(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】診療用頭部被覆材、その製造方法、診療用頭部被覆材の固定用治具、及び診療用頭部被覆セット
(51)【国際特許分類】
A61G 10/00 20060101AFI20240626BHJP
A41D 13/05 20060101ALI20240626BHJP
A41D 13/11 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
A61G10/00 K
A41D13/05
A41D13/11 Z
(21)【出願番号】P 2020133470
(22)【出願日】2020-08-06
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304028346
【氏名又は名称】国立大学法人 香川大学
(72)【発明者】
【氏名】小原 英幹
(72)【発明者】
【氏名】西山 典子
(72)【発明者】
【氏名】大場 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】安藤 啓次
(72)【発明者】
【氏名】塩入 達明
(72)【発明者】
【氏名】折原 正直
(72)【発明者】
【氏名】福元 隆広
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-095849(JP,A)
【文献】特開2006-016006(JP,A)
【文献】中国実用新案第211131969(CN,U)
【文献】特開2014-000367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 1/04,7/05,10/00,13/12
A47C 29/00
A41D 13/05
B65D 30/16,30/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋状のプラスチックフィルムからなる診療用頭部被覆材であって、袋の長さ方向に延在するサイドシール部を有し、該サイドシール部により、袋内部が支持具挿通部と頭部被覆部に分割されていることを特徴とする診療用頭部被覆材。
【請求項2】
前記サイドシール部と、該サイドシール部に最も近い側縁側との間に、前記支持具挿通部へ支持具を挿入する為の、支持具挿入用孔を備えることを特徴とする請求項1記載の診療用頭部被覆材。
【請求項3】
前記袋状のプラスチックフィルムが、ガゼット部を有することを特徴とする請求項1または2記載の診療用頭部被覆材。
【請求項4】
前記袋状のプラスチックフィルムが、側縁にエッジシール部を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の診療用頭部被覆材。
【請求項5】
前記袋状のプラスチックフィルムが、内視鏡及び/又はガス搬送用チューブを挿入する為の切込を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の診療用頭部被覆材。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の診療用頭部被覆材の製造方法であって、
プラスチックフィルムを円筒状に成形する円筒加工工程と、
円筒状に成形されたプラスチックフィルムの一方の開口端部をシールして、ボトムシール部を成形するボトムシール工程と、
円筒状のプラスチックフィルムを長さ方向にシールして、サイドシール部を成形するサイドシール工程と、
を備えることを特徴とする診療用頭部被覆材の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載の診療用頭部被覆材を固定する為の治具であって、
前記支持具挿通部に挿通される棒状の支持具と、前記診療用頭部被覆材を拡幅状態で保持する為の支持具と、各支持具を保持する為の枠材と、を備えることを特徴とする診療用頭部被覆材の固定用治具。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれかに記載の診療用頭部被覆材と、請求項7記載の診療用頭部被覆材の固定用治具からなる診療用頭部被覆セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診察、治療、検査の際に、患者から発せられた飛沫(くしゃみ、咳、つばなど)やエアロゾル等が、医療従事者へ到達することを防止する診療用頭部被覆材に関する。また該診療用頭部被覆材を製造する方法、該診療用頭部被覆材を患者の頭部周辺に固定する為の治具、及び診療用頭部被覆材と固定用治具からなる診療用頭部被覆セットに関する。
【背景技術】
【0002】
胃内視鏡や腹部超音波手技等をはじめとする消化器系検査の際等に、診療用ベッドに横たわった患者から発せられた飛沫やエアロゾル等が、しばしば医療従事者まで到達することがある。患者の中には新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)等の病原体に感染しながらも症状が現れない「無症状病原体保有者」が含まれる恐れがあり、患者の発する飛沫やエアロゾル等から医療従事者を守る信頼性のあるツールの開発は、医療現場における喫緊の課題である。
【0003】
特許文献1は、閉鎖的な小空間を任意に区切って飛沫の飛散などを防止する飛沫感染防止装置に関する。該飛沫感染防止装置は、折り返し袖付き隔離パネルと、並列薄型ファンを用いた層流送風機と、超小型の換気装置つき頭部シールドとからなり、高コストである為、患者毎に取り換えることは困難である。また当該発明では、患者の発する飛沫を隔離パネルにより遮断するが、感染力を持ったまま長時間エアロゾルと共に空気中を漂う病原菌の場合、パネルにより十分に遮断することができない。
【0004】
また本発明者らは、非特許文献1、2において、ビニール等のボックスからなる密閉シールドを用いて、患者の頭部を被覆する方法を提案した。詳しくは胃内視鏡や腹部超音波手技の際に、患者の頭部をボックス型の密閉シールドにより覆い、該密閉シールド内に酸素を供給しながら、吸引チューブによりエアロゾルを吸引し、ボックス内を陰圧に保つ方法を提案した。しかしながら当該方法に用いられる診療用頭部被覆材や、該頭部被覆材を固定する為の治具の形状について、具体的な提案はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Dig Endosc. 2020; 32:e114-e115 doi: 10.1111/den.13713.
