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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】抗ウイルスレクチンおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20240626BHJP
   C07K 14/42 20060101ALI20240626BHJP
   A61K 36/48 20060101ALI20240626BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
A61K38/16
C07K14/42 ZNA
A61K36/48
A61P31/16
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021512615
(86)(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 US2019049851
(87)【国際公開番号】W WO2020051397
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-08-01
(31)【優先権主張番号】62/727,663
(32)【優先日】2018-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596118493
【氏名又は名称】アカデミア シニカ
【氏名又は名称原語表記】ACADEMIA SINICA
【住所又は居所原語表記】128 Sec 2,Academia Road,Nankang,Taipei 11529 TW
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100221534
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 志穂
(72)【発明者】
【氏名】マー・チェ
(72)【発明者】
【氏名】リウ・ヨー-ミン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・ジア-ツロン
【審査官】伊藤 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-201587(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0085981(US,A1)
【文献】International Journal of Biological Macromolecules,2014年,Vol.69,p.400-407
【文献】J. Mol. Biol. ,2000年,Vol.299,p.875-883
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
C07K
A61P
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の複合型またはハイブリッド型グリカン結合レクチンを含む、インフルエンザウイルス感染を処置または予防するための組成物であって、レクチンが、Flt3受容体相互作用レクチン(FRIL)タンパク質であり、FRILタンパク質が、配列番号1のアミノ酸配列、または配列番号1と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、組成物。
【請求項2】
レクチンが、トリマンノシルコアと、トリマンノシルコアの1,3マンノースアームおよび/または1,6マンノースアームに結合した少なくとも1つのN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)と、アンテナ残基を含有する、複合型またはハイブリッド型グリカンと特異的に結合する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
グリカンがα1-3および/またはα1-6結合型Manβ1-2GlcNacβ1-4(Fucα1-3)Gal四糖部分を含有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
レクチンが多量体の形態である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
レクチンがフジマメ由来のFlt3受容体相互作用レクチン(FRIL)タンパク質である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
FRILタンパク質が、配列番号1のアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
レクチンが、フジマメから単離された天然型である、請求項5または6に記載の組成物。
【請求項8】
インフルエンザウイルス感染が、インフルエンザA型ウイルス、インフルエンザB型ウイルス、インフルエンザC型ウイルス、またはそれらの2つ以上の組合せによって引き起こされる、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
インフルエンザA型ウイルスがH1N1、H5N1、H3N2またはH7N9インフルエンザウイルスである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
対象体が、インフルエンザウイルス感染に罹患しているか、もしくは罹患しやすいか、またはインフルエンザウイルスに感染していると疑われる、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
インフルエンザウイルスの感染の前および/または後に投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
有効量の複合型またはハイブリッド型グリカン結合レクチンを含む、エンベロープウイルス感染を処置または予防するための組成物であって、レクチンが、Flt3受容体相互作用レクチン(FRIL)タンパク質であり、FRILタンパク質が、配列番号1のアミノ酸配列、または配列番号1と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、35U.S.C.§119により、2018年9月6日に出願された米国仮特許出願第62/727,663号の利益を主張し、その米国仮特許出願の全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザの大流行は、人の健康にとって大きな脅威であり、H1N1、H5N1、H3N2およびH7N9などの極めて攻撃的な株は、これらの病原体と戦うための治療ストラテジーの必要性を際立たせている。インフルエンザ抗ウイルス剤は、ワクチンを開発している間、大流行を制御するのに重要な役割を果たす。現在、インフルエンザノイラミニダーゼ(NA)阻害剤およびM2イオンチャネルタンパク質阻害剤として機能する2つのクラスの抗ウイルス剤が、臨床において承認されている。2つのクラスのFDA承認抗ウイルス薬の中で、ノイラミニダーゼ(NA)阻害剤であるオセルタミビル、ザナミビルおよびペラミビルが、現在、インフルエンザウイルス感染の予防および処置のための唯一の選択肢である。
【0003】
このインフルエンザウイルスの急速な変異能力は、現在のH1N1ブタインフルエンザの大流行による脅威の高まりと、病原性の高いトリH5N1「トリインフルエンザ」株による最近の感染の警戒すべき世界的多発という状況において、特に深刻化している(Khanna et al., Journal of Biosciences, 33(4):475, 2008, Soundararajan et al., Nature Biotechnology 27:510, 2009)。さらに、前世紀の主要なインフルエンザパンデミックのうちの2つは、遺伝子構造を変化させて、ヒト感染を可能にしたトリインフルエンザウイルスから生じた。
【発明の概要】
【0004】
有効な抗インフルエンザ予防薬および治療薬の開発が必要とされている。さらに、これらのインフルエンザウイルスの進化における高い予測不可能性を考慮すれば、株間で有効な(例えば、「ユニバーサルな」または「広スペクトルの」)抗インフルエンザ予防薬および治療薬の開発が特に必要とされている。そのような有効な抗インフルエンザ剤、特にそのようなユニバーサルなまたは広スペクトルの抗インフルエンザ剤が、流布している特定の季節性ウイルス株を標的とするように設計されたワクチンに取って代わるか、またはそれを増強することができる(Ekiert et al., Science, 324(5924):246, 2009およびSui et al., Nat Struct Mol Biol. 16(3):265, 2009)。これとは別にまたはこれに加えて、現在の抗ウイルス療法に取って代わるか、またはそれを増強することができる有効な抗インフルエンザ予防薬または治療薬の開発が必要とされている。
【0005】
本発明は、複合型(CX型)および/またはハイブリッド型(HY型)グリカン結合レクチン(CX/HY型結合レクチン)が、複数のインフルエンザウイルス株に対して広スペクトルの抗ウイルス活性を示すという予期せぬ発見に基づいている。これは、そのようなレクチンが、複数のインフルエンザウイルス株を効果的に中和することができる抗ウイルス活性を示すという最初の報告である。これらの発見は、CX/HY型結合レクチンが、様々なインフルエンザウイルスに対する広スペクトルの中和剤として働き得ることを示している。
【0006】
したがって、本発明は、インフルエンザウイルス感染を処置または予防するための方法であって、それを必要とする対象体に、有効量のCX/HY型結合レクチンまたはそれを含む組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0007】
特に、本明細書に記載のCX/HY型結合レクチンは、トリマンノシルコアと、トリマンノシルコアの1,3マンノースアームおよび/または1,6マンノースアームに結合した少なくとも1つのN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)と、1つ以上のアンテナ残基(例えば、ガラクトース、フコースおよびシアル酸)を含有する、インフルエンザウイルス上のCX型グリカンおよび/またはHY型グリカンと特異的に結合することができる。特定の実施形態において、CX/HY型グリカンは、α1-3結合型Manβ1-2GlcNAcβ1-4(Fucα1-3)Gal部分および/またはα1-6結合型Manβ1-2GlcNAcβ1-4(Fucα1-3)Gal部分を有する。特に、本明細書で用いるCX/HY型結合レクチンは、高マンノース型結合レクチン(HM型結合レクチン)ではない。
【0008】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のCX/HY型結合レクチンは、多量体、例えば二量体、三量体または四量体の形態である。
【0009】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のCX/HY型結合レクチンは、フジマメ(Lablab purpureous)由来のFlt3受容体相互作用レクチン(FRIL)タンパク質である。いくつかの実施形態において、FRILタンパク質は、フジマメの抽出物から精製した天然FRILである。いくつかの実施形態において、FRILタンパク質は、フジマメの水性抽出物から精製した天然FRILである。いくつかの実施形態において、FRILタンパク質は、細菌、酵母、昆虫細胞、バキュロウイルス、哺乳動物細胞またはヒト細胞から過剰発現され得る組換え体であり得る。特定の実施形態において、FRILタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列、または配列番号1と実質的に同一であるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態において、FRILタンパク質は、切断された形態(ループドメインの除去)でFRILポリペプチドを含む。具体的には、切断された形態のFRILは、N末端ドメイン(βサブユニット、例えば配列番号2)およびC末端ドメイン(αサブユニット、例えば配列番号3)を含む。いくつかの実施形態において、βサブユニットおよびαサブユニットは、会合して単量体を形成する;さらに、そのような単量体の2つのユニットが会合して二量体を形成し得て、二量体の2つのユニットが会合して四量体を形成し得る。
【0010】
本明細書に記載の対象体は、インフルエンザウイルス感染に罹患しているか、もしくは罹患しやすいか、またはインフルエンザウイルスに感染していると疑われる。対象体はヒトまたは非ヒト生物体であり得る。
【0011】
本明細書に記載のレクチンは、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、皮下、脳室内、経皮、皮内、直腸、腟内、腹腔内、局所的、粘膜、経鼻、頬側、経腸、舌下、気管内および気管支からなる群から選択される経路による投与のために製剤化され得る。特定の実施形態において、投与は、気管内および気管支注入によるものである。特定の実施形態において、投与は、経口または経鼻吸入によるものであり得る。特定の実施形態において、本明細書に記載のポリペプチドは、経口スプレー、経鼻スプレーまたはエアロゾールとして製剤化される。
