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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】有害動物のくくり罠
(51)【国際特許分類】
   A01M 23/34 20060101AFI20240626BHJP
   A01M 23/00 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
A01M23/34
A01M23/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023086371
(22)【出願日】2023-05-25
(62)【分割の表示】P 2019190679の分割
【原出願日】2019-10-18
(65)【公開番号】P2023105015
(43)【公開日】2023-07-28
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】512050014
【氏名又は名称】株式会社 アイエスイー
(73)【特許権者】
【識別番号】513099603
【氏名又は名称】兵庫県公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】230115336
【弁護士】
【氏名又は名称】山下 あや理
(72)【発明者】
【氏名】高橋 完
(72)【発明者】
【氏名】山端 直人
(72)【発明者】
【氏名】沼田 寛生
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-065104(JP,A)
【文献】特開昭60-203130(JP,A)
【文献】特開2015-159747(JP,A)
【文献】特開2016-178900(JP,A)
【文献】特開2019-129735(JP,A)
【文献】特開2018-153107(JP,A)
【文献】実開昭50-154475(JP,U)
【文献】特開2018-201410(JP,A)
【文献】特開2014-023525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 23/00-23/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
捕獲ワイヤー(11)の先端部が巻き曲げられて、その口径が予め収縮する方向へ弾圧付勢された状態にあるループ(11a)を、その弾圧付勢力に抗して一定の口径に保持するループ保持体(12)が、トリガーとなる踏み板(14)のループ保持体取付け用ブラケット(15)へ起伏的な回動自在に枢着されており、その踏み板(14)が有害動物により下降された時、上記ループ保持体(12)がその踏み板(14)の下降に連れて起立的に回動し、それまで保持していた上記ループ(11a)を弾き出し解放し、そのループ(11a)の口径収縮力により有害動物の脚(A)を締め付け捕獲するくくり罠(T)であって、
上記踏み板(14)の下降に連れてループ保持体(12)が起立的に回動することを検知する無線式の第1センサー(S1)と、
捕獲された有害動物の動きに応じて上記捕獲ワイヤー(11)が振動することを検知する無線式の第2センサー(S2)と、
上記第1センサー(S1)と第2センサー(S2)との両検知出力信号に基づく有害動物の捕獲状態、その第1センサー(S1)だけの検知出力信号と第2センサー(S2)だけの検知出力信号に基づく非捕獲状態との判定を行うウェブサーバ(W)を介して、上記有害動物の捕獲状態と非捕獲状態とをくくり罠(T)の状態検知情報としてユーザー端末(U)へ送信する送信部(32)(49)とを備えたことを特徴とする有害動物のくくり罠。
【請求項2】
第1センサー(S1)及び第2センサー(S2)が実質的に同じ磁気センサー(28)(39)又は磁気型の近接スイッチであって、何れも磁性体(30)(40)とその磁性体(30)(40)を各々着脱自在に吸着するマグネット(29)(42)とから成り、
そのマグネット(29)(42)による磁性体(30)(40)の吸着状態が解除された時に、各々検知信号を出力することを特徴とする請求項1記載の有害動物のくくり罠。
【請求項3】
第1センサー(S1)はループ保持体(12)の先端部に取り付けられた永久磁石(29)と、そのループ保持体(12)の先端部を受け止める枠体(10)に対応設置された磁性体のボルト(30)とから成る磁気センサー(28)であって、