【文献】Dig Liver Dis. 2020 May 23;S1590-8658(20)30229-2. doi: 10.1016/j.dld.2020.05.024.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、非特許文献1、2に開示された患者の頭部を被覆する方法を具体化する為のツールの提供を目的とする。詳しくは、非常に安価に製造することができ、患者毎に取り換えることが可能で、患者の発する飛沫からだけでなく、エアロゾルからも、医療従事者を守り得る診療用頭部被覆材と、該頭部被覆材を固定する為の治具の提案を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決する方法として、
(1)袋状のプラスチックフィルムからなる診療用頭部被覆材であって、袋の長さ方向に延在するサイドシール部を有し、該サイドシール部により、袋内部が支持具挿通部と頭部被覆部に分割されていることを特徴とする診療用頭部被覆材;
(2)前記サイドシール部と、該サイドシール部に最も近い側縁側との間に、前記支持具挿通部へ支持具を挿入する為の、支持具挿入用孔を備えることを特徴とする(1)記載の診療用頭部被覆材;
(3)前記袋状のプラスチックフィルムが、ガゼット部を有することを特徴とする(1)または(2)記載の診療用頭部被覆材;
(4)前記袋状のプラスチックフィルムが、側縁にエッジシール部を有することを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の診療用頭部被覆材;
(5)前記袋状のプラスチックフィルムが、内視鏡及び/又はガス搬送用チューブを挿入する為の切込を有することを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の診療用頭部被覆材を提案する。
【0009】
また、
(6)(1)乃至(5)のいずれかに記載の診療用頭部被覆材の製造方法であって、プラスチックフィルムを円筒状に成形する円筒加工工程と、円筒状に成形されたプラスチックフィルムの一方の開口端部をシールして、ボトムシール部を成形するボトムシール工程と、円筒状のプラスチックフィルムを長さ方向にシールして、サイドシール部を成形するサイドシール工程と、を備えることを特徴とする診療用頭部被覆材の製造方法;
(7)前記サイドシール工程において、断面がコの字状のシールバーを使用し、サイドシール部と共にエッジシール部を成形することを特徴とする(6)記載の診療用頭部被覆材の製造方法;
を提案する。
【0010】
更に、
(8)(1)乃至(5)のいずれかに記載の診療用頭部被覆材を固定する為の治具であって、
前記支持具挿通部に挿通される棒状の支持具と、前記診療用頭部被覆材を拡幅状態で保持する為の支持具と、各支持具を保持する為の枠材と、を備えることを特徴とする診療用頭部被覆材の固定用治具
を提案する。
併せて、
(9)(1)乃至(5)のいずれかに記載の診療用頭部被覆材と、(8)記載の診療用頭部被覆材の固定用治具からなる診療用頭部被覆セット
を提案する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の診療用頭部被覆材は、極めて簡単に、そして安価に製造することができるため、患者毎に取り換えることができ、衛生的である。更に、該頭部被覆材はプラスチックフィルムからなり、患者の体型に沿うように撓むため、該頭部被覆材と患者との間に隙間ができ難く、患者の発したエアロゾルが該頭部被覆材から漏れ出すことを、効率よく抑制することができる。加えて、サイドシール部により支持具挿通部が患者の頭部から隔離されている為、支持具が患者の飛沫やエアロゾルにより汚染されることがなく、該支持具等の固定用治具を繰り返し使用することができる。
【0012】
また、診療用頭部被覆材が、サイドシール部と該サイドシール部に最も近い側縁側との間に、支持具挿通部へ支持具を挿入する為の支持具挿入用孔を備えると、支持具がこれを固定する枠に固定されていても、支持具を支持具挿通部へ挿入することができる。
