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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】物品移し替え装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
B25J15/06 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021083503
(22)【出願日】2021-05-17
(65)【公開番号】P2022176843
(43)【公開日】2022-11-30
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000206093
【氏名又は名称】大森機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092598
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 伸一
(72)【発明者】
【氏名】入野 晃一
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 嵩
【審査官】尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-534168(JP,A)
【文献】実開昭63-76491(JP,U)
【文献】特開2006-327730(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0265392(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段上の前記物品をピックアップして所定領域に移し替える移し替えロボットを備え、
前記移し替えロボットは、ロボットアームの先端に吸着具を有し、
前記吸着具は、供給した空気を排気部から排気することで、下端開口部に前記物品を吸着保持可能にし、
前記搬送手段の搬送路に隣接して前記吸着具の前記排気部を覆う排気部抑え手段を設け、
前記移し替えロボットは、前記吸着具を前記排気部抑え手段側に移動し、前記排気部抑え手段により前記排気部を閉塞し、前記供給した空気を前記下端開口部から外部に排気するように構成し、
前記移し替えロボットは、前記吸着具を前記排気部抑え手段の蓋部材に向けて接近離反移動させることで、前記排気部を前記蓋部材で開閉するようにし、
前記排気部抑え手段は、ダンパー機構を介して前記蓋部材を支持するようにし、前記吸着具の前記排気部が前記蓋部材に接触した際の力を前記ダンパー機構により吸収することを特徴とする物品移し替え装置。
【請求項2】
前記蓋部材は円錐形状或いは円錐台形状から構成され、
前記排気部は円形の開口部である請求項1に記載の物品移し替え装置。
【請求項3】
前記排気部抑え手段による前記排気部の開閉を複数回繰り返して行い、少なくとも前記排気部を閉じている場合に前記吸着具に前記空気を供給する制御を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の物品移し替え装置。
【請求項4】
前記排気部の開閉を複数回繰り返す期間中、前記吸着具に前記空気を供給するようにしたことを特徴とする請求項3に記載の物品移し替え装置。
【請求項5】
前記下端開口部から前記吸着具内に進入可能な清掃部材を設け、
前記排気部を閉塞する前処理で、前記清掃部材を前記吸着具の内部で相対移動し、前記吸着具内に付着する異物を除去しやすくするように構成したことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の物品移し替え装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品移し替え装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば搬送手段上をランダムに搬送される物品を吸着保持し、別の搬送手段その他の所定領域に移し替える移し替えロボット装置がある。この種の移し替えロボット装置は、所定の軌跡で移動するロボットアームの先端に吸着具を取り付け、吸着具の下面に設けた吸着面を物品の表面に接触した状態で吸引することで吸着面に物品を吸着する。そして吸着保持した状態のままロボットアームを動作させ、吸着具を所定領域に移動し、吸引を停止することで吸着を解除し物品を所定領域に移し替えるように構成する。
【0003】
