚢の側面に少なくとも1.5個以上が置かれるように、連結板70の長辺(図7において、D)は、土嚢の縦辺である70cmの1/2よりも小さい20~30cmのサイズからなり、連結板70の短辺(図7において、E)は、土嚢の高さ15cmより小幅に小さく、且つ、上下に積層される土嚢の強い支持力のために、略10~13cmのサイズからなる。
【0037】
また、連結板70の上面と下面には、複数の円錐状突起が形成され、図示しているように、上面に形成された突起71、72と、下面に形成された突起73、74が互いに同一の位置に形成されないように構成される。これらの突起の配置によって、上下に築造される土嚢の互いに異なる位置に突起が開けて挿入されて、より強い支持力が生成される。
【0038】
例えば、上面突起71、72は、左側上端角と右側下端角に形成され、下面突起73、74は、右側上端角と左側下端角に形成される。
【0039】
図9及び図10は、本発明の他の実施形態に係る連結板の構成を示す図である。
【0040】
連結板70は、その両面に少なくとも1つの円錐状突起を有する円板状に形成され、垂直方向に配列されて、積層位置上に上下関係に置かれる土嚢を結合させる役割を果たす。すなわち、積層された各列の土嚢10のうち、垂直方向に互いに隣接して密着している2つの土嚢10間に、連結板70が配置され、連結板70の上面と下面に形成された突起71が土嚢に挿入されることで、土嚢と連結板の間の連結が行われる。
【0041】
連結板70は、アルミニウム、プラスチックなど、非腐食性素材からなる。
【0042】
連結板70がその上に位置した土嚢10の荷重に押されることにつれ、その下面の円錐状の突起71が、その下に位置した土嚢10に圧入(press in)されることで、各列の土嚢10が連結されることになる。そして、連結板70は、補助擁壁に形成される固定ネットの位置を固定するためにも使われる。
【0043】
図10に示しているように、連結板70の両面には、3つの円錐状突起が形成されている。本実施形態において、このような円錐状突起の数は重要でなく、連結板70の両面には、1つ又は2つの円錐状突起が形成され、両面に互いに異なる数の円錐状突起が形成されることもできる。但し、円錐状突起のサイズが大きすぎる場合は、土嚢10が破れることがあり、円錐状突起のサイズが小さすぎる場合は、各列の土嚢10が互いに不実に連結されることがあるので、連結板70の両面には、小サイズの円錐状突起がさらに多い数に形成されるのが望ましい。
【産業上利用可能性】
【0044】
本発明は、擁壁構造物として、様々な場所に活用が可能であるので、その産業上利用可能性がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10