(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】チャーハン用米飯の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
A23L 7/10 20160101AFI20240626BHJP
【FI】
A23L7/10 A
A23L7/10 D
(21)【出願番号】P 2022206158
(22)【出願日】2022-12-23
【審査請求日】2022-12-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598060981
【氏名又は名称】エースシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143085
【氏名又は名称】藤飯 章弘
(72)【発明者】
【氏名】佐古 圭弘
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-189837(JP,A)
【文献】登録実用新案第3142166(JP,U)
【文献】特開平10-151071(JP,A)
【文献】特開2003-230367(JP,A)
【文献】特開2011-036162(JP,A)
【文献】特開2003-250469(JP,A)
【文献】特開2022-175550(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1507804(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/10
A47J 27/
日経テレコン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ内に配置される搬送コンベア手段の搬送面上に米を投入する米投入工程と、
チャンバ内に蒸気を注入して前記搬送面上の米を蒸す蒸し工程と、
前記搬送面の上方に配置される
攪拌機によって、前記搬送面上の米塊を攪拌する攪拌工程とを備えており、
前記
攪拌機は、搬送コンベア手段の搬送方向と直行する搬送面の幅方向に沿う方向を長手方向とするプレート状の攪拌羽根を備え、該攪拌羽根は、その長手方向の一の側縁部を前記搬送面上の米塊の上方側から進入させて、米塊の一部を掬い上げ可能に構成されており、
前記攪拌工程は、前記搬送面が所定量移動するごとに、前記攪拌羽根が、前記搬送面上の米塊の一部を掬い上げて攪拌するように構成され、
前記所定量は、2mm以上10mm以下であ
り、
前記攪拌工程において、前記攪拌羽根が前記搬送面に最も接近する際の前記搬送面からの距離が、2mm以下の範囲となるように構成されることを特徴とするチャーハン用米飯の製造方法。
【請求項2】
前記攪拌機は、前記搬送面の幅方向に沿う方向を軸方向とする回転軸と、前記回転軸に接続する前記攪拌羽根とを備えていることを特徴とする請求項1に記載のチャーハン用米飯の製造方法。
【請求項3】
前記搬送面の搬送方向に沿って所定間隔をあけて前記
攪拌機が複数配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載のチャーハン用米飯の製造方法。
【請求項4】
チャンバ内に配置される搬送コンベア手段と、
前記搬送コンベア手段の搬送面上に米を投入する米投入手段と、
前記搬送面上の米を蒸すための蒸気をチャンバ内に注入する蒸気注入装置と、
前記搬送面の上方に配置され、前記搬送面上の米塊を攪拌する攪拌機とを備えており、
前記
攪拌機は、搬送コンベア手段の搬送方向と直行する搬送面の幅方向に沿う方向を長手方向とするプレート状の攪拌羽根を備え、
前記攪拌羽根は、その長手方向の一の側縁部を前記搬送面上の米塊の上方側から進入させて、米塊の一部を掬い上げ可能に構成されており、かつ、前記搬送面が所定量移動するごとに、前記攪拌羽根が、前記搬送面上の米塊の一部を掬い上げて攪拌するように構成されており、
前記所定量は、2mm以上10mm以下に設定されて
