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  • 特許-銅シャフト炉のバーナー構造体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】銅シャフト炉のバーナー構造体
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/76 20060101AFI20240626BHJP
   F23D 14/58 20060101ALI20240626BHJP
   F27D 7/02 20060101ALI20240626BHJP
   F27D 1/04 20060101ALI20240626BHJP
   F23C 5/02 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
F23D14/76
F23D14/58 D
F27D7/02 A
F27D1/04 A
F23C5/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023192847
(22)【出願日】2023-11-13
【審査請求日】2023-11-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】311014705
【氏名又は名称】NJT銅管株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 哲仁
(72)【発明者】
【氏名】梅村 昌史
(72)【発明者】
【氏名】日浦 智之
(72)【発明者】
【氏名】小山 剛司
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】実公平05-044714(JP,Y2)
【文献】実開昭57-014792(JP,U)
【文献】特開2008-232474(JP,A)
【文献】実公昭52-044898(JP,Y2)
【文献】実開昭56-008296(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/76
F23D 14/58
F27D 7/02
F27D 1/04
F23C 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅シャフト炉の内壁より所定距離離れて該炉の外側に、バーナーの中心軸の延長線が該炉の炉体に形成されている炉体フレーム導入経路の中心軸と重なるように設置されているバーナーと、
一端側の開口が該炉体フレーム導入経路の一端側に対向し、該バーナーから噴出するフレームを該炉の炉内に導く、バーナータイルフレーム導入経路が形成されており、該バーナータイルフレーム導入経路の中心軸が該バーナーの中心軸の延長線と重なるように、該炉の炉体に設置されているバーナータイルと、
一端側が該バーナータイルの他端側から、該バーナータイルの内側に挿入され、該バーナータイルフレーム導入経路に開口し、他端側が該バーナーに連結し、該バーナーから噴出するフレームを該炉の炉内に導く、フレームホルダーフレーム導入経路が形成されており、該フレームホルダーフレーム導入経路の中心軸が該バーナーの中心軸の延長線と重なるように、該バーナータイルと該バーナーの間に設置されているフレームホルダーと、
を有し、
該炉体フレーム導入経路の他端側の最内位置近傍を、該バーナーから噴出するフレームの高温部が加熱することができる位置に、該フレームホルダーの一端側の開口が位置決めされていること、
を特徴とする銅シャフト炉のバーナー構造体。
【請求項2】
前記バーナーの中心軸方向における、前記炉体フレーム導入経路の他端側の最内位置から前記フレームホルダーの一端までの距離が、210~280mmであることを特徴とする請求項1記載の銅シャフト炉のバーナー構造体。
【請求項3】
前記炉体フレーム導入経路の他端側の最内位置と前記フレームホルダーの一端の最内位置と、を通る直線と、前記バーナーの中心軸との角度θが、5~8°であることを特徴とする請求項1記載の銅シャフト炉のバーナー構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅溶解炉用のシャフト炉において、炉内を加熱するために設置されるバーナーの構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
銅管、銅棒、銅線、銅板条等の製造では、銅を溶解させて銅鋳塊を得、得られた銅鋳塊に種々の加工を行うことにより、銅管、銅棒、銅線、銅板条等を製造する。この銅の溶解に従来より用いられていたのが、銅の還元溶解に用いられるシャフト炉である。