更に、診療用頭部被覆材が、ガゼット部を有する袋状のプラスチックフィルムからなる場合、該頭部被覆材を略円筒状に拡幅しやすく、患者が頭部被覆部に頭部を入れやすくなる。
【0013】
また、診療用頭部被覆材が、エッジシール部を有する袋状のプラスチックフィルムからなる場合、該頭部被覆材が長さ方向に撓みにくくなり、該頭部被覆材を固定用治具へ装着する作業が容易になる。
加えて、本発明の診療用頭部被覆材に切込が成形されていると、該頭部被覆材内に酸素を供給したり、該頭部被覆材内のガスを排出したり、更には胃内視鏡等を挿入したりすることができる。また診療用頭部被覆材内の気体の量を調整し、該頭部被覆材内を陰圧の状態に保つことができる。
【0014】
本発明の診療用頭部被覆材の製造方法を用いると、極めて簡単に診療用頭部被覆材を製造することができる。特に、サイドシール工程において、断面がコの字状のシールバーを使用すれば、サイドシール部を成形する際に、同時にエッジシール部を成形することができる。
また、本発明の診療用頭部被覆材の固定用治具は、非常に簡単に頭部被覆材を拡幅した状態で保持することができるため、診療用頭部被覆材を用いることにより低下する診療効率を最小限にとどめることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の被覆材の模式的斜視図(A)と、該被覆材を拡幅し、支持具挿通部が下方となるように90°回転した模式的斜視図(B)である
【
図2】本発明の診療用頭部被覆材の固定用治具の一実施形態を表す模式的斜視図である。
【
図3】
図1に示す被覆材を、
図2に示す固定用治具にて固定する方法を表す模式図である。
【
図4】本発明の診療用頭部被覆材の固定用治具の一実施形態を表す模式的斜視図である。
【
図5】被覆材の第二実施形態(A)、固定用治具の第二実施形態(B)、被覆材を固定用治具で固定する方法(C)である。
【
図6】被覆材の第三実施形態(A)、固定用治具の第三実施形態(B)、被覆材を固定用治具で固定する方法(C)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき、本発明を詳細に説明する。尚、本発明は以下の形態に限定されるものではなく、同様の効果を奏する範囲において種々の形態をとることができる。
本発明は、診療用頭部被覆材(以下、必要に応じ「被覆材」と略称する)と該被覆材を患者の頭部周辺に固定する為の治具(以下、必要に応じ「固定用治具」と略称する)とに関する。
【0017】
[診療用頭部被覆材]
図1は、本発明の被覆材10の模式的斜視図(A)と、該被覆材10を拡幅し、支持具挿通部12が下方となるように90°回転した模式的斜視図(B)である。
図1の被覆材10は、円筒状のフィルムが、ボトムシール部18によりシールされ、袋状になっている。被覆材は、人の頭から肩の部分を覆うことができればその大きさは特に限定されるものではないが、
図1に示す、幅Wの1/2程度のガゼットを両側に有する被覆材10の場合、幅Wは400~650mm、好ましくは450~600mmで、長さLは600~1200mm、好ましくは800~1000mmであることが望ましい。
また被覆材10内の空間は、サイドシール部11により、支持具挿通部12と頭部被覆部13とに区分されている。サイドシール部11は、支持具挿通部12が頭部被覆部13から隔離されるよう、ボトムシール部18を超えた位置から、袋の開口端βまで延在する。
【0018】
本発明の被覆材10をなすプラスチックフィルムの材質は、特に限定されるものではなく、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル系フィルムなど、従来、袋に成形されていた各種フィルムを使用することができる。中でもポリエチレン系樹脂フィルム、特に直鎖状低密度ポリエチレンフィルムは、撓みやすく、また安価である為、当該用途に適する。また、上述したフィルムのシール特性を高めるために、融点が低いポリオレフィン系樹脂フィルム等に、融点が高いポリエステル系樹脂フィルムやポリアミド系樹脂フィルムを貼り合わせたラミネートフィルムを用いることもできる。ラミネートフィルムを用いると、ガゼット部15においてエッジシールする際に、折り返された外面同士が融着することを防止できる。
