(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】関節リウマチの寛解持続予測のための方法、及び寛解持続予測装置
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20240626BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240626BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240626BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20240626BHJP
C07K 16/24 20060101ALN20240626BHJP
C07K 14/55 20060101ALN20240626BHJP
C07K 14/715 20060101ALN20240626BHJP
A61P 29/00 20060101ALN20240626BHJP
A61P 19/02 20060101ALN20240626BHJP
A61K 39/395 20060101ALN20240626BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N33/53 D
G01N33/53 P
C07K16/28
C07K19/00
C07K16/24
C07K14/55
C07K14/715
A61P29/00 101
A61P19/02
A61K39/395 N
(21)【出願番号】P 2020115119
(22)【出願日】2020-07-02
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】599055382
【氏名又は名称】学校法人東邦大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】亀田 秀人
【審査官】中村 直子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/083765(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/024107(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0241643(US,A1)
【文献】KAMEDA, H. et al.,Prediction of disease flare by biomarkers after discontinuing biologics in patients with rheumatoid arthritis achieving stringent remission,SCIENTIFIC REPORTS,2021年03月25日,Vol.11/No.6865,pp.1-9,https://doi.org/10.1038/s41598-021-86335-7
【文献】TWEEHUYSEN, L. et al.,Little Evidence for Usefulness of Biomarkers for Predicting Successful Dose Reduction or Discontinuation of a Biologic Agent in Rheumatoid Arthritis,ARTHRITIS & RHEUMATOLOGY,2017年02月,Vol.69/No.2,pp.301-308,DOI: 10.1002/art.39946
【文献】KANJANA, K. et al.,Regulatory T Cell Suppressive Activity Predicts Disease Relapse During Disease-Modifying Anti-rheumatic Drug Dose Reduction in Rheumatoid Arthritis: A Prospective Cohort Study,FRONTIERS IN MEDICINE,2020年02月04日,Vol.7/No.25,pp.1-7,DOI: 10.3389/fmed.2020.00025
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
C07K 16/28
C07K 19/00
C07K 16/24
C07K 14/55
C07K 14/715
A61P 29/00
A61P 19/02
A61K 39/395
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投薬治療により寛解が維持されている関節リウマチ患者における、血漿中sTNFR1濃度と、血漿中IL-2濃度と、を測定する工程と、
前記血漿中sTNFR1濃度が1300pg/mL以下、かつ前記血漿中IL-2濃度が0.050pg/mLより大きい場合に、前記関節リウマチ患者の寛解が、前記投薬治療の中止後に持続されると評価する工程と、を含むことを特徴とする、関節リウマチの寛解持続予測
のための方法。
【請求項2】
前記血漿中sTNFR1濃度を高感度ELISA法で測定する、請求項1に記載の関節リウマチの寛
解持続予測
のための方法。
【請求項3】
前記血漿中IL-2濃度を高感度ELISA法で測定する、請求項1から2のいずれかに記載の関節リウマチの寛
解持続予測
のための方法。
【請求項4】
前記投薬治療が、生物学的製剤による投薬治療である、請求項1から3のいずれかに記載の関節リウマチの寛
解持続予測
のための方法。
【請求項5】