【0012】
さらに別の態様において、本発明は、本明細書に記載のレクチンおよび薬学的に許容される添加剤を含む、医薬組成物を提供する。提供される医薬組成物は、インフルエンザウイルス感染を処置または予防するのに有用である。医薬組成物はまた、例えば経口または経鼻吸入による、医薬組成物の投与のためのデバイスに含まれ得る。
【0013】
いくつかの実施形態において、本発明は、1つ以上の容器を含むセットにおいて、投与デバイスによる投与のために製剤化された本明細書に記載のレクチン、例えばフジマメFRILを、そのような投与デバイスと共に含む、キットを提供する。いくつかの実施形態において、適切な投与デバイスは、シリンジ、針、スプレー、フィルター、アプリケーター、およびそれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、提供されるキットは、使用説明書を含む。
【0014】
提供されるレクチン、組成物および方法は、例えば、研究および/または医学において有用である。いくつかの実施形態において、提供されるタンパク質/ポリペプチドおよび方法は、例えば、インフルエンザの予防、処置および/または研究において有用である。
【0015】
さらに、本発明は、他のエンベロープウイルス(enveloped virus)に対する抗ウイルス剤としての本明細書に記載のレクチンを開示する。インフルエンザウイルスに加えて、周知のエンベロープウイルスの例としては、ヘルペスウイルス、パラミクソウイルス、呼吸器多核体ウイルス、コロナウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスおよびSARS-CoVウイルスが挙げられる。特に、抗ウイルス剤としての本明細書に記載のレクチンは、ウイルス粒子のエンベロープ上のCX型および/またはHY型グリカンと結合することにより、これらのエンベロープウイルスを中和するのに有効な量で、必要とする対象体に投与される。
【0016】
本発明の特定の実施形態の詳細は、本明細書に示されている。本発明の他の特徴、目的および利点は、詳細な説明、図、実施例および特許請求の範囲から明らかである。
【0017】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本開示の特定の態様をさらに示すために含まれ、この発明は、本明細書に提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせてこれらの図面の1つ以上を参照することにより、より良く理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、フジマメ水性抽出物の抗インフルエンザ活性を示す。フジマメ属(Lablab)のマメを、図示した工程に従って処理し、遠心分離した上清のマイクロ中和アッセイを、A/California/7/09様ウイルス(H1N1 X181)、A/Vietnam/1194/2004様ウイルス(H5N1 RG14)、A/Victoria/3/75様ウイルス(H3N2 vict)およびA/Shanghai/1/2013様ウイルス(H7N9 shang)の10または100のいずれかのTCID50に対して行った。
【0019】
図2図2は、フジマメ水性抽出物の探索的精製プロセスのフローチャートを示す。採取した画分に関する、抽出工程、沈降工程、陰イオン交換工程、サイズ排除工程およびアフィニティクロマトグラフィー工程のフローチャート。未変性ゲル電気泳動による、中和を担う6つのPAGEバンドの確認、続いて、ゲル溶出、および溶出されたバンドのマイクロ中和アッセイ。矢印は、進行を表す。
【0020】
図3図3は、FRILの精製手順およびFRILの赤血球凝集活性を示す。抽出工程、沈降工程、アフィニティクロマトグラフィー工程および陰イオン交換工程のフローチャート。精製FRILの14%SDS PAGE上での分画、Rapid染色(Rapid stain)での染色。精製プロセスの様々な工程中の、FRILのシチメンチョウ赤血球における赤血球凝集活性。
【0021】
図4A図4Aは、FRIL(-●-)、ConA(-▲-)およびpvFRIL(-■-)のA/California/7/2009様(H1N1)ウイルス、A/Victoria/361/2011様(H3N2)ウイルス、A/Vietnam/1194/2004様(H5N1)ウイルスおよびA/Shanghai/2/2013様(H7N9)ウイルスに対するマイクロ中和アッセイの結果を示す。
【0022】
図4B図4Bは、FRIL(-●-)、bnab FI6v3(-◆-)およびOTC(-▼-)のA/California/7/2009様(H1N1)ウイルス、A/Victoria/361/2011様(H3N2)ウイルス、A/Vietnam/1194/2004様(H5N1)ウイルスおよびA/Shanghai/2/2013様(H7N9)ウイルスに対するマイクロ中和アッセイの結果を示す。
【0023】
図5図5は、Cy3標識(1:1モル比)を用いて実施したFRILグリカンアレイを示す。合計191個の糖を、12.5μg/ml FRIL-Cy3に対してインキュベートし、得られたものを、波長532nmにてスキャンした。
【0024】
図6図6は、FRILがConAとは異なる中和メカニズムを有することを示す。FRIL(-●-)、ConA(-■-)およびbnab FI6v3(-▲-)の、キフネンシン(糖タンパク質プロセシング阻害剤)およびEndo Hで処理したA/California/7/2009様(H1N1)SDG精製ウイルス粒子に対するマイクロ中和アッセイ。異なるキフネンシンおよびEndo Hで処理したA/California/7/2009様(H1N1)SDG精製ウイルス粒子に対するFRIL(青色)、ConA(緑色)およびFI6(オレンジ色)の絶対IC50の比較。FRIL(+KIF -EndoH)および(+KIF +EndoH)のIC50は、試験濃度範囲より上であり(>100μg/ml)、一方、FI6(+KIF +EndoH)は、範囲より下である(<50ng/ml)。
【0025】
図7図7は、糖結合を破壊することによるFRIL中和の阻害を示す。FRILに対するα-マンノシド、D-ガラクトース、D-グルコースおよびL-アラビノースの赤血球凝集阻害アッセイ。4 HAUのFRILは、125~7.8mM α-マンノシドまたは125~62.5mM D-グルコースにより向上する。阻害性または非阻害性単糖の存在下でのFRILマイクロ中和。FRIL中和は、そのレクチン活性を阻害する単糖によってのみ破壊される。
【0026】
図8図8は、トリプシン感受性試験を示す。4~15%SDS PAGEを用いた、非還元性の組換えHA立体構造変化阻害を測定すること。組換えHA(rHA)は、既知の融合阻害剤FI6の1:1比(レーン9)とは対照的に、1:1比(レーン7)または1:3比(レーン8)でFRILを加えたとき、pH変化後のトリプシン消化に対して感受性の高いままであった。TPCKトリプシンは、1:50比で加えた。
【0027】
図9A図9Aは、SEC-MALSおよびネガティブ染色電子顕微鏡観察によるFRIL化学量論の決定を示す。SEC-MALS分析は、本発明の精製FRILが、溶液中で112.2kDaの四量体を形成することを示している(FRIL単量体はおよそ28kDaである)。
【0028】
図9B図9Bは、ネガティブ染色電子顕微鏡観察によるFRIL構造の決定を示す。ネガティブ染色EM(電子顕微鏡観察)(0.5%ギ酸ウラニル)において、67,041個の粒子を選択して、3Dマップを再構築し、その解像度は12.22Åである。四量体構造が観察される。
【0029】
図10A図10Aは、DLSによる、ウイルス粒子のFRILによる凝集を示す。A/California/7/2009様(H1N1)SDG精製ウイルス粒子のFRILによる凝集の動的光散乱測定:未処理(青色)、キフネンシンなしendoHあり(緑色)、キフネンシンありendoHなし(オレンジ色)およびキフネンシンありendoHあり(紫色)。(B)組換えA/California/7/2009(H1N1)HAおよびFRILを1:3モル比で混合したときの沈殿物(precipitant)のSDS PAGE。
【0030】
図10B図10Bは、ネガティブ染色電子顕微鏡観察下でのFRILによるウイルス粒子の凝集を示す。重複するA/California/7/2009様(H1N1)粒子の大きな3次元凝集が、150μg/ml FRIL濃度において観察されたが、FRILで処理していないウイルス粒子について、凝集はほとんど見られなかった。凝集の定量化を、互いに密接したウイルス粒子を手作業でカウントすることにより行った(表2)。32μg/ml FRILまで、凝集体のパーセンテージにおける用量依存的増加が観察されたが、それより高い濃度では、個々の粒子を視覚的に区別するのを困難にさせる層状のウイルスの密集したクランプを形成した。
【0031】
図11図11は、前処理工程に関するマイクロ中和アッセイを示す。MDCK細胞を、レクチンとウイルスを共に(+ +)、レクチンのみ(+ -)、ウイルスのみ(- +)または培地(- -)のいずれかで前処理した。洗浄(PBS洗浄-----)、前処理溶液の除去後、細胞を、培地(- -)、ウイルスのみ(- +)、レクチンのみ(+ -)およびレクチンとウイルスを共に(+ +)、それぞれインキュベートする。(上部パネル)FRILでの前処理アッセイ。(下部パネル)ConAでの前処理アッセイ。
【0032】
図12図12は、FRILの鼻腔内投与手順、ならびにFRILが致死量のH1N1 X-181インフルエンザウイルス負荷からマウスを保護することを示しているその結果および体重を示す。
【0033】
図13図13は、本発明のいくつかの実施形態において本明細書で用いる、FRILの配列特徴を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下の、本開示の実施形態の詳細な説明において、添付の図面が参照され、参考文献のように、類似した要素を示し、かつ本開示が実施され得る特定の実施形態が実例として示されている。これらの実施形態は、当業者が本開示を実施できるように十分詳細に記載され、他の実施形態が利用され得ること、ならびに論理的な、構造的な、機能的なおよび他の変化が、本開示の範囲から逸脱することなく、なされ得ることは、理解されるべきである。したがって、以下の詳細な説明は、限定する意味でとられるべきではない。
【0035】
本明細書で用いられる全ての技術的および科学的用語は、下記で他に規定がない限り、当業者により一般的に理解されているのと同じ意味をもつことを意図する。本明細書で用いられる技術への言及は、当業者に明らかであろう、それらの技術の改変、または等価のもしくは後になって開発される技術を含む、当技術分野において一般的に理解されている技術を指すことを意図する。加えて、本発明である主題をより明確かつ簡潔に記載するために、本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる特定の用語について、以下の定義が提供される。
【0036】
本明細書で用いられる場合、単数形「ある(a)」、「ある(an)」および「その(the)」は、文脈上他に明らかに示されない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「ある構成要素(a component)」への言及は、複数の、そのような構成要素および当業者に公知のその等価物を含む。
【0037】
本明細書で用いられる場合、用語「含む(comprise)」または「含むこと(comprising)」は、一般的に、1つ以上の特徴、成分または構成要素の存在を可能にすることを意味する、含む(include)/含むこと(including)の意味で用いられる。用語「含む(comprise)」または「含むこと(comprising)」は、用語「からなる(consists of)」または「からなること(consisting of)」を包含する。
【0038】
本明細書で用いられる場合、用語「ポリペプチド」は、例えば1,000アミノ酸長以下、例えば800アミノ酸長以下、600アミノ酸長以下、400アミノ酸長以下、300アミノ酸長以下、150アミノ酸長以下、100アミノ酸長以下、50アミノ酸長以下、25アミノ酸長以下、20アミノ酸長以下で構成される、ペプチド結合により連結されたアミノ酸残基で構成される重合体を指す。いくつかの実施形態において、用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、本明細書で交換可能に用いられる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポリペプチドは、天然の、合成された、組換え型のおよび/または分解もしくは消化された形態を含むことを意味し得る。
【0039】
本明細書で用いられる場合、「に対応する」は、タンパク質もしくはペプチドにおける列挙された位置における残基、またはタンパク質もしくはペプチドにおける列挙された残基と類似するか、相同であるか、または等価である残基を指す。
【0040】
本明細書で用いられる場合、用語「実質的に同一」は、85%超、好ましくは90%、より好ましくは95%、最も好ましくは100%の相同性を有する2つの配列を指す。
【0041】
