(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】プリント配線板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/28 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
H05K3/28 B
H05K3/28 F
(21)【出願番号】P 2024523460
(86)(22)【出願日】2023-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2023013622
【審査請求日】2024-04-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500400216
【氏名又は名称】住友電工プリントサーキット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一松 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】山本 真
(72)【発明者】
【氏名】野口 航
(72)【発明者】
【氏名】宮原 将希
【審査官】沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/196497(WO,A1)
【文献】特開2006-351676(JP,A)
【文献】国際公開第2020/009229(WO,A1)
【文献】特開2007-062175(JP,A)
【文献】国際公開第2021/085329(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有するベースフィルムと、
前記主面上に配置されている導電パターンと、
前記導電パターンを覆うように前記主面上に配置されている接着剤層と前記接着剤層上に配置されている絶縁フィルムと有するカバーレイとを備え、
前記導電パターンは、端子部を有し、
前記カバーレイには、前記カバーレイを貫通して前記端子部の上面を露出させる開口部が形成されており、
前記接着剤層の下面における前記開口部の縁及び前記絶縁フィルムの下面における前記開口部の縁をそれぞれ第1開口縁及び第2開口縁とすると、前記第1開口縁と前記第2開口縁との間の距離であるレジンフロー幅は、前記第1開口縁の幅の最小値に対して30パーセント以下であ
り、
前記絶縁フィルムの厚さは、2μm以上7μm以下である、プリント配線板。
【請求項2】
前記レジンフロー幅は、0mm以上0.3mm以下である、請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項3】
前記導電パターンの上面と前記絶縁フィルムの下面との間にある前記接着剤層の厚さは3μm以上15μm以下である、請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項4】
前記導電パターンの厚さは、30μm以上150μm以下である、請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項5】
前記導電パターンは、複数の配線部を有し、
前記主面の法線は、第1方向に沿っており、
前記複数の配線部の各々は、前記第1方向に直交する第2方向に沿っており、
前記複数の配線部は、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向に沿って並んでおり、
前記複数の配線部のうちの隣り合う2つの間の距離は3μm以上30μm以下である、請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項6】
前記絶縁フィルムの上面における凹凸の算術平均高さは、0.010μm以上1.00μm以下である、請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項7】
前記導電パターンは、複数の配線部を有し、
前記主面の法線は、第1方向に沿っており、
前記複数の配線部の各々は、前記第1方向に直交する第2方向に沿っており、
前記複数の配線部は、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向に沿って並んでおり、
前記絶縁フィルムの上面における凹凸の周期は、前記複数の配線部上にある前記絶縁フィルムの部分において、前記複数の配線部のうちの隣り合う2つの間のピッチの0.80倍以上1.20倍以下である、請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項8】
