(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】自己循環型ジャケット式加熱保温装置
(51)【国際特許分類】
B01L 7/04 20100101AFI20240626BHJP
H05B 3/00 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
B01L7/04
H05B3/00 310D
(21)【出願番号】P 2023096906
(22)【出願日】2023-06-13
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】516086107
【氏名又は名称】三広アステック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【氏名又は名称】細井 玲
(74)【代理人】
【識別番号】100203242
【氏名又は名称】河戸 春樹
(72)【発明者】
【氏名】石畑 敦啓
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-263648(JP,A)
【文献】特開平06-343457(JP,A)
【文献】特開昭60-097055(JP,A)
【文献】特開昭48-062031(JP,A)
【文献】実開平03-059044(JP,U)
【文献】実開平05-009639(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01L 1/00 - 99/00
H05B 1/00 - 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と、
前記容器本体を受け入れるためのジャケット容器と、
前記容器本体と前記ジャケット容器との間の隙間に収容された保温液と、
前記ジャケット容器から前記保温液の一部を受け取り、受け取った前記保温液を加熱して前記ジャケット容器に戻すための加熱循環装置と
を含み、
前記加熱循環装置は、
前記ジャケット容器の下側に
鉛直から15度以内の傾きで配置された第1の導管であって、前記ジャケット容器の底壁に設けられた第1の接続口に接続された上端部と、密閉された下端部とを有する、第1の導管と、
前記第1の導管内に配置されたヒーターと、
前記ジャケット容器の前記底壁又は側壁に設けられた第2の接続口を前記第1の導管の側面に接続するための第2の導管と
を含む、加熱保温装置。
【請求項2】
前記加熱循環装置は、機械式ポンプ機構を含まない、請求項1に記載の加熱保温装置。
【請求項3】
前記容器本体と前記ジャケット容器との間の前記隙間は、上向きに開放されている、請求項1に記載の加熱保温装置。
【請求項4】
前記第1の接続口は、前記ジャケット容器の前記底壁の中心部に設けられている、請求項1に記載の加熱保温装置。
【請求項5】
前記ジャケット容器は半径Rの円筒形であり、前記第2の接続口は、前記第1の接続口から半径Rの10%以上離れた位置に設けられている、請求項1に記載の加熱保温装置。
【請求項6】
前記ヒーターは、前記第1の導管の長手方向に沿って配置された細長いヒーターである、請求項1に記載の加熱保温装置。
【請求項7】
前記第2の導管は、前記第2の接続口を前記ヒーター
の半分の高さの位置又はそれよりも低い位置で前記第1の導管の側面に接続する、請求項1に記載の加熱保温装置。
【請求項8】
前記容器本体は、前記ジャケット容器の前記底壁及び前記側壁からそれぞれ所定の隙間を空けて、前記ジャケット容器内に配置され、前記ジャケット容器に固定されている、請求項1に記載の加熱保温装置。
【請求項9】
前記容器本体は、固定具によって、前記ジャケット容器に取り外し可能に固定されている、請求項
8に記載の加熱保温装置。
【請求項10】
前記容器本体及び前記ジャケット容器は、それぞれ円筒形であり、
前記容器本体は、前記ジャケット容器の前記底壁及び前記側壁からそれぞれ所定の隙間を空けて、前記ジャケット容器と同軸になるように前記ジャケット容器内に配置され、前記ジャケット容器に固定されている、請求項1に記載の加熱保温装置。
【請求項11】
前記ジャケット容器内の前記保温液又は前記容器本体に接触するように配置された温度センサーと、
前記温度センサーにより検知された前記ジャケット容器内の前記保温液の温度又は前記容器本体の温度に応じて前記ヒーターの温度を制御するコントローラと
をさらに含む、請求項1~
