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特許7510005医療用フィルタの滅菌及び乾燥のための装置及び方法
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  • 特許-医療用フィルタの滅菌及び乾燥のための装置及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】医療用フィルタの滅菌及び乾燥のための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/07 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
A61L2/07
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023524515
(86)(22)【出願日】2021-10-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 DE2021100851
(87)【国際公開番号】W WO2022089685
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】102020128083.1
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】523141471
【氏名又は名称】オールメッド ダイアリシス テクノロジーズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ドレッシェル シュテファン
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-013947(JP,A)
【文献】特開平05-146507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/00
A61M 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析器等の医療用フィルタ(2)を滅菌及び乾燥するための装置(1)であって、前記装置(1)は、少なくとも1つの入口(4)及び1つの出口(5)を有する圧力チャンバ(3)と、少なくとも1つのフィルタ(2)用のホルダ(6)とを含み、前記圧力チャンバは、前記入口側に配置された第1のチャンバ(7)と前記出口側に配置された第2のチャンバ(8)とに分割され、前記フィルタ(2)は、前記フィルタ(2)の入口開口部(13、16)が前記第1のチャンバ(7)に配置され、前記フィルタ(2)の出口開口部(14、17)が前記第2のチャンバ(8)に配置されるように、前記ホルダ(6)に挿入可能であることを特徴とする装置(1)。
【請求項2】
前記圧力チャンバが、隔壁(9)によって第1のチャンバ(7)と第2のチャンバ(8)とに分割されていることを特徴とする請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記隔壁(9)の位置が調整可能であることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1のチャンバ(7)が前記第2のチャンバ(8)よりも大きいことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記ホルダ内に配置されたフィルタ(2)に力を加えるための手段が、前記ホルダ(6)の領域に設けられることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記ホルダ(6)内に配置されたフィルタに力を加えるために、ばね要素(10)又は圧力シリンダが設けられていることを特徴とする請求項5に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記装置(1)が、それぞれ前記第1のチャンバ(7)及び前記第2のチャンバ(8)の底部に凝縮水用の排水管(11)を含むことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項8】
前記第1のチャンバ(7)及び前記第2のチャンバ(8)が、弁(12)によって相互接続されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記圧力チャンバ(3)のハウジングが加熱可能であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項10】
前記装置(1)が、放射エネルギーを前記フィルタに導入するためのエミッタを含むことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の装置(1)を用いて医療用フィルタ(2)を滅菌及び乾燥する方法であって、