前記絶縁フィルムは、ポリイミド又は液晶ポリマーにより形成されている、請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載のプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば国際公開第2016/147993号(特許文献1)には、プリント配線板が記載されている。プリント配線板は、ベースフィルムと、導電パターンと、絶縁層とを有している。ベースフィルムは、主面を有している。導電パターンは、ベースフィルムの主面上に配置されている。導電パターンは、ベースフィルムの主面の法線と直交する方向に沿って並んでいる複数の配線部を有している。絶縁層は、導電パターンを覆うようにベースフィルムの主面上に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示のプリント配線板は、主面を有するベースフィルムと、主面上に配置されている導電パターンと、導電パターンを覆うように主面上に配置されている接着剤層と接着剤層上に配置されている絶縁フィルムと有するカバーレイとを備える。導電パターンは、端子部を有する。カバーレイには、カバーレイを貫通して端子部の上面を露出させる開口部が形成されている。接着剤層の下面における開口部の縁及び絶縁フィルムの下面における開口部の縁をそれぞれ第1開口縁及び第2開口縁とすると、第1開口縁と第2開口縁との間の距離であるレジンフロー幅は、第1開口縁の幅の最小値に対して30パーセント以下である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、プリント配線板100の平面図である。
【
図2】
図2は、プリント配線板100の底面図である。
【
図3】
図3は、
図1中のIII-IIIにおける断面図である。
【
図7】
図7は、プリント配線板100の製造工程図である。
【
図8】
図8は、変形例に係るプリント配線板100の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
絶縁層には、例えばカバーレイが用いられることがある。カバーレイは、導電パターンを覆うようにベースフィルムの主面上に配置されている接着剤層と、接着剤層上に配置されている絶縁フィルムとを有している。導電パターンと外部との電気的接続のために、カバーレイには、導電パターンの端子部の上面を露出させる開口部が形成されている。
【0007】
接着剤層の下面における開口部の開口縁を第1開口縁とし、絶縁フィルムの下面における開口部の開口縁を第2開口縁とする。カバーレイをベースフィルムに貼付する際、第1開口縁が第2開口縁よりも平面視において内側に位置するように接着剤層が流動する現象(レジンフロー)が生じることがある。レジンフローの結果、第1開口縁と第2開口縁との間の距離(レジンフロー幅)が大きくなりすぎると、外部との電気的な接続に供される導電パターンの上面の面積が小さくなりすぎる。
【0008】
本開示は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本開示は、導電パターンの端子部の接続面積を確保することが可能なプリント配線板を提供するものである。
【0009】
[本開示の効果]
本開示のプリント配線板によると、端子部の接続面積を確保することが可能である。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
まず、本開示の実施形態を列記して説明する。
【0011】
(1)実施形態に係るプリント配線板は、主面を有するベースフィルムと、主面上に配置されている導電パターンと、導電パターンを覆うように主面上に配置されている接着剤層と接着剤層上に配置されている絶縁フィルムと有するカバーレイとを備えている。導電パターンは、端子部を有する。カバーレイには、カバーレイを貫通して端子部の上面を露出させる開口部が形成されている。接着剤層の下面における開口部の縁及び絶縁フィルムの下面における開口部の縁をそれぞれ第1開口縁及び第2開口縁とすると、第1開口縁と第2開口縁との間の距離であるレジンフロー幅は、第1開口縁の幅の最小値に対して30パーセント以下である。上記(1)のプリント配線板によると、端子部の接続面積を確保することが可能である。
【0012】
(2)上記(1)のプリント配線板では、レジンフロー幅が0mm以上0.3mm以下であってもよい。
【0013】
(3)上記(1)のプリント配線板では、絶縁フィルムの厚さが2μm以上7μm以下であってもよい。上記(3)のプリント配線板によると、端子部の接続面積をさらに確保することが可能である。
【0014】
(4)上記(1)のプリント配線板では、導電パターンの上面と絶縁フィルムの下面との間にある接着剤層の厚さが3μm以上15μm以下であってもよい。上記(4)のプリント配線板によると、接着剤層と絶縁フィルムとの間の接着性を確保しつつ、端子部の接続面積を確保することが可能である。
【0015】
(5)上記(1)のプリント配線板では、導電パターンの厚さが30μm以上150μm以下であってもよい。上記(5)のプリント配線板によると、レジンフローが生じやすい場合でも端子部の接続面積を確保することが可能である。
【0016】
