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特許7510048ホース継手の製造方法およびホースアッセンブリの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】ホース継手の製造方法およびホースアッセンブリの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 33/207 20060101AFI20240626BHJP
   F16L 13/007 20060101ALI20240626BHJP
   B21D 39/04 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
F16L33/207
F16L13/007
B21D39/04 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020088080
(22)【出願日】2020-05-20
(65)【公開番号】P2021181817
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】滝 夏摘
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-081024(JP,A)
【文献】特開2019-051539(JP,A)
【文献】特開2006-097716(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0211728(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 33/207
F16L 13/007
B21D 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニップルの外周面とソケットの内周面との間にホースが介在しない状態で、前記外周面に形成されている凹状の受圧部分に対して、前記内周面に形成されている凸状の係合部を加締めることにより嵌合させて前記ニップルと前記ソケットとが分離しないように互いを一体化するホース継手の製造方法において、
前記係合部を加締めた時に加締力を受ける前記受圧部分について、前記係合部を加締めた時の半径方向変化具合と軸方向伸びとの相関関係を把握し、前記ニップルを形成する材料の破断伸びと前記相関関係に基づいて、前記係合部を加締めた時に前記受圧部分に生じる軸方向伸びが前記破断伸びよりも小さくなる前記半径方向変化具合の許容範囲を算出し、前記半径方向変化具合が前記許容範囲になるように前記係合部を加締めることで、前記ニップルと前記ソケットとを一体化することを特徴とするホース継手の製造方法。
【請求項2】
ニップルの外周面とソケットの内周面との間にホースが介在しない状態で、前記外周面に形成されている凹状の受圧部分に対して、前記内周面に形成されている凸状の係合部を加締めることにより嵌合させて前記ニップルと前記ソケットとが分離しないように互いを一体化するホース継手の製造方法において、
前記係合部を加締めた時に加締力を受ける前記受圧部分について、前記係合部を加締めた時の半径方向変化具合と軸方向伸びとの相関関係を把握し、前記半径方向変化具合の許容範囲を予め設定しておき、前記許容範囲の上限で前記係合部を加締めた時の前記軸方向伸びの上限値を前記相関関係に基づいて算出し、算出した前記上限値よりも大きな破断伸びを有する材料によって前記ニップルを製造し、前記半径方向変化具合が前記許容範囲になるように前記係合部を加締めることで、前記ニップルと前記ソケットとを一体化することを特徴とするホース継手の製造方法。
【請求項3】
前記半径方向変化具合として、下記(1)式により算出される押込み率を用いる請求項1または2に記載のホース継手の製造方法。
押込み率={(加締前のニップルの受圧部分の外径-加締後のニップルの受圧部分の外径)/2}/加締前のニップル受圧部分の外径 ×100(%)・・・(1)
