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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】センサユニットおよびセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/12 20060101AFI20240626BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
G01L1/12
G01L5/00 101Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020126857
(22)【出願日】2020-07-27
(65)【公開番号】P2022023720
(43)【公開日】2022-02-08
【審査請求日】2023-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(72)【発明者】
【氏名】ヨーク フロメル
(72)【発明者】
【氏名】室山 真徳
(72)【発明者】
【氏名】ジルダス ディゲ
(72)【発明者】
【氏名】大▲高▼ 剛一
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-515900(JP,A)
【文献】特開2019-002905(JP,A)
【文献】特開2015-224903(JP,A)
【文献】特開2008-107323(JP,A)
【文献】特開平06-288844(JP,A)
【文献】特開平06-201502(JP,A)
【文献】特開昭59-018430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00 - 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準面に対して垂直な方向である第1方向に突出する複数の凸部を有する連続した磁歪膜と、前記複数の凸部のそれぞれの両端に配置されたコンタクトと、を備え、
前記コンタクトに接続され、前記複数の凸部それぞれのインピーダンスを少なくとも一つ測定するセンサ信号処理回路を有し、
前記複数の凸部のそれぞれがセンサである、センサユニット。
【請求項2】
前記複数の凸部のうち少なくとも一つの凸部において、前記磁歪膜の裏面と前記基準面との間に充填された絶縁体をさらに備える、請求項1に記載のセンサユニット。
【請求項3】
前記絶縁体を備える凸部は、前記第1方向から平面視した際の最小幅が1mm以下である、請求項2に記載のセンサユニット。
【請求項4】
前記絶縁体を備える凸部のうち少なくとも一つの凸部は、前記基準面に沿った第2方向の長さと、前記基準面に沿った方向であり前記第2方向と直交する第3方向の長さと、が異なる、請求項2または3に記載のセンサユニット。
【請求項5】
前記複数の凸部のうち少なくとも一つの凸部は、前記磁歪膜の裏面と前記基準面との間に空間を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のセンサユニット。
【請求項6】
前記複数の凸部のうちの少なくとも一つの凸部は、前記磁歪膜を貫通する孔を有する、請求項5に記載のセンサユニット。
【請求項7】
前記複数の凸部のうち前記磁歪膜の裏面と前記基準面との間に充填された絶縁体を備える凸部を第1凸部とし、
前記複数の凸部のうち前記磁歪膜の裏面と前記基準面との間に空間を有し、前記磁歪膜を貫通する孔を有する凸部を第2凸部とし、
前記複数の凸部のうち前記磁歪膜の裏面と前記基準面との間に空間を有し、前記磁歪膜を貫通する孔を有さない凸部を第3凸部とし、
前記第1凸部の前記第1方向の高さは、前記第2凸部および前記第3凸部の前記第1方向の高さより高い、請求項1~6のいずれか一項に記載のセンサユニット。
【請求項8】
前記磁歪膜は、非晶質物質である、請求項1~7のいずれか一項に記載のセンサユニット。
【請求項9】
前記基準面の少なくとも一部を形成する回路基板をさらに備える、請求項1~8のいずれか一項に記載のセンサユニット。
【請求項10】
前記回路基板のヤング率は、3GPa以下である、請求項9に記載のセンサユニット。
【請求項11】
基準面に対して垂直な方向である第1方向に突出した凸部を有する磁歪膜と、前記凸部の両端に配置されたコンタクトと、を備え、
前記コンタクトに接続され、前記凸部のインピーダンスを測定するセンサ信号処理回路を有する、センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサユニットおよびセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
生産労働人口の減少や医療・介護/介助現場での担い手不足の問題を解決するためにロボットの導入が進んでいる。今後ロボットがヒトと同じように複雑な作業ができるようにロボットにセンサを高密度に実装して高度な感覚を持たせることが望まれている。ロボット用センサでは、LSI(Large-Scale Integrated cir-cuit;大規模集積回路)技術を基礎としたビジョンセンサの発達は目覚ましく、ヒトをしのぐ機能/性能の目を持つロボットの開発が進んでいる。
【0003】
ロボットがヒトと同様の作業をするためには、視覚以外の感覚、例えば力覚、圧覚、温覚、冷覚などのセンサをロボットが持つことが重要である。物体に作用する力や加速度、空間圧力、音響などを測定するセンサとして様々なセンサが提案されている。中でもシリコンを材料としてMEMS(Micro Electro Mechanical Systems;微小電気機械システム)技術を用いた小型で高感度なセンサ(加速度センサ、圧力センサ、音響センサ)の開発が進んでいる。