前記生物学的製剤が、アダリムマブ、セルトリズマブ、エタネルセプト、ゴリムマブ、インフリキシマブ、アバタセプト、及びトシリズマブから選択される少なくとも何れかである、請求項4に記載の関節リウマチの寛
解持続予測
のための方法。
【請求項6】
投薬治療により寛解が維持されている関節リウマチ患者における、血漿中sTNFR1濃度と、血漿中IL-2濃度と、を測定する手段と、
前記血漿中sTNFR1濃度が1300pg/mL以下、かつ前記血漿中IL-2濃度が0.050pg/mLより大きい場合に、前記関節リウマチ患者の寛解が、前記投薬治療の中止後に持続されると評価する手段と、を含むことを特徴とする、関節リウマチの寛解持続予測装置。
【請求項7】
前記血漿中sTNFR1濃度を高感度ELISA法で測定する、請求項6に記載の関節リウマチの寛解持続予測装置。
【請求項8】
前記血漿中IL-2濃度を高感度ELISA法で測定する、請求項6から7のいずれかに記載の関節リウマチの寛解持続予測装置。
【請求項9】
前記投薬治療が、生物学的製剤による投薬治療である、請求項6から8のいずれかに記載の関節リウマチの寛解持続予測装置。
【請求項10】
前記生物学的製剤が、アダリムマブ、セルトリズマブ、エタネルセプト、ゴリムマブ、インフリキシマブ、アバタセプト、及びトシリズマブから選択される少なくとも何れかである、請求項9に記載の関節リウマチの寛解持続予測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節リウマチの寛解持続予測のための方法、及び寛解持続予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
関節リウマチ(以下、「RA」と称することがある)の患者数は、日本で約70万人であり、このうちの約30%が生物学的製剤による投薬治療を受けている。
関節リウマチの持続的な寛解は、関節リウマチの患者にとって、現実的な治療目標となっており(非特許文献1)、また、前記生物学的製剤が高額であることから、医療経済の点などからも、関節リウマチの寛解が導入された患者において、投与治療を適切に中止することが望まれるが、休薬後には、50%以上の確率で関節リウマチが再燃することが知られている(非特許文献2及び3)。
【0003】
そこで、投薬治療の中止後に、関節リウマチが再燃することなく、寛解が持続するか否かの予測が注目され、これまでに、様々な臨床的指標から、寛解持続の予測が試みられてきたが、臨床的指標から寛解持続を予測することはできなかった。
【0004】
したがって、投薬治療の中止後に、関節リウマチが再燃することなく、寛解が持続するか否かを、高い信頼性で予測することのできる、関節リウマチの寛解持続予測方法、及び寛解持続予測装置の速やかな提供が強く求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Ann Rheum Dis. 2020 79:685-699
【文献】Ann Rheum Dis. 2010 69:1286-91
【文献】Mod Rheumatol. 2014 24:561-6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、投薬治療の中止後に、関節リウマチの寛解が持続するか否かを、高い信頼性で予測することのできる、関節リウマチの寛解持続予測方法、及び寛解持続予測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、投薬治療により寛解が維持されている関節リウマチ患者における、血漿中可溶性腫瘍壊死因子受容体(soluble tumor necrosis factor receptor;sTNFR)1濃度と、血漿中インターロイキン(interleukin;IL)-2濃度と、を測定する工程と、前記血漿中sTNFR1濃度1300pg/mL以下、かつ前記血漿中IL-2濃度が0.050pg/mLより大きい場合に、前記関節リウマチ患者の寛解が、前記投薬治療の中止後に持続されると評価する工程と、を含む関節リウマチの寛解持続予測方法を採用することにより、投薬治療の中止後に、関節リウマチの寛解が持続するか否かを、高い信頼性で予測することのできる、関節リウマチの寛解持続予測方法が提供でき、血漿中sTNFR1濃度と、血漿中IL-2濃度と、を測定する手段と、前記血漿中sTNFR1濃度が1300pg/mL以下、かつ前記血漿中IL-2濃度が0.050pg/mLより大きい場合に、前記関節リウマチ患者の寛解が、前記投薬治療の中止後に持続されると評価する手段と、を含む関節リウマチの寛解持続予測装置を採用することにより、投薬治療の中止後に、関節リウマチの寛解が持続するか否かを、高い信頼性で予測することのできる、関節リウマチの寛解持続予測装置が提供できることを知見した。
【0008】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 投薬治療により寛解が維持されている関節リウマチ患者における、血漿中sTNFR1濃度と、血漿中IL-2濃度と、を測定する工程と、前記血漿中sTNFR1濃度が1300pg/mL以下、かつ前記血漿中IL-2濃度が0.050pg/mLより大きい場合に、前記関節リウマチ患者の寛解が、前記投薬治療の中止後に持続されると評価する工程と、を含むことを特徴とする、関節リウマチの寛解持続予測方法である。