プラスチックフィルムの厚さも特に限定されるものではないが、15~150μm、特に20~100μm、更には30~70μm程度であることが望ましい。プラスチックフィルムが薄すぎると、気体の流れによりバタつき、患者と被覆材10の間に隙間が生じる恐れがある。またフィルムが厚すぎると、被覆材10が患者の体型に合うように撓みにくく、密封性が低下する恐れがある。
【0019】
図1の被覆材10は、サイドシール部11と、該サイドシール部11に最も近い側縁側γ1との間に、該支持具挿通部12に支持具を挿入する為の支持具挿入用孔14を備える。該支持具挿入用孔14はボトムシール部18から400~900mm、特に500~800mm程度、開口端β側に位置することが好ましい。支持具挿入用孔14がボトムシールから離れすぎると、被覆材10の一端α付近を、後述する固定用治具により拡幅状態で固定することが困難となる。またボトムシールに近すぎると、被覆材の拡幅が困難となる。尚、支持具挿入用孔は、棒状の支持具を挿入することができれば、線状の切込であってもよく、
図5に示すように、被覆材110の一部(サイドシール部111よりも側縁側)を切り取って成形されたものであってもよい。
【0020】
図1の被覆材10は、両方の側縁に、それぞれガゼット部15を有する。該ガゼット部15を有する被覆材10は、略円筒状に拡幅し易く、患者が頭部被覆部内に頭部を挿入しやすい。尚、ガゼット部15は、側縁の一方にのみ、成形されていてもよい。
また、
図1に示す被覆材10は、側縁にエッジシール部16を有している。該エッジシール部16を有していると、被覆材10が長さ方向に撓みにくくなるため、被覆材10を後述する固定用治具に固定しやすくなる。また被覆材の側縁は、折り返されている為、ピンホールと呼ばれる微小孔が発生する恐れがある。特に、支持具により支持される側縁は衝撃を受けて、ピンホールが発生しやすい。しかしながらエッジシール部16があると、側縁にピンホールが発生しても、被覆材10内の気体がピンホールから漏れ出す恐れがない。
【0021】
図1に示す被覆材10は、更に切込17を備える。これは頭部被覆部13内に酸素を供給する為の酸素チューブを通したり、該頭部被覆材内のエアロゾルを含むガスを吸引して頭部被覆部13内を陰圧状態に保つための吸引チューブを挿入したり、更には胃内視鏡等を挿入したりするためのものである。当該切込17の長さは、チューブの径に合わせて決定すればよい。
また、該切込17からエアロゾル等が漏れ出すことを防止する為に、予め切込17を成形するプラスチックフィルムを弾性フィルム19と置き換えてもよい。具体的には、
図1に示すように、プラスチックフィルムの一部をくり貫き、ここに弾性フィルム19を貼合し、該弾性フィルム19に切込17を成形するとよい。弾性フィルム19により切込17が大きく開くことが抑制され、内視鏡及び/又はガス搬送用チューブの周辺からエアロゾル等が漏れ出すことが妨げられる。該弾性フィルム19は、例えば熱可塑性エラストマーやゴムなどの弾性樹脂からなるフィルムを採用することができる。具体的には、SBS(スチレン-ブタジエン-スチレン)、SIS(スチレン-イソプレン-スチレン)、SEBS(スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン)、SEPS(スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン)等のスチレン系エラストマーや、オレフィン系エラストマー(プロピレン、ブテン、オクテン等を1種以上共重合したエチレン系のα-オレフィンエラストマー、又は、エチレン、ブテン、オクテン等を1種以上共重合したプロピレン系エラストマー等)、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等のエラストマーやゴムから、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いたフィルムを採用することができる。本発明では特に好ましい弾性フィルム19として、ポリウレタン系樹脂フィルムを例示するが、これに限定されない。
