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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】圧縮ばねを使用した双方向ばねユニット
(51)【国際特許分類】
   F16F 1/12 20060101AFI20240626BHJP
   B60L 5/24 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
F16F1/12 Z
B60L5/24 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019176190
(22)【出願日】2019-09-09
(65)【公開番号】P2021042849
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-08-29
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】519349159
【氏名又は名称】田中 信之
(72)【発明者】
【氏名】田中 信之
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-030651(JP,A)
【文献】実開平07-032243(JP,U)
【文献】実開昭50-023557(JP,U)
【文献】実開昭59-137434(JP,U)
【文献】実開昭63-119945(JP,U)
【文献】実開昭63-175380(JP,U)
【文献】特開2013-130240(JP,A)
【文献】実開昭54-120007(JP,U)
【文献】実公昭47-040426(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/12
B60L 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮ばねを使用した双方向ばねユニットは、ばね軸ホルダ-(1)、ばねピストン(2)、ばね(3)、シリンダ-ホルダ-(4)、外周ストッパ-(5)、ストッパ-ボルト(6)により構成され、ばね軸ホルダ-(1)のばね軸部に、ばねピストン(2)ばね(3)ばねピストン(2)を、ストッパ-ボルト(6)で固定し、2つのばねピストン(2)の外径で径方向の位置決めをされたシリンダ-ホルダ-(4)の両側に外周ストッパ-(5)を取り付けて軸方向の位置決めをしたものである。
ばね軸ホルダ-(1)は、ばねピストン(2)をスライドさせる為の円柱形のばね軸部を有し、一方は、ストッパ-ボルト(6)を固定するための、雌ねじがあり、他方は、ばねピストン(2)の突き当り用に、ばね軸部より大きな径で、外周ストッパ-(5)の内径より小さな径の円柱形状の突き当り部があり、そこにはストッパ-ボルト(6)を固定するための回り止め2面取りがあり、さらにばね軸と直交する方向の穴形状の1つのジョイント部をもつ。
ばねピストン(2)は、ばね軸ホルダ-(1)のばね軸部と摺動できる貫通穴のあいた外形2段の円柱構造で、小さいほうの円柱は、ばね(3)の内径側のガイドであり、大きいほうの円柱は、外周ストッパ-(5)の内径より大きく、かつばね(3)の外径より大きく、段差の部分が、ばね(3)の座面となり、大きいほうの円柱の外径部は、球面形状になっていて、シリンダ-ホルダ-(4)の内径と摺動可能な位置決めを行っていて、球面外形の中心点の軸方向の位置は、大きい方の円柱の軸方向センタ-にある。
ばね(3)は、圧縮ばねで、ばねピストン(2)の小さいほうの円柱のガイド部に挿入され座面位置で止まり、挿入した2個のばねピストン(2)の軸方向外寸でセット長が決定される。
シリンダホルダ-(4)は、ばねピストン(2)の球面状の外形が摺動可能な貫通穴の円筒形状で、ばね軸ホルダ-(1)のばね軸部と同じ長さで、円筒軸と直交する方向で両側に同軸上の凸形状の先端に穴のある円柱ボス部を設け、ジョイント部とし、本体の円筒部両サイド外形にネジ部を設け、外周ストッパ-(5)をねじ止めできるようになっている。
