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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】防弾構造
(51)【国際特許分類】
   F41H 5/013 20060101AFI20240626BHJP
   F41H 5/02 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
F41H5/013
F41H5/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021010562
(22)【出願日】2021-01-26
(65)【公開番号】P2022114311
(43)【公開日】2022-08-05
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000107619
【氏名又は名称】スターライト工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100166958
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 喜代造
(72)【発明者】
【氏名】北村 允人
(72)【発明者】
【氏名】寒河江 進也
(72)【発明者】
【氏名】林原 靖久
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-241183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F41H 5/013
F41H 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に立設される壁体に取付け可能とされる防弾構造であって、
前記壁体と平行に配設される防弾パネルと、
前記床面又は前記壁体に固定され、前記壁体と前記防弾パネルの一部との間に介挿されるスペーサと、
前記防弾パネルにおける前記壁体の反対側に設けられ、前記壁体から離間する方向への前記防弾パネルの変位を規制する規制部材と、を備え、
前記規制部材は、前記スペーサを介して前記床面又は前記壁体に対して着脱可能とされ
前記防弾パネルと前記規制部材とが接合部材により接合され、
前記接合部材が、面ファスナー、磁石、電磁石、凹凸嵌合による嵌合部、着脱可能な粘着テープ、及び、クリップの少なくとも何れか一つから選択されて構成される、防弾構造。
【請求項2】
前記壁体と前記防弾パネルとの間に軟質板が介挿される、請求項1に記載の防弾構造。
【請求項3】
前記防弾パネルが樹脂又は繊維により構成される、請求項1又は請求項2に記載の防弾構造。
【請求項4】
前記床面が船舶の甲板であり、前記壁体が前記船舶の船室を構成する外壁である、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の防弾構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防弾構造に関し、具体的には、船舶や車両等に設ける防弾構造の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶や車両等において銃弾を防ぐ目的で防弾構造が採用されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-130592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献には、床面などの対象物に面ファスナーと保護マットとを介して防弾板を取付ける構成の防弾構造が記載されている。これにより、対象物から防弾板を容易に着脱することを可能としている。
【0005】
上記従来技術の構成においては、対象物に対して面ファスナーを用いて防弾板を取付ける構成であるため、被弾した際の衝撃で防弾板が対象物から離間する可能性があった。一方、防弾板を対象物に溶接するなどして強固に取付けた場合、防弾板の交換やメンテナンスのために対象物から着脱することが困難となる。
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、防弾パネルを対象物である壁体から容易に着脱可能とするとともに、防弾パネルが壁体から離間することを防止できる、防弾構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前述の課題解決のために、以下の防弾構造を構成した。