【0004】
特許文献1には、基板と基板上に導体層と磁歪材料とからなる磁性層が積層形成された歪検出素子が開示されている。特許文献1の歪検出素子は、外部から加わる力による歪みをインピーダンス変化として検出すると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-356505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の歪検出素子では、外部からの力の向きによっては、印加された力を十分検出することができなかった。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、外部から加わる様々な向きの力を検出することのできるセンサユニットおよびセンサを提供することを目的とする。また、1つの素子で様々な情報を得ることのできるセンサユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、基準面に対して第1方向に対して突出した磁歪膜を用いることで、様々な向きの力を検出できることを見出した。すなわち、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0009】
(1)本発明の一態様に係るセンサユニットは、基準面に対して垂直な方向である第1方向に突出する複数の凸部を有する連続した磁歪膜と、前記凸部の両端に配置されたコンタクトと、を備え、前記コンタクトに接続され、前記複数の凸部それぞれのインピーダンスを少なくとも一つ測定するセンサ信号処理回路を有し、前記複数の凸部のそれぞれがセンサである。
【0010】
(2)上記態様に係るセンサユニットの前記複数の凸部のうち少なくとも一つの凸部において、前記磁歪膜の裏面と前記基準面との間に充填された絶縁体をさらに備えてもよい。
【0011】
(3)上記態様に係るセンサユニットにおいて、前記絶縁体を備える凸部は、前記第1方向から平面視した際の最小幅が1mm以下であってもよい。
【0012】
(4)上記態様に係るセンサユニットにおいて、前記絶縁体を備える凸部のうち少なくとも一つの凸部は、前記基準面に沿った第2方向の長さと、前記基準面に沿った方向であり前記第2方向と直交する第3方向の長さと、が異なっていてもよい。
【0013】
(5)上記態様に係るセンサユニットにおいて、前記複数の凸部のうち少なくとも一つの凸部は、前記磁歪膜の裏面と前記基準面との間に空間を有してもよい。
【0014】
(6)上記態様に係るセンサユニットにおいて、前記複数の凸部のうちの少なくとも一つの凸部は、前記磁歪膜を貫通する孔を有してもよい。
【0015】
(7)上記態様に係るセンサユニットは、前記複数の凸部のうち前記磁歪膜の裏面と前記基準面との間に充填された絶縁体を備える凸部を第1凸部とし、前記複数の凸部のうち前記磁歪膜の裏面と前記基準面との間に空間を有し、前記磁歪膜を貫通する孔を有する凸部を第2凸部とし、前記複数の凸部のうち前記磁歪膜の裏面と前記基準面との間に空間を有し、前記磁歪膜を貫通する孔を有さない凸部を第3凸部とし、前記第1凸部の前記第1方向の高さは、前記第2凸部および前記第3凸部の前記第1方向の高さより高くてもよい。
【0016】
(8)上記態様に係るセンサユニットにおいて前記磁歪膜は、非晶質物質であってもよい。
【0017】
(9)上記態様に係るセンサユニットは、前記基準面の少なくとも一部を形成する回路基板をさらに備えてもよい。
【0018】
(10)上記態様に係るセンサユニットは、前記回路基板のヤング率は、3GPa以下であってもよい。
【0019】
(11)本発明の第2の態様に係るセンサは、基準面に対して垂直な方向である第1方向に突出した凸部を有する磁歪膜と、前記凸部の両端に配置されたコンタクトと、を備え、前記コンタクトに接続され、前記凸部のインピーダンスを測定するセンサ信号処理回路を有する。
【発明の効果】
【0020】
上記態様に係るセンサユニットおよびセンサによれば、外部から加わる様々な向きの力を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態に係るセンサユニットの斜視模式図である。
図2】第1実施形態に係るセンサユニットの断面模式図である。
図3】比較例に係るセンサユニットを模式的に示す概略図である。
図4図3(a)に示すセンサユニットにおいて力F1と磁歪膜との相関を示すグラフである。
図5】本実施形態に係るセンサユニットの特徴部を示す模式図である。
図6】本実施形態に係るセンサユニットの読出しを行う回路の概略図である。
図7】第1変形例に係るセンサユニットにおけるセンサの配置の一例を示す上面図である。
図8】第2変形例に係るセンサユニットの配置を示す上面図である。
図9】第3変形例に係るセンサユニットの断面模式図である。
図10】本実施形態に係るセンサユニットの製造方法の一例を説明するための図であり、製造方法の前半の過程を示す図である。
図11】本実施形態に係るセンサユニットの製造方法の一例を説明するための図であり、製造方法の後半の過程を示す図である。
図12】本実施形態に係るセンサユニットを備えたロボットアームの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法、配置、数、数値、構成等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0023】