<2> 投薬治療により寛解が維持されている関節リウマチ患者における、血漿中sTNFR1濃度と、血漿中IL-2濃度と、を測定する手段と、前記血漿中sTNFR1濃度が1300pg/mL以下、かつ前記血漿中IL-2濃度が0.050pg/mLより大きい場合に、前記関節リウマチ患者の寛解が、前記投薬治療の中止後に持続されると評価する手段と、を含むことを特徴とする、関節リウマチの寛解持続予測装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前記従来における諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、投薬治療の中止後に、関節リウマチの寛解が持続するか否かを、高い信頼性で予測することのできる、関節リウマチの寛解持続予測方法、及び寛解持続予測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】
図1Aは、生物学的製剤の投薬治療中止後の寛解持続率(実線)を示す図である。破線は信頼区間を表す。
【
図1B】
図1Bは、TNF阻害剤を中止した患者(実線)と非TNF阻害剤を中止した患者(破線)における、投薬治療中止後の寛解持続率を示す図である。
【
図1C】
図1Cは、最初の生物学的製剤を中止した患者(実線)と2番目又は3番目の生物学的製剤を中止した患者(破線)における、投薬治療中止後の寛解持続率を示す図である。
【
図1D】
図1Dは、メトトレキサート(MTX)を併用投薬されていた患者(実線)とメトトレキサート(MTX)を併用投薬されていなかった患者(破線)における、投薬治療中止後の寛解持続率を示す図である。
【
図2A】
図2Aは、血漿IL-2濃度の曲線下面積(AUC)値を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、血漿IL-2濃度がカットオフ値Iより大きい患者(実線)と血漿IL-2濃度がカットオフ値I以下の患者(破線)における、投薬治療中止後の寛解持続率を示す図である。
【
図3A】
図3Aは、血漿sTNFR1濃度とC反応性タンパク質(CRP)との相関図である。
【
図3B】
図3Bは、血漿sTNFR1濃度と赤血球沈降速度(ESR)との相関図である。
【
図3C】
図3Cは、血漿sTNFR1濃度とマトリックスメタロプロテアーゼ-3(MMP-3)との相関図である。
【
図3D】
図3Dは、血漿sTNFR1濃度と28関節を用いた関節リウマチの総合的疾患活動性スコア(DAS28)-赤血球沈降速度(ESR)との相関図である。
【
図4A】
図4Aは、血漿sTNFR1濃度がカットオフ値II以下の患者(実線)と血漿sTNFR1濃度がカットオフ値IIより大きい患者(破線)における、投薬治療中止後の寛解持続率を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、血漿sTNFR1濃度がカットオフ値II以下かつ血漿IL-2濃度がカットオフ値Iより大きい患者(実線)と、血漿sTNFR1濃度がカットオフ値II以下かつ血漿IL-2濃度がカットオフ値I以下の患者(破線)における、投薬治療中止後の寛解持続率を示す図である。
【
図4C】
図4Cは、血漿sTNFR1濃度がカットオフ値IIより大きくかつ血漿IL-2濃度がカットオフ値Iより大きい患者(実線)と、血漿sTNFR1濃度がカットオフ値IIより大きくかつ血漿IL-2濃度がカットオフ値I以下の患者(破線)における、投薬治療中止後の寛解持続率を示す図である。
【
図5】
図5は、血漿IL-2濃度がカットオフ値IIIより大きい患者(実線)と血漿IL-2濃度がカットオフ値III以下の患者(破線)における、投薬治療中止後の寛解持続率を示す図である。
【
図6A】
図6Aは、血漿sTNFR1濃度がカットオフ値IV以下の患者(実線)と血漿sTNFR1濃度がカットオフ値IVより大きい患者(破線)における、投薬治療中止後の寛解持続率を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、血漿sTNFR1濃度がカットオフ値IV以下かつ血漿IL-2濃度がカットオフ値IIIより大きい患者(実線)と、血漿sTNFR1濃度がカットオフ値IV以下かつ血漿IL-2濃度がカットオフ値III以下の患者(破線)における、投薬治療中止後の寛解持続率を示す図である。
【
図6C】
図6Cは、血漿sTNFR1濃度がカットオフ値IVより大きくかつ血漿IL-2濃度がカットオフ値IIIより大きい患者(実線)と、血漿sTNFR1濃度がカットオフ値IVより大きくかつ血漿IL-2濃度がカットオフ値III以下の患者(破線)における、投薬治療中止後の寛解持続率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(関節リウマチの寛解持続予測方法、及び寛解持続予測装置)
本発明の関節リウマチの寛解持続予測方法は、投薬治療により寛解が維持されている関節リウマチ患者における、血漿中sTNFR1濃度と、血漿中IL-2濃度と、を測定する工程(測定工程)と、前記血漿中sTNFR1濃度が1300pg/mL以下、かつ前記血漿中IL-2濃度が0.050pg/mLより大きい場合に、前記関節リウマチ患者の寛解が、前記投薬治療の中止後に持続されると評価する工程(評価工程)と、を含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
本発明の関節リウマチの寛解持続予測装置は、投薬治療により寛解が維持されている関節リウマチ患者における、血漿中sTNFR1濃度と、血漿中IL-2濃度と、を測定する手段(測定手段)と、前記血漿中sTNFR1濃度が1300pg/mL以下、かつ前記血漿中IL-2濃度が0.050pg/mLより大きい場合に、前記関節リウマチ患者の寛解が、前記投薬治療の中止後に持続されると評価する手段(評価手段)と、を含み、更に必要に応じて、その他の手段を含む。
【0012】
<測定工程、及び測定手段>