前記フィルタ(2)を前記ホルダ(6)に挿入する工程と、
前記装置(1)の前記圧力チャンバ(3)を閉鎖する工程と、
初期空気除去のために、両方のチャンバを周期的に排気し、蒸気を投入する工程と、
熱気を前記第1のチャンバ(7)に導入し、設定時間のあいだ前記フィルタ(2)を通して流して残留空気を除去する工程と、
両方のチャンバを過熱蒸気で所定時間のあいだ加圧する工程と、
暖気を前記第1のチャンバ(7)及び/又は第2のチャンバ(8)に流し、前記フィルタ(2)が完全に乾燥するまで前記フィルタ(2)を通って流すことによって、前記出口(5)を介して前記第1のチャンバ(7)及び/又は第2のチャンバ(8)内の前記過熱蒸気を置換する工程と
を含む方法。
【請求項12】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の装置(1)を用いて医療用のフィルタ(2)を滅菌及び乾燥する方法であって、
前記フィルタ(2)を前記ホルダ(6)に挿入する工程と、
前記装置(1)の前記圧力チャンバ(3)を閉鎖する工程と、
前記フィルタ(2)内に存在する空気を除去するために、前記入口(4)を介して前記第1のチャンバ(7)及び/又は前記第2のチャンバ(8)に過熱蒸気を導入する工程と、
前記フィルタ(2)を通して過熱蒸気を所定時間のあいだ流す工程と、
空気による置換によって前記第2のチャンバ(8)内の前記出口(5)を介して前記過熱蒸気を除去する工程と、
暖気を前記第1のチャンバ(7)及び/又は前記第2のチャンバ(8)に導入し、前記フィルタが完全に乾燥するまで前記フィルタを通って流す工程と
を含む方法。
【請求項13】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の装置(1)を用いて医療用のフィルタ(2)を滅菌及び乾燥する方法であって、
前記フィルタ(2)を前記ホルダ(6)に挿入する工程と、
前記装置(1)の前記圧力チャンバ(3)を閉鎖する工程と、
空気除去のために、両方のチャンバを周期的に排気し、蒸気を投入する工程と、
両方のチャンバを過熱蒸気で所定時間のあいだ加圧する工程と、
暖気を前記第1のチャンバ(7)及び/又は第2のチャンバ(8)に流すことによって、前記出口(5)を介して前記第1のチャンバ(7)及び/又は第2のチャンバ(8)内の過熱蒸気を置換する工程と、
暖気を前記第1のチャンバ(7)及び/又は前記第2のチャンバ(8)に導入し、前記フィルタ(2)が完全に乾燥するまで前記フィルタ(2)を通して流す工程と
を含む方法。
【請求項14】
前記フィルタ(2)は、透析器であり、前記医療用フィルタ、特に透析器の血液空間が、過熱蒸気の導入前に蒸気透過性かつ微生物不透過性の薄片で封止されることを特徴とする請求項11から請求項13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記フィルタ(2)が、エネルギー入力又は放射線によって乾燥されることを特徴とする請求項11から請求項14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析器等の医療用フィルタを滅菌及び乾燥するための装置であって、少なくとも1つの入口及び1つの出口を有する圧力チャンバと、少なくとも1つのフィルタのためのホルダとを含む装置に、並びにフィルタを滅菌及び乾燥する方法に関する。
【0002】
本発明に係る医療用フィルタは、特に透析器、特に中空糸がフィルタ膜を形成しこのフィルタ膜を通って血液が流れる中空糸透析器を含む。これらは血液透析に使用される。これらは、血液が血液入口開口部から血液出口開口部まで通過することができる少なくとも1つの中空糸モジュールからなる。血液入口開口部及び血液出口開口部は、血液空間を画定する。この透析器は、透析流体のための入口開口部及び出口開口部も有する。この透析流体は、中空糸の周りを流れ、血液から濾過されるべき物質は、中空糸膜を通過して血液から透析流体に入る。
【背景技術】
【0003】
透析器の血液空間と患者の血液との直接的な血液接触に起因して、透析器の血液空間は無菌でなければならない。
【0004】
透析器の滅菌プロセスは、例えば、ガンマ線、電子線、エチレンオキシド(EtO)及び過熱蒸気の使用又は適用に基づく。これらのプロセスにおいて、放射線、熱及び毒性は、微生物を死滅させる効果をもつ。
【0005】
医療技術において、オートクレーブは、医療用物品の過熱蒸気滅菌のために使用される。滅菌は、空気を置換すること、過熱蒸気をある時間にわたって適用すること、及びその後の乾燥プロセスによって達成される。滅菌は、健康に有害な細菌及び微生物を死滅させる。オートクレーブ内で透析器を滅菌する場合、過熱蒸気滅菌後の親水性中空糸の乾燥が困難であり、時間がかかるということが短所であることが判明した。
【0006】
容器に充填される輸液等のための殺菌システムは、オーストリア国特許第351172号明細書から公知であって、そのハウジングは、加熱チャンバと、滅菌チャンバと、冷却チャンバとを備える。
【0007】