【0008】
(1)床面に立設される壁体に取付け可能とされる防弾構造であって、前記壁体と平行に配設される防弾パネルと、前記床面又は前記壁体に固定され、前記壁体と前記防弾パネルの一部との間に介挿されるスペーサと、前記防弾パネルにおける前記壁体の反対側に設けられ、前記壁体から離間する方向への前記防弾パネルの変位を規制する規制部材と、を備え、前記規制部材は、前記スペーサを介して前記床面又は前記壁体に対して着脱可能とされ、前記防弾パネルと前記規制部材とが接合部材により接合され、前記接合部材が、面ファスナー、磁石、電磁石、凹凸嵌合による嵌合部、着脱可能な粘着テープ、及び、クリップの少なくとも何れか一つから選択されて構成される、防弾構造。
【0009】
(2)前記壁体と前記防弾パネルとの間に軟質板が介挿される(1)に記載の防弾構造。
【0010】
(3)前記防弾パネルが樹脂又は繊維により構成される、(1)又は(2)に記載の防弾構造。
【0011】
(4)前記床面が船舶の甲板であり、前記壁体が前記船舶の船室を構成する外壁である、(1)から(3)の何れか一に記載の防弾構造。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る防弾構造によれば、防弾パネルを対象物である壁体から容易に着脱可能とするとともに、防弾パネルが壁体から離間することを防止できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係る防弾構造の使用状態を示した斜視図。
図2】防弾構造を示した斜視図。
図3】防弾構造を示した分解斜視図。
図4】(a)及び(b)は防弾構造の組付前及び組付後の状態を示した平面断面図。
図5】第一変形例に係る防弾構造を示した斜視図。
図6】(a)及び(b)は第一変形例に係る防弾構造の組付前及び組付後の状態を示した平面断面図。
図7】(a)及び(b)は第二変形例に係る防弾構造の組付前及び組付後の状態を示した平面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[防弾構造1]
まず、図1から図4を用いて、本発明の一実施形態に係る防弾構造1の構成について説明する。本実施形態に係る防弾構造1は船舶の船室を防護するために用いられている。具体的には図1に示す如く、船舶の甲板である床面Fに、船室を構成する外壁である壁体Wが立設されている。そして、防弾構造1は壁体Wに取付け可能とされている。
【0015】
図1に示す如く、本実施形態に係る防弾構造1は、壁体Wに沿って設けられた複数の防弾パネル3の両端部を、規制部材である複数の押さえレール4で変位規制することにより、左右方向に連続的に構成されている。なお、本発明に係る防弾構造を構成する防弾パネル3の枚数は限定されるものではなく、1枚又は複数枚の防弾パネル3で防弾構造を構成することが可能である。防弾構造1を構成するそれぞれの防弾パネル3の構成は共通するため、以下では一の防弾パネル3の構成について説明する。
【0016】
図2から図4に示す如く、防弾構造1は、壁体Wと平行に配設される防弾パネル3と、防弾パネル3における壁体Wの反対側に設けられる押さえレール4と、を備える。本明細書において、防弾構造1における壁体Wの側(本実施形態においては船室の側)を「内側」、壁体Wの反対側(本実施形態においては船室の外側)を「外側」と記載する。押さえレール4は、壁体Wから離間する外側方向への防弾パネル3の変位を規制する。
【0017】
本実施形態に係る防弾構造1において、壁体Wと防弾パネル3の左右両端部との間には、スペーサとして固定レール2が介挿される。そして、図2から図4に示す如く、防弾パネル3と壁体Wとの間の間隙Gが、防弾パネル3の変形を許容する変形許容部として形成される。
【0018】
本実施形態において、防弾パネル3は板状の超高分子量ポリエチレン成型品に、ポリウレアを塗布して形成される。防弾パネル3は方形、円形、楕円形、菱形、三角形、多角形等、その形状は限定されるものではない。但し、防弾構造1において防弾部分の面積を効率的に大きく確保できるという点で方形に形成することが望ましい。
【0019】
また、防弾パネル3は金属、樹脂、繊維等、素材の材質についても限定されるものではない。但し、防弾パネル3が変形することにより被弾時のエネルギーを吸収するという観点より、防弾パネル3の材質には変形が大きい樹脂や繊維を採用することが望ましい。特に、量産性に優れ、軽量性、取り扱いの容易性から、防弾パネル3には樹脂製を採用することが望ましい。