9の何れか一項に記載の加熱保温装置。
【請求項12】
対象物を保温するための保温液を有する容器と、
前記容器の下側に
鉛直から15度以内の傾きで配置された第1の導管であって、前記容器の底壁に設けられた第1の接続口に接続された上端部と、密閉された下端部とを有する、第1の導管と、
前記第1の導管内に配置されたヒーターと、
前記容器の底壁又は側壁に設けられた第2の接続口を前記第1の導管の側面に接続するための第2の導管と
を含む、保温液の加熱循環装置。
【請求項13】
機械式ポンプ機構を含まない、請求項
12に記載の保温液の加熱循環装置。
【請求項14】
前記第1の接続口は、前記容器の前記底壁の中心部に設けられている、請求項
12に記載の保温液の加熱循環装置。
【請求項15】
前記容器は半径Rの円筒形であり、前記第2の接続口は、前記第1の接続口から半径Rの10%以上離れた位置に設けられている、請求項
12に記載の保温液の加熱循環装置。
【請求項16】
前記ヒーターは、前記第1の導管の長手方向に沿って配置された細長いヒーターである、請求項
12に記載の保温液の加熱循環装置。
【請求項17】
前記第2の導管は、前記第2の接続口を前記ヒーター
の半分の高さの位置又はそれよりも低い位置で前記第1の導管の側面に接続する、請求項
12に記載の保温液の加熱循環装置。
【請求項18】
前記容器内の前記保温液に接触するように配置された温度センサーと、
前記温度センサーにより検知された前記容器内の前記保温液の温度に応じて前記ヒーターの温度を制御するコントローラと
をさらに含む、請求項
12~
17の何れか一項に記載の保温液の加熱循環装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体及び内容物を温水等の保温液に浸漬して保温するためのジャケット容器を備えた加熱保温装置に関し、特に、ジャケット容器から保温液の一部を受け取り、受け取った保温液を加熱してジャケット容器に戻すための加熱循環装置を有する加熱保温装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の加熱保温装置には、恒温槽などの外部装置から一定温度に調温された温水のような保温液をジャケット容器に機械式ポンプ機構で送り込むものがある。特許文献1は、従来技術によるそのような加熱保温装置の一例を示している。しかしながら、このような加熱保温装置では、ジャケット容器と容器本体との間の隙間が恒温槽との出入口を除いて密閉されているため、ポンプ圧によっては、ジャケット容器がポンプ圧で破損するリスクがある。また、恒温槽は一般に高価であるため、装置全体が高価になる傾向にあり、恒温槽ならびに恒温槽からジャケット容器までの配管の設置場所や空間も必要になる。
【0003】
従来の加熱保温装置には、ジャケット容器の直下にヒーターを備え、ジャケット容器内の保温液をヒーターで加熱するものがある。特許文献2は、従来技術によるそのような加熱保温装置の一例を示している。しかしながら、このような加熱保温装置は、保温液の循環機構を備えていないため、ジャケット容器内の保温液を均一に加熱するには、ジャケット容器の底面全体にわたる大型のヒーターが必要になる。そのため、装置全体の価格の上昇やヒーターの消費電力の上昇が避けられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭61-263648号公報
【文献】特開平6-343457号公報
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】本発明の第1の実施形態による加熱保温装置を示す断面図である。
【
図2】
図1の加熱保温装置から容器本体を取り外し、保温液を取り除いた様子を示す図である。
【
図3】容器本体を取り外し、保温液を取り除いた状態の
図1の加熱保温装置を示す平面図である。
【
図4】
図1の加熱保温装置から取り外された容器本体のみを示す平面図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態による加熱保温装置を示す断面図である。
【
図6】
図5の加熱保温装置から容器本体を取り外し、保温液を取り除いた状態を示す平面図である。
【
図7】本発明の第3の実施形態による加熱保温装置を示す断面図である。
【
図8】
図7の加熱保温装置から容器本体を取り外し、保温液を取り除いた状態を示す平面図である。
【