まず方向について定義する。z方向は、後述する回路基板20に対して磁歪膜が積層する積層方向である(図1参照)。z方向は、第1方向の一例である。x方向およびy方向は、z方向に対して垂直な方向である。図1においては、後述する回路基板20の一面と略平行な方向である。x方向とy方向とは、垂直に交わる。
【0024】
[センサユニット]
図1は第1実施形態に係るセンサユニット100の要部を拡大した斜視模式図である。図2はセンサユニット100の断面を模式的に示す断面模式図である。センサユニット100は、回路基板20と磁歪膜10とを備える。磁歪膜10は、回路基板20上に積層される。
【0025】
磁歪膜10は、ビラリ効果を示すアモルファス磁性合金薄膜等の磁性材料を含む。アモルファス磁性合金薄膜は、例えば、軟磁性特性を示す鉄系アモルファス合金、コバルト系アモルファス合金の薄膜である。鉄系アモルファス合金は、例えば、Fe-Si-B、Fe-Si-B-Pである。コバルト系アモルファス合金は、例えば、Co-Si-B、Co-Si-B-P、Fe-Co-B、Fe-Co-B-Pである。これらの磁性材料は、ゲージ係数が高く、センサユニットの感度が高まる。ゲージ係数は、ストレスインピーダンス効果の指標である。
【0026】
アモルファス合金は、引張強度が高い。アモルファス合金を磁歪膜10に用いると、磁歪膜10が立体構造等の複雑な形状であっても、壊れにくくなる。また、アモルファス合金の磁歪膜10は、スパッタなどで製造可能であるため、容易に製造できる。
【0027】
磁歪膜10の厚さTは、例えば0.5μm以上10μm以下である。
【0028】
磁歪膜10は、基準面RPに対して第1方向に突出する複数の凸部1a、1b、2、3を有する連続した磁歪膜である。図1においては、複数の凸部1a、1b、2、3は、連続する磁歪膜10から基準面RPに対してz方向に突出する。ここで基準面RPは、例えば、回路基板20のz方向における主面である。x方向およびy方向は、基準面に沿った方向である。回路基板20が図1のように平坦である場合、基準面RPも平坦な面だが、回路基板が曲げられた立体構造の場合、基準面RPは回路基板20に沿って曲げられている。
【0029】
磁歪膜10は、表面10aと裏面10bとを有する。裏面10bは、磁歪膜10の面のうち、基準面RPに近い面である。
【0030】
以下では、説明の便宜上、凸部1a、1bを「第1凸部」と称し、凸部2を「第2凸部」と称し、凸部3を「第3凸部」と称する場合がある。
【0031】
詳細については後述するが、第1凸部1a、1bは触覚センサとして機能し、第2凸部2は音響センサ(マイクロフォン)として機能し、第3凸部3は、圧力センサとして機能する。
【0032】
(第1凸部)
第1凸部1a、1bは、磁歪膜10の裏面10bと基準面RPとの間に絶縁体11を有する。
【0033】
第1凸部1aは、z方向からの平面視でx方向における長さとy方向における長さとが略均等である。第1凸部1aは、例えば、平面視形状が円形である。第1凸部1bは、z方向からの平面視でy方向における長さがx方向における長さよりも長い。第1凸部1bは、例えば、平面視形状が楕円、オーバルである。x方向は第2方向の一例であり、y方向は第3方向の一例である。センサユニット100は、第1凸部1a又は第1凸部1bのみでもよいが、第1凸部1aと第1凸部1bを共に有することが好ましい。
【0034】
第1凸部1bは、例えば、x方向の長さとy方向の長さとが異なる。第1凸部1bは、y方向に長い形状をしている。このような第1凸部1bは、外部から力が加わる方向により絶縁体11からの反力が異なる。例えば、x方向から印加された力に対する反力と、y方向から印加された力に対する反力とが異なる。その結果、第1凸部1bは、外部からの力の方向による大きさの違いを読み取れる。
【0035】
z方向からの平面視における第1凸部1a、1bの最小幅は、例えば1mm以下である。すなわち、図2が第1凸部1a、1bのz方向からの平面視で中心および重心を通る場合、第1凸部1a、1bの幅w1a、w1bは、1mm以下である。このような幅にすることで、センサユニット100における第1凸部1a、1bの密度をヒトの皮膚における感覚点の密度と同等またはそれ以上にすることも可能である。
【0036】
第1凸部1a、1bのz方向における高さは、z方向に垂直な方向における最小幅よりも小さいことが好ましい。すなわち、第1凸部1aのz方向における基準面RPからの高さh1aは、例えば幅w1a以下であり、第1凸部1bのz方向における基準面RPからの高さh1bは、例えば幅w1b以下であることが好ましい。尚、図2では高さh1aが高さh1bよりも高い場合を例示したが、この例に限定されず、高さh1bが高さh1aよりも高くてもよい。
【0037】
(絶縁体)
絶縁体11は、裏面10bと少なくとも一部で接する。絶縁体11は、基準面RPと第1凸部1a、1bに対応する裏面10bとの間に位置する。絶縁体11は、基準面RPと第1凸部1a、1bに対応する磁歪膜10の裏面10bとの間を充填している。すなわち絶縁体11は、磁歪膜10と回路基板20とに密着して配置される。絶縁体11の形状は、例えば、基準面RPと第1凸部1a、1bとで囲まれた領域の形状に対応する。
【0038】
絶縁体11は、触覚センサの触り心地に大きな影響を与える要素である。なぜなら、絶縁体11は、薄い磁歪膜10に密着しているためである。絶縁体11の材料は、第1凸部1a、1bの硬さ(触り心地)が例えばヒトの皮膚と同様な硬さとなるように選択されることが好ましい。具体的には、絶縁体11の材料は、ヤング率が1×103Pa~5×106Paの範囲であることが好ましい。このような絶縁体11の材料としては、例えばPDMS(ポリジメチルシロキサン)等が挙げられる。