独国特許出願公開第11 2005 002 948T5号明細書は、過酸化水素蒸気滅菌器及びそれを使用するための滅菌方法を記載している。
【0008】
米国特許出願公開第2003/0074862A1号明細書は、医療用製品の蒸気滅菌の方法であって、この医療用製品は、封止されたカートンに別々に又は複数個まとめて包装され、次いで、封止されたカートン内の医療用製品は、蒸気滅菌に供される方法を記載する。
【0009】
米国特許第4,609,728A号明細書は、血液透析又は体外での他の血液処理に特に適しているセルロース中空糸を処理する方法を記載している。
【0010】
米国特許第9,555,146B2号明細書は、物体の内部への少なくとも第1及び第2の開口部を備える物体を滅菌する方法であって、第1の開口部を滅菌剤の供給ラインに接続する工程と、第2の開口部を上記滅菌剤の出口ラインに接続する工程と、この滅菌剤を、供給ラインを通して上記内部へ、その内部を通して、及び出口ラインを通してその内部から外へ方向付ける工程とを含む方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】オーストリア国特許第351172号明細書
【文献】独国特許出願公開第11 2005 002 948T5号明細書
【文献】米国特許出願公開第2003/0074862A1号明細書
【文献】米国特許第4,609,728A号明細書
【文献】米国特許第9,555,146B2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の根底にある目的は、フィルタ、特に医療用フィルタの滅菌及び乾燥を最適化することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、圧力チャンバが第1のチャンバと第2のチャンバとに分割されており、フィルタが、フィルタの入口開口部(複数可)が第1のチャンバ内に配置され、フィルタの出口開口部(複数可)が第2のチャンバ内に配置されるようにホルダに挿入されることが可能であることを特徴とする請求項1のプリアンブルによる装置において達成される。
【0014】
第1及び第2のチャンバは0~10bar(バール)に加圧されることが可能である。
【0015】
有利には、透析器であってもよい上記フィルタは、装置のホルダに挿入されることが可能である。この場合、血液入口開口部及び透析流体用の入口開口部は第1のチャンバに配置され、血液出口開口部及び透析流体用の出口開口部は第2のチャンバに配置される。他のフィルタや医療用フィルタについても同様である。残留空気は、チャンバの入口を通して排出することができ、過熱蒸気又は乾燥空気を添加することができる。両方のチャンバが同時に操作される場合、例えば真空/蒸気法を使用して、滅菌も可能である。
【0016】
しかしながら、有利には、過熱蒸気は、蒸気滅菌のための入口を通して第1のチャンバに導入することもできる。これは、第1のチャンバ内に過剰圧力を生成する。第1のチャンバと第2のチャンバとの間に圧力勾配が生成される。ここで、圧力差は、蒸気がフィルタを通ってゆっくりと流れることを可能にするように小さくすることができる。例えば、圧力差は、123℃の蒸気温度で100mbarであってもよい。2つのチャンバ間の圧力差により、過熱蒸気は、血液入口/透析液入口開口部から血液出口/透析液出口開口部まで透析器の血液及び透析液空間を通って流れ、存在する空気をまず置換する。次いで、この透析器は、設定時間のあいだ、過熱蒸気に暴露することによって滅菌される。過熱蒸気は、血液出口開口部/透析液出口開口部を通って出た後、その出口を介して第2のチャンバから排出されることが可能である。他のフィルタや医療用フィルタについても同様である。真空蒸気プロセスを医療用フィルタを通る恒久的な蒸気流と組み合わせることも可能である。蒸気滅菌における温度範囲は、100~180℃であってもよい。蒸気滅菌の継続時間は、例えば、5~180分であってもよい。
【0017】
上記フィルタは、2つのチャンバを数回同時に排気し、次いで、それらに乾燥空気を充填することによって乾燥させることができる。
【0018】
有利には、蒸気滅菌後に透析器を乾燥させるために、暖気を入口を通して第1のチャンバに導入することができる。これは、第1のチャンバと第2のチャンバとの間に圧力勾配を生成する。これにより、暖気が透析器の血液及び透析液空間を通って流れ、中空糸が乾燥する。湿気は、このプロセスにおいて暖気によって吸収される。暖気は、血液出口開口部/透析液出口開口部を通って出た後、その出口を介して第2のチャンバから排出されることが可能である。特に有利には、これにより、透析器を半時間未満で、特に有利には20分で乾燥させることができる。他のフィルタや医療用フィルタについても同様である。当該装置は、水平配向及び鉛直(上下、垂直)配向の両方で動作させることができる。
【0019】
圧力チャンバは、隔壁(仕切り)によって第1のチャンバと第2のチャンバとに区画されていることが便利である。