外周ストッパ-(5)は、すり割り付きロックナットで、段付きの貫通穴があり、大きな穴は、シリンダ-ホルダ-(4)の外形ネジ部と噛み合う雌ねじ部で、小さな穴に向かう段付き部は、ばねピストン(2)の突き当り部で、小さな穴の径は、ばね軸ホルダ-(1)のばねピストン(2)との突き当り部の径より大きく、かつ、ストッパ-ボルト(6)のフランジ部外径より大きく、ばねピストン(2)の球面状の外径より小さい。
ストッパ-ボルト(6)は、ばねピストン(2)の突き当りとなるフランジ付きボルトで、ばね軸ホルダ-(1)のばね軸端部にねじ止め可能で、フランジ外径は、ばねピストン(2)穴径より大きく、ばね軸ホルダ-(1)のばねピストン(2)との突き当り部と同じ径で、外周ストッパ-(5)の内径より小さい。
【請求項8】
請求項1、又は請求項3のいずれかの請求項で、シリンダ-ホルダ-(4)が、貫通穴タイプの物で、全長をばね軸ホルダ-(1)のばね軸部より短くして外周ストッパ-(5)の取り付け位置に幅を持たせ、ばね軸ホルダ-(1)のジョイント部と、シリンダ-ホルダ-(4)のジョイント部の取り付けピッチに調整幅を持たせた物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮ばねを使用した双方向ばねユニットに関するものである。双方向ばねユニットは、2つのジョイント部の距離が離れる場合も近ずく場合も基準の距離に復元しようとするばね力が発生するばねユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
双方向ばねに関しては、1985年に三菱電機のカ-ステレオのカセット装着排出機構の中で、ねじりコイルばねを使用した双方向リミッタ-がある。双方向ばねの概念は30年以上も前からの公知の技術である。双方向リミッタ-は、双方向ばねの機能的な呼び名である。
【0003】
図25に双方向リミッタ-の斜視図を示す。双方向リミッタ-はねじりばねで爪の付いた2つの部品を爪が閉じる方向にトルクを加えてある。2つの部品の爪は基準角度の60度に開いた状態で、部品同士が閉じる方向に突き当たっている。爪のついた2部品は軸方向の両サイドに同じ形状の爪がついている。
【0004】
そこに、魚のしっぽのような基準角度60度の扇型の尾を持つ2つのリンクを両サイドに配置して1つの軸で固定されている。
【0005】
手前のリンクを軸に対し例えば右に回転させると、手前左側の爪のついた回転部品が爪が開く側に力を受けて、ねじりばねを介して奥右側の爪のついた部品を回転させ奥側の魚の尾のついたリンクを右方向に回転させる。左回転では先に奥右側の爪のついた部品が左に回りねじりばねを介して手前左側の爪のついた部品が回転して奥側の魚の尾のリンクが左にまわる。どちらの回転方向でも、爪のついた部品同士は、ねじりばねを作用させる方向にのみ力を伝えている。以上が、ねじりばねを使った双方向リミッタ-である。
【先行技術文献】
【0006】
【文献】特開昭61-240470号広報
【文献】特開昭61-280066号広報(第9貢第3図 第10貢第6図)
【文献】特開昭61-280072号広報(第4貢第2図 第5貢第5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
三菱電機が出願した構造は、ねじりばねを使用していた。ねじりばねの他に、引っ張りばねや圧縮ばねが世の中で広く使われている。その中で、ばねに要求される荷重が大きくなると、引っ張りばねよりも圧縮ばねを使う傾向がある。これは、引っ張りばねのフック部が、荷重が大きくなると生産性や構造的にあまり適さなくなることによる。ねじりコイルばねも腕の長さが長くなるとモ-メントが大きくなり、ばね本体が大型化する傾向がある。圧縮ばねは、小さな物から大きなものまで広く世の中で使われている。
【0008】
そこで、圧縮ばねを使用した双方向ばねユニットに適した基本構造の一例を提示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
図1に、本発明の構成要素を示す。
