(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】撥水耐油剤、繊維製品および繊維製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/18 20060101AFI20240626BHJP
D06M 15/263 20060101ALI20240626BHJP
C08F 20/10 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
C09K3/18 101
D06M15/263
C08F20/10
(21)【出願番号】P 2023217639
(22)【出願日】2023-12-25
【審査請求日】2023-12-25
(31)【優先権主張番号】P 2022208714
(32)【優先日】2022-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100190713
【氏名又は名称】津村 祐子
(72)【発明者】
【氏名】南 晋一
(72)【発明者】
【氏名】武内 留美
(72)【発明者】
【氏名】柏木 正人
(72)【発明者】
【氏名】山本 育男
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/065384(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/065385(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/067448(WO,A1)
【文献】特開2019-026747(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0171051(US,A1)
【文献】国際公開第2022/210893(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/163570(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/18
C09D 1/00- 10/00
C09D101/00-201/10
C08F 6/00-297/08
C08C 19/00- 19/44
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/16
D06M 13/00- 15/715
CAplus/REGISTRY(STN)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分としての非フッ素化合物と、液状媒体とを含み、
ASTM D6866によるバイオベース炭素含有率が40%以上であ
り、
前記非フッ素化合物は、下記一般式:
CH
2
=C(-X
1
)-C(=O)-Y
1
(R
1
)
k
[式中、
X
1
は、水素原子であり、
Y
1
は、-O-であり、
R
1
は、それぞれ独立して、炭素数10以上30以下の炭化水素基であり、
kは、1である。]
で表される(a)(メタ)アクリル単量体のホモポリマーである、撥水耐油剤。
【請求項2】
主成分としての非フッ素化合物と、液状媒体とを含み、
ASTM D6866によるバイオベース炭素含有率が40%以上であ
り、
前記非フッ素化合物は、下記一般式:
CH
2
=C(-X
1
)-C(=O)-Y
1
(R
1
)
k
[式中、
X
1
は、水素原子であり、
Y
1
は、-O-であり、
R
1
は、それぞれ独立して、炭素数10以上30以下の炭化水素基であり、
kは、1である。]
で表される(a)(メタ)アクリル単量体と、
(c)ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレートおよびネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種の非フッ素架橋性単量体、および
(d)フッ素以外のハロゲン原子を含有するハロゲン化ビニルおよびハロゲン化ビニリデンよりなる群から選択される少なくとも1種のオレフィン単量体
よりなる群から選択される少なくとも1種の単量体とのコポリマーである、撥水耐油剤。
【請求項3】
繊維構造体に適用される、請求項1または2に記載の撥水耐油剤。
【請求項4】
請求項
3に記載の撥水耐油剤を繊維構造体に適用して、前記非フッ素化合物を前記繊維構造体に付着させることを備える、繊維製品の製造方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の撥水耐油剤に含まれていた前記非フッ素化合物が付着した、繊維製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水耐油剤、繊維製品および繊維製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の環境問題への関心の高まりに伴い、生分解性材料およびバイオベース材料のニーズも高まっている。例えば、特許文献1、2および3には、長鎖アルキル基で修飾されたバイオベース材料を含む耐油剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2022/065382号
【文献】国際公開第2022/065384号
【文献】国際公開第2022/065385号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生分解性材料およびバイオベース材料のニーズは、今後より一層高まることが予想される。本開示の目的は、撥水耐油剤全体としてバイオベース炭素含有率が高く、さらに、被処理物に十分な撥水性および/または耐油性を付与することのできる撥水耐油剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の態様を含む。
<1>
主成分としての非フッ素化合物と、液状媒体とを含み、
ASTM D6866によるバイオベース炭素含有率が40%以上である、撥水耐油剤。
<2>
前記非フッ素化合物は、炭素数7~40の炭化水素基を有する、上記<1>に記載の撥水耐油剤。
<3>
前記非フッ素化合物は、炭素数7~40の炭化水素基および(メタ)アクリロイル基を有する(a)(メタ)アクリル単量体由来の繰り返し単位を含むポリマーである、上記<1>または<2>に記載の撥水耐油剤。
<4>
前記(a)(メタ)アクリル単量体は、下記一般式:
CH2=C(-X1)-C(=O)-Y1(R1)k
[式中、
X1は、水素原子、一価の有機基またはフッ素以外のハロゲン原子であり、
Y1は、2価~4価の炭素数1の炭化水素基、-C6H4-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基であり、
R1は、それぞれ独立して、炭素数7~40の炭化水素基であり、
kは1~3である。]
で表される、上記<3>に記載の撥水耐油剤。
<5>
前記非フッ素化合物は、前記(a)(メタ)アクリル単量体のホモポリマーである、上記<3>または<4>に記載の撥水耐油剤。
<6>
前記非フッ素化合物は、前記(a)(メタ)アクリル単量体と、重合性基を有するその他の単量体とのコポリマーであり、
前記その他の単量体は、
(b)(メタ)アクリレートエステル単量体、
(c)非フッ素架橋性単量体、および
(d)フッ素以外のハロゲン原子含有オレフィン単量体
よりなる群から選択される少なくとも1種である、上記<3>または<4>に記載の撥水耐油剤。
<7>
繊維構造体に適用される、上記<1>~<6>のいずれかに記載の撥水耐油剤。
<8>
上記<1>~<7>のいずれかに記載の撥水耐油剤を繊維構造体に適用して、前記非フッ素化合物を前記繊維構造体に付着させることを備える、繊維製品の製造方法。
<9>
上記<1>~<7>のいずれかに記載の撥水耐油剤に含まれていた前記非フッ素化合物が付着した、繊維製品。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、撥水耐油剤全体としてバイオベース炭素含有率が高く、さらに、被処理物に十分な撥水性および耐油性を付与することのできる撥水耐油剤が提供される。さらに、この撥水耐油剤が付着した繊維製品、ならびに撥水耐油剤を使用した繊維製品の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<撥水耐油剤>
撥水耐油剤は、被処理物に、撥水性および耐油性の少なくとも一方を付与することができる。撥水耐油剤は、主成分としての非フッ素化合物と、液状媒体とを含む。非フッ素化合物は、フッ素原子を含有しない。本開示にかかる撥水耐油剤(以下、非フッ素撥水耐油剤と称する。)は、主成分としてフッ素原子を有さない化合物を含むが、これで処理して得られる製品は、高い撥水性および耐油性を発揮し得る。さらに、この高い撥水性および耐油性は、洗濯後にも維持される。つまり、本開示にかかる非フッ素撥水耐油剤で処理された製品は、撥水性および/または耐油性、特に撥水性について高い耐久性を有する。
【0008】
非フッ素撥水耐油剤のASTM D6866によるバイオベース炭素含有率(Biobased Content)は、40%以上である。撥水耐油剤全体としてのバイオベース炭素含有率が高いため、カーボンニュートラルの実現に貢献し、また、この非フッ素撥水耐油剤で処理して得られる製品を処分する際、環境負荷を低減する。