物品が、例えば冷凍コロッケ等の外表面がパン粉等の衣で覆われた揚げ物の場合、吸着具で吸引する際に、外表面のパン粉が剥がれて吸着具の内部に吸い込まれることがある。そして、例えば数時間たつと吸着具の中に吸い込まれる吸気経路に留まるパン粉の量が増えて詰まり、充分に吸引できない事態を招く。係る事態が発生すると、一旦装置を停止し、空気の吸気経路を清掃等して詰まったパン粉を除去する必要が生じる。よって、一日のうち何回かは装置を一時停止する事態を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-266274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
装置を一時停止すると、生産性の低下を招くため、一時停止する頻度を少なくし、好ましくは一時停止することなく運転を行いたいという要求がある。そこで、例えば特許文献1に開示された真空吸着装置を用いることが考えられる。この特許文献1に開示された真空吸着装置は、装置を停止することなくエアフィルタの目詰まりを解消するためのもので、圧縮エア噴出手段からのエアがノズル状管で加勢され真空発生器を通じて空気排出口から排気される構成をとり、真空発生器内に空気排出口を開閉する電磁弁を実装する。この電磁弁は、通常は開いた状態になっている。そして真空発生器には吸引通路を連接していて、噴出されたエアの勢いによって吸引通路内は真空状態となり、吸気通路の先端に取り付けた吸引パッドで物品を吸着することが可能となる。一方、エアフィルタの清掃を行う場合、電磁弁を閉じる。これによって、噴出された空気は吸引通路内を逆流し、吸気通路内に設けたエアフィルタのほこり等を吹き飛ばし、排出できる。
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された真空吸着装置を用いると、以下に示す新たな課題が生じる。真空発生器の内部空間内に開閉する電磁弁を設け、電磁弁は、一辺に設けた支点を中心に90°の回転角度範囲内で正逆回転する構成をとるので、装置が大型化、複雑化し、真空吸着装置の重量も増す。その結果、ロボットハンドの先端に係る重く大きい真空吸着装置を取り付けると、高速処理のネックになり、また、高速移動できたとしてもロボットハンドに加わる負荷が大きくなる。
【0007】
また、真空発生器内に開閉する電磁弁を設ける構成のため、例えば回転角度が不十分な場合には空気排出口を閉じることができず、吸引パッド側から空気を排出することができないおそれがある。また、そのように回転により開閉する機構を真空発生器内に設置すると、故障時の修理も煩雑である。
【0008】
また、電磁弁を開閉する構成のため、開閉に時間を要すると、その間は通常の移し替え操作ができず、また、高速に開閉するために駆動源のパワーを大きくすると、真空吸着装置の大型化・重量の増加を招き、上述したように通常の移し替えの運転時の高速処理のネックとなる。
【0009】
特許文献1の対象物品のようにプリントボードの場合には、真空吸着装置内に進入する埃等も少なく電磁弁を開閉する動作の発生頻度も少ないが、例えば上述したように物品が冷凍コロッケ等の外表面がパン粉等の衣で覆われた揚げ物の場合、剥離して真空吸着装置内に進入するパン粉も大きく、量も多いことから比較的頻繁に清掃を行う必要がある。よって、特許文献1の真空吸着装置をそのまま適用することは難しい。
【0010】
上述した課題はそれぞれ独立したものとして記載しているものであり、本発明は、必ずしも記載した課題の全てを解決できる必要はなく、少なくとも一つの課題が解決できれば良い。またこの課題を解決するための構成についても単独で分割出願・補正等により権利取得する意思を有する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明の物品移し替え装置は、(1)物品を搬送する搬送手段と、前記搬送手段上の前記物品をピックアップして所定領域に移し替える移し替えロボットを備え、前記移し替えロボットは、ロボットアームの先端に吸着具を有し、前記吸着具は、供給した空気を排気部から排気することで、下端開口部に前記物品を吸着保持可能にし、前記搬送手段の搬送路に隣接して前記吸着具の前記排気部を覆う排気部抑え手段を設け、前記移し替えロボットは、前記吸着具を前記排気部抑え手段側に移動し、前記排気部抑え手段により前記排気部を閉塞し、前記供給した空気を前記下端開口部から外部に排気するようにし、前記移し替えロボットは、前記吸着具を前記排気部抑え手段の蓋部材に向けて接近離反移動させることで、前記排気部を前記蓋部材で開閉するようにし、前記排気部抑え手段は、ダンパー機構を介して前記蓋部材を支持するようにし、前記吸着具の前記排気部が前記蓋部材に接触した際の力を前記ダンパー機構により吸収するように構成した。
【0012】