2つの配列の同一性のパーセントを決定するために、配列は、最適な比較を目的として、アライメントされる(例えば、第2のアミノ酸配列との最適なアライメントのために第1のアミノ酸配列の配列にギャップを導入することができる)。同一性のパーセントの計算において、典型的には、完全な一致がカウントされる。2つの配列間の相同性または同一性のパーセントの決定は、当技術分野で公知の数学的アルゴリズム、例えば、BLASTおよびGapped BLASTプログラム、NBLASTおよびXBLASTプログラムまたはALIGNプログラムを用いて達成することができる。
【0042】
ポリペプチドが、その活性または機能には無関係なポリペプチドの特定の部分内になされ、かつ、許容されるレベルの等価または類似の生物学的活性または機能を有する変異体をもたらし得る、限られた数の変化または改変を有し得ることは、理解できることである。用語「許容されるレベル」は、当技術分野で公知の標準アッセイにおいて試験した、参照タンパク質のレベルの少なくとも20%、50%、60%、70%、80%または90%を意味し得る。したがって、生物学的に機能的な変異体ポリペプチドは、特定のアミノ酸残基が置換されていてもよいポリペプチドとして、本明細書で定義される。異なる置換を有するポリペプチドが、本発明に従って作製および使用され得る。そのようなポリペプチドの構造において改変および変更がなされても、なお、類似または所望の特性を有する分子を得ることができる。例えば、特定のアミノ酸が、ペプチド/ポリペプチド構造における他のアミノ酸と、感知できるほどの活性損失を生じることなく、置換され得る。変異体は、当業者に知られているポリペプチド配列を変化させるための方法に従って製造することができ、その方法は、例えば、そのような方法を集めた参考文献、例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, J. Sambrook, et al., eds., Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989で見られる。例えば、アミノ酸の保存的置換には、以下の群内のアミノ酸の間で行われる置換が挙げられる:(i)A、G;(ii)S、T;(iii)Q、N;(iv)E、D;(v)M、I、L、V;(vi)F、Y、W;および(vii)K、R、H。
【0043】
本発明のポリペプチドは、固相合成または均一溶液中での合成などのタンパク質の化学において周知の技術を用いる化学合成により生成され得る。本発明のポリペプチドはまた、天然源から得られ、抽出により単離され得る。例えば、図1および2を参照されたい。
【0044】
いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドは、組換え技術を用いて製造され得る。この関連において、本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組換え核酸、およびそのような組換え核酸を含む宿主細胞が提供される。宿主細胞は、目的のポリペプチドの発現のための適切な条件下で培養され得る。特定の実施形態において、宿主細胞は、細菌、真菌、昆虫または哺乳動物であり得る。真核動物発現系において、本発明のポリペプチドは、宿主細胞による翻訳後修飾、例えばグリコシル化、リン酸化を受け得ることが当業者に理解されるであろう。ポリペプチドの発現は、それらが連続して産生されるようなに構成的であり得て、または発現を開始するのに刺激を必要とする誘導性であり得る。誘導性発現の場合、タンパク質産生は、例えば、培地への誘導物質、例えばイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)またはメタノールの添加により、所望の時に開始することができる。ポリペプチドは、当技術分野で公知の多くの技術、例えばクロマトグラフィー、例えばHPLCまたはアフィニティカラムにより宿主細胞から回収および精製することができる。
【0045】
いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドは、ポリペプチドの製造または抽出のプロセスに関与し得る細胞材料、化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まないならば、「単離された」または「精製された」と言うことができる。用語「単離された」または「精製された」は、そのポリペプチドが、例えば、全ての他の物質(例えば不純物または細胞成分)を除去することにより、「絶対的に」単離または精製されているという程度を必ずしも反映するわけではないことが理解される。場合によっては、例えば、単離または精製されたポリペプチドには、50重量%未満、40重量%未満、30重量%未満、20重量%未満もしくは10重量%未満の他のタンパク質(例えば細胞タンパク質)を有し、50容量%未満、40容量%未満、30容量%未満、20容量%未満もしくは10容量%未満の培地を有し、または50重量%未満、40重量%未満、30重量%未満、20重量%未満もしくは10重量%未満の、合成手順に関与する化学的前駆体もしくは他の化学物質を有する、そのペプチドを含有する調製物が挙げられる。
【0046】
インフルエンザウイルスは、オルトミクソウイルス(Othromyxovirus)科のエンベロープをもつRNAウイルスである。A型、B型およびC型の3つのタイプのインフルエンザウイルスがある。ヒトにおける主な季節性および流行性のインフルエンザ感染の原因である2つの類型、インフルエンザウイルスA型およびB型は、ウイルスエンベロープ上に、ヘマグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)の2つの糖タンパク質を有する。これらの2つの膜タンパク質のN-グリコシル化は、様々な複合型、高マンノース型またはハイブリッド型のオリゴ糖を含有し得て、それらの多くは、タンパク質構造または宿主抗体検出からの回避に必須である[1、2]。
【0047】
中和エピトープをマスクし得る、特にHA上の、より多くのグリコシル化部位の付加は、免疫が増加した集団におけるウイルスの抗原ドリフトおよび持続的循環の主な寄与因子であると考えられている。しかしながら、このストラテジーはまた、ウイルス適応性へのかなりの負担を伴い、受容体結合部位の近くのあまりにも多くのグリコシル化部位は、HA受容体結合能に影響し得て、加えて、自然免疫系のコレクチンに対して感受性にし得る[2]。現在の状況では、多くの循環しているインフルエンザ亜型が、最初の導入以来、HA上のグリコシル化部位の数を着実に増加させている[3]。
【0048】
用語「インフルエンザA型亜型」または「インフルエンザA型ウイルス亜型」は、交換可能に用いられ、ヘマグルチニン(H)ウイルス表面タンパク質により特徴づけられるインフルエンザA型ウイルス変異体を指し、それ故に、例えばH1、H3およびH5など、Hの番号で標識される。また、その亜型はさらに、ノイラミニダーゼ(N)ウイルス表面タンパク質によって特徴づけられ得て、例えばN1およびN2など、Nの番号によって示される。したがって、亜型は、HとNの番号両方によって呼ばれ得て、例えば、H1N1、H5N1およびH5N2などである。その用語は、具体的には、通常変異から生じ、かつ異なる病原性プロファイルを示す、各亜型内の全株(絶滅株を含む)を含む。そのような株はまた、過去、現在および未来の全ての分離株を含む、ウイルス亜型の様々な「分離株」と呼ばれる。したがって、この関連において、用語「株」および「分離株」は、交換可能に用いられる。亜型は、インフルエンザA型ウイルスに基づいた抗原を含有する。抗原は、ヘマグルチニンウイルス表面タンパク質に基づき得て、「HA抗原」と名づけることができる。場合によっては、そのような抗原は、特定の亜型、例えば、H1亜型およびH5亜型などのタンパク質に基づき得て、それぞれ、H1抗原およびH5抗原と名づけられ得る。
【0049】
本明細書で用いられる場合、用語「N-グリカン」は、N-結合型多糖またはオリゴ糖を意味する。例えば、N-結合型オリゴ糖は、タンパク質におけるアスパラギン残基のアミド窒素に結合したN-アセチルグルコサミン残基によって結合しているものである。N-グリカンは、Man3GlcNAc2(Man3)(Man=マンノース;Glc=グルコース;Nac=N-アセチル;GlcNAc=N-アセチルグルコサミン)の共通の五糖コア構造を有する。N-グリカンは、Man3GlcNAc2コア構造に付加される分岐(アンテナ)構成要素に関して分類される(例えば、高マンノース、複合またはハイブリッド)。「高マンノース型」(HM型)N-グリカンは、典型的には、アンテナにおいてマンノースだけを有する、例えば、全部で5つのマンノース残基(Man5)またはより多いマンノース残基(例えば、Man6、Man7、Man8、Man9)を有する、N-結合型多糖またはオリゴ糖を意味し得る。「複合型」(CX型)N-グリカンは、典型的には、「トリマンノース」コアの、1,3マンノースアームに結合した少なくとも1つのGlcNAcおよび1,6マンノースアームに結合した少なくとも1つのGlcNAcを有する、N-結合型多糖またはオリゴ糖を意味する。「ハイブリッド型」(H型)N-グリカンは、トリマンノースコアの1,3マンノースアームの末端に少なくとも1つのGlcNAc、およびトリマンノースコアの1,6マンノースアーム上の0個またはそれ以上のマンノースを有する、N-結合型多糖またはオリゴ糖を意味する。1,3マンノースアームおよび/または1,6マンノースアームに結合したGlcNAcは、更なるアンテナ残基、特に、ガラクトース(Gal)、シアル酸(SA)およびフコース(Fuc)残基をさらに有し得る。特定の実施形態において、CX型および/またはHY型グリカンは、α1-3結合型Manβ1-2GlcNAcβ1-4(Fucα1-3)Gal部分および/またはα1-6結合型Manβ1-2GlcNAcβ1-4(Fucα1-3)Gal部分を有する。
【0050】
レクチンは、自然界全体に渡る多様な門に見られる糖鎖(carbohydrate)結合タンパク質である。マメ科植物レクチンは、レクチンの歴史的によく特徴づけられたファミリーであり、タチナタマメのコンカナバリア・エンシフォルミス(Concanvalia ensiformis)由来のコンカナバリンA(ConA)によって例示される。この大きなファミリーは、多様なマメ科植物種において50個を超えるレクチンおよび2個の非レクチンを表し、全体を通して、保存された三次構造および配列同一性(>35%)を共有する[9]。それらが類似した構造を共有するとは言え、限られた数の可変残基により囲まれた単糖特異性ループによって決定される糖鎖特異性は、一枚岩とは程遠い。研究により、Glc/Man特異的(ConA、ソラマメ連(Vicieae)レクチン)、Gal/Galnac特異的(ピーナッツ凝集素)、フコース特異的(ウレックス・エウロパエウス(Ulex europaeus)由来のUEA-1)および複合型特異的(グリフォニア・シンプリシフォリア(Griffonia simplicifolia)由来のレクチンIVに見られるLewis-b四糖特異性)であるレクチンが見出されている[9、10]。さらに、二量体および四量体などの四次構造を形成するこのファミリーのレクチンの性向は、それらがいくつかの興味深い生物学的効果を発揮することを可能にする。
【0051】
過去10年の間に益々、シアノビリン-N、シトビリン(scytovirin)、およびグリフィスシン(griffithsin)などのレクチンが、多数のエンベロープウイルスに対する抗ウイルス活性を示すことが報告されている。レクチンは、自然界全体に渡る多様な門に見られる糖鎖結合タンパク質である。その発見に関する研究、抗ウイルス活性のスペクトル、レクチンがエンベロープ糖タンパク質上の標的オリゴ糖に結合する特異的メカニズム、レクチン糖鎖特異性の構造的基礎、レクチン抗ウイルス活性のメカニズムおよび親和性と結合性の両方への依存性、ならびにウイルスがレクチンに対して抵抗性になり得る手段が、多数の研究グループによって追求されている。抗ウイルス剤として植物レクチンを用いることの有望な見通しにもかかわらず、これらの薬剤が臨床的に利用され得る前に、まだ相当なハードルを克服する必要がある。ヒト身体への外来物質の導入、赤血球凝集/白血球凝集能力[25]、および分裂促進効果[26]が主な懸念である。また、ConAは、類洞内皮細胞(マメ科植物レクチンファミリーにおける近い類縁体により共有され得る形質)と結合することにより肝毒性を誘導する[27]。現在、臨床試験中である唯一の抗ウイルス性レクチンは、HIVの予防のための腟用ゲルとしてのグリフィスシン(GRFT)(紅藻類グリフィシア種(Griffithsia sp.)から単離されたマンノース結合レクチン)である[28]。抗ウイルス治療および予防のためのレクチンのインビボ有効性もまた、毒性、免疫原性および臨床利用のための大規模製造の全ての局面を含め、継続的な研究の領域である。
【0052】
本明細書で用いられる場合、用語「複合型(CX型)グリカン結合レクチン」は、複合型N-グリカンと特異的に結合することができるレクチンを指す。
【0053】
本明細書で用いられる場合、用語「ハイブリッド型(HY型)グリカン結合レクチン」は、ハイブリッド型N-グリカンと特異的に結合することができるレクチンを指す。
【0054】
本明細書で用いられる場合、用語「高マンノース型(HM型)グリカン結合レクチン」は、高マンノース型N-グリカンと特異的に結合することができるレクチンを指す。
【0055】
