(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】電柱支持ユニット及び電柱接続方法
(51)【国際特許分類】
H02G 1/02 20060101AFI20240626BHJP
E04G 21/16 20060101ALI20240626BHJP
E04H 12/08 20060101ALN20240626BHJP
【FI】
H02G1/02
E04G21/16
E04H12/08
(21)【出願番号】P 2020176103
(22)【出願日】2020-10-20
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000163419
【氏名又は名称】株式会社きんでん
(73)【特許権者】
【識別番号】591083772
【氏名又は名称】株式会社永木精機
(74)【代理人】
【識別番号】100118924
【氏名又は名称】廣幸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直之
(72)【発明者】
【氏名】石垣 正幸
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-108271(JP,A)
【文献】特開平01-151954(JP,A)
【文献】特開2001-253525(JP,A)
【文献】特開平11-293908(JP,A)
【文献】特開平08-232459(JP,A)
【文献】特開2009-023755(JP,A)
【文献】特開2004-018237(JP,A)
【文献】特開昭60-203407(JP,A)
【文献】特開平01-184044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
E04G 21/16
E04H 12/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本継式の電柱を横倒し状態で支持し、接続又は分離作業を行うための電柱支持ユニットであって、
前記電柱を長手方向へスライド可能に支承するスライド支承構造を有した少なくとも1つのスライド支持台と、
前記電柱を軸回りに回転可能に支承する回転支承構造を有した少なくとも1つの回転支持台と
を備えたことを特徴とする電柱支持ユニット。
【請求項2】
前記スライド支承構造は、前記電柱の長手方向に沿って回転するように配置された複数のローラで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電柱支持ユニット。
【請求項3】
前記回転支承構造は、前記電柱の周方向に沿って回転するように配置された複数のローラで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電柱支持ユニット。
【請求項4】
前記スライド支持台は、
前記スライド支承構造を有し、横倒し状態の前記電柱の側面を受ける側面受部と、
前記側面受部を下方で支持する基部と、
前記基部に対する前記側面受部の高さを調節する高さ調節部と
を備えたことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の電柱支持ユニット。
【請求項5】
前記回転支持台は、
前記回転支承構造を有し、横倒し状態の前記電柱の側面を受ける側面受部と、
前記側面受部を下方で支持する基部と、
前記基部に対する前記側面受部の高さを調節する高さ調節部と
を備えたことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の電柱支持ユニット。
【請求項6】
前記高さ調節部は、
前記基部から鉛直上方へ立設されたねじ軸と、
前記側面受部の下端を押し上げ可能な位置で前記ねじ軸に対してねじ対偶で螺合されているナットと、
前記ナットを回転操作するハンドルと
から構成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の電柱支持ユニット。
【請求項7】
2本継式の電柱を横倒し状態で支持して行う電柱接続方法であって、
前記電柱を長手方向へスライド可能に支持するスライド支持台及び前記電柱を周方向へ回転可能に支持する回転支持台を、一直線上に並べるように配置する工程と、
前記電柱を構成する2本の分割柱の一方を
前記スライド支持台に載置する工程と、
前記分割柱の他方を
前記回転支持台に載置する工程と、
前記分割柱の一方及び他方の間で高さ合わせを行う工程と、
前記一方をスライドさせて前記他方に突き合わせる工程と、
前記他方を回転させて前記一方に対する周方向の位置合わせを行う工程と
を含むことを特徴とする電柱接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分割柱を組み合わせて構成される2本継式の電柱を、横倒し状態で接続するために用いる電柱支持ユニット及び電柱接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一本物の電柱を搬送し建柱作業を行う場合、大型の装備が必要になり、作業負担は大きい。特に、狭小地や交通量が多い環境では安全性の確保のために作業が煩雑になる。このため、近年では、複数の分割柱の組み合わせで構成される分割型の電柱の導入が進んでいる。