ばね軸ホルダ-(1)は、ばねピストン(2)をスライドさせる為の円筒形のばね軸部と、それより大きな径の、ばねピストン(2)の突き当り部と、ばねユニットを他の部品と結合させる為のジョイント部からなる。ばねピストン(2)の突き当り部の外径を軸ストッパ-外径と呼ぶ。軸ストッパ-部分には、ストッパ-ボルト(6)をネジ締めする時の2面取等がある。ジョイント部の厚みがそれを兼ねる事もある。ジョイント部は、ばね軸と直交する方向の穴もしくは軸である。ジョイント部は、双方向ばねユニットを揺動リンク同士の位置決めに使用する場合は、1つで、直線運動の位置決めに使う場合は、複数個の事もある。直線運動に使用する場合は、ジョイント部は、ばね軸と直交する必用はない。ジョイント部は、必ずしも、ばね軸部と一体品である必要はなく、別体の時もある。ばね軸部先端には、ストッパ-ボルト(6)を固定するネジ穴がある。
【0010】
ばねピストン(2)は、穴のあいた2段の円柱構造で、小さいほうの円柱は、ばね(3)の内径側のガイドである。大きいほうの円柱は、ばね(3)の外径より大きく、段差の部分が、圧縮ばねの座面である。大きいほうの円柱の外径部は、球面又は、樽状になっている。以降球面という表現で球面及び曲率半径が、球のRより大きなRを持つ樽状側面も含む。大きい方の円柱の外形部に溝を設け、ピストンリングを装着する場合は、円筒形状でも良い。外径の最大径の部分は、球の直径となるように球形の中心の軸方向位置は、大きな方の円柱の軸方向センタ-にある。2個の球面状のばねピストン外径が、シリンダホルダ-(4)のガイドになっている。中央の貫通穴は、ばね軸ホルダ-(1)のばね軸部と隙間設定でスライドできるようになっている。ばねピストン(2)の穴の内径は、軸ストッパ-外径より小さい。ばねピストンの外径部は、球面状の最大外径とそれより小さい端面部外径がある。端面部外径は、外周ストッパ-(5)の内径よりも大きい。ばねピストン(2)は、ばねの座面と反対側に内径側の当たり面と外周側の当たり面があり、軸方向の位置決めが行われる。
【0011】
ばね(3)は、圧縮ばねである。ばねピストン(2)のガイド部に挿入される。2個のばねピストンの距離でセット長が決まる。
【0012】
シリンダホルダ-(4)は、中空の円筒形状に、双方向ばねユニットを他の部品と結合させる為のジョイント部と、外周ストッパ-(5)を固定するための外形にネジ部又は内径に溝を持つ。シリンダホルダ-(4)の内径が、2個の球面状のばねピストン(2)の外径と嵌合し軸の位置決めが行われる。シリンダホルダ-(4)の内径は、ばねピストン(2)の外径と隙間設定でスライド可能である。ジョイント部は、シリンダ部の軸と直交する穴もしくは軸である。こちらも、1から複数のジョイント部の事がある。シリンダホルダ-(4)は、図5図6のように、片側袋形状の物もある。この時、袋形状の底の部分は、外周ストッパ-(5)の機能となるように、ばねピストン(2)との当たり部がある。
【0013】
外周ストッパ-(5)は、シリンダホルダ-(4)の外形にネジを切る場合は、すり割り付ロックナット又はダブルナット式ロックナット。内径に溝を設ける場合は、穴用C形止め輪又は穴用テ-パサ-クリップである。図16参照。外周ストッパ-(5)は、ばねピストン(2)の外周側の軸方向の当たりとなる。
【0014】
ストッパ-ボルト(6)は、ばね軸ホルダ-(1)の軸ストッパ-外径と同外径のワッシャ-と通常のボルトをセットにしたものである。専用一体品でも良い。ストッパ-ボルト(6)は、ばねピストン(2)との内径側の軸方向当たりとなる。
以上が、構成要素である。
【0015】
ばね軸ホルダ-(1)のばね軸部に、ばねピストン(2)を突き当り部まで挿入し、ばねピストン(2)にばね(3)を挿入し、ばね(3)の逆側にもう一つのばねピストン(2)を挿入する。ストッパ-ボルト(6)で、ばねピストン(2)とばね(3)とばねピストン(2)を、ばね軸ホルダ-(1)にネジ締め固定する。ばね(3)は、自由長の状態から、ストッパ-ボルト(6)の締め付けにより、セット長1となる。セット長1は、一般的に圧縮ばねを使用する時のセット位置で自由長より短い。セット長2は、その状態からばねが最大ストロ-クした時の長さである。
【0016】
シリンダホルダ-(4)を2個のばねピストン(2)の外径部に挿入し外周ストッパ-(5)で固定する。この時、ばね軸ホルダ-(1)のジョイント部が、外周ストッパ-(5)の内径より大きく外周ストッパ-(5)を後から組みつけられない場合は、ばねピストン(2)をストッパ-ボルト(6)で組みつける前に外周ストッパ-(5)をばね軸ホルダ-(1)に挿入しておく。
【0017】