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のホース継手の製造方法により前記ホース継手を製造し、この製造されたホース継手の前記ソケットの内周面と前記ニップルの外周面との間にホースの長手方向端部を挿入した状態で、前記ソケットの外周面を加締めることで、前記ホース継手と前記ホースとを一体化するホースアッセンブリの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホース継手の製造方法およびホースアッセンブリの製造方法に関し、さらに詳しくは、ソケットの加締めに起因してニップルに過度の負荷を作用させることなく、ニップルとソケットとを適切に一体化させることができるホース継手の製造方法およびこの製造方法で製造されたホース継手を用いたホースアッセンブリの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホースを種々の機器に接続する際には、ホースの長手方向端部にホース継手が取り付けられる。ホース継手は、一般的にニップルとソケットとで構成されていて、互いの係合部が係合して一体化している(例えば、特許文献1、2参照)。詳述すると、ソケットに形成されている係合部を、凹状表面を有するニップルの受圧部分に加締めることによって、ソケットとニップルとは互いの係合部を係合させて一体化されている。ソケットをニップルに加締める際の加締力が大きくなるに連れて、ニップルに作用する負荷が大きくなる。
【0003】
ホース継手はホースに対してソケットを加締めることでホースの一端部に固定されるので、ホースに取り付ける前のホース継手においては、ニップルとソケットとが分離しない程度に一体化されていればよい。それ故、ソケットを加締めてホース継手を製造する際には、ニップルに過度の負荷を作用させることなく、ニップルとソケットとを一体化させることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-25512号公報
【文献】特開2019-51539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ソケットの加締めに起因してニップルに過度の負荷を作用させることなく、ニップルとソケットとを適切に一体化させることができるホース継手の製造方法およびこの製造方法で製造されたホース継手を用いたホースアッセンブリの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明のホース継手の製造方法は、ニップルの外周面とソケットの内周面との間にホースが介在しない状態で、前記外周面に形成されている凹状の受圧部分に対して、前記内周面に形成されている凸状の係合部を加締めることにより嵌合させて前記ニップルと前記ソケットとが分離しないように互いを一体化するホース継手の製造方法において、前記係合部を加締めた時に加締力を受ける前記受圧部分について、前記係合部を加締めた時の半径方向変化具合と軸方向伸びとの相関関係を把握し、前記ニップルを形成する材料の破断伸びと前記相関関係に基づいて、前記係合部を加締めた時に前記受圧部分に生じる軸方向伸びが前記破断伸びよりも小さくなる前記半径方向変化具合の許容範囲を算出し、前記半径方向変化具合が前記許容範囲になるように前記係合部を加締めることで、前記ニップルと前記ソケットとを一体化することを特徴とする。
【0007】
本発明の別のホース継手の製造方法は、ニップルの外周面とソケットの内周面との間にホースが介在しない状態で、前記外周面に形成されている凹状の受圧部分に対して、前記内周面に形成されている凸状の係合部を加締めることにより嵌合させて前記ニップルと前記ソケットとが分離しないように互いを一体化するホース継手の製造方法において、
前記係合部を加締めた時に加締力を受ける前記受圧部分について、前記係合部を加締めた時の半径方向変化具合と軸方向伸びとの相関関係を把握し、前記半径方向変化具合の許容範囲を予め設定しておき、前記許容範囲の上限で前記係合部を加締めた時の前記軸方向伸びの上限値を前記相関関係に基づいて算出し、算出した前記上限値よりも大きな破断伸びを有する材料によって前記ニップルを製造し、前記半径方向変化具合が前記許容範囲になるように前記係合部を加締めることで、前記ニップルと前記ソケットとを一体化することを特徴とする。
【0008】
本発明のホースアッセンブリの製造方法は、上記のいずれかに記載のホース継手の製造方法により前記ホース継手を製造し、この製造されたホース継手の前記ソケットの内周面と前記ニップルの外周面との間にホースの長手方向端部を挿入した状態で、前記ソケットの外周面を加締めることで、前記ホース継手と前記ホースとを一体化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のホース継手の製造方法では、前記ソケットを加締めた時に加締力を受ける前記ニップルの受圧部分について、前記ソケットを加締めた時の半径方向変化具合と軸方向伸びとの相関関係を把握し、この相関関係を利用する。
