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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】物品管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/10 20060101AFI20240626BHJP
   H04B 5/48 20240101ALI20240626BHJP
【FI】
G06K7/10 276
H04B5/48
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021020318
(22)【出願日】2021-02-11
(65)【公開番号】P2022123177
(43)【公開日】2022-08-24
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 淳
(72)【発明者】
【氏名】神谷 享慶
【審査官】北村 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-129072(JP,A)
【文献】特開2010-160661(JP,A)
【文献】特開平11-187348(JP,A)
【文献】特開2013-203493(JP,A)
【文献】特開2018-041365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/10
H04B 5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線タグ(70)が取り付けられている物品(1)が搬送ライン上の基準位置に位置している場合に、前記無線タグからの受信信号を最も強い強度で受信できる位置に設置され、前記無線タグからIDを連続的に読み取るタグ読み取り装置(40)と、
前記搬送ライン上を移動する前記物品が、前記基準位置に到達したことを検出する位置検出センサ(50)と、
前記位置検出センサが、前記物品が前記基準位置に到達したことを検出したことに基づいて定まる期間であって、前記物品が前記基準位置に到達したことを検出した時点を含む積算期間(Ti)を決定する期間決定部(213)と、
前記積算期間に、前記タグ読み取り装置がIDを読み取った読み取り回数をID別に決定し、前記読み取り回数が最大となったIDを、前記位置検出センサが前記基準位置に到達したことを検出した物品に取り付けられている前記無線タグに記憶されているIDであるとするID特定部(214)と、
前記搬送ライン上を移動する物品を撮影するカメラ(30)と、
前記位置検出センサが、前記物品が前記基準位置に到達したことを検出したことに基づいて、前記カメラにより、前記物品を撮影させるカメラ制御部(212)と、
前記カメラが撮影した前記物品の画像と、前記ID特定部が特定したIDとを対応付ける対応付け部(215)と、
を備える物品管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の物品管理システムであって、
前記積算期間の長さは、単位時間あたりの読み取り回数が最大回数となっている時間よりも長く、かつ、前記読み取り回数が0回よりも多く前記最大回数よりも少ない最小回数以上となっている時間以下である、物品管理システム。
【請求項3】
無線タグ(70)が取り付けられている物品(1)が搬送ライン上の基準位置に位置している場合に、前記無線タグからの受信信号を最も強い強度で受信できる位置に設置され、前記無線タグからIDを連続的に読み取るタグ読み取り装置(40)と、
前記搬送ライン上を移動する前記物品が、前記基準位置に到達したことを検出する位置検出センサ(50)と、
前記位置検出センサが、前記物品が前記基準位置に到達したことを検出したことに基づいて定まる期間であって、前記物品が前記基準位置に到達したことを検出した時点を含む積算期間(Ti)を決定する期間決定部(213)と、
前記積算期間に、前記タグ読み取り装置がIDを読み取った読み取り回数をID別に決定し、前記読み取り回数が最大となったIDを、前記位置検出センサが前記基準位置に到達したことを検出した物品に取り付けられている前記無線タグに記憶されているIDであるとするID特定部(214)と、を備え
前記積算期間の長さは、単位時間あたりの読み取り回数が最大回数となっている時間よりも長く、かつ、前記読み取り回数が0回よりも多く前記最大回数よりも少ない最小回数以上となっている時間以下である、物品管理システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の物品管理システムであって、
前記タグ読み取り装置は、前記無線タグから受信する受信信号の受信信号強度を決定するようになっており、
