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特許7510035天然繊維に化合物を適用する方法及びシステム並びにそれから得られる処理繊維
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】天然繊維に化合物を適用する方法及びシステム並びにそれから得られる処理繊維
(51)【国際特許分類】
   D06M 11/42 20060101AFI20240626BHJP
   D01F 2/00 20060101ALI20240626BHJP
   D06M 10/02 20060101ALI20240626BHJP
   D06M 15/05 20060101ALI20240626BHJP
   D06M 23/08 20060101ALI20240626BHJP
   D06M 101/06 20060101ALN20240626BHJP
【FI】
D06M11/42
D01F2/00 A
D06M10/02 A
D06M15/05
D06M23/08
D06M101:06
【請求項の数】 45
(21)【出願番号】P 2020567051
(86)(22)【出願日】2019-05-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 IL2019050618
(87)【国際公開番号】W WO2019229756
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】62/678,280
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517255005
【氏名又は名称】アルガマン テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガベイ,ジェフリー エス.
【審査官】中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-501412(JP,A)
【文献】特開2015-148033(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0097957(US,A1)
【文献】国際公開第2018/038627(WO,A1)
【文献】特開2008-081871(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0140047(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M、D01F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含浸天然セルロース繊維であって、
表皮及び内腔を有する天然セルロース繊維であって、前記表皮が前記内腔を取り囲んでいる、天然セルロース繊維と、
前記天然セルロース繊維中に包埋された、抗菌性を有する不溶性酸化銅粒子と
を含み、
前記不溶性酸化銅粒子が、含浸天然セルロース繊維の0.1~30w/w%を構成し、且つ前記不溶性酸化銅粒子が、その抗菌性を前記含浸天然セルロース繊維に付与し、且つ前記不溶性酸化銅粒子が前記天然セルロース繊維の表皮上及び内腔内の両方に包埋されている、含浸天然セルロース繊維。
【請求項2】
前記含浸天然セルロース繊維が36g/tex超の引張強度を示す、請求項1に記載の含浸天然セルロース繊維。
【請求項3】
前記含浸天然セルロース繊維が、前記天然セルロース繊維の平均引張強度より少なくとも15%大きい引張強度を有する、請求項1又は2に記載の含浸天然セルロース繊維。
【請求項4】
前記含浸天然セルロース繊維が、4.85超のマイクロネア値を示す、請求項1から3のいずれか一項に記載の含浸天然セルロース繊維。
【請求項5】
前記含浸天然セルロース繊維が、前記天然セルロース繊維の平均マイクロネア値よりも少なくとも20%大きいマイクロネア値を示す、請求項1から3のいずれか一項に記載の含浸天然セルロース繊維。
【請求項6】
前記不溶性酸化銅粒子が、前記含浸天然セルロース繊維の0.5~20重量%を構成する、請求項1から5のいずれか一項に記載の含浸天然セルロース繊維。
【請求項7】
前記不溶性酸化銅粒子が、0.1から0.5ミクロンの間のナノサイズ粒子である、請求項1から6のいずれか一項に記載の含浸天然セルロース繊維。
【請求項8】
前記含浸天然セルロース繊維が、前記天然セルロース繊維よりも早い速度及び多くの量で、水を吸収する、請求項1から7のいずれか一項に記載の含浸天然セルロース繊維。
【請求項9】
前記含浸天然セルロース繊維が、前記含浸天然セルロース繊維の全長にわたって均一に水を吸収する、請求項1から8のいずれか一項に記載の含浸繊維。
【請求項10】
複数の含浸繊維から撚られた糸であって、前記複数の含浸繊維が、請求項1から9のいずれか一項に記載の含浸天然セルロース繊維、糸。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載の含浸天然セルロース繊維を含む物品。
【請求項12】
請求項1から9のいずれか一項に記載の含浸天然セルロース繊維から撚られた糸を含む物品。
【請求項13】
請求項1から9のいずれか一項に記載の含浸天然セルロース繊維からなる不織布地を含む物品。
【請求項14】
不溶性粒子を含浸させたスライバー繊維を製造するシステムであって、
少なくとも1つのスライバー繊維リボンを搬送するためのコンベアと、
i)少なくとも1つの予め選択された特性を有する少なくとも1種の不溶性粒子材料、ii)増粘剤、及びiii)水、を含むペーストを入れるためのディスペンサーであって、ディスペンサーからのペーストが少なくとも1つのスライバー繊維リボン上に分配される、ディスペンサーと、
前記分配されたペーストを通して少なくとも1つのスライバー繊維リボンへと伝えられる超音波を発生させるためのトランスデューサと超音波的に通じているソノトロードであって、超音波が、少なくとも1種の不溶性粒子材料を少なくとも1つのスライバー繊維中に包埋させる、ソノトロードと、
を含むシステム。
【請求項15】
脱気溶液を入れるための、ソノトロードの上流に置かれた湿潤槽をさらに含み、脱気溶液を通して少なくとも1つのスライバー繊維リボンが搬送され且つ湿潤される、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
ソノトロードが、複数の孔を有する有孔ソノトロードである、請求項14又は15に記載のシステム。
【請求項17】
複数の孔の各々が、4mmから20mmの直径、及び40mmから80mmの長さを有する、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
複数の孔の各々が、6mmから15mmの直径、及び50mmから70mmの長さを有する、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
少なくとも1つのスライバー繊維リボンを拘束するか又は折り畳むよう構成された拘束デバイスをさらに含む、請求項14から18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
拘束デバイスが、ソノトロードの上流に一連の拘束リングを含み、前記リングの各々が、本質的に円形であり、且つ、一連のリング中の隣接する上流のリングよりも小さい直径を有する、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
ソノトロードに最も近く、且つソノトロードの上流にある拘束デバイスのリングが、長円形を有する、請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
拘束された又は折り畳まれた少なくとも1つのスライバー繊維リボンを解放するよう構成された解放デバイスをさらに含む、請求項19から21のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
解放デバイスが、ソノトロードの下流に一連のリングを含み、各リングが、本質的に円形であり、且つ、ソノトロードからさらに上流の一連のリング中の隣接するリングよりも大きな直径を有する、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記コンベアが、一連の非連続性の間隔を空けたコンベアを含む、請求項14から23のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項25】
第一のペアの圧搾ローラー及び第二のペアの圧搾ローラーをさらに含み、
第一のペアの圧搾ローラーで圧搾された後の少なくとも1つのスライバー繊維リボンがディスペンサーへ進み、
ディスペンサーからペーストが分配された少なくとも1つのスライバー繊維リボンが第二のペアの圧搾ローラーへ進み、
第一のペアの圧搾ローラーで圧搾された後の少なくとも1つのスライバー繊維リボンが、コンベアが存在しない領域にわたって第二のペアの圧搾ローラーによって牽引されるのに十分な一体強度を有する、請求項14から24のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項26】
少なくとも1種の不溶性粒子材料が、少なくとも1種の元素、化合物、組成物及び上記のものの任意の組み合わせを含む材料から選択される、請求項14から25のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項27】
少なくとも1つのスライバー繊維リボンが漂白される第一の容器をさらに含む、請求項14から26のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項28】
少なくとも1つのスライバー繊維リボンが蛍光増白される第二の容器をさらに含む、請求項14から27のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項29】
スライバー繊維リボンからの残留増粘剤の除去のための少なくとも1つの水噴霧又は濯ぎ装置をさらに含む、請求項14から28のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項30】
少なくとも1つのスライバー繊維リボンが、セルロース繊維からなる、請求項14から29のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項31】
ペーストが、ペーストの27~33重量%の不溶性粒子材料、ペーストの20~36重量%の粘剤、及びペーストの31~53重量%の水を含む、請求項14から30のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項32】
増粘剤が、ナノセルロース、フュームドシリカ、グアーガム、アルギン酸及びその塩、アガー、ローカストビーンガム、ペクチン、及びゼラチンからなる群から選択される、請求項14から31のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項33】
増粘剤が、ナノセルロースである、請求項14から31のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項34】
ペーストが、室温で650~1000センチポアズ(0.65~1Pa・s)の粘度を有する、請求項14から33のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項35】
ペーストの不溶性粒子材料が27~33重量%の範囲内である場合、ペーストが、室温で740から806センチポアズ(0.74~0.806Pa・s)の粘度を有する、請求項14から33のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項36】
スライバー繊維に不溶性粒子を含浸させる方法であって、
a.i.予め選択された所望の特性を有する少なくとも1種の不溶性粒子材料、
ii.水、及び
iii.増粘剤
を含むペーストを得るステップと、
b.少なくとも1つのスライバー繊維リボンを供給するステップと、
c.少なくとも1つのスライバー繊維リボン上にペーストを分配するステップと、
d.超音波が少なくとも1つのスライバー繊維リボンを通して伝達されて、少なくとも1つのスライバー繊維リボン上のペースト中の少なくとも1種の不溶性粒子材料がリボン中に包埋されるように、ペーストで被覆された少なくとも1つのスライバー繊維リボンをソノトロードを通して搬送し、それにより、少なくとも1種の粒子材料の所望の特性をスライバー繊維に付与するステップと、
を含む、方法。
【請求項37】
ソノトロードが、複数の孔を有する有孔ソノトロードである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
少なくとも1つのスライバー繊維リボンが圧縮されてリボンの繊維が分離及び分散することができないように、少なくとも1つのスライバー繊維リボンを拘束するか又は折り畳むステップをさらに含む、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
拘束された又は折り畳まれた少なくとも1つのスライバー繊維リボンを解放するか又は広げるステップをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記分配するステップの前に、脱気溶液を少なくとも1つのスライバー繊維リボンに接触させるステップをさらに含む、請求項36から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
余分なペーストをリボンから除去するために、少なくとも1つのスライバー繊維リボンを洗浄するステップをさらに含む、請求項36から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
ソノトロードが、約500Wから約3000Wの間、且つ約15kHzから約30kHzの間で操作される、請求項36から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
ソノトロードが、約1000Wから約2000Wの間、且つ約15kHzから約25kHzの間で操作される、請求項36から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
少なくとも1つの含浸スライバー繊維リボンを漂白及び/又は蛍光増白するステップをさらに含む、請求項36から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
得られ含浸繊維スライバーカーディングすることなく得られた含浸繊維スライバーを製造ために直接使用可能である、請求項36から44のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる2018年5月31日に出願された米国仮特許出願第62/678,280号の非仮出願である。
【0002】
本発明は、天然繊維を処理する方法及びシステムに関する。本発明はまた、繊維自体、特にセルロース繊維、及びそれらから製造される物品にも関する。
【背景技術】
【0003】