【0009】
バイオベース炭素含有率は、非フッ素撥水耐油剤中の全炭素質量のうち、バイオマス由来成分の炭素質量の割合ということができる。具体的には、バイオベース炭素含有率は、非フッ素撥水耐油剤に含まれる有機炭素中の放射性炭素(C14)の濃度である。放射性炭素(C14)の半減期は約5700年であり、化石燃料中には存在しないことが知られている。すなわち、バイオベース炭素含有率が高いほど、非フッ素撥水耐油剤におけるバイオマス由来成分の量が多く、石油等に代表される化石資源系材料の量が少ないといえる。バイオベース炭素含有率は、ASTM D6866 B法に準拠して求められる。
【0010】
非フッ素撥水耐油剤のバイオベース炭素含有率は高いほど好ましい。非フッ素撥水耐油剤のASTM D6866によるバイオベース炭素含有率は、50%以上、60%以上、63%以上、65%以上、67%以上、69%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上であってよい。上限は特に制限はないが、例えば99%以下、95%以下、90%以下、80%以下、75%以下であってもよい。
【0011】
(非フッ素化合物)
非フッ素化合物は、フッ素原子を含有しない。非フッ素化合物は、非フッ素撥水耐油剤における主成分である。主成分とは、非フッ素撥水耐油剤の固形分質量の50質量%以上を占める成分である。非フッ素化合物の含有量は、非フッ素撥水耐油剤の固形分質量の50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上であってよい。
【0012】
非フッ素化合物の数平均分子量(Mn)は、1,000以上1,000,000以下であってよい。非フッ素化合物の数平均分子量(Mn)は、3,000以上であってよく、5,000以上であってよい。非フッ素化合物の数平均分子量(Mn)は、500,000以下であってよく、200,000以下であってよい。非フッ素化合物の数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定される。
【0013】
非フッ素化合物のASTM D6866によるバイオベース炭素含有率もまた、40%以上であってよい。非フッ素化合物のASTM D6866によるバイオベース炭素含有率は、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上であってよい。
【0014】
非フッ素化合物は、例えば、炭素数7~40の炭化水素基(以下、長鎖炭化水素基と称する。)を有する。非フッ素化合物は、長鎖炭化水素基を有するポリマーであってよい。長鎖炭化水素基によって、優れた撥水性および耐油性が発現する。非フッ素化合物による撥水性および耐油性は、フッ素化合物によるものと同程度あるいはそれ以上である。
【0015】
ポリマーにおいて、長鎖炭化水素基の配置は特に限定されない。長鎖炭化水素基は、例えば、ポリマーの側鎖として配置されてよく、デンドリマー構造ポリマーのデンドロンの一部として配置されてよく、ヌレート骨格を有するポリマーの末端に配置されてよく、ポリマーの繰り返し単位に含まれていてよい。
【0016】
非フッ素化合物は、グラフト鎖として長鎖炭化水素基を有するポリマーであってよい。非フッ素化合物は、長鎖炭化水素基を有する単量体と、ポリイソシアネートと、必要に応じて用いられる他の単量体との反応物であってよい。この場合、長鎖炭化水素基は、デンドリマー構造ポリマーのデンドロンの一部として配置されるか、あるいは、ヌレート骨格を有するポリマーの末端に配置され得る。非フッ素化合物は、長鎖炭化水素基および重合性基を有する単量体の重合物、あるいは、長鎖炭化水素基および重合性基を有する単量体と、重合性基を有するその他の単量体との反応物であってよい。これらの場合、長鎖炭化水素基は、ポリマーの繰り返し単位に含まれる。
【0017】
なかでも、長鎖炭化水素基は、ポリマーの繰り返し単位に含まれていてよい。言い換えれば、非フッ素化合物は、長鎖炭化水素基および重合性基を有する単量体由来の繰り返し単位を含むポリマーであってよい。
【0018】
重合性基としては、例えば、エポキシ基、グリシジル基、ビニル基、アルケニル基、アルキニル基、(メタ)アクリロイル基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、アリル基が挙げられる。なかでも、重合性基は、エチレン性不飽和二重結合を有していてよく、(メタ)アクリロイル基であってよい。非フッ素化合物は、ウレタン結合、アミド結合、ウレア結合、スルホニル結合、スルホニルアミド結合を含んでよく、含まなくてよい。
【0019】
「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基またはメタクリロイル基を意味する。「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。
【0020】
特に、非フッ素化合物は、長鎖炭化水素基および(メタ)アクリル基を有する(a)(メタ)アクリル単量体由来の繰り返し単位を含むポリマーであってよい。非フッ素化合物は、(a)(メタ)アクリル単量体のホモポリマーであってよい。
【0021】
(a)(メタ)アクリル単量体
(a)(メタ)アクリル単量体(以下、単に単量体(a)と称する場合がある。)は、長鎖炭化水素基と(メタ)アクリル基とを有する。単量体(a)は、例えば、下記一般式:
CH2=C(-X1)-C(=O)-Y1(R1)k
[式中、
X1は、水素原子、一価の有機基またはフッ素以外のハロゲン原子であり、
Y1は、2価~4価の炭素数1の炭化水素基、-C6H4-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-および-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基であり、
R1は、それぞれ独立して、炭素数7~40の炭化水素基であり、
kは1~3の整数である。]
で表される。
【0022】
X1において、一価の有機基としては、例えば、メチル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基、シアノ基が挙げられる。フッ素以外のハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。X1は、水素原子、メチル基または塩素原子であってよく、水素原子であってよい。
【0023】
Y1に含まれる炭素数1の炭化水素基の価数は、2価~4価であり、2価であってよい。炭素数1の炭化水素基としては、例えば、-CH2-、枝分かれ構造を与える-CH=(二重結合を意味するものではない)、または、枝分かれ構造を与える-C≡(三重結合を意味するものではない)が挙げられる。
【0024】
Y1は、-Y’-、-Y’-Y’-、-Y’-C(=O)-、-C(=O)-Y’-、-Y’-C(=O)-Y’-、-Y’-R’-、-Y’-R’-Y’-、-Y’-R’-Y’-C(=O)-、-Y’-R’-C(=O)-Y’-、-Y’-R’-Y’-C(=O)-Y’-、または-Y’-R’-Y’-R’-(式中、Y’は、直接結合、-O-、-NH-または-S(=O)2-であり、R’は-(CH2)m-(mは1~5の整数である)または-C6H4-(フェニレン基)である。)であってよい。
【0025】
Y1の具体例としては、-O-、-NH-、-O-C(=O)-、-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-、-O-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-O-、-NH-C(=O)-NH-、-O-C6H4-、-O-(CH2)m-O-、-NH-(CH2)m-NH-、-O-(CH2)m-NH-、-NH-(CH2)m-O-、-O-(CH2)m-O-C(=O)-、-O-(CH2)m-C(=O)-O-、-NH-(CH2)m-O-C(=O)-、-NH-(CH2)m-C(=O)-O-、-O-(CH2)m-O-C(=O)-NH-、-O-(CH2)m-NH-C(=O)-O-、-O-(CH2)m-C(=O)-NH-、-O-(CH2)m-NH-C(=O)-、-O-(CH2)m-NH-C(=O)-NH-、-O-(CH2)m-O-C6H4-、-O-(CH2)m-NH-S(=O)2-、-O-(CH2)m-S(=O)2-NH-、-NH-(CH2)m-O-C(=O)-NH-、-NH-(CH2)m-NH-C(=O)-O-、-NH-(CH2)m-C(=O)-NH-、-NH-(CH2)m-NH-C(=O)-、-NH-(CH2)m-NH-C(=O)-NH-、-NH-(CH2)m-O-C6H4-、-NH-(CH2)m-NH-C6H4-、-NH-(CH2)m-NH-S(=O)2-、または-NH-(CH2)m-S(=O)2-NH-(式中、mは1~5、特に2または4である。)が挙げられる。
【0026】