前記ID特定部は、前記受信信号強度が予め設定した閾値以下である前記受信信号は除外して、前記読み取り回数を決定する、物品管理システム。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の物品管理システムであって、
前記タグ読み取り装置は、前記無線タグから受信する受信信号の受信信号強度を決定するようになっており、
前記ID特定部は、前記受信信号強度の2乗が予め設定した閾値以下である前記受信信号は除外して、前記読み取り回数を決定する、物品管理システム。
【請求項6】
無線タグ(70)が取り付けられている物品(1)が搬送ライン上の基準位置に位置している場合に、前記無線タグからの受信信号を最も強い強度で受信できる位置に設置され、前記無線タグからIDを連続的に読み取るタグ読み取り装置(40)と、
前記搬送ライン上を移動する前記物品が、前記基準位置に到達したことを検出する位置検出センサ(50)と、
前記位置検出センサが、前記物品が前記基準位置に到達したことを検出したことに基づいて定まる期間であって、前記物品が前記基準位置に到達したことを検出した時点を含む積算期間(Ti)を決定する期間決定部(213)と、
前記積算期間に、前記タグ読み取り装置がIDを読み取った読み取り回数をID別に決定し、前記読み取り回数が最大となったIDを、前記位置検出センサが前記基準位置に到達したことを検出した物品に取り付けられている前記無線タグに記憶されているIDであるとするID特定部(214)と、を備え
前記タグ読み取り装置は、前記無線タグから受信する受信信号の受信信号強度を決定するようになっており、
前記ID特定部は、前記受信信号強度の2乗が予め設定した閾値以下である前記受信信号は除外して、前記読み取り回数を決定する、物品管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
物品を管理する物品管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線タグが取り付けられた物品を管理することがある。たとえば、空港において、手荷物の取り降ろし作業に要する時間を短縮するために、無線タグが取り付けられた物品を管理する。この場合の物品は手荷物である。特許文献1には、手荷物の画像と、その手荷物に取り付けられた無線タグに記憶されたIDとを対応付けて管理する技術が開示されている。
【0003】
特許文献2には、無線タグから受信する電波の受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)の大きさで、無線タグの位置を判断する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-55691号公報
【文献】国際公開第2009/001408号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
搬送ライン上を移動する手荷物を撮影して手荷物の画像(以下、手荷物画像)を取得し、かつ、その手荷物に取り付けられた無線タグからIDを読み取って、手荷物画像とIDとを対応付けることを想定する。
【0006】
搬送ライン上を移動する手荷物が互いに近接して複数存在している場合、複数の無線タグから同時にIDを読み取れる可能性がある。この場合、どのIDが、どの手荷物に取り付けられている無線タグに記憶されているIDであるかを、どのように決定するかが問題となる。
【0007】
特許文献2に開示されているようにRSSIの大きさをもとに無線タグの位置を判断することが考えられる。しかし、RSSIを用いる場合には、次の問題がある。すなわち、金属等による反射が大きい環境では反射信号の方が直接信号よりも強度が強くなる場合がある。したがって、必ずしも、RSSIの大きさが、タグ読み取り装置から無線タグまでの距離に比例しているとは限らない。
【0008】
本開示は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、搬送ライン上を移動する物品に取り付けられている無線タグのIDを精度よく特定できる物品管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は独立請求項に記載の特徴の組み合わせにより達成され、また、下位請求項は更なる有利な具体例を規定する。特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的態様との対応関係を示すものであって、開示した技術的範囲を限定するものではない。
【0010】
上記目的を達成するための1つの開示は、
無線タグ(70)が取り付けられている物品(1)が搬送ライン上の基準位置に位置している場合に、無線タグからの受信信号を最も強い強度で受信できる位置に設置され、無線タグからIDを連続的に読み取るタグ読み取り装置(40)と、