図9】本発明の第4の実施形態による加熱保温装置を示す断面図である。
【
図10】
図9の加熱保温装置から容器本体を取り外し、保温液を取り除いた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
一態様において、本発明は、容器本体と、前記容器本体を受け入れるためのジャケット容器と、前記容器本体と前記ジャケット容器との間の隙間に収容された保温液と、前記ジャケット容器から前記保温液の一部を受け取り、受け取った前記保温液を加熱して前記ジャケット容器に戻すための加熱循環装置とを含む、加熱保温装置を提供する。前記加熱循環装置は、前記ジャケット容器の下側に概ね鉛直に配置された第1の導管であって、前記ジャケット容器の底壁に設けられた第1の接続口に接続された上端部と、密閉された下端部とを有する、第1の導管と、前記第1の導管内に配置されたヒーターと、前記ジャケット容器の前記底壁又は側壁に設けられた第2の接続口を前記第1の導管の側面に接続するための第2の導管とを含む。
【0007】
前記第1の導管は、前記ジャケット容器の下側に鉛直から15度以内の傾きで配置される場合がある。
【0008】
前記加熱循環装置は、機械式ポンプ機構を含まない場合がある。
【0009】
前記容器本体と前記ジャケット容器との間の前記隙間は、上向きに開放されている場合がある。
【0010】
前記第1の接続口は、前記ジャケット容器の前記底壁の中心部に設けられる場合がある。
【0011】
前記ジャケット容器は半径Rの円筒形であり、前記第2の接続口は、前記第1の接続口から半径Rの約10%以上離れた位置に設けられる場合がある。
【0012】
前記ヒーターは、前記第1の導管の長手方向に沿って配置された細長いヒーターである場合がある。
【0013】
前記第2の導管は、前記第2の接続口を前記ヒーターの約半分の高さの位置又はそれよりも低い位置で前記第1の導管の側面に接続する場合がある。
【0014】
前記容器本体は、前記ジャケット容器の前記底壁及び前記側壁から所定の隙間を空けて、前記ジャケット容器内に配置され、前記ジャケット容器に固定される場合がある。
【0015】
前記容器本体は、固定具によって、前記ジャケット容器に取り外し可能に固定される場合がある。
【0016】
前記容器本体及び前記ジャケット容器は、それぞれ円筒形であり、前記容器本体は、前記ジャケット容器の前記底壁から所定の隙間を空けて、前記ジャケット容器と同軸になるように前記ジャケット容器内に配置され、前記ジャケット容器に固定される場合がある。
【0017】
前記加熱保温装置は、前記ジャケット容器内の前記保温液又は前記容器本体に接触するように配置された温度センサーと、前記温度センサーにより検知された前記ジャケット容器内の前記保温液の温度又は前記容器本体の温度に応じて前記ヒーターの温度を制御するコントローラとをさらに含む場合がある。
【0018】
他の態様において、本発明は、対象物を浸漬して保温するための保温液を有する容器と、前記容器の下側に概ね鉛直に配置された第1の導管であって、前記容器の底壁に設けられた第1の接続口に接続された上端部と、密閉された下端部とを有する、第1の導管と、前記第1の導管内に配置されたヒーターと、前記容器の底壁又は側壁に設けられた第2の接続口を前記第1の導管の側面に接続するための第2の導管とを含む、保温液の加熱循環装置を提供する。
【0019】
前記第1の導管は、前記容器の下側に鉛直から15度以内の傾きで配置される場合がある。
【0020】
前記保温液の加熱循環装置は、機械式ポンプ機構を含まない場合がある。
【0021】
前記第1の接続口は、前記容器の前記底壁の中心部に設けられる場合がある。
【0022】
前記容器は半径Rの円筒形であり、前記第2の接続口は、前記第1の接続口から半径Rの10%以上離れた位置に設けられる場合がある。
【0023】
前記ヒーターは、前記第1の導管の長手方向に沿って配置された細長いヒーターである場合がある。
【0024】
前記第2の導管は、前記第2の接続口を前記ヒーターの約半分の高さの位置又はそれよりも低い位置で前記第1の導管の側面に接続する場合がある。
【0025】
前記加熱循環装置は、前記容器内の前記保温液に接触するように配置された温度センサーと、前記温度センサーにより検知された前記容器内の前記保温液の温度に応じて前記ヒーターの温度を制御するコントローラとをさらに含む場合がある。
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の種々の実施形態について詳しく説明する。
