(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】微粒子測定装置とこれを備えた超純水製造装置、及び微粒子測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 15/02 20240101AFI20240625BHJP
C02F 1/00 20230101ALI20240625BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20240625BHJP
【FI】
G01N15/02 D
C02F1/00 V
C02F1/44 J
(21)【出願番号】P 2023529567
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2022012519
(87)【国際公開番号】W WO2022264584
(87)【国際公開日】2022-12-22
【審査請求日】2023-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2021098602
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】市原 史貴
(72)【発明者】
【氏名】菅原 広
(72)【発明者】
【氏名】近藤 司
(72)【発明者】
【氏名】須藤 史生
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/064628(WO,A1)
【文献】特開平08-159949(JP,A)
【文献】特開平08-252440(JP,A)
【文献】国際公開第2017/164361(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/02
C02F 1/00
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超純水製造装置の所定の区間を流れる水に含まれる微粒子数を取得する第1及び第2の微粒子計と、
前記第1及び第2の微粒子計の計測結果に基づき、前記所定の区間を流れる水に含まれる微粒子数を粒径範囲ごとに算出する微粒子数算出手段と、を有し、
前記第2の微粒子計の計数効率は前記第1の微粒子計の計数効率より大きく、前記第1の微粒子計の可測粒子径は前記第2の微粒子計の可測粒子径より小さく、前記第1の微粒子計は所定の粒子径より小さい微粒子の数を測定し、前記第2の微粒子計は所定の粒子径以上の微粒子の数を測定する、微粒子測定装置。
【請求項2】
前記区間は前記超純水製造装置を構成する最下流の膜ろ過装置
とユースポイントとの間の区間である、請求項1に記載の微粒子測定装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の微粒子計は、前記所定の区間において同じ地点に設置される、請求項1
または2に記載の微粒子測定装置。
【請求項4】
前記第2の微粒子計の可測粒子径が100nm以上である、請求項1から
3のいずれか1項に記載の微粒子測定装置。
【請求項5】
前記第1の微粒子計の可測粒子径が20nm以下である、請求項
4に記載の微粒子測定装置。
【請求項6】
前記計数効率は実効流量÷定格流量×100(%)(ここで、実効流量=微粒子数の測定に寄与する流量、定格流量=前記第1及び第2の微粒子計に導入される超純水の流量)である、請求項1から5のいずれか1項に記載の微粒子測定装置。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか1項に記載の微粒子測定装置と、前記超純水製造装置を構成する最下流の膜ろ過装置と、を有する超純水製造装置。
【請求項8】
前記微粒子測定装置の前記微粒子数算出手段が算出した粒径範囲ごとの微粒子数のうち、少なくとも一部の粒径範囲における微粒子数が所定の閾値を超えたときに、その旨を示す信号を生成する制御部を有する、請求項
7に記載の超純水製造装置。
【請求項9】
前記制御部は前記信号に基づき前記超純水製造装置の運転を管理する、請求項
8に記載の超純水製造装置。
【請求項10】
超純水製造装置の所定の区間を流れる水に含まれる微粒子数を第1及び第2の微粒子計で計測することと、
前記第1及び第2の微粒子計の計測結果に基づき、前記所定の区間を流れる水に含まれる微粒子数を微粒子数算出手段によって、粒径範囲ごとに算出することと、を有し、