【0020】
本実施形態において、固定レール2及び押さえレール4はスチール板等の板状の金属部材が採用される。なお、充分な強度が確保されていれば、固定レール2及び/又は押さえレール4として樹脂等の他の素材を採用することが可能である。
【0021】
図4に示す如く、固定レール2は壁体Wに溶接により固定される。固定レール2の外側の面における中央部分には、外方に突出した固定凸部21が形成されている。固定凸部21には雌ねじ孔22が形成される。
【0022】
また、押さえレール4の内側の面における中央部分には、内方に突出した押さえ凸部41が形成されている。押さえ凸部41には押さえレール4を貫通する挿通孔42が形成される。挿通孔42は雌ねじ孔22と対応する箇所に形成されている。
【0023】
押さえレール4は、固定レール2との間に防弾パネル3を挟んだ状態で、固定レール2に組付けられる。具体的には図4(a)及び(b)に示す如く、固定レール2と押さえレール4とで防弾パネル3の側端部を挟み、挿通孔42に固定ボルトBを挿入して、固定ボルトBを雌ねじ孔22に螺入する。これにより、壁体Wに沿って設けられた防弾パネル3が押さえレール4により変位規制される。
【0024】
なお、固定レール2を壁体Wではなく床面Fに溶接して固定することも可能である。この場合、固定ボルトBで押さえレール4を固定レール2に固定することにより、押さえレール4は、固定レール2を介して床面Fに対して着脱可能とされる。
【0025】
防弾構造1において、押さえレール4は固定レール2を介して壁体Wに対して着脱可能とされる。これにより、固定ボルトBを雌ねじ孔22から螺出させて、押さえレール4を固定レール2から取り外すことができる。即ち、防弾構造1において防弾パネル3を容易に離脱させることができる。
【0026】
上記の如く、本実施形態に係る防弾構造1によれば、防弾パネル3を押さえレール4で変位規制することにより、被弾による衝撃が防弾パネル3に加わっても、防弾パネル3が壁体Wから離間する可能性を低減させることが可能となる。また、押さえレール4を固定レール2から取り外すことにより、防弾パネル3の交換やメンテナンスのために壁体Wから容易に着脱することが可能となる。
【0027】
本実施形態に係る防弾構造1においては、防弾パネル3と壁体Wとの間の間隙Gが、防弾パネル3の変形を許容する変形許容部として形成される。これにより、防弾パネル3が被弾して内側に変形した場合でも、間隙Gが防弾パネル3の変形を許容して防弾パネル3の変形や衝撃が壁体Wに伝わることを防ぐことができるため、壁体Wへの影響を最小限とすることができる。即ち、防弾パネル3が被弾した際に壁体Wが損傷を受けることを抑制することが可能となる。なお、変形許容部は、防弾パネル3が変形する範囲と、コンパクト性(通路幅の確保)とのバランスから、防弾パネル3から壁体Wまでの幅寸法(本実施形態においては固定レール2において防弾パネル3が当接する部分の厚さ寸法)が20mmから100mm程度であることが望ましい。
【0028】
本実施形態に係る防弾構造1においては、防弾パネル3と押さえレール4とが接合部材である面ファスナー51・52により接合される。具体的には図4(a)及び(b)に示す如く、防弾パネル3の外側面の左右両端部には面ファスナー51が貼付されている。また、押さえレール4の内面には面ファスナー52が貼付されている。そして、押さえレール4を固定レール2に組付けた際に、面ファスナー51・52が互いに接合する。
【0029】
これにより、押さえレール4を固定レール2に組付けた際に、押さえレール4で防弾パネル3を安定して位置規制することができる。即ち、船舶の航行中に船体が揺れても、防弾パネル3ががたついたり変位したりすることを抑制できる。これにより、防弾パネル3や、固定レール2・押さえレール4の摩耗等による劣化を抑制することが可能となる。なお、防弾パネル3と固定レール2とを接合する構成や、防弾パネル3を固定レール2と押さえレール4とのそれぞれに接合する構成とすることも可能である。
【0030】
防弾パネル3と押さえレール4とを接合する接合部材としては、本実施形態で採用した面ファスナー51・52以外の構成を採用することが可能である。例えば、磁石/電磁石、ネジやボルト固定、凹凸嵌合による嵌合部、着脱可能な粘着テープ、クリップ等を、防弾パネル3と押さえレール4とを接合するための接合部材として採用することが可能である。