【0003】
銅シャフト炉は、溶解原料が供給される上部から下方に向かって、予熱帯、溶解帯、加熱帯が順に設けられており、上部から溶解原料となる電気銅等が供給される。そして、炉内で、溶解原料が、炉壁に設置されているバーナーによって、加熱され、炉の底部に溶解銅を生成する。溶解銅は、炉底部のタップホールから連続的に炉外へ取り出され、銅鋳塊の作製に用いられる。
【0004】
銅シャフト炉では、炉壁に設置されたバーナーによって、溶解原料が加熱される。図3に、その銅シャフト炉の炉体に設置される従来のバーナー構造体の一例を示す。図3中、銅シャフト炉の炉体32には、バーナー構造30が設置されており、バーナー構造体30は、少なくとも、銅シャフト炉の外側に設置されるバーナー33と、炉体32に設置され、内側にフレームホルダー35が挿通されるバーナータイル34と、一端側がバーナータイル34の内側に挿入され、他端側がバーナー33に連結し、内側にバーナー33から噴出するフレームを銅シャフト炉の炉内31に導く、フレーム導入経路38が形成されている、バーナータイル34とバーナー33の間に設置されているフレームホルダー35と、を有する。
【0005】
銅シャフト炉のバーナー構造体30では、バーナー33に燃料及び空気等の支燃性ガスが供給され、バーナー33の先端で、燃料を燃焼させてフレームを発生させ、発生させたフレームを、フレームホルダーフレーム導入経路38及び炉体フレーム導入経路37を経て、炉内31に導入する。そして、銅シャフト炉の炉内31に導入されたフレームにより、溶解原料が加熱されて、溶解銅を生じさせる。
【0006】
銅シャフト炉のバーナー構造体としては、例えば、特許文献1には、主バーナーと、前記主バーナーと同一中心軸を有し、前記主バーナーの前記中心軸に沿って配置される保炎バーナーとを具備し、前記保炎バーナーは、前記主バーナーから噴出される予混合気の噴出速度を調節する開度調節器と、火炎を点火するための点火トーチと、前記火炎を安定に維持調整するための保炎器とを備え、前記開度調節器と、前記点火トーチの前記中心軸方向の位置と、前記保炎バーナーとはそれぞれ独立に調節可能である燃焼装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-242399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、従来のバーナー構造体では、炉体フレーム導入経路の他端側の最内位置より炉内側の部分に、溶解銅の再固化物(図3中、符号39)が付着してしまい、目詰まりを起こすことがあるとの不具合があった。
【0009】
溶解銅の再固化物の発生を抑える方法としては、支燃性ガスを予め予熱することにより、支燃性ガスによってバーナータイルが冷やされることを防ぎ、溶解銅の再固化物の発生を抑えるとの方法が考えられる。
【0010】
しかしながら、そのような方法には、予熱装置の設置が必要となり、設備費用が嵩むという問題がある。
【0011】
従って、本発明の目的は、炉体に溶解銅の再固化物が付着し難い、銅シャフト炉のバーナー構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記技術背景の基、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、従来は、バーナーから発生するフレームの熱を、炉内で効率的に用いるために、バーナーの中心軸方向におけるフレームホルダーの開口位置を、炉内に近づけるように設置されていたが、反対に、バーナーの中心軸方向におけるフレームホルダーの開口位置を、炉内からある程度距離遠ざけることにより、バーナータイルの最内位置より炉内寄りの部分に、溶解銅の再固化物が付着することを抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明(1)は、銅シャフト炉の内壁より所定距離離れて該炉の外側に、バーナーの中心軸の延長線が該炉の炉体に形成されている炉体フレーム導入経路の中心軸と重なるように設置されているバーナーと、
一端側の開口が該炉体フレーム導入経路の一端側に対向し、該バーナーから噴出するフレームを該炉の炉内に導く、バーナータイルフレーム導入経路が形成されており、該バーナータイルフレーム導入経路の中心軸が該バーナーの中心軸の延長線と重なるように、該炉の炉体に設置されているバーナータイルと、