【0039】
詳細については後述するが、上述の通り第1凸部1a、1bは、絶縁体11を備えており、外部より力が作用すると絶縁体11からの反力が生じる。絶縁体11からの反力により磁歪膜10に応力が作用し、磁歪膜10が歪むことで第1凸部1a、1bのインピーダンスが変化する。磁歪膜10のインピーダンスを測定することで、第1凸部1a、1bは作用した力を検出する触覚センサとして機能する。
【0040】
(第2凸部)
第2凸部2は、磁歪膜10の裏面10bと基準面RPとの間に空間Rを有する。空間Rは、基準面RPに沿って形成されている。
【0041】
第2凸部2は、磁歪膜10を貫通する少なくとも1つの貫通孔Hを有する。貫通孔Hの数は、2つ以上であってもよい。
【0042】
z方向からの平面視における第2凸部2の形状は問わない。第2凸部2は、例えば、z方向からの平面視形状が円形である。z方向からの平面視における第2凸部2の幅wは、例えば0.5mm以上5mm以下である。空間Rの高さhR2は、大きいことが好ましく、例えば2mm以上であることが好ましい。一方、第2凸部2は、第1凸部1a、1bの少なくとも一方を備えるセンサユニットに備えられる場合、強度の観点から例えば第2凸部2のz方向における基準面RPからの高さhは、第1凸部1aの高さh1a、および第1凸部1bの高さh1bよりも低くなるように設計される。
【0043】
詳細については後述するが、空間Rは貫通孔Hにより外部とつながった空間であり、そのため、通常は外部圧力による応力は磁歪材料に作用しない。音響波の作用により第2凸部2の外部の圧力が変化すると、圧力の変化に応じて磁性材料が振動し、第2凸部2に応力変化が作用する。このとき、ストレスインピーダンス効果により、第2凸部2のインピーダンスが変化する。従って、第2凸部2はインピーダンスを測定することにより、音響センサ(マイクロフォン)として機能する。
【0044】
(第3凸部)
第3凸部3は、磁歪膜10の裏面10bと、基準面RPとの間に空間Rを有する。空間Rは基準面RPに沿って密閉されている。
【0045】
z方向からの平面視における第3凸部3の形状は問わない。第3凸部3は、例えば、z方向からの平面視形状が円形である。z方向からの平面視における第3凸部3の幅wは、例えば0.5mm以上5mm以下である。空間Rの高さhR3は、大きいことが好ましく、例えば1mm以上であることが好ましい。一方、第3凸部3は、第1凸部1a、1bの少なくとも一方を備えるセンサユニットに備えられる場合、第3凸部3のz方向における基準面RPからの高さhは、例えば第1凸部1aの高さh1a、および第1凸部1bの高さh1bよりも低くなるように設計される。尚、図2では高さhが高さhよりも高い場合を例示したが、この例に限定されず、高さhが高さhよりも高くてもよい。
【0046】
詳細については後述するが、上述の通り空間Rは密閉空間であり、空間Rの内の圧力と外部圧力との圧力差に対応する圧力が第3凸部3の磁性材料に作用し、磁性材料が歪み、第3凸部3のインピーダンスが変化する。従って、第3凸部3はインピーダンスを測定することで圧力センサとして機能する。
【0047】
(コンタクト)
コンタクトは、複数の凸部1a、1b、2、3のそれぞれの所定の方向における両端に位置する。センサユニット100は、それぞれの凸部の両端に配置されたコンタクトに後述するセンサ信号処理回路を接続して、それぞれの凸部のインピーダンスを測定する。例えば、図2に示す構成では、コンタクトC1a1およびC1a2、コンタクトC1b1およびC1b2、コンタクトC31およびC32、ならびにコンタクトC21およびC22は、センサ信号処理回路に接続する。センサユニット100は、センサ信号処理回路によりそれぞれ第1凸部1a、第1凸部1b、第3凸部3、第2凸部2のインピーダンスを測定する。
以下、コンタクトC1a1、C1a2、C1b1、C1b2、C31、C32、C21およびC22を総称してコンタクトCと称する。
【0048】
(回路基板)
回路基板20は、基準面RPの少なくとも一部を形成する。回路基板20は、磁歪膜10のうち裏面10bに近い側に位置する。回路基板20は、センサ信号処理回路の少なくとも一部を有する基板である。回路基板20内にセンサ信号処理回路の全体が形成されていてもよい。ここで、センサ信号処理回路は、複数の凸部のそれぞれのコンタクトCと交流回路とを接続し、複数の凸部1a、1b、2、3のそれぞれのインピーダンス読み出す回路である。
【0049】
回路基板20としては、図1および図2に示されるような平坦な基板を用いてもよいが、本実施形態のセンサユニットは、フレキシブル基板などの柔軟な基板を用いることが好ましい。センサユニットとしては、例えばヤング率が3GPa以下の基板を用いることが好ましい。このような柔軟な基板を回路基板20として用いることで、センサユニット100を幅広い分野で活用できる。
【0050】
図1および2では、第1凸部1a、1b、第2凸部2および第3凸部3を有するセンサユニット100を例示したが、本実施形態に係るセンサユニット100は、複数の凸部を備えていればよく、この例に限定されない。
【0051】
また図1および図2では、複数の凸部1a、1b、2、3の形状がドーム状である(断面形状が円弧状である)例を示したが、複数の凸部1a、1b、2、3の形状はこの例に限定されない。例えば、複数の凸部1a、1b、2、3の形状は、多面体形状の一部であってもよく、断面形状が非対称であってもよく、すべり方向に対して垂直になるように傾斜させてもよい。その他、磁歪膜10の表面の微細形状を変化させ、すべりに対する感度を向上させてもよい。