このようにすると、例えば吸着具内に異物が溜まり、十分な吸引が行われず物品を吸着保持できないように場合に、移し替えロボットが吸着具を排気部抑え手段側に移動し、排気部抑え手段により排気部を閉塞するとともに、吸着具に空気を供給する。これにより、その供給した空気は、通常の吸引時と逆方向に流れ下端開口部から外部に排気される。この逆方向の流れに伴い、吸着具内に付着して溜まっている異物が剥がれ、下端開口部から外部に排出される。係る排気部を閉塞する処理は、移し替えロボットが吸着具を所定の場所に移動するだけでよいため、搬送手段を一時停止しないで行うことができ、また、一時停止したとしても短時間で吸着具内の異物を排出し、詰まりを解消してその後に吸着保持が行えるようになる。さらに排気部を閉塞する機構を、吸着具に取り付けることなく別の手段として構成したので、吸着具の構成は排気部を閉塞する機構を実装するものに比べて簡易で軽量化が図れる。よって、移し替えロボットに与える負荷が小さくてすみ、通常の物品の移し替え処理は、例えば高速に行うことができ、また、高速移動しない場合には移し替えロボットの負荷が軽減される。
【0013】
記移し替えロボットは、前記吸着具を前記排気部抑え手段の蓋部材に向けて接近離反移動させることで、前記排気部を前記蓋部材で開閉するように構成したため、ロボットアームの移動により排気部を閉塞でき、排気部抑え手段の構成を簡単にすることができる。
【0014】
記排気部抑え手段は、ダンパー機構を介して前記蓋部材を支持するようにし、前記吸着具の前記排気部が前記蓋部材に接触した際の力を前記ダンパー機構により吸収するように構成したため、例えば移し替えロボットが吸着具の排気部を蓋部材にある程度強い力で押しつけた場合でもダンバー機構によりその力の一部が吸収でき、ロボットアーム側に大きな反力がかからず、移し替えロボットに過負荷がかかることを抑制しつつ、しっかりと排気部を閉じることができる。ダンバー機構は、実施形態では、第2シリンダにより構成されるが、これに限るものではなくバネやその他の各種の機構を用いることができる。
【0015】
(2)前記蓋部材は円錐形状或いは円錐台形状から構成され、前記排気部は円形の開口部とするとよい。このようにすると、確実に排気部を閉塞することができる。
【0016】
(3)前記排気部抑え手段による前記排気部の開閉を複数回繰り返して行い、少なくとも前記排気部を閉じている場合に前記吸着具に前記空気を供給する制御を行うようにするとよい。このようにすると、複数回にわたり断続的に吸着具の下端開口部から外に向けて排気が行われ、係る排気のための吸着具の内部での通常と逆方向の空気の流れが不連続で発生するためより効率よく異物を外部に排出することができる。
【0017】
(4)前記排気部の開閉を複数回繰り返す期間中、前記吸着具に前記空気を供給するように構成するとよい。このようにすると、空気は連続して供給すればよく、制御が容易に行える。
【0018】
(5)前記下端開口部から前記吸着具内に進入可能な清掃部材を設け、前記排気部を閉塞する前処理で、前記清掃部材を前記吸着具の内部で相対移動し、前記吸着具内に付着する異物を除去しやすくするように構成するとよい。このようにすると、空気による異物の排出に先立ち行う前処理として清掃部材により異物を引っ掻くなどの作業を行うことで、その後の空気の流れにより異物が吸着具の内面から剥がれやすくなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、吸着具の排気部を塞ぐ排気部抑え手段を吸着具と別に設けたため、吸着具の構造も簡略化され、小型・軽量化をすることができ、通常の物品の移し替え時は吸着具を備える移し替えロボットに加わる負荷が小さくなり、高速に移し替え処理をすることができる。また、吸着具内に異物が溜まったりした場合には、移し替えロボットが吸着具を、搬送装置の搬送路に隣接して配置される排気部抑え手段側に移動し、排気部を閉じることで吸着具に供給する空気の流れを通常と逆にして下端開口部から排気することに野より内部に溜まった異物を下端開口部から排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る物品移し替え装置が実装される包装システムの一例を示す図である。
図2】その要部を示す正面図である。
図3】その要部を示す側面図である。
図4】その要部を示す斜視図である。
図5】ロボットアーム21に支持される吸着具30と、排気部抑え手段40を示す拡大正面図である。
図6】作用を説明する図である。
図7】別の実施形態を示す模式図である。
図8】別の実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態について図面に基づき、詳細に説明する。なお、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0022】