搬送ライン上を移動する物品が、基準位置に到達したことを検出する位置検出センサ(50)と、
位置検出センサが、物品が基準位置に到達したことを検出したことに基づいて定まる期間であって、物品が基準位置に到達したことを検出した時点を含む積算期間(Ti)を決定する期間決定部(213)と、
積算期間に、タグ読み取り装置がIDを読み取った読み取り回数をID別に決定し、読み取り回数が最大となったIDを、位置検出センサが基準位置に到達したことを検出した物品に取り付けられている無線タグに記憶されているIDであるとするID特定部(214)と、を備える物品管理システムである。
【0011】
この物品管理システムは、基準位置に到達した物品に取り付けられた無線タグに記憶されているIDを特定するために、積算期間に読み取った読み取り回数を、ID別に決定する。積算期間は、物品が基準位置に到達したことを検出したことに基づいて定まり、かつ、物品が基準位置に到達したことを検出した時点を含んでいる。積算期間がこのような期間であるので、積算期間に読み取った読み取り回数が最大となるIDは、基準位置に到達したことが検出された物品に取り付けられている無線タグに記憶されているIDである可能性が高い。したがって、搬送ライン上を移動する物品に取り付けられている無線タグに記憶されているIDを精度よく特定できる。
【0012】
物品管理システムは、搬送ライン上を移動する物品を撮影するカメラ(30)と、
位置検出センサが、物品が基準位置に到達したことを検出したことに基づいて、カメラにより、物品を撮影させるカメラ制御部(212)と、
カメラが撮影した物品の画像と、ID特定部が特定したIDとを対応付ける対応付け部(215)と、を備えていてもよい。
【0013】
このようにすれば、基準位置に到達したことが検出された物品の画像と、その物品に取り付けられている無線タグのIDとを精度良く対応させることができる。
【0014】
積算期間の長さは、単位時間あたりの読み取り回数が最大回数となっている時間よりも長く、かつ、読み取り回数が0回よりも多く最大回数よりも少ない最小回数以上となっている時間以下であることが好ましい。
【0015】
このように積算期間の長さを設定することで、複数の無線タグが近接している場合にも、基準位置に到達したことが検出された物品に取り付けられている無線タグに記憶されているIDを誤って特定してしまうことを抑制できる。
【0016】
上記物品管理システムにおいて、タグ読み取り装置は、無線タグから受信する受信信号の受信信号強度を決定するようになっており、
ID特定部は、受信信号強度が予め設定した閾値以下である受信信号は除外して、読み取り回数を決定してもよい。
【0017】
受信信号強度が低い信号である場合、無線タグは、基準位置から遠い位置にある可能性が高い。したがって、このようにすれば、無線タグが基準位置から遠い位置にある場合を除外して読み取り回数を算出できる。その結果、より精度よく、搬送ライン上を移動する物品に取り付けられている無線タグのIDを特定できる。
【0018】
上記物品管理システムにおいて、タグ読み取り装置は、無線タグから受信する受信信号の受信信号強度を決定するようになっており、
ID特定部は、受信信号強度の2乗が予め設定した閾値以下である受信信号は除外して、読み取り回数を決定してもよい。
【0019】
受信信号強度を2乗した値も、基準位置からの距離により変化する。したがって、このようにしても、物品が基準位置から遠い位置にあるときの読み取り結果を除外しつつ、物品が基準位置に近いときの読み取り結果を残して読み取り回数を算出できる。その結果、読み取り回数を用いた手荷物番号の特定精度がより向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】手荷物管理システム100の構成を示す図。
図2】制御部21が備える機能を示すブロック図。
図3】制御部21が実行する処理を示す図。
図4】2つの手荷物タグ70a、70bが互いに近接して移動している図。
図5】積算期間Tiと、読み取り回数Nの時間変化を示す図。
図6】第1実施形態において制御部21が実行する処理を示す図。
図7】3つの手荷物タグ70a、70b、70cが互いに近接して移動している図。
図8図7の手荷物タグについて、読み取り回数Nの時間変化を示す図。
図9】第2実施形態において制御部21が実行する処理を示す図。
図10】読み取り回数N、RSSI、閾値TH1の関係を概念的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、手荷物管理システム100の構成を示す図である。手荷物管理システム100は、物品管理システムの一例であり、物品として、飛行機に搭乗する者の手荷物1を管理する。