本明細書で用いられる場合、分子は、別の標的とのときより、より頻繁に、より迅速に、より長い持続時間でおよび/またはより高い親和性で特定の標的と反応または会合するとき、「特異的結合」を示すと言われる。例えば、第1の糖鎖標的と特異的に結合するレクチン分子が、第2の糖鎖抗原と特異的または優先的に結合する場合も結合しない場合もあることもまた、この定義を読むことにより理解される。したがって、「特異的結合」または「優先的結合」は、必ずしも排他的結合を必要とするわけではない(しかし、排他的結合を含むことができる)。一般的に、必ずしもというわけではないが、結合への言及は、優先的結合を意味する。
【0056】
以前Dolichos lablabとして知られ、hyacinth bean、field beanまたはIndian Lablab beanと一般的に呼ばれている、フジマメ(Lablab purpureus)は、ファバセアエ科(Fabaceae family)におけるマメ科植物である。世界中で、観賞用庭園植物、家庭園芸植物またはウシ飼料として栽培されており[30]、中国伝統医学(CTM)において薬用性質を有することも報告されている。フジマメ種子の水性抽出物から以下の2つのレクチンが単離されている[11、12]:Dolichos lablabレクチン1(DLL1)(Glc/Manレクチンと称される)[13]およびDolichos lablabレクチン2(DLL2)(ポリフェノールオキシダーゼ活性を有するガラクトース特異的レクチン)[14、15]。DLL1は、懸濁培養中、造血前駆細胞を延長する能力のためにFlt3受容体相互作用レクチン(FRIL)としても知られている[16]。PCT/US2006/013149(WO2006/110577)もまた参照。
【0057】
FRILのcDNA配列および結晶構造は、以前に解明されている[16、17]。cDNA配列は、FRIL単量体が、単一ペプチド(プロレクチン)として翻訳され、その後、液胞において連結ループおよびc末端のタンパク質消化により、αサブユニットおよびβサブユニットへ翻訳後プロセシングされることを示している。cDNA配列はまた、ConAと48%の配列同一性を示す。Man(α1-3)[Man(α1-6)]Man三糖と複合したFRILの構造は、3つのβシート:6本鎖バックシート、7本鎖フロントシート、および単一糖鎖認識ドメイン(CRD)が位置しているスキャフォールドを形成する2本鎖接続シートを含む、典型的なConA様レクチンと似ている[9]。更なる研究により、αサブユニットおよびβサブユニットのタンパク質消化が、均一ではなく、かつαサブユニットの開始地点(接続ループに最も近い)に2つのn-グリコシル化部位を含む場合も含まない場合もあり、その結果として、SDS-PAGE上での分子量の差を生じ得ることが示された[18]。FRIL多量体においてドメイン交換はない。
【0058】
FRILの糖鎖特異性は、赤血球凝集阻害アッセイ(HAI)および固相結合IgMとのFRIL結合の阻害のELISAに基づいた検出により、以前に決定されている[13]。最良の単糖リガンドは、マンノース、グルコースおよびN-アセチルグルコサミンであり、αアノマー配置に対して強い優先度があると報告された。オリゴ糖の中で、トレハロース、トレハロサミンおよび分岐型トリマンノシドMan(α1-3)[Man(α1-6)]ManOMeが、最良のリガンドであると報告された。構造的に異なる酵母マンナンは全そのレクチンを沈殿させることができなかった。可溶化マウス脾細胞膜タンパク質に関する免疫沈殿プロファイルによりFRILとConAを比較する古い研究は、単糖親和性が類似性しているにもかかわらず、異なるタンパク質と結合することを示した[19]。しかしながら、細胞またはウイルス糖タンパク質上に共通して存在するN-またはO-グリカンとのFRILの結合親和性に関して研究は行われていない。
【0059】
前述の、ヒト臍帯血前駆体を保存するのを助けるFlt3受容体相互作用とは別に、FRILはまた、Tリンパ球における強力な分裂促進能およびIL-2分泌の誘発を有すること[20]、神経前駆細胞の保存[21]、ならびに免疫調節を通して血管新生を低下させることにより抗腫瘍活性を発揮すること[20]が示されている。本発明者らが知る限りでは、抗ウイルスまたは抗インフルエンザ効果を生じるFRILに関して、以前の文献における言及は存在せず、とはいえ、その近い類縁体ConAの抗インフルエンザ活性は以前注目されていた[22]。
【0060】
本発明により、FRILが複数のインフルエンザウイルス株に対する広スペクトルの抗ウイルス活性を示すCX/HY型結合レクチンであることが初めて実証されている。
【0061】
本明細書で用いられる場合、用語「天然FRIL」は、そのタンパク質が天然で発現しているフジマメの種子から単離されたFRILタンパク質を意味する。
【0062】
本明細書で用いられる場合、用語「組換えFRIL」は、そのタンパク質が組換え遺伝子により発現している生物体から単離されたFRILタンパク質を意味し、その生物体には、非限定的に、FRILタンパク質をコードする組換えコンストラクトをトランスフェクションされている細菌、酵母、植物または動物の細胞が挙げられる。組換えFRILタンパク質は、天然FRILタンパク質と同一のアミノ酸配列、または実質的に機能を変化させることがない、サイレント変異、例えば1つ以上のアミノ酸の挿入、欠失および/もしくは置換(N末端付加または欠失、C末端付加または欠失およびキメラタンパク質を含むがこれらに限定されない)を含むアミノ酸配列を有し得る機能的等価物を有し得る。
【0063】
本明細書で用いられる場合、用語「FRIL」は、天然FRILタンパク質または組換えFRILタンパク質を指し得る。特定の実施形態において、FRILは、約272個のアミノ酸を含むタンパク質である。それは、通常成熟タンパク質から切断される、N末端における8アミノ酸残基長のリーディング配列から始まる。残基9からおよそ121~138までは、N末端ドメイン(βサブユニット、約12~18kDa)を構成し、およそ122~139から272までの残基は、C末端ドメイン(αサブユニット、約12~18kDa)を構成し、約122~138の残基は、様々な程度で(完全にまたは部分的に)タンパク質消化されるループドメインを構成する。FRILの例示的アミノ酸配列を図14(配列番号1)に示す。特定の実施形態において、アミノ酸残基9~121(配列番号2)は、N末端ドメイン(βサブユニット)を構成し、アミノ酸残基139~272(配列番号4)は、アミノ酸残基122~138(配列番号3)のループドメインにより連結された、C末端ドメイン(αサブユニット)を構成する。特定の実施形態において、βサブユニットおよびαサブユニットは、会合して単量体(αβ)を形成する。特定の実施形態において、そのような単量体の2つのユニットは、会合して二量体(α2β2)を形成し得る。特定の実施形態において、そのような二量体の2つのユニットは、会合して四量体(α2β2+α2β2)を形成し得る。
【0064】
完全長FRILには、(i)配列番号1に示されたアミノ酸配列と実質的に同一(例えば、配列番号1と少なくとも85%(例えば、少なくとも90%、95%または97%))同一)であるアミノ酸配列;および(ii)本明細書に示されたFRILをコードする任意の核酸配列と少なくとも中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるか、または同義のコドン(例えば、同一のヌクレオチド配列を有しないが、同一のアミノ酸をコードするコドン)の使用がなければ、本明細書に示されたFRILをコードする任意の核酸配列と少なくとも中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる、核酸配列によりコードされるアミノ酸配列を含むものも含まれ得る。
【0065】
本明細書で用いられる場合、用語「投与する」、「投与すること」または「投与」は、本発明の化合物またはその医薬組成物を埋め込むこと、吸収すること、経口摂取すること、注射すること、吸入すること、または他の方法で導入することを指す。
【0066】
本明細書で用いられる場合、用語「処置」、「処置する」および「処置すること」は、本明細書に記載の「病理学的状態」(例えば、疾患、障害もしくは状態、またはその1つ以上の徴候もしくは症状)を反転させること、軽減すること(alleviating)、その発症を遅延させること、またはその進行を抑制することを指す。いくつかの実施形態において、処置は、1つ以上の徴候または症状が発生し、または観察された後に投与され得る。他の実施形態において、処置は、疾患または状態の徴候または症状の非存在下で投与され得る。例えば、処置は、罹患しやすい個体(例えば、疾患のリスクがある個体)に症状の発症前に(例えば、症状の病歴に照らして、および/または遺伝的もしくは他の感受性因子に照らして)投与され得る。処置はまた、症状が消散した後も、例えば再発を遅延させ、または防止するために、継続され得る。特に、用語「処置すること」または「処置」は、1つ以上の抗インフルエンザA型、B型またはC型ウイルス薬(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)を、インフルエンザウイルス感染、またはその症状もしくはそれになりやすい素因を有する対象体(例えば、ヒト患者)に、治療効果を与えるために、例えば、その感染、その症状、またはそれになりやすい素因を治癒させ、軽減し(relieve)、変化させ、影響を及ぼし、寛解させ、または防止するために、投与することを指す。そのような対象体は、任意の適切な診断方法からの結果に基づいて医療専門家によって特定され得る。
【0067】
本明細書に記載の化合物または任意の活性成分の「有効量」は、所望の生物学的応答、すなわち、状態を処置することを誘発するのに十分な量を指す。当業者により理解されるように、化合物の有効量は、所望の生物学的エンドポイント、化合物の薬物動態、処置されている状態、投与様式、ならびに対象体の年齢および健康などの因子に依存して変化し得る。有効量は、治療的および予防的処置を包含する。
【0068】
具体的には、「有効量」は、1つ以上の所望の応答を生じる、例えばウイルス複製を阻害する、単独または更なる投薬と一緒のいずれかでの、抗インフルエンザ剤の量である。インフルエンザウイルスにより引き起こされる感染を処置する場合、所望応答には、疾患の進行を阻害すること、またはインフルエンザ感染に関連した1つ以上の症状を緩和することが挙げられる。これは、疾患の進行を一時的に遅らせることのみを含み得るが、より好ましくは、疾患の進行を永久に停止させることを含む。これは、日常的な方法によりモニターされ得る。疾患または状態の処置に対する所望の応答はまた、疾患または状態の発症を遅延させ、またはさらにその発症を予防することでもあり得る。
【0069】
有効量は、当然のことながら、処置されている特定の状態、状態の重症度、年齢、身体状態、サイズ、ジェンダーおよび体重を含む個々の患者パラメータ、処置の期間、併用療法(もしあれば)の性質、特定の投与経路、および医療従事者の知識および専門知識の範囲内の同様の因子に依存する。これらの因子は、当業者によく知られており、日常的な実験のみで対処することができる。一般的には、個々の構成要素またはその組合せの最高用量、すなわち、健全な医学的判断による最も高い安全用量が用いられることが好ましい。しかしながら、患者が、医学的理由、心理的理由のために、または実質的にいかなる他の理由のためにしても、より低い用量または忍容量を主張し得ることは、当業者により理解されている。
【0070】
本明細書に記載の抗インフルエンザ剤(例えばポリペプチド)は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、皮下、脳室内、経皮、皮内、直腸、腟内、腹腔内、局所的、粘膜、経鼻、頬側、経腸、舌下、気管内および気管支からなる群から選択される経路による投与のために製剤化され得る。特定の実施形態において、投与は、気管内および気管支注入によるものである。特定の実施形態において、投与は、経口または経鼻吸入によるものであり得る。特定の実施形態において、本明細書に記載のポリペプチドは、経口スプレー、経鼻スプレーまたはエアロゾールとして製剤化される。
【0071】
本明細書に記載の抗インフルエンザ剤(例えばポリペプチド)は、インフルエンザウイルス感染を予防するための医薬部外品として製剤化され得る。医薬部外品は、ミスト、フィルターコーティング剤、ハンドウォッシュ、マウスウォッシュ、消毒剤、シャワーフォーム、ウォーターティッシュ、洗剤石鹸、抗ウイルスフィルターまたは抗ウイルスマスクであり得る。特定の実施形態において、ポリペプチドは、感染性ウイルスが口および/または鼻からマスク着用者の系へ侵入するのを防止する抗ウイルスマスクとして製剤化される。特定の実施形態において、ポリペプチドは、周囲空気中に浮遊する感染性ウイルスを捕捉し、その捕捉されたウイルスを不活性化して、空気を清浄にすることができる抗ウイルスフィルターとして製剤化される。
【0072】
本明細書に記載の抗インフルエンザ剤(例えばポリペプチド)は、薬学的に許容される担体または添加剤と混合されて、インフルエンザウイルス複製を阻害し、および/またはインフルエンザウイルスによって引き起こされる感染を処置することにおける使用のための医薬組成物を形成することができる。本明細書で用いられる場合、「阻害すること」、「阻害」、「阻害する」、「阻害剤」などは、対照ビヒクルと比較して、細胞において、特定の生物学的プロセス(例えば、インフルエンザウイルス複製)の活性を低下させ、遅くし、停止させまたは防止する抗インフルエンザ剤の能力を指す。場合によっては、抗インフルエンザ剤は、ウイルス複製のレベルを少なくとも20%(例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%)阻害することができる。