おり、
前記攪拌羽根が前記搬送面に最も接近する際の前記搬送面からの距離が、2mm以下の範囲となるように構成されていることを特徴とするチャーハン用米飯の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャーハン用米飯の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
連続式の炊飯装置が例えば特許文献1に開示されている。これらの炊飯装置は、過熱水蒸気が供給されるチャンバと、米を搬送するコンベアと、チャンバ内において搬送される米に散水する散水装置を備える。コンベアで搬送された米は、チャンバに供給された過熱水蒸気と散水装置から供給された温水とで炊飯され、チャンバから米飯として搬出される。
【0003】
このような装置により炊飯された米飯を用いてチャーハンのパウチ食品を製造する場合、炊飯された米飯に所定の具材を混ぜた後、炒める工程を実施してチャーハンを製造し、その後、袋詰め等されて消費者に提供されるが、このようにして製造されたチャーハンは、米飯表面の粘り物質に起因して米飯同士が付着し、パラパラとした食感を得られにくいという問題があった。
【0004】
係る問題を解消するために、炊飯した米飯に、ショ糖脂肪酸エステル等の水に親和性を有する乳化剤と塩類を含有する水溶液を添加して処理する方法(特許文献2)や、炊飯後の米飯を水浸漬手段において水に浸し、その水に浸すことにより米飯表面の粘り物質を洗い落として取り除くといった方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-169915号公報
【文献】特開2000-217522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、ショ糖脂肪酸エステル等の水に親和性を有する乳化剤と塩類を含有する水溶液を添加する方法の場合、米飯の一粒一粒が乳化剤でコーティングされているので、米飯同士が付着しにくくなり、パラパラとした食感を有するものではあるが、近年の健康志向から添加物を用いない改良方法への業界・消費者の要請がある。また、炊飯後の米飯を水浸漬手段において水に浸し、米飯表面の粘り物質を洗い落とすという方法も効果的ではあるが、水浸漬手段を別途設ける必要があり、製造装置が巨大化し、また、製造工程が煩雑になるといった問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、添加物を使用することなく、また、水浸漬手段を使用することなく、米飯同士が付着せずパラパラとした食感を有するチャーハン用米飯を製造できる製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の前記目的は、チャンバ内に配置される搬送コンベア手段の搬送面上に米を投入する米投入工程と、チャンバ内に蒸気を注入して前記搬送面上の米を蒸す蒸し工程と、前記搬送面の上方に配置される撹拌機によって、前記搬送面上の米塊を攪拌する攪拌工程とを備えており、前記撹拌機は、搬送コンベア手段の搬送方向と直行する搬送面の幅方向に沿う方向を長手方向とするプレート状の攪拌羽根を備え、該攪拌羽根は、その長手方向の一の側縁部を前記搬送面上の米塊の上方側から進入させて、米塊の一部を掬い上げ可能に構成されており、前記攪拌工程は、前記搬送面が所定量移動するごとに、前記攪拌羽根が、前記搬送面上の米塊の一部を掬い上げて攪拌するように構成され、前記所定量は、2mm以上10mm以下であることを特徴とするチャーハン用米飯の製造方法により達成される。
【0009】
また、上記チャーハン用米飯の製造方法に関し、前記攪拌機は、前記搬送面の幅方向に沿う方向を軸方向とする回転軸と、前記回転軸に接続する前記攪拌羽根とを備えていることが好ましい。
【0010】
また、前記攪拌工程において、前記攪拌羽根が前記搬送面に最も接近する際の前記搬送面からの距離が、2mm以下の範囲となるように構成されることが好ましい。
【0011】