なかでも、Y1は、-O-、-NH-、-O-(CH2)m-O-C(=O)-、-O-(CH2)m-NH-C(=O)-、-O-(CH2)m-O-C(=O)-NH-、-O-(CH2)m-NH-C(=O)-O-、-O-(CH2)m-NH-C(=O)-NH-、-O-(CH2)m-NH-S(=O)2-、-O-(CH2)m-S(=O)2-NH-、-NH-(CH2)m-NH-S(=O)2-、または-NH-(CH2)m-S(=O)2-NH-(式中、mは1~5の整数、特に2または4である。)であってよい。Y1は、-O-または-O-(CH2)m-NH-C(=O)-であってよく、-O-(CH2)m-NH-C(=O)-であってよい。Y1は、炭素数1の炭化水素基でなくてよい。
【0027】
R1において、炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってよく、飽和した長鎖炭化水素基であってよく、アルキル基であってよい。R1の炭素数は、10以上、12以上、14以上、16以上、18以上、または20以上であってよい。R1の炭素数は、40以下、35以下、30以下、25以下、22以下、20以下、または18以下であってよい。R1の炭素数は、10以上30以下であってよく、12以上30以下であってよい。
【0028】
単量体(a)は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0029】
単量体(a)は、例えば、長鎖脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸との脱水反応、または、長鎖脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸エステルとのエステル交換反応といった公知の方法により製造できる。長鎖脂肪族アルコールは、例えば、高バイオベース炭素含有率の油脂を原料として使用した還元法、あるいは、非バイオベース材料由来のエチレンを原料として使用したチーグラー法によって、製造できる。いずれの方法によって得られる長鎖脂肪族アルコールも、市販されている。
【0030】
バイオベース材料とは、バイオベース炭素含有率が1%以上である有機化合物を言う。非バイオベース材料とは、バイオベース炭素含有率が1%未満である有機化合物を言う。
【0031】
単量体(a)のASTM D6866によるバイオベース炭素含有率もまた、40%以上であってよい。単量体(a)のASTM D6866によるバイオベース炭素含有率は、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上であってよい。
【0032】
(b)~(d)単量体
非フッ素化合物は、単量体(a)と、重合性基を有するその他の単量体とのコポリマーであってよい。非フッ素化合物は、これら単量体のランダム共重合体であってよく、ブロック共重合体であってよい。耐油性の観点から、ランダム共重合体であってよい。
【0033】
重合性基を有するその他の単量体としては、例えば、
(b)(メタ)アクリレートエステル単量体、
(c)非フッ素架橋性単量体、および
(d)フッ素以外のハロゲン原子含有オレフィン単量体
よりなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0034】
(b)(メタ)アクリレートエステル単量体
(b)(メタ)アクリレートエステル単量体(以下、単に単量体(b)と称する場合がある。)は、単量体(a)以外のアクリル系化合物である。単量体(b)としては、例えば、
(b1)脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリレートエステル単量体、および
(b2)環状炭化水素基を有する(メタ)アクリレートエステル単量体
の少なくとも一方が挙げられる。
【0035】
(b1)脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリレートエステル単量体
(b1)脂肪族炭化水素基含有(メタ)アクリレートエステル(以下、単に単量体(b1)と称する場合がある。)によって、被処理物の風合いが柔軟になり易い。単量体(b1)において、脂肪族炭化水素基は、アルコール残基を形成してよい。単量体(b1)もまた、フッ素原子を含有しない。
【0036】
単量体(b1)は、例えば、下記一般式:
CH2=C(-A11)-C(=O)-O-A12
[式中、
A11は、水素原子またはメチル基であり、
A12は、炭素数1~40の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素基である。]
で表される。
【0037】
A12は、直鎖の脂肪族炭化水素基であってよい。A12は、直鎖または分岐の飽和した脂肪族炭化水素基であってよく、直鎖または分岐のアルキル基であってよい。A12の炭素数は、10以上であってよく、18以上であってよい。A12の炭素数は、28以下であってよい。A12の炭素数は、18~28であってよく、18であってよく、22であってよい。
【0038】
単量体(b1)の具体例としては、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0039】
単量体(b1)は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0040】
(b2)環状炭化水素基を有する(メタ)アクリレートエステル単量体
(b2)環状炭化水素基含有(メタ)アクリレートエステル単量体(以下、単に単量体(b2)と称する場合がある。)によって、加工安定性が改良されたり、被処理物の撥水性が向上したりし得る。単量体(b2)もまた、フッ素原子を含有しない。
【0041】
単量体(b2)は、そのホモポリマーの融点が高い(例えば、50℃以上、特に80℃以上)ことが望ましい。
【0042】
単量体(b2)は、例えば、下記一般式:
CH2=C(-A21)-C(=O)-O-A22
[式中、
A21は、水素原子、メチル基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数2~21の直鎖または分岐のアルキル基、シアノ基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であり、
A22は、炭素数4~40の環状炭化水素含有基である。]
で表される。
【0043】
A21は、水素原子、メチル基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基であってよく、塩素原子であってよい。
【0044】
A22は、飽和または不飽和の、単環基、多環基であってよい。A22は、飽和した環状炭化水素基であってよく、飽和した環状脂肪族基であってよい。環状炭化水素基の炭素数は、6以上であってよく、7以上であってよい。環状炭化水素基の炭素数は、20以下であってよく、15以下であってよく、12以下であってよい。環状炭化水素基としては、例えば、炭素数4~20(特に5~12)の環状脂肪族基、炭素数6~20の芳香族基、炭素数7~20の芳香環を有する脂肪族基が挙げられる。環状炭化水素基の具体例としては、シクロヘキシル基、t-ブチルシクロヘキシル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基が挙げられる。環状炭化水素基は、鎖状基(例えば、直鎖または分岐の炭化水素基)を有していてよい。
【0045】
単量体(b2)の具体例としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0046】
単量体(b2)は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0047】
(c)非フッ素架橋性単量体
(c)非フッ素架橋性単量体(以下、単に単量体(c)と称する場合がある。)によって、被処理物の撥水性および耐油性の耐久性がより高くなり得る。単量体(c)は、フッ素原子を含まず、少なくとも2つの上記重合性基および/または反応性基を有する。反応性基としては、例えば、ヒドロキシル基、クロロメチル基、アミノ基、カルボキシル基が挙げられる。
【0048】
単量体(c)は、少なくとも2つのエチレン性不飽和二重結合(特に、(メタ)アクリロイル基)を有していてよく、少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合と少なくとも1つの反応性基を有していてよい。
【0049】
単量体(c)は、反応性基を有するモノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレートまたはモノ(メタ)アクリルアミドであってよい。単量体(c)は、ジ(メタ)アクリレートであってよい。単量体(c)は、ヒドロキシル基とビニル基とを有していてよい。
【0050】
単量体(c)の具体例としては、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、モノクロロ酢酸ビニル、メタクリル酸ビニル、グリシジル(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0051】
単量体(c)は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0052】
(d)ハロゲン原子含有オレフィン単量体