【0022】
手荷物管理システム100は、チェックインカウンタ端末10、管理装置20、カメラ30、タグ読み取り装置40、位置検出センサ50を備える。
【0023】
チェックインカウンタ端末10は、空港のチェックインカウンタに設置される。チェックインカウンタは複数あり、チェックインカウンタ端末10はチェックインカウンタごとに設置される。チェックインカウンタ端末10は、手荷物タグ70を発行する。手荷物タグ70は無線タグであり、手荷物番号が電子的に記憶される。手荷物タグ70は、パッシブタグであってもよいし、アクティブタグであってもよい。
【0024】
手荷物番号は、手荷物1を特定する識別情報すなわちIDに相当する。手荷物番号は、LPN(License Plate Number)と言われることもある。なお、手荷物1のIDは、手荷物1を特定できればよく、番号でなくてもよい。
【0025】
チェックインカウンタ端末10は、管理装置20と有線または無線により信号の送受信が可能である。チェックインカウンタ端末10は、飛行機に乗る搭乗者の名前と手荷物番号とを対応付けて管理装置20に送る。チェックインカウンタにて手荷物タグ70が取り付けられた手荷物1は、搬送ライン2に載せられて搬送される。搬送ライン2は手荷物1を所定の目的場所まで一定速度で搬送する。
【0026】
管理装置20は、制御部21と、記憶部22と、無線通信部23とを備えている。管理装置20の一例は、旅客情報管理システム(DCS: Departure Control System)である。制御部21は、記憶部22および無線通信部23を制御する。制御部21は、チェックインカウンタ端末10から提供された搭乗者の名前および手荷物番号と、カメラ30が撮影した手荷物1の画像(以下、手荷物画像)とを1組の手荷物情報として記憶部22に記憶する。手荷物1を捜索する必要が生じた場合に、手荷物情報は、無線通信部23から、手荷物1を捜索する作業者が持つ端末に、直接あるいは他の端末を介して送信される。
【0027】
制御部21は、カメラ30およびタグ読み取り装置40も制御する。なお、カメラ30およびタグ読み取り装置40は、管理装置20とは異なる装置が制御するようになっていてもよい。
【0028】
位置検出センサ50は、搬送ライン2上を移動する手荷物1が基準位置に達したことを検出する。位置検出センサ50には、たとえば、光電センサを用いることができる。基準位置は、搬送ライン2の長手方向の位置である。
【0029】
カメラ30は、搬送ライン2上を移動する手荷物1を撮影可能な位置に設置されている。より具体的には、カメラ30は、基準位置に位置する手荷物1を撮影可能な位置に設置されている。カメラ30は、カラー画像により手荷物1を撮影する。
【0030】
タグ読み取り装置40は、手荷物1が基準位置に位置している場合に、その手荷物1に取り付けられている手荷物タグ70からの受信信号を最も強い強度で受信できる位置に設置されている。たとえば、タグ読み取り装置40は、搬送ライン2が直線状であるとき、基準位置を含む平面であって搬送ライン2と直交する平面上に設置される。より具体的な一例としては、タグ読み取り装置40は基準位置の真上に設置される。カメラ30およびタグ読み取り装置40も、管理装置20と有線または無線により信号の送受信が可能である。
【0031】
タグ読み取り装置40は、手荷物タグ70と通信して、手荷物タグ70に記憶されている手荷物番号を読み取る。読み取りは連続的に行うことができる。連続的に行う読み取りを、連続読み取りとする。連続的とは、1秒間などの短時間の間に、1つ以上の手荷物タグ70から、複数回、手荷物番号を読み取ることを意味する。タグ読み取り装置40は、手荷物タグ70からの受信信号強度が十分であれば、1秒間に100回以上、手荷物番号を読み取ることができる。
【0032】
図2に、管理装置20の制御部21が備える機能を示す。制御部21は、少なくとも1つのプロセッサを備えた構成により実現できる。たとえば、制御部21は、プロセッサ、不揮発性メモリ、RAM、I/O、およびこれらの構成を接続するバスラインなどを備えたコンピュータにより実現できる。不揮発性メモリには、汎用的なコンピュータを制御部21として作動させるためのプログラムが格納されている。プロセッサが、RAMの一時記憶機能を利用しつつ、不揮発性メモリに記憶されたプログラムを実行することで、制御部21は、読み取り装置制御部211、カメラ制御部212、期間決定部213、ID特定部214、対応付け部215として作動する。これらの作動が実行されることは、プログラムに対応する方法が実行されることを意味する。
【0033】
読み取り装置制御部211は、タグ読み取り装置40を制御して、タグ読み取り装置40に手荷物タグ70に記憶されている手荷物番号を連続的に読み取らせる。カメラ制御部212は、カメラ30に撮影指示を出して画像を撮影させる。