【0022】
[診療用頭部被覆材の製造方法]
本発明の被覆材10の製造方法は、(1)プラスチックフィルムを円筒状に成形する円筒加工工程と、(2)円筒状に成形されたプラスチックフィルムの一方の開口端部をシールして、ボトムシール部を成形するボトムシール工程と、(3)円筒状のプラスチックフィルムを長さ方向にシールして、サイドシール部を成形するサイドシール工程と、を備える。
【0023】
(1)プラスチックフィルムを円筒状に成形する方法は、例えばプラスチックフィルムを長方形に切り出し、その対向する二辺をヒートシールするとよい。またインフレーション押出成形法により製膜されたプラスチックフィルムは、既に円筒状である為、該製膜工程を円筒加工工程とすることもできる。
(2)次いで、円筒状に成形されたプラスチックフィルムの一方の開口端部をシールして、ボトムシール部を成形する。当該ボトムシールは、プラスチックフィルムを焼き切る溶断シールにより行ってもよいが、当該シール部からエアロゾルが漏れ出すことを抑制する為にはシールバーを使用したヒートシールや、インパルスシールによることが望ましい。
【0024】
(3)サイドシール工程では、円筒状のプラスチックフィルムを長さ方向にシールして、サイドシール部を成形する。この時、断面がコの字状のシールバーを使用し、一度にサイドシール部とエッジシール部を成形すると、長さ方向に撓みにくい被覆材を製造することができる。
更に必要に応じ、サイドシール部により成形される支持具挿通部に、後述する棒状の支持具を挿入する為の支持具挿入用孔を設けることができる(以下、当該工程を「孔成形工程」と略称する)。
図1における支持具挿入用孔は、フィルムを2枚重ねて打ち抜くことにより成形される。
尚、上述した、ボトムシール工程、サイドシール工程、孔成形工程は、いずれの工程を先に行ってもよい。
【0025】
[診療用頭部被覆材の固定用治具]
図2は、本発明の診療用頭部被覆材の固定用治具20の一実施形態を表す模式的斜視図である。固定用治具は、診療用頭部被覆材を患者の頭部周辺に固定する為の治具であって、被覆材の支持具挿通部に挿通される棒状の支持具と、被覆材を広げた状態で保持する為の支持具と、各支持具を保持する為の枠材とを備える。
図2の固定用治具20は、治具20の下端から10~100mmのところに、被覆材の支持具挿通部に通される棒状の支持具21aを備え、また該支持具21aの上方に、被覆材を拡幅状態で保持する為の支持具21bを備える。また、これらの支持具21a、21bは縦枠材22dに固定されており、更に他の枠材22a、22b、22c、22e、22fにより、安定して設置される。
【0026】
支持具21a、21b、枠材22は、樹脂製の他、アルミニウム、ステンレス等の金属製であってもよい。また棒状の支持具21aは、被覆材の支持具挿通部に通される為、被覆材10を傷つけないように円柱状であることが好ましく、枠材22a、22b、22cは、固定用治具の安定性を考慮すると四角柱状であることが好ましい。
胃内視鏡検査のように、診療ベッドに横向きに横たわる患者に特に好適に使用される
図2に示す固定用治具20の幅W、高さH、長さLは、それぞれ360~560mm、360~560mm、320~520mm程度が適するが、これに限定されるものではない。
【0027】
[診療用頭部被覆セット]
患者を診療する際に、本発明の被覆材は固定用治具に固定して使用される。
図1に示す被覆材10を、
図2に示す固定用治具20にて固定する方法を
図3に基づき説明する。まず、被覆材10の支持具挿入用孔14から、棒状の支持具21aを、支持具挿通部12に通す。次いで、被覆材10の、支持具挿通部12が形成されていない端縁γ2のエッジシール部16を、粘着テープで支持具21bに固定する(
図3(A))。該被覆セットを使用する際、患者は支持具21a、21b側に顔が向くよう、頭部を被覆材10内に入れればよい(
図3(B))。被覆材10が、支持具21a、21bに固定されている為、患者の鼻や口は、被覆材10に密着することがなく、患者の呼吸が妨げられることはない。
尚、
図3では、被覆材10の支持具挿通部12に通す支持具21aを、固定用治具20の下方に配したが、