(d)ハロゲン原子含有オレフィン単量体(以下、単に単量体(d)と称する場合がある。)によって、被処理物の撥水性および耐油性の耐久性がより高くなり得る。単量体(d)は、フッ素原子以外のハロゲン原子(塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)を、例えば、1個以上10個以下有する。オレフィンの炭素数は、2~20であってよい。オレフィンの炭素数は、5以下であってよい。
【0053】
単量体(d)は、1個以上10個以下のフッ素原子以外のハロゲン原子を有し、炭素数が2~20であってよい。単量体(d)は、1個以上10個以下の塩素を有し、炭素数2~20であってよい。単量体(d)は、1個以上5個以下の塩素原子を有し、炭素数が2~5であってよい。
【0054】
単量体(d)の具体例としては、ハロゲン化ビニル(例えば、塩化ビニル、臭化ビニル、ヨウ化ビニル)、ハロゲン化ビニリデン(例えば、塩化ビニリデン、臭化ビニリデン、ヨウ化ビニリデン)が挙げられる。なかでも、撥水性(特に撥水性の耐久性)が高くなる点で、塩化ビニルであってよい。
【0055】
単量体(d)は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0056】
(e)他の単量体
非フッ素化合物は、単量体(a)と、単量体(b)、単量体(c)および単量体(d)の少なくとも1つと、これら以外の(e)他の単量体(以下、単に単量体(e)と称する場合がある。)とのコポリマーであってよく、単量体(a)と単量体(e)とのコポリマーであってよい。単量体(e)は、フッ素原子を含まず、上記重合性基および反応性基を合計で1以下有する。
【0057】
単量体(e)の具体例としては、エチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、およびビニルアルキルエーテルが挙げられる。
【0058】
単量体(e)は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0059】
非フッ素化合物に占める単量体(a)由来の繰り返し単位(a)で構成される部分の質量割合Waは、2質量%以上100質量%以下であってよい。上記質量割合Waは、非フッ素化合物の、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、あるいは50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上であってよい。質量割合Waは、非フッ素化合物の95質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、あるいは70質量%以下であってよい。
【0060】
特にASTM D6866によるバイオベース炭素含有率が80%以上である単量体(a)由来の繰り返し単位(a)で構成される部分の質量割合Waは、2質量%以上100質量%以下であってよい。当該質量割合Waは、非フッ素化合物の、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、あるいは50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上であってよい。当該質量割合Waは、非フッ素化合物の95質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、あるいは70質量%以下であってよい。
【0061】
単量体(b)由来の繰り返し単位(b)で構成される部分の質量割合Wbは、繰り返し単位(a)で構成される部分の質量を100質量%としたとき、0質量%以上2,000質量%以下であってよい。上記質量割合Wbは、1質量%以上であってよく、5質量%以上であってよい。質量割合Wbは、100質量%以下であってよく、80質量%以下であってよい。
【0062】
単量体(b1)および(b2)由来の繰り返し単位(b1)、(b2)で構成される部分の質量割合Wb1、Wb2はそれぞれ、繰り返し単位(a)で構成される部分の質量を100質量%としたとき、0質量%以上150質量%以下であってよい。上記質量割合Wb1、Wb2はそれぞれ、1質量%以上であってよく、2質量%以上であってよい。質量割合Wb1、Wb2はそれぞれ、100質量%以下であってよく、50質量%以下であってよい。
【0063】
単量体(c)由来の繰り返し単位(c)で構成される部分の質量割合Wcは、繰り返し単位(a)で構成される部分の質量を100質量%としたとき、0質量%以上50質量%以下であってよい。上記質量割合Wcは、1質量%以上であってよく、2質量%以上であってよい。上記質量割合Wcは、10質量%以下であってよく、8質量%以下であってよい。
【0064】
単量体(d)由来の繰り返し単位(d)で構成される部分の質量割合Wdは、繰り返し単位(a)で構成される部分の質量を100質量%としたとき、0質量%以上100質量%以下であってよい。上記質量割合Wdは、1質量%以上であってよく、2質量%以上、3質量%以上であってよい。上記質量割合Wdは、60質量%以下であってよく、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、7質量%以下、5質量%以下、3質量%以下であってよい。
【0065】
単量体(d)によって、撥水性(特に撥水性の耐久性)が高くなり易い。一方、撥水耐油剤のバイオベース炭素含有率が高まる点で、単量体(d)の質量割合Wdは少なくてよい。
【0066】
単量体(e)由来の繰り返し単位(e)で構成される部分の質量割合Weは、繰り返し単位(a)で構成される部分の質量を100質量%としたとき、0質量%以上100質量%以下であってよい。上記質量割合Weは、1質量%以上であってよく、2質量%以上であってよい。上記質量割合Weの上記質量割合は、30質量%以下であってよく、10質量%以下であってよい。
【0067】
質量割合Wb、Wc、WdおよびWeは、Wb:Wc:Wd:We=0~80質量%:0~10質量%:0~40質量%:0~20質量%であってよく、3~75質量%:0.5~5質量%:2~30質量%:0~10質量%であってよく、10~70質量%:0.8~3質量%:5~25質量%:0~5質量%であってよい。
【0068】
非フッ素化合物を製造する際の、単量体(a)、単量体(b)、単量体(c)、単量体(d)および単量体(e)の仕込み質量比を、質量割合Wa、Wb、Wc、WdおよびWeとみなしてよい。
【0069】
ポリマーである非フッ素化合物は、通常の重合方法によって製造できる。重合反応の条件も適宜設定すればよい。重合方法としては、溶液重合、懸濁重合、乳化重合が挙げられる。なかでも乳化重合であってよい。溶液重合により非フッ素化合物を製造した後、溶剤の除去および界面活性剤および水の添加を行って、非フッ素化合物の水系エマルションを得てもよい。
【0070】
溶液重合では、重合開始剤の存在下で、上記の単量体を有機溶媒に溶解させ、窒素置換後、30~120℃の範囲で1~10時間、加熱撹拌する方法が採用される。
【0071】
乳化重合では、重合開始剤および乳化剤の存在下で、上記単量体を水中に乳化させ、窒素置換後、50~80℃の範囲で1~10時間、撹拌して重合させる方法が採用される。
【0072】
重合反応において、連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤の使用量に応じて、非フッ素化合物の分子量を変化させることができる。
【0073】
(乳化剤)
非フッ素撥水耐油剤は、乳化剤を含んでいてよい。乳化剤のASTM D6866によるバイオベース炭素含有率もまた、40%以上であってよい。乳化剤のASTM D6866によるバイオベース炭素含有率は、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上であってよい。
【0074】
乳化剤としては、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、および両性界面活性剤よりなる群から選択される1種以上が挙げられる。非フッ素撥水耐油剤は、ノニオン性界面活性剤を含んでいてよく、ノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤とを含んでいてよい。被処理物が繊維構造体である場合、非フッ素撥水耐油剤は、ノニオン性界面活性剤を含むことが望ましい。
【0075】
長鎖アルキル基を含有する乳化剤において、当該長鎖アルキル基は、バイオベース材料由来であってよく、非バイオベース材料由来であってよい。乳化剤は、バイオベース材料由来または非バイオベース材料由来のいずれであってもよい。乳化剤は市販品であってよい。
【0076】
ノニオン性界面活性剤
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、エーテル化合物、エステル化合物、エステルエーテル化合物、アルカノールアミド、多価アルコールおよびアミンオキシドが挙げられる。
【0077】
エーテル化合物としては、例えば、オキシアルキレン基(好ましくは、ポリオキシエチレン基)を有する化合物が挙げられる。
【0078】
エステル化合物としては、例えば、アルコールと脂肪酸とのエステル化合物が挙げられる。アルコールとしては、例えば、1~6価(特に2~5価)の炭素数1~50(特に炭素数10~30)のアルコールが挙げられる。なかでも、脂肪族アルコールであってよい。脂肪酸としては、例えば、炭素数2~50、特に炭素数5~30の飽和または不飽和の脂肪酸が挙げられる。