その永久磁石(29)によるボルト(30)の吸着状態が解除された時に、上記ループ保持体(12)が起立的に回動して捕獲ワイヤー(11)のループ(11a)を弾き出し解放した状態の検知信号を出力することを特徴とする請求項1記載の有害動物のくくり罠。
【請求項4】
第2センサー(S2)は捕獲ワイヤー(11)の中途部から上向く分岐ワイヤー(43)の上端部に取り付けられた永久磁石(42)と、樹木や支柱、その他の固定物(16)に取り付けられた第2センサー用制御ボックス(41)から下向きに露出する磁性体のボルト(40)とから成る磁気センサー(39)であって、
その永久磁石(42)によるボルト(40)の吸着状態が解除された時に、上記捕獲ワイヤー(11)がその分岐ワイヤー(43)も含む全体として振動した状態の検知信号を出力することを特徴とする請求項1記載の有害動物のくくり罠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有害動物捕獲用のくくり罠に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に有害動物捕獲用のくくり罠は、先端部にループが形成されると共に根元部が樹木などに取り付け固定された長尺な1本物の捕獲ワイヤーと、そのワイヤーのループを保持すべく、踏み板へ起伏的な回動自在に枢着されたループ保持アームと、その保持アームと踏み板を昇降し得るように収容した枠体と、上記ワイヤーをそのループの常時口径収縮する方向へ弾圧付勢するバネ手段とから成る。
【0003】
そして、捕獲ワイヤーのループを保持したセット状態にある上記ループ保持アームが、有害動物による踏み板の踏み下げをトリガーとして起立的に回動するや否や、そのループ保持アームから弾き出され解放(離脱)したワイヤーのループが、その弾圧付勢されている口径収縮力によって、有害動物の脚をくくり捕獲するようになっている。
【0004】
その脚をくくり捕獲された有害動物は、必ずや暴れ動き廻り、そのワイヤーが激しく伸縮すると共に上下左右へ振動するため、この動きを加速度センサーにより検知すれば、有害動物の捕獲状態として判定できることになる。
【0005】
このような考えに基づいた監視装置及び監視システムが、特許文献1に開示されており、これではくくり罠のループが形成されたワイヤーの振動を、加速度センサーによって計測し、その振動の種類の推移に基づいて、捕獲された物が鳥獣であるか、人であるかを識別・判定するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-58096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記特許文献1に開示の監視装置及び監視システムは、あくまでも捕獲されたことを前提としており、くくり罠の踏み板が例えば落石などを受けて下降し、ワイヤーのループがその保持アームから弾き出され解放する言わば空弾き状態として、何も捕獲していない誤作動である場合には、ワイヤーが振動しないため、加速度センサーは反応せず、監視装置から管理サーバへの送信は行われない結果、くくり罠としては捕獲できない状態のままに放置されることとなり、仕掛け直し(リセット)の作業タイミングを失するのである。
【0008】
その意味から有害動物の捕獲効率が非常に悪く、くくり罠を必ずパトロールしなければならないので、甚だ不便でもある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はこのような課題の解決を目的としており、その目的を達成するために、請求項1では捕獲ワイヤーの先端部が巻き曲げられて、その口径が予め収縮する方向へ弾圧付勢された状態にあるループを、その弾圧付勢力に抗して一定の口径に保持するループ保持体が、トリガーとなる踏み板のループ保持体取付け用ブラケットへ起伏的な回動自在に枢着されており、その踏み板が有害動物により下降された時、上記ループ保持体がその踏み板の下降に連れて起立的に回動し、それまで保持していた上記ループを弾き出し解放し、そのループの口径収縮力により有害動物の脚を締め付け捕獲するくくり罠であって、
【0010】
上記踏み板の下降に連れてループ保持体が起立的に回動することを検知する無線式の第1センサーと、
【0011】
捕獲された有害動物の動きに応じて上記捕獲ワイヤーが振動することを検知する無線式の第2センサーと、
【0012】