【0073】
医薬組成物における担体は、製剤の活性成分と適合性であり(好ましくは、安定化させることができる)、かつ処置されるべき対象体に有害ではないという意味において「許容され」なければならない。例えば、本明細書に記載の抗ウイルス剤とより可溶性の複合体を形成するシクロデキストリンなどの可溶化剤、またはより多くの可溶化剤が、抗ウイルス剤の送達のための薬学的担体として利用され得る。他の担体の例には、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびD&C Yellow # 10が挙げられる。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Edition (Lippincott Williams & Wilkins, 2005);およびGoodman and Gilman's ”The Pharmacological Basis of Therapeutics”, Tenth Edition, Gilman, J. Hardman and L. Limbird, eds., McGraw-Hill Press, 155-173, 2001を参照されたい。
【0074】
薬学的に許容される添加剤/担体には、望まれる特定の剤形に適する、あらゆる溶媒、希釈剤または他の液体ビヒクル、分散剤、懸濁補助剤、界面活性剤、等張化剤、増粘剤または乳化剤、保存剤、固体結合剤、滑沢剤などが挙げられる。医薬組成物の製剤化および/または製造における一般的な考慮すべき事柄は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Sixteenth Edition, E. W. Martin (Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1980)およびRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Edition (Lippincott Williams & Wilkins, 2005)で見つけ得る。
【0075】
本明細書に記載の医薬組成物は、薬理学分野において公知の任意の方法により製造することができる。一般的に、そのような製造方法は、本発明の化合物(「活性成分」)を担体および/または1つ以上の他の付属成分と合わせる工程、ならびに、必要なおよび/または望ましい場合、所望の単回または複数回の用量単位へ生成物を成形しおよび/または包装する工程を含む。
【0076】
医薬組成物は、単回単位用量および/または複数の単回単位用量として、製造され、包装され、および/またはバルクで販売され得る。本明細書で用いられる場合、「単位用量」は、予め決められた量の活性成分を含む医薬組成物の個別の量である。活性成分の量は、一般的に、対象体に投与される活性成分の投与量、および/またはそのような投薬量の2分の1もしくは3分の1などの、そのような投与量の都合の良い一部分と等しい。
【0077】
本発明の医薬組成物における活性成分、薬学的に許容される添加剤および/または任意の更なる成分の相対的量は、処置される対象体の同一性、サイズおよび/または状態、ならびに組成物が投与される経路に応じて変化する。例として、組成物は、0.1%~100%(w/w)の活性成分を含み得る。
【0078】
提供する医薬組成物の製造に用いられる薬学的に許容される添加剤には、不活性な希釈剤、分散剤および/もしくは造粒剤、界面活性剤および/もしくは乳化剤、崩壊剤、結合剤、保存剤、緩衝剤、滑沢剤、ならびに/または油が挙げられる。ココアバターおよび坐剤ワックス、着色剤、コーティング剤、甘味剤、香料および芳香剤などの添加剤もまた、組成物中に存在し得る。
【0079】
例示的な希釈剤には、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウム、ラクトース、スクロース、セルロース、微結晶セルロース、カオリン、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、コーンスターチ、粉糖、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0080】
例示的な結合剤には、デンプン(例えば、コーンスターチおよびデンプンペースト)、ゼラチン、糖(例えば、スクロース、グルコース、デキストロース、デキストリン、糖蜜、ラクトース、ラクチトール、マンニトールなど)、天然および合成ゴム(例えば、アカシアゴム、アルギン酸ナトリウム、アイリッシュ・モス(Irish moss)の抽出物、パンワーガム(panwar gum)、ガティガム(ghatti gum)、イサポールハスク(isapol husk)の粘液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶セルロース、酢酸セルロース、ポリ(ビニルピロリドン)、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(Veegum)およびカラマツのアラボガラクタン(arabogalactan))、アルギン酸塩、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、無機カルシウム塩、ケイ酸、ポリメタクリレート、ワックス、水、アルコール、ならびに/またはそれらの混合物が挙げられる。
【0081】
例示的な保存剤には、抗酸化剤、キレート剤、抗微生物性保存剤、抗真菌性保存剤、アルコール保存剤、酸性保存剤および他の保存剤が挙げられる。
【0082】
例示的な抗酸化剤には、αトコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アコルビル(acorbyl palmitate)、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウムおよび硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0083】
例示的なキレート剤には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびその塩と水和物(例えば、エデト酸ナトリウム、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸二ナトリウムカルシウム、エデト酸二カリウムなど)、クエン酸およびその塩と水和物(例えば、クエン酸一水和物)、フマル酸およびその塩と水和物、リンゴ酸およびその塩と水和物、リン酸およびその塩と水和物、ならびに酒石酸およびその塩と水和物が挙げられる。例示的な抗微生物性保存剤には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミドウレア、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコールおよびチメロサールが挙げられる。
【0084】
例示的な抗真菌性保存剤には、ブチルパラベン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウムおよびソルビン酸が挙げられる。
【0085】
例示的なアルコール保存剤には、エタノール、ポリエチレングリコール、フェノール、フェノール化合物、ビスフェノール、クロロブタノール、ヒドロキシベンゾエートおよびフェニルエチルアルコールが挙げられる。
【0086】
例示的な酸性保存剤には、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、β-カロテン、クエン酸、酢酸、デヒドロ酢酸、アスコルビン酸、ソルビン酸およびフィチン酸が挙げられる。
【0087】
他の保存剤には、トコフェロール、酢酸トコフェロール、メシル酸デテロキシム(deteroxime mesylate)、セトリミド、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(butylated hydroxytoluened)(BHT)、エチレンジアミン、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ラウレス硫酸ナトリウム(SLES)、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、Glydant Plus、Phenonip、メチルパラベン、Germall 115、Germaben II、Neolone、KathonおよびEuxylが挙げられる。特定の実施形態において、保存剤は抗酸化剤である。他の実施形態において、保存剤はキレート剤である。
【0088】
例示的な緩衝剤には、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、塩化アンモニウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グルビオン酸カルシウム、グルセプト酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、D-グルコン酸、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、プロパン酸、レブリン酸カルシウム、ペンタン酸、リン酸水素カルシウム、リン酸、リン酸カルシウム三塩基性、水酸化リン酸カルシウム、酢酸カリウム、塩化カリウム、グルコン酸カリウム、カリウム混合物、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸カリウム混合物、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム混合物、トロメタミン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルギン酸、発熱物質を含まない水、等張性食塩水、リンゲル液、エチルアルコール、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0089】
例示的な滑沢剤には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、シリカ、タルク、麦芽、ベヘン酸グリセリル、水素添加植物油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシン、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0090】
例示的な天然油には、アーモンド、杏仁、アボカド、ババス、ベルガモット、クロフサスグリ(black current)種子、ルリジサ、ケード(cade)、カモミール、キャノーラ、キャラウェイ、カルナバ、トウゴマ、シナモン、ココアバター、ココナッツ、タラ肝臓、コーヒー、トウモロコシ、綿実、エミュー、ユーカリ、月見草、魚、亜麻仁、ゲラニオール、ウリ類、ブドウ種子、ヘーゼルナッツ、ヒソップ、ミリスチン酸イソプロピル、ホホバ、ククイの実、ラバンジン、ラベンダー、レモン、アオモジ(Litsea cubeba)、マカダミアナッツ(macademia nut)、マロー、マンゴー種子、メドウフォーム種子、ミンク、ナツメグ、オリーブ、オレンジ、オレンジラフィー、パーム、パーム核、桃仁、ピーナッツ、ポピーシード、カボチャ種子、菜種、米糠、ローズマリー、紅花、サンダルウッド、サスクアナ(sasquana)、セイボリー、シーバックソーン、ゴマ、シアバター、シリコン、大豆、ヒマワリ、ティーツリー、アザミ、椿、ベチベル、クルミおよびコムギ胚芽の油が挙げられる。例示的な合成油には、ステアリン酸ブチル、トリカプリル酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、シクロメチコン、セバシン酸ジエチル、ジメチコン360、ミリスチン酸イソプロピル、ミネラルオイル、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、シリコンオイル、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
経口および非経口投与のための液体剤形には、薬学的に許容される乳剤、マイクロ乳剤(microemulsions)、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が挙げられる。活性成分に加えて、液体剤形は、当技術分野において一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(例えば綿実、落花生、トウモロコシ、胚芽、オリーブ、トウゴマおよびゴマの油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物を含み得る。不活性な希釈剤の他に、経口組成物は、補助剤、例えば湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、香料および芳香剤を含み得る。非経口投与についての特定の実施形態において、本発明のコンジュゲートは、Cremophor、アルコール、油、変性油、グリコール、ポリソルベート、シクロデキストリン、ポリマー、およびそれらの混合物などの可溶化剤と混合される。