【0027】
図1は、本発明の第1の実施形態による加熱保温装置100を示す断面図である。加熱保温装置100は、容器本体110と、容器本体110を受け入れるためのジャケット容器120と、容器本体110とジャケット容器120との間の隙間に収容された保温液130と、ジャケット容器120から保温液130の一部を受け取り、受け取った保温液130を加熱してジャケット容器120に戻すための加熱循環装置140とを含む。
【0028】
保温液130を入れる隙間を確保するために、容器本体110は、ジャケット容器120の底壁122及び側壁124からそれぞれ所定の隙間を空けて、ジャケット容器120内に配置され、固定具115でジャケット容器120に固定される場合がある。容器本体110とジャケット容器120との間の隙間は、上向きに開放されている。固定具115を外すことで、容器本体110は、ジャケット容器120から取り外すことができる。一例において、固定具115は、ボルトとナットからなる。ただし、固定具115は、容器本体110をジャケット容器120に固定できるものであれば、如何なる固定具115であってもよい。他の例では、容器本体110は、ジャケット容器120に取り外し不能に固定されてもよい。内容物の温度低下を防止するために、容器本体110は、蓋(図示せず)を備えていてもよい。
【0029】
一例において、容器本体110及びジャケット容器120は、ステンレス鋼やアルミニウムのような金属から形成される場合がある。例えば、ステンレス鋼の容器本体110は、酸化に強い点で様々な保温対象物を入れるのに有利である。他の例では、容器本体110及びジャケット容器120は、プラスチックやアクリルのような樹脂から形成される場合がある。樹脂製の容器本体110及びジャケット容器120は、軽量である点で有利である。
【0030】
一例において、保温液130には、水道水や精製水のような水が使用される場合がある。水は、粘度が低く、熱容量が高いため、循環や保温に適している。他の例では、水以外の他の液体が使用されてもよい。
【0031】
ジャケット容器120の底壁122には、加熱循環装置140と接続するための第1の接続口126及び第2の接続口127が設けられている。第1の接続口126は、加熱循環装置140から加熱された高温の保温液130を受け取るための入口としての役割を果たし、第2の接続口127は、ジャケット容器120から低温の保温液130を加熱循環装置140へ受け渡すための出口としての役割を果たす。
【0032】
一例において、第1の接続口126は、ジャケット容器120の底壁122の中心部に設けられる場合がある。これにより、加熱循環装置140からの高温の保温液130をジャケット容器120内の低温の保温液130と効率よく混合できる場合がある。他の例では、第1の接続口126は、底壁122の中心部以外の場所に設けられてもよい。
【0033】
第2の接続口127は、ジャケット容器120の底壁122に設けられている。例えばジャケット容器120が半径Rの円筒形である場合、第2の接続口127は、第1の接続口126から好ましくは半径Rの10%以上、より好ましくは半径Rの20%以上、さらに好ましくは半径Rの30%以上離れた位置に設けられる場合がある。これは、加熱循環装置140からの高温の保温液130が、ジャケット容器120内の低温の保温液130と十分に混合される前に、再び加熱循環装置140に引き込まれることを回避するためである。例えば、ジャケット容器120の半径Rが30[cm]である場合、第2の接続口127は、第1の接続口126から好ましくは3[cm]以上、より好ましくは6[cm]以上、さらに好ましくは9[cm]以上離れた位置に設けられる場合がある。
【0034】
加熱循環装置140は、ジャケット容器120の下側に概ね鉛直に配置された第1の導管150と、第1の導管150内に配置されたヒーター170と、ジャケット容器120の底壁122に設けられた第2の接続口127を第1の導管150の側面に接続するための第2の導管160とを含む場合がある。第1の導管150の上端部150aは、ジャケット容器120の第1の接続口126に接続され、第1の導管150の下端部150bは、外部からヒーター170を挿入した状態で密閉される場合がある。
【0035】