上記第1センサーと第2センサーとの両検知出力信号に基づく有害動物の捕獲状態、その第1センサーだけの検知出力信号と第2センサーだけの検知出力信号に基づく非捕獲状態との判定を行うウェブサーバを介して、上記有害動物の捕獲状態と非捕獲状態とをくくり罠の状態検知情報としてユーザー端末へ送信する送信部とを備えたことを特徴とする。
【0013】
その場合、請求項2では第1センサー及び第2センサーが実質的に同じ磁気センサー又は磁気型の近接スイッチであって、何れも磁性体とその磁性体を各々着脱自在に吸着するマグネットとから成り、
【0014】
そのマグネットによる磁性体の吸着状態が解除された時に、各々検知信号を出力することを特徴とする。
【0015】
また、請求項3では第1センサーがループ保持体の先端部に取り付けられた永久磁石と、そのループ保持体の先端部を受け止める枠体に対応設置された磁性体のボルトとから成る磁気センサーであって、
【0016】
その永久磁石によるボルトの吸着状態が解除された時に、上記ループ保持体が起立的に回動して捕獲ワイヤーのループを弾き出し解放した状態の検知信号を出力することを特徴とする。
【0017】
更に、請求項4では第2センサーが捕獲ワイヤーの中途部から上向く分岐ワイヤーの上端部に取り付けられた永久磁石と、樹木や支柱、その他の固定物に取り付けられた第2センサー用制御ボックスから下向きに露出する磁性体のボルトとから成る磁気センサーであって、
【0018】
その永久磁石によるボルトの吸着状態が解除された時に、上記捕獲ワイヤーがその分岐ワイヤーも含む全体として振動した状態の検知信号を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の上記構成によれば、くくり罠は第1センサー(トリガーセンサー)と第2センサー(ワイヤーセンサー)を具備しており、その両センサーの検知出力信号に基づく有害動物の捕獲状態のみならず、その第1、2センサーにおける何れか一方だけと他方だけの各検知出力信号に基づく非捕獲状態(ループ保持体がワイヤーのループを空弾きした誤作動状態と、ワイヤーが自然現象により振動した異常状態)もユーザー端末へ送信(通報)するようになっているため、ユーザーにとって地域に設置されているくくり罠をパトロールする必要がなくなり、冒頭に述べた従来技術の課題を完全に解決できる効果がある。
【0020】
その場合、請求項2~4の構成を採用するならば、上記第1、2センサーが何れも吸着状態の解除された時に通電して、検知信号を出力する磁気センサーから成るため、消費電力を少なく節減することができ、実用上著しく有益である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係るくくり罠の通報作用説明図である。
図2】くくり罠の設置状態を示す説明図である。
図3】くくり罠を抽出して示す平面図である。
図4図3の4-4線断面図である。
図5】第1センサー(トリガーセンサー)の設置状態を示す部分拡大平面図である。
図6図5の6-6線断面図である。
図7図6から抽出した第1センサー(トリガーセンサー)の拡大断面模式図である。
図8図2から抽出した第2センサー(ワイヤーセンサー)の拡大断面模式図である。
図9】第1センサー(トリガーセンサー)と第2センサー(ワイヤーセンサー)の概略構成を示すブロック図である。
図10】くくり罠の送信(通報)作用を詳述するための動作シーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態に係るくくり罠を詳述すると、これはその概略全体を示す図1のブロック図から明白なように、猪や鹿、その他の有害動物が生息する地域(Z)に設置された複数のくくり罠(子機)(T)と、その各くくり罠(T)からの後述する状態検知情報を中継基地局(親機)(R)を介して受信し、インターネット(N)を介してユーザー端末(U)へ配信するウェブサーバ(管理サーバ)(W)とを有する。
【0023】
先ず、くくり罠(子機)(T)について説明すると、これを示した図2~6において、(10)は平面視の矩形や円形などに造形された枠体であり、後述する捕獲ワイヤー(11)のループ保持体(12)を受け止める受け桟(13)を備えている。(14)はその枠体(10)と相似な矩形や円形などの踏み板であり、その中心部からは前後一対の向かい合うループ保持体取付け用ブラケット(15)が一体的に垂立されている。
【0024】
上記捕獲ワイヤー(11)は長尺な連続一本物として、その先端部(一端部)がループ(11a)を形作るように巻き曲げられており、基端部(他端部)は樹木や支柱、その他の固定物(16)へ取り付け固定されるようになっている。
【0025】