前記測定工程は、投薬治療により寛解が維持されている関節リウマチ患者における、血漿中sTNFR1濃度と、血漿中IL-2濃度と、を測定する工程である。
前記測定手段は、投薬治療により寛解が維持されている関節リウマチ患者における、血漿中sTNFR1濃度と、血漿中IL-2濃度と、を測定する手段である。
【0013】
前記関節リウマチ患者としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、関節リウマチについての2010 米国リウマチ学会/欧州リウマチ学会(ACR/EULAR)の分類基準を満たしている患者が好ましい(Arthritis Rheum 2010 62:2569-81)。
【0014】
前記寛解としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、28関節疾患活動性スコア(DAS28)<2.6の基準を満たす寛解、簡易疾患活動性指標(SDAI)≦3.3の基準を満たす寛解、臨床疾患活動性指標(CDAI)≦2.8の基準を満たす寛解、及び、米国リウマチ学会/欧州リウマチ学会(ACR/EULAR)のブーリアン寛解などが挙げられる(Ann Rheum Dis 2013 72:1800-5、Rheumatology 2003 42:244-57、Ann Rheum Dis 2011 70:404-13、Semin Arthritis Rheum 2020 50:276-84)。
これらの中でも、簡易疾患活動性指標(SDAI)≦3.3を満たす寛解が好ましい。
【0015】
前記寛解が維持されている期間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1ヶ月以上が好ましく、2ヶ月以上がより好ましく、3ヶ月以上が最も好ましい。
【0016】
前記投薬治療としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メトトレキサート、ミゾリビン、アザチオプリン、シクロホスファミド、シクロスポリン、タクロリムス、金チオリンゴ酸Na、オーラノフィン、D-ペニシラミン、サラゾスルファピリジン、ブシラミン、ロベンザリット、アクタリット、イグラチモド、レフルノミド等の従来薬(csDMARD)、アダリムマブ、セルトリズマブ、エタネルセプト、ゴリムマブ、インフリキシマブ、アバタセプト、トシリズマブ、サリルマブ等の生物学的製剤(bDMARD)、トファシチニブ、バリシチニブ、ペフィシチニブ、ウパダシチニブ、フィルゴチニブ等のヤヌスキナーゼ阻害剤、プレドニゾロン等の副腎皮質ステロイドなどを用いた投薬治療が挙げられる。また、これらを併用した投薬治療であってもよい。
これらの中でも、生物学的製剤(bDMARD)を用いた投薬治療が好ましく、アダリムマブ、セルトリズマブ、エタネルセプト、ゴリムマブ、インフリキシマブ、アバタセプト、及びトシリズマブから選択される少なくとも何れかを用いた投薬治療がより好ましい。
【0017】
前記血漿としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、患者の末梢血を遠心分離して得られる上清などが挙げられる。
【0018】
前記sTNFR1は、可溶性腫瘍壊死因子レセプターであり、膜貫通型腫瘍壊死因子レセプター1(TNFR1)の細胞外ドメインが、亜鉛メタロプロテアーゼのADAM(ディスインテグリン及びメタロプロテアーゼ)ファミリーのメンバーである腫瘍壊死因子α変換酵素(TACE)により切断され可溶化したものである(J Biol Chem 2008 283:14177-81)。前記sTNFR1は、遊離TNFと結合し炎症を抑制することが知られている。
【0019】
前記IL-2(インターロイキン2)は、細胞性免疫に関与するサイトカインであり、関節リウマチの持続性寛解に関連している可能性のある、調節性T細胞の発達と増殖に極めて重要なサイトカインである(Mucosal Immunol 2019 12:1104-17、Ann Rheum Dis 2019 78:209-17)。
また、IL-2の血中濃度は、非常に低く(約1pg/mL)(Mol Med Rep 20137:775-80、Ann Agric Environ Med 2015 22:320-4、PLoS One 2015 10:e0142976)、関節リウマチの寛解を予測する最近の研究においても、検出下限を下回っている(J Autoimmun 2019 105:102298)。
【0020】
-sTNFR1濃度の測定-
前記sTNFR1濃度の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酵素結合免疫吸着法(ELISA)による測定、放射免疫測定(RIA)、ウェスタンブロットによる測定などが挙げられる。
これらの中でも、酵素結合免疫吸着法(ELISA)による測定が好ましい。
【0021】
前記酵素結合免疫吸着法(ELISA)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高感度酵素結合免疫吸着法(高感度ELISA法)が好ましく、標識物質を電気化学的刺激により発光させ、その発光量を検出することでターゲット量を算出するアッセイである、電気化学発光アッセイによる高感度酵素結合免疫吸着法(高感度ELISA法)がより好ましい。
前記電気化学発光アッセイによる高感度酵素結合免疫吸着法(高感度ELISA法)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メソスケールディスカバリー社の超高感度キットを用いた方法などが挙げられる(Ann Rheum Dis 2014 73:945-7)。
【0022】