図1は、本発明に係る物品移し替え装置の一実施形態が実装された包装システムの一部を示している。この包装システムは、物品1を搬送する第1搬送装置11と、第1搬送装置11の一方の側縁に沿って配置される第2搬送装置12と、第1搬送装置11と第2搬送装置12の間に配置され、物品1を一時的に保持する台座13と、第1搬送装置11上の物品1をピックアップして台座13に移し替える第1移し替えロボット15と、台座13上に積層された物品群を第2搬送装置12に移し替える第2移し替えロボット(図示省略)等を備える。さらに図示省略するが、第2搬送装置12の下流側には、物品1を包装する包装機本体等を配置する。
【0023】
物品1は、例えば冷凍コロッケのように外表面がパン粉等の衣で覆われた揚げ物であり、偏平な形状からなる。この物品1が第1搬送装置11に上流側の装置等からランダムに供給される。第1搬送装置11は、例えばベルトコンベア装置であり、ランダムに供給された物品1を、そのままの姿勢で搬送する。図1に示すように、第1搬送装置11上の多数の物品1は、その向きや前後左右の配置間隔もランダムとなる。
【0024】
台座13は、物品1を所定数積層して一時的に支持するもので、本実施形態では5個の物品1を積層する。そして、物品1を置く領域を近接し、2列5段の物品群2の態様になるように支持する。
【0025】
第1移し替えロボット15は、本形態では搬送方向に沿って2個設けている。図2移行に示すように、個々の第1移し替えロボット15は、パラレルリンクロボットから構成し、ロボットアーム21の先端に水平面内で回転可能に帯板状のベースプレート22を取り付ける。このベースプレート22の下面の両端側には、それぞれ第1シリンダ23を下向きに吊り下げるように取り付ける。第1シリンダ23は、ベースプレート22の回転中心から径方向反対側で等距離をおいた位置に固定する。
【0026】
この第1シリンダ23は、そのシリンダロッド23aが上下方向に往復動作し、そのシリンダロッド23aの先端に、略コ字型の取付プレート24を介して吸着具30を取り付ける。これにより、パラレルロボットの回転軸25の回転に伴いベースプレート22が回転すると、吊り下げ保持される2個の吸着具30も回転軸25を回転中心として水平平面内で旋回する。また、個々の第1シリンダ23を独立して往復動作させることで、吸着具30もそれぞれ独立して昇降する。
【0027】
そして、パラレルリンクロボットによる吸着具30の移動可能領域Rは、図1中に二点鎖線で示した円の範囲内である。図から明らかなように、第1搬送装置11の搬送面の幅方向全域と、台座13の全域がカバーされる。さらに移動可能領域Rは、第1搬送装置11の搬送方向右側(台座13と反対側)の外側の所定領域までカバーしている。よってロボットアーム21の動作と相まって、個々の吸着具30は、第1搬送装置11の搬送面上の所定位置に移動させることができる。そして、所望の第1シリンダ23を動作させて物品1の真上に位置させた吸着具30を下降移動させることで、その吸着具30は物品1を吸着保持してピックアップし、最終的に2個の吸着具30がそれぞれ物品1をピックアップすると、ロボットアーム21と回転軸25が動作し、2個の吸着具30が台座13の所定領域の上方に至り、そこで吸引を解除して物品1を離反させ、台座13の所定領域の上に物品1を移し替え供給する。
【0028】
そして第1移し替えロボット15は、台座13の所定領域に物品1を5個積層すると、次は、台座13の別の所定領域の上に物品1を移し替え供給する。このようにすることで、上述したように台座13には、偏平な物品1が平置き状態で上下に積み重なった2列5段の物品群2がセットされる。
【0029】
この物品群2を構成する10個の物品1は、図示省略する多関節ロボットからなる第2移し替えロボットにより一括して保持され、第2搬送装置12の搬送面上に移動させるとともに、その姿勢が90度変更されて起立した姿勢となり、前後2列で横に5個並んだ状態の物品群2が、第2搬送装置12上に移し替えられる。第2搬送装置12は、例えばフィンガーコンベア装置であり、前後のフィンガー間に起立した2×5の物品1からなる物品群2が供給される。
【0030】
吸着具30は、エジェクタ31と、エジェクタ31の下端に取付金具34を介して取り付けられる吸盤部32を備える。エジェクタ31の上端開口部が排気部31aとなり、エジェクタ31の側面の下方部位に圧縮空気を導入する導入ノズル33を連結し、この導入ノズル33を図外の圧縮エア噴出手段に接続する。これにより、圧縮エア噴出手段からの圧縮空気がエジェクタ31内に導入されると、その圧縮空気はエジェクタ31内を上方に進み排気部31aから外部に排気される。これにともない、吸盤部32の下端開口部32aから、周囲の空気が吸盤部32内に吸い込まれ、吸盤部32の下面開口部に例えば物品1が接触して塞ぐと真空吸引されて物品1が吸着保持される。これが通常運転時の動作である。