また、ワイヤー(11)の中途部には上記ループ(11a)の口径を常時収縮する方向へ弾圧付勢するバネ手段(B)が設置されている。そのバネ手段(B)はワイヤー(11)の先端側に配置される接続管(17)と、コイルバネ(18)と、同じくワイヤー(11)の基端側に配置されるバネ圧縮管(19)とから成り、これらが順次ワイヤー(11)へ通し込まれた状態にある。
【0026】
上記コイルバネ(18)は接続管(17)とバネ圧縮管(19)との前後相互間に封入されており、バネ圧縮管(19)の移動操作によって押し縮められるようになっている。(20)はそのバネ圧縮管(19)の位置決めストッパーであり、これによって上記ループ(11a)の口径収縮力を強弱調整することができる。
【0027】
上記ワイヤー(11)のループ保持体(12)は左右一対として、平面視の向かい合う円弧形状をなし、その切り離し両端基部が上記踏み板(14)のループ保持体取付け用ブラケット(15)へ、ほぼ水平の支点軸(21)によって起伏的な回動自在に枢着されている。
【0028】
(22)は両ループ保持体(12)の円弧面(凸曲面)に列設されたワイヤー受け入れ凹周溝であって、外向き(横向き)拡開するほぼV字状をなし、その両ループ保持体(12)のワイヤー受け入れ凹周溝(22)へ掛け渡す状態として、上記ワイヤー(11)のループ(11a)が係脱自在に係止されるようになっている。
【0029】
その場合、踏み板(14)が上記枠体(10)よりも小さな相似の矩形や円形などとして、その枠体(10)の囲い内部を昇降し得る収容状態にあるに比し、左右一対のループ保持体(12)における円弧形状の先端部は、図5、6のように枠体(10)の上記受け桟(13)によって下方から受け止められたほぼ水平の伏倒状態にあり、この状態において上記凹周溝(22)へ受け入れたワイヤー(11)のループ(11a)を、予めの拡大した一定口径に保持している。
【0030】
つまり、ワイヤー(11)のループ(11a)が上記バネ手段(B)による口径収縮力に抗して、有害動物の脚を包囲し得るよう強制的に拡張されているのである。
【0031】
そして、このような準備状態にあるくくり罠(T)の踏み板(14)が、有害動物による踏み下げや落石の荷重などを受けて下降すると、これをトリガーとして一緒に下降する左右一対の上記ループ保持体(12)は、その支点軸(21)を中心として円弧形状の先端部から一挙に起立するよう回動作用するため、そのバネ手段(B)による予めの口径収縮力を付勢された状態にあるワイヤー(11)が、その両ループ保持体(12)の上記凹周溝(22)から勢い良く弾き出され解放(離脱)することになると同時に、そのループ(11a)の口径がすばやく収縮されるのである。
【0032】
(23)は上記ループ保持体(12)の先端側を下方から受け止め支持すべく、踏み板(14)の左右両端部に取り付けられた一対の調整ネジであり、これを上下方向へ進退操作することによって、そのループ保持体(12)の起伏的な回動角度を予め零となる水平の伏倒状態に調整準備することができるようになっている。
【0033】
(24)はくくり罠(T)の設置時に、作業者が誤って踏み板(14)を押し下げる危険防止用のストッパーピンであり、上記枠体(10)へ左右方向から抜き差し自在に差し込むようになっている。そのストッパーピン(24)はくくり罠(T)の設置後に抜き取られ、踏み板(14)が枠体(10)の内部で下降し得る準備状態に保たれることは、言うまでもない。
【0034】
上記構成のくくり罠(T)を設置作業するに当っては、有害動物の通路となる地面(G)に設けた凹所(25)へ、その枠体(10)をほぼ水平の設置状態に収納し、ストッパーピン(24)を差し込むことにより、ワイヤー(11)のループ保持体(12)が枢着されている踏み板(14)の下降しない安全状態に保つ。
【0035】
それから、ループ受け入れ用凹周溝(22)にワイヤー(11)のループ(11a)が受け入れ係止されたループ保持体(12)の左右一対を、上記枠体(10)の内部へ挿入セットして、そのループ保持体(12)の先端部を枠体(10)の受け桟(13)へ戴置させた状態に保った後、上記ストッパーピン(24)を枠体(10)から抜き取って、そのループ保持体(12)と踏み板(14)を枠体(10)内での下降し得る状態に準備する。
【0036】
そして、上記ワイヤー(11)の基端部を図2のように樹木の幹や杭、支柱、その他の固定物(16)に取り付け、その地面(G)に沿って延在するワイヤー(11)や枠体(10)、ループ保持体(12)を上方から木の葉や草、その他によって全体的に被覆し、くくり罠(T)を見えない設置状態に保つのである。