【0003】
図8に、従来の分割型電柱を用いた建柱工事で用いられる地上接合工具を示す。
【0004】
フランジで接続する2本継式の電柱100に対して、下部柱100bが水平に固定され、上部柱100aが接合工具101に載置される。接合工具101は、上部柱100aを軸中心で回転可能に支持する受け部102と、地上を転がすベース部103とを備えている。このような接合工具101によれば、搬送が容易になり、狭小地等においても比較的安全に取り回すことができる。また、傾斜させて建柱させる場合も接続作業については同じ手順で安全に行える。
【0005】
以上のような接合工具及び接合工法については、特許文献1に記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図8のような接合工具101を用いた接合工法においては、大まかな位置決めは容易であるが、上部柱100a及び下部柱100bの接合面同士を正確に平行な状態に配置するのは難しい。
【0008】
コンクリート製の分割柱は、一本物の電柱に比べて重量及び長さが小さくなっているが、作業員が単独で容易に向きを変えられるものではない。
【0009】
一方、接続されるそれぞれの分割柱の軸方向が正確に一致していない場合、接合面に隙間が生じる。そして、隙間が生じた状態で無理にボルト等で締結してしまうと、隙間の生じた部分では隙間を埋めるために引き寄せる力が余分に必要になる。このような場合、規定のトルクによる正確な締結固定ができない恐れがある。
【0010】
接合面同士の間の隙間をなくすためには、たとえ僅かな隙間であっても、複数の作業員が共同で微調整を行う必要がある。しかし、軸の方向を一致させるためには、高さ方向及び水平方向の角度や距離を細かく変更する必要があり、作業に熟練を要する。
【0011】
そこで、本発明は、横倒し状態で接続される分割柱の位置合わせを容易且つ確実に行う電柱支持ユニット及び電柱接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の電柱支持ユニットは、2本継式の電柱を横倒し状態で支持し、接続又は分離作業を行うための電柱支持ユニットであって、前記電柱を長手方向へスライド可能に支承するスライド支承構造を有した少なくとも1つのスライド支持台と、前記電柱を軸回りに回転可能に支承する回転支承構造を有した少なくとも1つの回転支持台とを備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の電柱支持ユニットでは、上記構成に加えて、前記スライド支承構造は、前記電柱の長手方向に沿って回転するように配置された複数のローラで構成されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の電柱支持ユニットでは、上記構成に加えて、前記回転支承構造は、前記電柱の周方向に沿って回転するように配置された複数のローラで構成されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の電柱支持ユニットでは、上記構成に加えて、前記スライド支持台は、前記スライド支承構造を有し、横倒し状態の前記電柱の側面を受ける側面受部と、前記側面受部を下方で支持する基部と、前記基部に対する前記側面受部の高さを調節する高さ調節部とを備えたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の電柱支持ユニットでは、上記構成に加えて、前記回転支持台は、前記回転支承構造を有し、横倒し状態の前記電柱の側面を受ける側面受部と、前記側面受部を下方で支持する基部と、前記基部に対する前記側面受部の高さを調節する高さ調節部とを備えたことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の電柱支持ユニットは、上記構成に加えて、前記高さ調節部は、前記基部から鉛直上方へ立設されたねじ軸と、前記側面受部の下端を押し上げ可能な位置で前記ねじ軸に対してねじ対偶で螺合されているナットと、前記ナットを回転操作するハンドルとから構成されていることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の電柱接続方法は、2本継式の電柱を横倒し状態で支持して行う電柱接続方法であって、前記電柱を長手方向へスライド可能に支持するスライド支持台及び前記電柱を周方向へ回転可能に支持する回転支持台を、一直線上に並べるように配置する工程と、前記電柱を構成する2本の分割柱の一方を前記スライド支持台に載置する工程と、前記分割柱の他方を前記回転支持台に載置する工程と、前記分割柱の一方及び他方の間で高さ合わせを行う工程と、前記一方をスライドさせて前記他方に突き合わせる工程と、前記他方を回転させて前記一方に対する周方向の位置合わせを行う工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明の電柱支持ユニットによれば、電柱支持ユニットは、スライド支承構造を有したスライド支持台と、回転支承構造を有した回転支持台とをそれぞれ1つずつを備えているので、電柱を構成する分割柱のうち一方をスライド可能に支持し、他方を回転可能に支持すると、長手方向への移動及び軸回りの回転が容易になる。これによって分割柱同士の中心軸合わせと、周方向の角度合わせが容易になる。