軸スラスト方向の位置決めは、シリンダホルダ-(4)の両端に固定される外周ストッパ-(5)が、ばねピストン(2)と外周側で当たる事で位置決めされる。2つの外周ストッパ-(5)の内径部の軸方向距離は、ストッパ-ボルト(6)でセットされた、2つのばねピストン(2)の軸方向の外寸と同じ寸法とする。これをばねピストンセット距離と呼ぶ。それは、ばね軸ホルダ-(1)のばね軸部の長さでもある。片側袋形状のシリンダホルダ-(4)の場合は、円筒の底部のばねピストン(2)とのあたり面から外周ストッパ-あたり面までの距離が、ばねピストンセット距離となる。
【0018】
図2に組立後の斜視図を示す。図3に断面図を示す。外周ストッパ-(5)の内径は、ばねピストン(2)の外径より小さく、軸のストッパ-外径より大きい。ストッパ-ボルト(6)の外径は、軸ストッパ-外径と同じ寸法であり、外周ストッパ-内径より小さい。以上の関係で、双方向ばねユニットが構成される。
【発明の効果】
【0019】
図4に圧縮ばねを使用した双方向ばねユニットの動作図を示す。
図4の上の図で基準位置での断面図を示す。ばねピストン(2)の2個の軸方向外寸は、ばね軸ホルダ-(1)のばね軸部の長さと同じであり、ばね軸ホルダ-(1)のストッパ-部とストッパ-ボルト(6)により、それ以上広がらないようになっている。シリンダホルダ-(4)の軸方向端面外寸は、ばね軸部と同じ長さで外周ストッパ-(5)にて同じく、ばねピストン(2)がそれ以上広がらないようになっている。
【0020】
図4の真ん中の図は、シリンダホルダ-(4)が左にストロ-クした状態を示す。シリンダホルダ-(4)の右側の外周ストッパ-(5)により、ばねピストン(2)が左に押されてばね(3)が圧縮する。ばね長は、セット長2となる。
【0021】
図4の下図は、シリンダホルダ-(4)が右に移動した状態を示す。今度は、シリンダホルダ-の左側の外周ストッパ-(5)によりばねピストン(2)が右に押されてばねが圧縮する。ばね長は、セット長2となる。
【0022】
以上のようにばね軸ホルダ-(1)を固定した場合、シリンダホルダ-(4)を右にも左にも移動することができ、基準の位置に復元しようとするばね力が発生する。これは、ばね力を介して位置決めを行う事が出来る事を意味する。
【0023】
これは、1つのばねで、圧縮ばねと引っ張りばねの両方の機能を有する事と同じである。ばね力の左右方向のばらつきも、1つのばねの為発生しない。また、コスト、構造、スペ-ス効率も2つのばねを使用するより優れている。
【0024】
動きだしの荷重は、セット長1のセット荷重で自由に設定できる。通常2つのばねで両方向の復元力を与えると、ばね同士の力が干渉することがあり、干渉しないように特殊な構造を設定する必用がある。
【0025】
片側のストロ-クは、セット長1とセット長2の差である。両方向に使えるので、同じ仕様のばねを使用した時の2倍のストロ-ク範囲をカバ-できる。
【0026】
以上が、双方向ばねユニットの基本的な特徴であり、ばねの使用において非常に便利な機械要素の1つである。
【0027】
図5は、シリンダホルダ-(4)を袋工事の筒状とした一般的なばねユニットの形状にした双方向ばねユニットの斜視図である。図6は、その断面図を示す。
【0028】
ばねピストン(2)は、ばね軸ホルダ-(1)のばね軸部やシリンダホルダ-(4)のシリンダ部内径と小さな隙間設定になっているので、2つのばねピストン(2)の間の空間の体積が変化すると、通常、中の空気を圧縮したり膨張させたりすることになる。ばねピストン(2)は内部の空気に対しエンジンのピストンの様な働きを持つことになる。
【0029】
空気の圧力の影響で本来のばね荷重と違う特性をもつので、その、影響を考慮する必要がある。又、シリンダホルダ-(4)の袋工事側も体積が変化するので、影響を考える必要がある。袋工事側の影響を小さくする方法の1つに図5に示すように空気抜き穴を設ける方法もある。
【0030】
体積変化による圧力の影響を小さくするには、ばねピストン(2)が中の流体を圧縮膨張させないように、流体の流路を作れば良い。図7にばねピストン(2)の斜視図を、図8にその断面図を示す。ばねピストン(2)は、図8の様にばね軸挿入部長さがシリンダ挿入部長さより長くなっている。その理由は、圧縮ばねのガイド軸は、一般的に内径側で行うためそうした。また、部品の重量を考慮すると内径側を長くする方が有利である。