【0037】
このような状態において、猪や鹿、その他の有害動物が上記踏み板(14)を踏み下げれば、図6の仮想線から示唆されるように、その踏み板(14)と一緒に下降する上記ループ保持体(12)の左右一対は、その支点軸(21)の廻りにすばやく起立して、その凹周溝(22)からワイヤー(11)のループ(11a)が勢い良く弾き出され解放(離脱)すると同時に、そのループ(11a)の口径が自ずと収縮することにより、有害動物の脚(A)を強く締め付け捕獲することになる。
【0038】
上記くくり罠(T)には無線式の第1センサー(以下、トリガーセンサーということもある)(S1)と、同じく無線式の第2センサー(以下、ワイヤーセンサーということもある)(S2)とが設置されており、その第1、2センサー(S1)(S2)が有害動物の捕獲検知センサーとして、両者から検知出力信号を受けた場合に、くくり罠(T)による有害動物の捕獲状態であると判定するようになっている。
【0039】
上記トリガーセンサー(S1)は、言わばトリガーとなる上記踏み板(14)又はこれと一緒に動く上記ループ保持体(12)がワイヤー(11)のループ(11a)を弾き出し解放(離脱)したか否か検知するものであって、図示の実施形態ではホールICを使った磁気センサー(28)又は磁気型の近接スイッチ(無接点スイッチ)から成り、図6、7のようなマグネット(永久磁石)(29)が上記ループ保持体(12)の先端部から張り出す取付片(12a)に取り付けられている一方、磁性体(30)の皿頭付きボルトなどがループ保持体(12)の先端部を受け止める上記枠体(10)の受け桟(13)に取り付けられていて、その磁性体(ボルト)(30)が磁化したか否かを検知し、磁化していなければ(吸着力の解除状態)、上記ループ保持体(12)がワイヤー(11)のループ(11a)を弾き出し解放(離脱)した状態、延いてはそのループ(11a)の口径収縮力により有害動物の脚(A)を締め付け捕獲した状態として、その捕獲したことの検知出力信号を発するようになっている。(31)は上記磁性体(ボルト)(30)の固定ナットである。
【0040】
そして、上記トリガーセンサー(S1)の検知出力信号は図9のブロック図に示す如く、その送信部(32)から第2センサー(ワイヤーセンサー)(S2)の受信部(33)へ、例えばBluetooth(登録商標)やWi-Fiなどのシステムを利用して近距離無線通信されることになる。(34)は上記磁気センサー(28)又は磁気型の近接スイッチ(無接点スイッチ)を内蔵した制御ボックスであり、上記枠体(10)の内部における就中受け桟(13)の下面に取り付けられている。(35)はセンサー基板(マイコン)であり、CPU(36)やメモリー(37)などを具備している。(38)は電源供給用のバッテリーである。
【0041】
尚、消費電力の少ない磁気センサー(28)から成るトリガーセンサー(S1)を説示したが、トリガーとなる上記ワイヤー(11)のループ保持体(12)は起伏的な回動作用を行うため、そのトリガーセンサー(S1)として磁気センサー(28)に代るポテンショメーターやその他の適当なセンサーを採用してもさしつかえない。
【0042】
他方、上記第2センサー(ワイヤーセンサー)(S2)はワイヤー(11)の伸縮や振動を検知するものであって、図示の実施形態では上記トリガーセンサー(S1)と実質的に同じ磁気センサー(39)又は磁気型の近接スイッチ(無接点スイッチ)から成り、図2、8のような磁性体(40)の皿頭付きボルトなどが制御ボックス(41)へ、その皿頭の下向き露出状態に取り付けられている一方、マグネット(永久磁石)(42)が上記ワイヤー(11)の中途部から上向く分岐ワイヤー(43)の上端部に取り付けられており、その磁性体(ボルト)(40)が磁化したか否かを検知し、磁化していなければ(吸着力の解除状態)、上記ワイヤー(11)がその分岐ワイヤー(43)も含む全体として激しく振動した状態、つまり捕獲された有害動物が暴れ動いたことの検知出力信号を発するようになっている。(44)は上記制御ボックス(41)に対する磁性体(ボルト)(40)の固定ナットである。
【0043】
その場合、制御ボックス(41)は図2のように、固定物(16)である樹木の枝などに取り付けられている。(45)はそのワイヤーセンサー(S2)の制御ボックス(41)に内蔵されたセンサー基板(マイコン)であり、CPU(46)やメモリー(47)などを有しており、そのCPU(46)ではGPSを利用した位置検出部(48)が検出する位置情報を取得する。
【0044】