前記第2の微粒子計の計数効率は前記第1の微粒子計の計数効率より大きく、前記第1の微粒子計の可測粒子径は前記第2の微粒子計の可測粒子径より小さく、前記第1の微粒子計は所定の粒子径より小さい微粒子の数を測定し、前記第2の微粒子計は所定の粒子径以上の微粒子の数を測定する、超純水中の微粒子測定方法。
【請求項11】
前記計数効率は実効流量÷定格流量×100(%)(ここで、実効流量=微粒子数の測定に寄与する流量、定格流量=前記第1及び第2の微粒子計に導入される超純水の流量)である、請求項10に記載の微粒子測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年6月14日出願の日本出願である特願2021-098602に基づき、かつ同出願に基づく優先権を主張する。この出願は、その全体が参照によって本出願に取り込まれる。
【0002】
本発明は、微粒子測定装置とこれを備えた超純水製造装置、及び微粒子測定方法に関し、特に超純水製造装置で製造された超純水の微粒子数の測定装置に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、超純水の水質への要求が厳しくなっており、超純水中の微粒子についてもより小さな微粒子を低濃度まで低減し、且つ安定して管理することが求められている。超純水中の微粒子数は、対象微粒子にレーザー光を照射した際に微粒子から発する散乱光を利用した、光散乱方式の液中パーティクルカウンタ(LPC)が用いられる(国際公開第2020/241476号)。また、超純水中の微粒子の数だけでなく、微粒子の粒径や形状を判別するためには直接検鏡法が用いられる(特開2016-55240号公報)。直接検鏡法では、ろ過膜に捕捉された微粒子が光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡などで観察される。
【発明の概要】
【0004】
LPCでは、粒径50nm以下などの微小粒径域の粒子を検出する場合、集光して光密度を高めたレーザー光をフローセル内のごく一部の領域に照射する。このようなLPCは、部分計数型光散乱式LPCとも呼ばれる。部分計数型光散乱式LPCでは、同じ大きさの粒子でもレーザー光を通過する場所によって検出される光強度が変化する、あるいはレーザー光を通過しない粒子が検出されないといった、粒子数濃度測定値の不確かさが大きい。これに対し、直接検鏡法では、測定対象の微粒子の粒径よりも孔径が小さいろ過膜を使用することにより、微粒子数を粒径範囲毎に正確に評価することができる。しかし、試料を得るために長時間のろ過が必要であり、超純水中の微粒子数の変動を迅速に把握することは困難である。
【0005】
本発明は、粒径によらず微粒子数の測定精度が高められ、且つ迅速な測定が可能な微粒子測定装置を提供することを目的とする。
【0006】
本発明の微粒子測定装置は、超純水製造装置の所定の区間を流れる水に含まれる微粒子数を取得する第1及び第2の微粒子計と、第1及び第2の微粒子計の計測結果に基づき、上記所定の区間を流れる水に含まれる微粒子数を粒径範囲ごとに算出する微粒子数算出手段と、を有する。第2の微粒子計の計数効率は第1の微粒子計の計数効率より大きく、第1の微粒子計の可測粒子径は第2の微粒子計の可測粒子径より小さく、第1の微粒子計は所定の粒子径より小さい微粒子の数を測定し、第2の微粒子計は所定の粒子径以上の微粒子の数を測定する。
【0007】
本発明によれば、粒径によらず微粒子数の測定精度が高められ、且つ迅速な測定が可能な微粒子測定装置を提供することができる。
【0008】
上述した、およびその他の、本出願の目的、特徴、および利点は、本出願を例示した添付の図面を参照する以下に述べる詳細な説明によって明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る超純水製造装置のサブシステムの概要図である。
【
図2B】変形例の微粒子測定装置の概略構成図である。
【
図4】測定点P1における微粒子計の測定結果を示すグラフである。
【
図5A】測定点P1における微粒子計の測定結果を示すグラフである。
【
図5B】測定点P1における微粒子計の測定結果を示すグラフである。
【
図5C】測定点P1における微粒子計の測定結果を示すグラフである。
【
図6】測定点P2における微粒子計の測定結果を示すグラフである。
【
図7A】測定点P2における微粒子計の測定結果を示すグラフである。
【
図7B】測定点P2における微粒子計の測定結果を示すグラフである。