【0020】
有利には、隔壁の位置を調整することができるということが想定される。
【0021】
調節可能な隔壁は、第1のチャンバ及び第2のチャンバのサイズを変化させることを可能にする。
【0022】
本発明の1つの実施形態は、第1のチャンバが第2のチャンバよりも大きいことである。
【0023】
特に有利には、透析器のより広い領域を第1のチャンバ内に配置することができる。この場合、透析器は、蒸気が流入するにつれて透析器の外部から加熱されることもでき、従って滅菌が促進される。乾燥も、暖気を第1のチャンバに流すことによって加速されることが可能であり、この暖気は、フィルタの外側を加熱することもでき、従って、乾燥プロセスを加速することができる。他のフィルタや医療用フィルタについても同様である。
【0024】
本発明のさらなる実施形態は、ホルダ内に配置されたフィルタに力を加えるための手段がホルダの領域に設けられることにある。
【0025】
特に、ハウジングがポリプロピレン製である透析器は、蒸気滅菌中に膨張する。蒸気滅菌中に透析器に力を加えることによって、透析器の膨張を制限することができる。この場合、透析器の膨張は、5mm未満、好ましくは2mm未満、特に好ましくは1mm未満に制限することができる。有利には、これは、蒸気滅菌中に中空糸束の縮れ(蛇行)を温存する。力の印加は、滅菌対象の透析器及び中空糸の縮れに応じて調整することができる。
【0026】
本発明の有利な実施形態は、ホルダ内に配置されたフィルタに力を加えるためにばね要素又は圧力シリンダが設けられることである。
【0027】
このばね要素又は圧力シリンダは、フィルタに力を加えることを特に容易にする。
【0028】
本発明の別の実施形態は、当該装置が、第1のチャンバ及び第2のチャンバの各々の底部に凝縮水用の排水管(ドレン)を備えることにある。
【0029】
有利には、凝縮した蒸気は、排水管を介して圧力チャンバから導かれることができる。例えば、凝縮物分離器を両方のチャンバに設けることができる。
【0030】
本発明の別の実施形態は、第1のチャンバ及び第2のチャンバが弁によって相互接続されることにある。
【0031】
蒸気滅菌のために蒸気を導入するとき、第1のチャンバと第2のチャンバとを開放弁を介して接続することができる。従って、蒸気は、圧力チャンバ全体にわたって分配され、すべての開口部を通ってフィルタに入ることができる。弁は、例えば、フィルタを乾燥させるとき、第1のチャンバと第2のチャンバとの間の圧力差によって暖気がフィルタを通って流れることを可能にするように閉鎖されることができる。
【0032】
圧力チャンバのハウジングを加熱できることが有用である。
【0033】
圧力チャンバのハウジングを加熱することは、有利には、蒸気滅菌中に蒸気がハウジング壁上で凝縮することを防止するか、又は凝縮物の量を減少させる。
【0034】
最後に、当該装置が放射エネルギーをフィルタに導入するためのエミッタを含むことは、本発明の範囲内にある。
【0035】
放射エネルギーをフィルタに導入することによって、フィルタをより迅速に乾燥させることができる。放射は、例えば、マイクロ波放射又は赤外線放射であってもよい。
【0036】
上記目的は、請求項11に記載のフィルタ、特に医療用フィルタを滅菌及び乾燥する方法によっても達成される。この方法は、以下の工程:
フィルタを上記ホルダに挿入する工程と、
上記装置の圧力チャンバを閉鎖する工程と、
初期空気除去のために、両方のチャンバを周期的に排気し、蒸気を投入する工程と、
熱気(高温空気)を第1のチャンバに導入し、設定時間のあいだフィルタを通って流して残留空気を除去する工程と、
両方のチャンバを過熱蒸気で所定時間のあいだ加圧する工程と、
暖気を第1のチャンバ及び/又は第2のチャンバに流し、フィルタが完全に乾燥するまでフィルタを通って流すことによって、出口を介して第1のチャンバ及び/又は第2のチャンバ内の過熱蒸気を置換する工程と
からなる。
【0037】
上記目的は、以下の工程:
フィルタを上記ホルダに挿入する工程と、
上記装置の圧力チャンバを閉鎖する工程と、
フィルタ内に存在する空気を除去するために、入口を介して第1のチャンバ及び/又は第2のチャンバに過熱蒸気を導入する工程と、
フィルタを通して過熱蒸気を設定時間のあいだ流す工程と、
空気による置換によって第2のチャンバ内の出口を介して過熱蒸気を除去する工程と、
暖気を第1のチャンバ及び/又は第2のチャンバに導入し、フィルタが完全に乾燥するまでそのフィルタを通して流す工程と
を含む方法によっても達成される。
【0038】
上記目的は、以下の工程:
フィルタを上記ホルダに挿入する工程と、
上記装置の圧力チャンバを閉鎖する工程と、
空気除去のために、両方のチャンバを周期的に排気し、蒸気を投入する工程と、
両方のチャンバを過熱蒸気で所定時間のあいだ加圧する工程と、
暖気を第1のチャンバ及び/又は第2のチャンバに流すことによって、出口を介して第1のチャンバ及び/又は第2のチャンバ内の過熱蒸気を置換する工程と、
