IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人鳥取大学の特許一覧

<>
  • 特許-無指向飛砂量計測装置 図1
  • 特許-無指向飛砂量計測装置 図2
  • 特許-無指向飛砂量計測装置 図3
  • 特許-無指向飛砂量計測装置 図4
  • 特許-無指向飛砂量計測装置 図5
  • 特許-無指向飛砂量計測装置 図6
  • 特許-無指向飛砂量計測装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】無指向飛砂量計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01W 1/00 20060101AFI20240626BHJP
   G01P 13/02 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
G01W1/00 Z
G01P13/02 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020192786
(22)【出願日】2020-11-19
(65)【公開番号】P2022081325
(43)【公開日】2022-05-31
【審査請求日】2023-11-03
(73)【特許権者】
【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
(74)【代理人】
【識別番号】100167645
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 一弘
(72)【発明者】
【氏名】劉 佳啓
(72)【発明者】
【氏名】木村 玲二
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102322898(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107966329(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106017849(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101995324(CN,A)
【文献】中国実用新案第208076231(CN,U)
【文献】中国実用新案第201765107(CN,U)
【文献】中国実用新案第201514418(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0168600(US,A1)
【文献】特開2017-172982(JP,A)
【文献】Alessandro Pozzebon et al.,A Wireless Sensor Network for the Real-Time Remote Measurement of Aeolian Sand Transport on Sandy Beaches and Dunes,Sensors 2018,2018年03月08日,Vol.18,No.3,pp.1-21,https://doi.org/10.3390/s18030820
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01W 1/00
G01P 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛砂量計測センサを鉛直方向に複数配置する飛砂検出部と、
基板上に回転可能に取り付けられた回転支持体上に載置された筐体に内蔵されたデータ記憶部と、
前記回転支持体を中心として前記飛砂検出部に対向して配置された風受け部と、
前記飛砂検出部、前記データ記憶部及び前記風受け部を同一平面状に保持して連結する連結部と、
からなる無指向飛砂量計測装置。
【請求項2】
前記飛砂検出部は、飛砂量計測センサ相互の間隔を任意に配置可能とすることを特徴とする請求項1に記載する無指向飛砂量計測装置。
【請求項3】
前記飛砂検出部は、飛砂量計測センサが飛砂衝突部にコーン型共振子を採用した圧電振動子であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載する無指向飛砂量計測装置。
【請求項4】
前記データ記憶部は、
前記飛砂検出部からの衝撃振動信号を増幅する信号増幅器と、
回転支持体の回転軸に沿って回動可能に配置されたポテンショメータからなる風向検出部と、
前記信号増幅器及び前記ポテンショメータの信号を保存するデータロガーと、
前記データロガーのデータを伝送する無線モデムと、
を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載する無指向飛砂量計測装置。
【請求項5】
前記風向検出部は、前記ポテンショメータを回転支持体の回転軸に沿って回動可能とすると共に、スリップリングを介して外部電源と接続されていることを特徴とする請求項4に記載する無指向飛砂量計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、海岸砂地における飛砂発生量を計測する飛砂量計測装置、特に、鉛直方向の飛砂量を全方位で計測できる無指向飛砂量計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乾燥地や海岸の風食により生じる飛砂は、乾燥地における砂漠化や、海岸に隣接する農地の土壌侵食及び道路への堆砂の原因になるなど、世界中で深刻な問題となっている。有効な飛砂の制御方法を開発するためには、地表面における飛砂の運動特性を詳細に計測することが重要である。特に、飛砂量の鉛直分布を計測することで、地表面の風食状態を物理的に把握することが可能となる。