【
図7C】測定点P2における微粒子計の測定結果を示すグラフである。
【
図8】測定点P3における微粒子計の測定結果を示すグラフである。
【
図9A】測定点P3における微粒子計の測定結果を示すグラフである。
【
図9B】測定点P3における微粒子計の測定結果を示すグラフである。
【
図9C】測定点P3における微粒子計の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る超純水製造装置のサブシステム1の概要を示している。サブシステム1は、1次純水システムで製造された純水から、ユースポイント21に供給される超純水を製造するためのシステムで、2次純水システムとも呼ばれる。サブシステム1は、1次純水タンク2と、純水供給ポンプ3と、紫外線酸化装置4と、過酸化水素除去装置5と、非再生型混床式の第1のイオン交換装置6(カートリッジポリッシャー)と、膜脱気装置7と、ブースターポンプ8と、第2のイオン交換装置9と、限外ろ過膜装置10と、最終段ろ過膜装置11と、を有し、これらは母管L1に沿ってこの順で、被処理水の流通方向Dに沿って直列に配置されている。母管L1のユースポイント21への分岐部は、ユースポイント21で使用されなかった超純水を1次純水タンク2に還流するリターンラインL2によって、1次純水タンク2に接続されている。1次純水タンク2には1次純水システムで製造された純水が貯蔵されている。
【0011】
紫外線酸化装置4は被処理水に紫外線を照射し、被処理水に含まれる有機物を分解する。過酸化水素除去装置5はパラジウム(Pd)、白金(Pt)などの触媒を備え、紫外線照射によって発生した過酸化水素を分解する。これによって、後段の第1のイオン交換装置6が酸化性物質によってダメージを受けることが防止される。第1のイオン交換装置6はカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂が混床で充填されたもので、被処理水中のイオン成分を除去する。膜脱気装置7は被処理水に含まれる溶存酸素や二酸化炭素を除去する。ブースターポンプ8は例えば、ユースポイント21が高い場所に設けられている場合に被処理水を加圧するために設けられる。第2のイオン交換装置9は、主にブースターポンプ8で発生した微粒子や粒子状成分を除去する。微粒子や粒子状成分は限外ろ過膜装置10で除去することもできるため、第2のイオン交換装置9は省略することもできる。
【0012】
限外ろ過膜装置10としては分画分子量が4000~6000程度(孔径2-4nm相当)の膜を用いたものが挙げられ、これによって粒径が10nm以上の微粒子を高い確率で除去することが可能となる。膜は中空糸膜でもよいし、平膜でもよいし、プリーツ形状でもよい。限外ろ過膜装置10として、最終段ろ過膜装置11と同様、配管にろ過膜を充填したもの、塔状体に複数のカートリッジを装着したものを用いることもできる。限外ろ過膜は膜自体からの溶出が少ないものが好ましく、ポリスルフォンが好適に使用できる。限外ろ過膜としては、例えば、旭化成株式会社製OLT-6036H、日東電工株式会社製NTU-3306-K6Rが挙げられる。第1のイオン交換装置6の樹脂から溶出する有機物などが限外ろ過膜装置10で除去されるため、ユースポイント21に供給される超純水の水質がさらに改善されるとともに、最終段ろ過膜装置11の負荷が低減する。
【0013】
最終段ろ過膜装置11はサブシステム1の最終段に設けられた浄化ユニットである。最終段ろ過膜装置11のろ過膜はポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、4フッ化エチレン(PTFE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアリールスルホン(PAS)、ナイロンなどの材料で形成される。膜は中空糸膜でもよいし、平膜でもよいし、プリーツ形状でもよい。最終段ろ過膜装置11はハウジングに膜のカートリッジを装着したものである。代替案として、配管にろ過膜を充填したものを最終段ろ過膜装置11として用いることもできる。配管はポリフッ化ビニリデン(PVDF)、PTFE、CLVP(クリーン塩ビ管)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)等で製造することが好ましい。他の代替案として、塔状体に複数のカートリッジを装着したものを最終段ろ過膜装置11として用いることもできる。
【0014】