これまでの布地材料の表面処理は、一般に、布地が糸の状態、完成された布の状態、又は場合によっては完成された製品の状態で行われる。例えば、セルロース繊維は、ファブリックにおいて特定の性質、例えば抗微生物性及び/又は難燃性が所望される場合、糸形態又は完成された布の状態のいずれかで処理される。個別の繊維の処理は、工業的布地処理プロセスにおいて、低頻度でしか使用されてこなかった。これは特にセルロースに当てはまる。セルロース繊維を処理するシステム(例えば、梱から直接ではあるが繊維をカード処理する前の、清浄化した綿繊維の染色におけるシステム)がある。綿は次いで通常の紡績装置を用いて糸に加工される。しかし、これらの適用は、それらが他の繊維の汚染、又はカーディングステップからの繊維損失の増加、又は繊維の配向の妨害において引き起こし得る問題のために、通常、奨励されない。
【0004】
繊維を糸形成前に処理する工業的プロセスが不足している理由の1つは、繊維が液体媒体と接触すると、繊維がまとまって分離不能な球になり得るということである。或いは、繊維は、スライバーを製造するためにカード処理された後に、分離し且つ無秩序になる可能性がある。スライバーは、束になった、秩序ある平行な状態の繊維として記載される。
【0005】
一般に、綿繊維レベルでの処理により、破断した繊維に起因する無視できないパーセンテージの綿の損失、及び第二のカーディングステップの必要が生じる。
【0006】
糸の形成前の繊維段階での加工のさらに別の不利な点は、繊維と可溶化された化合物との間の相互作用が乏しい可能性があることであり、そのことは化合物の繊維への付着に必要とされる化学結合形成を妨げる。
【0007】
さらに、繊維レベルでの頻繁な処理は、繊維上の加工用化学物質と糸紡績機械との間の摩擦に起因して、糸の紡績を困難にする。
【0008】
スライバー繊維、特にセルローススライバー繊維は、特に処理が難しい。カード処理後のスライバー繊維は、実質的に円柱状の繊維束からなり、繊維束中の繊維は、互いに平行に配向する。しかし、水が繊維の平行な配向を容易に乱すため、スライバーは、水ベースのプロセスにおいては非常に処理がしにくい。水が、繊維がスライバー束から離れて分散するのを促進するため、相当量の配向した繊維が失われる。水中での処理の後、繊維が本質的に互いに平行となるように繊維を再配向させるために、第二のカーディングステップが通常必要とされる。繊維を互いに平行に整列させることに加えて、第二のカーディングステップは繊維をさらに損傷し且つ短くする。上記の理由で、従来技術は個々の布地繊維の表面処理プロセス、特に水ベースのプロセスを奨励していない。
【0009】
上記の制限を受けることのない、水不溶性化合物を組み込んだ、繊維、例えばセルロースの処理のシステム及び方法に対するニーズが、依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、処理する繊維に1つ以上の所望の特性を付与する粒子によってスライバー形態の繊維を処理するシステム及び方法を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、加工の間、スライバー繊維の平行な配向を保持することを可能にするシステム及び方法を提供することである。
【0012】
本発明のさらに別の目的は、繊維の音響キャビテーションにより、繊維を処理する向上された方法及びシステムを提供することであり、このキャビテーションは、糸及び布を処理するその他のキャビテーションシステム及び方法よりも短い時間間隔で起こる。これは、繊維に付着している粒子の量を増大させながら、より少ないエネルギーの使用及びより大きなコスト節減をもたらす。
【0013】
本システム及び方法のさらなる目的は、処理された繊維における粒子濃度を増加させることである。この増大した粒子付着量は、最終製品に含まれた場合に、最終製品中で、粒子により導入されたより有効でより長続きする活性を与える繊維をもたらす。
【0014】
別の目的は、スライバー繊維を再度平行配向にするための製造後の練条機ステップが不要になるように、処理された繊維が元の配向を失わないシステム及び方法を提供することである。
【0015】
本システムのさらに別の目的は、含浸させた材料がゆっくりと浸出する処理された繊維であって、処理された繊維並びにそれらから製造された糸及びファブリックが、少なくとも50回の工業的洗浄又は100回の家庭での洗浄後に、その活性を保持する、処理された繊維を提供することである。
【0016】
本システムのさらなる目的は、先行技術のシステムを使用する場合よりも、セルロース繊維により深く包埋された不溶性粒子を備える繊維を提供することである。
【0017】
本発明のその他の目的は、本明細書中の本発明の記載を読んだ後、当業者に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一態様において、含浸天然繊維が提供される。含浸繊維は、表皮及び内腔を含み、表皮は内腔を取り囲む。含浸繊維は、繊維中に包埋された、予め選択された特性を有する不溶性粒子をさらに含む。粒子は含浸繊維の0.1~30w/w%を構成し、包埋された粒子は、繊維中に包埋された場合、その予め選択された特性を繊維に付与する。粒子は、繊維の表皮内と内腔内の両方に包埋されている。
【0019】
いくつかの実施形態において、含浸繊維は、36g/tex超の引張強度を有する。
【0020】
他の実施形態において、含浸繊維は、含浸後に引張強度の増加を示し、引張強度は、含浸繊維の繊維と同一の繊維源から引き出された非処理繊維の平均引張強度より少なくとも15%大きい。
【0021】
いくつかの実施形態において、含浸繊維は4.85超のマイクロネア値を示す。
【0022】
他の実施形態において、含浸繊維は、含浸後に、含浸繊維の繊維と同一の繊維源から引き出された非処理繊維の平均マイクロネア値よりも少なくとも20%大きいマイクロネア値を示す。
【0023】
実施形態において、含浸繊維及びそれから形成された糸が、100回の家庭での洗浄又は50回の工業的洗浄後に、予め選択された特性を依然として示す。
【0024】
実施形態において、含浸繊維及びそれから製造された糸は、繊維が漂白及び蛍光増白された後に、予め選択された特性を依然として示す。
【0025】
実施形態において、含浸繊維及びそれから製造された糸は、漂白及び蛍光増白後に、繊維の表皮の外面からの粒子数が少なくとも95%低減されながら、その内腔中に粒子材料を依然として保持する。
【0026】
いくつかの実施形態において、含浸された粒子は含浸繊維の少なくとも0.5~20重量%の量で存在する。
【0027】
いくつかの実施形態において、不溶性粒子は、ナノサイズ粒子である。ナノサイズ粒子は、0.1~0.5ミクロンの粒子を包含する。
【0028】
含浸繊維の実施形態において、繊維の含浸は、音響キャビテーションによって行われる。
【0029】
いくつかの実施形態において、含浸繊維は、水を、非含浸繊維よりも早い速度及び多くの量で吸収する。
【0030】
いくつかの実施形態において、含浸繊維は繊維の全長にわたって均一に水を吸収する。
【0031】
いくつかの実施形態において、繊維の含浸の間に、繊維表皮中に細孔が形成される。
【0032】
いくつかの実施形態において、含浸繊維の繊維は、セルロース繊維である。
【0033】
含浸繊維のいくつかの実施形態において、不溶性粒子は、繊維に非着火性又は難着火性を付与するために予め選択され、且つハンタイト(Mg3Ca(CO3)4)、水酸化マグネシウム、アルミナ三水和物及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0034】
含浸繊維の他の実施形態において、不溶性粒子は、繊維に、抗菌性及び/又は抗真菌性及び/又は抗ウイルス性を含む抗微生物性を付与するために予め選択され、且つ酸化銀、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ゼオライト、セラミック化合物及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0035】
含浸繊維のさらに他の実施形態において、不溶性粒子は、繊維に殺虫性を付与するために予め選択され、且つ珪藻土、酸化銅、酸化銀、酸化亜鉛、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0036】
含浸繊維のさらに他の実施形態において、不溶性粒子は、繊維に防水性を付与するために予め選択され、且つ粉砕シリカ、ナノシリカ、ポリシロキサン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0037】
含浸繊維のさらなる実施形態において、不溶性粒子は、繊維に紫外線抑制性を付与するために予め選択され、且つ酸化亜鉛、二酸化チタン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0038】
含浸繊維のさらに他の実施形態において、不溶性粒子は、経皮薬剤輸送又は皮膚処置のための繊維に薬効性を付与するために予め選択され、且つ酸化銅、酸化銀、種々の医薬を含有するカプセル化ナノ球体(ナノスフィア)及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0039】
含浸繊維のさらなる実施形態において、不溶性粒子は、皮膚処置のための繊維に美容特性を付与するために予め選択され、且つ酸化銅、酸化銀、過酸化ベンゾイル及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0040】
含浸繊維のさらなる実施形態において、不溶性粒子は、繊維に電気伝導性を付与するために予め選択され、且つグラフェン粉末及び単層ナノカーボンチューブ並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0041】
本発明の他の実施形態において、複数の含浸繊維から撚られた糸であって、この含浸繊維が、上で論じた実施形態のいずれか1つに記載の含浸繊維である、糸が提供される。
【0042】
本発明の他の実施形態において、上記実施形態のいずれか1つに記載の含浸繊維からなる物品が提供される。物品は、以下の種類の物品からなる群:衣類、医療用品及び病院用品、制服、カーテン、スクラブ、シーツ、枕カバー、毛布、スリッパ、患者用ガウン、タオル、及び医療環境、高齢者介護施設、公共若しくは民間施設において使用されるか又は家庭において家庭用製品として使用される任意の布地又は布地から製造された製品、から選択される。
【0043】
本発明の他の実施形態において、上で論じた実施形態のいずれか1つに記載の含浸繊維から撚られた糸からなる物品が提供される。物品は、以下の種類の物品からなる群:衣類、医療用品及び病院用品、制服、カーテン、スクラブ、シーツ、枕カバー、毛布、スリッパ、患者用ガウン、タオル、及び医療環境、高齢者介護施設、公共若しくは民間施設において使用されるか又は家庭において家庭用製品として使用される任意の布地又は布地から製造された製品、から選択される。
【0044】
本発明の他の実施形態において、上で論じた実施形態のいずれか1つにあるような含浸繊維で製造された不織布地からなる物品が提供される。物品は、以下の種類の物品からなる群:衣類、医療用品及び病院用品、制服、カーテン、スクラブ、シーツ、枕カバー、毛布、スリッパ、患者用ガウン、タオル、及び医療環境、高齢者介護施設、公共若しくは民間施設において使用されるか又は家庭において家庭用製品として使用される任意の布地又は布地から製造された製品、から選択される。
【0045】
本発明の別の態様において、不溶性粒子を含浸させたスライバー繊維を製造するシステムが提供される。このシステムは、1つ以上のスライバー繊維リボンを搬送するためのコンベアと;ペーストを入れて1つ以上のスライバー繊維リボン上におくためのディスペンサーであって、ペーストが、i)1つ以上の予め選択された特性を有する1種以上の不溶性粒子材料、ii)増粘剤、及びiii)水を含む、ディスペンサーと;分配されたペーストを通して1つ以上のスライバー繊維リボンへと伝えられる超音波を発生させるためのトランスデューサと超音波的に通じているソノトロードであって、超音波が、1種以上の不溶性粒子材料を1つ以上のスライバー繊維中に包埋させる、ソノトロードと、を含む。
【0046】
システムの別の実施形態において、システムは、脱気溶液を入れるための、ソノトロードの上流に置かれた湿潤槽をさらに含み、脱気溶液を通して1つ以上のスライバー繊維リボンが搬送され且つ湿潤される。
【0047】
システムの実施形態において、ソノトロードは複数の孔を有する有孔ソノトロード(bore sonotrode)である。システムの実施形態において、孔は各々、4mmから20mmの直径、及び40mmから80mmの長さを有する。有孔ソノトロードの他の実施形態において、孔は各々、6mmから15mmの直径、及び50mmから70mmの長さを有する。
【0048】
システムのいくつかの実施形態において、システムは、1つ以上のスライバー繊維リボンを拘束するか又は折り畳むよう構成された拘束デバイスをさらに含む。拘束デバイスのいくつかの実施形態において、拘束デバイスは、ソノトロードの上流に一連の拘束リングを含む。リングの各々がソノトロードに向かう方向に動く場合、リングの各々は、一連のリング中の直前のリングよりも小さい直径を有する円形である。いくつかの実施形態において、ソノトロードに最も近く、且つ上流にある拘束デバイスのリングは、長円形を有する。
【0049】
システムのいくつかの実施形態において、システムは、拘束された又は折り畳まれた1つ以上のスライバー繊維リボンを解放するよう構成された解放デバイスをさらに含む。システムのいくつかの実施形態において、解放デバイスは、ソノトロードの下流に一連のリングを含み、各リングは、本質的に円形であり、且つソノトロードからさらに下流の一連のリング中の隣接するリングよりも大きな直径を有する。
【0050】
システムの実施形態において、コンベアは、一連の非連続性の間隔を空けたコンベアを含む。
【0051】
システムの実施形態において、システムは、第一のペアの圧搾ローラーをさらに含み、1つ以上のスライバー繊維リボンは、第一のペアの圧搾ローラーで圧搾された後、コンベアが存在しない領域にわたって第二のペアの圧搾ローラーによって牽引されるのに十分な一体強度を有する。
【0052】
システムの実施形態において、1種以上の不溶性粒子材料は、1種以上の元素、化合物、組成物及び上記のものの任意の組み合わせを含む材料から選択される。
【0053】
システムのいくつかの実施形態において、システムは、1つ以上のスライバー繊維リボンが漂白される第一の容器をさらに含む。
【0054】
システムの実施形態において、システムは、1つ以上のスライバー繊維リボンが蛍光増白される第二の容器をさらに含む。
【0055】
システムのいくつかの実施形態において、システムは、スライバー繊維リボンからの残留増粘剤の除去のための1つ以上の水噴霧又は濯ぎ装置をさらに含む。
【0056】
システムのいくつかの実施形態において、1つ以上のスライバー繊維リボンは、上で論じた実施形態のいずれか1つに記載されたような繊維からなる。
【0057】
システムのいくつかの実施形態において、1つ以上のスライバー繊維リボンは、セルロース繊維から形成される。
【0058】