しかしながら、野外観測で飛砂量計測手段は、トラップ型の補砂器を用いて飛砂量を計測するものである(特許文献1)。このため、個々の捕砂効率が異なり、一定量の捕砂に時間を要し、時間積算の飛砂量しか得られない等の理由から詳細な物理的現象の解明が妨げられるという問題がある。
【0003】
一方、飛砂量計測には、種々のデジタル計測機器が開発され(特許文献2)、風速変化に伴う飛砂状況の変化について経時的で詳細なデータの取得が可能となっている。
しかしながら、特定の方向の飛砂量しか計測できない、機材が高価であるため多点計測が実現できない、風洞実験と野外観測を併用できない等の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-308621号公報
【文献】特開平7-84066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、上記課題に鑑み、飛砂量の鉛直方向の多点計測をすることで、風洞実験と野外観測の併用を可能とし、風向の同時計測を行うことで、風向による飛砂量変化を計測可能とする無指向飛砂量計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の課題は、以下の態様により解決できる。具体的には、
【0007】
(態様1) 飛砂量計測センサを鉛直方向に複数配置する飛砂検出部と、基板上に回転可能に取り付けられた回転支持体上に載置された筐体に内蔵されたデータ記憶部と、前記回転支持体を中心として前記飛砂検出部に対向して配置された風受け部と、前記飛砂検出部、前記データ記憶部及び前記風受け部を同一平面状に保持して連結する連結部と、からなる無指向飛砂量計測装置である。
飛砂検出部と風受け部を同一平面上に配置することで風向に対応した飛砂量分布を計測することができ、風向による飛砂量変化が計測可能となるからである。また、回転支持体上に載置されたデータ記憶部に飛砂量分布と風向変位量を保存することより、風向による飛砂量変化を解析できるからである。
【0008】
(態様2) 前記飛砂検出部は、飛砂量計測センサ相互の間隔を任意に配置可能とすることを特徴とする(態様1)に記載する無指向飛砂量計測装置である。
複数の飛砂量計測センサにより飛砂量の鉛直方向の多点計測をすることができ、相互の間隔を任意に配置可能とすることで風洞実験と野外観測の併用を可能となるからである。
【0009】
(態様3) 前記飛砂検出部は、飛砂量計測センサが飛砂衝突部にコーン型共振子を採用した圧電振動子であることを特徴とする(態様1)または(態様2)のいずれかに記載する無指向飛砂量計測装置である。
超音波センサに採用されている高精度のコーン型共振子を採用した圧電振動子を飛砂量計測センサとすることで、飛砂量を高精度で計測できるからである。
【0010】
(態様4) 前記データ記憶部は、前記飛砂検出部からの衝撃振動信号を増幅する信号増幅器と、回転支持体の回転軸に沿って回動可能に配置されたポテンショメータからなる風向検出部と、前記信号増幅器及び前記ポテンショメータの信号を保存するデータロガーと、前記データロガーのデータを伝送する無線モデムと、を備える(態様1)乃至(態様3)のいずれかに記載する無指向飛砂量計測装置である。
風向検出部のポテンショメータを回転支持体の回転軸に沿って回動可能に配置することで風受け部とポテンショメータを同期させることができ、風向変位データを適切に計測できるからである。
【0011】
(態様5) 前記風向検出部は、前記ポテンショメータを回転支持体の回転軸に沿って回動可能とすると共に、スリップリングを介して外部電源と接続されていることを特徴とする(態様4)に記載する無指向飛砂量計測装置である。
複数の歯車を組み合わせることにより、風向変位量を検出するポテンショメータをスリップリングで接続された回転軸を回動する構造とするポテンショメータとスリップリングとの連動機構が設けられたことにより飛砂量計測と風向変位計測を同時が可能となるからである。また、スリップリングを介して外部電源に接続され、無指向飛砂量計測装置に電力供給できるからである。
【発明の効果】
【0012】
本願発明の無指向飛砂量計測装置は、高精度のコーン型共振子を採用した圧電振動子を飛砂量計測センサとした飛砂検出部と風受け部を同一平面上に配置することで風向に対応した飛砂量分布を高精度で計測することができ、風向による飛砂量変化が計測可能となる。複数の飛砂量計測センサにより飛砂量の鉛直方向の多点計測をすることができ、相互の間隔を任意に配置可能とすることで風洞実験と野外観測の併用を可能となる。風向検出部のポテンショメータを回転支持体の回転軸に沿って回動可能に配置することで風受け部とポテンショメータを同期させることができ、風向変位データを適切に計測できる。風向変位量を検出するポテンショメータをスリップリングで接続された回転軸を回動する構造とするポテンショメータとスリップリングとの連動機構を設けることで飛砂量計測と風向変位計測を同時が可能となる。スリップリングを介して外部電源に接続され、無指向飛砂量計測装置に電力供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本願発明の無指向飛砂量計測装置の実施態様の1つを示す外観斜視図である。
図2】本願発明の飛砂検出部における飛砂計測センサの配置の態様を示す斜視図である。
図3】本願発明の飛砂計測センサに採用する圧電振動子を示す模式図である。
図4】本願発明のデータ記憶部の基本的な構成要素を示した模式図である。
図5】本願発明の風向検出部の構造を示した模式図である。
図6】本願発明の無指向飛砂量計測装置のシステム接続構成図である。
図7】本願発明の無指向飛砂量計測装置のシステム接続ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願発明の無指向飛砂量計測装置について、以下、その実施態様を図面で説明する。
【0015】