最終段ろ過膜装置11のろ過膜の保持径は5nm以下、好ましくは3nm以下、より好ましくは1nm以下である。保持径は以下のように測定される。まず、測定対象のろ過膜の粒子除去効率(PRE:Particle Removal Efficiency)をSEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)規格C89-0116「TEST METHOD FOR PARTICLE ROMOVAL PERFORMANCE OF LIQUID DILTER RATED BELOW 30 nm WITH INDUCITIVELY COUPLED PLASMA-MASS SPECTROSCOPY (ICP-MS)」に従って測定する。保持径はPREが80%以上、好ましくは90%となる粒子径、すなわち少なくとも80%の粒子が捕捉される粒子径を意味する。従って、保持径が5nmであるということは、粒径5nmの粒子を80%以上、好ましくは90%の確率で捕捉する、ないし阻止率が80%以上、好ましくは90%であるろ過性能を有することを意味する。ろ過膜としては、例えばインテグリス社のGuardian(登録商標)PSフィルターを用いることができる。
【0015】
最終段ろ過膜装置11はユースポイント21に接続されている。最終段ろ過膜装置11は超純水製造装置を構成する最下流の膜ろ過装置であり、本サブシステム1では、最終段ろ過膜装置11から取り出した超純水がユースポイント21に供給される。最下流とはサブシステム1を構成する様々な浄化ユニットのうち、被処理水の流通方向Dに関して最も下流側であることを意味する。
【0016】
限外ろ過膜装置10と最終段ろ過膜装置11のいずれか一方は省略することもできる。最終段ろ過膜装置11を省略した場合、限外ろ過膜装置10が超純水製造装置を構成する最下流の膜ろ過装置となる。
【0017】
超純水製造装置(サブシステム1)は微粒子測定装置12を備えている。微粒子測定装置12は、超純水製造装置を構成する最下流の膜ろ過装置である最終段ろ過膜装置11(最終段ろ過膜装置11を省略した場合は限外ろ過膜装置10)とユースポイント21との間の区間S(
図1に太線で示した区間)に設けられている。
図2Aは微粒子測定装置12の概略構成を示している。微粒子測定装置12は第1の微粒子計12Aと第2の微粒子計12Bとを含んでいる。第1の微粒子計12Aと第2の微粒子計12Bは区間Sを流れる水に含まれる微粒子の数を計測する。第1の微粒子計12A及び第2の微粒子計12Bはレーザー光散乱方式の微粒子計(LPC)である。LPCは対象微粒子にレーザー光を照射し、レーザー光の照射によって微粒子から発する散乱光を電気信号に変換し、電気信号から微粒子の数と粒径を測定する。母管L1から分岐管L3が分岐し、分岐管L3はさらに並列する2つの分岐管L4,L5に分岐し、第1の微粒子計12Aと第2の微粒子計12Bはそれぞれ分岐管L4,L5に設置されている。従って、第1の微粒子計12Aと第2の微粒子計12Bには実質的に同じ地点に設置され、同じ超純水が導入される。後に詳しく説明するように、第2の微粒子計12Bは第1の微粒子計12Aより定格流量が小さいため、分岐管L4,L5には流量調整用の弁(図示せず)が設けられている。または、第1の微粒子計12A及び第2の微粒子計12Bの定格流量が得られるように、予め分岐管L4,L5の配管径及び長さを決定してもよい。第1の微粒子計12Aと第2の微粒子計12Bを通過した超純水は系外に排水されるが、母管L1に戻してもよい。
【0018】
実質的に同じ地点とは微粒子数に変動がない区間であり、第1の微粒子計12Aと第2の微粒子計12Bは、そのような区間に設けられている限り、これらの微粒子計の位置が互いに離れていても、実質的に同じ地点に配置されていると考えることができる。例えば、第1の微粒子計12Aと第2の微粒子計12Bが、最終段ろ過膜装置11とユースポイント21の間の区間に設けられている場合、これらの微粒子計の位置が互いに離れていても、微粒子数に変動がない範囲であれば、実質的に同じ地点に配置されていると考えることができる。後述するように、第1の微粒子計12Aと第2の微粒子計12Bを他の区間に設ける場合も、同様に考えることができる。この場合の実質的に同じ地点とは、他の水処理手段が介在することなく直列配置される2つの水処理手段の間の区間における任意の2つの地点を意味する。例えば、紫外線酸化装置4と過酸化水素除去装置5の間の区間、第1のイオン交換装置6と膜脱気装置7の間の区間、膜脱気装置7と第2のイオン交換装置9の間の区間、限外ろ過膜装置10と最終段ろ過膜装置11の間の区間については、それぞれの区間のどの位置に第1の微粒子計12Aと第2の微粒子計12Bが設けられていても、微粒子数に変動がない範囲であれば、第1の微粒子計12Aと第2の微粒子計12Bは実質的に同じ地点に配置されていると考えることができる。