【0031】
ばねピストン(2)の外周部が球面または樽状になっている理由を述べる。ばね(3)は、端末を研削してもばね軸に対し完全に垂直にはならない。したがって、ばねピストン(2)を傾ける力が常に発生する。そこで、ばねピストン(2)の内径とばね軸外径のクリアランス分、ばねピストン(2)は、ばね軸に対して微小に傾く事になる。2つのばねピストン(2)の軸は、一致しない。ばねピストン(2)の外径を通常の円筒形にすると、軸のずれた2つの円筒で、シリンダホルダ-(4)を位置決めする事になるが、幾何学的に成立しない。そこで、ばねピストンの外周部を球形にすることで、2つの球面でシリンダホルダ-(4)の軸を1つに決める事ができる。球面が理想であるが、球面は、シリンダ内径との円周状の線接触となり摩耗しやすい。そこで、耐久性を考慮すると球面の半径R1よりも大きな曲率半径R2を持つ樽状形状が現実的には好ましい。
【0032】
疑似的には、シリンダ挿入部長さの短い円筒形状として、両サイドに鋭角のテ-パを設け円筒部とのつなぎをRでつなげても同様な効果が得られる。
【0033】
図9にばねピストン(2)の外周部にDカットと2面取を行った図を示す。この構成は、ばねピストン(2)の外径を大きくせずに流体の流路を設ける事が出来る。
【0034】
図10にばねピストン(2)の外形にピストンリングのあるばねピストン(2)の斜視図を示す。図11にその断面図を示す。この構成は、流体の抵抗を積極的に利用する場合で、流体の流路は穴とする。
【0035】
まとめると、図3に示す本発明の基本構造は、次の特徴がある。
【0036】
ばね軸ホルダ-(1)とシリンダホルダ-(4)の直動軸受構造は、2個の摺動するばねピストン(2)が直動軸受の役割を担っている。前記のようにシリンダホルダ-(4)の軸決めは、2個のばねピストン(2)の外径を球面にした時にのみ厳密には成立する。また、ばねピストン(2)は、ばね軸部及び、シリンダ内径部と微小すきまの設定であるため、エンジンのピストンの様に流体に対する作用を持っている。
【0037】
この2つの特徴を考えた時、2つのばねピストン(2)の外径を球面又は樽状にすることで、スム-ズな直動動作を得る事ができる。
【0038】
ばねピストン(2)に流体の流路を設定することで、その影響をコントロ-ルすることが出来る。
【0039】
図12は、シリンダホルダ-(4)を袋形状にした図5図6の一般的ばねユニット形状のジョイント部の穴ピッチを短くするために、ばねピストン(2)の形状を工夫したものの断面図を示す。図13は、その時のばねピストン(2)の断面図を示す。ストッパ-ボルト(6)のストロ-ク分ストッパ-ボルト(6)の外径より大きな径でかつ、ばね(3)内径より小さな径で逃がしを設けたものの断面図である。この形状のばねピストン(2)を使用する時は、併せてばね軸ホルダ-(1)のばね軸部を逃がし分短く設定する必用がある。また、逃がし穴のあるばねピストン(2)を使用すると、ばねピストン(2)を傾けるような力がより加わりやすくシリンダホルダ-(4)とかじりやすくなるので、ばねピストン(2)の外周は球面形状である必要性が高い。
【0040】
ばねピストン(2)にストッパ-ボルト(6)のストロ-ク分の逃がし穴を設置すると双方向ばねユニットを短く出来る。
【0041】
図14図15でシリンダホルダ-(4)のジョイント部の形状を示す。
【0042】
図14はシリンダホルダ-(4)の内径が貫通穴になっているタイプのジョイント部の形状を示す。上の図は、シリンダ軸とジョイント部の軸が交差して重なる形状を示し、原理モデル的な配置である。直交するボス形状を上下に設けていてそれに穴を設けて部品を固定するような形状である。ボス部を軸形状にして部品を固定する場合もある。図14のまん中の図は、ジョイント部を固定するための貫通穴をシリンダ内径と干渉しないようにずらして配置した形状を示す。図14下の図は、ジョイント貫通穴を2つにしてシリンダ内径と干渉しないように配置した例である。
【0043】