【0079】
エステルエーテル化合物としては、例えば、アルコールと脂肪酸とのエステルに、アルキレンオキシド(特にエチレンオキシド)を付加した化合物が挙げられる。アルコールおよび脂肪酸は、エステル化合物の原料として挙げたものと同様であってよい。
【0080】
アルカノールアミドとしては、例えば、脂肪酸とアルカノールアミンとの反応物が挙げられる。アルカノールアミドは、モノアルカノールアミドまたはジアルカノールアミドであってよい。アルカノールアミンは、1~3のアミノ基および1~5ヒドロキシル基を有する炭素数2~50、特に5~30のアルカノールであってよい。脂肪酸は、エステル化合物の原料として挙げたものと同様であってよい。
【0081】
多価アルコールとしては、例えば、2~5価の炭素数10~50のアルコールが挙げられる。
【0082】
アミンオキシドとしては、例えば、アミン(二級アミンまたは好ましくは三級アミン)の酸化物(例えば炭素数5~50)が挙げられる。
【0083】
ノニオン性界面活性剤は、オキシアルキレン基(好ましくはポリオキシエチレン基)を有していてよい。オキシアルキレン基におけるアルキレン基の炭素数は、2~10であってよい。ノニオン性界面活性剤1分子当たりのオキシアルキレン基の数は、2~100であってよい。
【0084】
ノニオン性界面活性剤は、エーテル化合物、エステル化合物、エステルエーテル化合物、アルカノールアミド、多価アルコールおよびアミンオキシドよりなる群から選択される少なくとも1種であり、かつ、オキシアルキレン基を有していてよい。
【0085】
ノニオン性界面活性剤は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0086】
カチオン性界面活性剤
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アミン塩、4級アンモニウム塩、オキシエチレン付加型アンモニウム塩が挙げられる。
【0087】
カチオン性界面活性剤は、例えば、下記一般式:
R51-N+(-R52)(-R53)(-R54)X-
[式中、
R51、R52、R53およびR54は、炭素数1~30の炭化水素基であり、
Xは、アニオン性基である。]
で表される。
【0088】
R51、R52、R53およびR54は、例えば、アルキル基(メチル基、ブチル基、ステアリル基、パルミチル基等)である。Xは、例えば、ハロゲン(塩素等)、酸(塩酸、酢酸等)である。
【0089】
カチオン性界面活性剤の具体例としては、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリン等のアミン塩型界面活性剤;モノアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウム等の4級アンモニウム塩型界面活性剤が挙げられる。なかでも、モノアルキルトリメチルアンモニウム塩(特に、アルキルの炭素数が4~30)であってよい。
【0090】
カチオン性界面活性剤は、アンモニウム塩であってよい。アンモニウム塩は、例えば、下記一般式:
R61
p-N+R62
qX-
[式中、
R61は、炭素数12以上の脂肪族炭化水素基であり、
R62は、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、ベンジル基、ポリオキシエチレン基であり、
Xは、ハロゲン原子または炭素数1~4の脂肪酸塩基であり、
pは、1または2であり、
qは、2または3であり、
p+qは、4である。]
で表される。
【0091】
R61の炭素数は、50以下であってよく、30以下であってよい。R61は、直鎖であってよく、分岐していてよい。R61は、飽和していてよく、不飽和であってよい。
【0092】
R62において、ポリオキシエチレン基のオキシエチレン基の数は、例えば1~50であり、2であってよく、3であってよい。R62は、CH3であってよく、C2H5であってよい。
【0093】
Xにおいて、ハロゲン原子は塩素原子であってよい。
【0094】
アンモニウム塩であるカチオン性界面活性剤の具体例としては、ドデシルトリメチルアンモニウムアセテート、トリメチルテトラデシルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルオクタデシルアンモニウムクロライド、(ドデシルメチルベンジル)トリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルドデシルジメチルアンモニウムクロライド、メチルドデシルジ(ヒドロポリオキシエチレン)アンモニウムクロライド、ベンジルドデシルジ(ヒドロポリオキシエチレン)アンモニウムクロライド、N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]オレアミド塩酸塩が挙げられる。
【0095】
カチオン性界面活性剤は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0096】
アニオン性界面活性剤
アニオン性界面活性剤としては、例えば、炭素数8~30の脂肪酸の塩;炭素数8~30のアルキル基を有するアルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩等のスルホン酸塩;炭素数8~30のアルキル基を有するアルキル硫酸エステル塩等の硫酸エステル塩が挙げられる。
【0097】
アニオン性界面活性剤の具体例としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ココイルサルコシンナトリウム、ナトリウムN - ココイルメチルタウリン、ポリオキシエチレンヤシアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ジエーテルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、α - オレフィンスルホン酸ナトリウム、ラウリルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウムが挙げられる。
【0098】
アニオン性界面活性剤は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0099】
両性界面活性剤
両性界面活性剤としては、例えば、アラニン類、イミダゾリニウムベタイン類、アミドベタイン類、酢酸ベタインが挙げられる。両性界面活性剤の具体例としては、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインが挙げられる。
【0100】
両性界面活性剤は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0101】
乳化剤の含有量は、非フッ素化合物100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下であってよい。乳化剤の含有量は、非フッ素化合物100質量部に対して、0.2質量部以上であってよい。乳化剤の含有量は、非フッ素化合物100質量部に対して、10質量部以下であってよい。
【0102】
ノニオン性界面活性剤の割合は、乳化剤全量に対して、5質量%以上100質量%以下であってよい。ノニオン性界面活性剤の割合は、乳化剤全量に対して、10質量%以上であってよく、20質量%以上であってよい。
【0103】
(液状媒体)
非フッ素撥水耐油剤は、液状媒体を含む。液状媒体としては、水、有機溶媒、または水と有機溶媒との混合物が挙げられる。
【0104】
非フッ素撥水耐油剤は、通常、溶液または分散液である。溶液において、非フッ素化合物は有機溶媒に溶解している。分散液において、非フッ素化合物は水性媒体(水、または水と有機溶媒との混合物)に分散している。
【0105】
有機溶媒としては、例えば、エステル(例えば、炭素数2~30のエステル、具体的には、酢酸エチル、酢酸ブチル)、ケトン(例えば、炭素数2~30のケトン、具体的には、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン)、アルコール(例えば、炭素数1~30のアルコール、具体的には、イソプロピルアルコール)、芳香族系溶剤(例えば、トルエンおよびキシレン)、石油系溶剤(例えば、炭素数5~10のアルカン、具体的には、ナフサ、灯油)が挙げられる。
【0106】
液状媒体は、水、あるいは水と有機溶媒との混合物であってよく、水であってよい。混合物において、有機溶媒の量は、液状媒体全量の30質量%以下であってよく、10質量%以下であってよい。混合物において、有機溶媒の量は、液状媒体全量の0.1質量%以上であってよい。
【0107】
液状媒体の含有量は、非フッ素化合物1質量部に対して、0.2質量部以上100質量部以下であってよい。液状媒体の含有量は、非フッ素化合物1質量部に対して、0.5質量部以上であってよく、1質量部以上であってよい。液状媒体の含有量は、非フッ素化合物1質量部に対して、50質量部以下であってよく、20質量部以下であってよい。
【0108】
(用途)