【0019】
図2Bに示すように、第1の微粒子計12Aと第2の微粒子計12Bは分岐管L3上に直列に配置してもよい。
図2Bでは第1の微粒子計12Aが第2の微粒子計12Bの上流に配置されているが、第1の微粒子計12Aと第2の微粒子計12Bはどちらが上流側にあってもよい。第1の微粒子計12Aと第2の微粒子計12Bに導入される超純水の流量を調整するため、分岐管L3上には第1の微粒子計12Aをバイパスするバイパス管L6と、第2の微粒子計12Bをバイパスするバイパス管L7が設けられている。第1の微粒子計12Aと第2の微粒子計12Bにそれぞれバイパス管L6,L7を組み合わせることで、定格流量の異なる第1の微粒子計12Aと第2の微粒子計12Bを直列配置することができる。また、第1の微粒子計12Aと第2の微粒子計12Bには同一の超純水が導入されるため、計測の信頼性が一層高められる。
【0020】
微粒子測定装置12は、第1の微粒子計12Aと第2の微粒子計12Bに接続された微粒子数算出手段12Cを有している。算出手段12Cはパーソナルコンピューターやサブシステムの制御部として設けられ、実質的にはソフトウエアとして構成される。算出手段12Cは第1の微粒子計12A及び第2の微粒子計12Bの計測結果に基づき、区間Sを流れる水に含まれる微粒子数を粒径範囲ごとに算出する。具体的な算出方法は後述する。
【0021】
ここで、実施例について説明する。
図3に示すシステム101を用いて、超純水中の微粒子数を測定した。使用したシステム101は
図1に示すサブシステム1を簡略化したもので、純水供給ポンプ3と紫外線酸化装置4との間に被処理水の水温調整用の熱交換器13が設置されている。超純水製造装置を構成する最下流の膜ろ過装置は限外ろ過膜装置10であり、最終段ろ過膜装置11と同等のろ過性能を有するろ過膜装置11A,11Bが、限外ろ過膜装置10とユースポイント21との間で母管L1から分岐する分岐管L7に設置されている。限外ろ過膜装置10は旭化成株式会社製OLT-6036HAであり、ろ過膜装置11Aはインテグリス社のGuardian(登録商標)PSフィルター(保持径5nm)であり、ろ過膜装置11Bはインテグリス社のGuardian(登録商標)PSフィルター(保持径1nm)である。
【0022】
超純水中の微粒子数は図中の測定点P1~P3で測定した。各測定点P1~P3において、微粒子数は2つの微粒子計(A),(B)で測定した。微粒子計(A)はUltra DI-20(PMS社製)であり、20nm以上の微粒子を測定可能である。微粒子計(B)はKS-16(RION社製)であり、100nm以上の微粒子を測定可能である。また、基準値を求めるため、測定点P1,P3で採取した超純水を走査型電子顕微鏡(SEM)で分析した。具体的には、ろ過膜を備えた遠心分離機に超純水を導入し、ろ過膜に捕捉した微粒子をSEMで観察して、微粒子数を粒径範囲ごとに求めた(以下、SEM法という)。微粒子計(A)と微粒子計(B)は
図2Aに示すように並列に配置した。微粒子計(A),(B)とSEM法の諸元を表1に示す。
【0023】
【0024】
表中、微粒子計(A),(B)における粒径区分は測定レンジを示し、例えば、微粒子計(A)では粒径20nm以上、50nm以上、75nm以上、100nm以上の微粒子数を同時に測定可能である。定格流量は微粒子計に導入される超純水の流量を意味する。実効流量は微粒子数の測定に寄与する流量を意味する。具体的には、実効流量は微粒子計に導入される超純水のうち、レーザー光が照射され微粒子数が測定される部分の流量、あるいは単位時間あたりにレーザー光が照射され微粒子数が測定される部分の容積である。レーザー光の散乱強度は粒径の6乗に比例するため、最小可測粒子径の小さい微粒子計(A)では、レーザー光を絞り、非常に狭い領域に強いレーザー光を照射する必要がある。この結果、微粒子計に導入される超純水のほとんどは、レーザー光が照射されず測定に寄与しないことになる。ここで計数効率を、実効流量÷定格流量×100(%)で定義する。微粒子計(A)では計数効率が極めて小さい。これに対して、微粒子計(B)では、微粒子計(A)よりも弱いレーザー光を広い領域に照射するため、微粒子計に導入される超純水の多くが測定に寄与し、計数効率も大きな値となる。