また、図1および図2では、絶縁体11が第1凸部1a、1bに対応する位置において裏面10bと基準面RPとの間を充填する例を示したが、本実施形態に係るセンサユニットはこの例に限定されない。絶縁体11は、第1凸部1a、1bに対応する位置において裏面10bに密着していればよく、裏面10bと基準面RPとの間を充填する構成でなくてもよい。
【0052】
磁歪膜10の膜厚Tは、上記例に限定されない。磁歪膜10の膜厚Tは、フレキシブルな基板に対応する観点、製造に係るスループットの観点および経済的な観点から薄い程好ましい。一方、磁歪膜10の膜厚は、強度の観点から厚みを有することが好ましい。磁歪膜10の膜厚Tは、センサの感度や経済的な問題を考慮して任意に選択される。また磁歪膜10の応力に対する感度を妨げない範囲で、他の材料を磁歪膜10の表面の所定の位置に密着して成膜してもよい。他の材料を磁歪膜10の表面10aに密着して成膜することで摩擦係数を変えることで、材料によってはすべりに対する感度を向上させられる。磁歪膜10の表面10aに成膜する材料としては、例えばSiO膜や有機パリレン膜等がある。これらの材料は、例えばプラズマCVDで成膜される。
【0053】
本実施形態では、説明の便宜上、図1に示すような少数の凸部を有するセンサユニット100を例示して説明したが、本実施形態に係るセンサユニットはこの例に限定されない。本実施形態に係るセンサユニットは、図1に示すような構成が多数並べて配置されたものであってもよい。尚、第2凸部2および第3凸部3を1つずつ備え、他の領域を第1凸部1a、1bで敷き詰められた単位センサユニットは、例えばz方向からの平面視で5mm×5mmm、5mm×10mmおよび10mm×10mm程度にできる。
【0054】
<センサユニットの動作>
本実施形態に係るセンサユニット100は、外部から加わる様々な向きの力を検出できる。また、センサユニット100は様々な感覚をセンシングできる。
以下にセンサユニット100の動作原理について説明する。
【0055】
センサユニット100のそれぞれのセンサは、ストレスインピーダンス効果(SI効果)を利用するセンサである。ストレスインピーダンス効果は、磁性材料に力が加わると生じる。ストレスインピーダンス効果は、ビラリ効果と、導体の表皮効果によるインピーダンス変化が透磁率変化の影響を受けることで生じる。
【0056】
具体的には、センサに応力が作用すると、表面の磁歪膜が歪む。磁歪膜は、歪むと、ビラリ効果により、透磁率が変化する。下記(1)式は、ビラリ効果を示す式である。下記(1)式は、真空の透磁率をμとし、磁気異方性定数K、飽和磁化M、飽和磁歪λS、ヤング率Eの磁歪膜が応力により(Δl/l)だけ歪んだときの磁歪膜の透磁率μを示す。
【0057】
【数1】
【0058】
下記(2)式は、表皮効果を示す式である。下記(2)式は、周波数ωの電流を、電気抵抗率がρの導体に電流を流した時に電流の流れる深さ(表皮深さ)δを示す。
【0059】
【数2】
【0060】
上記(1)式より、透磁率μは、ビラリ効果により磁性材料が受ける応力に依存することが確認される。また上記(2)式より、表皮深さδは、磁歪膜の透磁率μに依存することが確認される。表皮深さδが変化すると、導体のインピーダンスが変化する。従って、磁歪膜に加わる応力が変化すると、磁歪膜のインピーダンスが変化する。そのため、磁歪膜のインピーダンスを測定することで、応力の大きさを検出でき、力センサとして用いられる。
【0061】
図3は、比較例に係る力センサの要部の一例である。図3(a)に示す力センサは、磁歪膜10´と磁歪膜10´中に形成されたコンタクトC´、C´およびコンタクトC´、C´と接続し、コンタクトC´、C´間のインピーダンスを測定できる構成を含む交流回路を有する。
【0062】
図3(a)に示す力センサであっても、力F1のようなz方向に平行な力を検出できる。図4は、力F1の強さとインピーダンスZとの相関を示すグラフである。一方、図3(a)に示す力センサでは力F2のようなx方向成分を有する力を正確に検出できない。また力F3のようなz方向に対し垂直な力を検出することができない。
【0063】
また図3(b)に示す力センサは、特許文献1(特開2000-356505号公報)のような歪み検出素子に用いられる力センサである。図3(b)に示す力センサは、外部歪みを検知する基板1hと、基板1h上に積層された磁性材料2hと導体層3hと磁性材料4hとからなる磁性層と、電極パッド部5hと、を有する。特許文献1によると、基板1hの端に与えられた歪は、磁性層に伝達され、インピーダンス変化を引き起こしていると開示されている。
【0064】
図3(b)に示す力センサは、力F2や力F3のような力を正確に検出することはできない。
【0065】
これに対し、図5は本実施形態に含まれる力センサの要部の一例である。図5に示す力センサは、触覚センサ1aから絶縁体11を取り除いた構成を有し、磁歪膜がxy平面に対しz方向に突出する凸部を有する。すなわち、力の作用する方向に対して凸な立体形状を有する。そのため、力F1のようなz方向に平行な力だけでなく、力F2のようなx方向成分を有する力や、力F3のようなz方向に対し垂直な力であっても正確に検出できる。すなわち、センサの形状を基準面に対して第1方向に突出する構造(凸構造)にすると、基準面に平行な力等、平たい構造では検出できないあらゆる方向の力を正確に検出できる。
【0066】
また力センサの原理を活用することで、触覚センサ、圧力センサ、音響センサ(マイクロフォン)として活用することができる。
【0067】
(触覚センサの動作)