システムのいくつかの実施形態において、ペーストは、ペーストの27~33重量%の不溶性粒子材料、ペーストの20~36重量%の増粘剤、及びペーストの31~53重量%の水を含む。
【0059】
システムのいくつかの実施形態において、増粘剤は、ナノセルロース、フュームドシリカ、グアーガム、アルギン酸及びその塩、アガー、ローカストビーンガム、ペクチン、及びゼラチンからなる群から選択される。
【0060】
システムのいくつかの実施形態において、増粘剤はナノセルロースである。
【0061】
システムのいくつかの実施形態において、ペーストは、室温で650~1000センチポアズ(0.65~1Pa・s)の粘度を有する。
【0062】
システムの他の実施形態において、ペースト中の不溶性材料が27から33重量%の範囲内である場合、ペーストは、室温で740~806センチポアズ(0.74~0.806Pa・s)の粘度を有する。
【0063】
本発明の別の態様において、スライバー繊維に不溶性粒子を含浸させる方法が提供される。方法は、a.i.予め選択された所望の特性を有する1種以上の不溶性粒子材料、ii.水、及びiii.増粘剤を含むペーストを得るステップと、b.1つ以上のスライバー繊維リボンを供給するステップと、c.1つ以上のスライバー繊維リボン上にペーストを分配するステップと、d.超音波が1つ以上のスライバー繊維リボンを通して伝えられて、1つ以上のスライバー繊維リボン上のペースト中の1種以上の不溶性粒子材料がリボン中に包埋されるように、ペーストで被覆された1つ以上のスライバー繊維リボンをソノトロードを通して搬送し、それにより、1種以上の粒子材料の所望の1つ以上の特性をスライバー繊維に付与するステップと、を含む。
【0064】
方法の実施形態において、ソノトロードは、複数の孔を有する有孔ソノトロードである。
【0065】
実施形態において、方法は、1つ以上のスライバー繊維リボンが圧縮されてリボンの繊維が分離及び分散することができないように、1つ以上のスライバー繊維リボンを拘束するか又は折り畳むステップをさらに含む。方法のいくつかの実施形態において、方法は、拘束された又は折り畳まれた1つ以上のスライバー繊維リボンを解放するか又は広げる(unfolding)ステップをさらに含む。
【0066】
方法の一実施形態において、方法は、分配するステップの前に、脱気溶液を1つ以上のスライバー繊維リボンに接触させるステップをさらに含む。
【0067】
方法のいくつかの実施形態において、方法は、余分なペーストをリボンから除去するために、1つ以上のスライバー繊維リボンを洗浄するステップを含む。
【0068】
方法の実施形態において、ソノトロードは、約500Wから約3000Wの間、且つ約15kHzから約30kHzの間で操作される。さらに他の実施形態において、ソノトロードは、約1000Wから約2000Wの間、且つ約15kHzから約25kHzの間で操作される。
【0069】
方法のいくつかの実施形態において、方法は、1つ以上の含浸スライバー繊維リボンを漂白及び/又は蛍光増白するステップをさらに含む。
【0070】
方法の実施形態において、1種以上の不溶性粒子材料は元素、化合物、組成物、及び上記のものの任意の組み合わせから選択される。
【0071】
方法の実施形態において、得られる含浸繊維スライバーは、第二のカーディング操作なしに、直接、糸を製造するために使用することができる。
【0072】
上記の実施形態を読む際に、読者は、これらを、別個の実施形態、及びそれらの種類に関連する他の実施形態と組み合わせることが可能な実施形態の両方としてみなすことを求められる。したがって、以下の特許請求の範囲セクションに示される多重従属請求項は全て、直上の概要セクションに包含されている。このセクションにおいて、3種類の請求項が示されている:含浸繊維、含浸繊維を製造するシステム、及び含浸繊維を製造する方法である。
【0073】
後続の記載を以下の添付図面と併せて参照することにより、本発明がより十分に理解され、その特徴及び利点が当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1】本発明のシステムの一実施形態の概略図である。
【0075】
図2A図1のシステムにおける拘束デバイスの一実施形態中の拘束リングの正面図である。
【0076】
図2B図2Aにおける拘束リングの側面図である。
【0077】
図3】単一の綿繊維の構造の概略図である。
【0078】
図4】脱気剤/水溶液による処理なし且つキャビテーションなしの綿繊維の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【0079】
図5】キャビテーションされ、且つ脱気剤/水溶液DH 300による処理なしの綿繊維のSEM写真である。
【0080】
図6】DH 300脱気剤/水溶液による処理のみを行い、キャビテーションしていない綿繊維のSEM写真である。
【0081】
図7】1.5%DH 300脱気剤/水溶液中で、酸化銅粒子と共にキャビテーションした綿繊維のSEM写真である。繊維を、実質的にその長軸に沿って示している。
図8】1.5%DH 300脱気剤/水溶液中で、酸化銅粒子と共にキャビテーションした綿繊維のSEM写真である。その長軸を横切って切断されている繊維を示している。内腔領域において銅粒子が繊維に付着している。
【0082】
図9】界面活性剤で処理し、且つ酸化銅と共にキャビテーションした綿繊維のSEM写真である。
【0083】
図10】3%DH 300/水溶液で処理し、次いで酸化銅と共にキャビテーションした綿繊維のSEM写真であり、内腔中の粒子を示している。
【0084】
図11】3%DH 300/水溶液で処理し、次いで酸化銅と共にキャビテーションし、次いで、本明細書に記載のように漂白及び蛍光増白した綿繊維のSEM写真であり、漂白及び増白プロセスが行われた後であっても、内腔が粒子を含むことを示している。
【0085】
図12A】本発明のシステムと共に使用され得る有孔ソノトロードの透視図である。
図12B】本発明のシステムと共に使用され得る有孔ソノトロードの透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0086】
本発明のいくつかの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その応用において、以下の記載で示されるか又は添付の図に例示される構成の詳細及び構成要素の配置に限定されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、又は種々の方法で実施若しくは実行することができる。また、本明細書において使用される表現及び用語は、説明を目的とするものであり、限定するものとみなされるべきではないことが理解されるべきである。
【0087】
本文書を通じてすべてのデータは例示であることに留意すべきである。データは、単に、本発明を提示及び説明するために及び本発明の可能な実施として使用され、本発明を限定することは意図されていない。同様に、本発明は、すべての点において制限的ではなくむしろ例示的であることが意図されている特定の実施形態との関連で記載されている。
【0088】
本明細書で使用するとき、「含む(comprising)」又は「含む(comprises)」又はこれらの変形は、明記された特徴、完全体(integers)、ステップ、又は要素の存在を記載通りに規定するものと解釈されるべきであるが、1つ以上の追加の特徴、完全体、ステップ、要素又はそれらの群の存在又は追加を除外するものではない。したがって、例えば、所与のステップを含む方法は、追加のステップを含んでよい。
【0089】
量、濃度、又は他の値若しくはパラメータが、範囲、好ましい範囲、又は好ましい上限値及び好ましい下限値の一覧のいずれかで与えられる場合、範囲が個別に開示されているかどうかに関わらず、任意の範囲上限又は好ましい値と任意の範囲下限又は好ましい値の任意の対から形成される全ての範囲を具体的に開示するものと理解されるべきである。数値の範囲が、本明細書において記載される場合、別段の記載がない限り、範囲は、その端点、及び範囲内の全ての値を含むことが意図される。規定された範囲の端点の上限値及び下限値内の全ての範囲を含むこともまた意図される。範囲を規定する場合、本発明の範囲が記載された特定の値に限定されることは意図されない。
【0090】
用語の定義
【0091】
本明細書で使用される「スライバー(sliver)」は、糸を紡ぐために一般に使用される繊維の長い束である。スライバーは、原料繊維をカーディング又はコーミングし、次いで、繊維が実質的に互いに平行になった長いストリップへと練条(drawn)することによって作られる。繊維は、ゆるい状態であり、実質的に撚られていない。スライバーは、スライバー繊維がわずかな撚りを与えられる、当業者には粗紡段階として知られている糸製造の次の段階へと移行する前の段階である。
【0092】
本明細書で使用される「不溶性の(insoluble)」は、固体材料が少なくとも部分的に粒子の形態で水、水ベースの溶液又は水含有溶液中に残存することを意味する。
【0093】
本明細書で使用される「スペックルドコーティング(Speckled coating)」は、スライバー繊維にランダムパターンで付着した、不連続な粒子コーティングをいう。
【0094】
スライバーに関して本明細書で使用される「湿潤な(wet)」は、水、水ベースの溶液又は水含有溶液で覆われたか、又は水、水ベースの溶液又は水含有溶液で完全に飽和され、手の中に保持した場合、液が滴ることを意味する。
【0095】
スライバーに関して本明細書で使用される「湿った(moist)」は、「湿気のある(damp)」の同義語であり、水、水ベースの溶液又は水含有溶液の存在が感じられるが、人がスライバーを保持した場合、スライバーから水が滴ることはない。本明細書の文脈において、「水」が使用される場合、水、水ベースの溶液又は水含有溶液を含むことが意図される。
【0096】
「エッグシェルホワイト」は、一般に亜塩素酸塩及び/又は次亜塩素酸塩を用いた通常の漂白の結果として生成する、繊維、糸又は布地のオフホワイト色を記載するために使用される。
【0097】
「スノーホワイト」は、蛍光漂白された繊維、糸又は布地の色を記載するために使用される。
【0098】
「漂白」は、染色又はその他の加工に先立つ綿加工において使用されるステップである。使用される材料は、蛍光漂白が指示されない限り、典型的に次亜塩素酸塩又は亜塩素酸塩溶液である。
【0099】
「蛍光明色化(optical brightening)」又は「蛍光漂白(optically bleaching)」としても知られる「蛍光増白(optical whitening)」は、電磁スペクトルの紫外及び紫色領域(通常、340~370nm)の光を吸収し、青色領域(通常、420~470nm)の光を蛍光により再発光する化合物によりもたらされる。これら添加剤は、「増白(whitening)」効果を生じることにより、ファブリック及び紙の色の外観を向上させるために頻繁に使用される。これらの添加剤は、材料により反射される青色及び紫色光の不足を補うことにより、本来黄色/橙色の材料をそう見えないようにする。これは、蛍光物質の青色及び紫色発光によりもたらされる。
【0100】
繊維の上又は中の粒子の位置に関して使用される「包埋された(embedded)」、「含浸された(impregnated)」、「付着した(attached)」及びこれらの変形は、本明細書において互換的に使用され、別段の指示がない限り、同義語とみなされるべきである。これらは、付着の性質、化学的又は物理的性質と繊維上の粒子の正確な位置を記載又は区別することを意図されてはいない。
【0101】
「超音波処理(sonication)」、「キャビテーション」及び「音響キャビテーション」並びにこれら用語の派生語は、これらを区別しようとすることなく、同義語として使用される。
【0102】
「ソノトロードの上流」は、システム中の、ソノトロードのペーストディスペンサー方向側の位置をいう。
【0103】
「ソノトロードの下流」は、システム中の、ソノトロードの乾燥機及び最終保存容器方向側の位置をいう。
【0104】
「脱気剤」は、本明細書で論じたペーストが混合される場合、粒子を濡らし、且つ形成された粒子水スラリーを脱泡する化学薬剤である。
【0105】
「粒子(particulates)」及び「粒子(particles)」は本明細書において、それらを区別する意図なしに、互換的に使用される。
【0106】
「ナノ」は、本明細書において0.5ミクロン以下且つ0.1ミクロン以上のサイズに対する接頭語として使用される。
【0107】
「天然繊維」は、本明細書において非合成繊維を意味するために使用される。
【0108】
本明細書に論じられた本発明は、スライバー束内の天然繊維の平行の完全性を保護するシステム及び方法を提供する。典型的に、本明細書において論じられる天然繊維は、セルロース繊維であるが、本発明を限定することを意図するものではない。スライバー形態のセルロース繊維は、元々は実質的に互いに平行であるが、スライバーが液体中に導入されると、無秩序化し且つ分散する傾向がある。この無秩序化/分散現象は、セルローススライバーが液体媒体中で、高エネルギー音響キャビテーションに供される場合に、悪化する。セルローススライバーを液槽中で音響キャビテーションに供する代わりに、本明細書では湿気のあるペーストが使用される。いかなる特定の理論にも拘束されることなく、湿気のあるペーストは、スライバー繊維を分散及び無秩序化させることなく、音響波が伝達できるのに十分な水を含有することが可能である。
【0109】
ペーストは、キャビテーションに先立ってスライバー上に分配される。包埋されている粒子がペースト中に存在するので、粒子はスライバーのすぐ近くに位置する。結果として、ソノトロードが活性化される場合、粒子が水中に置かれる場合の他の超音波処理法よりも多数の粒子がスライバー繊維に包埋され得る。本発明において液体媒体は使用されず、且つスライバー繊維リボンは、比較的短時間に、且つ使用される超音波源から非常に短い距離で、有孔ソノトロードの孔を通過するので、先行技術で知られている他の音響キャビテーション法と比べて、より多くの粒子が包埋され、繊維の無秩序化及び分散はより少ない。本発明のシステムを用いた場合、先行技術のシステムを用いた場合よりも、高濃度の総粒子がスライバー繊維内に包埋される。
【0110】
本明細書において記載の方法は、先に開示された音響キャビテーションシステムとは異なる。さらに、布地を表面処理するときの他の超音波処理システム及び方法は、典型的には、繊維ではなく、ファブリック及び/又は糸を処理する。
【0111】
粒子は、包埋された場合、少なくとも1つの追加の所望の特性、例えば、抗微生物性、殺ダニ性、難燃性、殺有害生物性、殺虫性、及び美容特性(ただし、必ずしもこれらに限定されない)を繊維に付与する。処理された繊維から製造された糸、及び布地加工におけるより後期段階、例えばファブリックもまた、追加された所望の特性を示す。
【0112】