前者のホース継手の製造方法では、前記ソケットを加締めた時に前記受圧部分に生じる軸方向伸びが前記破断伸びよりも小さくなる前記半径方向変化具合の許容範囲を算出し、前記半径方向変化具合が前記許容範囲になるように前記ソケットを加締める。そのため、ソケットを加締める際にニップルに損傷が生じるような過度の負荷を作用させることなく、ニップルとソケットとを適切に一体化させることができる。この製造方法は、ニップルを形成する材料が特定されている場合に好適である。
【0010】
後者のホース継手の製造方法では、前記半径方向変化具合の許容範囲を予め設定しておき、前記許容範囲の上限で前記ソケットを加締めた時の前記軸方向伸びの上限値を前記相関関係に基づいて算出し、算出した前記上限値よりも大きな破断伸びを有する材料によって前記ニップルを製造する。そして、前記半径方向変化具合が前記許容範囲になるように前記ソケットを加締める。そのため、ソケットを加締める際にニップルに損傷が生じるような過度の負荷を作用させることなく、ニップルとソケットとを適切に一体化させることができる。この製造方法は、ニップルに用いる適切な材料を選択する場合に好適である。
【0011】
本発明のホースアッセンブリの製造方法によれば、ニップルに過度の加締力を付与することなく、ニップルとソケットとが適切に一体化されているホース継手を使用するので、所定品質のホースアッセンブリを製造するには有利になる。また、ホースの長手方向端部にホース継手を取り付ける作業を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ホース継手を縦断面視で例示する説明図である。
図2図1のA-A断面図である。
図3】ホースアッセンブリを縦断面視で例示する説明図である。
図4図3のB-B断面図である。
図5】ニップルをソケットに挿入している状態を縦断面視で例示する説明図である。
図6】ソケットの係合部をニップルの受圧部分の外周面に当接させた状態を縦断面視で例示する説明図である。
図7図6のソケットをニップルに加締めた後の状態を例示する説明図である。
図8】ニップルの受圧部分の半径方向変形具合と軸方向伸びとの関係を模式的に例示し、ソケットを加締める時のニップルの半径方向変形具合を決定する場合を示すグラフ図である。
図9】ニップルの受圧部分の半径方向変形具合と軸方向伸びとの関係を模式的に例示し、ニップルに用いる材料を決定する場合を示すグラフ図である。
図10】ホースの長手方向端部にホース継手を取り付ける工程を縦断面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のホース継手の製造方法およびホースアッセンブリの製造方法を、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0014】
図1図2に例示するホース継手1は、本発明の製造方法により製造されたものである。このホース継手1は、筒状のニップル2と筒状のソケット3とを備えている。図中の一点鎖線CLは、ニップル2およびソケット3の筒軸心を示している。
【0015】
鋼材等で製造されている金属製のニップル2は、外周面が凹状に形成されている受圧部分2aと、周方向に延在する凸状の係合部2bと、周方向に延在する複数の小さな抜け止めが突設された挿入部2cとを有している。受圧部分2aは円筒形状である。受圧部分2a、係合部2b、挿入部2cの順で軸方向に連続的に配置されている。
【0016】
鋼材等で製造されている金属製のソケット3の内周面には、周方向に延在する凸状の係合部3aと、周方向に延在する先端が尖った複数の爪部3bとが形成されている。係合部3aはソケット3の軸方向一方端部に形成されていて、それぞれの環状の爪部3bは軸方向に間隔をあけて配置されている。
【0017】
ソケット3にニップル2が挿入された状態で、ソケット3の環状の係合部3aが、受圧部分3bの環状の凹状の外周面に嵌っている。そして、係合部2bと係合部3aとが係合することで、ニップル2とソケット3とが一体化されている。爪部3bは、挿入部2cの外周側に間隔をあけて挿入部2cと対向して配置されている。
【0018】
図3図4に例示するホースアッセンブリ4は、本発明の製造方法により製造されたものである。このホースアッセンブリ4は、ホース5と本発明によって製造されたホース継手1とを備えている。ホース5は可撓性を有していて、ゴムや樹脂の内部に補強層が同軸状に埋設されたゴムホースや樹脂ホースである。
【0019】
ホース5の長手方向端部5Aには挿入部2cが挿入されていて、かつ、ソケット3が外挿されている。即ち、ホース5の長手方向端部5Aは、ニップル2とソケット3と間に配置されて、これらに挟持されている。長手方向端部5Aの外周面にはそれぞれの爪部3bが内周側に向かって食い込んでいる。
【0020】
以下、ホース継手1を製造する手順の一例を説明する。