(1)無指向飛砂量計測装置
図1は、本願発明の無指向飛砂量計測装置の実施態様の1つを示す外観斜視図である。無指向飛砂量計測装置1は、飛砂量計測センサ11を鉛直方向に複数配置する飛砂検出部12と、基板16上に回転可能に取り付けられた回転支持体17上に載置された筐体に内蔵されたデータ記憶部13と、前記回転支持体17を中心として前記飛砂検出部12に対向して配置された風受け部14と、前記飛砂検出部12、前記データ記憶部13及び前記風受け部14を同一平面状に保持して連結する連結部15と、からなる。
また、データ記憶部13に記録されたデータは、無線モデム18により、データ処理装置(図示せず)に送られて解析される。風受け部14は、風向に合わせて移動する中空の風受け板で構成されている。風受け部14の形状は無指向飛砂量計測装置1の回転バランスと速度を制御するために適宜選択できる。
【0016】
(2)飛砂検出部
飛砂検出部12は、飛砂計測センサ11を任意の位置に配置できる。図2は、飛砂検出部12の飛砂計測センサ11の配置の態様を示す斜視図である。図2(a)は、飛砂計測センサ11を下側(地表面)に多く配置した態様である。これは、飛砂計測を実際に行う砂地では、鉛直方向の飛砂量分布は、地表面から30cm以下に集中し、特に10cm以下に集中していることが報告されており、砂地での飛砂量計測に対応して配置した態様である。図2(b)は、飛砂計測センサ11を均等に配置した態様である。風洞実験等の一般的な計測に適用される。
【0017】
(3)飛砂計測センサ
飛砂(砂粒子)の計測手段としては、飛砂粒子の重量を計測するトラップ法、飛砂粒子がセンサに衝突した音を計測する音響センサ法、飛砂粒子がレーザー光を遮る頻度を計測する光学センサ法、飛砂粒子がセンサに衝突する衝撃力を計測する圧電センサ法が知られている。
本願発明では、飛砂計測センサ11には高精度の超音波センサに使用されているコーン型共振子111を飛砂衝突部に採用した圧電振動子を用いている。図3は、本願発明の飛砂計測センサ11に採用するコーン型共振子111を飛砂衝突部に採用した圧電振動子の構造を示す模式図である。圧電振動子は、ステンレス等の金属管の先端に飛砂粒子の衝突により振動する円錐形状のコーン型共振子111とコーン型共振子111の振動を検出して電気的な衝動信号を出力する金属板112と圧電セラミックス113からなる振動検出センサ115で構成されている。電気的な衝撃信号は出力リード114とケーブル21によりデータ記憶部13の信号増幅器20へ出力される。
【0018】
(4)データ記憶部
図4は、本願発明のデータ記憶部13の基本的な構成要素を示した模式図である。データ記憶部13は、基板16上に回転可能に取り付けられた回転支持体17上に載置された筐体25内に、信号増幅器20、データロガー23、風向検出部3を内蔵している。筐体25は、回転支持体17に担持された回転軸24により回転可能となっている。信号増幅器20は、飛砂計測センサ11の電気的な衝動信号を増幅して、データロガー23に送信する役割を担う。データロガー23は、信号増幅器20からの飛砂量計測データ及び風向検出部3からの風向データを保存する役割を担う。風向検出部3は、風受け部14の風向変位量を検出する役割を担う。
【0019】
(5)風向検出部
図5は、風向検出部3の構造を示す(a)正面図及び(b)斜視図である。風向検出部3においては、スリップリング33を介して外部電源(図示せず)に接続され、無指向飛砂量計測装置1に電力供給される。また、風向変位量を検出するポテンショメータ32は、複数の歯車31及び回転部34の回転によりスリップリング33を含む回転軸(図示せず)を回動する構造になっている。このポテンショメータ32とスリップリング33との連動機構が設けられたことにより飛砂量計測と風向変位計測を同時に可能としている。なお、風向検出部内をポテンショメータ32からの信号ケーブル21及び外部電源4からの電源ケーブル22が通じている。
【0020】
(6)無指向飛砂量計測装置の稼働システム
図6は、本願発明の無指向飛砂量計測装置のシステム接続構成図であり、図7は、本願発明の無指向飛砂量計測装置のシステム接続ブロック図である。
飛砂検出部12において、飛砂量計測センサ11内のコーン型共振子111に飛砂が衝突することにより飛砂検出センサ115が衝突信号を出力する。
データ記憶部13において、飛砂検出部12が出力した衝突信号は、信号ケーブル21により信号増幅部20へ送信されて衝突信号が増幅される。増幅信号は信号ケーブル21により飛砂量計測データとなりデータロガー23へ送信されて保存される。一方、風受け部14の変位は、ポテンショメータ32により風向変位データとなり信号ケーブル21によりデータロガー23へ送信されて保存される。
データロガー23に保存された飛砂量計測データ及び風向変位データは、無線モデム18を介してデータ処理部19へ送信されてデータ解析が行われる。
なお、外部電源4から電源ケーブル22とスリップリング33を介して無指向飛砂量計測装置1本体に電力が供給される。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本願発明により、多点飛砂量と風向を同時計測可能な無指向飛砂量計測装置を提供できる。
【符号の説明】
【0022】
1 無指向飛砂量計測装置
11 飛砂量計測センサ
111 飛砂衝突部
112 金属板
113 圧電セラミックス
114 出力リード
115 飛砂検出センサ
12 飛砂検出部
13 データ記憶部
14 風受け部
15 連結部
16 基板
17 回転支持体
18 無線モデム
20 信号増幅器
21 信号ケーブル
22 電源ケーブル
23 データロガー
24 回転軸
25 筐体
3 風向検出部
31 歯車
32 ポテンショメータ
33 スリップリング
34 回転部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7