【0034】
期間決定部213は、積算期間Tiを決定する。積算期間Tiは、読み取り回数Nを積算する期間である。本実施形態では、積算期間Tiに読み取り回数Nが最大となった手荷物番号を、位置検出センサ50が基準位置に到達したことを検出した手荷物1に取り付けられている手荷物タグ70であると決定する。RSSIではなく、積算期間Tiに読み取った読み取り回数Nを用いる理由を説明する。
【0035】
図3には、1つの手荷物タグ70が搬送ライン2上を移動する図を示している。手荷物タグ70が、時刻t1に示す位置にあるときから、タグ読み取り装置40は手荷物タグ70に記憶されている手荷物番号を読み取ることができる。その後、時刻t2で読み取り回数Nは最大になる。なお、読み取り回数Nは、単位時間あたりの読み取り回数Nを意味する。時刻t3以降は、タグ読み取り装置40は手荷物タグ70から手荷物番号を読み取ることができなくなる。
【0036】
このように、読み取り回数Nが時刻とともに変化する理由は、受信信号強度(以下、RSSI)が低い場合には、通信に失敗することもあるからである。時刻t1および時刻t3では、RSSIが、タグ読み取り装置40と手荷物タグ70が通信できる下限レベルにある。したがって、読み取り回数Nが少ない。時刻t2では、手荷物タグ70は、基準位置に位置している。読み取り回数Nは時刻t2のみが最大になるのではない。時刻t2の前後、一定時間の間、読み取り回数Nは最大になる。RSSIが十分に高い範囲であれば、読み取り成功率はほぼ同じになるからである。
【0037】
図3では、タグ読み取り装置40が手荷物タグ70と通信できる通信範囲に手荷物タグ70が1つのみである。しかし、実際には複数の手荷物タグ70が互いに近接して搬送ライン2を移動することもある。
【0038】
図4には、2つの手荷物タグ70a、70bが互いに近接して搬送ライン2を移動している図を示している。図4において、時刻t11は手荷物タグ70aがタグ読み取り装置40に最も近づく時刻、すなわち、手荷物タグ70aからのRSSIが最大となる時刻である。図4に示すグラフにおける実線は、手荷物タグ70aから手荷物番号を読み取った読み取り回数Nの時間変化である。図4に示すグラフにおける破線は、手荷物タグ70bから手荷物番号を読み取った読み取り回数Nの時間変化である。
【0039】
時刻t11における手荷物タグ70bの読み取り回数Nの多さから、時刻t11における手荷物タグ70bのRSSIは高いことが分かる。RSSIは、電波環境により変動する。したがって、時刻t11において、手荷物タグ70aのRSSIよりも手荷物タグ70bのRSSIのほうが高くなる可能性もある。そこで、本実施形態では、RSSIに代えて積算期間Tiにおける読み取り回数Nを用いる。
【0040】
図5には、積算期間Tiと、読み取り回数Nの時間変化を示している。積算期間Tiは、位置検出センサ50が、手荷物1が基準位置に到達したことを検出した時点を含む期間である。この時点は、図5では、時刻t21である。積算期間Tiは、時刻t21を含み、その前後の期間を含む。
【0041】
積算期間Tiの長さは、事前に決定されている。積算期間Tiの長さは、読み取り回数Nが最大回数Nmaxとなっている時間T(Nmax)よりも長くなっている。また、積算期間Tiは、読み取り回数Nが、0回よりも多く最大回数Nmaxよりも少ない最小回数Nmin以上となっている時間T(Nmin)以下である。たとえば、積算期間Tiの長さは、時間T(Nmin)とすることができる。
【0042】
最小回数Nminは、図5では、最大回数Nmaxの50%の数にしている。ただし、最小回数Nminは、最大回数Nmaxの80%、90%など、最大回数Nmaxの50%よりも大きい回数でもよい。反対に、最小回数Nminは、最大回数Nmaxの50%よりも小さい回数でもよい。
【0043】
時間T(Nmax)、T(Nmin)は、事前に測定して決定する。時間T(Nmax)、T(Nmin)を精度よく測定するために、タグ読み取り装置40が手荷物タグ70と通信できる通信範囲に手荷物タグ70が1つのみである状態で測定することが好ましい。
【0044】
説明を図2に戻す。ID特定部214は、積算期間Tiにタグ読み取り装置40が手荷物番号を読み取った読み取り回数Nを手荷物番号別に決定する。そして、読み取り回数Nが最大となった手荷物番号を、位置検出センサ50が基準位置に到達したことを検出した手荷物1に取り付けられている手荷物タグ70に記憶されている手荷物番号であるとする。
【0045】
対応付け部215は、ID特定部214が特定した手荷物番号と、カメラ30が撮影した画像において、基準位置に位置している手荷物1の画像、すなわち手荷物画像とを対応づける。
【0046】