本開示に係る非フッ素撥水耐油剤は、外的処理剤(表面処理剤)あるいは内的処理剤として使用できる。非フッ素撥水耐油剤で処理して得られる製品は、高い撥水性および/または耐油性を有する。そのため、非フッ素撥水耐油剤は、撥水剤および/または耐油剤として利用される。さらに、非フッ素撥水耐油剤は、防汚剤、撥油剤、汚れ脱離剤、剥離剤あるいは離型剤またはその成分として利用され得る。撥水耐油剤は、非フッ素撥水耐油剤と、液状媒体と、用途に応じた他の成分とを含み得る。
【0109】
非フッ素撥水耐油剤を用いた処理の対象物としては、例えば、繊維構造体、皮革、ガラス、石材、木材、毛皮、石綿、レンガ、セメント、金属、金属酸化物、鋳物、プラスチック、プラスタが挙げられる。なかでも、繊維構造体であってよい。
【0110】
(添加剤)
非フッ素撥水耐油剤を含む外的処理剤あるいは内的処理剤は、さらに添加剤を含んでいてよい。添加剤としては、例えば、上記の非フッ素化合物以外の撥水剤および撥油剤、乾燥速度調整剤、架橋剤、造膜助剤、相溶化剤、凍結防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、pH調整剤、消泡剤、風合い調整剤、すべり性調整剤、帯電防止剤、親水化剤、抗菌剤、防腐剤、防虫剤、芳香剤、難燃剤が挙げられる。
【0111】
添加剤のASTM D6866によるバイオベース炭素含有率もまた、40%以上であってよい。添加剤のASTM D6866によるバイオベース炭素含有率は、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上であってよい。
【0112】
<繊維製品>
繊維構造体を上記の撥水耐油剤、あるいは上記の撥水耐油剤を含む外的処理剤あるいは内的処理剤(以下、単に処理剤と総称する場合がある。)で処理することにより、繊維製品が得られる。本開示は、上記の撥水耐油剤に含まれていた非フッ素化合物が付着した繊維製品を包含する。「付着」とは、非フッ素化合物と繊維製品とが物理的結合または化学的結合していることをいう。
【0113】
(繊維構造体)
被処理物は、繊維構造体である。繊維構造体としては、例えば、繊維そのもの;糸、例えば繊維の少なくとも1種を撚って得られる糸:紙、例えばパルプを抄紙して得られる紙;繊維または糸により形成されるスライバー、粗糸、織物、編物または不織布;が挙げられる。
【0114】
繊維種としては、例えば、パルプ、綿、麻、羊毛、絹等の動植物性天然繊維;ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン等の合成繊維:レーヨン、アセテート等の半合成繊維:ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維等の無機繊維;これらの混合繊維が挙げられる。パルプとしては、例えば、クラフトパルプあるいはサルファイトパルプ等の晒あるいは未晒化学パルプ;砕木パルプ、機械パルプあるいはサーモメカニカルパルプ等の晒あるいは未晒高収率パルプ;新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙あるいは脱墨古紙等の古紙パルプが挙げられる。
【0115】
以下、パルプおよびパルプを含む繊維構造体を、便宜的に紙製基材と総称する。その他の繊維およびその他の繊維を原料とする繊維構造体を、便宜的に布製基材と総称する。上記の撥水耐油剤あるいはこれを含む処理剤で処理された紙製基材を紙製品と称し、上記の撥水耐油剤あるいはこれを含む処理剤で処理された布製基材を布製品と称する。
【0116】
紙製基材
紙製基材は、パルプ、紙、前処理された紙、紙を成形した成形体であってよい。紙製基材の具体例としては、食品包装用紙、紙でできた容器、石膏ボード原紙、コート原紙、中質紙、一般ライナー、中芯、中性純白ロール紙、中性ライナー、防錆ライナー、金属合紙、クラフト紙、中性印刷筆記用紙、中性コート原紙、中性PPC用紙、中性感熱用紙、中性感圧原紙、中性インクジェット用紙及び中性情報用紙、モールド紙(モールド容器)が挙げられる。本開示に係る撥水耐油剤は、特に食品包装用紙に好適に用いられる。
【0117】
布製基材
布製基材は、繊維、糸、スライバー、粗糸、織物、編物、不織布や、織物、編物または不織布を裁断し、必要に応じて前処理、縫製および/または染色された布製品であってよい。布製品の具体例としては、衣料品、寝具、各種フィルター(例えば、静電フィルター)、防塵マスク、燃料電池の部品(例えば、ガス拡散電極及びガス拡散支持体)が挙げられる。
【0118】
撥水耐油剤が内的処理剤として使用された場合、非フッ素化合物の付着量は、繊維構造体(典型的にはパルプ)100質量部に対して、0.1質量部以上、0.5質量部以上、1質量部以上、5質量部以上、10質量部以上、20質量部以上、30質量部以上、40質量部以上であってよい。上記の非フッ素化合物の付着量は、繊維構造体100質量部に対して、100質量部以下、80質量部以下、60質量部以下、40質量部以下、20質量部以下、10質量部以下であってよい。
【0119】
撥水耐油剤が外的処理剤として使用された場合、非フッ素化合物の付着量は、0.01g/m2以上、0.03g/m2以上、0.05g/m2以上、0.10g/m2以上、0.30g/m2以上、0.50g/m2以上であってよい。上記の非フッ素化合物の付着量は、5g/m2以下、3g/m2以下、2g/m2以下、1.5g/m2以下、0.50g/m2以下、0.30g/m2以下であってよい。
【0120】
<繊維製品の製造方法>
本開示は、繊維製品の製造方法を包含する。繊維製品は、非フッ素撥水耐油剤を繊維構造体に適用して、上記の非フッ素化合物を繊維構造体に付着させることを備える方法により製造される。繊維製品には、必要に応じて種々の後処理が行われる。
【0121】
(処理方法)
非フッ素撥水耐油剤を従来既知の方法により繊維構造体に適用する。これにより、非フッ素撥水耐油剤(代表的には、非フッ素化合物)が繊維構造体の内部に浸透する、および/または繊維構造体の表面に付着する。「非フッ素撥水耐油剤を適用する」とは、繊維構造体を非フッ素撥水耐油剤あるいはこれを含む処理剤に浸漬すること、繊維構造体に非フッ素撥水耐油剤あるいはこれを含む処理剤を噴霧あるいは塗布することを含む。「適用する」とは、また、パルプスラリーに非フッ素撥水耐油剤を混合することを含む。
【0122】
非フッ素撥水耐油剤は、繊維構造体の製造過程および使用中の様々な段階で、適用することができる。例えば、紙製基材を製造するための乾燥工程中に、非フッ素撥水耐油剤を適用してもよい。例えば、布製基材を洗濯やドライクリーニングするときに、非フッ素撥水耐油剤を適用してよい。
【0123】
非フッ素撥水耐油剤あるいはこれを含む処理剤において、非フッ素化合物の濃度は、例えば、0.01質量%以上50質量%以下である。非フッ素化合物の付着量が上記の範囲になるように、非フッ素化合物の濃度を調整すればよい。
【0124】
非フッ素撥水耐油剤の適用後、非フッ素撥水耐油剤あるいは処理剤に含まれ得る液状媒体を除去するために、繊維構造体を加熱してもよい。加熱条件は、好ましくは減圧下において、例えば、30℃以上(例えば、50~120℃)である。
【0125】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例】
【0126】
次に、実施例を挙げて本開示を具体的に説明する。ただし、これらの説明は本開示を限定するものでない。以下において、部、%又は比は、特記しない限り、質量部、質量%又は質量比を表す。表中、「バイオ由来」はバイオベース材料由来であることを意味し、「非バイオ由来」は非バイオベース材料由来であることを意味する。
【0127】
バイオベース炭素含有率は、ASTM D6866 B法に準拠して求めた。
【0128】
[実施例1]
(1)非フッ素撥水耐油剤Aの調製
500ml反応フラスコに、ステアリルアクリレート(StA、バイオベース材料由来、バイオベース炭素含有率85%)115g、純水240g、トリプロピレングリコール27.0g、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(カチオン性界面活性剤、バイオベース材料由来、バイオベース炭素含有率85%)4.0g、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル(ノニオン性界面活性剤、非バイオベース材料由来)7.0g、酢酸0.23gを投入し、攪拌下、60℃で15分間、超音波を用いてこれらを乳化分散させた。反応フラスコ内を窒素置換した後、ラウリルメルカプタン0.24g、2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩0.48g(以下、V-50と記す)および水9gを含む溶液を添加した。60℃で5時間反応させて、非フッ素化合物a(StAのホモポリマー、バイオベース炭素含有率85%)の水性分散液である非フッ素撥水耐油剤A(バイオベース炭素含有率70%、固形分濃度30質量%)を得た。
【0129】
(2)処理液Aの調製
得られた非フッ素撥水耐油剤Aを5g、架橋剤を1g、および水を94g混合して、非フッ素撥水耐油剤Aを含む処理液Aを得た。
【0130】
(3)布製品の製造
試験用布(ポリエステル生地)を処理液Aに浸漬し、マングル(ピックアップ率45%)に通した。次いで、170℃で1分間、熱乾燥して、布製品を得た。
【0131】