触覚センサの例としては、第1凸部1a、1bが挙げられる。触覚センサの磁歪材料と外部の物体とが接触すると、外部より触覚センサに力が作用する。触覚センサに力が作用すると、絶縁体11からの反力が生じる。すなわち磁性材料に応力が作用し歪む。従って、ストレスインピーダンス効果により、磁性材料のインピーダンスが変化する。磁性材料のインピーダンスと外力との相関を事前に把握しておき、測定したインピーダンスと比較することで、触覚センサは作用した力を検出できる。
【0068】
尚、ここで触覚センサは基準面に対し第1方向に突出する立体構造をしており、面内方向の大きさは微小である。そのため、その触覚センサに加わった力は、触覚センサの凸構造である表面の微小面に対し垂直に加わったとみなすことができる。特に第1凸部1aのようなx方向とy方向との大きさが等しいセンサである場合、外部より作用する力の向きは、その触覚センサの表面に対し垂直である蓋然性が高い。
【0069】
第1凸部1bのようなx方向の長さとy方向の長さとが異なる触覚センサに対し、z方向から傾斜した力が作用すると、絶縁体11から磁性材料へ、方向により大きさの異なる反力が生じる。従って、第1凸部1bのような触覚センサは方向の分解能が高い。
【0070】
(圧力センサの動作)
圧力センサの例としては、第3凸部3が挙げられる。圧力センサの磁歪材料には、外部の圧力および圧力センサの磁歪材料と基準面との間の空間の圧力が反対方向に生じる。すなわち、外部の圧力と内部空間の圧力との圧力差に相当する応力が圧力センサの磁歪材料に作用し、磁歪材料が歪む。従って、ストレスインピーダンス効果により、磁歪材料のインピーダンスが変化する。磁歪材料のインピーダンスと圧力との相関を事前に把握しておき、測定したインピーダンスと比較することで、圧力センサは外部圧力を検知できる。圧力センサの磁歪材料と基準面との間の空間が概真空の場合、圧力センサは気圧計として動作する。
【0071】
(音響センサの動作)
音響センサの例としては、第2凸部2が挙げられる。音響波の作用により第2凸部2の外部の圧力が変化すると、磁歪材料が振動し、第2凸部2に応力変化が作用する。第2凸部2は、応力変化に伴い歪みの仕方が変化する。従って、ストレスインピーダンス効果により、第2凸部2のインピーダンスが変化する。このインピーダンスの変化を測定することで、音響センサは、音を検知できる。
【0072】
(センサユニットの読出し)
図6は、センサユニットを読み出すセンサ信号処理回路の一例を模式的に示した図である。この例では、センサユニット100は、3×3のマトリックス配置をしている。
【0073】
センサ信号処理回路は、駆動回路と検知回路とを有する。駆動回路は、駆動配線La1~La3を有する。駆動配線La1~La3のそれぞれとセンサのそれぞれとは、コンタクトを介して電気的に接続する。検知回路は、検知配線Lb1~Lb3を有する。検知配線Lb1~Lb3とセンサのそれぞれとは、駆動配線La1~La3と接続していないコンタクトを介して電気的に接続する。
【0074】
センサ信号処理回路は、図示を省略する交流電源に接続している。このようなセンサ信号処理回路は、センサそれぞれのインピーダンスを測定できる。
【0075】
以上の原理より、センサユニット100は、外部から加わる様々な向きの力を検出できる。またセンサユニット100は、基準面に対して第1方向に突出する複数の凸部1a、1b、2、3を有する連続した磁歪膜10を備えることで、様々な感覚をセンシングできる。例えば、センサユニット100は触覚センサ、音響センサ、および圧力センサを備えており、様々な感覚をセンシングできる。
【0076】
一つの感覚をセンシングする独立したセンサを組み合わせて基板に実装する場合、読み取り方式やセンサ構造がそれぞれ異なるため、製造工程が複雑化する場合がある。本実施形態に係るセンサユニット100ではこのような課題を解決することもできる。
【0077】
また磁歪膜のインピーダンスは、温度や外部磁場との間に相関がある。そのため、本実施形態に係るセンサユニット100は、インピーダンスと温度との相関や、インピーダンスと外部磁場との相関を事前に把握しておくことで、温度や外部磁場といった感覚もセンシングできる。すなわち、本実施形態に係るセンサユニット100は、触覚センサ、圧力センサおよび音響センサに加え、温度センサや磁場センサを備えることもできる。
【0078】
<第1変形例>
次に、実施形態の第1変形例について説明する。
図7(a)は、第1実施形態の第1変形例に係るセンサユニットの平面模式図である。第1変形例に係るセンサユニット101は、複数の凸部1aおよび1bからなる点が図1に示すセンサユニット100と異なる。センサユニット101は、複数の凸部を備えていれば同一の種類の凸部からなっていてもよい。第1実施形態と同じ構成は、同じ符号を付し説明を省略する。
【0079】
センサユニット101は、第1凸部1aが複数の第1凸部1bに囲まれた配置をしている。複数の第1凸部1bは、z方向からの平面視における長軸方向がx方向のものと長軸方向がy方向のものとがある。長軸方向がx方向の第1凸部1bと長軸方向がy方向の第1凸部1bとは、隣接して配置されている。
【0080】
センサユニット101であっても、センサユニット100の触覚センサに関する効果と同様な効果を得られる。またセンサユニット101では、さらに触覚センサの方向および位置ごとの応力の分解能や強度を高めることができる。
【0081】
第1変形例における複数の凸部の種類および配置は、図に示す例に限定されない。例えば複数の第2凸部や第3凸部が並ぶ配置であってもよく、複数の第1凸部1aのみが並ぶ構成や複数の第1凸部1bのみが並ぶ構成であってもよい。その他、センサユニットは図7(b)に平面模式図を示すような配置であってもよい。