前記sTNFR1濃度の測定に用いる抗体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、メソスケールディスカバリー社製の超高感度キット(K151BIC-1)に用いられている抗体固相化プレートと検出用抗体の組合せが好ましい。
【0023】
-IL-2濃度の測定-
前記IL-2濃度の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酵素結合免疫吸着法(ELISA)による測定、放射免疫測定(RIA)、ウェスタンブロットによる測定などが挙げられる。
これらの中でも、酵素結合免疫吸着法(ELISA)による測定が好ましい。
【0024】
前記酵素結合免疫吸着法(ELISA)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高感度酵素結合免疫吸着法(高感度ELISA法)が好ましく、標識物質を電気化学的刺激により発光させ、その発光量を検出することでターゲット量を算出するアッセイである、電気化学発光アッセイによる高感度酵素結合免疫吸着法(高感度ELISA法)がより好ましい。
前記電気化学発光アッセイによる高感度酵素結合免疫吸着法(高感度ELISA法)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メソスケールディスカバリー社の超高感度キットを用いた方法などが挙げられる(Ann Rheum Dis 2014 73:945-7)。
【0025】
前記IL-2濃度の測定に用いる抗体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、メソスケールディスカバリー社製の抗体固相化プレート(N05049A-1)又は(L451QQA-1)と検出用抗体(D21QQ-2)の組合せが好ましい。
【0026】
<評価工程、及び評価手段>
前記評価工程は、前記血漿中sTNFR1濃度が1300pg/mL以下、かつ前記血漿中IL-2濃度が0.050pg/mLより大きい場合に、前記関節リウマチ患者の寛解が、前記投薬治療の中止後に持続されると評価する工程である。
前記評価手段は、前記血漿中sTNFR1濃度が1300pg/mL以下、かつ前記血漿中IL-2濃度が0.050pg/mLより大きい場合に、前記関節リウマチ患者の寛解が、前記投薬治療の中止後に持続されると評価する手段である。
【0027】
前記血漿中sTNFR1濃度のカットオフ値としては、1300pg/mL以下である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、信頼性の点から、1290pg/mL以下が好ましく、1280pg/mL以下がより好ましく、1270pg/mL以下がさらに好ましい。
【0028】
前記血漿中IL-2濃度のカットオフ値としては、0.050pg/mLより大きい限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、信頼性の点から、0.055pg/mLより大きいことが好ましく、0.060pg/mLより大きいことがより好ましく、0.062pg/mLより大きいことがさらに好ましい。
【0029】
前記評価を行う装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子計算機(コンピュータ)などが挙げられる。前記装置は、前記評価手段として好適に使用することができる。
【0030】
<その他の工程、及びその他の手段>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記sTNFR1濃度及びIL-2濃度と、他の指標とを組み合わせて評価する工程などが挙げられる。
前記その他の手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記sTNFR1濃度及びIL-2濃度と、他の指標とを組み合わせて評価する手段などが挙げられる。
【実施例】
【0031】
以下に本発明の実施例について説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0032】
(患者)
2014年11月から2018年1月までの間に、東邦大学医療センター大橋病院(東京)を受診した関節リウマチ(RA)の患者のうち、以下の1)から3)の全ての基準を満たす患者36例を登録対象とした。
【0033】
1)関節リウマチについての2010 米国リウマチ学会(ACR)/欧州リウマチ学会(EULAR)の分類基準を満たしている(Arthritis Rheum 2010 62:2569-81)。
2)2回以上の通院で、少なくとも3ヶ月間、簡易疾患活動性指標(SDAI)≦3.3で定義される、米国リウマチ学会/欧州リウマチ学会(ACR/EULAR)の臨床的寛解を維持している(Rheumatology 2003 42:244-57)。
3)生物学的製剤(bDMARD)中止のリスクと利益のバランスを考慮した上で、投薬治療中の生物学的製剤を中止する意思がある。
【0034】
なお、前記登録対象の36例のうち、2例を下記の比較研究から除外した。除外した2例の内訳は、43日目の転居による脱落、及び175日目の併存疾患(心筋症)による死亡による脱落であった。どちらも脱落時に関節リウマチは再燃していなかった。
【0035】
(研究デザイン)
2年間の前向き観察研究を行った。主要評価項目は、生物学的製剤の中止後2年以内の再燃(28関節疾患活動性スコア(DAS28)-赤血球沈降速度(ESR)≧3.2、及びベースラインからの増加、>0.6)であった(Ann Rheum Dis 2013 72:1800-5)。