図6は、制御部21が実行する処理をフローチャートにして示している。S1では、読み取り装置制御部211が、タグ読み取り装置40を制御して、タグ読み取り装置40に連続読み取りを実行させる。
【0047】
S2では、読み取り装置制御部211が、タグ読み取り装置40から読み取り結果を取得する。読み取り結果には、読み取れた手荷物番号、読み取れた回数が含まれている。読み取り装置制御部211は、取得した読み取り結果を、時刻別に記憶部22に記憶する。時刻は、記憶時刻でもよいし、読み取り結果取得時刻でもよい。記憶時刻と読み取り結果取得時刻の時間差はほとんどないからである。
【0048】
S3では、カメラ制御部212が、手荷物検出信号を取得したか否かを判断する。手荷物検出信号は、位置検出センサ50が、手荷物1が基準位置に達したことを検出した場合に管理装置20に出力する信号である。なお、S3を読み取り装置制御部211が実行してもよい。
【0049】
S3の判断結果がNOであればS1に戻る。S3の判断結果がYESであればS4に進む。S4では、カメラ制御部212が、カメラ30により画像を撮影させる。カメラ30は、基準位置にある手荷物1を撮影できるように撮影範囲が固定されている。したがって、S4では、カメラ30は、基準位置にある手荷物1を撮影する。これにより手荷物画像が得られる。
【0050】
S5では、期間決定部213が、積算期間Tiを決定する。図8に示す例では、時刻t31が、手荷物検出信号を取得した時刻である。時刻t30から時刻t32までが積算期間Tiになる。時刻t30は、時刻t31より、事前に決定してある積算期間Tiの長さの半分の時間だけ早い時刻である。時刻t32は、時刻t31より、積算期間Tiの長さの半分の時間だけ遅い時刻である。
【0051】
S6は、ID特定部214が実行する。S6において、ID特定部214は、S5で決定した積算期間Tiに読み取った手荷物番号を記憶部22から取得する。さらに、ID特定部214は、手荷物番号別に、積算期間Tiにおける読み取り回数Nを算出し、読み取り回数Nが最大の手荷物番号を決定する。
【0052】
S7は対応付け部215が実行する。S7では、S6で決定した読み取り回数Nが最大の手荷物番号を、S4で撮影した手荷物画像に対応付け、記憶部22に記憶する。
【0053】
図7図8を用いて、本実施形態の効果を具体的に説明する。図7は、3つの手荷物タグ70が互いに近接して搬送ライン2の上を移動している図である。図8において、実線は、時刻t31に基準位置に到達した手荷物1に取り付けられている手荷物タグ70aから手荷物番号を読み取った読み取り回数Nの時間変化である。破線は、手荷物タグ70bから手荷物番号を読み取った読み取り回数Nの時間変化である。一点鎖線は、手荷物タグ70cから手荷物番号を読み取った読み取り回数Nの時間変化である。
【0054】
積算期間Tiにおける読み取り回数Nは、図8の実線、破線、一点鎖線において、積算期間Tiにより切り取られる部分の面積になる。この面積は、実線が最も大きくなる。したがって、正しく手荷物番号と手荷物画像とを対応付けられることが分かる。
〔第1実施形態のまとめ〕
本実施形態の手荷物管理システム100は、基準位置に到達した手荷物1に取り付けられた手荷物タグ70に記憶されている手荷物番号を特定するために、積算期間Tiに読み取った読み取り回数Nを、読み取り番号別に算出する(S6)。積算期間Tiは、手荷物1が基準位置に到達したことを検出したことに基づいて定まる。また、積算期間Tiは、手荷物1が基準位置に到達したことを検出した時点を含んでいる(S5)。積算期間Tiがこのような期間であるので、積算期間Tiに読み取った読み取り回数Nが最大となる手荷物番号は、基準位置に到達したことが検出された手荷物1に取り付けられている手荷物タグ70に記憶されている手荷物番号である可能性が高い。つまり、本実施形態によれば、搬送ライン2上を移動する手荷物1に取り付けられている手荷物タグ70の手荷物番号を精度よく特定できる。
【0055】
そして、本実施形態では、手荷物検出信号を取得した場合に、カメラ30により、手荷物画像を撮影する。そして、この手荷物画像と、読み取り回数Nが最大となった手荷物番号とを対応づける。よって、手荷物画像と手荷物番号とを精度良く対応させることができる。
【0056】
積算期間Tiの長さは、読み取り回数Nが最大回数Nmaxとなっている時間T(Nmax)よりも長く、かつ、読み取り回数Nが最小回数Nmin以上となっている時間T(Nmin)以下の時間になっている。なお、最小回数Nminは、0回よりも多く最大回数Nmaxよりも少ない回数である。
【0057】
このように積算期間Tiの長さを設定することで、複数の手荷物タグ70が近接している場合にも、基準位置に到達したことが検出された手荷物1に取り付けられている手荷物タグ70に記憶されている手荷物番号を誤って特定してしまうことを抑制できる。