図1では、第1の導管150は、真っすぐな導管であり、ジャケット容器120の下側にちょうど鉛直に配置されるように示されている。しかしながら、第1の導管150は、実際には、鉛直から多少の傾きをもって概ね鉛直に配置されてもよい。具体的には、第1の導管150は、ジャケット容器120の下側に鉛直から好ましくは15度以内、より好ましくは10度以内、さらに好ましくは5度以内の傾きで配置される場合がある。また、例によっては、第1の導管150は、完全に真っすぐな導管ではなく、概ね真っすぐな導管であってもよい。すなわち、僅かな湾曲や屈曲は、許容される場合がある。
【0036】
図示の例では、第1の導管150は、T字形継ぎ手管(「チーズ」と呼ばれる)の主管部で構成され、主管部の側面に設けられた接続口(短い枝管部)には、第2の導管160が接続されている。しかしながら、第1の導管150は、その側面に第2の導管160を接続できる導管であればよく、T字型継ぎ手管の主管部で構成されるものに限られない。他の例では、第1の導管150は、第2の導管160と一体的に形成される場合がある。
【0037】
第1の導管150は、その内部にヒーター170が配置されるため、耐熱性であることが好ましい。一例において、第1の導管150は、ステンレス鋼やアルミニウムのような金属から形成される場合がある。他の例では、第1の導管150は、耐熱ガラスやセラミックから形成される場合がある。
【0038】
ヒーター170は、任意の加熱抵抗素子であってよい。一例において、ヒーター170は、棒状コイルの形に巻かれたなニクロム線を酸化マグネシウムなどの絶縁材料とともに金属パイプの中に収容した細長いカートリッジヒーターである。カートリッジヒーターは、漏電の恐れが無い点で有利である。ただし、ヒーター170は、カートリッジ式でなくてもよい。電熱線の材料も、ニクロムに限られず、カンタルやタングステンなどの他の材料であってもよい。また、必要な熱量を得られるものであれば、電熱線は、コイル状に巻かれていなくてもよい。
【0039】
一例において、ヒーター170は、第1の導管150の長手方向に沿って配置された細長いヒーターである。これによって、ヒーター170を駆動したときに、第1の導管150内の保温液130が効率よく加熱され、第1の導管150内に保温液130の上向きの流れを生成することができる。
【0040】
第2の導管160は、ジャケット容器120の第2の接続口127をヒーター170の約半分の高さの位置で第1の導管150の側面に接続するように構成される場合がある。これによって、第2の導管160から第1の導管150へ引き込まれる低温の保温液130をヒーター170の上下に導き、保温液130をより効率的に加熱できる場合がある。
【0041】
図示の例では、第2の導管160は、直角継ぎ手管(「エルボ」と呼ばれる)で構成されているが、第2の導管160は、第2の接続口127を第1の導管150の側面に接続できるものであれば、如何なる形状の導管であってもよい。例えば、第2の導管160は、第2の接続口127を第1の導管150の側面に接続する真っすぐな導管であってもよい。上記のように、第2の導管160は、第1の導管150一体的に形成されてもよい。
【0042】
第2の導管160は、その出口側端部が、ヒーター170を含む第1の導管150の側面に接続され、ヒーター170に近接して配置されるため、耐熱性であることが好ましい。一例において、第2の導管160は、ステンレス鋼やアルミニウムのような金属から形成される場合がある。他の例では、第2の導管160は、耐熱ガラスやセラミックから形成される場合がある。
【0043】
ヒーター170を駆動すると、ヒーター170の周囲にある保温液130は加熱され、第1の導管150内に上向きの流れを生成し、加熱された保温液130は、第1の接続口126からジャケット容器120内へと流入する。同時に、第1の導管150内の上向きの流れは、第1の導管150内に負圧を生成し、ジャケット容器120の第2の接続口127から第2の導管160を介して、低温の保温液130を第1の導管150へと引き込む。このように、本発明による加熱保温装置100は、保温液130を加熱しながら自己循環させることができるため、機械式ポンプ機構を含まなくてよい。
【0044】
また、本発明による加熱保温装置100は、保温液130を加熱しながら循環させることができるため、従来の加熱保温装置のように、ジャケット容器120の下面全体にわたる大型のヒーターを備える必要がなく、ヒーターの消費電力を大幅に低減できる。
【0045】