図15にシリンダホルダ-(4)を袋形状にした例を示す。図14図15で外周ストッパ-の固定は、すり割り付ロックナットやダブルナット式ロックナットの場合は、シリンダホルダ-外周の片側もしくは両側にねじ部を設ける。穴用C形止め輪や穴用テ-パサークリップを使用する時は、シリンダ内径部に溝を設置する。図16参照。
【0044】
揺動リンク同士の接続に双方向ばねユニットを使用する時は、ジョイント部は、ばね軸ホルダ-(1)に穴1つ、シリンダホルダ-(4)に穴1つが良い。直動部品の位置決めに使用する時は、ばね軸ホルダ-(1)又はシリンダホルダ-(4)の片側に穴2つ以上の設定を行うと良い。その時、双方向ばねユニットを直動部品の軸受かつ位置決めとして使用する事が出来る。
【0045】
双方向ばねユニットは、ばね軸ホルダ-(1)とシリンダホルダ-(4)のばね軸方向の位置決めができるが、ばね軸に対しての回転方向は、位置決めが出来ない。通常2つの揺動リンクの間に、設置する場合は、そのことは、好都合である。しかし、直動部品間の軸受と位置決めを同時に行おうとすると回転してしまうことは適さない事が多い。そこで、回転方向の位置決めも併せておこなえる方法を提示する。
【0046】
図24にその例を示す。
ばね軸ホルダ-(1)とシリンダホルダ-(4)にジョイント穴をそれぞれ追加してそこに、ジョイントリンク1(10)をばね軸ホルダ-(1)と回転可能に接合軸(12)で結合する。同様に、シリンダホルダ-(4)にジョイントリンク2(11)を回転可能に結合する。ジョイントリンク1(10)とジョイントリンク2(11)も回転可能に結合する。すると、ばね軸ホルダ-(1)とシリンダホルダ-(4)は、軸方向に自由に動ける状態で回転方向は固定される。これは、航空機のタイヤに使われている構造である。この構造は、図21のばね軸ホルダ-(1)のジョイント部別体式の微調整機構でも使用可能である。又、2つのジョイントリンクの角度位置決めに使う事もできる。
【0047】
図25図24で追加したジョイントリンク1(10)2(11)をばね軸を対象軸に左右対称には位置したパンタグラフの構造を示す。この構造は、リンクの角度位置決めやリンクにジョイント部を設けた場合、通常のばね特性とは違うばね特性を与える事ができる。ジョイントリンク1(10)とジョイントリンク2(11)の、接合軸間の長さは、同じ必要はない。
【0048】
外周ストッパ-(5)として、すり割り付ロックナット又はダブルナット式ロックナットを図15の袋工事タイプのシリンダホルダ-(4)に1個使うと位置決め部の遊びを小さく出来る。ばね軸ホルダ-(1)のばね軸部長さやシリンダホルダ-(4)で、穴用C形止め輪用の溝位置の寸法は、加工精度上の誤差があり、組立性を考慮するとシリンダホルダ-(4)側が、公差分大きく設定する必用があり、位置決め位置に遊びが出来る。
すり割り付ロックナット又はダブルナット式ロックナットは、その遊びをほぼゼロにできる。
【0049】
図16のすり割り付ロックナット又は外周側ダブルナット式ロックナットは、穴の内径側に設置するタイプのロックナットと違い、外径側にねじを切るので、ねじ部の寸法分、双方向ばねユニットの軸方向の寸法を小さくすることが出来る。これは、ばね軸ホルダ-(1)の先端にめねじを切ってストッパ-ボルト(6)を使用したのと同じ考え方で双方向ばねユニットを短くするための工夫である。図22のばね軸ホルダ-(1)がめねじ仕様の物も同様の思想でる。
【0050】
外周ストッパ-(5)として、すり割り付ロックナットやダブルナット式ロックナットを、図14の貫通穴タイプのシリンダホルダ-(4)に2個両端で使用すると位置決め位置での遊びをゼロにする事が出来る事に加えて、ばね軸ホルダ-(1)とシリンダホルダ-(4)の位置の微調整が可能となる。言い換えれば、双方向ばねユニットでの位置決め微調整機構となる。その時は、調整代の2倍分シリンダホルダ-(4)の軸方向端面距離を短く設定する必用がある。
【0051】
図17にばね軸ホルダ-(1)を、旋盤加工一体品にした双方向ばねユニットの斜視図を示す。図18にその断面図を示す。図19図20に組立の手順を示す。図19では、ばね軸ホルダ-(1)にばねピストン(2)ばね(3)ばねピストン(2)をワッシャ-(7)ストッパ-ボルト(6)でネジ締め固定する。図では、今まではストッパ-ボルト(6)は広いつばを持つ専用品で説明していたが、実際は、ワッシャ-(7)と通常のボルト(6)で良い。
【0052】