【0092】
投与が検討される「対象体」には、ヒト(すなわち、任意の年齢群、例えば小児対象体(例えば乳児、子ども、思春期)または成人対象体(例えば若年成人、中年成人または高齢者)の男性または女性)、ならびに/または他の非ヒト動物、例えば哺乳動物(例えば霊長類(例えば、カニクイザル、アカゲザル);商業的関連のある哺乳動物、例えばウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ネコおよび/またはイヌ)、トリ(例えば商業的関連のあるトリ、例えばニワトリ、アヒル、ガチョウおよび/またはシチメンチョウ)、爬虫類、両生類およびサカナが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、非ヒト動物は哺乳動物である。非ヒト動物は、雄または雌で、かつ任意の発育段階であり得る。非ヒト動物はトランスジェニック動物であり得る。
【0093】
いくつかの例において、本明細書に記載の処置を必要とする対象体は、インフルエンザウイルス、例えば野生型インフルエンザA型ウイルス(例えばH1N1、H5N1またはH3N2)または変異型インフルエンザウイルス、例えば変異型NPタンパク質を有するもの、例えばY289H、Y52HもしくはY52H/Y289Hに感染している、または感染している疑いのあるヒト患者であり得る。インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染を有すると疑われる対象体は、感染の1つ以上の症状、例えば発熱、咳、鼻閉、体の痛み、倦怠感、頭痛、流涙、下痢および/または腹痛を示し得る。
【0094】
本明細書に記載の医薬組成物のいずれかが、処置を必要とする対象体に任意の通常の経路によって投与され得て、例えば、経口で、非経口で、吸入スプレーにより、局所的に、直腸内に、経鼻で、頬側に、腟内に、または埋め込まれたリザーバを介して、投与され得る。本明細書で用いられる場合、用語「非経口の」は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑膜内、胸骨内、髄腔内、病巣内および頭蓋内の注射または注入の技術を含む。
【0095】
無菌の注射可能な組成物、例えば無菌の注射可能な水性または油性の懸濁剤は、適切な分散剤または湿潤剤(例えばTween 80)および懸濁剤を用いて、当技術分野で公知の技術により製剤化することができる。無菌の注射可能な製剤はまた、無毒性の非経口で許容される希釈剤または溶媒中の、無菌の注射可能な液剤または懸濁剤、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液であり得る。用いることができる許容されるビヒクルおよび溶媒の中には、マンニトール、水、リンゲル液および等張性塩化ナトリウム溶液がある。また、無菌の固定油が、通常、溶媒または懸濁媒として用いられる(例えば合成モノグリセリドまたはジグリセリド)。オレイン酸などの脂肪酸およびそのグリセリド誘導体は、オリーブ油またはヒマシ油などの天然の薬学的に許容される油と同様に、特にポリオキシエチル化バージョンにおいて、注射剤の製造に有用である。これらの油液剤または懸濁剤はまた、長鎖アルコール希釈剤もしくは分散剤、またはカルボキシメチルセルロースもしくは類似した分散剤を含有し得る。TweenもしくはSpanなどの他の一般的に用いられる界面活性剤、または薬学的に許容される固体、液体、もしくは他の剤形の製造において一般的に用いられる他の類似した乳化剤もしくは生物学的利用能増強剤もまた、製剤化のために用いることができる。
【0096】
薬物の効果を延ばすために、皮下または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅くすることがしばしば望ましい。これは、水溶性が低い、結晶または非晶質の材料の液体懸濁液を用いることにより達成し得る。その場合、薬物の吸収速度は、解離速度に依存し、次に、その解離速度は、結晶サイズおよび結晶形に依存し得る。あるいは、非経口投与された剤形の吸収遅延は、油性ビヒクル中に薬物を溶解または懸濁させることにより達成される。
【0097】
直腸内または腟内投与のための組成物は、典型的には、坐剤であり、その坐剤は、周囲温度では固体であるが、体温で液体であり、それ故に、直腸または腟腔内で融解して、活性成分を放出する、ココアバター、ポリエチレングリコールまたは坐剤ワックスなどの適切な非刺激性添加剤または担体と、本明細書に記載の抗インフルエンザ剤を混合することにより製造することができる。
【0098】
経口投与のための組成物は、非限定的に、カプセル剤、錠剤、乳剤、ならびに水性の懸濁剤、分散剤および液剤を含む、任意の経口で許容される固体剤形であり得る。経口用の錠剤の場合、一般的に用いられる担体には、ラクトースおよびコーンスターチが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤もまた、典型的には、加えられる。カプセル剤の形態である経口投与について、有用な希釈剤には、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが挙げられる。水性懸濁剤または乳剤が経口で投与される場合、活性成分は、乳化剤または懸濁剤と組み合わされて、油相中に懸濁または溶解させ得る。必要に応じて、特定の甘味剤、香料または着色剤を加えることができる。
【0099】
そのような固体剤形において、活性成分は、少なくとも1つの不活性な薬学的に許容される添加剤もしくは担体、例えばクエン酸ナトリウムもしくはリン酸一水素カルシウム、ならびに/またはa)賦形剤もしくは増量剤、例えばデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸、b)結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよびアカシアゴム、c)保湿剤、例えばグリセロール、d)崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカのデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩および炭酸ナトリウム、e)溶解遅延剤、例えばパラフィン、f)吸収促進剤、例えば四級アンモニウム化合物、g)湿潤剤、例えばセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール、h)吸収剤、例えばカオリンおよびベントナイト粘土、ならびにi)滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ならびにそれらの混合物と混合される。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、剤形は、緩衝剤を含み得る。
【0100】
同様のタイプの固体組成は、ラクトースまたは乳糖および高分子量ポリエチレングリコールなどの添加剤を用いて、軟および硬ゼラチンカプセル剤における賦形剤として利用することができる。錠剤、糖剤、カプセル剤、丸剤および顆粒剤の固体剤形は、腸溶コーティング剤および製剤分野において周知の他のコーティング剤などのコーティング剤およびシェルを用いて製造することができる。所望により、乳白剤を含み得て、活性成分を、腸管の特定の部分でのみまたは優先的に、場合により遅延様式で、放出する組成であり得る。用い得る埋め込み組成の例には、重合体物質およびワックスが挙げられる。同様のタイプの固体組成は、ラクトースまたは乳糖および高分子量ポリエチレングリコールなどの添加剤を用いて、軟および硬ゼラチンカプセル剤における賦形剤として利用することができる。
【0101】
活性成分は、上記で言及した1つ以上の添加剤と共に、マイクロカプセル剤の形態であり得る。錠剤、糖剤、カプセル剤、丸剤および顆粒剤の固体剤形は、腸溶コーティング剤、徐放性コーティング剤、および製剤分野において周知の他のコーティング剤を用いて製造することができる。そのような固体剤形において、活性成分は、スクロース、ラクトースまたはデンプンなどの少なくとも1つの不活性な希釈剤と混合することができる。そのような剤形は、通常の慣行として、不活性な希釈剤以外に、更なる物質、例えばステアリン酸マグネシウムおよび微結晶セルロースなどの錠剤化滑沢剤および他の錠剤化補助剤を含み得る。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、剤形は、緩衝剤を含み得る。、所望により、乳白剤を含み得て、活性成分を、腸管の特定の部分でのみまたは優先的に、場合により遅延様式で、放出する組成であり得る。用い得る埋め込み組成の例には、重合体物質およびワックスが挙げられる。
【0102】
本発明の化合物の局所的および/または経皮的投与ための剤形には、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、散剤、液剤、スプレー剤、吸入剤および/またはパッチ剤が挙げられ得る。一般的に、活性成分は、薬学的に許容される担体ならびに/または必要に応じて、任意の必要とされる保存剤および/もしくは緩衝剤と、無菌条件下で混合される。また、本発明は、経皮パッチ剤の使用を企図し、経皮パッチ剤は、活性成分の身体への制御された送達を提供するという更なる利点を有することが多い。そのような剤形は、例えば、活性成分を適切な媒体中に溶解および/または分散させることにより、製造することができる。これとは別にまたはこれに加えて、速度は、速度制御膜を提供すること、ならびに/またはポリマーマトリックスおよび/もしくはゲル中に活性成分を分散させることにより、制御することができる。
【0103】
本明細書に記載の皮内医薬組成物を送達するのに用いられる適切なデバイスには、米国特許第4,886,499号;第5,190,521号;第5,328,483号;第5,527,288号;第4,270,537号;第5,015,235号;第5,141,496号;および第5,417,662号に記載されているものなどの短い針のデバイスが挙げられる。皮内用組成物は、針の皮膚への有効な貫通長さに制限するデバイス、例えば、国際公開第99/34850号およびその機能的等価物により投与することができる。角質層を貫通して、真皮に達するジェットを生じる液体ジェット注射器および/または針により、液体ワクチンを真皮へ送達するジェット注射デバイスが適している。ジェット注射デバイスは、例えば、米国特許第5,480,381号;第5,599,302号;第5,334,144号;第5,993,412号;第5,649,912号;第5,569,189号;第5,704,911号;第5,383,851号;第5,893,397号;第5,466,220号;第5,339,163号;第5,312,335号;第5,503,627号;第5,064,413号;第5,520,639号;第4,596,556号;第4,790,824号;第4,941,880号;第4,940,460号;ならびに国際公開第97/37705号および第97/13537号に記載されている。粉末の形態であるワクチンを皮膚の外層を通って真皮へ加速させるために圧縮ガスを用いる弾道的粉末/粒子送達デバイスが適している。これとは別にまたはこれに加えて、通常のシリンジは、皮内投与の古典的ツベルクリン方法において用いることができる。
【0104】
本発明の医薬組成物は、頬側口腔を介しての肺投与に適した製剤として、製造、包装および/または販売することができる。そのような製剤は、活性成分を含み、かつ約0.5nm~約7nm、または約1nm~約6nmの範囲の直径を有する乾燥粒子を含み得る。そのような組成物は、便利には、噴射剤の流れが向けられて、粉末を分散することができる乾燥粉末リザーバ含むデバイスを用いる、ならびに/または自力噴射溶媒/粉末分配容器、例えば密封容器内に低沸点噴射剤中に溶解および/もしくは懸濁させた活性成分を含むデバイスを用いる投与のために、乾燥粉末の形態である。そのような粉末は、重量で粒子の少なくとも98%が0.5nmより大きい直径を有し、数で粒子の少なくとも95%が7nm未満の直径を有する粒子を含む。あるいは、重量で粒子の少なくとも95%が1nmより大きい直径を有し、数で粒子の少なくとも90%が6nm未満の直径を有する。乾燥粉末組成物は、糖などの固体微粉末希釈剤を含み得て、便利には、単位剤形で提供される。
【0105】
低沸点噴射剤は、一般的に、大気圧において65°F未満の沸点を有する液体噴射剤を含む。一般的に、噴射剤は、組成物の50~99.9%(w/w)を構成し得て、活性成分は、組成物の0.1~20%(w/w)を構成し得る。噴射剤はさらに、液体非イオン性および/もしくは固体陰イオン性界面活性物質、ならびに/または固体希釈剤(活性成分を含む粒子と同じオーダーの粒子サイズを有し得る)などの追加成分を含み得る。
【0106】
肺送達のために製剤化された本発明の医薬組成物は、液剤および/または懸濁剤の液滴の形態で活性成分を提供し得る。そのような製剤は、活性成分を含む、所望により無菌性の、水性および/または希アルコール性液剤および/または懸濁剤として、製造、包装および/または販売することができ、便利には、任意の噴霧および/または微粒化デバイスを用いて、投与され得る。そのような製剤はさらに、1つ以上の更なる成分を含み得て、その更なる成分には、サッカリンナトリウムなどの香料、揮発油、緩衝剤、界面活性剤、および/またはヒドロキシ安息香酸メチルなどの保存剤が挙げられるが、これらに限定されない。この投与経路により提供される液滴は、約0.1nm~約200nmの範囲の平均直径を有し得る。