システム及び方法は、粒子材料による繊維の含浸完了後の第二のカーディングステップを必要とすることなく、繊維の処理及び繊維の糸への変換を可能にする。これは、セルロース繊維が使用される場合、特に重要である。当業者に既知であるように、スライバー繊維(特にセルローススライバー繊維)の軽量及びエアリーな/ふんわりした性質のために、これら繊維は、繊維の分散を起こさずに、水中に置くことはできない。したがって、スライバー繊維は、音響キャビテーションプロセスにおいて発生される高エネルギーの超音波への曝露に耐えられないことが、当業者には予想されるであろう。カーディング処理され、平行に配向されたスライバー繊維、特にセルロース繊維、例えばスライバーの形態にされた綿繊維は、超音波の使用があってもなくても、水に曝露された場合、その平行性を失う。加工の間中、配向された束におけるその配向性を維持することは、困難である。有孔ソノトロードと、A.スライバー繊維に付与される少なくともの1つの所望の特性を有する不溶性材料、及びB.最小量の水を伴う増粘剤を含むペーストとを用いた本システム及び方法は、これらの困難を克服する。
【0113】
要約すると、本発明は、以下の新たな特徴を提供する:
【0114】
繊維の音響キャビテーションの間、先行技術のような液槽は必要ではない。これは、スライバー繊維の分散及び無秩序化の可能性を低減し、それにより追加のカーディングステップの必要性をなくす。
【0115】
所望の特性を有する不溶性粒子材料及び増粘剤を少量の水中に含む湿気のあるペーストは、湿ったスライバー繊維リボンの上部及び下部に直接分配される。これは、所望の特性を有する材料が繊維中に包埋される前に移動しなければならない距離を低減する。このことは、より多量の材料が繊維に入ることを可能にする。
【0116】
有孔ソノトロードが使用され、ここで、含浸されている繊維のすぐ近くで音響波が発生する。繊維は、ソノトロードの孔を通過する。これは、エネルギー損失を低減し、且つより多くの粒子又はその他の包埋された材料が繊維に入ることを可能にする。粒子は、綿繊維の表皮の外表面、及び驚くべきことに繊維の内腔内にも、包埋される。これにより、処理された繊維(及び糸、ファブリック及びこれらから製造された物品)が、含浸材料によって付与された所望の特性の相当の減少を伴うことなく、より多くの工業的洗浄又は家庭での洗浄を受けることが可能になる。
【0117】
システムは、1つ以上のスライバー繊維リボンを拘束して、超音波処理される間、繊維の分散及び平行配向の喪失を防止するための、拘束デバイスを含む。
【0118】
処理された繊維は、キャビテーション後に小さな穿孔を示し、それにより、繊維内へ水が入る、より高いポロシティが可能になる。
【0119】
処理された繊維は、マイクロネア評点の増加を示す。
【0120】
処理された繊維は、引張強度の増加を示す。
【0121】
処理された繊維は、より容易な製造を提供する。当初の平行なスライバー繊維配向が、加工の間維持されるので、続いてカーディング機を使用してスライバー繊維配向を再構成する必要がない。
【0122】
少なくとも1つの孔を有する有孔ソノトロードの使用は、スライバー繊維の処理に関して、1時間当たりキロのオーダーでの製造能力の増加を可能にする。
【0123】
A.繊維を処理するシステム
ここで、本発明のシステム500の実施形態の概略図を示す図1を参照する。
【0124】
本明細書での記載は、綿スライバー繊維に関して論じるが、この記載は、その他の種類の天然スライバー繊維にも同様に当てはまることが理解されるべきである。これは、セルロース及び非セルロース天然繊維の両方を含む。
【0125】
システムは、包埋される材料として不溶性粒子に関して論じられる。
【0126】
通常の製造において、原料綿を清浄化し、混打綿処理し(opened)、次いでカード(梳綿)処理する。カーディングプロセスは、繊維をエアリーな/ふんわりしたスライバー状態にし、スライバー状態では、繊維は束を形成し、繊維は実質的に互いに平行である。しかし、カーディングは、繊維を短くして破壊もする。カーディングは繊維にとっては非常に過酷であるため、繊維のカーディングは、本明細書で記載される加工の間に、1回のみ行われることが望ましい。
【0127】
システム500には、セクション510、520、530、540、550、560、570、580及び590がある。セクション510には容器セット511がある。図1に示すように、スライバー繊維512(破線)は、容器セット511の少なくとも1つの容器から単一の動いている閉ループコンベア513に導入される。図1において、閉ループ全体は示されていない。セクション520は、湿潤槽522を有する。コンベア513は、スライバーを湿潤槽522に運び、濡れたスライバーが、セクション530の第一のセットの圧搾ローラー532をいったん通過すると停止する。
【0128】
図1において、容器セット511を構成する異なる容器から各々供給された5本のスライバーリボン512が示されている。10個超又は10個未満の容器が容器セット511を形成できることが理解されるべきである。システム500の他の実施形態において、2~30の任意の数のスライバー繊維リボン512が一度にキャビテーション機構(ソノトロード)552に入ることができる。使用可能な正確な数は、使用されるソノトロードの孔の数及びサイズ、並びにリボンの幅によって決定される。理論上は、任意の数のソノトロード及び同数のトランスデューサを図1に例示されたシステム500のセクション550に加えることができる。各ソノトロードは複数の孔を有するので、いくつかのスライバーリボンを一度に処理できることが容易に理解されるべきである。
【0129】
本明細書における論述において、単数形の「スライバー(sliver)」が時々使用されることがある。しかし、別段の明確な指示がない限り、単数形の使用は、複数のスライバー束又はスライバーリボンにも関連することが理解されよう。
【0130】
システム500において使用されるコンベアは、スライバー繊維リボンを運搬しながら、スライバーをそのひだの中に捉えるように折り畳むことができるシングルウエブを含むことができるが、本発明を限定することを意図するものではない。代替的に、ウエブは、スライバー繊維リボンを2つのウエブの間で適切な位置に保持するダブルウエブ、すなわち上部ウエブ及び下部ウエブであり得る。その他のタイプのコンベアも、スライバー繊維リボンを含むことができ、且つそれらの分散及び無秩序化を防止できるのであれば、使用し得る。コンベアは、種々の材料、例えば、ゴム、可撓性プラスチック又はステンレススチールメッシュで作られていてよい。
【0131】
図1において、スライバー繊維512、又は湿ったスライバー繊維リボン、又はペーストで被覆された湿ったスライバー繊維リボン、又はペーストで被覆されたリボン、又はその他の同様な記載としてシステム500に記載されているものは、一般に、コンベア513上に置かれており、コンベア513は、セクション510において始動し、且つスライバーを導いてセクション520の湿潤槽522を通過させる。極めて多数の他の部品が存在するため、スライバー(破線)は、コンベア513上に置かれる場合、個別には描かれていない。スライバーが物理的にコンベアとは別個であることは、そのように明示的に示されていなくでも、当業者には明白なはずである。記載されるように、コンベアシステムは、システム500のいくつかのポイントにおいて、必ずしも連続的ではなく、全体としてシステム500に幾分かのモジュール性(Modularity)を与える。
【0132】
ここで、セクション510及び520を参照する。容器セット511を含む容器(不図示)から出て来る、既にカーディング処理されたスライバー繊維は、コンベア513(典型的にはダブルウエブであるが、本発明はこれに限定されない)上を搬送され、コンベア513はスライバーを運搬してセクション520の湿潤槽522を通過させ、湿潤槽は繊維を濡らす。次いで、繊維は、槽522から引き出され、セクション530の圧搾ローラー532へと進められる。セクション510及び520に記載されるコンベア513は、これら2つのセクションにおいてループ(不図示)を形成し、ローラー532以降のセクション530には続かない。
【0133】
湿潤槽522には、水及び界面活性剤、例えば、Triton X、例えばMerck Ltd.、Rechovot、Israel若しくはAgan Chemical Corporation Ltd.、Ashdod、Israelより入手できるもの(ただし、本発明を限定することを意図するものではない)、又は脱気溶液、例えばBiotex DH300の名称で、B & E Chemicals, Ltd. of Rishon LeZion、Israelより販売されているものが充填される。界面活性剤及び/又は脱気剤は両方ともスライバーの良好な濡れを可能にする。本明細書において論じられた理由により、好ましい化学物質は脱気溶液である。他の脱気剤もまた使用してよいことに留意すべきである。
【0134】
ここでセクション530を参照する。スライバー繊維リボン(複数可)を圧搾ローラー532で圧搾した後、水の大部分が除去され、平行な綿スライバー繊維は平坦な湿ったスライバー繊維リボンを形成する。スライバーが圧搾ローラー532を通過すると、圧搾されたスライバーは変化する。スライバーは、スライバーリボン繊維が平行を保つことさえ困難な極めて弱いリボンから、コンベアによって搬送されることなくスライバー繊維の平行な配向を保持するのに十分な構造的完全性を有するリボンへと変換される。湿気のあるリボンは、圧搾ローラー534によって牽引されるときにその構造的完全性を維持するのに十分に強い。構造的完全性により、以下で論じるように、ローラー532の後は、コンベアは必要でないか又は示されていない。
【0135】
圧搾ローラー532は、モーターによって回転し、セクション520の槽522からスライバーを引き出すように構成される。ローラー532は、セクション530において、スライバーリボンから、余分な水を除去する。湿ったスライバー繊維リボンはここで、1セットのソフトローラー535を通過し、ソフトローラー535は、ペーストディスペンサー536からの化学物質を濃厚なペーストの形態でスライバーリボンの上部及び下部の両方へと送達する。スライバーは次いで、機械化された第二のセットの圧搾ローラー534へと進む。第二のセットの圧搾ローラー534は、濃厚なペーストをスライバー自体の中へと押し込み、スライバーの容易に見ることができる表面のみならずスライバーの内部表面にも確実にペーストを接触させることを目的とする。ペーストディスペンサー536は、いくつかの可能な形態のいずれを取ってもよいことが、当業者には理解されよう。単一の形態、構成又は構造は、具体的には示唆されていない。
【0136】
ディスペンサー536は、少量の水中の増粘剤及び水中の不溶性粒子を有するペースト538を含有する。ペースト538は、ディスペンサー536から、ゆっくりと且つ連続的に添加され、ローラー535を通過する湿ったスライバー繊維リボンを被覆する。粒子は、繊維に埋包されているか、あるいは繊維に付着している場合、予め選択された特性をスライバー繊維に付与する。使用される増粘剤は、例えば、ナノセルロース、フュームドシリカ、グアーガム、アルギン酸及びその塩、アガー、ローカストビーンガム、ペクチン、ゼラチン及びその他から選択され得るが、本発明を限定することを意図するものではない。
【0137】
増粘剤は以下のように作用する:
【0138】
1.スライバーが超音波に曝露されたときに、スライバー繊維が本質的にその平行な配向を保持し、分散しないように、スライバーを束化するのを助ける;及び
【0139】
2.粒子が、繊維に到達して繊維に又は繊維内に付着する前に、遠距離を移動してエネルギーを失う必要がないように、粒子が繊維に付着するのを助ける。
【0140】
増粘剤は、スライバー加工の完了時に、完全にスライバーから濯ぎ落とすことが可能なものでなければならない。増粘剤が繊維上に残留している場合、その後の加工の間に繊維の紡績を事実上妨げることになる。
【0141】
ペーストは、粘性が高く、予め選択された粒子の10~50w/w%水中懸濁液として調製される。懸濁液の好ましいパーセント重量比は、27~33%の粒子、20~36%の増粘剤(典型的にはナノセルロース)、及び31~53%の水である。選択された粒子の10~50w/w%水中懸濁液が使用されてよいが、20~40w/w%が好ましく、さらにより好ましいのは25~35w/w%であろう。最適な増粘剤はナノセルロースであり、それは、とりわけナノセルロースが、水ベース溶液の水のセルロースへの吸収速度を増加させるからである。他の増粘剤、例えばフュームドシリカを使用する場合、より多量の増粘剤が必要とされることがある。
【0142】
[実施例1]
好適なペーストを、ペーストの45重量%の水、ペーストの25重量%のナノセルロース、及びペーストの30重量%のCu2Oから作製した。成分を室温で混合及び使用した。
【0143】
[実施例2]
ペーストの粘度を、その試験結果がイスラエル保健省に認められているイスラエルの公認の研究所で測定した。ブルックフィールド回転粘度計を使用し、粘度の測定方法は、概して、以下に記載する通りである。
【0144】
以下のペーストをすぐ下の表1Aにあるように調製した:
【表1】
【0145】
粘度測定の結果を以下の表1Bに示す:
【表2】
【0146】
27%酸化銅試料の測定のために、以下の装置を使用した:ブルックフィールドDV-1+粘度計、ブルックフィールドRV-3スピンドル、50RPM。
【0147】
33%酸化銅試料に対して、以下の装置を使用した:ブルックフィールドDV-1+粘度計、ブルックフィールドRV-3スピンドル、100RPM。
【0148】
ここで、拘束デバイス542をソノトロード552の上流に有する、拘束セクション540を参照する。スライバーは、拘束デバイス542を含む拘束セクション540に入る。本実施形態において、拘束デバイス542は、複数の拘束リングを含む。拘束リングの直径は様々である。ソノトロード552から最も遠いリングの直径が最大であり、ソノトロード552に最も近いものの直径は次第に小さくなる。図2A及び2Bに示すように、拘束デバイス542のリングでソノトロード552に最も近いリングは、長円形状であってよく、その他のリングは実質的に円形であってよい。リングは湿ったスライバーリボンを拘束して、より密な(thicker)スライバーリボンを提供する。いくつかの実施形態において、例えば、ダブルウエブコンベアが使用される場合、拘束デバイス(及び以下に記載する解放デバイス)は必要でないことがある。
【0149】
本明細書に記載されたもの以外の、その他の拘束又は折り畳みデバイスもまた利用することができることは、当業者には明白なはずである。
【0150】
ここでセクション550を参照する。拘束され密になったスライバーリボンは、有孔ソノトロード552の孔(不図示)に入り、その中で超音波に曝露される。
【0151】
ここで参照する図12A及び12Bは、本明細書で論じたようにスライバー繊維に含浸させるのに適するよう構成された有孔ソノトロード及びトランスデューサを含む音響キャビテーションシステムの2つの斜視図を示す。図12Aは、超音波を発生するトランスデューサ552Aとの音波的に通じているソノトロードを示す。ソノトロード552は、スライバー繊維リボンが牽引されて通過して超音波処理される複数の孔552Bを示す。好適なソノトロード及びトランスデューサは、Hielscher Ultrasound Technology、Teltow、Germanyから入手し得る。超音波装置のその他の供給源も利用可能である。図12Bの方向xは、ソノトロードの孔を通過するスライバー繊維リボンの移動方向を示す。
【0152】