【0031】
更に本実施形態では、吸盤部32内に吸い込まれたパン粉等の異物の一部は、エジェクタ31内を通過し、排気部31aから外部に排出され、排出されない残部は吸盤部32内などに留まる。そこで、本実施形態では、排気部31aの上方所定位置に、斜め上方に延びる羽根部材26を配置する。この羽根部材26の下端を取付プレート24に固定する。これにより、排気部31aから上方に排出されるパン粉等は、羽根部材26により進路を斜め外に変更され、系外排出することができ、例えばパン粉等が第1シリンダ23やロボットアーム21側に進入することを抑止できる。
【0032】
また吸盤部32は、伸縮可能な蛇腹状からなり、樹脂やゴムなどの可撓性のある材料から構成される。例えば吸盤部32が物品1に接触した状態で更に吸着具30が下降移動すると、蛇腹部分が縮み吸盤部32の下端開口部32aが閉塞する。
【0033】
一方、圧縮エア噴出手段からの圧縮空気がエジェクタ31内に導入した状態でエジェクタ31の排気部31aを塞ぐと、エジェクタ31内に供給された圧縮空気はエジェクタ31内を下方に進み、吸盤部32から排出される。これにより、例えば吸盤部32内などに進入し、留まっていたパン粉等は、圧縮空気により吸盤部32の下面開口部から外部に排出され、強制エア排出による詰まり拭き飛ばしを行える。
【0034】
そして、本実施形態では、排気部31aを塞ぐ排気部抑え手段40を、第1搬送装置11の搬送方向右側に隣接して設ける。この排気部抑え手段40は、帯板状の支持プレート41の長手方向両端近傍の下面にそれぞれ設けた一対の蓋部材42と、支持プレート41を支持する第2シリンダ43等を備える。
【0035】
蓋部材42は、略円錐形状或いは円錐台形状とし、上方に行くに従って徐々に径が大きくなる。そして、蓋部材42の下端の外径は排気部31aの内径よりも小さく、蓋部材42の上方部位の外径は排気部31aの内径よりも大きい設定にしている。さらに、蓋部材42は、ボルト44により支持プレート41に取り付けられる。このとき蓋部材42の中心軸に上下に貫通するように設けたボルト用の貫通孔の内径は、ボルト44の軸の外径よりも大きく頭部よりも小さくする。これにより、ボルト44に取り付けられた蓋部材42は、ボルト44の頭部により支持プレート41からの離脱が抑止され、貫通孔の内径とボルトの軸の外径の差に基づき、水平面内で移動可能となる。よって、例えばロボットアーム21の動作により、吸着具30を排気部抑え手段40の蓋部材42の直下に移動するとともに、上昇移動させることで蓋部材42の中心と排気部31aの中心が一致し、蓋部材42にて排気部31aをしっかりと塞ぐことができる。
【0036】
第2シリンダ43は、シリンダロッド43aが上下方向に往復動作するように連結部材45の上面に起立配置され、シリンダロッド43aの先端に支持プレート41が取り付けられる。本実施形態では、第2シリンダ43には一定の圧力を保つようにし、ダンパーとして機能するようにしている。これにより、蓋部材42や支持プレート41に付勢力が加わらず無負荷状態のときには、シリンダロッド43aは収縮しており、支持プレート41も所定位置を維持する。この状態で例えば吸着具30を蓋部材42に押し当てて上昇移動させるように上方に向けた付勢力が加わると、第2シリンダ43はシリンダロッド43aが往動作して支持プレート41ひいては蓋部材42が上昇移動し、吸着具30を介して第1移し替えロボット15に過負荷が加わるのを抑止する。これより、第1移し替えロボット15が過負荷にならずに蓋部材42に対して吸着具30の排気部31aをしっかりと押しつけて排気部31aを密閉することができる。
【0037】
また、第1移し替えロボット15を2個設けたことにあわせて、排気部抑え手段40も2個設け、第1搬送装置11の搬送面の外側の所定位置に起立配置した支柱部46に支持され、搬送方向に延びるように配置されるアーム部材47の両端に、連結部材45を介して取り付けられる。これにより、2個の排気部抑え手段40は、搬送方向に沿って前後に所定間隔をおいて配置される。さらに個々の排気部抑え手段40は、2個の一対の蓋部材42が、搬送方向に沿って並び、その配置間隔は、第1移し替えロボット15に取り付けた一対の吸着具30の配置間隔と等しくする。上述した第2シリンダ43のダンパー機能と相まって、支持プレート41の両端に取り付けた蓋部材42に対し、それぞれの吸着具30の排気部31aを均等に押し当てて密閉できる。
【0038】