研究プロトコルは、東邦大学医療センター大橋病院の倫理委員会によって承認され、この研究はヘルシンキ宣言に準拠して実施した。全ての参加者から書面によるインフォームドコンセントを得た。
【0036】
(統計分析)
統計分析は、JMP Pro(バージョン14.2、SAS Institute Japan Ltd. 東京、日本)を使用して実行した。
連続変数は、中央値と四分位範囲(IQR)として提示され、マンホイットニーU検定を使用して分析した。
2項データは、フィッシャーの直接確率検定を使用して2つのグループ間で比較した。グループ間の生存曲線の比較には、カプラン・マイヤー分析とログランク検定を使用した。相関係数(r)は、スピアマンの順位検定によって決定した。
ベースラインバイオマーカーに基づいて関節リウマチの再燃を予測するために、ロジスティック回帰分析とそれに続く受信者操作特性(ROC)分析を実施した。
P値<0.05を、統計的に有意であるとみなした。
【0037】
(参考例1:人口統計学的特徴、及び臨床的指標による寛解持続予測)
医療記録から、性別、年齢、身長、体重、発症から登録までの罹病期間、中止する生物学的製剤の治療期間、寛解期間、Steinbrocker X線ステージ、抗環状シトルリン化ペプチド抗体(抗CCP)、リウマトイド因子(RF)、マトリックスメタロプロテアーゼ-3(MMP-3)、及び関節リウマチ治療についての医療情報を取得した。結果を表1(Total、n=36)に示した。
なお、表1のp値の欄における、aはマンホイットニーU検定による数値であることを示し、bはフィッシャーの直接確率検定による数値であることを示す。
また、登録後2-3ヶ月ごとに、28関節の圧痛関節数(TJC28)、28関節の腫脹関節数(SJC28)、患者疾患活動性全般評価(PtGA)、医師疾患活動性全般評価(PhGA)、健康評価質問票機能障害指数(HAQ-DI)、赤血球沈降速度(ESR)、血清C反応性タンパク質(血清CRP)、及びマトリックスメタロプロテアーゼ-3(MMP-3)を測定し、40関節の超音波検査(US)検査等を実施した。ベースラインの結果を表1(Total、n=36)に示した。
【0038】
-超音波検査(US)検査-
Xario(Toshiba Medical Systems、Tochigi、Japan)超音波装置にマルチ周波数リニアアレイプローブ(7-14MHz)を搭載したものを使用した。パワードップラー(PD)の設定は、PDパルス繰り返し周波数、16.5kHz(流量範囲、3.8cm/s)、ドップラー周波数、6.1MHz、低壁フィルター、とし、カラーゲインはノイズが現れるレベルのすぐ下に設定した。
【0039】
超音波検査は、日本リウマチ学会の認定を受けたリウマチ専門医、及び超音波検査技師により、リウマチ学における筋骨格系超音波のEULARガイドラインに従い実施した(Ann Rheum Dis 2001 60:641-9、Ann Rheum Dis 2017 76:1974-9)。検査官は、患者の他の医療情報の知識なしで、縦及び横スキャンを使用して、両側肩、肘手首、中手指節関節、親指指節間関節、2番目から5番目の指の近位指節間関節、膝、足首、及び中足指節関節を含む40の関節を評価した。
検査官は、リウマチのアウトカム指標を検討する国際的研究組織(OMERACT)の定義に従い、記録された超音波検査結果の最終採点を行った(J Rheumatol 2005 32: 2485-7)。すなわち、グレースケール(GS)を、滑膜肥大と関節陥凹の体液貯留の複合測定で半定量的に0から3(0=なし、1=軽度、2=中程度、3=著しい)に格付けした。関節内パワードップラー(PD)信号も、0から3のスケールで格付けされ、超音波スコアの合計値は、各患者の全てのGS及びPDスコアを合計して決定した。
【0040】
【0041】
表1(Total、n=36)の結果より、29人(80.6%)の患者が女性であり、登録時の年齢の中央値(IQR)は69(53-75)歳であった。
罹病期間の中央値(IQR)は5.2年、中止された生物学的製剤による治療は2.1(1.4-3.5)年間であり、寛解期間の中央値(IQR)は20(9-31)ヶ月であった。
ほとんどの患者(72.2%)は、最初の生物学的製剤による投薬治療を受けており、患者の76.5%と77.8%は、それぞれ、抗環状シトルリン化ペプチド抗体(抗CCP)、リウマトイド因子(RF)陽性であった。
【0042】
登録された全ての患者が簡易疾患活動性指標(SDAI)≦3.3基準を満たしたという事実のとおり、28関節の圧痛関節数(TJC28)と腫脹関節数(SJC)の中央値(IQR)は、健康評価質問票機能障害指数(HAQ-DI)の中央値と同様に、ともに0(0-0)であった。
患者疾患活動性全般評価(PtGA)(mm VAS)の中央値は3、医師疾患活動性全般評価(PhGA)(mm VAS)の中央値は0であった。
【0043】
C反応性タンパク質(CRP)の中央値は0.04mg/dLで、28関節疾患活動性スコア(DAS28)-赤血球沈降速度(ESR)と簡易疾患活動性指標(SDAI)の中央値はそれぞれ2.0と0.4であった。
【0044】
重要なことに、36人の患者のうち31人(86.1%)は、関節リウマチの臨床的寛解の最も厳しい基準であることが示されている、米国リウマチ学会(ACR)/欧州リウマチ学会(EULAR)のブーリアン寛解基準(Ann Rheum Dis 2011 70:404-13)を達成していた。
【0045】
40の関節における超音波検査では、パワードップラー(PD)の合計スコアは26人の患者で0、5人の患者で1であった。したがって、登録患者の少なくとも86.1%で画像による寛解が確認された。
【0046】