【0020】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、スライド支承構造は、電柱の長手方向に沿って回転するローラで構成されているので、作業者が分割柱を長手方向へ滑らせるだけで容易に分割柱同士の突き合わせが可能となる。
【0021】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、回転支承構造は、電柱の周方向に沿って回転するローラで構成されているので、作業者が分割柱を軸回転させるだけで容易に締結箇所の位置合わせを行うことが可能となる。
【0022】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、スライド支持台は、側面受部と基部との間に高さ調節部を有しているので、テーパー状に形成された分割柱をスライドさせることにより変化する高さを容易に微調整することができる。
【0023】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、回転支持台は、側面受部と基部との間に高さ調節部を有しているので、スライド支持台に高さ調節機構がなくても、回転支持台側で高さを微調整することが可能となる。
【0024】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、高さ調節部は、基部から上方に立設されたねじ軸と、ねじ軸に螺合されるナットと、ナットを回転操作するハンドルとから構成されているので、2本の分割柱の状態を目視しながらハンドルを操作することにより高さ方向の位置合わせを行うことができる。
【0025】
また、本発明の電柱接続方法によれば、2本継式の電柱を構成する分割柱の一方をスライド支持台に載置し、他方を回転支持台に載置し、一方をスライドした後、他方を軸回転させることにより、分割柱同士の中心軸合わせと周方向の角度合わせを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の電柱支持ユニットの使用状態を示す斜視図である。
【
図6】2本の分割柱を接続する作業を示す図である。
【
図7】電柱を2本の分割柱に分離する作業を示す図である。
【
図8】従来の分割型電柱を用いた建柱工事で用いられる地上接合工具を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態に係る電柱支持ユニット及び電柱接続方法について図を用いて説明する。なお、同一構造については同一符号を付して説明することとする。
【0028】
図1は、本発明の電柱支持ユニット1の使用状態を示す斜視図である。作業対象となる電柱100は2本継式のコンクリート製である。この電柱100が長尺物であるため、
図1では接続箇所を中心とした部分拡大図として示している。電柱100はフランジ接続式であり、上部側の分割柱100aと下部側の分割柱100bとで構成されている。分割柱100aのフランジ100cと分割柱100bのフランジ100dとが接続されている。
【0029】
電柱支持ユニット1は、後述するように、長手方向へ電柱100が滑動可能となるように支持するスライド支持台2と、電柱100の軸回りに回転可能に支持する回転支持台12とを少なくとも1つずつ備えている。
図1のように、スライド支持台2及び回転支持台12は、電柱100を横倒し状態で下方から支持するために用いられる。
【0030】
図2はスライド支持台2の全体斜視図である。スライド支持台2は、横倒し状態の電柱100(
図1参照)の側面を下方から受ける側面受部4を有している。側面受部4は湾曲した板状部材4bを平行に配置し、これら板状部材4bの間に2本のローラ4aを備えている。2本のローラ4aは、作業対象の電柱100をスライド可能に支承するスライド支承構造であり、板状部材4bの湾曲形状に沿うように角度を設けて配置されている。板状部材4bの両端には、長孔4cが形成されている。これらの長孔4cは、持ち運ぶための持ち手として利用
されるが、軽量化も兼ねている。
【0031】
このような側面受部4は、下方の基部6で支えられている。側面受部4と基部6との間には高さ調節部8が設けられており、基部6に対する側面受部4の高さを調節できるように構成されている。
【0032】
高さ調節部8は、基部6から上方に立設されたねじ軸8aと、このねじ軸8aに対してねじ対偶に螺合されているナット8bと、このナット8bを回転操作するハンドル8cとから構成されている。
【0033】
本実施の形態に係る構成では、ハンドル8cにはラチェット式のものが用いられており、作業者は移動せずに片手で容易に高さ調節を行うことができる。また、ハンドル8cは、伸縮可能に構成されているので、手の届き難い位置からの作業や、高負荷の生じる作業などに応じて変形可能である。
【0034】