加熱循環装置140は、ジャケット容器120内の保温液130又は容器本体110に接触するように配置された温度センサー180と、温度センサー180により検知されたジャケット容器120内の保温液130の温度又は容器本体110の温度に応じてヒーター170の温度を制御するコントローラ190とをさらに含む場合がある。
【0046】
一例において、温度センサー180は、塩化ビニルやガラスなどの絶縁体で防水コーティングされたサーミスタである場合がある。サーミスタは、温度によって電気抵抗値が変化する素子であり、安価で精度が高い。他の例では、温度センサー180は、熱電対や白金測温抵抗体などを利用した他の温度センサーであってもよい。
【0047】
温度センサー180は、ジャケット容器120の側壁124に設けられたセンサー挿入口129を通してジャケット容器120に挿入され、ジャケット容器120内の保温液130に浸漬される。これによって温度センサー180は、ジャケット容器120内の保温液130の温度を検知することができる。温度センサー180は、容器本体110に近接した位置に配置されることが好ましい。センサー挿入口129は、温度センサー180をジャケット容器120内に挿入した状態で密閉される。他の例では、温度センサー180は、センサー挿入口129を通してジャケット容器120に挿入され、容器本体110と接触するように配置されてもよい。これによって温度センサー180は、容器本体110の外表面の温度に近い温度を検知することができる。
【0048】
コントローラ190は、信号線182を介して温度センサー180に接続され、温度センサー180からジャケット容器120内の保温液130又は容器本体110の温度を示す信号を受け取ることができる。また、コントローラ190は、信号線192を介して電源ユニット194にも接続され、電源ユニット194へ制御信号を送ることにより、ヒーター170へ給電の有無、又は給電量を制御し、ひいてはヒーター170の温度を制御することができる。
【0049】
一例において、コントローラ190は、温度センサー180によって検知されたジャケット容器120内の保温液130の温度又は容器本体110の温度に応じて、ジャケット容器120内の保温液130又は容器本体110の温度が所定の温度に保たれるように、ヒーター170の温度を制御する場合がある。他の例において、コントローラ190は、温度センサー180によって検知されたジャケット容器120内の保温液130又は容器本体110の温度に応じて、ジャケット容器120内の保温液130の温度又は容器本体110の温度が所定の温度範囲内に保たれるように、ヒーター170の温度を制御する場合がある。
【0050】
一例において、コントローラ190は、保温液130又は容器本体110の温度又は所定の温度範囲を記憶したメモリ(図示せず)と、上記のようなヒーター170の温度制御を実施するように構成されたプロセッサ(図示せず)とを含む場合がある。他の例では、コントローラ190は、上記のようなヒーター170の温度制御を実施するように構成された特定用途向け集積回路(ASIC)又はPGA(プログラマブルゲートアレイ)であってもよい。
【0051】
以上説明したように、加熱循環装置140は、ジャケット容器120内の保温液130を加熱する際に、保温液130を熱により自己循環させることで、加熱された保温液130をジャケット容器120内の低温の保温液130と混合する。そのため、機械式ポンプ機構を必要とすることなく、ジャケット容器120内の保温液130の温度(ひいては容器本体110の温度)を均一に上昇させることができる。また、加熱保温装置100は、容器本体110とジャケット容器120との間の隙間が上向きに開放されているため、ヒーター170の加熱により気泡等が発生した場合でも、その圧力を隙間から逃がすことができ、ジャケット容器120の破損を防止することができる。
【0052】
さらに、上で説明した加熱保温装置100は、対象物を容器本体110に入れて保温するように構成されているが、対象物が保温液130に直接浸漬されても構わないものであるときは、容器本体110を省略して実施することも可能である。すなわち、上で説明した加熱循環装置140は、ジャケット容器120用の保温液130の加熱循環装置140として説明されているが、加熱循環装置140は、保温液130を有する一般的容器(すなわち、ジャケット容器以外の容器)にも、同様に適用することができる。
【0053】