[実施例2]
(1)非フッ素撥水耐油剤Bの調製
500mLオートクレーブに、ステアリルアクリレート(StA、バイオベース材料由来、バイオベース炭素含有率85%)35g、純水145g、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル(ノニオン性界面活性剤、非バイオベース材料由来)3g、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(カチオン性界面活性剤、バイオベース材料由来、バイオベース炭素含有率85%)2gを投入し、攪拌下、60℃で15分間、超音波を用いてこれらを乳化分散させた。オートクレーブ内を窒素置換した後、塩化ビニル(VCM)を12.5gを圧入し、さらに2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩0.5gを添加した。続いて、60℃で20時間反応させて、非フッ素化合物b(StA/VCM(=80/20)のコポリマー、バイオベース炭素含有率68%)の水性分散液である非フッ素撥水耐油剤B(バイオベース炭素含有率60%、固形分濃度30質量%)を得た。非フッ素化合物bの組成(繰り返し単位ごとの質量割合)は、単量体の仕込み比(質量)にほぼ一致した。
【0132】
(2)処理液Bの調製
得られた非フッ素撥水耐油剤Bを5g、架橋剤を1g、および水を94g混合して、非フッ素撥水耐油剤Bを含む処理液Bを得た。
【0133】
(3)布製品の製造
処理液Aに替えて、処理液Bを用いたこと以外は、実施例1と同様にして布製品を得た。
【0134】
[実施例3]
(1)非フッ素撥水耐油剤Cの調製
500ml反応フラスコに、ステアリルアクリレート(StA、バイオベース材料由来、バイオベース炭素含有率85%)115g、純水240g、トリプロピレングリコール27.0g、塩化アルキルトリメチルアンモニウム(カチオン性界面活性剤、非バイオベース材料由来)4.0g、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル(ノニオン性界面活性剤、非バイオベース材料由来)7.0g、酢酸0.23gを投入し、攪拌下、60℃で15分間、超音波を用いてこれらを乳化分散させた。反応フラスコ内を窒素置換した後、ラウリルメルカプタン0.24g、2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩0.48g(以下、V-50と記す)および水9gを含む溶液を添加した。60℃で5時間反応させて、非フッ素化合物c(StAのホモポリマー、バイオベース炭素含有率85%)の水性分散液である非フッ素撥水耐油剤C(バイオベース炭素含有率67%、固形分濃度30質量%)を得た。
【0135】
(2)処理液Cの調製
得られた非フッ素撥水耐油剤Cを5g、架橋剤を1g、および水を94g混合して、非フッ素撥水耐油剤Cを含む処理液Cを得た。
【0136】
(3)布製品の製造
処理液Aに替えて、処理液Cを用いたこと以外は、実施例1と同様にして布製品を得た。
【0137】
[実施例4]
(1)非フッ素撥水耐油剤Dの調製
500ml反応フラスコに、ステアリルアクリレート(StA、バイオベース材料由来、バイオベース炭素含有率85%)111g、グリシジルメタクリレート(GMA、非バイオベース材料由来)5g、純水240g、トリプロピレングリコール27.0g、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(カチオン性界面活性剤、バイオベース材料由来、バイオベース炭素含有率85%)4.0g、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル(ノニオン性界面活性剤1、バイオベース材料由来、バイオベース炭素含有率15%)3.8g、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル(ノニオン性界面活性剤2、非バイオベース材料由来)2.8g、酢酸0.23gを投入し、攪拌下、60℃で15分間、超音波を用いてこれらを乳化分散させた。反応フラスコ内を窒素置換した後、ラウリルメルカプタン0.24g、2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩0.48g(以下、V-50と記す)および水9gを含む溶液を添加した。60℃で5時間反応させて、非フッ素化合物d(StA/GMAのコポリマー、バイオベース炭素含有率81%)の水性分散液である非フッ素撥水耐油剤D(バイオベース炭素含有率69%、固形分濃度30質量%)を得た。
【0138】
(2)処理液Dの調製
得られた非フッ素撥水耐油剤Dを5g、架橋剤を1g、および水を94g混合して、非フッ素撥水耐油剤Dを含む処理液Dを得た。
【0139】
(3)布製品の製造
処理液Aに替えて、処理液Dを用いたこと以外は、実施例1と同様にして布製品を得た。
【0140】
[実施例5]
(1)非フッ素撥水耐油剤Eの調製
500mLオートクレーブに、ステアリルアクリレート(StA、バイオベース材料由来、バイオベース炭素含有率85%)45.5g、ダイアセトンアクリルアミド(DAAM、非バイオベース材料由来)1.1g、純水138g、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル(ノニオン性界面活性剤、バイオベース材料由来、バイオベース炭素含有率15%)1.4g、ソルビタンステアレート(ノニオン性界面活性剤、バイオベース材料由来、バイオベース炭素含有率95%以上)3.8g、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(カチオン性界面活性剤、バイオベース材料由来、バイオベース炭素含有率85%)0.6gを投入し、攪拌下、60℃で15分間、超音波を用いてこれらを乳化分散させた。ラウリルメルカプタン0.44gを添加し、オートクレーブ内を窒素置換した後、塩化ビニル(VCM、非バイオベース材料由来)16.7gを圧入し、さらに2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩0.66gを添加した。続いて、60℃で5時間反応させた後、未反応の塩化ビニル(VCM)を除去して、非フッ素化合物e(StA/VCM/DAAM(=78/20/2)のコポリマー、バイオベース炭素含有率65%)の水性分散液である非フッ素撥水耐油剤E(バイオベース炭素含有率60%、固形分濃度30質量%)を得た。ポリマーの塩素含有量から計算した塩化ビニル(VCM)の反応率は70%であった。
【0141】
(2)処理液Eの調製
得られた非フッ素撥水耐油剤Eを5g、架橋剤を1g、および水を94g混合して、非フッ素撥水耐油剤Eを含む処理液Eを得た。
【0142】
(3)布製品の製造
処理液Aに替えて、処理液Eを用いたこと以外は、実施例1と同様にして布製品を得た。
【0143】
[実施例6]
(1)非フッ素撥水耐油剤Fの調製
500mLオートクレーブに、ステアリルアクリレート(StA、バイオベース材料由来、バイオベース炭素含有率85%)52.2g、ダイアセトンアクリルアミド(DAAM、非バイオベース材料由来)1.1g、純水138g、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル(ノニオン性界面活性剤、バイオベース材料由来、バイオベース炭素含有率15%)1.4g、ソルビタンステアレート(ノニオン性界面活性剤、バイオベース材料由来、バイオベース炭素含有率95%以上)3.8g、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(カチオン性界面活性剤、バイオベース材料由来、バイオベース炭素含有率85%)0.6gを投入し、攪拌下、60℃で15分間、超音波を用いてこれらを乳化分散させた。ラウリルメルカプタン0.44gを添加し、オートクレーブ内を窒素置換した後、塩化ビニル(VCM、非バイオベース材料由来)7.2gを圧入し、さらに2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩0.66gを添加した。続いて、60℃で5時間反応させた後、未反応の塩化ビニル(VCM)を除去して、非フッ素化合物f(StA/VCM/DAAM(=89/9/2)のコポリマー、バイオベース炭素含有率75%)の水性分散液である非フッ素撥水耐油剤F(バイオベース炭素含有率64%、固形分濃度30質量%)を得た。ポリマーの塩素含有量から計算した塩化ビニル(VCM)の反応率は70%であった。
【0144】
(2)処理液Fの調製
得られた非フッ素撥水耐油剤Fを5g、架橋剤を1g、および水を94g混合して、非フッ素撥水耐油剤Fを含む処理液Fを得た。
【0145】
(3)布製品の製造
処理液Aに替えて、処理液Fを用いたこと以外は、実施例1と同様にして布製品を得た。
【0146】
[比較例1]
(1)含フッ素撥水耐油剤の調製