図20は、図19で組んだサブASSYをシリンダホルダ-(4)に挿入してから外周ストッパ-(5)で固定する。この時、ばね軸ホルダ-(1)のジョイント部は、外周ストッパ-内径より小さい径である必要がある。図18参照。
【0053】
ばね軸ホルダ-(1)を丸棒の旋盤加工一体品にして、ジョイント部の径をストッパ-径以下にすると、図19図20のように組立性が良くなり部品としてのコストの低減が図れる。
【0054】
図21に取り付けピッチ調整機構を備えた双方向ばねユニットの分解斜視図を示す。
ばね軸ホルダ-(1)のジョイント部を別体としてダブルナットの様な構造で、取り付けピッチの位置の微調整が行える。双方向ばねユニットは、位置決めに利用する事が多く、微調整機構で位置合わせが出来るのは、非常に便利な機能である。しかも、この構造は、双方向ばねユニットを機械に取り付けた状態で調整可能である。図21で、ばね軸ホルダ-(1)の六角部を回し適切なピッチの所でナットにて固定することができる。それは、ばね軸ホルダ-(1)とシリンダホルダ-(4)が回転を許容する構造であるために可能である。また、ジョイント部を別体とすると、組立時にジョイント部の径が外周ストッパ-(5)の内径より小さくなくても組立が可能となる。
【0055】
図2の構造も、外周ストッパ-が、すり割り付ロックナットやダブルナット式ロックナットを両端で2個を使用する場合は、ばね軸ホルダ-(1)とシリンダホルダ-(4)の取り付けピッチの微調整が可能となる。
【0056】
図22図23にばね軸ホルダ-(1)のジョイント部を別体にした斜視図を示す。
図22のばね軸ホルダ-(1)は、両端めねじの仕様で、六角鋼と丸棒の場合を示す。
丸棒を使う時は、2面取を行う。ばね軸ホルダ-(1)側をめねじにすることで、微調整機構の一部をばねピストン(2)の内側にレイアウトする事が出来て双方向ばねユニットの全長を短くできる。
【0057】
図23のばね軸ホルダ-(1)は、ジョイント部側がおねじの仕様を示し、六角鋼と丸棒の場合を示した。
【0058】
また、図22図23に示すように別体にすることで、ばね軸ホルダ-(1)の形状は、単純になり、六角鋼または丸棒の旋盤加工品を使う事ができる。
【0059】
図26は、従来技術の説明図で三菱電機が、カセットデッキで出願したねじりばねを使った双方向ばねの構造の斜視図を示す。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】本発明の分解斜視図である。
図2】本発明の斜視図である。
図3】本発明の断面図である。
図4】本発明の動作断面図である。
図5】シリンダホルダ-(4)が片側袋形状の本発明の斜視図である。
図6】シリンダホルダ-(4)が片側袋形状の本発明の断面図である。
図7】ばねピストン(2)の斜視図である。
図8】ばねピストン(2)の断面図である。
図9】ばねピストン(2)のDカットと2面取の斜視図である。
図10】ばねピストン(2)に流体流路穴を設け外径をピストンリングにした斜視図である。
図11図10の断面図である。
図12】本発明の取り付け長さを短くするための断面図である。
図13】[図12]に使用されるばねピストン(2)の断面図である。
図14】貫通穴形状のシリンダホルダ-(4)の斜視図である。
図15】片側袋形状のシリンダホルダ-(4)の斜視図である。
図16】外周ストッパ-(5)の種類を示した斜視図である。
図17】旋盤加工一体型のばね軸ホルダ-(1)での本発明の斜視図である。
図18図17の断面図である。
図19図17のばね軸部の組立用の分解斜視図である。
図20図17の全体の組立用の分解斜視図である。
図21】取り付けピッチ調整機構がついた本発明の分解斜視図である。
図22図21の調整機構がついたばね軸ホルダ-(1)の分解斜視図である。ばね軸ホルダ-(1)は両端めねじ仕様
図23図21の調整機構がついたばね軸ホルダ-(1)の分解斜視図である。ばね軸ホルダ-(1)はおねじめねじ仕様
図24】双方向ばねユニットを直動軸受及びばねによる位置決め機能を待たせる構造の斜視図である。
図25】双方向ばねユニットをパンタグラフに使った斜視図である。