【0107】
肺送達に有用であるとして本明細書に記載の製剤は、本発明の医薬組成物の経鼻送達に有用である。経鼻投与に適した別の製剤は、活性成分を含み、かつ約0.2μm~500μmの平均粒子を有する粗い粉末である。そのような製剤は、鼻孔に近接して保持された粉末の容器からの鼻腔を通った迅速な吸入により投与される。
【0108】
鼻エアロゾールまたは吸入組成物は、製剤分野において周知の技術により製造することができる。経鼻投与のための製剤は、例えば、少なくも約0.1%(w/w)からで、多くも100%(w/w)の活性成分を含み得て、本明細書に記載の更なる成分の1つ以上を含み得る。本発明の医薬組成物は、頬側投与のための製剤として、製造、包装および/または販売することができる。そのような製剤は、例えば、通常の方法を用いて製造された錠剤および/またはトローチ剤の形態であり得て、例えば、0.1~20%(w/w)の活性成分を含み得て、残りは、口腔内溶解性および/または分解性組成、および所望により本明細書に記載の更なる成分の1つ以上を含む。あるいは、頬側投与のための製剤は、活性成分を含む、粉末、ならびに/またはエアロゾール化および/もしくは微粒化液体および/もしくは懸濁液を含み得る。そのような粉末化および/またはエアロゾール化製剤は、分散したときに、約0.1nmから約200nmまでの範囲の平均粒子および/または液滴サイズを有し得て、本明細書に記載の更なる成分の1つ以上をさらに含み得る。
【0109】
特定の実施形態において、70kgの成人ヒトへの1日1回以上の投与のための、本明細書に記載の抗インフルエンザ剤の有効量は、単位剤形あたり約0.0001mg~約3000mg、約0.0001mg~約2000mg、約0.0001mg~約1000mg、約0.001mg~約1000mg、約0.01mg~約1000mg、約0.1mg~約1000mg、約1mg~約1000mg、約1mg~約100mg、約10mg~約1000mgまたは約100mg~約1000mgの化合物を含み得る。
【0110】
他の実施形態において、抗インフルエンザ剤は、所望の治療効果を得るために、1日あたり対象体の体重に対して、約0.001mg/kg~約100mg/kg、約0.01mg/kg~約50mg/kg、好ましくは約0.1mg/kg~約40mg/kg、好ましくは約0.5mg/kg~約30mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kg、約0.1mg/kg~約10mg/kg、より好ましくは約1mg/kg~約25mg/kgを送達するのに十分な投薬量レベルで、1日1回以上、経口または非経口で投与され得る。
【0111】
本明細書に記載の用量範囲は、提供される医薬組成物の成人への投与についてのガイダンスを提供することは理解されよう。例えば子どもまたは青年へ、投与されるべき量は、医療従事者または当業者により決定され得て、成人へ投与される量より低く、またはそれと同じであり得る。
【0112】
本明細書に記載のポリペプチドまたは組成物は、1つ以上の更なる治療活性物質と併用して投与され得ることもまた理解されよう。化合物または組成物は、生物学的利用率を向上させ、代謝を低下させおよび/もしくは改変し、排泄を阻害し、ならびに/または体内の分布を改変する更なる治療活性物質と併用して投与することができる。利用される療法は、同じ障害について所望の効果を達成し得て、および/または異なる効果を達成し得ることもまた理解されよう。
【0113】
ポリペプチドまたは組成物は、1つ以上の更なる治療活性物質と同時、その前またはその後に、投与することができる。一般的に、各作用物質は、作用物質について決定された用量でおよび/またはタイムスケジュールで投与される。この併用で利用される更なる治療活性物質は、単一の組成物において一緒に投与されてもよく、または異なる組成物において別々に投与されてもよいこともまた理解されよう。レジメンで用いられる特定の併用は、本発明の化合物の更なる治療活性物質との適合性、および/または達成されるべき所望の治療効果を考慮する。一般的に、併用で利用される更なる治療活性物質は、それらが個々に利用されるレベルを超えないレベルで利用されることが予想される。いくつかの実施形態において、併用で利用されるレベルは、個々に利用されるレベルより低い。
【0114】
キット(例えば、医薬パック)もまた本開示に包含される。提供されるキットは、発明の医薬組成物またはポリペプチドおよび容器(例えば、バイアル、アンプル、ボトル、シリンジおよび/もしくはディスペンサーパッケージ、または他の適切な容器)を含み得る。いくつかの実施形態において、提供されるキットは、発明の医薬組成物またはポリペプチドの希釈または懸濁のための薬学的添加剤を含む第2の容器をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、容器および第2の容器において提供される本発明の医薬組成物または化合物は、1つの単位剤形を形成するように組み合わされる。
【0115】
本発明はまた、以下の態様および実施態様を含む。
[1] インフルエンザウイルス感染を処置または予防するための方法であって、それを必要とする対象体に、有効量の複合型またはハイブリッド型グリカン結合レクチンまたはそれを含む組成物を投与することを含む、方法。
[2] レクチンが、トリマンノシルコアと、トリマンノシルコアの1,3マンノースアームおよび/または1,6マンノースアームに結合した少なくとも1つのN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)と、アンテナ残基を含有する、複合型またはハイブリッド型グリカンと特異的に結合する、[1]に記載の方法。
[3] グリカンがα1-3および/またはα1-6結合型Manβ1-2GlcNacβ1-4(Fucα1-3)Gal四糖部分を含有する、[2]に記載の方法。
[4] レクチンが多量体の形態である、[1]に記載の方法。
[5] レクチンがフジマメ由来のFlt3受容体相互作用レクチン(FRIL)タンパク質である、[1]に記載の方法。
[6] FRILタンパク質が、配列番号1のアミノ酸配列、または配列番号1と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、[5]に記載の方法。
[7] レクチンが、フジマメから単離された天然型である、[5]に記載の方法。
[8] インフルエンザウイルス感染が、インフルエンザA型ウイルス、インフルエンザB型ウイルス、インフルエンザC型ウイルス、またはそれらの2つ以上の組合せによって引き起こされる、[1]に記載の方法。
[9] インフルエンザA型ウイルスがH1N1、H5N1、H3N2またはH7N9インフルエンザウイルスである、[8]に記載の方法。
[10] 対象体が、インフルエンザウイルス感染に罹患しているか、もしくは罹患しやすいか、またはインフルエンザウイルスに感染していると疑われる、[1]に記載の方法。
[11] レクチンがインフルエンザウイルスの感染の前および/または後に投与される、[1]に記載の方法。
[12] 処置または予防を必要とする対象体においてインフルエンザウイルス感染を処置または予防するための医薬を製造するための、複合型またはハイブリッド型グリカン結合レクチンの使用。
[13] レクチンが、トリマンノシルコアと、トリマンノシルコアの1,3マンノースアームおよび/または1,6マンノースアームに結合した少なくとも1つのN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)と、ガラクトース(Gla)およびフコース(Fuc)を含むアンテナ残基を含有する、複合型またはハイブリッド型グリカンと特異的に結合する、[12]に記載の使用。
[14] レクチンがFlt3受容体相互作用レクチン(FRIL)ポリペプチドである、[13]に記載の使用。
[15] FRILポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸配列、または配列番号1と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、[14]に記載の使用。
[16] レクチンが多量体の形態である、[14]に記載の使用。
[17] インフルエンザウイルス感染が、インフルエンザA型ウイルス、インフルエンザB型ウイルス、インフルエンザC型ウイルス、またはそれらの2つ以上の組合せによって引き起こされる、[14]に記載の使用。
[18] レクチンが、フジマメから単離された天然型である、[14]に記載の使用。
[19] 有効量の複合型またはハイブリッド型グリカン結合レクチンを含む、インフルエンザウイルス感染を処置または予防することにおける使用のための組成物。
[20] レクチンが、フジマメから単離された天然型である、[19]に記載の組成物。
[21] エンベロープウイルス感染を処置または予防するための方法であって、それを必要とする対象体に、有効量の複合型またはハイブリッド型グリカン結合レクチンまたはそれを含む組成物を投与することを含む、方法。
更なる詳細なしに、上記の説明は本発明を十分に可能にしていると考えられる。したがって、以下の実施例は、単なる例示として解釈されるべきであり、いかなる方法においても、本開示の残りの部分を限定するものではない。本明細書で参照する刊行物の全ては、本明細書で参照される目的または主題のために、その全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0116】
本明細書に記載の本発明がより十分に理解され得るために、以下の実施例を示す。これらの実施例は例示のみを目的としており、いかなる方法においても、本発明を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。
【実施例
【0117】
実施例1:フジマメ水性抽出物のマイクロ中和アッセイ
【0118】
フジマメのマメを収集し、粉に挽き、リン酸緩衝食塩水(PBS)と一晩混合し、遠心分離して、上清を得た。図1参照。フジマメ(Dolichos lablabとしても知られている)水性抽出物のA/California/7/2009様(H1N1 X181)ウイルス、A/Vietnam/1194/2004様(H5N1 RG14)ウイルス、A/Victoria/361/2011様(H3N2)ウイルスおよびA/Shanghai/2/2013様(H7N9 RG32A)ウイルスのワクチン株に対するマイクロ中和(MN)能の確認を、確立された方法[49]を用いて行った(図1)。全てのワクチン株は、Adimmune Corporation製であり、細胞感染を、ポリクローナル抗NP抗体により検出した。結果は、フジマメの水性抽出物が広スペクトルの中和能を有し、群1ウイルスと群2ウイルスの両方に渡るMN価を有する(図1B)ことを示している。
【0119】
実施例2:フジマメ水性抽出物から単離されたウイルス中和剤
【0120】
水性抽出物に中和価が存在したため、いくつかのタンパク質精製工程を利用して、ウイルス中和剤を単離した。低塩バッファーを用いた沈降および再懸濁工程をまず、適用し、その後、陰イオン交換、ゲルろ過およびAffigel blue媒体でのアフィニティクロマトグラフィーを適用した。A/Vietnam/1194/2004様ウイルス(H5N1 RG14)に関するMNを、あらゆる工程において行って、採取した画分を検証し、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS PAGE)を行って、タンパク質組成を可視化した(図2)。
【0121】
上記の精製工程後、6つの主要なバンドおよび4つの微量なバンドが存在した。6つの主要なバンドのうち5つは、12~20kDaの分子量の範囲にあり、1つのバンドは34kDaの分子量であった。タンパク質混合物を未変性PAGEで分析した。主要なバンドを採取し、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)での変性条件下での電気泳動により溶出した。6つのバンドが、SDS PAGEにおいて観察された。精製工程をさらに確認するために、未変性PAGE溶出タンパク質を、H1N1およびH5N1ウイルス株に関するMNによる抗インフルエンザ活性について試験し、結果は、タンパク質が、中和活性を保持することを示している(図2)。
【0122】
精製タンパク質を分析するために、ゲル内消化を適用して、質量分析のために全ての6つのバンドを採取した。結果は、精製タンパク質がFlt3受容体相互作用レクチン(FRIL)であることを確認した。
【0123】
FRILをさらに精製するために、沈降および再懸濁プロセスを、60%硫酸アンモニウムを用いて実施し、その後、マンノース-セファロースビーズを用いたアフィニティクロマトグラフィーを実施した。次に、150mM NaClから開始するQカラムを用いた陰イオン交換を適用して、55~72kDの分子量を有する非特異的バンドを除去した。精製FRILを、陰イオン交換クロマトグラフィー中にフロースルーにおいて採取した。精製FRILの収率は、4mg/gマメ粉末より高く、FRILの純度は、赤血球凝集アッセイで95%より高かった(図3)。
【0124】
実施例3:ウイルス中和剤のマイクロ中和活性
【0125】