【0058】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態を説明する。この第2実施形態以下の説明において、それまでに使用した符号と同一番号の符号を有する要素は、特に言及する場合を除き、それ以前の実施形態における同一符号の要素と同一である。また、構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分については先に説明した実施形態を適用できる。
【0059】
第2実施形態では、タグ読み取り装置40は、手荷物タグ70から受信する信号のRSSIを決定する。図9に、第2実施形態において、制御部21が実行する処理を示している。
【0060】
図9に示す処理は、図6のS2に代えてS2Aを実行する。また、S5の後にS5Aを実行する。S2Aでは、読み取り装置制御部211が、タグ読み取り装置40から読み取り結果を取得するとともに、各読み取り結果に対応する受信信号のRSSIも取得する。
【0061】
S5Aでは、ID特定部214が、積算期間Tiに読み取った読み取り結果のうち、RSSIが閾値TH1以下の読み取り結果を除外する。閾値TH1は事前に設定された値である。閾値TH1は、読み取り回数NがNmaxになるRSSIよりは小さい値に設定されていればよい。
【0062】
続くS6では、積算期間Tiに読み取った読み取り結果のうち、S5Aで除外されずに残った読み取り結果を用いて読み取り回数Nを決定する。
【0063】
図10には、読み取り回数Nと、RSSIと、閾値TH1との関係を概念的に示している。図10では、閾値TH1は、読み取り回数Nが最大回数NmaxとなるRSSIよりも低く、読み取り回数Nが最小回数NminとなるRSSIよりも低い。もちろん、閾値TH1は、読み取り回数Nが0となるRSSIよりは高い。
【0064】
RSSIが低いと読み取り回数Nが小さくなる傾向にある。したがって、第2実施形態では、図10に示す閾値TH1以下の部分を除外して読み取り回数Nを算出することになる。
【0065】
この第2実施形態では、手荷物番号を読み取ることができても、RSSIが低い信号は除外して読み取り回数Nを算出する。RSSIが低い信号である場合、手荷物タグ70は、基準位置から遠い位置にある可能性が高い。したがって、この第2実施形態のようにすれば、手荷物タグ70が基準位置から遠い位置にある場合を除外して読み取り回数Nを算出できる。その結果、より精度よく、搬送ライン2上を移動する手荷物1に取り付けられている手荷物タグ70の手荷物番号を特定できる。
【0066】
以上、実施形態を説明したが、開示した技術は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の変形例も開示した範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【0067】
<変形例1>
第2実施形態では、ID特定部214は、RSSIが閾値TH1以下の読み取り結果を除外して読み取り回数Nを算出していた。これに対して、この変形例1では、ID特定部214は、RSSIの2乗が閾値TH2以下である受信信号による読み取り結果は除外して、読み取り回数Nを算出する。閾値TH2も事前に設定する値である。
【0068】
RSSIを2乗した値は、RSSIよりも、基準位置からの距離により変化する程度が大きい。したがって、このようにすれば、第2実施形態よりも、より手荷物タグ70が基準位置から遠い位置にあるときの読み取り結果を除外しつつ、手荷物タグ70が基準位置に近いときの読み取り結果を残して読み取り回数Nを算出できる。その結果、読み取り回数Nを用いた手荷物番号の特定精度がより向上する。
【0069】
<変形例2>
第2実施形態では、S5Aにおいて、RSSIが閾値TH1以下の受信信号を除外していた。しかし、S2Aにおいて、記憶時に、RSSIが閾値TH1以下の受信信号から読み取った読み取り結果を除外してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1:手荷物(物品) 2:搬送ライン 10:チェックインカウンタ端末 20:管理装置 21:制御部 22:記憶部 23:無線通信部 30:カメラ 40:タグ読み取り装置 50:位置検出センサ 70:手荷物タグ(無線タグ) 100:手荷物管理システム(物品管理システム) 211:読み取り装置制御部 212:カメラ制御部 213:期間決定部 214:ID特定部 215:対応付け部 N:読み取り回数 Nmax:最大回数 Nmin:最小回数 TH1:閾値 TH2:閾値 Ti:積算期間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10