上述した構成の装置において、圧縮エア噴出手段からの圧縮空気をエジェクタ31内に導入した状態で第1移し替えロボット15が所定のタイミングで吸着具30の排気部31aを蓋部材42で塞ぐ動作を行うことで、吸盤部32の下端開口部32aから圧縮空気を排気することができ、その排気により例えば吸盤部32更には取付金具34並びにエジェクタ31内に留まるパン粉等の異物を吸盤部32の外部に排出することができる。
【0039】
そして本実施形態では、圧縮空気を継続して供給し続けた状態で、第1移し替えロボット15が蓋部材42の直下で吸着具30を所定回数昇降移動させ、蓋部材42で排気部31aを閉塞したり開放したりする処理を繰り返し行う。これにより、供給された圧縮空気が吸盤部32の下端開口部32aから下方に放出されたり(図6(b)参照)、排気部31aが開放されて当該吐き出しが停止されたり(図6(a)参照)することが繰り返され、空気の流れがエジェクタ31ひいては吸盤部32内で変動し、より内部に溜まったパン粉等の異物を排出しやすくなる。
【0040】
例えば、比較的長い時間連続して1回だけ排気部31aを蓋部材42で閉塞してもよいが、1回の閉塞時間は短くても本実施形態のように複数回にわたり排気部31aの開閉を繰り返す方が効率よく確実に内部のパン粉等の異物を排出することができるのでよい。また、繰り返しの回数は多いほどよいが、回数を多くしても比例的に排出効果が増加するのではなく徐々に増加の程度が少なくなる。そして、係る異物除去作業の時間は、1回あたりの時間が一定とすると、回数を多くすることにともにない比例的に全体の処理時間は増加する。よって、所定回数は5回程度とするよい。
【0041】
また、上記の排気部31aを閉塞して行う清掃処理を行う所定のタイミングは、例えば、定期的に行ってもよいが、吸着具30の詰まりの状態を検知し、所定の詰まった状態になった場合に行うとよい。所定の詰まった状態とは、パン粉等の異物により吸着具30の吸気経路を完全に閉塞するように詰まった場合に限ることはなく、例えば当該吸気経路の径が細くなり、吸着具30で物品1が吸着保持できない状態などとするとよい。係る状態を検知するセンサは、吸着具30に設置してもよいが、例えば台座13に載置される物品1の有無を検知するセンサを設け、それを利用するとよい。例えば、物品移し替え装置の制御部は、第1移し替えロボット15の動作を制御し、吸着具30で吸着保持した物品1をどの台座13に供給するかがわかっているため、正常に移し替え処理が行われた場合に台座13に積載される物品の数よりも実際の物品1の数が少ない場合には、詰まりを生じていると判断するとよい。また、両方の吸着具30に同時に詰まりが発生することは少なく、詰まるときは片側のみの場合が多い。そして、本実施形態では2個ずつ物品を台座13の所定領域の上に供給していくので、ペアとなる領域の上に積み重なっている物品1の個数が異なる場合に、詰まりを発生しているは判断するなど、各種の検出方法・センサを用いることができる。
【0042】
そして、上述したように所定のタイミングで吸着具30に対する清掃処理を行っている間、他方の第1移し替えロボット15は吸着具30を用いた物品1の移し替え操作を行うようにすると、包装システムは停止することなく物品の移し替えを継続して行うことができる。このように、第1移し替えロボット15を複数台配置した場合、一斉に清掃処理を開始する運用をとってもよいが、本実施形態のように清掃処理を互いにタイミングをずらして行うとよい。
【0043】
また、例えば第1移し替えロボット15が1つのみ設置したシステムで、吸着具30に詰まったパン粉等の異物を排出するために一時的にシステムを停止するような場合でも、第1移し替えロボット15が自動的に吸着具30を蓋部材42の所に移動し、昇降させるだけでよいため、短時間で処理が終了するのでよい。
【0044】
また、上述した実施形態では、例えば1つの吸着具30が詰まりを生じた場合、第1移し替えロボット15に支持される対を構成する2つの吸着具30の排気部31aが、一緒に蓋部材42により閉塞され、清掃される。よって、他方の吸着具30は詰まりが未然に防止される。
【0045】
本実施形態では、吸着具30は、排気部31aを閉塞するための蓋などを備えていないため、ロボットアーム21の先端のヘッド部は軽量となり、通常の物品1の移し替え動作時に高速作業が可能となる。
【0046】
図7は、他の実施形態の要部を示している。本実施形態では、上述した実施形態を基本とし、蓋部材42内部に進入し、掻き出すことのできる清掃部材50を設けるとよい。清掃部材50は、上部が帯板状の作動部51を有し、作動部51の中央から下方に突出するように設けられる回転支持軸52を備える。そして、この回転支持軸52は、所定角度範囲内で正逆回転する駆動機構に連携されており、180°以上(例えば、270°)回転するように構成するとよい。駆動機構は、例えば駆動モータ等の回転駆動源の動力を伝える機構、シリンダその他の往復直線運動する駆動源の出力を回転動作に変換する動力変換機構など各種のものを用いるとよい。