マイクロ中和アッセイを、FRIL、pvFRIL(インゲンマメ(Phaseolus vulgaris)Flt3受容体相互作用レクチン)、ConA(原型的なマメ科植物レクチン)、FI6v3(広域中和インフルエンザ抗体、bnab)およびオセルタミビルカルボン酸塩(OTC)(市販のノイラミニダーゼ阻害剤オセルタミビルリン酸塩の活性代謝産物)について実施した。図4Aは、A/California/7/2009様(H1N1)ウイルス、A/Victoria/361/2011様(H3N2)ウイルス、A/Vietnam/1194/2004様(H5N1)ウイルスおよびA/Shanghai/2/2013様(H7N9)ウイルスに対するFRIL(-●-)、ConA(-▲-)およびpvFRIL(-■-)のマイクロ中和アッセイの結果を示す。図4Bは、A/California/7/2009様(H1N1)ウイルス、A/Victoria/361/2011様(H3N2)ウイルス、A/Vietnam/1194/2004様(H5N1)ウイルスおよびA/Shanghai/2/2013様(H7N9)ウイルスに対するFRIL(-●-)、bnab FI6v3(-◆-)およびOTC(-▼-)のマイクロ中和アッセイの結果を示す。
【0126】
FRILおよびConAは、同等レベルのIC50を達成することができた。群1ウイルス(H1N1およびH5N1)およびH3N2に対するbnab FI6v3のマイクロ中和活性は、10~100nmの範囲のIC50により示されたが、bnab FI6v3は、H7N9に対して極めてより高いIC50を示した。pvFRILが、試験したインフルエンザウイルス株のいずれも中和することができなかったことがわかった。OTCは、おそらく作用メカニズムが標準的なマイクロ中和試験に適さないものにしているため、試験したインフルエンザウイルス株に対する中和能を有しないと考えられる、[59]。表2は、様々なインフルエンザウイルス株に対するウイルス中和剤についてのマイクロ中和活性の比較である。表1および表2は、複数のインフルエンザウイルス株に対する様々なウイルス中和についてのマイクロ中和活性の概要を示す。
【0127】
【表1】
【0128】
実施例4:ウイルス中和剤のグリカン結合特性
【0129】
以前の文献報告は、単に、赤血球凝集阻害試験(HAI)を用いて、FRIL単糖親和性を決定しただけであった[13]。Cy3標識FRILでのグリカンアレイを用いて、包括的なグリカン分析を行った(図5)。驚くべきことに、FRILは、単一α結合型マンノース残基およびglcNac結合型トリマンノースのコアとのやや弱い結合を示した。代わりに、FRILは、α1-3結合型かまたはα1-6結合型かのいずれかのManβ1-2GlcNacβ1-4(Fucα1-3)Gal四糖部分との強い結合親和性を示した。高マンノースオリゴ糖Man5およびMan9との検出可能な結合はなかった。この知見を確認するために、インフルエンザウイルスを、ウイルス感染中にマンノシダーゼI阻害剤キフネンシン(KIF)で処理し、続いて、高マンノース切断性グリコシダーゼEndo Hで処理することにより、異なるグリコシル化を行った卵ベースのインフルエンザウイルス(A/California/7/2009様ウイルス、H1N1 X181)を調製した。以下を含む4つの型のウイルス粒子を、比較のために調製した:(1)未処理(複合型、CXおよび高マンノース型、HM、グリカン)、(2)KIF処理(HMのみ)、(3)Endo H処理(CXおよびモノグリコシル化、MG、グリカン)、および(4)KIF/Endo H処理(MGのみ)。その後、これらのウイルスを、スクロース密度勾配遠心分離(SDG)により精製し、本明細書に記載の方法によるマイクロ中和アッセイによって試験した。グリカンアレイ結果によれば、FRILは、未処理のCX型ウイルス粒子に対して最も強力な中和能を示したが、FRILは、100μg/mlまでの濃度ではHMおよびMGウイルスに対して中和能を示さなかった。これは、HMウイルスに対して最大の中和効果を示した周知のConAとは全く対照的である。Bnab FI6v3は、FG、CXおよびHMウイルスへの同等の中和を示し、MGへの大幅に向上した中和を示した(図6)。
【0130】
実施例5:レクチン機能に関連したFRILの抗インフルエンザ活性
【0131】
FRILの抗インフルエンザ活性がレクチン機能に関連しているかどうかを決定するために、以下を行った:既知のリガンドα-マンノピラノシドでのFRILの飽和(図7)、およびシアニン色素Cy3でのリシン残基コンジュゲートによるFRIL結合部位の阻害(図7)(FRIL赤血球凝集能力を95%、減少させることが以前報告されている[47])。結果は、両方の方法が、FRILの赤血球凝集およびMN能をほとんど完全に阻害したことを示し(図7)、FRILの抗インフルエンザ活性が、実際、レクチン機能に関連していることを示唆した。
【0132】
実施例6:作用メカニズム
【0133】
FRILの作用メカニズムを調べるために、赤血球凝集阻害試験(HAI)を行った。FRILは、インフルエンザヘマグルチニンの赤血球凝集活性(組換えHA三量体では80~1000 HAU/μg、データは示していない)と比較して、相対的に弱い赤血球凝集活性(1.25~0.8 HAU/μg、図9)を有するため、HAIアッセイを、その中和価(0.206~0.018μg/ウェル)より十分上である、FRILの凝集濃度未満(>0.5μg)を用いて実施した。結果は、FRILが、4 HAUのH1N1、H3N2、H5N1またはH7N9ウイルスに対してHAI活性を示さないことを示した(データは示していない)。この結果は、FRILが、ウイルスHAの細胞受容体への結合を阻害することにより作用するのではないことを示唆している。
【0134】
トリプシン感受性アッセイ(TSA)[48]を用いて、エンドソームとのウイルスエンベロープの融合の阻害について試験した。インフルエンザヘマグルチニンが介在する融合事象は、pH依存性立体構造変化を必要とする。インフルエンザヘマグルチニンは、通常、トリプシン消化に対して極めて抵抗性であるが、この立体構造変化を受けた後、より感受性が高くなり、TSAは、この性質を利用して、SDS PAGE上でインタクトまたは消化されたHAを可視化する。多くの抗インフルエンザbnab、例えばFI6は、立体障害により、低pH条件下でこの立体構造変化を阻害する。結果は、bnab FI6が、1:1、1:2および1:4のモル比で、pH5.0においてインフルエンザHA立体構造変化を阻害することができたが、FRILは、1:10モル比においてさえもこの効果を生じなかったことを示した(図8)。これは、FRILが、エンドソームとのHA介在性融合によってウイルス侵入を阻害することにより作用するのではないことを示している。
【0135】
FRILが、ウイルス糖タンパク質の架橋またはウイルス粒子の凝集によって機能するかを調べるために、最初に決定しなければならないことは、糖鎖結合ドメイン(CBD)多価性である。以前の研究[17]によれば、FRILおよび極めて可能性のあるpvFRILのみが、単量体あたり1つのCBDを有するが、レクチンは、糖タンパク質を架橋または凝集させるために少なくとも2つのCBDを必要とする。したがって、二量体または四量体の四次構造は、このウイルス中和仮説が機能するに必須である。しかしながら、予備データは、FRILをSuperdex s200カラム上に負荷したとき、タンパク質は、タンパク質標準により、単量体を示す分子量であるおよそ30kDaで出てくる。その後、ConAおよびpvFRILに行ったゲルろ過は、両方が、カラム内のデキストランビーズと相互作用し、pvFRILが極めて遅く出てきて、ConAは、出てくるのにマンノース溶出工程を必要とすることを示した。これは、FRILがそのような相互作用を有し得ることを示した。
【0136】
FRIL化学量論のより正確な決定を得るために、マルチアングル光散乱法(MALS、前述のデキストラン相互作用によりサイズ排除なし)および動的光散乱法(DLS)を適用した。DLSデータは、ConAの基準四量体と重複する、サイズがおよそ5~7nmにシャープなFRILピークを示している(図9A)。MALSにおいて、結果は、事前のサイズ排除がないため、変動するが、同様に、四量体状態に近い、およそ113.5kDaにFRILを示している(図9B)。
【0137】
実施例7:インフルエンザウイルス凝集アッセイのためのモノグリコシル化インフルエンザウイルスの製造
【0138】
SDG精製A/California/7/2009様ウイルス(H1N1 X181)を、まず、キフネンシンおよびEndo Hで処理して、モノグリコシル化インフルエンザウイルス粒子を調製した。インフルエンザウイルス凝集を誘導することを期待して、大量のFRILを加えた。驚くべきことに、FRIL誘導凝集は、高マンノース型および複合型/高マンノース型ウイルス粒子で形成されたが、モノグリコシル化ウイルス粒子で形成されなかった(図10A)。別の凝集の観察は、FRILを、H1N1組換えヘマグルチニンに対して1:3モル比で加えた場合起こった。目に見える沈殿物がチューブ内に形成され、これらの沈降物を洗浄し、SDS PAGE上で可視化したとき、FRILバンドとHAバンドの両方が観察された(図10B)。表2もまた参照。
【0139】
【表2】
【0140】
実施例8:FRILのウイルスへの中和効果
【0141】
FRILがウイルスまたは細胞のどちらを標的とするのかを決定するために、MDCK細胞を一方の物質(FRILまたはウイルスのいずれか)で1時間、前処理した。その後、細胞を洗浄して、未結合のFRILまたはウイルスを除去し、他方の物質(前処理工程中にFRILを用いた場合、インキュベート工程はウイルスとであり、その逆もまた同様)と、次の18~20時間、インキュベートした。このようにして、FRILは、ウイルスと接触せず、細胞のみと接触する。結果は、中和効果を生じるには、FRILをウイルスと共にインキュベートする必要があることを示し、これは、FRILが細胞ではなくウイルスに作用することを示唆している(図11)。この効果は、ConAにおいても観察された(図11)。
【0142】
実施例9:FRILの投与は、マウスを致死量のH1N1 X-181インフルエンザウイルス負荷から保護する
【0143】
BALB/cマウスに、H1N1 X-181の致死量(5 LD50)インフルエンザウイルス経鼻感染の4時間前に、5μgまたは50μgのFRILを投与し、その後、2つの異なる用量のFRILを8日間毎日経鼻投与した。各群は10匹のマウスを有する。生存率および体重変化を21日間観察した。PBSを投与された対照群は、5~8日目に死亡した。0.01mg群の生存率は10%であり、0.1mg群の生存率は70%である。図12参照。マウスモデルは、レクチンが、マウスの生存率を用量依存的に著しく増加させることができることを示している。
【0144】
赤血球凝集アッセイ
【0145】
インフルエンザウイルス粒子は、細胞上のシアル酸受容体と結合するエンベロープタンパク質のヘマグルチニン(HA)を有する。ウイルス粒子はまた、赤血球(erythrocytes)(赤血球(red blood cells))と結合し、格子の形成を引き起こす。この特性は、赤血球凝集と呼ばれ、試料に存在するインフルエンザウイルスのレベルを決定するための迅速なアッセイの基礎である。アッセイを行うために、ウイルスの2倍の段階希釈物を調製し、特定の量の赤血球と混合し、プラスチックトレイのウェルへ加える。インフルエンザウイルスに結合されていない赤血球は、ウェルの底に沈み、ボタンを形成する。ウイルス粒子に付着した赤血球は、ウェルを覆う格子を形成する。アッセイは、30分以内で実施でき、したがって、ウイルス粒子の相対的量の迅速な指標である。
【0146】
赤血球凝集阻害アッセイ
【0147】
赤血球凝集阻害(HI)アッセイの基礎は、インフルエンザウイルスとの結合剤(例えば抗体)が、赤血球へのウイルスの付着を阻害することである。したがって、赤血球凝集は、抗体が存在する場合阻害される。赤血球凝集を阻害する血清の最高希釈度が、血清のHI価と呼ばれる。血清が、新しいH1N1株と反応する抗体を含有しない場合、赤血球凝集は全てのウェルで観察される。同様に、ウイルスに対する抗体が存在する場合、抗体が十分に希釈されるまで、赤血球凝集は観察されない。
【0148】
マイクロ中和アッセイ
【0149】
マイクロ中和アッセイは、MDCK細胞におけるインフルエンザウイルス感染の存在を検出するための感度および特異性が極めて高いアッセイであり、抗インフルエンザNP ELISAと組み合わせて、マイクロプレート上で実施できる。感染がないことは、MDCK細胞に適用されたウイルスが、特定の濃度の試験物質により中和されていることを示し、試験物質の連続希釈を用いることにより、インフルエンザウイルス株の50%中和(EC50)を達成する有効濃度を計算できる。マイクロ中和アッセイは、細胞変性効果の観察に依存する従来の中和アッセイと比較して、労力人為的ミスの傾向が少ない。
【0150】
【表3】
【0151】
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図1
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図3
図4A
図4B
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図10B
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図12
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