26人(72.2%)の患者がTNF阻害生物学的製剤を中止し、4人と6人の患者がそれぞれ非TNF阻害生物学的製剤であるアバタセプトとトシリズマブを中止した。
日本、及びその他の国における関節リウマチのアンカー薬である、メトトレキサート(MTX)が、主な(69.4%)併用従来薬(csDMARD)であり、一方、簡易疾患活動性指標(SDAI)寛解を達成した患者のうち、併用従来薬(csDMARD)として、グルココルチコイドを投薬されているのは少数(8.3%)であった。
【0047】
<再燃陽性患者と寛解持続患者の人口統計学的、及び臨床的指標による比較研究>
関節リウマチの再燃陽性患者(Flare(+)、n=20)と関節リウマチの再燃陰性患者(寛解持続患者)(Flare(-)、n=14)の比較を表1に示した。
表1の結果より、36人の登録患者のうち、20人の患者(55.6%)が、生物学的製剤注入/注射の最初のスキップ日から43-651(中央値115)日の範囲で、2年以内に関節リウマチが再燃した(
図1A)。これらの患者の18人(90%)は、その後同じ生物学的製剤を投与され、2ヶ月以内に再び簡易疾患活動性指標(SDAI)寛解を達成した。別の生物学的製剤が1人の患者に導入され、残りの患者は治療調整なしで9ヶ月後に簡易疾患活動性指標(SDAI)寛解を達成した。したがって、再燃した後の患者の転帰は非常に好ましいものであった。
【0048】
人口統計学的特徴は、2つのグループ間で同等であった。
活動関連パラメーターの中で、赤血球沈降速度(ESR)値と28関節疾患活動性スコア(DAS28)-赤血球沈降速度(ESR)値は、再燃陰性患者よりも再燃陽性患者で数値的に大きかったが、統計的に有意ではなかった(それぞれp=0.077、及びp=0.058)。
【0049】
超音波検査の結果は、再燃陽性患者と再燃陰性患者の間で、グレースケール(GS)、パワードップラー(PD)、及び合計スコアは同等であった(それぞれp=0.54、p=0.88、p=0.53)。さらに、合計パワードップラー(PD)スコアが2以上の患者の割合は、再燃陽性グループと再燃陰性グループの間で同様であった(それぞれ15.0%と14.3%、p=1.00)。
【0050】
関節リウマチ治療に関しては、TNF阻害剤と非TNF阻害剤を中止した患者(
図1B及び表1)、及び最初の生物学的製剤を中止した患者と2番目又は3番目の生物学的製剤を中止した患者の間で同様に疾患の再燃が観察された(
図1C及び表1)。
メトトレキサート(MTX)を投薬された患者は、メトトレキサート(MTX)を投薬されていない患者と比較して寛解を持続する傾向を示したが(
図1D及び表1)、統計的に有意ではなかった。
【0051】
以上より、関節リウマチの寛解基準を達成した患者における投薬治療中止後の寛解持続について、臨床的指標からは予測できないことが分かった。
ただし、投薬治療中止後、超音波、及びパワードップラー(PD)スコアが22と10の2人の患者は、それぞれ55日と105日で疾患が再燃した。これらの患者では、28関節に1つの腫れた関節があり、マトリックスメタロプロテアーゼ-3(MMP-3)が上昇していた(それぞれ229.4及び176.2ng/mL)。したがって、超音波検査は、残存する関節炎の活動のいくつかの兆候にもかかわらず、厳格な寛解基準を達成する患者にとって有用である可能性はある。とはいえ、超音波画像検査による寛解は投薬治療中止後の持続的寛解を保証しないことに注意すべきである。
【0052】
(実施例1:バイオマーカー指標による寛解持続予測)
<再燃陽性患者と寛解持続患者のバイオマーカー指標による比較>
-サイトカイン、及び可溶性サイトカイン受容体の血漿濃度の測定-
関節リウマチの病因及び/又は関節リウマチ治療の分子標的に関連する、9つのサイトカイン;インターロイキン(IL)-1β、IL-2、IL-6、IL-8、IL-10、インターフェロンガンマ(IFNγ)、腫瘍壊死因子(TNF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、及び血管内皮増殖因子(VEGF)、並びに、3つの可溶性サイトカイン受容体;可溶性TNF受容体1(sTNFR1)、可溶性TNF受容体2(sTNFR2)、及び可溶性IL-6受容体(sIL-6R)のベースライン血漿濃度について、超高感度キット(メソスケールディスカバリー、メリーランド州ロックビル、USA)を使用して、メーカーのプロトコルに従い、電気化学発光アッセイにより測定した(Ann Rheum Dis 2014 73:945-7)。
血漿は測定まで-80℃で保存した。
関節リウマチの再燃陽性患者(n=20)と関節リウマチの再燃陰性患者(寛解持続患者)(n=14)の比較結果を表2に示した。
【0053】
【0054】
表2の結果より、血漿IL-2濃度は非常に低く、36例中8例では検出限界以下であったが、興味深いことに、再燃陰性患者の方が再燃陽性患者よりも有意に高いことが分かった(p=0.017)。
単変量ロジスティック回帰分析とその後のROC分析から、カットオフ値0.06287pg/mL(カットオフ値I)と、曲線下面積(AUC)値0.74を算出した(
図2A)。
さらに、カプラン・マイヤー分析から、ベースラインの低いIL-2濃度と、その後の疾患再燃とが関連することが示された(p=0.020、
図2B)。
【0055】
IL-6、TNF、及びsTNFR2の血漿濃度は、一部の生物学的製剤の影響を受ける可能性がある。
再燃陽性患者と再燃陰性患者の間のsTNFR1濃度のわずかな違い(p=0.064)について、さらに分析した。
血漿sTNFR1濃度はC反応性タンパク質(CRP)と相関しなかったが(r
2=0.0044、p=0.70;
図3A)、赤血球沈降速度(ESR)(r