また、前記搬送面の搬送方向に沿って所定間隔をあけて前記撹拌機が複数配置されることが好ましい。
【0012】
また、本発明の前記目的は、チャンバ内に配置される搬送コンベア手段と、前記搬送コンベア手段の搬送面上に米を投入する米投入手段と、前記搬送面上の米を蒸すための蒸気をチャンバ内に注入する蒸気注入装置と、前記搬送面の上方に配置され、前記搬送面上の米塊を攪拌する攪拌機とを備えており、前記撹拌機は、搬送コンベア手段の搬送方向と直行する搬送面の幅方向に沿う方向を長手方向とするプレート状の攪拌羽根を備え、前記攪拌羽根は、その長手方向の一の側縁部を前記搬送面上の米塊の上方側から進入させて、米塊の一部を掬い上げ可能に構成されており、かつ、前記搬送面が所定量移動するごとに、前記攪拌羽根が、前記搬送面上の米塊の一部を掬い上げて攪拌するように構成されており、前記所定量は、2mm以上10mm以下に設定されていることを特徴とするチャーハン用米飯の製造装置により達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、添加物を使用することなく、また、水浸漬手段を使用することなく、米飯同士が付着せずパラパラとした食感を有するチャーハン用米飯を製造できる製造方法及び製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るチャーハン用米飯の製造装置に関する概略構成図である。
【
図2】本発明に係るチャーハン用米飯の製造装置が備える撹拌機に関し、搬送コンベア手段の搬送方向に沿う方向から見た概略構成図である。
【
図3】
図2におけるA-A断面に関する概略構成図である。
【
図4】本発明に係るチャーハン用米飯の製造装置が備えてもよい第2撹拌機に関し、搬送コンベア手段の搬送方向に沿う方向から見た概略構成図である。
【
図5】
図4におけるB-B断面に関する概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、まず本発明の一実施形態に係るチャーハン用米飯の製造装置について添付図面を参照して説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。また、各図は、構成の理解を容易ならしめるために部分的に拡大・縮小している。本発明に係るチャーハン用米飯の製造装置1は、
図1の概略構成図に示すように、チャンバ2内に配置される搬送コンベア手段3と、該搬送コンベア手段3の搬送面上に米を投入する米投入手段4と、搬送面上の米を蒸すための蒸気をチャンバ2内に注入する蒸気注入装置(図示せず)とを備えている。
【0016】
本実施形態においては、チャンバ2は上下方向に第1チャンバ室21、第2チャンバ室22及び第3チャンバ室23に区画されて形成されている。第1チャンバ室21と第2チャンバ室22とは、互いに平行に設けられており、連通孔24が穿設された仕切り壁25を介して連通して構成されている。同様に、第2チャンバ室22と第3チャンバ室23とは、互いに平行に設けられており、連通孔26が穿設された仕切り壁27を介して連通して構成されている。
【0017】
チャンバ2内に配置される搬送コンベア手段3は、第1チャンバ室21に配置される第1コンベア31、第2チャンバ室22に配置される第2コンベア32、及び、第3チャンバ室23に配置される第3コンベア33により構成されている。各コンベア31,32,33は、それぞれ無端状のベルト34と該ベルト34が巻回された2つのホイール35,36とにより構成されている。2つのホイール35,36に巻回されるベルト34は網状(メッシュ状)に形成されている。なお、ベルト34は、後述のように蒸気による熱を米に効率よく付与するために、網状(メッシュ状)のものを採用することが好ましいが、網状(メッシュ状)以外のベルト(たとえば樹脂製のもの)を採用してもよく、種々の材質、形状のものを採用することができる。
【0018】