ここで、解放デバイス562を有する図1のセクション560を参照する。有孔ソノトロード552から出た後、拘束されたより密なスライバーリボンは、解放デバイス562により解放され、最初の解放された状態に戻る。
【0153】
本実施形態において、解放デバイス562は、複数の解放リングからなってよい。解放リングは、ソノトロードの下流側でソノトロードから遠ざかると増加する直径に従った順序で配置される。ソノトロード552に最も近いリングが最小の直径を有し、ソノトロード552から最も遠いリングが最大の直径を有する。スライバーリボンは、解放デバイスにより解放されると、スライバーリボンはその最初の解放された状態に戻る。
【0154】
その他のタイプの解放デバイスもまたシステム500と共に使用してよいことが、当業者には容易に明らかになるはずである。
【0155】
いくつかの実施形態において、解放デバイスは不要であってよく、拘束されたリボンは、拘束されていない場合、それ自体を解放する。使用者又はシステム500の介入は不要である。
【0156】
スライバーが解放された後、スライバーは、システムのセクション570に入る前に、少なくとももう1対の圧搾ローラー(不図示)を通過して、残留水の大部分を除去される。解放されたスライバーは次いで、ウエブ573上に置かれ、清浄化するために水噴霧によって再湿潤される。
【0157】
ここで、セクション570を参照する。スライバーリボンは次いで、セクション570のコンベア571に搬送され、ここで噴霧ビン574からの水の噴霧573に曝露される。1セットの機械的に駆動された圧搾ローラー572が、スライバーをその上又は中に有するコンベア571を運搬し、第二の洗浄のために、噴霧ビン575からのもう1つの水の噴霧577へ送る。セクション570における2回の洗浄の後、繊維上の増粘剤の本質的に全てが除去される。
【0158】
リボンから増粘剤を全て除去するためにさらなる洗浄が必要な場合、さらなる噴霧ビンを加えてよいことが理解されるべきである。いかなる残留増粘剤も、繊維及び処理された繊維から製造された糸のさらなる加工を妨げる可能性がある。
【0159】
ここで、セクション580を参照する。コンベア571は、スライバー繊維をセクション580へと搬送する。そこで繊維は、繊維を乾燥させる一連の加熱されたローラー582を通過する。その他の乾燥部品、例えば熱風オーブンがシステム500において使用されてよい。
【0160】
ここで、処理されたスライバー繊維のパッキングが行われるセクション590を参照する。コンベア571は、このセクションへと続くが、そのループ(不図示)に戻る。繊維は、次いで、圧搾ローラー(不図示)によって牽引され、その後、保存容器(不図示)内に置かれる。
【0161】
槽、圧搾ローラー、加熱ローラー、コンベア及び洗浄装置の数は、システム500において、様々であってよいことは容易に理解されるべきである。この可変性は、使用される化学物質、ペースト及び加工変数に依存する。可変性はまた、水含有量を最小限にするプロセス及び/又はコンベアが存在しない場合にスライバーリボンをローラーで牽引するプロセスの種々の段階での必要性にも依存する。
【0162】
システム500において処理されたスライバー繊維の平行な配向の、処理前の繊維の平行な配向に対する変化はほとんどない。したがって、このシステムにおいて製造された、乾燥された処理後のスライバー繊維リボンは、無秩序化したスライバー繊維を当初の平行状態へと戻すためにカーディング機を通過させる必要がない。処理された繊維は、第二のカーディングステップを必要とすることなく、糸製造段階へと進むことができる。上記のように、実質的に平行なスライバー繊維のみが、続いての加工に必要とされるほど十分に、加工可能で、伸縮可能で、且つ紡績可能である。
【0163】
システム500への2つの追加の槽である、処理されたスライバー繊維リボンを漂白するための1つの槽及び蛍光増白をするための1つの槽を加えることができることは、図1には示されていない。これらの操作は以下でさらに詳細に論じられる。漂白及び蛍光増白操作が企図される場合、追加の洗浄及び乾燥ステーションを加えてよい。
【0164】
ここで図2A及び2Bを参照する。上記のように図1のセクション530において製造されたペーストで被覆されたスライバーリボンは、次いで図1のセクション540に示される例示的な拘束デバイス542の中を通される。図2A~2Bに示すように、拘束デバイスは、複数の拘束リング(72、74、76、78)を含んでよい。これらのリングは、ソノトロードの方へ進むと、より大きな直径のリングからより小さな直径のリングへと配置される。図2Bの矢印は、拘束リング中のスライバーの移動方向を示す。
【0165】
システムのその他の実施形態において、フレキシブルコンベアをその長軸に沿って半分に折り畳むことが可能であることが容易に理解され得る。ペーストで被覆されたスライバー(複数可)を折り畳まれたコンベア上に配置することができ、コンベアは、ペーストで被覆されたスライバーリボンを包み、スライバー繊維が有孔ソノトロード552の孔に運ばれるまで、確実にスライバー繊維を互いに平行なままにする。
【0166】
さらに他のタイプの拘束及び折り畳みデバイスもまた使用されてよいこと、及び拘束デバイスは、上で論じた拘束リング以外の部品からなってもよいことは、当業者には明白なはずである。
【0167】
ここで参照する図2A及び2Bは、システム500の拘束デバイス542として使用される一連の拘束リング(72、74、76、及び78)を示す。図2Aにおいては、各拘束リングを、正面から見ている。各拘束リングは、スライバーが通される空洞538を取り囲むリング表面51を含む。
【0168】
ソノトロード552の最も近くに位置する最後の拘束リング79は、それ以前のリングが全て実質的に円形であるのに対して、長円形状であってよいことに留意すべきである(図2Aを参照)。結果として、部品79から出て来るペーストで被覆されたスライバー繊維リボン572は、長円形状である。これは、拘束されたスライバーリボンがより容易にソノトロードの孔を通過することを可能にする。
【0169】
拘束されたスライバーリボンは、次いで、他の布地含浸の文書において記載されたソノトロードとは構成が異なるソノトロード552の中に直接搬送される。本発明において、有孔ソノトロード(上でも論じた図12A~12Bを参照)が使用され、スライバー繊維リボンは水を通って移動することはない。過去の布地キャビテーション文書では、水中で作動する平坦な(正方形若しくは長方形)又は半円形のソノトロードが使用されている。
【0170】
先行技術の布地/音響キャビテーションシステムとは対照的に、本発明において繊維をキャビテーションするために水槽は使用されないことに留意すべきである。以下の理論的説明により拘束されることなく、a)約1から約1.5bar(約100kPaから150kPa)の圧力をかける圧搾ローラーを通過した後、湿った綿スライバー繊維中に保持される少量の水、及びb)前述のペースト中の少量の水が、粒子のキャビテーションを可能にする超音波伝達を促進するのに十分であることが、驚くべきことに見出された。
【0171】
図2Aのリング79から出て来る拘束された長円形状のスライバーリボンは、コンベアを使用することなく、有孔ソノトロード552を通って移動する。使用することができるスライバー繊維の最大量は、孔を「ふさぐ(plug)」可能性のある量である。孔は、典型的に、直径3mmから30mmであり、これは一般的に4から15本のスライバーリボンに適する。典型的な有孔ソノトロードは20mmから100mm、より典型的に20から50mmの範囲の孔長を有する1から8個のいずれかの数の孔を有することができる。
【0172】
他の先行技術文書において使用される技術とは対照的に、スライバーが有孔ソノトロードの超音波に曝露される段階においてコンベアは存在しない。実際、図1のシステム500において、ローラー532と洗浄ビン574との間にコンベアはない。その他の実施形態において、当業者はこの間隙にコンベアがあり得るシステムを設計することがある。
【0173】
従来、スライバーの超音波への曝露時間は、1m当たり14秒までであったが、本発明の構成における曝露時間は典型的に、1m当たり0.5から2秒の間である。曝露時間は、1m当たり2秒以下であるべきで、1m当たり1秒の曝露時間が最も良好な結果をもたらすことが見出された。曝露時間が長くなると、繊維の表面の上又は中に部分的にしか包埋/付着していなかった粒子が超音波により排出されるリスクがある。
【0174】
スライバー繊維は、以前の音響キャビテーションの適用よりも、ソノトロードのかなり近くを通過するので、エネルギー損失が最小化される。使用される水が少量であり、且つ拘束されたスライバーがソノトロードの孔を通過する時間が短いために、リボン中の配向された繊維が超音波により乱されることはほとんどない。
【0175】
2つ以上の孔を有するソノトロードに加え、本明細書において使用されるソノトロード552が、スライバーリボンの長さ(図12Bのx軸)に対して垂直に(図12Bのy軸)配置される。リボンは、x軸の方向に前進する。孔の長さは短く、それにより超音波処理は各孔に対して単一の領域で起こり、リボン上の複数の領域では起こらない。後者は、他のソノトロード構成を使用する場合の状況ではなく、それは、他のソノトロード構成が本質的にリボンの長さに対して平行に配置されているためである。
【0176】
音響キャビテーションによってリボン構成のスライバー繊維の外側及び内側に包埋される粒子の量は、スライバー繊維の粒子含浸における以前の試みよりも、劇的に増加することに留意すべきである。これは、ここで参照する図10及び11において容易に見られる。とりわけ、粒子含浸のこの劇的な増加により、抗微生物性粒子が使用された場合に、細菌試験において、より大きなキルパーセンテージ(kill percentage)が可能になる。
【0177】
本明細書において上に記載のシステム500によって処理されているスライバーに、抗微生物性粒子プラス水が導入された場合、処理されたスライバー繊維から作られたファブリックは、120秒間に大腸菌(E-coli)の対数減少値4を示した。米国特許第9,995,002号に記載のシステムを用いると、同じ対数減少値4を得るのに2時間かかった。微生物減少の試験は、GVP Laboratories, Ltd. of Jerusalemにより、AATCC(米国繊維化学技術・染色技術協会:American Association of Textile Chemists and Colorers)試験法100-2017を用いて行った。図10において図9よりもスペックリング(斑)の度合いが大きいことにより示されるように、繊維が各繊維の外側を覆うより多くの粒子を示すことが確認されただけでなく、図10及び11に示されるように、多数の粒子が繊維の内腔の内側に包埋されることもわかった。図10~11の写真に関するさらなる詳細についての以下の論述を参照されたい。
【0178】
赤~茶色がかった酸化銅粒子を含むスペックルされた(斑入りの)綿繊維を、標準的布地漂白技術を用いて漂白し、次いで従来の技術を用いて蛍光増白をした場合、酸化銅の暗色が肉眼では見えず、処理された繊維は白色の外観を有することもわかった。
【0179】
包埋された酸化銅粒子を含む、当初はベージュ/茶色の繊維、及び/又は糸及びファブリックの増白は、2ステップのプロセスであることは、当業者には既知であろう。第一の漂白段階は一般に、約10%の次亜塩素酸ナトリウム又は亜塩素酸ナトリウム水溶液の槽を必要とする。繊維は、90℃で20分間この槽に浸漬される。この第一の漂白ステップに使用される剤は、Rishon LeZion、IsraelにあるB&E Chemicals Ltd.から入手可能なBrightener Nextのような製品である。一般に、このような槽は、繊維の外表面に機械的に保持されている固定されていない銅粒子を除去することになる。漂白剤を繊維から濯ぎ落とした後、繊維はエッグシェルホワイト色に見える。
【0180】
スノーホワイト色を得るために、次いでファブリックに増白段階を行い、次いで1.5%の蛍光増白剤及び98.5%の水からなる増白槽に90℃で15分間浸漬する。Rishon LeZion、IsraelにあるB&E Chemicals Ltd.から入手可能なBioBlanc BEのような蛍光増白剤を使用することができる。これらの漂白及び増白プロセスの後に得られる製品は、外観が標準的な紙とよく似た光学的白色(optically white)である。
【0181】
後に得られる繊維は、スノーホワイトの外観であるが、図11に見られるように、実際は、表面下及び繊維の内腔内に多量の酸化銅を含む。図11において、繊維は漂白及び蛍光増白されている。試験した漂白及び増白された酸化銅の5g試料4つの各々には500ppm以上の酸化銅が含まれることがわかった。一般に、有効な殺菌剤であるためには、50ppm以上の酸化銅が必要である。
【0182】
通常の漂白及び蛍光増白後の繊維の外観であるスノーホワイト色は、外部のスペックルされた(点在する)酸化銅粒子が除去されたことを示す。除去された酸化銅粒子は、次亜塩素酸ナトリウム溶液槽及び蛍光増白槽の両方の底部に集まった。繊維の外表面上の酸化銅の欠如は、光学顕微鏡を用いて、又はより明瞭には、図11にあるようなSEM写真によって、視覚的に観察することができる。しかし、実質的に全ての表面粒子を除去する蛍光増白の後でさえも、繊維は依然として高レベルの抗微生物活性を有していたことが、驚くべきことに認められた。(以下を参照されたい。)明らかに、以下に示すように、酸化銅は、綿の表皮内及び内腔内に依然として存在していた。漂白及び蛍光増白の例として、以下の実施例3及び実施例4を参照されたい。
【0183】
繊維の表皮内、すなわち内腔内に見られる酸化銅は、水に曝露された場合、依然として活性であり、その抗微生物有効性のレベルは損なわれていなかった。加えて、使用したAATCC試験法100-2012と併せて以下に論じるように、100回の家庭での洗浄又は50回の工業的洗浄の後でさえも、これらのファブリックは依然としてファブリック上の細菌の99%を殺すことが見出された。試験は、Manufacturing Solutions Center、Conover NC、USAにおいて行われ、漂白、蛍光増白、染色及び100回の家庭での洗浄又は50回の工業的洗浄を2003 AATCC Standard Reference Liquid Detergent WOB(標準参照液体洗剤WBO)に従って行った後のファブリックが、AATCC試験法100-2012で測定されるように、細菌をファブリックの表面に置くと、依然として99%の殺菌率をもたらすことを示した。
【0184】
上で論じた図11は、綿繊維がSEMのプローブによって焼き開かれているSEM写真である。繊維の内側の酸化銅の存在が見られ、蛍光X線分析(XRF)データによっても証明される。後者は、繊維の内側の酸化銅の量を測定する。したがって、粒子を含有するペーストは繊維リボンの表面上だけに置かれたにもかかわらず、繊維がソノトロードの孔から出て来た後に繊維を検査すると、粒子が少なくとも部分的に繊維の内腔内に包埋されていたことがわかった。
【0185】
以下は、システム500を用いたスライバー繊維の処理の例である。
【0186】
[実施例3]
綿スライバー繊維を、図1に示したもののようなシステム上に置いた。スライバーを0.5から1.5m/秒の速度で、搬送した。
【0187】