【0021】
ホース継手1を製造するには図5に例示するように、ソケット3にニップル2を挿入して係合部3aを受圧部分2aに位置決めする。次いで、図6に例示するように、受圧部分2aに位置決めした係合部3aを受圧部分2aの外周面に当接させる。図6図7では、受圧部分2aを破線の斜線で示している。
【0022】
図6に例示するようにソケット3を加締める前の受圧部分2aは、外径D1、内径d1、軸方向長さL1である。係合部3aの外周側にはソケット加締め治具6が配置される。ソケット加締め治具6は、公知の種々の仕様のものを使用できる。
【0023】
次いで、図7に例示するように、係合部3aの外周面をソケット加締め治具6によって内周側に向かって押圧する。これにより、ソケット3(係合部3a)が加締められて、係合部3aは受圧部分2aを押圧して受圧部分2aにしっかりと篏合し、係合部2bと係合部3aとが係合してニップル2とソケット3とは分離しない程度に一体化する。
【0024】
図7に例示するようにソケット3を加締めた後の受圧部分2aは、外径D2、内径d2、軸方向長さL2である。受圧部分2aはソケット3を加締めることで塑性変形して、外径Dは小さくなり(D1>D2)、内径dは小さくなり(d1>d2)、軸方向長さLは大きくなる(L1<L2)。
【0025】
図6に例示するソケット3の加締め前の受圧部分2aの体積V1と、図7に例示するソケット3の加締め後の受圧部分2aの体積V2とは同じであると見なすことができる。体積V1=π・L1・(D1-d1)2/4、体積V2=π・L2・(D2-d2)2/4になるので以下の(1)式が成立する。
L1・(D1-d1)2=L2・(D2-d2)2・・・(1)
【0026】
ソケット3を加締める際の受圧部分2aの半径方向変形具合は、ソケット3の加締め前後での半径や直径の変化率などで表すことができる。例えば、この半径方向変形具合として、下記(2)式により算出される押込み率pを用いることができる。
押込み率p={(D1-D2)/2}/D1 ×100(%)・・・(2)
【0027】
ソケット3の加締め前後の受圧部分2aの半径方向変形具合(押込み率p)と軸方向伸びeとには図8に例示するように相関関係Cがある。軸方向伸びeは下記(3)式により算出される。
軸方向伸びe=(L2-L1)/L1 ×100(%)・・・(3)
【0028】
そこで、本発明ではこの相関関係Cを把握する。ソケット3の加締め前後の受圧部分2aのそれぞれの寸法は、サンプル試験を行って取得することも、シミュレーション解析(FEM解析)等を行って取得することもできる。そして、ソケット3を形成する材料の破断伸びEbと相関関係Cに基づいて、ソケット3を加締めた時に受圧部分2aに生じる軸方向伸びeが破断伸びEbよりも小さくなる半径方向変化具合(押込み率p)の許容範囲RAを算出する。
【0029】
図8で説明すると、ソケット3を形成する材料が特定されていれば、その破断伸びEbも判明する。そこで、判明している破断伸びEbが生じる時の受圧部分2aにおける半径方向変形具合(押込み率p)を相関関係Cを用いて算出するとその算出結果は、上限の押込み率puになる。したがって、許容範囲RAは、上限の押込み率pu以下の範囲になる。押込み率pがゼロの場合は、受圧部分2aの外周面に係合部3aが丁度当接した状態である。押込み率pがマイナスになると、受圧部分2aの外周面と係合部3aとの間にすき間があるので、ニップル2とソケット3とは遊び(がたつき)を有して一体化している状態になる。そこで、許容範囲RAの下限としては押込み率pをゼロとするとよい。即ち、許容範囲RAは押込み率pが0以上pu以下の範囲になる。
【0030】
次いで、算出した半径方向変化具合(押込み率p)の許容範囲RAになるように、図5図7で例示した手順でソケット3を加締めることで、ニップル2とソケット3とを一体化する。これにより、図1図2に例示するホース継手1が完成する。
【0031】
この製造方法では、ソケット3を加締めた時に受圧部分2aに生じる軸方向伸びeは、ニップル2を形成している材料の破断伸びEbよりも小さくなる。それ故、ソケット3を加締める際にニップル2に損傷が生じるような過度の負荷を作用させることがなく、ニップル2とソケット3とを適切に一体化させることができる。この製造方法は、ニップル2を形成する材料が特定されている場合に好適である。
【0032】
ニップル2を形成する材料が決定していない場合は、以下のようにしてホース継手1を製造する。
【0033】