暖気を第1のチャンバ及び/又は第2のチャンバに導入し(流入させ)、フィルタが完全に乾燥するまでそのフィルタを通して流す工程と
を含む方法によっても達成される。
【0039】
上述の3つの方法は、それぞれ本発明に係る装置で実施される。
【0040】
当該方法の好ましい実施形態では、フィルタは医療用フィルタ、特に透析器であり、医療用フィルタ、特に透析器の血液空間は、滅菌プロセスの前に蒸気透過性かつ微生物不透過性の薄片で封止される。医療用フィルタ、特に透析器の中空糸は、最初に過熱蒸気を流され、次いで過熱蒸気を所定の時間適用され、続いて暖気を流される。
【0041】
例えば、DuPont(デュポン)製のTyvek(登録商標)製の薄片を、蒸気透過性かつ病原体、例えば微生物に対して不透過性の薄片として使用することができる。蒸気透過性かつ微生物不透過性の薄片は、医療用フィルタ、特に透析器の血液空間のための断熱(熱を逃がさない、pyrogendicht)シールを提供する。特に有利には、医療用フィルタ、特に透析器の血液入口開口部及び血液出口開口部は、当該装置内での滅菌後に無菌的に包装される必要がなくなる。
【0042】
蒸気透過性かつ微生物不透過性薄片は、例えば、断熱性薄片で作られた厚さ0.2マイクロメートルの薄片であってもよい。
【0043】
透析器の場合、透析流体のための入口開口部及び出口開口部は、滅菌中に閉鎖されることが望ましい。
【0044】
有利には、これは、透析器の血液空間を通る流れに有利である。透析流体のための入口開口部及び出口開口部は、例えば、キャップで閉鎖することができる。
【0045】
最後に、フィルタがエネルギー入力又は放射線によって乾燥されることは、本発明の範囲内にある。
【0046】
以下、本発明の例示的な実施の形態について図面を参照してより詳細に説明する。ここでは、フィルタは透析器である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】透析器が挿入された状態の本発明に係る装置の断面。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、透析器2が挿入された状態の本発明に係る装置1の一実施形態の模式図を示す。この装置は、少なくとも1つの入口4と1つの出口5とを有する筒状の圧力チャンバ3からなる。蒸気又は暖気を、入口4を介して圧力チャンバ3に導入することができる。残留空気は、真空ポンプを使用してこのチャンバから除去することもできる。蒸気又は暖気は、出口5を通って圧力チャンバ3から排出されることができる。圧力チャンバ3は、調整可能な隔壁9によって、鉛直方向に上下に配置された第1のチャンバ7と第2のチャンバ8とに分割されている。隔壁9の調節可能性により、第1のチャンバ7及び第2のチャンバ8のサイズを変えることができる。第1のチャンバ7と第2のチャンバ8とは、隔壁9内の弁12によって接続されている。圧力チャンバ3は、閉鎖装置21によって開閉可能である。凝縮水用の排水管11は、装置1の底部に位置する。
【0049】
圧力チャンバの内部には、滅菌対象の透析器2を挿入するためのホルダ6がある。このホルダは、蒸気滅菌及びその後の乾燥中に透析器ハウジング20の膨張を制限するために透析器2に力を加えるためのばね要素10を含む。透析器2の血液空間の血液入口開口部13又は血液出口開口部14は、ホルダ6の中央に受け入れられる。透析器2の血液空間は、中空糸18によって形成される。透析器2の透析空間19は、透析流体のための入口開口部16と出口開口部17との間に位置する。透析器の血液空間の血液入口開口部13及び血液出口開口部14は、それぞれ、蒸気透過性かつ微生物不透過性の薄片15によって閉鎖される。蒸気透過性かつ微生物不透過性の薄片15を通して、蒸気及び空気は透析器の血液空間に浸透することができるが、健康に有害な病原体は浸透できない。
【0050】
透析器2を滅菌するために、透析器2の血液空間は、蒸気透過性かつ微生物不透過性の薄片15、例えばDuPont製のTyvek(登録商標)でまず封止される。この目的のために、蒸気透過性かつ微生物不透過性の薄片15が、例えば熱溶着によって、血液入口開口部13及び血液出口開口部14の各々を覆って取り付けられる。次の工程では、透析器2がホルダ6内に設置され、装置1の圧力チャンバ3が閉鎖される。次いで、蒸気が、入口4を介して第1のチャンバ7に導入される。第1のチャンバ7と第2のチャンバ8との間の圧力勾配により、蒸気が透析器2の中空糸を通って流れ、その中の空気を除去する。その後、透析器2は、過熱蒸気を一定時間、例えば15分間流され、これにより滅菌される。過熱蒸気は、第2のチャンバ8の出口5を介して圧力チャンバ3から排出される。透析器を乾燥させるために、暖気が入口4を介して第1のチャンバ7に導入される。第1のチャンバ7と第2のチャンバ8との間の圧力勾配により、暖気が透析器2の中空糸を通って流れ、湿気が暖気に吸収される。この暖気は、第2のチャンバ8内の出口5を介して圧力チャンバ3から除去される。
図1