(6)上記(1)のプリント配線板では、導電パターンが複数の配線部を有していてもよい。主面の法線は第1方向に沿っていてもよい。複数の配線部の各々は、第1方向に直交する第2方向に沿っていてもよい。複数の配線部は、第1方向及び第2方向に直交する第3方向に沿って並んでいてもよい。複数の配線部のうちの隣り合う2つの間の距離は、3μm以上30μm以下であってもよい。上記(6)のプリント配線板によると、レジンフローが生じやすい場合でも端子部の接続面積を確保することが可能である。
【0017】
(7)上記(1)のプリント配線板では、絶縁フィルムの上面における凹凸の算術平均高さが0.010μm以上1.00μm以下であってもよい。
【0018】
(8)上記(1)のプリント配線板では、導電パターンが複数の配線部を有していてもよい。主面の法線は、第1方向に沿っていてもよい。複数の配線部の各々は、第1方向に直交する第2方向に沿っていてもよい。複数の配線部は、第1方向及び第2方向に直交する第3方向に沿って並んでいてもよい。絶縁フィルムの上面における凹凸の周期は、複数の配線部上にある絶縁フィルムの部分において、複数の配線部のうちの隣り合う2つの間のピッチの0.80倍以上1.20倍以下であってもよい。
【0019】
(9)上記(1)から(9)のプリント配線板では、絶縁フィルムがポリイミド又は液晶ポリマーにより形成されていてもよい。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
次に、本開示の実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面では、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さないものとする。実施形態に係るプリント配線板を、プリント配線板100とする。
【0021】
(プリント配線板100の構成)
以下に、プリント配線板100の構成を説明する。
【0022】
図1は、プリント配線板100の平面図である。
図2は、プリント配線板100の底面図である。
図2には、
図1とは反対側から見たプリント配線板100が示されている。
図1中及び
図2中では、カバーレイ31及びカバーレイ32の図示が省略されている。
図3は、
図1中のIII-IIIにおける断面図である。
図4は、
図1中のIV-IVにおける断面図である。
図5は、
図1中のV-Vにおける断面図である。
図6は、
図1中のVI-VIにおける断面図である。
図1から
図6に示されているように、プリント配線板100は、ベースフィルム10と、導電パターン21及び導電パターン22と、カバーレイ31及びカバーレイ32とを有している。
【0023】
ベースフィルム10は、主面10aと、主面10bとを有している。主面10a及び主面10bは、ベースフィルム10の厚さ方向における端面である。主面10bは、主面10aの反対面である。ベースフィルム10は、可撓性のある電気絶縁性の材料により形成されている。ベースフィルム10は、例えば、ポリイミド又は液晶ポリマーにより形成されている。主面10a(主面10b)の法線方向を、第1方向DR1とする。
【0024】
導電パターン21は、主面10a上に配置されている。導電パターン21は、平面視において、渦巻状に巻回されている。導電パターン21は、複数の配線部21aを有している。
【0025】
複数の配線部21aは、複数の直線部21bであってもよく、複数の曲線部21cであってもよい。直線部21bは、平面視において直線状に延在している。曲線部21cは、平面視において曲線状に延在している。配線部21a(直線部21b、曲線部21c)の延在方向を、第2方向DR2とする。なお、配線部21aが曲線部21cである場合、第2方向DR2は、曲線部21cの接線方向である。
【0026】
複数の配線部21a(直線部21b、曲線部21c)は、第3方向DR3に沿って間隔を空けて並んでいる。第3方向DR3は、第1方向DR1及び第2方向DR2に直交する方向である。
【0027】
導電パターン22は、主面10b上に配置されている。導電パターン22は、平面視において、渦巻状に巻回されている。導電パターン21は、複数の配線部22aを有している。
【0028】
複数の配線部22aは、複数の直線部22bであってもよく、複数の曲線部22cであってもよい。直線部22bは、平面視において直線状に延在している。曲線部22cは、平面視において、曲線状に延在している。配線部22a(直線部22b、曲線部22c)は、第2方向DR2に沿って延在している。なお、配線部22aが曲線部22cである場合、第2方向DR2は、曲線部22cの接線方向である。複数の配線部22a(直線部22b、曲線部22c)は、第3方向DR3に沿って間隔を空けて並んでいる。
【0029】
導電パターン21は、一方端においてランド21dを有しており、他方端においてランド21eを有している。ランド21d及びランド21eは、それぞれ導電パターン21の最外周及び最内周にある。導電パターン22は、一方端においてランド22dを有しており、他方端においてランド22eを有している。ランド22d及びランド22eは、それぞれ導電パターン22の最内周及び最外周にある。ランド21d及びランド22eは、外部との電気的な接続に供される端子部である。ランド21e及びランド22dは、平面視において、互いに重なっている。