繊維を、1~3w/w%の脱気剤DH300と脱イオン水の入った40℃に保たれた湿潤槽を通して搬送した。スライバー繊維は、湿潤槽を30秒間から1分間通過した。滞留時間は、最も迅速なステップであるその時のキャビテーション時間に合わせなければならないことは、当業者には既知であろう。
【0188】
余分な水を絞り出した後、湿気のあるスライバー繊維をペーストディスペンサーに搬送し、そこでスライバーリボンの両側面をペーストで被覆した。ペーストは、酸化銅/水/増粘剤を、各々22~27%/45~55%/18~25%の重量比で含んでいた。使用した増粘剤は、実施例1と同様に調製したナノセルロースであった。ペーストを、湿ったスライバーリボンの上に1分間分配した。時間の長さは、最も迅速なステップであるキャビテーション時間に合わせるために減少させることができることが観察されている。
【0189】
ペーストで被覆されたスライバーリボンを、有孔ソノトロードに前進させて、ソノトロードの孔を通過させ、そこで被覆されたスライバーリボンを1秒間超音波に供した。ソノトロードを700~750W及び20kHzで操作した。
【0190】
スライバーリボンを、洗浄システムに運び、そこで熱水(60℃)シャワーを当てた。次いでスライバーリボンを、第一の槽に1~2分間供したが、時間は界面活性剤の使用により低減可能であった。槽は70℃に維持され、Polywash 172 soap(15g/L)/熱水/DH300(1g/L)の溶液が入っていた。次いでスライバーを、過酸化水素(8~15g/L)/熱水/DH300(1g/L)の入った90℃に保たれた槽2に移した。次いでスライバーを、Polywash 172 soap(5g/L)/熱水/DH300(1g/L)の入った70℃に保持された槽3に移した。スライバーの滞留時間は槽2及び槽3の各々において、1~2分間であったが、上記のように、時間を低減することができる。3つの槽全てにおいて、上部及び下部ローラーがあった。洗浄プロセスを完了するために、水温を50℃に保ちながら、スライバーに第二のシャワーをあてた。
【0191】
スライバーリボンをオーブン中で、10~300℃で5~15分間乾燥した。
【0192】
これに続いて、スライバーリボンを50℃で10分間漂白した。漂白溶液は、Bioblanc(5g/L),過酸化水素(8g/L)、水中2%濃度のBiotex DH 300を含んでいた。1mLのブライトナーを上記の漂白溶液に添加し、90~95℃に20分間加熱した。次いで繊維を石けん及び水で洗浄し、最終の水濯ぎを行った。
【0193】
次いで蛍光漂白を、脱イオン水に溶解した1.5g/Lの次亜硫酸ナトリウムを用いて行った。繊維を溶液に加え、60℃で15分間加熱した。次いで繊維を石けん及び水で洗浄し、続いて、室温に保たれた水の中で濯いだ。次いで繊維をオーブン中で、100~130℃で5~15分間乾燥した。
【0194】
[実施例4]
本明細書において論じられたシステムによって(試料の作製方法については実施例3を参照のこと)、及び同じ発明者による米国特許第9,995,002号に記載の旧システムによって作製した、平均4つの含浸繊維試料に対して、以下のXRF分析を行った。第一セットの試験を、洗浄、漂白及び蛍光増白の前に実施した。第二セットの試験は、上記の第一セットの試験と全く同様に、しかし繊維の洗浄、漂白及び蛍光増白後に、実施した。後者の手順は、含浸繊維が作製されたシステムとは無関係に、繊維の外側表面、すなわち表皮から、酸化銅のかなりの部分を除去したようであった。XRF及びICPデータについては以下を参照されたい。
【0195】
試験の結果を、Migdal HaEmek、IsraelのXenomatics Ltd.製の蛍光X線分析(XRF)装置で測定し、結果の確認を、Rechovot、IsraelのAminolabs, Ltd.において、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP)を用いて行った。各試験は、3回繰り返して行った。
【0196】
2つのシステムであるXRF及びICPは、所与の量の綿繊維(この場合は5gの超音波処理されたスライバー繊維)中の種々の化合物の量を測定することができる、2つの全く異なる方法である。ICPは、質量分析法の一種であり、金属及びいくつかの非金属を、非干渉で低バックグラウンドの同位体について1015分の1という低濃度まで検出することができる。
【0197】
以下に示すXRFの結果は、上記のように試験した4つの試料各々の被検処理繊維5gについて、粒子の平均重量を百万分率で示す。
【0198】
従来の水キャビテーションシステム(米国特許第9,995,002号):2,225,000ppm(=mg/kg)
【0199】
本明細書で論じる新たな有孔キャビテーションシステム:7,682,000ppm(=mg/kg)
【0200】
漂白され、次いで蛍光増白をされた上記の繊維について、5gの被検処理繊維の、百万分率(ppm)での粒子の平均重量は以下の通りであった。
【0201】
従来の水キャビテーションシステム(米国特許第9,995,002号):1550ppm(=mg/kg)
【0202】
(本明細書で論じる)新たな有孔キャビテーションシステム:5200ppm(=mg/kg)
【0203】
結果より、従来の水-スラリーシステムを用いて繊維中に入った酸化銅に比べて、ペースト中の酸化銅を用いる本明細書に記載のシステムにより、非常により多くの量の酸化銅が繊維中に入ったと結論付けることができる。
【0204】
B.スライバー繊維を処理する方法
少なくとも1種の不溶性粒子材料でスライバー繊維を表面処理する本発明の方法は、以下のステップを含む:
【0205】
1.少なくとも1種の予め決定された部分的に不溶性の粒子材料、及び増粘剤を水中に有するペーストを調製するステップ。水の量は、予め決定した所望の粘度をペーストが得るのに十分であるべきである。
【0206】
2.スライバー繊維リボン又は互いに平行な複数のスライバー繊維リボンを準備しながら、それら全てを、動いているダブルウエブコンベアシステムの2つのウエブの間に置くステップ。ウエブはスライバーリボン(複数可)を適切な位置に保持する。スライバーリボン(複数可)が別の方法又は装置により拘束される場合、ダブルウエブの使用は必須ではない。別のタイプのコンベアを使用し得る。
【0207】
3.上に記載した0.5~3%DH300/水溶液を用いて湿潤槽溶液を準備するステップ。最も典型的には、3%DH300/水溶液が使用されるが、これは、より希釈された脱気剤/水溶液が使用される場合、本発明を限定することを意図するものではない。
【0208】
4.ダブルウエブにより適切な位置に保持されている少なくとも1つのスライバー繊維リボンを、スライバーリボンを濡らすのに十分なほど長い時間、湿潤槽を通過させるステップ。これは、典型的には約1秒間であるが、本発明を限定することを意図するものではない。
【0209】
5.スライバー繊維が濡れた後、スライバーを、2つのゴム製圧搾ローラーを通過させて、約1~2bar(約100~200kPa)の圧力で圧搾し、それにより、脱気溶液の入った湿潤槽中で取り込まれた水の大部分を除去するステップ。
【0210】
6.ペースト剤を少なくとも1つのスライバー繊維リボンの両側面に分配するダブルローラー化学物質分配システムに、ペーストを供給するステップ。
【0211】
7.ダブルウエブを取り除くステップ。次いで、圧搾された少なくとも1つのスライバー繊維リボンを、硬い表面上で進ませる。少なくとも1つのスライバー繊維リボンを、有孔ソノトロードの下流側の1セットの圧搾ローラーの方向に牽引する。
【0212】
8.ペーストで被覆されたスライバーを、硬質ゴムでは作られていない柔らかい別の1セットの圧搾ローラーを通して圧搾するステップ。これらのローラーは、ペーストの剤をリボンの個別の繊維の中及び間に押し込むことを意図されている。余分なペーストは、スライバー繊維リボンから押し出される。
【0213】
9.任意選択で、スライバーリボンを、拘束又は折り畳みデバイスを通過させ、そこでスライバーリボンを拘束するか又は折り畳むステップ。
【0214】
10.リボンがソノトロードの孔の中にある間にリボンを超音波に曝露させるために、ソノトロードの孔にリボンが入るように牽引するステップ。
【0215】
11.スライバーがソノトロードから出た後、任意選択で、ソノトロードの下流側でスライバーリボンを分離及び解放するステップ。拘束されたスライバーリボンは、拘束されなければ、多くの場合それ自体を解放することができるため、このステップは任意選択である。
【0216】
12.スライバーリボンをコンベアに運び、コンベアはキャビテーションされたばかりのスライバー繊維を清浄化ステーションに運び、そこでスライバー繊維は、石けん及び水中で噴霧されるか若しくは槽に入れられるかのいずれか又は両方を受け、いかなる残留の増粘剤及び固定されていない粒子も除去されるステップ。
【0217】
13.繊維を乾燥するステップ。
【0218】
14.乾燥した繊維を保存用又は輸送用の容器に入れるステップ。
【0219】
漂白及び/又は増白が所望されるか又は必要とされる場合、漂白及び/又は増白は一般に、ステップ13の後に、本明細書において上に記載された手順及び手法を用いて行われる。
【0220】
乾燥及びパッキング後に、スライバー繊維リボンは、後続の従来の糸形成プロセス及び機械のいずれにも変更、調整又は追加を必要とすることなく、直接、糸製造に進む。
【0221】
上に論じた方法が以下の問題に対する解決策を提供することは明白なはずである:
【0222】
超音波処理は液槽中では行われないので、スライバー繊維の分散及び無秩序化は、液槽を使用する場合よりも少ない。
【0223】
スライバー繊維は、比較的濃厚なペーストで被覆されるので、スライバー繊維の分散及び無秩序化は、さらに制限される。
【0224】
スライバーリボンは、任意選択で拘束されるので、液体中で又はキャビテーションの間に起こり得る繊維の分散及び無秩序化はさらに低減する。
【0225】
スライバーを被覆するためにペーストが使用されるので、粒子-水スラリーが使用された場合よりも多量の粒子が、スライバー繊維中に包埋され得る。以前に使用された水スラリー中の粒子は、ペーストが使用された場合に比べ、より希釈されていると考えられ得る。結果として、ペーストを介して繊維中に導入された粒子の濃度はより高く、加工された繊維の活性が拡大する。例えば、処理された繊維から製造された糸及びファブリックは、100回の家庭での洗浄又は50回の工業的洗浄にも耐えることが見出されている。
【0226】
スライバーリボンは、有孔ソノトロードの孔を通過するので、繊維は他のより一般的なソノトロード構成におけるよりもエネルギー源に近い。他のより一般的なソノトロード構成において、波は凝縮相(液体)を通ってより長距離を伝わり、本発明よりも大きなエネルギー損失につながる。加えて、キャビテーションプロセスにおける超音波へのより短い曝露時間が達成されることになり、使用されるエネルギーがさらに低減する。エネルギーの使用及び損失がより少ない場合、包埋プロセスの効率が向上する。結果として、より多くの粒子を包埋することができ、粒子が繊維の内腔にまで付着することができる。
【0227】
本明細書において上に記載した処理プロセスの間、スライバー繊維は最小限にしか分散又は無秩序化されないので、繊維を第二のカーディングプロセスにさらに通過させて繊維を再配向させる必要がない。この結果、スライバー繊維の損傷がより少なくなるとともに、使用されるスライバーの量及びコストが低減する。
【0228】
粒子を繊維の内腔中に含浸させることができるため、粒子の有効性を減少させることなく、繊維の漂白及び蛍光増白を用いることが可能である。
【0229】
上記を考慮すると、スライバー繊維、特にセルロース繊維(しかし必ずしもこれに限定されない)は、本明細書において論じる新たな方法及びシステムを用いた表面処理にとって扱い易い基質となっている。糸又はファブリックの加工段階においてのみ処理を行う必要性はもはやない。
【0230】
C.処理された繊維
本出願は、少なくとも1つの予め選択された所望の特性を繊維に付与する不溶性粒子を繊維に含浸することを教示する。含浸された繊維、特にセルロース繊維は、繊維に付与された少なくとも1つの予め選択された特性を、長期間にわたり保持しなければならない。具体的には、本方法及びシステムの目標の1つは、100回の家庭での洗浄又は50回の工業的洗浄後に、1つ以上の付与された特性を保持する繊維を提供することである。
【0231】
克服する必要のあるさらなる問題は、繊維の強度、すなわち引張強度を、処理及び後続の洗浄後に確実に保持することである。一般に、引張強度は、繊維が何らかの種類の処理を受けた場合、低下する。繊維、糸、又は布地を洗浄する比較的無害な処理でさえも、繊維の引張強度の低下をもたらす。
【0232】
本明細書において記載のペースト処理された繊維は、従前の水処理された繊維で観察された量の3倍超の量の包埋された(又は付着した)粒子を含む。(上記セクションAの実施例4を参照のこと)。これは、次のことに起因する:1.従前に使用された平坦な(正方形若しくは長方形の)プレート及び半円形のソノトロードと比べて、繊維からソノトロードまでの距離が大きく低減された有孔ソノトロードの使用。したがって、ソノトロードのエネルギーのより多くが、より多くの粒子を繊維内のより深くに包埋させるために利用可能である。繊維は、ソノトロードの少なくとも1つの孔を通過し、平坦なプレート(正方形若しくは長方形)又は半円形のソノトロードの下又は周辺を通過することはない。後者の繊維の経路は、より減衰したより低エネルギーの超音波を繊維に与えることになる;並びに2.粒子を含む湿気のあるペーストを選択して、粒子-水スラリーをやめたこと。ペーストは、スライバー繊維リボンの上部及び下部に直接分配される。理論に拘束されるものではないが、ペーストの湿り気は、超音波をソノトロードから繊維へと伝達するのに、及び不溶性粒子を繊維中に包埋させるのに十分な液体を与えると考えられる。包埋される粒子及び増粘剤を少量の水中に含むペーストは、湿気のある、しかし湿潤ではないペーストをもたらす。湿った(湿気のある)媒体は、驚くべきことに、ペースト中の粒子が繊維中に包埋され得るように超音波を伝達するのに有効である。
【0233】
スライバー繊維が、有孔ソノトロードによりキャビテーション/超音波処理された場合、及び繊維がそれ以前に又は同時に3%DH300脱気剤/水溶液に曝露された場合、このような繊維から作られた糸は、脱気溶液に供されなかった繊維及び糸と比べると、引張強度の増加を示すことも見出された。このような強度増加繊維から作られた物品及び糸もまた、強度の増加を示す。処理された繊維のこの強度の増加は、予想されたものに反する結果である。
【0234】
本発明では、繊維をキャビテーションするために液槽が使用されないため、高エネルギーの超音波の存在下であっても、処理されたスライバー繊維は分散せず、且つ当初の平行な配向を失わないことが理解されるべきである。
【0235】
脱気剤/水溶液(ここではDH300)のみを使用した場合、スライバー綿繊維においてさらに驚くべき効果が見られた。水に対し0.5w/w%ほどの少量の脱気溶液を繊維の湿潤槽に添加した場合、脱気溶液はキャビテーションの間、小さな穴(本明細書において「細孔(pore)」と表すことがある)の形成を引き起こすことが見出された。本明細書において論じられる図6及び7及び8を参照されたい。これは、繊維が1.5%DH300/水溶液からなる脱気溶液槽を通過し、キャビテーションされることなく浸漬のみされる場合には、当てはまらない。したがって、脱気溶液のみを含む槽中での繊維のキャビテーションは、繊維の構造を変化させて穴を導入する。