米投入手段4は、第1チャンバ室21の上方に配置されており、この米投入手段4を介して、第1コンベア31上(搬送コンベア手段3の搬送面上)に洗米した米(生米)が連続的に供給される。なお、第1コンベア31(搬送コンベア手段3)に供給される米は、洗米後の米に限定されず、無洗米であってもよい。また、米とは、例えば、精白米、玄米、雑穀米等を含む概念である。
【0019】
蒸気注入装置は、上述のように搬送コンベア手段3の搬送面上の米を蒸すための蒸気をチャンバ2内に注入する装置であって、ボイラー等の蒸気生成装置と配管とにより構成される。蒸気生成装置において生成される蒸気は100℃前後の蒸気であっても、また100℃以上の過熱水蒸気であっても構わない。なお、過熱水蒸気とは、飽和水蒸気とは異なり、飽和水蒸気の温度(1気圧では100℃、1気圧以外の気圧では、その気圧での沸点)以上に過熱された水蒸気を意味する。過熱水蒸気は、飽和水蒸気をヒータ等の加熱装置によって再加熱することにより形成することができるが、その形成方法は、どのような方法であってもよい。
【0020】
蒸気生成装置に接続される配管の一部分は、各コンベア31,32,33が備える網状のベルト34の内側エリア34aにまで延設されており、また、延設される配管の一部分には貫通孔が形成されており。蒸気生成装置によって生成された蒸気は、配管を通過して、この貫通孔から吐出され、網状に形成されるベルト34の網目部分を通過してベルト34の上方空間エリアにそれぞれ供給される。
【0021】
また、本発明に係るチャーハン用米飯の製造装置1は、上記構成に加えて、搬送コンベア手段3の搬送面上の米塊を攪拌する攪拌機5を備えている。この攪拌機5は、
図1に示すように、搬送コンベア手段3の搬送面の上方に配置されており、
図2、
図3の概略構成図に示すように、搬送コンベア手段3の搬送方向と直行する搬送面の幅方向に沿う方向を長手方向とするプレート状の攪拌羽根51を備えて構成されている。ここで、
図2は、搬送コンベア手段3の搬送方向に沿う方向から見た概略構成図であり、
図3は、
図2のA-A断面に関する概略構成図である。攪拌羽根51は、搬送コンベア手段3の搬送面の幅方向に沿う方向を軸方向とする回転軸52に接続するように構成されており、また、攪拌羽根51は、その長手方向が、回転軸52の長手方向と平行となるように複数のプレート状の接続部材53を介して設置されている。各接続部材53の中央部には貫通孔が形成されており、この貫通孔に回転軸52を挿通させて、該回転軸52上に固定されている。接続部材53は、回転軸52の径方向に突出する3つのアーム部54を備えており、攪拌羽根51は、各アーム部54の先端に接続固定されている。また、攪拌羽根51の長手方向の長さは、搬送コンベア手段3の搬送面の幅方向の長さと略同等な長さとして構成されることが好ましい。回転軸52には図示しない電動モータ等の駆動装置が接続しており、当該駆動装置によって所定速度で回転可能に構成されている。また、攪拌機5の回転速度は、制御装置によって制御されるように構成されている。このような構成の攪拌機5によれば、攪拌羽根51が、その長手方向の一の側縁部51aを搬送コンベア手段3の搬送面上の米塊の上方側から進入させて、米塊の一部を掬い上げて攪拌することが可能になる。攪拌羽根51の枚数は、特に限定されないが、2~8枚程度とすることが好ましい。また、この攪拌機5は、搬送面の搬送方向に沿って所定間隔をあけて複数配置されている。
【0022】
また、攪拌機5の回転方向は、いずれの方向に回転させることも可能であるが、搬送コンベア手段3が備えるベルト34の進行方向と逆方向に回転させる場合は、ベルト34上を進行する米塊を効率よく掬い上げることが可能であるものの、回転速度によっては円滑な米塊の進行を妨げることとなるため、ベルト34の進行方向と同方向に回転させることが好ましい。さらに、各攪拌羽根51の側縁部51aが、ベルト34と最も接近した際の、ベルト34との距離は、撹拌混合効率を上げる観点から、約2mm以下の範囲となるように構成することが好ましい。一般的に、蒸煮炊飯される個々の米粒は、他の米粒との付着性を有するため、攪拌羽根51の側縁部とベルト34と最も接近した際の距離を2mm以下程度に設定することにより、ほぼすべての米を均一に混合することが可能となる。なお、この距離を2mmを超える寸法に設定する場合には、個々の米粒が有する付着性によってもすべての米を均一に混合できなくなるおそれがある。