【0031】
本実施形態のように樹脂製の防弾パネル3において、防弾パネル3を貫通する孔を開口した場合は、当該孔を起点にして亀裂が生じる場合がある。このため、本実施形態のように樹脂製の防弾パネル3に孔を開口せずに貼り付け可能であるという観点、着脱が容易であるという観点、及び、樹脂製の防弾パネルが経年劣化して反りが発生した場合でも追従するという観点より、上記に記載した接合部材のうち、面ファスナー又は磁石を採用することが望ましい。また、精密機器への影響を最小限にするという観点より、精密機器への影響が少ない面ファスナーを接合部材として採用することが最も望ましい。
【0032】
[第一変形例]
次に、図5及び図6を用いて、防弾構造1の第一変形例に係る防弾構造1Aについて説明する。防弾構造1Aについては、上記の実施形態に係る防弾構造1と共通する構成については詳細な説明を省略し、異なる構成を中心にして説明する。
【0033】
本変形例に係る防弾構造1Aにおいては図5及び図6に示す如く、防弾パネル3と壁体Wとの間に軟質部材6が介挿されている。換言すれば、この軟質部材6が防弾パネル3の変形を許容する変形許容部として形成されている。これにより、防弾パネル3が被弾して変形した場合でも、軟質部材6が防弾パネル3の変形を許容して防弾パネル3の変形や衝撃が壁体Wに伝わることを防ぐことができるため、壁体Wへの影響を最小限とすることができる。即ち、防弾パネル3が被弾した際に壁体Wが損傷を受けることを抑制することが可能となる。
【0034】
軟質部材6は、軟質ウレタン、軟質エラストマー、発泡ウレタン、発泡スチロールのように、防弾パネル3より柔らかく容易に変形可能な素材を採用することが可能である。なお、防弾パネル3の変形を許容するという観点においては、防弾パネル3と壁体Wとの間には間隙を形成することが望ましい。
【0035】
[第二変形例]
次に、図7を用いて、防弾構造1の第二変形例に係る防弾構造1Bについて説明する。防弾構造1Bについても、上記の実施形態に係る防弾構造1と共通する構成については詳細な説明を省略し、異なる構成を中心にして説明する。
【0036】
本変形例に係る防弾構造1Aにおいては図7に示す如く、防弾構造1における固定レール2を設ける代わりに、防弾パネル3と壁体Wとの間に軟質板7が介挿される。また、壁体Wには、壁孔Waが形成されている。軟質板7の素材は第一変形例における軟質部材6と同じものを採用することが可能である。
【0037】
押さえレール4は、壁体Wとの間に防弾パネル3及び軟質板7を挟んだ状態で、壁体Wに組付けられる。具体的には図7(a)及び(b)に示す如く、壁体Wと押さえレール4とで防弾パネル3及び軟質板7の側端部を挟み、挿通孔42に固定用のアンカーボルトBを挿入して、アンカーボルトBを壁孔Waに固定する。これにより、壁体Wに沿って設けられた防弾パネル3が押さえレール4により変位規制される。
【0038】
本変形例においては、軟質板7が防弾パネル3の変形を許容する変形許容部として形成されている。これにより、防弾パネル3が被弾して変形した場合でも、軟質板7が防弾パネル3の変形を許容して防弾パネル3の変形や衝撃が壁体Wに伝わることを防ぐことができるため、壁体Wへの影響を最小限とすることができる。即ち、防弾パネル3が被弾した際に壁体Wが損傷を受けることを抑制できる。
【0039】
なお、本発明に係る防弾構造は本実施形態の如く船舶のみに用いられるものではなく、車両(電車、装甲車)、航空機、家屋、壁面等に防弾構造を適用することが可能である。上記の如く、本実施形態に係る防弾構造1は、樹脂製又は繊維製の防弾パネル3を用いることで高い軽量性を実現しているため、軽量性が求められる船舶、車両(電車、装甲車)、航空機等の乗り物に採用することが好適である。また、防弾パネル3を取り外すメンテナンスを容易に可能とする点から、特に船舶用の操舵室外壁に防弾構造1を適用することが望ましい。
【符号の説明】
【0040】
1 防弾構造 1A 防弾構造(第一変形例)
1B 防弾構造(第二変形例) 2 固定レール(スペーサ)
3 防弾パネル 4 押さえレール(規制部材)
6 軟質部材 7 軟質板
21 固定凸部 22 雌ねじ孔
41 押さえ凸部 42 挿通孔
51 面ファスナー(接合部材)
52 面ファスナー(接合部材)
F 床面 W 壁体
Wa 壁孔 G 間隙
B 固定ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7