【0236】
理論により制限するものではないが、これらの細孔はセルロースを軟化させると考えられる。これにより、ソノトロードによって与えられるエネルギーをより効率よく使用でき、それにより、粒子を、繊維の表皮内へ又は表皮を通過させ、繊維の内腔に向かって又は内腔中へと至らせる。この効果は、以下に論じる図7及び8において見られる。キャビテーションの処理は繊維レベルで起こるため、処理された綿短繊維(staple cotton fiber)の任意の使用は、糸へ、次いで、ニット地、織られた又は織られていない製品へと変換することができ、全てが処理された繊維の所望の予め選択された特性を有する。
【0237】
酸化銅又は他の不溶性粒子が包埋された繊維を組み込んだ糸から作ることができる物品の例としては以下が挙げられる:織物かニットかにかかわらず、含浸繊維又は繊維のうち1つが含浸されている繊維のブレンドを使用した着用のための衣類;含浸された短繊維(staple fiber)から作られた不織材料で作られた製品;短繊維綿又は紙を使用した医療用製品;消費者向け家庭用布地、例えば、タオル及びシーツ;並びに調理、台所、又は食品関連産業において使用される布地。これらの繊維/糸の、液体フィルター、マスク、不織使い捨て衣服、及び化粧用クリーニングパッドにおける応用もある。上で論じたように処理された繊維から作ることができる上記の物品の例は、網羅的で本発明を限定するとはみなされないことが理解されるべきである。
【0238】
上記論述に関連する非常に有用な情報は、以下に論じる処理された繊維のSEM写真から推定することができる。処理された繊維の最も重要な特徴は、繊維の内腔中に粒子が存在することである。
【0239】
一般的情報として図3を示す。図3は、単一の綿繊維(F)の構造の概略図である。図において、表皮(C)及び内腔(L)が明確に示される。
【0240】
図4は、脱気剤、例えばDH300の適用なしの綿繊維のSEM写真である。DH300は、エチレンオキシド付加物と脱泡成分、例えばポリシロキサンとの組み合わせからなる。典型的に、DH300は、3%水溶液として適用されるが、場合によっては0.5%ほどの少量のDH300が使用されてよい。さらに、示された繊維は、本明細書において論じた粒子による処理を受けておらず、且つキャビテーションにおいて使用されるソノトロードにより発生された超音波に曝露されていない。
【0241】
図5は、キャビテーションされているが、繊維への脱気剤DH300/水溶液の使用がない綿繊維のSEM写真である。繊維は有孔ソノトロードからの超音波に1~2秒間曝露された。図4図5の間には違いがないことを観察することができる。
【0242】
図6は、DH300脱気剤の1.5%水溶液で10分間処理されているが、キャビテーションはされていない綿繊維のSEM写真である。
【0243】
図7及び図8は、DH300脱気剤の1.5%水溶液中で酸化銅粒子と共に1秒間未満キャビテーションされた綿繊維のSEM写真である。図7における繊維中の大きな穴及び図8における小さな穴に留意されたい。図7は、綿繊維の長さに沿った眺めを示し、図8は繊維の長軸を本質的に横切る方向に切断されている処理された綿繊維を示す。「細孔」のサイズは、結果的に生じた細孔地点での表皮の弱さに依存すると考えられる。
【0244】
図9は界面活性剤で処理された後、酸化銅粒子と共にキャビテーションされた繊維のSEM写真である。繊維上に白色の点として表れている繊維表面の銅の量に留意されたい。綿の外側のひだの中に酸化銅粒子が存在するが、綿の内腔中には存在しない。
【0245】
図10は、脱泡剤DH300で処理され、次いで酸化銅と共にキャビテーションされた繊維のSEM写真である。繊維の外側表面上の銅粒子の量が図9よりも大きく増加し、一部は内腔内にさえも位置することに留意されたい。
【0246】
図11は、DH300/水溶液で処理され、次いで酸化銅と共にキャビテーションされた繊維のSEM写真である。処理された繊維は、本明細書において上に論じたように、次いで漂白され、次いで蛍光増白された。繊維を次いでSEMのプローブにより焼き開いた。漂白及び蛍光増白プロセスの後でさえも、非常に多量の酸化銅が繊維内に依然として存在することに留意されたい。繊維は漂白され、次いで蛍光増白されたため、肉眼で見たその外観は、SEMのレンズ下で繊維を見た場合とは異なり、スノーホワイトであることにもまた留意されたい。この写真における試料に関してセクションAにおいて上で論じた実施例4におけるXRFの結果も参照されたい。図に見られるように、写真で白色に見える酸化銅粒子は、表皮を貫通するのみならず、繊維中深く、内腔の近く又は内部において観察することができる。
【0247】
以下の表2A、2B及び2Cは、本明細書において記載のシステム及び方法を用いてキャビテーションされた綿繊維の基本的な物理的特性を、キャビテーションされなかった綿繊維と比較して示す。それは、試験された繊維の品質の完全な全体像を与える。表2A、2B及び2Cにおける試験は、Israel Cotton Growers Association、Herzliya、Israelにより実施された。Cu濃度を見積もり、ppmで表す。
【0248】
【表3】
【0249】
【表4】
【0250】
【表5】
【0251】
上記表2のチャートにおいて実施された試験は、糸を作るか又は医療用及び化粧用の最終用途において綿として使用する目的で販売される世界で栽培された綿の梱全てに対して実施される全自動標準試験である。試験は全て、単一の繊維特性読取機を用いて行った。
【0252】
チャートの繊維は、1.5%DH300脱気剤/水溶液及び酸化銅粒子を用いて準備され、次いでキャビテーションされた。表2A、2B及び2Cは、本明細書において上記セクションA及びBに記載されたシステム及び方法を用いて酸化銅を含浸させた繊維の試験結果を示す。試験は、19個の異なる試料の平均値を提供し、処理された綿の1つ以上の試料と非処理の場合の同一の綿とを比較する。これらの試験における処理及び非処理の試料の両方に使用した繊維は、Upland Greek綿繊維であった。表2Dは、処理されたものと同一の出発材料からの非処理繊維の3つの試料に関する値を示す。
【0253】
【表6】
【0254】
当業者にとって最大の興味である2つのパラメータは、マイクロネア試験の結果及び強度(g/tex)試験データである。これらの2試験はそれぞれ、使用者に、繊維がどれほど密であるか及びどれほど強いかに関して情報を与える。これらの品質及び強度試験の結果は、試験された繊維から作られる糸及びその糸から作られる物品においても反映される。
【0255】
マイクロネアは、空気透過性の指標である。マイクロネアは、繊維の繊度(線形質量密度)及び細胞壁の発達の度合いによって決定される成熟度の両方の指標とみなされる。後者の特性は、繊維成熟度の関数である。
【0256】
表2A、2B及び2Cを見ると、表2Dにおける通常のキャビテーションされていない天然綿繊維と比較して、キャビテーションされた繊維に対して実施された種々の試験の比較が示されている。比較において、試験した綿繊維の供給源及び品質の両方は同一である。比較試験の結果は、酸化銅、水及びDH300と共にキャビテーションした繊維は、マイクロネアの結果及び引張強度において驚くべき増加を示し、これはキャビテーションをDH300なしで行った場合には当てはまらない。
【0257】
本明細書上記で論じた繊維処理のシステム及び方法を用いた酸化銅処理をされた綿は、4.35の値が得られた非処理綿と比較して、平均マイクロネア読み取り値5.2を示す。したがって、密度は処理により増加していた。処理された綿繊維のこの密度の増加は、通常、摩耗に対するさらなる抵抗性及びより多くの洗浄への耐性に反映されることになる。
【0258】
本明細書上記で論じたプロセス及び方法を用いて処理された繊維は、38.7g/texの平均引張強度値を示した。同一の綿繊維は、非処理の場合、30.7g/texの値を示した。一般に、31を超える値は、非常に強い。強度試験は、出願人の酸化銅処理綿が、強いとみなされる値である29~30又は非常に強いとみなされる値である31以上を相当に上回る値を有したことを示した。引張強度のこの増加は、予想外である。繊維の処理は、一般に繊維を弱めると予想されるためである。これは、ファブリックを洗浄した場合、容易に観察できる。布地を多くの回数洗浄するほど、その繊維は弱くなる。
【0259】
上に記載の繊維から作られたファブリックの洗浄試験を行った。ファブリックを漂白し、染色し、100回の家庭での洗浄又は50回の工業的洗浄により洗浄した。洗浄後に、殺菌効果を試験し、劣化していないことがわかった。試験は独立した試験研究所、Manufacturing Solutions Centre of Conover、NC、USAにより、2003 AATCC Standard of Reference Liquid Detergent WOB(標準参照液体洗剤WOB)を用いて行った。使用した殺菌効果試験は、AATCC試験100-2012- Assessment of Antibacterial Finishes on Textile Materials(織物材料の抗菌仕上げの評価)であった。
【0260】
処理された繊維は、以下の特徴を有する:
【0261】
先行技術のシステム及び方法により作製された場合よりも、包埋された予め選択された粒子が多量である。セクションAの実施例4における比較XRFデータを参照のこと。
【0262】
粒子及び材料が、繊維の内部に包埋され、繊維の表皮外側の近く又は上に残留しているばかりでなく、繊維の内腔にさえも到達している。
【0263】
マイクロネア値が増加する。
【0264】
引張強度が、少なくとも36g/texに増加する。
【0265】
視覚的に、処理された繊維は、非処理繊維と異なって見える見た目ではない。
【0266】
処理された繊維は、非処理繊維と異なっていると感じることができない。
【0267】
本発明を限定することは意図されないが、本発明の方法及びシステムは、適切な粒子が繊維に包埋されるかあるいは付着する場合、スライバー繊維、特にセルローススライバー繊維に、以下の特徴を付与するために使用されてよい。
【0268】
スライバー繊維に非着火性又は難着火性を付与する。ここで、少なくとも1つの予め選択された化合物又は組成物は、水和水又は酸素捕捉剤又は膨張性化合物を含んでよい水不溶性の粒子化合物及び組成物である。これらの化合物又は組成物は、ハンタイト(Mg3Ca(CO3)4)、水酸化マグネシウム、アルミナ三水和物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の化合物又は組成物を含むが、これらに限定されることはない。
【0269】
スライバー繊維に、抗菌性、抗真菌性、及び/又は抗ウイルス性を含む、抗微生物性を付与する。ここで、少なくとも1種の予め選択された化合物又は組成物は、金属及び/又はその酸化物を含む水不溶性の抗微生物性化合物又は組成物である。それらの金属酸化物は、酸化銀、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、種々のゼオライト又はセラミック化合物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されてよい。
【0270】
スライバー繊維に、殺有害生物性、殺ダニ性、及び抗トコジラミ性を付与する。ここで、少なくとも1種の予め選択された化合物又は組成物は、珪藻土、酸化銅、酸化銀、酸化亜鉛、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0271】
スライバー繊維に防水性を付与する。ここで、少なくとも1種の予め選択された化合物又は組成物は、疎水性材料、例えば、粉砕シリカ、水懸濁液中のナノシリカ、ポリシロキサン、及びアクリル化合物からなる群から選択される。
【0272】
E.スライバー繊維に紫外線抑制性を付与する。ここで、少なくとも1種の予め選択された化合物又は組成物は、酸化亜鉛、及び二酸化チタンからなる群から選択される。
【0273】
経皮薬剤輸送又は皮膚処置のためのスライバー繊維に薬効性を付与する。ここで、少なくとも1種の予め選択された化合物又は組成物は、酸化銅、酸化銀、種々の医薬を含有するカプセル化ナノ球体及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0274】
皮膚処置のためのスライバー繊維に美容特性を付与する。ここで、前記少なくとも1種の予め選択された化合物又は組成物は、酸化銅、酸化銀、過酸化ベンゾイル、又はざ瘡治療のための任意の他の医薬、カプセル化有機化合物、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0275】
スライバー繊維に電気伝導性を付与する。ここで、前記少なくとも1種の予め選択された化合物又は組成物は、粉末グラファイト、グラフェン粉末及び単層ナノカーボンチューブからなる群から選択される。これらは、物品の中でも特に、バッテリー用のアノード及びカソードの製造に使用することができる電気伝導性の糸及びファブリックを形成するために使用することができる。
【0276】
ナノセルロースを用いて、水又は水と同じ粘度を有する化合物の綿繊維への吸収を高める。
【0277】
上記の表面処理及び使用することが可能な粒子又は他の材料は、例示に過ぎないとみなされるべきである。他の表面処理及び他の材料が、当業者には容易に思い浮かぶであろう。同様に、綿繊維が基質として記載されているが、例示に過ぎない。他のセルロース繊維及び他の天然繊維も、本明細書において記載のシステム及び方法で処理してよい。
【0278】
本発明のシステム及び方法は、スライバー繊維の表面処理に関連するいくつかの問題を解決する。特に、以下を有する処理されたスライバー繊維を可能にする。
【0279】
1.増粘剤不使用の場合と比べるとより高い濃度のスライバー繊維に包埋される/付着する粒子。この結果として、例えば抗微生物性を有する粒子で繊維が処理される場合、繊維は向上した有効性を有し、その活性が加速され、且つ処理された繊維から作られた物品の有効性存続期間が延長される。繊維の活性は、100回の家庭での洗浄又は50回の工業的洗浄後も、最小限の劣化で継続する。
【0280】
2.繊維の内腔に含浸された粒子。とりわけ、これは、有効性の減少を伴わずに繊維の漂白及び蛍光増白を使用することにより、スノーホワイトの繊維を製造することを可能にする。
【0281】
3.繊維を摩耗に対してより抵抗性にする、繊維のマイクロネア値の驚くべき増加。
【0282】
4.より強い糸を生み出す、引張強度の驚くべき増加。
【0283】
上記を考慮すると、スライバー繊維、特にセルロース繊維(ただし必ずしもこれに限定されない)は、本明細書において論じた新たな方法及びシステムを用いた表面処理にとって扱い易い基質となっている。処理を糸又はファブリックの段階においてのみ行う必要はもはやない。
【0284】