【0023】
また、攪拌羽根51は、ベルト34上を進行する米塊を効率よく掬い上げることができるよう、
図3に示すように、傾斜が設けられていることが好ましい。傾斜の角度は、ベルト34上を進行する米塊の量、米の有する付着性を総合的に勘案して適宜設計することができる。
【0024】
ここで、本発明に係る攪拌機5は、攪拌羽根51が、その長手方向の一の側縁部51aを搬送コンベア手段3の搬送面上の米塊の上方側から進入させて、米塊の一部を掬い上げることになるが、この搬送面上の米塊の掬い上げは、搬送コンベア手段3の搬送面が所定量移動するごとに、より具体的には、搬送面が2mm以上10mm以下の範囲で移動するごとに、一つの攪拌羽根51が搬送面上の米塊の一部を掬い上げて攪拌するように制御される。攪拌機5の回転速度は、上記のように制御装置によって制御されるように構成されているが、制御装置の具体的構成は特に限定されず、攪拌機5の回転速度を任意に変更・設定できる機能を備えていればよい。また、搬送コンベア手段3の搬送面の移動速度に基づいて、搬送面が2mm以上10mm以下の範囲で移動するごとに、攪拌羽根51が搬送面上の米塊の一部を掬い上げて攪拌できるように、攪拌機5の回転速度を自動で算出して当該算出速度に基づいて攪拌機5を回転させるように構成してもよい。
【0025】
このような構成を備えるチャーハン用米飯の製造装置1を用いてチャーハン用米飯を蒸煮炊飯する方法について以下説明する。まず第1チャンバ室21の上方の米投入手段4を介して米を投入する(米投入工程)。米投入手段4を介して投入された米は、第1コンベア31の搬送面上に落下し、
図1の右側に向かって搬送される。第1コンベア31の右端にまで到達した米塊は、連通孔24を介して第2チャンバ室22に設けられる第2コンベア32上に落下し、
図1の左側に向かって搬送され、第2コンベア32の左端に達した米塊は、連通孔26を介して第3コンベア33上に落下して
図1の右端に向かって搬送されることになる。
【0026】
第1チャンバ室21、第2チャンバ室22及び第3チャンバ室23においては、蒸気生成装置によって生成された蒸気が、網状のベルト34の内側エリア34aにまで延設された配管を介してベルト34の上方空間エリアに供給されているため、第1コンベア31、第2コンベア32、及び第3コンベア33上の米塊は、網状のベルト34を通過する蒸気や、各チャンバ2室内に供給される蒸気によって蒸煮炊飯される(蒸し工程)。
【0027】
また、第1コンベア31、第2コンベア32、及び第3コンベア33上を搬送される米塊は、各攪拌機5の作用によって均一にほぐされながら蒸煮される(攪拌工程)。ここで、各コンベアの搬送速度は、120mm/分~140mm/分程度とすることが好ましい。また、攪拌機5は、上述のように、攪拌羽根51が、その長手方向の一の側縁部51aが搬送コンベア手段3の搬送面上の米塊の上方側から進入して、米塊の一部を掬い上げることになるが、この搬送面上の米塊の掬い上げは、搬送コンベア手段3の搬送面が2mm以上10mm以下の範囲で移動するごとに、搬送面上の米塊の一部を掬い上げて攪拌する。各コンベアの搬送速度が、例えば、120mm/分~140mm/分であれば、約1秒から3秒ごとに一回のペースで、一つの攪拌羽根51が搬送面上の米塊を掬い上げるように攪拌機5を作動させる。
【0028】
このように搬送コンベア手段3上に供給され搬送されながら攪拌機5で攪拌され蒸煮炊飯が完了した米塊は、搬送コンベア手段3の搬送方向終了端(第3コンベア33の端部:
図1における右端部分)から取り出される。取り出された米塊(チャーハン用米飯)は、具材を混ぜる具材混合工程と、具材が混合されたチャーハン用米飯を炒める炒め工程を経てチャーハンが製造され、適宜袋詰め等されて消費者に供給される。