図3はスライド支持台2の平面図である。上述のように、側面受部4を構成する2枚の板状部材4bの間にローラ4aが2本設けられているのが見て取れる。これら2本のローラ4aの転がる方向は、図中に矢印で示したように、配置される電柱100(
図1参照)の長手方向に沿っている。2本を組み合わせることにより基部6と略同じ幅をカバーできるように構成されている。これにより、多少径の異なる電柱100であっても、長手方向へスムーズにスライドさせることが可能である。
【0035】
図4は回転支持台12の全体斜視図である。回転支持台12は、スライド支持台2(
図1参照)と同様に、横倒し状態の電柱100の側面を下方から受ける側面受部14を有している。この側面受部14を構成する湾曲した2枚の板状部材14bも略同じ形になっている。端部に長孔14cも形成されているので、持ち手として利用することができる。
【0036】
しかし、4本のローラ14aが設けられている点においてスライド支持台2とは異なっている。4本のローラ14aの回転軸は、2枚の板状部材14b同士を橋渡す方向に延びている。このように、4本のローラ14aは、載置される電柱100の周方向に沿った回転を許容する回転支承構造として設けられている。
【0037】
側面受部14を支える基部6や、基部6に対する側面受部14の高さを調節する高さ調節部8の構成については、スライド支持台2と同様である。
【0038】
図5は回転支持台12の平面図である。上述のように、側面受部14を構成する2枚の板状部材14bの間にローラ14aが4本設けられているのが見て取れる。これら4本のローラ14aの転がる方向は、図中に矢印で示したように、配置される電柱100の周方向に沿っている。4本のローラ14aは基部6の幅を超える範囲に配置されている。これにより、スライド支持台2に載置されるよりも径が大きい分割柱を軸回転可能に載置することができる。すなわち、テーパ状の電柱100において、高重量の下部側の分割柱100bを回転支持台12上に載置し、低重量で比較的スライドさせやすい上部側の分割柱100aをスライド支持台2上に載置することができる。
【0039】
図6は2本の分割柱を接続する作業を示す図である。2本の分割柱100a、100bを電柱支持ユニット1上に載置し、フランジ100c、100d部分を締結して1本の電柱100を形成するまでの工程が
図6(a)~(d)に示されている。
【0040】
図6(a)は、分割柱100a、100bを搬入する工程を示している。本実施の形態に係る構成では、スライド支持台2を2つ、回転支持台12を2つ用いた計4つの支持台
により電柱支持ユニット1が構成されている。これら4つの支持台のうち、2つのスライド支持台2が上部側の分割柱100aを載置する側(紙面左側)に配置され、残り2つの回転支持台12が下部側の分割柱100bを載置する側(紙面右側)に配置される。
【0041】
図6(b)は、上部側の分割柱100aが2つのスライド支持台2上に載置される工程を示している。この段階では、長手方向への位置は正確でなくても構わない。
図6(b)に示すように、僅かに隙間を空けるようにして配置すると、分割柱100a、100b同士の干渉による損壊を防止できる。また、位置決めは後の工程で行うため、4つの電柱支持ユニット1を予め一直線上に並ぶように配置しておけば、それほど神経を使うことなく分割柱100a、100bを配置できるので、作業効率が上がる。
【0042】
図6(c)は、2つのスライド支持台2上に載置された分割柱100aをスライドさせて下部側の分割柱100bに突き当てる工程を示している。スライド支持台2のローラ4a(
図2参照)との接触面積は小さいので、重量物であっても比較的容易に長手方向へスライドさせることが可能である。
【0043】
図6(d)は、突き当てられた上部側の分割柱100aと下部側の分割柱100bのフランジ100c、100dに形成されたボルト穴を合わせるための周方向への回転による位置合わせの工程を示している。2つの回転支持台12上に載置された下部側の分割柱100bだけを軸回りに回転させてボルト穴の位置合わせが行われる。ボルト穴の位置が合うと、締結作業が容易な上側の位置でボルトが通されて仮固定が行われる。
【0044】
その後、均等に締結力が加わるように、適当に間隔を開けながら他の場所も仮固定が行われる。ひと通りの仮固定が終わると、上部側の分割柱100aと下部側の分割柱100bとを一体にして軸回転させる。
【0045】
なお、重量が比較的大きい下部側の分割柱100bの下に回転支持台12が配置されており、電柱100全体の接続後の重心位置は回転支持台12側に偏っている。また、スライド支持台2と電柱100の側面との接触面積は上述したように非常に小さい。したがって、回転支持台12が下部側にだけ設けられている配置であっても、接続後の電柱100を軸回転させることは困難ではない。このようにして軸回転させながら、作業しやすい上方で順次仮締めが行われる。そして、規定トルクよりも小さい力による仮締めが終わると規定のトルクで本締めが行われる。
【0046】
以上のように、電柱100全体を細かく軸回転させながら仮締めから本締めに移行できるので、隙間の生じているフランジ同士を無理に締め付けるといったことを回避できる。すなわち、細かく軸回転させながら仮締めの力を徐々に加えていくことができるので、接続されるフランジ100c、100d同士が完全に密着した状態で規定のトルクによる締結が行うことができ、正確な接続作業を行うことが可能である。