図26】従来技術の斜視図である。ねじりばねを使用した双方向ばねユニット。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1に本発明の実施例を示す。ばね軸ホルダ-(1)は、ばねピストン(2)をスライドさせる為の円筒形のばね軸部と、それより大きな径の、ばねピストン(2)の突き当り部と、ばねユニットを他の部品と結合させる為のジョイント部からなる。軸ストッパ-部分には、ストッパ-ボルト(6)をネジ締めする時の2面取がある。ジョイント部は、ばね軸と直交する方向の穴である。ばね軸部先端には、ストッパ-ボルト(6)を固定するネジ穴がある。
【0062】
ばねピストン(2)は、穴のあいた2段の円柱構造で、小さいほうの円柱は、ばね(3)の内径側のガイドである。大きいほうの円柱は、ばねの外径より大きく、段差の部分が、圧縮ばねの座面である。大きいほうの円柱の外径部は、球面又は、樽状になっている。以降球面という表現で球面及び曲率半径が、球のRより大きなRを持つ樽状側面も含む。外径の最大径の部分は、球の直径となるように球形の中心の軸方向位置は、大きな方の円柱の軸方向センタ-にある。2個の球面状のばねピストン外径が、シリンダホルダ-(4)のガイドになっている。ばねピストン(2)の中央の貫通穴は、ばね軸ホルダ-(1)のばね軸部と隙間設定でスライドできるようになっている。ばねピストン(2)の穴の内径は、軸ストッパ-外径より小さい。ばねピストン(2)の外径部は、球面状の最大外径とそれより小さい端面部外径がある。端面部外径は、外周ストッパ-内径よりも大きい。
【0063】
ばね(3)は、圧縮ばねである。
【0064】
シリンダホルダ-(4)は、中空の円筒形状で貫通穴になっている。双方向ばねユニットを他の部品と結合させる為のジョイント部と、外周ストッパ-(5)を固定するための外形にネジ部を両端にもつ。シリンダホルダ-(4)の内径は、2個の球面状のばねピストン(2)外径によって軸の位置決めが行われる。シリンダホルダ-(4)の内径は、ばねピストン(2)の外径と隙間設定でスライド可能である。ジョイント部は、シリンダ部の軸と直交する穴もしくは軸である。
【0065】
外周ストッパ-(5)は、すり割り付ロックナットである。
【0066】
ストッパ-ボルト(6)は、ばね軸ホルダ-(1)の軸ストッパ-外径と同外径のワッシャ-と通常のボルトをセットにしたものである。
【0067】
ばね軸ホルダ-(1)のばね軸部に、ばねピストン(2)を突き当り部まで挿入し、ばねピストン(2)にばね(3)を挿入し、ばね(3)の逆側にもう一つのばねピストン(2)を挿入する。ストッパ-ボルト(6)で、ばねピストン(2)とばね(3)とばねピストン(2)を、ばね軸ホルダ-(1)にネジ締め固定する。
【0068】
シリンダホルダ-(4)を2個のばねピストン(2)の外径部に挿入し外周ストッパ-(5)すなわち、すり割り付ロックナットで固定する。この時、ばね軸ホルダ-(1)のジョイント部が、すり割り付ロックナットの内径より大きく、後から組みつけられない場合は、ばねピストン(2)をストッパ-ボルト(6)で組みつける前にすり割り付ロックナットをばね軸ホルダ-(1)のストッパ-部に挿入しておく。組みやすくするには、あらかじめ、シリンダホルダ-(4)に一つのすり割り付ロックナットを固定しておくと良い。
【0069】
以上で、双方向ばねユニット貫通タイプの組み付けが終了する。すり割り付ロックナットの締め付けで、位置決め時の遊びを小さく出来る。また、2個のすり割り付ロックナットの位置を調整する事でばね軸ホルダ-(1)とシリンダホルダ-(4)の位置の微調整も可能である。
【0070】
双方向ばねユニットは、ばね軸ホルダ-(1)を固定すれば、シリンダ-ホルダ-(4)は、図4のように基準位置にセットされ、左右に位置がずれるとばね力により復元力が働く。基準位置に戻る力は、セット長1の時のセット荷重から始まる。ストロ-クは、同じ仕様のバネを使った場合の2倍の範囲をカバ-できる。
【符号の説明】
【0071】
1 ばね軸ホルダ-
2 ばねピストン
3 ばね
4 シリンダホルダ-
5 外周ストッパ-
6 ストッパ-ボルト
7 ワッシャ-
8 別体ジョイント
9 ナット
10 ジョイントリンク1
11 ジョイントリンク2
12 接合軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26