【0029】
上述のチャーハン用米飯の製造方法及び製造装置は、搬送コンベア手段3の搬送面の上方に配置される攪拌機5を備えており、この攪拌機5は、搬送コンベア手段3の搬送方向と直行する搬送面の幅方向に沿う方向を長手方向とするプレート状の攪拌羽根51を備え、該攪拌羽根51は、その長手方向の一の側縁部51aを前記搬送面上の米塊の上方側から進入させて、米塊の一部を掬い上げ可能に構成されている。更に、搬送コンベア手段3の搬送面が2mm以上10mm以下の範囲で移動するごとに、攪拌羽根51が、搬送面上の米塊の一部を掬い上げて攪拌するように構成されている。一般的な米の一粒の大きさは、幅が2~3mm程度、長さが5~6mm程度であることから、このような構成を備えることにより、厚みとして米粒が1~3個分程度の薄い米塊の層を剥がすような態様で米塊を掬い上げて攪拌することができる。この結果、蒸煮過程において、搬送コンベア手段3上を搬送される米塊における大部分の米の一粒一粒の表面を部分的にでも露出させることが可能となり、米の表面に付着している余分な水分を蒸発させてその表面の粘り物質を乾燥させることができ、米飯同士が互いに付着しにくいパラパラとした食感を有するチャーハン用米飯を製造することができる。
【0030】
上記チャーハン用米飯の製造方法及び製造装置は、従来のように、添加物を用いて米飯にパラパラとした食感を付与するものでもないことから健康志向に富む消費者のニーズに対応することができ、また、炊飯後の米飯を水浸漬手段において水に浸して米飯表面の粘り物質を洗い落とすものでもないことから、水浸漬手段を別途設ける必要もなく、製造装置のコンパクト化を図ることができる。
【0031】
以上、本発明の一実施形態に係るチャーハン用米飯の製造方法及び製造装置について説明したが、その具体的構成は、上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態においては、第1チャンバ室21、第2チャンバ室22、第3チャンバ室23のそれぞれにおいて、蒸気を供給して蒸煮炊飯するように構成しているが、第1チャンバ室21及び第2チャンバ室22にて蒸煮炊飯を行い、第3チャンバ室23においては、蒸気を供給せず、蒸煮炊飯が完了したチャーハン用米飯を第3コンベア33にて移送しつつ冷却するように構成してもよい。
【0032】
また、第1チャンバ室21、第2チャンバ室22、第3チャンバ室23に供給される蒸気の温度や圧力をそれぞれ変更してもよい。具体的には、飽和蒸気(例えば、蒸気温度約140℃で蒸気圧力約0.361MPa)を第1チャンバ室21に供給し、過熱蒸気(例えば、蒸気温度約150℃で蒸気圧力約0.476MPa)を第2チャンバ室22及び第3チャンバ室23に供給するというように、各チャンバ2室で蒸気に関する蒸煮条件を変更してもよい。
【0033】
また、必要に応じて、蒸し工程時に散水処理を行なうための散水手段を各チャンバ室21,22,23内に設けるように構成してもよい。散水手段は、例えば、温水タンクから約60℃~約90℃ の温水を供給する手段であり、温水タンクに接続される配管系の先端に噴射ノズルを取り付けて温水を噴霧状にして米塊に散水できるように構成することができる。
【0034】
また、必要に応じて、調味液噴霧手段を各チャンバ21,22,23室内に設けるように構成してもよい。調味液噴霧手段は、例えば、調味液タンクに接続される配管系の先端に噴射ノズルを取り付けて調味液を噴霧できるように構成することができる。調味液としては、醤油、食塩溶液など、目的に応じて各種の調味液を用いることができる。
【0035】
また、上記実施形態においては、チャンバ2の構造として、上下方向に第1チャンバ室21、第2チャンバ室22及び第3チャンバ室23が区画され、各チャンバ2室にコンベア31,32,33を備えるように構成しているが、このような構成に限定されるものではなく、例えば、単一のチャンバ室に単一のコンベアを備えるように構成してもよい。このような構成の場合、チャーハン用米飯の製造装置1の占有スペースは広くなるものの、装置の高さを低くすることができ、メンテナンスの利便性が向上する。