【0082】
図7(b)に示すセンサユニット101´は、第1凸部1bがヒトの指紋の様に並列に繰り返して配置される。具体的には、センサユニット101´において、長手方向が同じである複数の第1凸部1bは、長手方向に対して垂直に並ぶ。例えば、領域Axに位置する第1凸部1bは長手方向がy方向であり、x方向に並列に配置され、領域Ayに位置する第1凸部1bは長手方向がx方向であり、y方向に並列に配置される。
【0083】
センサユニット101´であっても、センサユニット101と同様な効果を得られる。また、領域Axではすべり方向がx方向である場合の感度を向上でき、領域Ayではy方向である場合の感度を向上できる。センサユニット101´は、図示した例に限定されない。全体が領域Axとなる構成や全体などであってもよく、第1凸部1bが三日月型の形状などのように歪んだ形状であってもよい。
【0084】
<第2変形例>
次に、実施形態の第2変形例について説明する。
図8は、第1実施形態の第2変形例に係るセンサユニットの平面模式図である。第2変形例に係るセンサユニット102は、第2凸部2と第3凸部3とが隣接していない点が図1に示すセンサユニット100と異なる。
【0085】
センサユニット102では、第2凸部2と第3凸部3との間に第1凸部1a、1bを有する。また、第2凸部2および第3凸部3のそれぞれは、z方向からの平面視で第1凸部に囲まれた配置をしている。
【0086】
センサユニット102であっても、センサユニット100と同様な効果を得られる。センサユニット102は、センサユニット100のような配置と比べ、面内方向に満遍なく触覚センサとしての機能を得られる。また、センサユニット102は、センサユニット100と比べ強度が向上する。
【0087】
<第3変形例>
次に、実施形態の第3変形例について説明する。
図9は、第1実施形態の第3変形例に係るセンサユニットの断面模式図である。第3変形例に係るセンサユニット103は、回路基板20Aが局所的に凹構造となっている点が図2に示すセンサユニット100と異なる。
【0088】
センサユニット103において、回路基板20Aの第2凸部2A、第3凸部3Aに対応する位置は、基準面RPよりも深くなるように形成される。例えば、回路基板20Aが溝202、203を有する。溝202、203は、それぞれz方向からの平面視で第2凸部2A、第3凸部3Aと重なる。溝202により、空間Rの高さhR2は、高さhから磁歪膜10の厚さTを引いた高さよりも高い。同様に、空間Rの高さhR3は、高さhから磁歪膜10の厚さTを引いた高さよりも高い。
【0089】
溝202、203の形状は、例えば、y方向からの平面視における形状が半円形、矩形、多角形状である。
【0090】
センサユニット103であっても、センサユニット100と同様な効果を得られる。センサユニット103は高さh、hを高くすることなく、高さhR2、hR3を高くすることができる。すなわち、センサユニットの強度を保ちつつ、音響センサや圧力センサの感度を高められる。
【0091】
第3変形例における溝の位置は、図に示す例に限定されない。例えばz方向からの平面視で第2凸部2Aに重なる位置のみに溝202が形成されていてもよく、第3凸部3Aに重なる位置のみに溝203が形成されていてもよい。
【0092】
[センサユニットの製造方法]
本実施形態に係るセンサユニットは、例えば以下の方法により製造される。図10および図11は、本実施形態にかかるセンサユニットの製造方法を説明するための図である。図10は本実施形態に係るセンサユニットの製造方法の一例の前半の過程を示し、図11は本実施形態に係るセンサユニットの製造方法の一例の後半の過程を示す。尚、ここでいう製造方法の「前半」、「後半」とは説明の便宜上用いる用語であり、発明を限定するものではない。
【0093】
本実施形態に係るセンサユニットの製造方法は、複数の凹部を有するレジスト層に磁歪膜を形成する磁歪膜形成工程と、所望のセンサに応じて磁歪膜の凸部に絶縁材料を充填する、或いは貫通孔を形成する調整工程と、回路基板と磁歪膜とを電気的に接続させる電通工程と、を有する。
【0094】
より具体的な例としては、本実施形態に係るセンサユニットの製造方法は、基板S上にレジスト層Pを形成する第1工程と、レジスト層Pに所定の形状をした複数の凹部を形成する第2工程と、レジスト層Pに磁歪膜10´を形成する第3工程と、磁歪膜10´上の所定の位置に絶縁材料PDを形成する第4工程と、磁歪膜10´を貫通する孔Hを形成する第5工程と、磁歪膜10´の裏面10b´に接する不要な材料を除去する第6工程と、コンタクトC´を介して回路基板20´と磁歪膜10´とを電気的に接続させる第7工程と、磁歪膜10´の表面10a´の不要な材料を除去する第8工程と、を含む方法が挙げられる。
【0095】
(第1工程)
先ず、任意の基板S上に公知の方法でレジスト層Pを形成する。図10(a)および図10(b)は、それぞれ第1工程の前の様子および第1工程の後の様子を示す。レジスト層Pは、例えばポジ型のフォトレジスト層である。基板Sは、例えば、厚さ2mmのSi基板である。レジスト層Pの厚さは、例えば、1000μmとした。この基板Sおよびレジスト層Pは、後述する第5工程で除去されるため最終的なセンサユニット100´には含まれない。
【0096】
(第2工程)
次いで、レジスト層Pに所定の形状をした複数の凹部を形成する。レジスト層Pとしてポジ型のフォトレジスト層を第1工程で形成した場合、所定のポジパターンを露光し現像する。例えば、グレースケールリソグラフィーにより、フォトレジスト層Pに複数の凹形状のパターンを形成する。図10(c)は、第2工程の後の様子を示す。