また、上記トリガーセンサー(S1)から入力した検知情報とワイヤーセンサー(S2)の磁気センサー(39)から出力した検知情報とを一緒にして、図9のブロック図に示唆する如く、その送信部(49)から中継基地局(親機)(R)へ例えばLPWAやLTEなどのシステムを利用して遠距離無線通信する。(50)はバッテリーである。
【0045】
この点、図示の実施形態ではトリガーセンサー(S1)の検知出力信号を一旦ワイヤーセンサー(S2)の受信部(33)へ送信し、そのワイヤーセンサー(S2)の送信部(49)から中継基地局(R)へ、両センサー(S1)(S2)の検知出力信号をまとめて送信するようになっているが、その両センサー(S1)(S2)の検知出力信号を各別に中継基地局(R)へ無線送信(モバイル通信)するように定めても良い。
【0046】
要するに、中継基地局(R)は各地域(Z)に設置されている複数のくくり罠(T)とデータ通信を行って、その上記第1、2センサー(S1)(S2)によるくくり罠(T)の状態検知情報を受信し、インターネット(N)を介してデータセンターや捕獲支援センターなどのウェブサーバ(管理サーバ)(W)へ送信(通報)するようになっている。
【0047】
尚、上記ワイヤーセンサー(S2)としても消費電力の少ない磁気センサー(39)を説明したが、ワイヤー(11)の伸縮や振動を検知し得るならば、その磁気センサー(39)に代るモーションセンサーや振動センサー、加速度センサー、ジャイロセンサー、リミットスイッチなどを採用しても良い。
【0048】
上記データセンターや捕獲支援センターなどのウェブサーバ(管理サーバ)(W)は、図1のブロック図に示すようなCPU(51)やメモリー(52)などを有する制御部(53)のほか、受信部(54)と表示部(55)並びに配信部(56)も具備しており、上記くくり罠(T)の状態検知情報と位置情報を中継基地局(R)から、インターネット(N)を介して受信部(54)に受信し、その情報をCPU(51)において判定の上、表示部(55)に表示すると共に、配信部(56)からインターネット(N)を介して電子メールなどによりユーザー端末(U)へ配信するようになっている。
【0049】
つまり、ウェブサーバ(W)における制御部(53)のCPU(51)は図10の動作シーケンス図に示す如く、上記くくり罠(T)の第1センサー(トリガーセンサー)(S1)と第2センサー(ワイヤーセンサー)(S2)とが反応して、その両センサー(S1)(S2)の検知出力信号を上記中継基地局(R)から受信した場合、そのくくり罠(T)に有害動物が捕獲された状態であると判定して、その捕獲通報をユーザー端末(U)へ配信する。
【0050】
また、くくり罠(T)の上記トリガーセンサー(S1)は反応するも、ワイヤーセンサー(S2)が反応せず、そのトリガーセンサー(S1)だけの検知出力信号を中継基地局(R)から受信した場合は、捕獲された有害動物の激しく暴れる振動がなく、そのため捕獲ワイヤー(11)のループ保持体(12)が何等かの理由(例えば大きな岩石の落下や人工的な仕掛けの不良など)により、空弾きした誤作動の状態であると判定して、その誤作動通報をユーザー端末(U)へ配信する。
【0051】
更に、くくり罠(T)の上記トリガーセンサー(S1)は反応せず、ワイヤーセンサー(S2)だけが反応して、そのワイヤーセンサー(S2)だけの検知出力信号を同じく中継基地局(R)から受信した場合は、捕獲ワイヤー(11)のループ保持体(12)は未だループ(11a)を弾き解放(離脱)しておらず、そのワイヤー(11)だけが何等かの理由(例えば強風や土砂の流動、その他の自然現象)により、激しく振動した異常状態であると判定して、その異常通報をユーザー端末(U)へ配信するのである。
【0052】
その場合、上記ウェブサーバ(W)のCPU(51)はくくり罠(T)のワイヤーセンサー(S2)から位置検出部(GPS)(48)によって検出したくくり罠(T)の位置情報を取得し、その情報から特定した地図やその地図上の位置を、ユーザー端末(U)へ配信するようになっているが、そのウェブサーバ(W)はインターネット(N)に接続されるため、上記くくり罠(T)の状態検知情報や位置情報は、ユーザー端末(U)からダウンロードすることも可能である。
【0053】
但し、上記GPSを利用せずに、各地域(Z)におけるくくり罠(T)の設置されている位置を特定して、ウェブサーバ(W)の表示部(55)へ表示することにより、そのくくり罠(T)の位置情報をユーザー端末(U)から知得して共有できるようにしても良い。
【0054】