それを認める管轄区域においては、本明細書において言及される全ての刊行物、特許及び特許出願は、各個別の刊行物、特許又は特許出願が具体的かつ個別に参照により本明細書に組み込まれることを示された場合と同程度に、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。さらに、本出願におけるいずれの参考文献の引用又は特定も、こうした参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0285】
本発明のシステム及び方法の上記の使用は、本発明のシステム及び方法の使用の網羅的リストであることを意図されたものではない。同様に、各使用のための材料のリストは、網羅的であることを意図されておらず、例示に過ぎないとみなされるべきである。
【0286】
本発明は、その特定の実施形態と関連して記載されるが、多くの代替、変更及び変形が当業者には明らかであろうことが明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲内に入るそのような代替、変更及び変形の全てを包含することが意図されている。
本開示の態様として、以下のものを挙げることができる。
[1]
含浸天然繊維であって、
表皮が内腔を取り囲んでいる、表皮及び内腔と、
繊維中に包埋された、予め選択された特性を有する不溶性粒子と
を含み、
前記粒子が、含浸繊維の0.1~30w/w%を構成し、且つ前記包埋された粒子が、繊維に包埋された場合、その予め選択された特性を繊維に付与し、且つ粒子が繊維の表皮上及び内腔内の両方に包埋されている、含浸天然繊維。
[2]
含浸繊維が36g/tex超の引張強度を示す、態様1に記載の含浸繊維。
[3]
含浸繊維が、含浸後に引張強度の増加を示し、引張強度が、含浸繊維の繊維と同一の繊維源から引き出された非処理繊維の平均引張強度より少なくとも15%大きい、態様1又は2に記載の含浸繊維。
[4]
含浸繊維が、4.85超のマイクロネア値を示す、態様1から3のいずれか一つに記載の含浸繊維。
[5]
含浸繊維が、含浸後に、含浸繊維の繊維と同一の繊維源から引き出された非処理繊維の平均マイクロネア値よりも少なくとも20%大きいマイクロネア値を示す、態様1から3のいずれか一つに記載の含浸繊維。
[6]
含浸繊維から形成された糸が、100回の家庭での洗浄又は50回の工業的洗浄後に、予め選択された特性を依然として示す、態様1から5のいずれか一つに記載の含浸繊維。
[7]
含浸繊維及びそれから製造された糸が、繊維が漂白及び蛍光増白された後に、予め選択された特性を依然として示す、態様1から6のいずれか一つに記載の含浸繊維。
[8]
繊維及びそれから製造された糸が、漂白及び蛍光増白後に、繊維の表皮の外面からの粒子数が少なくとも95%低減されながら、その内腔中に粒子材料を依然として保持している、態様1から7のいずれか一つに記載の含浸繊維。
[9]
含浸された粒子が、含浸繊維の少なくとも0.5~20重量%を構成する、態様1から8のいずれか一つに記載の含浸繊維。
[10]
不溶性粒子が、0.1から0.5ミクロンの間のナノサイズ粒子である、態様1から9のいずれか一つに記載の含浸繊維。
[11]
繊維の含浸が音響キャビテーションによって行われる、態様1から10のいずれか一つに記載の含浸繊維。
[12]
含浸繊維が、水を、非含浸繊維よりも早い速度及び多くの量で吸収する、態様1から11のいずれか一つに記載の含浸繊維。
[13]
含浸繊維が、繊維の全長にわたって均一に水を吸収する、態様1から12のいずれか一つに記載の含浸繊維。
[14]
繊維の含浸の間に、繊維の表皮中に細孔が形成される、態様1から13のいずれか一つに記載の含浸繊維。
[15]
繊維が、セルロース繊維である、態様1から14のいずれか一つに記載の含浸繊維。
[16]
不溶性粒子が、繊維に非着火性又は難着火性を付与するために予め選択され、且つハンタイト(Mg 3 Ca(CO 3 ) 4 )、水酸化マグネシウム、アルミナ三水和物及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様1から15のいずれか一つに記載の含浸繊維。
[17]
不溶性粒子が、繊維に、抗菌性及び/又は抗真菌性及び/又は抗ウイルス性を含む抗微生物性を付与するために予め選択され、且つ酸化銀、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ゼオライト、セラミック化合物及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様1から15のいずれか一つに記載の含浸繊維。
[18]
不溶性粒子が、繊維に殺虫性を付与するために予め選択され、且つ珪藻土、酸化銅、酸化銀、酸化亜鉛、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様1から15のいずれか一つに記載の含浸繊維。
[19]
不溶性粒子が、繊維に防水性を付与するために予め選択され、且つ粉砕シリカ、ナノシリカ、ポリシロキサン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様1から15のいずれか一つに記載の含浸繊維。
[20]
不溶性粒子が、繊維に紫外線抑制性を付与するために予め選択され、且つ酸化亜鉛、二酸化チタン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様1から15のいずれか一つに記載の含浸繊維。
[21]
不溶性粒子が、経皮薬剤輸送又は皮膚処置のための繊維に薬効性を付与するために予め選択され、且つ酸化銅、酸化銀、種々の医薬を含有するカプセル化ナノ球体及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様1から15のいずれか一つに記載の含浸繊維。
[22]
不溶性粒子が、皮膚処置のための繊維に美容特性を付与するために予め選択され、且つ酸化銅、酸化銀、過酸化ベンゾイル及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様1から15のいずれか一つに記載の含浸繊維。
[23]
不溶性粒子が、繊維に電気伝導性を付与するために予め選択され、且つグラフェン粉末及び単層ナノカーボンチューブ並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様1から15のいずれか一つに記載の含浸繊維。
[24]
複数の含浸繊維から撚られた糸であって、前記含浸繊維が、態様1から15のいずれか一つに記載の含浸繊維として含まれる、糸。
[25]
態様1から23のいずれか一つに記載の含浸繊維を含む物品であって、以下の種類の物品からなる群:衣類、医療用品及び病院用品、制服、カーテン、スクラブ、シーツ、枕カバー、毛布、スリッパ、患者用ガウン、タオル、及び医療環境、高齢者介護施設、公共若しくは民間施設において使用されるか又は家庭において使用される家庭用製品として使用される任意の布地又は布地から製造された製品、から選択される、物品。
[26]
態様1から23のいずれか一つに記載の含浸繊維から撚られた糸を含む物品であって、以下の種類の物品からなる群:衣類、医療用品及び病院用品、制服、カーテン、スクラブ、シーツ、枕カバー、毛布、スリッパ、患者用ガウン、タオル、及び医療環境、高齢者介護施設、公共若しくは民間施設において使用されるか又は家庭において使用される家庭用製品として使用される任意の布地又は布地から製造された製品、から選択される、物品。
[27]
態様1から23のいずれか一つに記載の含浸繊維からなる不織布地を含む物品であって、以下の種類の物品からなる群:衣類、医療用品及び病院用品、制服、カーテン、スクラブ、シーツ、枕カバー、毛布、スリッパ、患者用ガウン、タオル、及び医療環境、高齢者介護施設、公共若しくは民間施設において使用されるか又は家庭において使用される家庭用製品として使用される任意の布地又は布地から製造された製品、から選択される、物品。
[28]
不溶性粒子を含浸させたスライバー繊維を製造するシステムであって、
少なくとも1つのスライバー繊維リボンを搬送するためのコンベアと、
i)少なくとも1つの予め選択された特性を有する少なくとも1種の不溶性粒子材料、ii)増粘剤、及びiii)水、を含むペーストを入れるためのディスペンサーであって、ディスペンサーからのペーストが少なくとも1つのスライバー繊維リボン上に分配される、ディスペンサーと、
前記分配されたペーストを通して少なくとも1つのスライバー繊維リボンへと伝えられる超音波を発生させるためのトランスデューサと超音波的に通じているソノトロードであって、超音波が、少なくとも1種の不溶性粒子材料を少なくとも1つのスライバー繊維中に包埋させる、ソノトロードと、
を含むシステム。
[29]
脱気溶液を入れるための、ソノトロードの上流に置かれた湿潤槽をさらに含み、脱気溶液を通して少なくとも1つのスライバー繊維リボンが搬送され且つ湿潤される、態様28に記載のシステム。
[30]
ソノトロードが、複数の孔を有する有孔ソノトロードである、態様28から29のいずれか一つに記載のシステム。
[31]
複数の孔の各々が、4mmから20mmの直径、及び40mmから80mmの長さを有する、態様28から30のいずれか一つに記載のシステム。
[32]
複数の孔の各々が、6mmから15mmの直径、及び50mmから70mmの長さを有する、態様28から30のいずれか一つに記載のシステム。
[33]
少なくとも1つのスライバー繊維リボンを拘束するか又は折り畳むよう構成された拘束デバイスをさらに含む、態様28から32のいずれか一つに記載のシステム。
[34]
拘束デバイスが、ソノトロードの上流に一連の拘束リングを含み、前記リングの各々が、本質的に円形であり、且つ、一連のリング中の隣接する上流のリングよりも小さい直径を有する、態様33に記載のシステム。
[35]
ソノトロードに最も近く、且つソノトロードの上流にある拘束デバイスのリングが、長円形を有する、態様33に記載のシステム。
[36]
拘束された又は折り畳まれた少なくとも1つのスライバー繊維リボンを解放するよう構成された解放デバイスをさらに含む、態様28から35のいずれか一つに記載のシステム。
[37]
解放デバイスが、ソノトロードの下流に一連のリングを含み、各リングが、本質的に円形であり、且つ、ソノトロードからさらに下流の一連のリング中の隣接するリングよりも大きな直径を有する、態様36に記載のシステム。
[38]
前記コンベアが、一連の非連続性の間隔を空けたコンベアを含む、態様28から37のいずれか一つに記載のシステム。
[39]
第一のペアの圧搾ローラーをさらに含み、
第一のペアの圧搾ローラーで圧搾された後の少なくとも1つのスライバー繊維リボンが、コンベアが存在しない領域にわたって第二のペアの圧搾ローラーによって牽引されるのに十分な一体強度を有する、態様28から38のいずれか一つに記載のシステム。
[40]
少なくとも1種の不溶性粒子材料が、少なくとも1種の元素、化合物、組成物及び上記のものの任意の組み合わせを含む材料から選択される、態様28から39のいずれか一つに記載のシステム。
[41]
少なくとも1つのスライバー繊維リボンが漂白される第一の容器をさらに含む、態様28から40のいずれか一つに記載のシステム。
[42]
少なくとも1つのスライバー繊維リボンが蛍光増白される第二の容器をさらに含む、態様28から41のいずれか一つに記載のシステム。
[43]
スライバー繊維リボンからの残留増粘剤の除去のための少なくとも1つの水噴霧又は濯ぎ装置をさらに含む、態様28から42のいずれか一つに記載のシステム。
[44]
少なくとも1つのスライバー繊維リボンが、態様1~27のいずれか一つに記載された繊維からなる、態様28から43のいずれか一つに記載のシステム。
[45]
少なくとも1つのスライバー繊維リボンが、セルロース繊維からなる、態様28から44のいずれか一つに記載のシステム。
[46]
ペーストが、ペーストの27~33重量%の不溶性粒子材料、ペーストの20~36重量%の粘剤、及びペーストの31~53重量%の水を含む、態様28から45のいずれか一つに記載のシステム。
[47]
増粘剤が、ナノセルロース、フュームドシリカ、グアーガム、アルギン酸及びその塩、アガー、ローカストビーンガム、ペクチン、及びゼラチンからなる群から選択される、態様28から46のいずれか一つに記載のシステム。
[48]
増粘剤が、ナノセルロースである、態様28から46のいずれか一つに記載のシステム。
[49]
ペーストが、室温で650~1000センチポアズ(0.65~1Pa・s)の粘度を有する、態様28から48のいずれか一つに記載のシステム。
[50]
ペーストの不溶性粒子材料が27~33重量%の範囲内である場合、ペーストが、室温で740から806センチポアズ(0.74~0.806Pa・s)の粘度を有する、態様28から48のいずれか一つに記載のシステム。
[51]
スライバー繊維に不溶性粒子を含浸させる方法であって、
a.i.予め選択された所望の特性を有する少なくとも1種の不溶性粒子材料、
ii.水、及び
iii.増粘剤
を含むペーストを得るステップと、
b.少なくとも1つのスライバー繊維リボンを供給するステップと、
c.少なくとも1つのスライバー繊維リボン上にペーストを分配するステップと、
d.超音波が少なくとも1つのスライバー繊維リボンを通して伝達されて、少なくとも1つのスライバー繊維リボン上のペースト中の少なくとも1種の不溶性粒子材料がリボン中に包埋されるように、ペーストで被覆された少なくとも1つのスライバー繊維リボンをソノトロードを通して搬送し、それにより、少なくとも1種の粒子材料の所望の特性をスライバー繊維に付与するステップと、
を含む、方法。
[52]
ソノトロードが、複数の孔を有する有孔ソノトロードである、態様51に記載の方法。
[53]
少なくとも1つのスライバー繊維リボンが圧縮されてリボンの繊維が分離及び分散することができないように、少なくとも1つのスライバー繊維リボンを拘束するか又は折り畳むステップをさらに含む、態様51又は52に記載の方法。
[54]
拘束された又は折り畳まれた少なくとも1つのスライバー繊維リボンを解放するか又は広げるステップをさらに含む、態様51から53のいずれか一つに記載の方法。
[55]
前記分配するステップの前に、脱気溶液を少なくとも1つのスライバー繊維リボンに接触させるステップをさらに含む、態様51から54のいずれか一つに記載の方法。
[56]
余分なペーストをリボンから除去するために、少なくとも1つのスライバー繊維リボンを洗浄するステップをさらに含む、態様51から55のいずれか一つに記載の方法。
[57]
ソノトロードが、約500Wから約3000Wの間、且つ約15kHzから約30kHzの間で操作される、態様51から56のいずれか一つに記載の方法。
[58]
ソノトロードが、約1000Wから約2000Wの間、且つ約15kHzから約25kHzの間で操作される、態様51から56のいずれか一つに記載の方法。
[59]
少なくとも1つの含浸スライバー繊維リボンを漂白及び/又は蛍光増白するステップをさらに含む、態様51から58のいずれか一つに記載の方法。
[60]
少なくとも1種の不溶性粒子材料が、元素、化合物、組成物、及び上記のものの任意の組み合わせから選択される、態様51から59のいずれか一つに記載の方法。
[61]
得られる含浸繊維スライバーが、第二のカーディング操作なしに、糸を製造するために直接使用可能である、態様51から60のいずれか一つに記載の方法。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B