【0025】
図4は測定点P1における微粒子計(A)と微粒子計(B)の測定結果(時間と微粒子数の関係)を示している。微粒子計(A)については、20nm以上の微粒子数と100nm以上の微粒子数を測定した。
図5A~5Cは
図4のグラフを測定データごとに別々に示したもので、
図5Aが微粒子計(A)で20nm以上の微粒子数を測定した結果、
図5Bが微粒子計(A)で100nm以上の微粒子数を測定した結果、
図5Cが微粒子計(B)で100nm以上の微粒子数を測定した結果を示している。同様に、
図6は測定点P2における微粒子計(A)と微粒子計(B)の測定結果を示している。
図7A~7Cは
図6のグラフを測定データごとに別々に示したもので、
図5A~5Cと同様に作成した。同様に、
図8は測定点P3における微粒子計(A)と微粒子計(B)の測定結果を示している。
図9A~9Cは
図8のグラフを測定データごとに別々に示したもので、
図5A~5Cと同様に作成した。微粒子数が安定した後の測定値の平均値(
図4,6,8に示す時間Tにおける平均値)を表2に示す。SEM法では、微粒子数が安定したことを確認した後(
図4,6,8に示す時間Tにおけるのと同様の状態)、孔径10nmの微粒子捕捉膜を設置した遠心ろ過器に所定の時間通水し、微粒子をサンプリングして観察した。なお、表中「<50」は信号ノイズとの判別がつかない程度に微粒子数が少ないことを意味し、偽計数以下と理解される。
【0026】
【0027】
図4~9Cと表2よりわかる通り、検出された微粒子数は測定点P1より測定点P3の方が少なく、この傾向は微粒子計(A)でも微粒子計(B)でも捉えられている。一方、粒径100nm以上の微粒子は微粒子計(A)ではほとんど検出されなかったが、微粒子計(B)及びSEM法では検出されている。この粒径100nm以上の大きな粒子は限外ろ過膜装置10を通過した粒子ではなく、限外ろ過膜装置10自身から発生した微粒子と推定される。微粒子計(A)で粒径100nm以上の微粒子がほとんど検出されなかった理由として、微粒子計(A)ではレーザー光の照射される領域すなわち粒子検出領域が限られているため、粒子検出領域外に存在する粒径100nm以上の粒子が検出されなかったことが考えられる。これに対して、微粒子計(B)ではレーザー光が広い領域に照射されるため、粒子検出領域が大きく、微粒子計(A)よりも多くの粒径100nm以上の粒子を検出することができたと考えられる。また、測定点P1,P3での測定データから、微粒子計(B)の測定結果はSEM法の測定結果と相関していることがわかる。すなわち、SEM法によれば、測定点P1では測定点P3よりも粒径100nm以上の微粒子が多く検出されたが、微粒子計(B)の測定結果でもこれと同様の傾向が得られている。一方、微粒子計(A)では、低濃度で存在する100nm以上の微粒子はほとんど検出されなかった。
【0028】
以上の実施例から理解される通り、微粒子計(A)は粒径の小さな微粒子の検出を可能とする半面、粒径の大きな微粒子の測定精度が低下する傾向があり、微粒子計(A)だけであらゆる粒径の微粒子数を精度よく測定することは困難である。このため、大きな微粒子の数を精度良く測定するためにはSEM法を用いざるを得ない。SEM法では、測定対象の微粒子の粒径よりも孔径が小さいろ過膜を使用することにより、粒径の小さい微粒子でも検出が可能であり、粒子数だけでなく形状や構成元素を判別することも可能である。しかし、SEM法は遠心ろ過器による試料のサンプリングに長時間を要し、対象粒子径が小さくなるほど長時間のろ過が必要となる。このため、超純水中の微粒子数の変動を迅速に把握することは困難である。
【0029】
上記実施例から得られた知見に基づき、本願発明者は、粒径の大きな微粒子と粒径の小さな微粒子を、計数効率が互いに異なる別々の微粒子計で測定することに想到した。すなわち、微粒子計(A)は、粒子検出領域は狭いものの小さい粒子を検出可能であるという利点があり、微粒子計(B)は小さい粒子を検出し難いものの粒子検出領域が広いという利点があるため、粒径の小さな微粒子の数は微粒子計(A)などの、計数効率は低いが可測粒子径の小さな微粒子計で測定し、粒径の大きな微粒子の数は微粒子計(B)などの、可測粒子径は大きいが計数効率の高い微粒子計で測定する。これによって、従来SEM法を併用していた測定を微粒子計だけで行うことが可能となり、粒径によらず微粒子数の測定精度が高められ、且つ迅速な測定が可能となる。
【0030】