図2は、加熱保温装置100から容器本体110を取り外し、保温液130を取り除いた様子を示す図である。コントローラ190と電源ユニット194は省略している。本発明による加熱保温装置100は、容器本体110をジャケット容器120から取り外しできるため、容器本体110のみを交換して別の対象物を保温するという使い方ができる点で便利である。また、本発明による加熱保温装置100は、容器本体110を取り外した状態でジャケット容器120の内部を容易に洗浄できるため、非常に衛生的である。
【0054】
図3は、容器本体110を取り外し、保温液130を取り除いた状態の加熱保温装置100を示す平面図であり、
図4は、加熱保温装置100から取り外された容器本体110のみを示す平面図である。一例において、容器本体110及びジャケット容器120は、図示のように、それぞれ円筒形である場合がある。保温液130を入れる隙間を確保するために、容器本体110の直径は、ジャケット容器120の直径よりも若干小さくなっている。他の例では、容器本体110及びジャケット容器120は、正四角筒、正六角筒などの正多角筒形であってもよい。容器本体110とジャケット容器120の平断面は、相似形であってもよい。容器本体110とジャケット容器120の平断面が相似形であると、容器本体110の全周に均一な厚みの保温液130を有することができ、容器本体110の全周を均一に保温する上で有利である。他の例では、容器本体110とジャケット容器120の平断面は、相似形でなくてもよい。
【0055】
容器本体110は、その外周面から延びる4つの切り欠き付きのタブ113を有し、ジャケット容器120も同様に、その外周面から延びる4つの切り欠き付きのタブ123を有している。容器本体110をジャケット容器120の中に取り付けるときは、容器本体110のタブ113をジャケット容器120のタブ123の上に載せ、両者を上下方向に整列させた状態で、固定具115によって互いに結合する。切り欠き付きのタブ113、123は、それらを上下方向に整列させたときに、容器本体110がジャケット容器120内で、ジャケット容器120と同軸に位置決めされるような位置にそれぞれ形成されている。一例において、容器本体110は、ジャケット容器120の底壁122及び側壁124からそれぞれ所定の隙間を空けて、ジャケット容器120と同軸になるようにジャケット容器120内に配置され、ジャケット容器120に固定される場合がある。固定具115を外すことで、容器本体110は、ジャケット容器120から取り外すことができる。
【0056】
図5は、本発明の第2の実施形態による加熱保温装置200を示す断面図である。
図6は、加熱保温装置200から容器本体210を取り外し、保温液230を取り除いた状態を示す平面図である。加熱保温装置200は、
図1の加熱保温装置100に類似しているが、ジャケット容器220の底壁222に、加熱循環装置240と接続するための第3の接続口228をさらに含む点、及び、第3の接続口228を第1の導管250の側面に接続するための第3の導管262をさらに含む点で、
図1の加熱保温装置100とは相違する。
【0057】
第3の接続口228は、第2の接続口227と同様にジャケット容器220の底壁222に設けられているが、第2の接続口227とは異なる位置に設けられている。一例において、第3の接続口228は、ジャケット容器220の中心軸に関して、第2の接続口227とは対称な位置に設けられる場合がある。
【0058】
第3の導管262は、第2の導管260と同様に、ジャケット容器220の第3の接続口228を第1の導管250の側面に接続するように構成される。ただし、第3の導管262が第1の導管250の側面に接続されるときの接続部の高さと、第2の導管260が第1の導管250の側面に接続されるときの接続部の高さは、同じ高さであってもよいし、互いに異なる高さであってもよい。また、第1の導管250、第2の導管260及び第3の導管262は、一体に形成されてもよい。
【0059】
加熱保温装置200は、ジャケット容器220から、第2の導管260を介して低温の保温液230を第1の導管250へと引き込むだけでなく、第3の導管262を介して低温の保温液230を第1の導管250へと引き込む。当業者には明らかであるように、加熱保温装置200は、第2の導管260と同様の複数の導管、すなわち、第3の導管、第4の導管、第5の導管・・・を有する場合がある。複数の循環路を有することで、加熱保温装置200は、加熱された保温液130の熱をジャケット容器120内にさらに効率よく拡散できる場合がある。
【0060】