【0047】
図7は電柱100を2本の分割柱に分離する作業を示す図である。一体となっている電柱100を電柱支持ユニット1上に載置し、フランジ100c、100d部分の締結を解除して2本の分割柱100a、100bに分離するまでの工程が
図7(a)~(d)に示されている。
【0048】
図7(a)は、接続状態の電柱100を電柱支持ユニット1上に配置する工程を示している。本実施の形態に係る構成では、
図6の構成と同様に、2つのスライド支持台2と2つの回転支持台12により電柱支持ユニット1が構成されている。このような構成のセットを備えておくと、接続及び分離の何れにも対応することができる。
【0049】
なお、ここでは分離作業が行われるため、
図7(a)の電柱支持ユニット1の配列は図
6(a)とは異なっている。
図7(a)の場合、中央の2つが回転支持台12であり、外側の2つがスライド支持台2となっている。2つの回転支持台12同士は、互いの間に電柱100の重心が含まれるように適当な間隔を空けて配置される。そして、スライド支持台2よりも2つの回転支持台12側に加わる荷重が大きくなるように、高さ調節によって荷重配分が調節される。
【0050】
図7(b)は、フランジ100c、100d部分の締結を解除する工程を示している。荷重の大半が2つの回転支持台12側に加わっているので、電柱100全体を軸回転させるのは容易である。これにより、軸回転をさせながら順次締結が解除される。また、回転できることにより上方で作業を行えるので、作業者は無理な姿勢を強いられることはなく、作業効率が向上する。
【0051】
図7(c)は、分離された上部側の分割柱100aを下部側の分割柱100bから引き離すようにスライドさせる工程を示している。ここでは、上部側の分割柱100aが載置されているのは1つのスライド支持台2と1つの回転支持台12である。しかし、回転支持台12の回転支承構造が4本のローラ14a(
図4参照)で構成されているので、電柱100の側面との接触面積は僅かである。また、
図7(a)の状態において、中央側の2つの回転支持台12側に荷重の大半が加わるように高さ設定が行われていたので、分離後は、外側のスライド支持台2側に重心が移動する。これにより、比較的容易に上部側の分割柱100aを長手方向へスライドさせることが可能である。このとき、ロープ等で僅かに持ち上げ気味で荷重を一部抜くように作業を行うとより簡単に移動させることができる。
【0052】
図7(d)は、分離された上部側の分割柱100aを搬出する工程を示している。
図7(c)の工程において、下部側の分割柱100bから長手方向へ距離を空けておいたので、両者が干渉することなく、安全に吊り上げ作業を行うことができる。
【0053】
以上に述べてきたような構成は本発明の一例であり、以下のような変形例も含まれる。
【0054】
(1)上記の実施の形態では、電柱支持ユニット1を2つのスライド支持台2と2つの回転支持台12によって構成した例を示した。しかし、スライド支持台2及び回転支持台12を少なくとも1つずつ含んでいれば、その他の構成比であっても構わない。
【0055】
(2)上記の実施の形態では、スライド支持台2及び回転支持台12のそれぞれに高さ調節部8が設けられた構成を例として示した。しかし、電柱100を受ける側面受部4、14とそれを支える基部6があれば、高さ調節部8は含まれていなくても構わない。
【0056】
(3)上記の実施の形態では、高さ調節部8の調節用のハンドル8cが伸縮可能なラチェット式の機構を備えた構成を例として示した。しかし、伸縮機構やラチェット機構を備えていなくても同様の効果を得ることは可能である。
【0057】
(4)上記の実施の形態では、スライド支持台2のスライド支承構造として2本のローラ4aを設けた構成を例として示した。しかし、均等に支承できる構成であれば、3本以上のローラを備えていても構わない。
【0058】
(5)上記の実施の形態では、回転支持台12の回転支承構造として4本のローラ14aを設けた構成を例として示した。しかし、均等に支承できる構成であれば、4本に限らない。
【0059】
(6)上記の実施の形態では、スライド支持台2のスライド支承構造と回転支持台12の回転支承構造として、何れもローラ4a、14aを用いた構成を例として示した。しかし、電柱100が長手方向又は周方向に滑動できる構成であれば、ローラ4a、14a以外の滑動材を用いても構わない。例えば、摩擦係数の小さい樹脂材でも構わない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の電柱支持ユニットは、コンクリート製の分割柱であっても容易に軸合わせを行うことができるので、電柱に限らず、高重量の柱状物の接続作業に有用である。
【符号の説明】
【0061】
1 電柱支持ユニット
2 スライド支持台
4 側面受部
4a ローラ
4b 板状部材
4c 長孔
6 基部
8 高さ調節部
8a ねじ軸
8b ナット
8c ハンドル
12 回転支持台
14 側面受部
14a ローラ
14b 板状部材
14c 長孔
100 電柱
100a 分割柱(上部側)
100b 分割柱(下部側)