一端側が該バーナータイルの他端側から、該バーナータイルの内側に挿入され、該バーナータイルフレーム導入経路に開口し、他端側が該バーナーに連結し、該バーナーから噴出するフレームを該炉の炉内に導く、フレームホルダーフレーム導入経路が形成されており、該フレームホルダーフレーム導入経路の中心軸が該バーナーの中心軸の延長線と重なるように、該バーナータイルと該バーナーの間に設置されているフレームホルダーと、
を有し、
該バーナータイルの最内位置近傍を、該バーナーから噴出するフレームの高温部が加熱することができる位置に、該フレームホルダーの一端側の開口が位置決めされていること、
を特徴とする銅シャフト炉のバーナー構造体を提供するものである。
【0014】
また、本発明(2)は、前記バーナーの中心軸方向における、前記炉体フレーム導入経路の他端側の最内位置から前記フレームホルダーの一端までの距離が、210~280mmであることを特徴とする(1)の銅シャフト炉のバーナー構造体を提供するものである。
【0015】
また、本発明(3)は、 前記炉体フレーム導入経路の他端側の最内位置と前記フレームホルダーの一端の最内位置と、を通る直線と、前記バーナーの中心軸との角度θが、5~8°であることを特徴とする(1)の銅シャフト炉のバーナー構造体を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、炉体に溶解銅の再固化物が付着し難い、銅シャフト炉のバーナー構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の銅シャフト炉のバーナー構造体の形態例の模式的な端面図である。
図2】本発明の銅シャフト炉のバーナー構造体の他の形態例の模式的な端面図である。
図3】従来の銅シャフト炉のバーナー構造体の形態例の模式的な端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の銅シャフト炉のバーナー構造体は、銅シャフト炉の内壁より所定距離離れて該炉の外側に、バーナーの中心軸の延長線が該炉の炉体に形成されている炉体フレーム導入経路の中心軸と重なるように設置されているバーナーと、
一端側の開口が該炉体フレーム導入経路の一端側に対向し、該バーナーから噴出するフレームを該炉の炉内に導く、バーナータイルフレーム導入経路が形成されており、該バーナータイルフレーム導入経路の中心軸が該バーナーの中心軸の延長線と重なるように、該炉の炉体に設置されているバーナータイルと、
一端側が該バーナータイルの他端側から、該バーナータイルの内側に挿入され、該バーナータイルフレーム導入経路に開口し、他端側が該バーナーに連結し、該バーナーから噴出するフレームを該炉の炉内に導く、フレームホルダーフレーム導入経路が形成されており、該フレームホルダーフレーム導入経路の中心軸が該バーナーの中心軸の延長線と重なるように、該バーナータイルと該バーナーの間に設置されているフレームホルダーと、
を有し、
該炉体フレーム導入経路の他端側の最内位置近傍を、該バーナーから噴出するフレームの高温部が加熱することができる位置に、該フレームホルダーの一端側の開口が位置決めされていること、
を特徴とする。
【0019】
本発明の銅シャフト炉のバーナー構造体について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の銅シャフト炉のバーナー構造体の形態例の模式的な端面図であり、バーナーの中心軸に重なる面で切ったときの端面図である。図1中、銅シャフト炉の炉体2には、バーナー構造体10aが設置されており、バーナー構造体10aは、少なくとも、バーナー3と、バーナータイル4と、フレームホルダー5と、を有する。炉体2には、炉体フレーム導入経路14が形成されている。バーナータイル4には、バーナー3から噴出するフレームを銅シャフト炉の炉内1に導く、バーナータイルフレーム導入経路7が形成されている。そして、バーナータイル4は、銅シャフト炉の炉体2に設置され、一端側が銅シャフト炉の炉体フレーム導入経路14の一端側に開口している。フレームホルダー5には、バーナー3から噴出するフレームを銅シャフト炉の炉内1に導く、フレームホルダーフレーム導入経路8が形成されている。そして、フレームホルダー5は、一端側がバーナータイル4の内側に挿入され、バーナータイルフレーム導入経路7に開口し、且つ、他端側がバーナー3に連結する。フレームホルダー5は、バーナータイルフレーム導入経路7に挿入され、且つ、バーナー3に連結して、これらの間に設置されることにより、バーナー3が、銅シャフト炉の内壁13より所定距離離れて、炉の外側に設置されている。このとき、フレームホルダー5は、フレームホルダー5の中心軸が、バーナーの中心軸の延長線11と重なるように設置されており、バーナータイル4の中心軸も概ねバーナーの中心軸の延長線11と重なるように設置されている。