従って、微粒子測定装置12の第1の微粒子計12A(微粒子計(A)に対応)と第2の微粒子計12B(微粒子計(B)に対応)は、計数効率が互いに異なっている。第2の微粒子計12Bの計数効率は、第1の微粒子計12Aの計数効率より大きい。第1の微粒子計12Aと第2の微粒子計12Bの計数効率は何ら限定されるものではないが、例えば、第1の微粒子計12Aの計数効率は可測粒子径と相反する関係にあるため、必要な可測粒子径に応じて、10%以下、5%以下、1%以下などから選択するのが好ましい。第2の微粒子計12Bは粒子の計数効率が高いことが特徴であるため、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。第1の微粒子計12Aと第2の微粒子計12Bの可測粒子径も何ら限定されるものではないが、例えば、第1の微粒子計12Aの可測粒子径は50nm以下が好ましく、20nm以下がさらに好ましい。第2の微粒子計12Bの可測粒子径は100nm以上が好ましい。
【0031】
算出手段12Cは、粒径100nm未満の微粒子数については第1の微粒子計12Aの測定結果を用い、粒径100nm以上の微粒子数については第2の微粒子計12Bの測定結果を用いて、すべての粒径の微粒子数の分布を算出する。すなわち、第1の微粒子計12Aは20nm以上、50nm以上、75nm以上、100nm以上の微粒子数を測定することで、20nm以上50nm未満、50nm以上75nm未満、75nm以上100nm未満、100nm以上の微粒子数を測定することができる。そして、100nm以上の微粒子数については第1の微粒子計12Aの測定結果ではなく、第2の微粒子計12Bの測定結果を採用する。この様にして、20nm以上50nm未満、50nm以上75nm未満、75nm以上100nm未満、100nm以上の微粒子数を異なる微粒子計を用いて精度よく求めることができる。なお、第1の微粒子計12Aの可測粒子径と第2の微粒子計12Bの可測粒子径とが一部重なる場合には、第2の微粒子計12B(計数効率が高い微粒子計)の測定結果を採用することが好ましい。
【0032】
超純水製造装置(サブシステム1)は、微粒子測定装置12の算出手段12Cの測定結果に基づき超純水製造装置の運転を管理する制御部12Dを有している。制御部12Dは、微粒子数算出手段12Cが算出した粒径範囲ごとの微粒子数に関する情報が入力され、微粒子数算出手段12Cが算出した粒径範囲ごとの微粒子数のうち、少なくとも一部の粒径範囲における微粒子数が所定の閾値を超えたかどうかの判定を行う。制御部12Dは所定の閾値を超えたと判定したときに、所定の閾値を超えた旨を示す信号を生成する。制御部12Dはこの信号に基づき、超純水製造装置からユースポイント21への超純水の供給を停止させたり、超純水製造装置の運転を停止させたり、といった超純水製造装置の運転管理を実行したり、所定の閾値を超えた旨の警告(アラーム)を出力部(図示せず)に出力させたりする。なお、本実施形態では超純水製造装置(サブシステム1)が制御部12Dを備える場合を説明したが、微粒子測定装置12が制御部12Dを備えるようにしても良い。
【0033】
以上、本発明を実施形態によって説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。一変形例では、第1の微粒子計12Aと第2の微粒子計12Bの組は複数の箇所に設置してもよい。例えば、第1の微粒子計12Aと第2の微粒子計12Bの組を限外ろ過膜装置10の入口と出口に設置してもよい。この場合、微粒子数算出手段12Cは組ごとに設置してもよいし、1つだけ設置して各組から情報(微粒子数)を受け取って、組ごとに出力または表示してもよい。限外ろ過膜装置10の出口以外の区間については、限外ろ過膜装置10自身から発生する粒径の大きな微粒子の影響がないか、あるとしても少ないため、第2の微粒子計12Bは省略することもできる。
【0034】
上述した、およびその他の、本出願の目的、特徴、および利点は、本出願を例示した添付の図面を参照する以下に述べる詳細な説明によって明らかとなろう。
【符号の説明】
【0035】
1 サブシステム
2 1次純水タンク
3 純水供給ポンプ
4 紫外線酸化装置
5 過酸化水素除去装置
6 第1のイオン交換装置
7 膜脱気装置
8 ブースターポンプ
9 第2のイオン交換装置
10 限外ろ過膜装置
11 最終段ろ過膜装置
12 微粒子測定装置
12A 第1の微粒子計
12B 第2の微粒子計
12C 微粒子数算出手段
21 ユースポイント