【0097】
尚、第2工程で形成する凹部の形状は、完成したセンサユニットにおける磁歪膜の凸部の形状に対応する。それぞれの凹形状のz方向からの平面視における最小幅および深さは、例えば以下のように設計される。
触覚センサに対応する部分:最小幅500μm、深さ500μm
圧力センサに対応する部分:直径1500μm、深さ450μm
音響センサに対応する部分:直径1000μm、深さ450μm
【0098】
(第3工程)
次いで、レジスト層P上に磁歪膜10´を形成する。第3工程は、例えばスパッタ法により行う。図10(d)は、第3工程の後の様子を示す。磁歪膜10´としては、ストレスインピーダンス効果を示す任意の磁性材料が用いられ、アモルファス磁性合金が用いられることが好ましく、軟磁性のアモルファス磁性合金が用いられることが好ましい。磁歪膜10´は例えば、Fe79Si14である。磁歪膜10´の厚さは例えば1μmである。磁歪膜10´の形成は、例えばスパッタ法で行う。
【0099】
(第4工程)
次いで、第4工程を行う。第4工程では、磁歪膜10´の複数の凸部の少なくとも1つを含む領域に絶縁材料PDを形成する。絶縁材料PDは、例えば全体を平坦化するように形成される。図10(e)は、第4工程の後の様子を示す。
尚、触覚センサを含まないセンサユニットを製造する場合、必ずしも磁歪膜10´の凸部に絶縁材料を形成しなくてもよい。絶縁材料PDとしては、PDMS(ポリジメチルシロキサン)等が用いられる。
絶縁材料PDは、図10(e)に示すように磁歪膜10´が露出しないように全体に形成されてもよい。このような場合、絶縁材料PDの不要な箇所は後の工程で除去される。
【0100】
(第5工程)
次いで、磁歪膜10´を貫通する孔H´を形成する。
図10(e)に示すように第4工程で磁歪膜10´が露出しないように全体に絶縁材料PDを形成した場合、事前に磁歪膜10´に孔H´を形成する部分を露出させる必要がある。そのため、図10(f)に示すようにエッチングを行う前に所定の位置の絶縁材料PDを除去し、溝PDHをつくる。
孔H´は、例えばエッチングにより形成される。エッチングは、例えばイオンビームを照射する手法により行う。図11(a)は、第5工程の後の様子を示す図であり、図10(f)の次の図である。尚、第5工程で形成する孔H´は、音響センサの孔Hとなる。そのため、音響センサを含まないセンサユニットを製造する場合、第5工程は省略される。
【0101】
(第6工程)
次いで、磁歪膜10´の裏面10b´に接する不要な材料を除去する。図11(b)は、第6工程の後の様子を示す。不要な材料とは、例えば圧力センサ或いは音響センサとなる凸部に充填された絶縁材料PDおよびコンタクトC´を形成する位置に存在する絶縁材料PDである。コンタクトC´が形成される位置には空間PDCHが形成される。第6工程は、プラズマエッチングなど公知の方法で行う。
【0102】
(第7工程)
次いで、コンタクトC´を介して回路基板と磁歪膜10´とを電気的に接続させる。図11(c)は、コンタクトC´を有する回路基板20´を準備した様子を示す。図11(d)は、第7工程の後の様子を示す。尚、コンタクトC´は複数の凸部のそれぞれの間に配置される。
センサユニット103のような局所的に回路基板が凹んだセンサユニットを用いる場合、第7工程で局所的に凹んだ回路基板を用いる。
【0103】
(第8工程)
次いで、磁歪膜10´の表面10a´上の不要な材料を除去する。不要な材料とは、例えば表面10a´に堆積するレジスト層Pおよび基板Sである。図11(e)は、第8工程を行った後の様子を示す。第8工程は、例えばリフトオフプロセスの手法を用いる。
【0104】
このような手法により、図11(f)に示すセンサユニット100´が製造される。
【0105】
[適用例]
図12は、適用例に係るロボットアームの概略図である。図12に示すロボットアームでは、手や腕の表面にセンサユニットが実装されている。ロボットアームと回路基板20´とが接触しており、センサユニットは表面10aが露出するように配置される。
【0106】
ヒトの皮膚における触覚の感覚点の密度は、1cmあたり30個程である。そのためロボットアームでヒトと同等以上の感覚を得るためには、センサユニットにおける第1凸部1a、1bの密度をヒトの皮膚における触覚の感覚点と同等以上にすることが好ましい。このためには、上述の通り、第1点1a、1bのz方向からの平面視における最小幅を1mm以下にすることが好ましい。
【0107】
センサユニットを実装する部分は、図に示す例に限定されない。また、実装する部分によりセンサユニットにおけるセンサの種類および配置等は適宜選択される。例えば、指先の触覚センサの密度は他の部分よりも高くすることや、用途に応じて温度センサを備える構成にすること等が考えられる。本実施形態に係るセンサユニットは、凹凸した表面への実装も可能である。
【0108】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は特定の実施形態および変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0109】
1a:第1凸部(触覚センサ)
2:第2凸部(音響センサ)
3:第3凸部(圧力センサ)
10:磁歪膜
10a:磁歪膜の表面
10b:磁歪膜の裏面
11:絶縁体
20:基板
100、101、102:センサユニット
C:コンタクト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12