500ml反応フラスコに、CF3CF2-(CF2CF2)n-CH2CH2OCOC((Cl)=CH2(n=2.0、13FClA)102.1g、純水194g、トリプロピレングリコール34.1g、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(カチオン性界面活性剤、バイオベース材料由来、バイオベース炭素含有率85%)5.7g、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(ノニオン性界面活性剤、非バイオベース材料由来)7.0gを投入し、攪拌下、60℃で15分間、超音波を用いてこれらを乳化分散させた。反応フラスコ内を窒素置換した後、アゾ基含有水溶性重合開始剤0.4gおよび水9gを含む溶液を添加した。60℃で20時間反応させて、フッ素含有ポリマーの水性分散液である含フッ素撥水耐油剤(バイオベース炭素含有率3%、固形分濃度30質量%)を得た。
【0147】
(2)処理液x1の調製
得られた含フッ素撥水耐油剤を5g、架橋剤を1g、および水を94g混合して、含フッ素撥水耐油剤を含む処理液x1を得た。
【0148】
(3)布製品の製造
処理液Aに替えて、処理液x1を用いたこと以外は、実施例1と同様にして布製品を得た。
【0149】
[比較例2]
(1)石油系撥水耐油剤の調製
500ml反応フラスコに、パラフィンワックス(融点50℃、バイオベース炭素含有率1%未満)102.1g、純水194g、トリプロピレングリコール34.1g、塩化アルキルトリメチルアンモニウム(カチオン性界面活性剤、非バイオベース材料由来)5.7g、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(ノニオン性界面活性剤、非バイオベース材料由来)7.0gを投入した。攪拌下、60℃で15分間、超音波を用いてこれらを乳化分散させて、パラフィンワックスの水性分散液である石油系撥水耐油剤(バイオベース炭素含有率0.2%、固形分濃度30質量%)を得た。
【0150】
(2)処理液y1の調製
得られた石油系撥水耐油剤を5g、架橋剤を1g、および水を94g混合して、石油系撥水耐油剤を含む処理液y1を得た。
【0151】
(3)布製品の製造
処理液Aに替えて、処理液y1を用いたこと以外は、実施例1と同様にして布製品を得た。
【0152】
[比較例3]
(1)非フッ素撥水耐油剤z1の調製
500ml反応フラスコに、ステアリルアクリレート(StA、非バイオベース材料由来、バイオベース炭素含有率1%未満)115g、純水240g、トリプロピレングリコール27.0g、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(カチオン性界面活性剤、バイオベース材料由来、バイオベース炭素含有率85%)4.0g、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル(ノニオン性界面活性剤、非バイオベース材料由来)7.0g、酢酸0.23gを投入し、攪拌下、60℃で15分間、超音波を用いてこれらを乳化分散させた。反応フラスコ内を窒素置換した後、ラウリルメルカプタン0.24g、2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩0.48g(以下、V-50と記す)および水9gを含む溶液を添加した。60℃で5時間反応させて、非フッ素化合物(StAのホモポリマー)の水性分散液である非フッ素撥水耐油剤z1(バイオベース炭素含有率2%、固形分濃度30質量%)を得た。
【0153】
(2)処理液z1の調製
得られた非フッ素撥水耐油剤z1を5g、架橋剤を1g、および水を94g混合して、非フッ素撥水耐油剤z1を含む処理液z1を得た。
【0154】
(3)布製品の製造
処理液Aに替えて、処理液z1を用いたこと以外は、実施例1と同様にして布製品を得た。
【0155】
[評価]
得られた布製品に対して、以下の評価を行った。評価結果を表2および3に示す。
【0156】
(撥水性)
JIS L-1092(AATCC-22)のスプレー法に準じて、得られた布製品の撥水性を評価した。評価を、表1に示された撥水性No.によって示す。点数が大きいほど撥水性が良好なことを示す。
評価に関し、各撥水No.の中間に位置する状態を、5刻みで表す場合がある。例えば、撥水No.90と撥水No.100との間にある状態を撥水No.95と表現し、撥水No.80と撥水No.90との間にある状態を撥水No.85と表現する。
【0157】
【0158】
(撥水性の耐久性)
JIS L-0217 103に従い、得られた布製品を5回繰り返して洗濯した後の撥水性と、得られた布製品を10回繰り返して洗濯した後の撥水性とを、上記と同様にして評価した。
【0159】
【0160】
【0161】
[実施例7]
(1)非フッ素撥水耐油剤Gの調製
実施例2と同様にして得られた非フッ素撥水耐油剤B(バイオベース炭素含有率60%、固形分濃度30質量%)と、比較例2と同様にして得られたパラフィンワックスの水性分散液である石油系撥水耐油剤(バイオベース炭素含有率0.2%、固形分濃度30質量%)とを、質量比で80:20で混合して、非フッ素撥水耐油剤G(バイオベース炭素含有率48%、固形分濃度30質量%)を得た。
【0162】
(2)処理液Gの調製
得られた非フッ素撥水耐油剤Gを5g、架橋剤を1g、および水を94g混合して、非フッ素撥水耐油剤Gを含む処理液Gを得た。
【0163】
(3)布製品の製造
処理液Aに替えて、処理液Gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして布製品を得た。
【0164】
[比較例4]
(1)非フッ素撥水耐油剤z2の調製
実施例2と同様にして得られた非フッ素撥水耐油剤B(バイオベース炭素含有率60%、固形分濃度30質量%)と、比較例2と同様にして得られたパラフィンワックスの水性分散液である石油系撥水耐油剤(バイオベース炭素含有率0.2%、固形分濃度30質量%)とを、質量比50:50で混合して、非フッ素撥水耐油剤z2(バイオベース炭素含有率30%、固形分濃度30質量%)を得た。
【0165】
(2)処理液z2の調製
得られた非フッ素撥水耐油剤z2を5g、架橋剤を1g、および水を94g混合して、非フッ素撥水耐油剤z2を含む処理液z2を得た。
(3)布製品の製造
処理液Aに替えて、処理液z2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして布製品を得た。
【0166】
[評価]
得られた布製品に対して、上記と同様にして撥水性の評価を行った。評価結果を表4に示す。表4には、実施例2および比較例2の結果も併せて示している。
【0167】
【0168】
[実施例8]
(1)処理液Hの調製
実施例1と同様にして製造された非フッ素撥水耐油剤A、澱粉(バイオベース炭素含有率40%以上)および水を混合して、処理液H(バイオベース炭素含有率70%)を得た。非フッ素化合物aの固形分濃度は2.4質量%、澱粉の固形分濃度は7質量%であった。
【0169】
(2)紙製品の製造
LBKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)60質量%とNBKP(針葉樹さらしクラフトパルプ)40質量%とを混合して、パルプのろ水度が400ml(Canadian Standard Freeness)のパルプスラリーを調製した。得られたパルプスラリーに、湿潤紙力剤およびサイズ剤を添加した後、長網抄紙機により、紙密度が0.58g/cm3、坪量45g/m2の紙を製造した。得られた紙に対して、処理液Hを用いてサイズプレス処理を行った後、ドラムドライヤーで乾燥して、紙製品(加工紙)を得た。
【0170】
[実施例9]
非フッ素撥水耐油剤Aに替えて、実施例2と同様にして製造された非フッ素撥水耐油剤Bを用いたこと以外は、実施例8と同様にして、処理液Iおよび紙製品を得た。
【0171】
[比較例5]
非フッ素撥水耐油剤Aに替えて、比較例1と同様にして製造された含フッ素撥水耐油剤を用いたこと以外は、実施例8と同様にして、処理液x2および紙製品を得た。
【0172】
[比較例6]
非フッ素撥水耐油剤Aに替えて、比較例2と同様にして製造された石油系撥水耐油剤を用いたこと以外は、実施例8と同様にして、処理液y2および紙製品を得た。
【0173】
[評価]
得られた紙製品に対して、以下の評価を行った。評価結果を表6に示す。
【0174】
(耐油性(KIT法))
TAPPI T-559cm-02法に準じて、耐油性(KIT法)を評価した。KIT試験液として、ひまし油、トルエン、ヘプタンを表3の比率で混合したものを用いた。具体的には、KIT試験液1滴を紙に滴下して、15秒後にKIT試験液の浸透状態を観察した。紙製品の内部に浸透しなかったKIT試験液のうち、耐油度の数値の最も大きいものを、当該紙製品の耐油性とした。KIT試験液の耐油度の数値が大きいほど耐油性が高い。
【0175】
【0176】
【産業上の利用可能性】
【0177】
本開示の撥水耐油剤は、撥水性および/または耐油性が求められる種々の製品の処理剤として好適である。
【要約】
【課題】撥水耐油剤全体としてバイオベース炭素含有率が高く、さらに、被処理物に十分な撥水性および/または耐油性を付与することのできる撥水耐油剤を提供する。さらに、この撥水耐油剤が付着した繊維製品、ならびに撥水耐油剤を使用した繊維製品の製造方法を提供する。
【解決手段】主成分としての非フッ素化合物と、液状媒体とを含み、ASTM D6866によるバイオベース炭素含有率が40%以上である、撥水耐油剤である。前記非フッ素化合物は、炭素数7~40の炭化水素基を有してよい。
【選択図】なし