図4に示すように、該支持具321aを枠材の上方に配し、被覆材を拡幅状態で保持する為の支持具321bを下方に配してもよい。また、
図4に示す固定用治具320では、枠材322aを、被覆材を拡幅状態で保持する為の支持具321bとして兼用する。
【0028】
[第二実施形態]
本発明の被覆材の第二実施形態を
図5(A)に、固定用治具の第二実施形態を
図5(B)に図示する。
図5(A)の被覆材110は、支持具挿通部112を2条備える。また一方の支持具挿通部112は支持具挿入用孔114を備え、他方の支持具挿通部112は支持具挿通用孔114を備えない。尚、被覆材110の支持具挿通用孔114は、サイドシール部112よりも側縁側の被覆材110を、一部切り取ることにより形成されている。
一方、
図5(B)の固定用治具120は、棒状の支持具121aが枠材122から着脱自在となっている。枠材122aにジョイント123が取り付けられており、該ジョイント123に棒状の支持具121aが嵌合する構造となっている。
【0029】
図5(C)は、被覆材110を固定用治具120で固定する方法を説明する為の模式図である。棒状の支持具121aが枠材122から着脱自在であれば、被覆材110は支持具挿入用孔を必ずしも必要としない。予め被覆材110の開口端β側から、棒状の支持具121aを支持具挿通部112に挿入しておくことができる。
図5(C)では、予め下方の支持具挿通部112内に棒状の支持具121aを配し、該支持具121aを枠材122aのジョイント123に嵌め込み、被覆材110の一辺を固定する。また、上方の支持具挿通部112に、支持具挿通用孔114から上方の支持具121bを挿入し、被覆材110を拡幅状態で保持すれば、被覆材110の固定は完了する。
【0030】
[第三実施形態]
本発明の被覆材の第三実施形態を
図6(A)に、固定用治具の第三実施形態を
図6(B)に図示する。第一実施形態(
図1乃至
図3)、第二実施形態(
図5)は、いずれも患者が診療用ベッドに横向きに横たわることを想定したものである。しかしながら、腹部超音波手技の際等は、患者は診療用ベッドに上向きに横たわる。該第三実施形態は、上向きに横たわった患者への使用を想定して設計されたものである。
【0031】
図6(A)に示す、両側に幅Wの1/2程度のガゼットを有する被覆材210の幅Wは400~800mm、このましくは400~700mmで、長さ(図示せず)は600~1200mm、好ましくは800~1000mmあることが望ましい。また
図6(B)の固定用治具220の幅W、高さH、長さLは、それぞれ440~640mm、230~430mm、200~400mm程度が適するが、これらに限定されるものではない。また棒状の支持具221a、被覆材を拡幅状態で保持する為の支持具221bは、いずれも固定用治具220の上方に位置することが望ましい。患者の顔が上を向いている場合、被覆材210が上方の支持具221a、221bに固定されることにより、患者の鼻や口は被覆材210に密着することなく、患者は通常通りの呼吸を行うことができる。
【0032】
図6(C)は、被覆材210を固定用治具220で固定する方法を説明する為の模式図である。棒状の支持具221aを、被覆材210の支持具挿入用孔214から支持具挿通部212に挿入し、支持具挿通部212が形成されていない端縁γ2のエッジシール部216を、粘着テープで、被覆材を拡幅状態で保持する為の支持具221bに固定すれば、被覆材210の固定は完了である。
【符号の説明】
【0033】
10、110、210 診療用頭部被覆材
11、111、211 サイドシール部
12、112、212 支持具挿通部
13、113、213 頭部被覆部
14、114、214 支持具挿入用孔
15、115、216 ガゼット部
16、116、216 エッジシール部
17 切込
18、118、218 ボトムシール部
19 弾性フィルム
20、120、220、320 診療用頭部被覆材の固定容易具
21a、121a、221a、321a 棒状の支持具
21b、121b、221b、321b 拡幅状態で保持する為の支持具
22、122、222、322 枠材
123 ジョイント