【0030】
導電パターン21及び導電パターン22の各々は、例えばセミアディティブ法により形成されている。より具体的には、導電パターン21及び導電パターン22の各々は、シード層23と、無電解めっき層24と、電解めっき層25とを有している。但し、導電パターン21及び導電パターン22の各々は、サブトラクティブ法により形成されてもよい。
【0031】
シード層23は、ベースフィルム10の主面(主面10a、主面10b)上に配置されている。シード層23は、例えばスパッタ層(スパッタリングにより形成されている層)である。シード層23は、例えば、第1層と第2層とを有している。第1層は、ベースフィルム10の主面(主面10a、主面10b)上に配置されている。第2層は、第1層上に配置されている。第1層及び第2層は、例えば、それぞれニッケルクロム合金及び銅により形成されている。
【0032】
無電解めっき層24は、無電解めっきにより形成されている層である。無電解めっき層24は、シード層23上に配置されている。無電解めっき層24は、例えば、銅により形成されている。電解めっき層25は、電解めっきにより形成されている層である。電解めっき層25は、無電解めっき層24上に配置されている。電解めっき層25は、例えば、銅により形成されている。
【0033】
図示されていないが、ベースフィルム10には、貫通穴10cが形成されている。貫通穴10cは、ベースフィルム10を厚さ方向に沿って貫通している。貫通穴10cは、平面視においてランド21e及びランド22dに重なっている。無電解めっき層24は、貫通穴10cの内壁面上にも配置されている。電解めっき層25は、貫通穴10c内にも埋め込まれている。これにより、導電パターン21及び導電パターン22が、互いに電気的に接続されている。ランド21dとランド22eとの間に電圧が印加されることにより導電パターン21及び導電パターン22に渦巻状に電流が流れ、この電流により磁場が発生される。このことを別の観点から言えば、プリント配線板100は、コイル装置になっている。
【0034】
導電パターン21の厚さを、厚さT1とする。導電パターン22の厚さを、厚さT2とする。厚さT1及び厚さT2は、例えば、30μm以上150μm以下である。隣り合う2つの配線部21aの間の距離を、距離DIS1とする。隣り合う2つの配線部22aの間の距離を、距離DIS2とする。距離DIS1及び距離DIS2は、例えば、3μm以上30μm以下である。
【0035】
カバーレイ31及びカバーレイ32の各々は、接着剤層33と、絶縁フィルム34とを有している。接着剤層33は、接着剤により形成されている層である。カバーレイ31の接着剤層33は、導電パターン21を覆うように主面10a上に配置されている。カバーレイ32の接着剤層33は、導電パターン22を覆うように主面10b上に配置されている。絶縁フィルム34は、接着剤層33上に配置されている。絶縁フィルム34は、例えば、ポリイミド又は液晶ポリマーにより形成されている。
【0036】
導電パターン21の上面とカバーレイ31の絶縁フィルム34の下面との間にあるカバーレイ31の接着剤層33の厚さを厚さT3とする。導電パターン22の上面とカバーレイ32の絶縁フィルム34の下面との間にあるカバーレイ32の接着剤層33の厚さを、厚さT4とする。厚さT3及び厚さT4は、例えば3μm以上15μm以下である。
【0037】
カバーレイ31の絶縁フィルム34の厚さを、厚さT5とする。カバーレイ32の絶縁フィルム34の厚さを、厚さT6とする。厚さT5及び厚さT6は、例えば2μm以上7μm以下である。
【0038】
絶縁フィルム34の上面における凹凸の算術平均高さ(Sa)は、0.010μm以上1.00μm以下である。絶縁フィルム34の上面における凹凸の算術平均高さは、レーザ顕微鏡を用いて測定される。なお、算術平均高さの定義は、ISO25178に規定されているとおりである。
【0039】
絶縁フィルム34の上面は、第3方向DR3に沿って凹凸を有している。隣り合う2つの配線部21aの間のピッチを、ピッチP1とする。隣り合う2つの配線部22aの間のピッチを、ピッチP2とする。第3方向DR3における絶縁フィルム34の上面の凹凸の周期は、複数の配線部21a上にある絶縁フィルム34の部分上において、例えば、ピッチP1の0.80倍以上1.20倍以下である。第3方向DR3における絶縁フィルム34の上面の凹凸の周期は、複数の配線部22a上にある絶縁フィルム34の部分上において、例えば、ピッチP2の0.80倍以上1.20倍以下である。
【0040】
第3方向DR3における絶縁フィルム34の上面の凹凸の周期は、絶縁フィルム34の上面をレーザ顕微鏡を用いて20倍以上50倍以下の倍率で測定し、隣り合う2つの凸部の間の間隔を測長することより得られる。
【0041】