2=0.14、p=0.027、
図3B)、マトリックスメタロプロテアーゼ-3(MMP-3)(r
2=0.18、p=0.012、
図3C)、28関節疾患活動性スコア(DAS28)-赤血球沈降速度(ESR)(r
2=0.18、p=0.011、
図3D)と有意な相関があった。
ロジスティック回帰分析とその後のROC分析から、カットオフ値1267.8pg/mL(カットオフ値II)と、AUC値0.69を算出した。
さらに、カプラン・マイヤー分析から、ベースラインの高いsTNFR1濃度がその後の疾患再燃と関連することが示された(p=0.0041、
図4A)。
【0056】
sTNFR1のカテゴリー分布はIL-2の分布とは無関係であった(p=0.73)。
sTNFR1濃度がカットオフ値II以下の患者にとってベースラインのIL-2濃度が高いことが有益であり(p=0.0058、
図4B)、sTNFR1濃度がカットオフ値IIを超える患者(p=0.81、
図4C)では有益でなかった。
【0057】
すなわち、寛解が維持されている関節リウマチ患者において、ベースラインの血漿中sTNFR1濃度が1267.8pg/mL以下、かつ血漿中IL-2濃度が0.06287pg/mLより大きい場合に、80%以上患者で、投薬治療の中止後2年間以上の寛解が持続することが分かった(
図4B)。
【0058】
図4に示す結果に加えて、TNF阻害剤を中止した患者の感度分析(n=26)により、カットオフ値を超えるsTNFR1の患者の83.3%(12のうち10)で関節リウマチの再燃が観察された。これは、sTNFR1がカットオフ値を下回る患者の再燃率28.6%(14のうち4)を大幅に上回っていた(p=0.0079)。
【0059】
次に、前記IL-2についてのカットオフ値を、0.050pg/mL(カットオフ値III)として、カプラン・マイヤー分析を行ったところ、カットオフ値Iとしたときと同様に、ベースラインの低いIL-2濃度と、その後の疾患再燃とが関連することが示された(p=0.021、
図5)。
【0060】
また、前記sTNFR1についてのカットオフ値を、1300pg/mL(カットオフ値IV)として、カプラン・マイヤー分析を行ったところ、カットオフ値IIとしたときと同様に、ベースラインの高いsTNFR1濃度がその後の疾患再燃と関連することが示された(p=0.0025、
図6A)。
【0061】
sTNFR1濃度がカットオフ値IV以下の患者にとってベースラインのIL-2濃度が高いことが有益であり(p=0.0011、
図6B)、sTNFR1濃度がカットオフ値IIを超える患者(p=0.50、
図6C)では有益でなかった。
【0062】
すなわち、寛解が維持されている関節リウマチ患者において、ベースラインの血漿中sTNFR1濃度が1300pg/mL以下、かつ血漿中IL-2濃度が0.050pg/mLより大きい場合に、約80%の患者で、投薬治療の中止後2年間以上の寛解が持続することが分かった(
図6B)。
【0063】
以上より、関節リウマチの寛解を達成した患者における投薬治療中止後の寛解持続が、血漿中sTNFR1濃度と、血漿中IL-2濃度とを組み合わせたバイオマーカー指標を用いることにより、高い信頼性で予測できることが分かった。
【0064】
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> 投薬治療により寛解が維持されている関節リウマチ患者における、血漿中sTNFR1濃度と、血漿中IL-2濃度と、を測定する工程と、前記血漿中sTNFR1濃度が1300pg/mL以下、かつ前記血漿中IL-2濃度が0.050pg/mLより大きい場合に、前記関節リウマチ患者の寛解が、前記投薬治療の中止後に持続されると評価する工程と、を含むことを特徴とする、関節リウマチの寛解持続予測方法である。
<2> 前記血漿中sTNFR1濃度を高感度ELISA法で測定する、前記<1>に記載の関節リウマチの寛解状態持続予測方法である。
<3> 前記血漿中IL-2濃度を高感度ELISA法で測定する、前記<1>から<2>のいずれかに記載の関節リウマチの寛解状態持続予測方法である。
<4> 前記投薬治療が、生物学的製剤による投薬治療である、前記<1>から<3>のいずれかに記載の関節リウマチの寛解状態持続予測方法である。
<5> 前記生物学的製剤が、アダリムマブ、セルトリズマブ、エタネルセプト、ゴリムマブ、インフリキシマブ、アバタセプト、及びトシリズマブから選択される少なくとも何れかである、前記<4>に記載の関節リウマチの寛解状態持続予測方法である。
<6> 投薬治療により寛解が維持されている関節リウマチ患者における、血漿中sTNFR1濃度と、血漿中IL-2濃度と、を測定する手段と、前記血漿中sTNFR1濃度が1300pg/mL以下、かつ前記血漿中IL-2濃度が0.050pg/mLより大きい場合に、前記関節リウマチ患者の寛解が、前記投薬治療の中止後に持続されると評価する手段と、を含むことを特徴とする、関節リウマチの寛解持続予測装置である。
<7> 前記血漿中sTNFR1濃度を高感度ELISA法で測定する、前記<6>に記載の関節リウマチの寛解持続予測装置である。
<8> 前記血漿中IL-2濃度を高感度ELISA法で測定する、前記<6>から<7>のいずれかに記載の関節リウマチの寛解持続予測装置である。
<9> 前記投薬治療が、生物学的製剤による投薬治療である、前記<6>から<8>のいずれかに記載の関節リウマチの寛解持続予測装置である。
<10> 前記生物学的製剤が、アダリムマブ、セルトリズマブ、エタネルセプト、ゴリムマブ、インフリキシマブ、アバタセプト、及びトシリズマブから選択される少なくとも何れかである、前記<9>に記載の関節リウマチの寛解持続予測装置である。