上記の点を除き、第2の実施形態による加熱保温装置200は、第1の実施形態による加熱保温装置100と同様に構成される。加熱保温装置100の構成要素と同様の加熱保温装置200の構成要素については、加熱保温装置100の構成要素に付した符号に100を加えた符号を付して、重複する説明は省略する。
【0061】
図7は、本発明の第3の実施形態による加熱保温装置300を示す断面図である。
図8は、加熱保温装置300から容器本体310を取り外し、保温液330を取り除いた状態を示す平面図である。加熱保温装置300は、
図1の加熱保温装置100に類似しているが、第2の接続口327が、ジャケット容器320の底壁322ではなく、ジャケット容器320の側壁324に設けられている点で、
図1の加熱保温装置100とは相違する。これによって、加熱保温装置300は、加熱された保温液330の熱をジャケット容器320内にさらに効率よく拡散できる場合がある。
【0062】
上記の点を除き、第3の実施形態による加熱保温装置300は、第1の実施形態による加熱保温装置100と同様に構成される。加熱保温装置100の構成要素と同様の加熱保温装置300の構成要素については、加熱保温装置100の構成要素に付した符号に200を加えた符号を付して、重複する説明は省略する。
【0063】
図9は、本発明の第4の実施形態による加熱保温装置400を示す断面図である。
図10は、加熱保温装置400から容器本体410を取り外し、保温液430を取り除いた状態を示す平面図である。加熱保温装置400は、
図1の加熱保温装置100に類似しているが、第2の導管460が、ヒーター470の約半分の高さよりも低い位置で第1の導管450に接続されている点で、
図1の加熱保温装置100とは相違する。加熱保温装置400の第2の導管460は、ヒーター470の約半分の高さよりも低い任意の位置で第1の導管450に接続することができる。これによって、加熱保温装置400は、例えば第1の導管450の内壁とヒーター470との間の隙間が狭いときに、保温液430を効率よく加熱できる場合がある。
【0064】
上記の点を除き、第4の実施形態による加熱保温装置400は、第1の実施形態による加熱保温装置100と同様に構成される。加熱保温装置100の構成要素と同様の加熱保温装置400の構成要素については、加熱保温装置100の構成要素に付した符号に300を加えた符号を付して、重複する説明は省略する。
【0065】
以上、本発明によれば、機械式ポンプ機構を必要とすることなく、ジャケット容器内の保温液の一部をジャケット容器の外部で加熱してジャケット容器へ戻すように保温液を循環させることができ、ジャケット容器に加わる圧力を回避できるとともに、ヒーターの消費電力を大きく低減できる。また、本発明によれば、容器本体のみを交換して様々な対象物を保温することができる利便性が得られる。
【0066】
本発明の種々の実施形態に関する上記説明は、例示を目的としたものであり、発明の範囲を制限するものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって規定される。
【符号の説明】
【0067】
100、200、300、400 加熱保温装置
110、210、310、410 容器本体
120、220、320、420 ジャケット容器
150、250、350、450 第1の導管
160、260、360、460 第2の導管
170、270、370、470 ヒーター
116、226、326、426 第1の接続口
117、227、327、427 第2の接続口
130、230、330、430 保温液
140、240、340、440 加熱循環装置
【要約】
【課題】ジャケット式加熱保温装置における装置価格及び消費電力の低減。
【解決手段】一態様において、本発明は、容器本体と、容器本体を受け入れるためのジャケット容器と、容器本体とジャケット容器との間の隙間に収容された保温液と、ジャケット容器から保温液の一部を受け取り、受け取った保温液を加熱してジャケット容器に戻すための加熱循環装置とを含む、加熱保温装置を提供する。加熱循環装置は、ジャケット容器の下側に概ね鉛直に配置された第1の導管であって、ジャケット容器の底壁に設けられた第1の接続口に接続された上端部と、密閉された下端部とを有する、第1の導管と、第1の導管内に配置されたヒーターと、ジャケット容器の底壁又は側壁に設けられた第2の接続口を第1の導管の側面に接続するための第2の導管とを含む。
【選択図】
図1