【0036】
また、チャーハン用米飯の製造装置1において、
図4及び
図5の概略構成図に示すような第2の攪拌機6を併用するように構成してもよい。ここで、
図4は、搬送コンベア手段3の搬送方向に沿う方向から見た概略構成図であり、
図5は、
図4のB-B断面に関する概略構成図である。この第2の攪拌機6は、搬送コンベア手段3の搬送面の幅方向に沿う方向を軸方向とする回転軸61と、この回転軸61に所定間隔をあけて取り付けられる複数の棒状体62とを備えて構成されている。各棒状体62は、例えば、回転軸52上に形成される挿通孔に挿入されて固定されており、棒状体62の長手方向が、回転軸52の径方向に沿う方向となるように構成される。また、互いに隣接する棒状体62は、回転軸52上において所定角度ずらせた位置に配置されている。なお、第2の攪拌機6が有する回転軸61には図示しない電動モータ等の駆動装置が接続しており、当該駆動装置によって所定速度で回転可能に構成されている。また、第2の攪拌機6の回転速度は、制御装置によって制御されるように構成されている。第2の攪拌機6の回転方向は、いずれの方向に回転させることも可能であるが、搬送コンベア手段3が備えるベルト34の進行方向と逆方向に回転させる場合は、ベルト34上を進行する米塊を効率よく攪拌することが可能であるものの、回転速度によっては円滑な米塊の進行を妨げることとなるため、ベルト34の進行方向と同方向に回転させることが好ましい。さらに、各棒状体62の先端部が、ベルト34と最も接近した際の、ベルト34との距離は、撹拌混合効率を上げる観点から、約2mm以下の範囲となるように構成することが好ましい。
【0037】
このような構成の第2の攪拌機6を併用することにより、搬送コンベア手段3上を搬送される米塊をよりいっそ効率よく均一にほぐすことができる上に、上記攪拌機5の攪拌羽根51の作用によって露出することになる米塊表面とは異なる方向(搬送コンベア手段3の搬送方向に沿う方向)において米塊の新たな露出表面を形成することができるため、より効率よく米表面における余分な水分を蒸発させることが可能となり、製造される米飯をより一層パラパラした状態とすることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 チャーハン用米飯の製造装置
2 チャンバ2
21 第1チャンバ室21
22 第2チャンバ室
23 第3チャンバ室
24、25 連通孔
25,27 仕切り壁
3 搬送コンベア手段
31 第1コンベア
32 第2コンベア32
33 第3コンベア
34 ベルト
35,36 ホイール
4 米投入手段4
5 撹拌機
51 攪拌羽根
51a 側縁部
52 回転軸
53 接続部材
54 アーム部
6 第2の攪拌機
61 回転軸
62 棒状体
【要約】
【課題】添加物を使用することなく、また、水浸漬手段を使用することなく、米飯同士が付着せずパラパラとした食感を有するチャーハン用米飯を製造できる製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】チャンバ内に配置される搬送コンベア手段の搬送面上に米を投入する米投入工程と、チャンバ内に蒸気を注入して前記搬送面上の米を蒸す蒸し工程と、前記搬送面の上方に配置される撹拌機によって、前記搬送面上の米塊を攪拌する攪拌工程とを備えており、前記撹拌機は、搬送コンベア手段の搬送方向と直行する搬送面の幅方向に沿う方向を長手方向とするプレート状の攪拌羽根を備え、該攪拌羽根は、その長手方向の一の側縁部を前記搬送面上の米塊の上方側から進入させて、米塊の一部を掬い上げ可能に構成されており、前記攪拌工程は、前記搬送面が所定量移動するごとに、前記攪拌羽根が、前記搬送面上の米塊の一部を掬い上げて攪拌するように構成され、前記所定量は、2mm以上10mm以下であることを特徴とするチャーハン用米飯の製造方法。
【選択図】
図3