【0047】
この清掃部材50は、2個一組とし、2個の吸着具30の配置間隔にあわせて配置する。例えば、一対の蓋部材42の下方に配置したり、それとは異なる別の場所に配置したりするとよい。例えば清掃部材50を1個設け、詰まりを生じている側の吸着具30に対して前処理を行ったり、1つの清掃部材50を用い順番に2つの吸着具30に対して前処理を行ったりしてもよいが、本実施形態のように2個1組として2個の吸着具30に対して同時に前処理を行うとよい。
【0048】
本実施形態では、圧縮空気を利用した清掃に先立ち、清掃部材50による前処理を行う。すなわち、第1移し替えロボット15は、一対の吸着具30の吸盤部32の下端開口部32aを、一対の清掃部材50の上方に位置させる(図7(a)参照)。次いで第1移し替えロボット15は、吸着具30を下降移動させ、吸盤部32内に清掃部材50を進入させ、作動部51を吸盤部32の内部の天面に接触或いは近接させる。そしてこの状態で回転支持軸52を回転させ、作動部51を、回転支持軸52を回転中心として水平面内で回転させる。これにより、吸盤部32の内周面、とくに天面に付着しているパン粉等の異物は作動部51により引っかかれることになり、例えば、一部はそぎ落とされたり、天面に対する付着力が弱まったりする。また、作動部51で擦られることから、例えば吸盤部32の天面の中央に設けた孔部を塞ぐ量が多くなることがある。
【0049】
この後、第1移し替えロボット15は、吸着具30を上昇させ、吸盤部32内から清掃部材50を離反させ、さらに排気部31aを蓋部材42で閉塞する。これに伴い上述したように圧縮空気が下方に進み、吸盤部32の下端開口部32aから外部に排気される。このとき、上述したように清掃部材50により天面に対する付着力が弱まったパン粉等の異物は、スムーズに吸盤部32から離反し、外部に排出される。また、押されて吸盤部32の天面の中央に設けた孔部を塞ぐ量が多くなった場合には、上述した下方に向かう空気の流れの抵抗となるが、当該空気を阻止することはできずそのまま一気に剥がれて回部に排出されることがある。
【0050】
例えば圧縮空気にともない吸盤部32の下端開口部32aから排気される空気の流れのみでは、例えば吸盤部32の天面に付着するパン粉等の異物が排出できない場合もあるが、このように清掃部材50による前処理を行うことで、係る異物も排出することが可能となる。
【0051】
更に清掃部材50を180°以上回転することで天面全体のパン粉等の異物の付着力を弱めることができる。また、清掃部材50を180°よりも大きな角度(例えば、270°)回転することで、清掃部材50を離反する際に付着力が弱められた天面全体のパン粉等の異物を作動部51、57、61によって引っ掛けて排出することができる。
【0052】
また、このような清掃部材50は、上述したものに限ることはなく、例えば図8に示すものの他、各種の構造のものを用いるとよい。例えば図8(a)に示す清掃部材55は、円柱状や角柱状等の1本の棒状体から構成し、これも2個一組で一対の吸着具30の配置ピッチと等間隔に配置するとよい。この例では、例えば第1移し替えロボット15が吸盤部32を下降移動させて清掃部材55の上端を吸盤部32の内部の天面に接触或いは近接させた状態にし、その状態で吸盤部32を水平平面内で円運動や直線運動させる。これにより、清掃部材55の上端と、吸盤部32の天面を相対移動させることができる。また、清掃部材55を水平平面内で移動する機構に接続し、清掃部材50側を移動するようにしてもよい。
【0053】
図8(b)に示す清掃部材56は、図7に示す実施形態と同様に、上部が帯板状の作動部57を有し、作動部57の一端から下方に突出するように設けられる回転支持軸58を備える。この回転支持軸58は、所定角度範囲内で正逆回転する駆動機構に連携されており、180°以上(例えば、270°)回転するように構成するとよい。駆動機構は、例えば駆動モータ等の回転駆動源の動力を伝える機構、シリンダその他の往復直線運動する駆動源の出力を回転動作に変換する動力変換機構など各種のものを用いるとよい。このようにすると、例えば作動部57が吸盤部32の天面に接触或いは近接した状態で回転支持軸58が回転すると、作動部57により天面に付着したパン粉等の異物を引っ掻き、例えば、そぎ落とすなどの所定の前処理を行うとよい。
【0054】