まず、上述した相関関係Cを把握するのは先の実施形態と同じである。そして、ソケット3を加締める時の受圧部分2aの半径方向変化具合(押込み率p)の許容範囲RAを予め設定しておく。許容範囲RAの下限は上述したように押込み率pをゼロとする。また、許容範囲RAの上限はサンプルテストを行った結果に基づいて設定することも、シミュレーション解析(FEM解析など)の結果に基づいて設定することもできる。経験的には、許容範囲RAの上限は押込み率pが4%程度(3%~5%)である。そこで、許容範囲RAを例えば押込み率pが0以上4%以下の範囲に設定する。
【0034】
次いで、設定された許容範囲RAの上限でソケット3を加締めた時の軸方向伸びeの上限値euを相関関係Cに基づいて算出する。そして、算出した上限値euよりも大きな破断伸びEbを有する材料によってニップル2を製造する。
【0035】
図9で説明すると、半径方向変形具合(押込み率p)の上限として押込み率puが設定されているので、この押込み率puでソケット3か加締めた時の受圧部分2aの軸方向伸びeを相関関係Cを用いて算出するとその算出結果は、軸方向伸びの上限値euになる。そこで、ニップル2を形成する材料として、この上限値euよりも大きな破断伸びEbを有する材料を選択してニップル2を製造する。
【0036】
次いで、半径方向変化具合(押込み率p)が許容範囲RAになるように、図5図7で例示した手順でソケット3を加締めることで、ニップル2とソケット3とを一体化する。これにより、図1図2に例示するホース継手1が完成する。
【0037】
この実施形態の製造方法も先の実施形態と同様に、ソケット3を加締めた時に受圧部分2aに生じる軸方向伸びeは、ニップル2を形成している材料の破断伸びEbよりも小さくなる。それ故、ソケット3を加締める際にニップル2に損傷が生じるような過度の負荷を作用させることがなく、ニップル2とソケット3とを適切に一体化させることができる。この製造方法では、ニップル2に用いる適切な材料を選択することができる。
【0038】
本発明では、ホース継手1を製造するに際して、ニップル2の半径方向変化具合の許容範囲RAの下限として押込み率pを0.5%以上にすると、ニップル2とソケット3とが容易に分離しない程度に確実に一体化させるには益々有利になる。また、この許容範囲RAの上限として押込み率pを3%以下にすると、ソケット3の加締めに起因してニップル2に作用する負荷を軽減するには益々有利になる。
【0039】
上述したようにソケット3を加締める時にニップル2の受圧部分2aには軸方向伸びeが生じるので、従来、ニップル2は、破断伸びEbが比較的大きな材料(例えばEbが20%~30%程度)を用いて製造されている。ところが、本発明によれば、上述ように相関関係Cを利用して、ニップル2の半径方向変化具合(押込み率p)を適切な許容範囲RAにしてソケット3を加締めるので、破断伸びEbがより小さな材料を用いてニップル2を製造できる。これ伴い、ニップル2に使用できる材料の選択肢が多くなり、破断伸びEbが小さくて高強度の材料を用いることもできる。例えば、破断伸びEbが10%~18%程度の材料をニップル2に用いることも可能になる。
【0040】
このホース継手1を用いてホースアッセンブリ4を製造する手順の一例は、下記のとおりである。
【0041】
図10に例示するように、ホース5の長手方向端部5Aにニップル2の挿入部2cを挿入し、長手方向端部5Aの外周面にソケット3の爪部3bが形成されている内周面を対向させる。この状態で、ソケット3の外周側にホース継手加締め治具7を配置する。ホース継手加締め治具7は、公知の種々の仕様のものを使用できる。
【0042】
次いで、ソケット3の外周面をホース継手加締め治具7によって内周側に向かって押圧する。これにより、ソケット3が加締められて、それぞれの爪部3bはホース長手方向端部5Aの外周面に食い込むとともにホース長手方向端部5Aはニップル2とソケット3に挟持される。その結果、ホース継手1とホース5とが一体化して、図3図4に例示するホースアッセンブリ4が完成する。
【0043】
このホースアッセンブリ4の製造方法によれば、ニップル2に過度の加締力を付与することなくソケット3が適切に一体化されているホース継手1を使用するので、所定品質のホースアッセンブリ4を製造するには有利になる。また、ニップル2とソケット3とが分離せずに確実に一体化されているので、ホース5の長手方向端部5Aにホース継手1を取り付ける作業を円滑に行うことができる。
【符号の説明】
【0044】
1 ホース継手
2 ニップル
2a 受圧部分
2b 係合部
2c 挿入部
3 ソケット
3a 係合部
3b 爪部
4 ホースアッセンブリ
5 ホース
5A 長手方向端部
6 ソケット加締め治具
7 ホース継手加締め治具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10