カバーレイ31には開口部35が形成されている。開口部35は、カバーレイ31(接着剤層33及び絶縁フィルム34)を厚さ方向に貫通している。開口部35からは、ランド21dの上面が露出している。カバーレイ32には、開口部36が形成されている。開口部36は、カバーレイ32(接着剤層33及び絶縁フィルム34)を厚さ方向に貫通している。開口部36からは、ランド22eの上面が露出している。
【0042】
絶縁フィルム34における開口部35の幅及び絶縁フィルム34における開口部36の幅を、それぞれ幅W1及び幅W2とする。幅W1及び幅W2は、絶縁フィルム34の下面において、測定される。接着剤層33の下面における開口部35の開口縁と絶縁フィルム34の下面における開口部35の開口縁との間の距離を、距離DIS3とする。接着剤層33の下面における開口部36の開口縁と絶縁フィルム34の下面における開口部36の開口縁との間の距離を、距離DIS4とする。距離DIS3及び距離DIS4は、レジンフロー幅に対応している。なお、幅W1、幅W2、距離DIS3及び距離DIS4は、顕微鏡を用いてプリント配線板100の平面画像を取得するとともに、当該平面画像に基づいて測長される。
【0043】
距離DIS3は、幅W1の最小値に対して30パーセント以下である。すなわち、距離DIS3を幅W1の最小値で除した値は、0.3以下になっている。距離DIS4は、幅W2の最小値に対して30パーセント以下である。すなわち、距離DIS4を幅W2の最小値で除した値は、0.30以下になっている。距離DIS3及び距離DIS4は、例えば0mm以上0.3mm以下である。
【0044】
(プリント配線板100の製造方法)
以下に、プリント配線板100の製造方法を説明する。
【0045】
図7は、プリント配線板100の製造工程図である。
図7に示されるように、プリント配線板100の製造方法は、準備工程S1と、カバーレイ貼付工程S2とを有している。カバーレイ貼付工程S2は、準備工程S1後に行われる。
【0046】
準備工程S1では、ベースフィルム10、カバーレイ31及びカバーレイ32が準備される。なお、準備工程S1において準備されるベースフィルム10では、主面10a上及び主面10b上に導電パターン21及び導電パターン22がそれぞれ配置されている。準備工程S1において準備されるカバーレイ31及びカバーレイ32では、接着剤層33を構成している接着剤が、未硬化である。カバーレイ31及びカバーレイ32には、それぞれ開口部35及び開口部36が例えば打ち抜き加工により形成されている。
【0047】
カバーレイ貼付工程S2では、カバーレイ31及びカバーレイ32のベースフィルム10への貼付が行われる。カバーレイ貼付工程S2では、第1に、接着剤層33が導電パターン21を覆うように主面10a上にカバーレイ31が配置されるとともに、接着剤層33が導電パターン22を覆うように主面10b上にカバーレイ32が配置される。
【0048】
第2に、カバーレイ31及びカバーレイ32がベースフィルム10に対して熱プレスされる。この際、熱プレス装置とカバーレイ31及びカバーレイ32との間には、クッション材が介在されている。これにより、接着剤層33を構成している接着剤が硬化され、カバーレイ31及びカバーレイ32がベースフィルム10に貼付される。
【0049】
クッション材は、樹脂材料により形成されている。クッション材を構成している樹脂材料のガラス転移点は、上記の熱プレスの際の加熱温度よりも低い。そのため、上記の熱プレスの際に、絶縁フィルム34が複数の配線部21a(配線部22a)の形状に沿って変形し、複数の配線部21a(配線部22a)上にある絶縁フィルム34の上面の部分に、第3方向DR3に沿って周期的な凹凸が形成される。以上により、
図1から
図6に示される構造のプリント配線板100が形成される。
【0050】
<変形例>
図8は、変形例に係るプリント配線板100の断面図である。
図8に示されているように、プリント配線板100は、導電パターン22及びカバーレイ32を有していなくてもよい。
【0051】
(プリント配線板100の効果)
以下に、プリント配線板100の効果を説明する。
【0052】
プリント配線板100では、レジンフロー幅が小さくなっている。より具体的には、プリント配線板100では、距離DIS3が幅W1の最小値に対して30パーセント以下になっているとともに、距離DIS4が幅W2の最小値に対してパーセント以下になっている。そのため、プリント配線板100では、外部との電気的な接続に供されるランド21d及びランド22dの上面の面積が確保されている。
【0053】
導電パターン21及び導電パターン22が高アスペクト化される(すなわち、厚さT1及び厚さT2が大きくなる)ほど、また導電パターン21及び導電パターン22が高密度化される(すなわち、距離DIS1及び距離DIS2が小さくなる)ほど、カバーレイ31及びカバーレイ32を貼付する際のレジンフローが生じやすくなる。
【0054】