図8(c)に示す清掃部材60は、が帯板状の作動部61の両端に下方に突出するように一対の支持柱部62を備えた構成をとる。この清掃部材60は、例えば一対の支持柱部62をターンテーブルのような回転部材の上に起立配置させる。このとき、作動部61の中央と回転部材の回転中心を合わせるようにする。これにより、回転部材の回転に伴い、作動部61が回転するので、図7に示す実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、例えば作動部61の長さを吸盤部32の内部の天面の直径とほぼ等しくすることで、吸盤部32内に清掃部材60を進入させた際に、支持柱部62は吸盤部32の蛇腹状の内周面に接触或いは近接する。よって、その状態で清掃部材60を回転させると、支持柱部62により、吸盤部32の蛇腹状の内周面に付着したパン粉等の異物を天面同様にそぎ落とされたり、付着力が弱まったりすることができ、その後の吸盤部32内を下方に進む圧縮空気により、吸盤部32の下端開口部32aから外部に排出することができる。
【0055】
また、清掃部材50、56、60が自転するとともに、吸盤部32を水平面内で相対的に円運動させてもよい。このようにすると、例えば製品変更に伴い吸盤部32のサイズが変更されても、清掃手段を兼用できる。
【0056】
上述した清掃部材を備えた実施形態では、排気部31aを閉塞して行う清掃作業の前工程として行うようにしたが、例えば、排気部31aを閉塞して行う清掃処理を行わずに、この清掃部材による清掃のみを行うようにしてもよい。さらには、排気部31aを閉塞して行う清掃機能を備えず、清掃部材による清掃機能を独立して備えたシステムに適用することもできる。
【0057】
上述した各実施形態では、第2シリンダ43は圧力制御せずに一定の圧力をかけているだけでバンパー機能を発揮させるようにしたが、第2シリンダに換えてバネその他の弾性部材を設けてもよい。但し、シリンダを用いる方が、ダンパー機能を発揮させる圧力を調整できるのでよい。
【0058】
上述した各実施形態では、第1移し替えロボット15を動作させ、吸着具30を上下移動させることで排気部31aを蓋部材42で開閉するようにしたが、本発明はこれに限ることはなく、例えば、排気部31aを蓋部材42で閉塞した状態を一定期間維持し、その間に圧縮空気の供給をON/OFFし、間欠的に圧縮空気を供給するようにしてもよい。このようにすると、圧縮空気が供給されているときは吸着具30内を空気が通過し吸盤部32の下端開口部32aから外部に排出され、圧縮空気の供給が停止されているときは当該空気の移動がないので、排気部31aを複数回開閉するのと同様の効果が発揮し、吸着具30内のパン粉等の異物を排出することができる。
【0059】
また、蓋部材42が上下移動するように構成することで、排気部31aを開閉するようにしてもよい。蓋部材42を上下移動させる構成は、例えば、第2シリンダ43の圧力を変化させてシリンダロッド43aを往復動作させるようにしてもよく、或いは別の駆動機構により往復動作させるようにしてもよく、各種の構成を取ることができる。
【0060】
また、上述した実施形態では、第1移し替えロボット15は、パラレルリンクロボットを用いて構成したが、本発明はこれに限ることはなく、例えば、多関節ロボット、スカラーロボットなど各種のロボットを用いるとよい。
【0061】
さらには上述した各実施形態では吸着具30の排気部31aを蓋部材42で閉じることで吸引のために供給する空気の流れを変えて吸盤部32の下端開口部32aから外部に排気されるようにしたが、例えば蓋部材42側から別途エアを吸着具30内に吹き付けるように構成してもよい。
【0062】
以上、本発明の様々な側面を実施形態並びに変形例を用いて説明してきたが、これらの実施形態や説明は、本発明の範囲を制限する目的でなされたものではなく、本発明の理解に資するために提供されたものであることを付言しておく。本発明の範囲は、明細書に明示的に説明された構成や製法に限定されるものではなく、本明細書に開示される本発明の様々な側面の組み合わせをも、その範囲に含むものである。本発明のうち、特許を受けようとする構成を、添付の特許請求の範囲に特定したが、現在の処は特許請求の範囲に特定されていない構成であっても、本明細書に開示される構成を、将来的に特許請求する可能性があることを、念のために申し述べる。
【符号の説明】
【0063】
1 :物品
2 :物品群
11 :第1搬送装置
12 :第2搬送装置
13 :台座
15 :第1移し替えロボット
21 :ロボットアーム
23 :第1シリンダ
30 :吸着具
31 :エジェクタ
31a :排気部
32 :吸盤部
32a :下端開口部
40 :排気部抑え手段
41 :支持プレート
42 :蓋部材
43 :第2シリンダ
50 :清掃部材
55 :清掃部材
56 :清掃部材
60 :清掃部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8