更に言えば、上記ウェブサーバ(W)の表示部(55)には複数のくくり罠(T)が設置された地域(Z)の地図を表示し、その地図上の各くくり罠(T)を適当な一定のマーク(目印)(図示省略)として表示する。そして、その各くくり罠(T)における上記3パターンの状態検知情報が、有害動物の捕獲状態と誤作動状態と異常状態との何れを意味するものであるか一目瞭然に識別できるように、そのマークの大きさや形状、表示カラーなどを変えたり、マークの点灯や点滅などを行ったりすることが好ましい。
【0055】
上記ユーザー端末(U)はパソコン(PC)やタブレット端末、スマートフォンなどのモバイル、その他のインターネット(N)を介して上記ウェブサーバ(W)と通信できる機器であれば足りるが、そのユーザー端末(U)を使用するユーザーとしては、上記くくり罠(T)の仕掛け担当者(U1)と管理担当者(U2)並びに捕獲した有害動物の駆除(止め刺し)担当者(U3)が想定されている。
【0056】
上記仕掛け担当者(U1)としてはくくり罠(T)を設置する地域(Z)の農家(農林業の従事者)、管理担当者(U2)としては地方自治体の農林課や獣害対策課を初め、これらからの捕獲委託業者やNPO法人などの専門家、駆除(止め刺し)担当者(U3)としては地域(Z)の猟師が各々適任である。
【0057】
そして、上記ウェブサーバ(W)の制御部(53)において、くくり罠(T)による有害動物の捕獲状態であると判定された場合、その捕獲通報はユーザー端末(U)における仕掛け担当者(U1)と管理担当者(U2)と駆除(止め刺し)担当者(U3)との全員に対して配信され、その捕獲された有害動物の駆除(止め刺し)を、駆除担当者(U3)が行うと共に、くくり罠(T)の仕掛け直し(トリガーセンサーとワイヤーセンサーのリセット)を、仕掛け担当者(U1)が行うようになっている。
【0058】
また、上記くくり罠(T)の空弾きした誤作動状態であると判定された場合、そのくくり罠(T)の仕掛け直し(トリガーセンサーのリセット)だけを行えば足りるため、その作業する仕掛け担当者(U1)のみに対して、誤作動通報が配信される一方、同じくくくり罠(T)の異常状態であると判定された場合には、やはり仕掛け直し(ワイヤーセンサーのリセット)だけを行えば良いので、その仕掛け担当者(U1)のみにウェブサーバ(W)から異常通報が配信されるのである。
【0059】
上記実施形態に係るくくり罠(T)の通報作用によれば、そのくくり罠(T)が第1センサー(トリガーセンサー)(S1)と第2センサー(ワイヤーセンサー)(S2)を具備しており、その両センサー(S1)(S2)の検知出力信号に基づいてウェブサーバ(W)からユーザー端末(U)へ、くくり罠(T)による有害動物の捕獲状態が無線通報されるほか、その何れか一方だけと他方だけの各検知出力信号に基づいて同じくウェブサーバ(W)からユーザー端末(U)へ、くくり罠(T)の空弾きした誤作動状態と異常状態が無線通報されるようになっている。
【0060】
そのため、ユーザーにとってくくり罠(T)をパトロールする必要がなく、しかも捕獲通報された場合には仕掛け担当者(U1)と管理担当者(U2)並びに駆除担当者(U3)がくくり罠(T)の設置現場へ直行して、捕獲動物の駆除や仕掛け直し(リセット)を行い、誤作動通報や異常通報された場合には仕掛け担当者(U1)だけがそのくくり罠(T)の設置現場へ出向して、仕掛け直しを行えば良くなり、また管理担当者(U2)にとっても地域(Z)に複数あるくくり罠(T)を便利良く管理することができ、捕獲効率の向上に役立つ。
【符号の説明】
【0061】
(10)・・・・枠体
(11)・・・・捕獲ワイヤー
(11a)・・・ループ
(12)・・・・ループ保持体
(14)・・・・踏み板
(16)・・・・固定物
(28)(39)・・・磁気センサー
(29)(42)・・・マグネット(永久磁石)
(30)(40)・・・磁性体
(35)(45)・・・センサー基板(マイコン)
(43)・・・・分岐ワイヤー
(48)・・・・位置検出部
(A)・・・・・有害動物の脚
(B)・・・・・バネ手段
(N)・・・・・インターネット
(R)・・・・・中継基地局
(S1)・・・・第1センサー(トリガーセンサー)
(S2)・・・・第2センサー(ワイヤーセンサー)
(T)・・・・・くくり罠
(U)・・・・・ユーザー端末
(U1)・・・・仕掛け担当者
(U2)・・・・管理担当者
(U3)・・・・駆除担当者
(W)・・・・・ウェブサーバ(管理サーバ)
図1
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図10