しかしながら、プリント配線板100では、厚さT5及び厚さT6が2μm以上7μm以下と小さくなっている。また、プリント配線板100では、熱プレスが行われる際に熱プレス装置とカバーレイ31及びカバーレイ32との間に軟化しやすい(ガラス転移点の低い)クッション材が介在されている。そのため、プリント配線板100では、熱プレスが行われている際に絶縁フィルム34が変形し、レジンフローによる距離DIS3及び距離DIS4の増加が生じにくい。
【0055】
厚さT3及び厚さT4が大きいことは、熱プレスが行われる際の加圧力が小さいことを意味する。熱プレスが行われる際の加圧力が小さいほどレジンフローが生じにくくなるため、厚さT3及び厚さT4が大きいほど外部との電気的な接続に供されるランド21d及びランド22dの上面の面積を確保しやすい。
【0056】
他方で、厚さT3及び厚さT4が小さいほど接着剤層33及び絶縁フィルム34の界面が曲げを受けた際のプリント配線板100の中立軸に近くなり、曲げを受けた際の接着剤層33と絶縁フィルム34との接着性を確保しやすくなる。厚さT3及び厚さT4が3μm以上15μm以下である場合、接着剤層33と絶縁フィルム34との間の接着性を確保しつつ、外部との電気的な接続に供されるランド21d及びランド22dの上面の面積を確保可能である。
【0057】
(実施例)
厚さT1(厚さT2)、厚さT3(厚さT4)、厚さT5(厚さT6)及び距離DIS1(距離DIS2)と距離DIS3(距離DIS4)との関係を評価するために、サンプル1からサンプル72が準備された。サンプル1からサンプル72の詳細は、表1、表2及び表3に示されている。サンプル1からサンプル72では、厚さT1、厚さT3、厚さT5及び距離DIS1を変化させた上で、距離DIS3が測定された。なお、サンプル1からサンプル72では、幅W1が〇μmで一定とされた。
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
厚さT1が30μm以上150μm以下であることを、条件Aとする。厚さT3が3μm以上15μm以下であることを、条件Bとする。厚さT5が2μm以上7μm以下であることを、条件Cとする。距離DIS1が3μm以上30μm以下であることを条件Dとする。
【0062】
サンプル1からサンプル51、サンプル53、サンプル54、サンプル57、サンプル61、サンプル62及びサンプル65では、条件Aから条件Dの全てが満たされていた。他方で、サンプル52、サンプル55、サンプル56、サンプル58からサンプル60、サンプル63、サンプル64及びサンプル66からサンプル72では、条件Aから条件Dのうちの少なくともいずれかが満たされていなかった。
【0063】
サンプル1からサンプル51、サンプル53、サンプル54、サンプル57、サンプル61、サンプル62及びサンプル65では、距離DIS3が0mm以上0.3mm以上になっていた(すなわち、距離DIS3を幅W1の30パーセント以下になっていた)。他方で、サンプル52、サンプル55、サンプル56、サンプル58からサンプル60、サンプル63、サンプル64及びサンプル66からサンプル72では、距離DIS3が0.3mmを超えていた。
【0064】
この比較から、厚さT1(厚さT2)、厚さT3(厚さT4)、厚さT5(厚さT6)及び距離DIS1(距離DIS2)を適宜調整することにより距離DIS3(距離DIS4)を0mm以上0.3mm以下とすること(すなわち、幅W1(幅W2)の30パーセント以下とすること)が可能であることが明らかになった。
【0065】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記の実施形態ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0066】
100 プリント配線板、10 ベースフィルム、10a 主面、10b 主面、10c 貫通穴、21 導電パターン、21a 配線部、21b 直線部、21c 曲線部、21d,21e ランド、22 導電パターン、22a 配線部、22b 直線部、22c 曲線部、22d,22e ランド、23 シード層、24 無電解めっき層、25 電解めっき層、31,32 カバーレイ、33 接着剤層、34 絶縁フィルム、35,36 開口部、DIS1,DIS2,DIS3,DIS4 距離、DR1 第1方向、DR2 第2方向、DR3 第3方向、P1,P2 ピッチ、S1 準備工程、S2 カバーレイ貼付工程、T1,T2,T3,T4,T5,T6 厚さ、W1,W2 幅。
【要約】
プリント配線板は、主面を有するベースフィルムと、主面上に配置されている導電パターンと、導電パターンを覆うように主面上に配置されている接着剤層と接着剤層上に配置されている絶縁フィルムと有するカバーレイとを備える。導電パターンは、端子部を有する。カバーレイには、カバーレイを貫通して端子部の上面を露出させる開口部が形成されている。接着剤層の下面における開口部の縁及び絶縁フィルムの下面における開口部の縁をそれぞれ第1開口縁及び第2開口縁とすると、第1開口縁と第2開口縁との間の距離であるレジンフロー幅は、第1開口縁の幅の最小値に対して30パーセント以下である。