【0020】
銅シャフト炉のバーナー構造10aでは、バーナー3に燃料ガス及び空気等の支燃性ガスが供給され、バーナー3の先端で、燃料が燃焼してフレーム(炎)が発生し、発生したフレームが、フレームホルダーフレーム導入経路8、バーナータイルフレーム導入経路7及び炉体フレーム導入経路14を経て、炉内1に導入される。そして、銅シャフト炉の炉内1に導入されたフレームにより、溶解原料が加熱されて、溶解銅が生じる。
【0021】
図1中、炉体フレーム導入経路14の他端側の最内位置6とは、炉体フレーム導入経路を径方向(中心軸に垂直な面で)に見たときに、最も内側になる位置(中心軸に近くなる位置)を指す。バーナー3の中心軸の延長線11を含む平面で切った端面図である図1では、炉体フレーム導入経路14の他端側で、バーナー3の中心軸の延長線11に最も近くなる位置を指す。また、バーナーの中心軸方向における、炉体フレーム導入経路14の他端側の最内位置からフレームホルダーの一端までの距離Xとは、図1では、炉体フレーム導入経路14の他端側の最内位置6を結ぶ線と、フレームホルダーの一端の最内位置9を結ぶ線との距離を指す。また、炉体フレーム導入経路14の他端側の最内位置6とフレームホルダーの一端の最内位置9とを通る直線12とは、図1では、炉体フレーム導入経路14の他端側の最内位置6とフレームホルダーの一端の最内位置9とを通る直線を指し、また、直線12と、バーナーの中心軸との角度θとは、図1において、直線12と、バーナー3の中心軸の延長線11がなす角度を指す。
【0022】
本発明の銅シャフト炉のバーナー構造体は、図1に示す形態例のように、バーナーの中心線が水平であってもよいし、あるいは、図2に示す形態例のように、バーナーの中心線が水平方向に対し、傾いていてもよい。図2は、本発明の銅シャフト炉のバーナー構造体の他の形態例の模式的な端面図である。図2中、銅シャフト炉のバーナー構造体10bでは、バーナーの中心線11が水平方向に対し、バーナーのフレームが斜め下方に噴出するように、傾いている。なお、銅シャフト炉のバーナー構造体10bにおいては、バーナーの中心線が水平方向に対し、傾いていていること以外は、図1中の銅シャフト炉のバーナー構造体10aと同様である。
【0023】
バーナーは、燃料ガスを燃焼させてフレーム(炎)を発生させるために、都市ガス等の燃料ガス及び空気、酸素ガス等の支燃性ガスが供給及び混合され、混合気体を炉内に向けて放出する部材である。そして、バーナーの先端では、燃料ガスが燃焼し、先端が銅シャフト炉内に向くフレームが発生する。
【0024】
バーナーは、バーナータイル及びフレームホルダーを間に介して、銅シャフト炉の炉体に設置されている。そのため、バーナーは、銅シャフト炉の内壁より所定の距離離れて、炉の外側に設置されている。
【0025】
バーナーの先端の開口の径は、特に制限されないが、通常、30~100mmである。
【0026】
フレームホルダーは、一端がバーナータイルの他端側から、バーナータイルフレーム導入経路に挿入されて、バーナータイルの他端側に固定され、且つ、他端がバーナーの先端に連結して固定されて、バーナーとバーナータイルとの間に設置される部材である。
【0027】
フレームホルダーには、内側にバーナーから噴出するフレームを銅シャフト炉の炉内に導く、フレームホルダーフレーム導入経路が形成されている。そして、フレームホルダーの一端側の開口が、バーナータイルの内側のバーナータイルフレーム導入経路内で開口し、且つ、他端側の開口が、バーナーの先端の開口と対向している。
【0028】
フレームホルダーの一端側の開口の径は、特に制限されないが、通常、30~100mmである。また、フレームホルダーの他端側の開口の径は、通常、バーナーの先端の開口の径と同程度である。
【0029】
フレームホルダーの内側に形成されているフレームホルダーフレーム導入経路の、中心軸に垂直な断面の形状は、略円形である。
【0030】
フレームホルダーの材質は、特に制限されず、SiC質レンガ等が挙げられる。
【0031】
バーナータイルは、バーナータイルの一端側の開口が、銅シャフト炉の炉体に形成されている炉体フレーム導入経路の一端側に対向するように、炉体に固定されることにより、銅シャフト炉の炉体に設置される部材である。つまり、バーナータイルは、本発明のバーナー構造体を、銅シャフト炉に設置するために、直接、銅シャフト炉の炉体に固定される部材である。
【0032】
バーナータイルには、内側にバーナーから噴出するフレームを銅シャフト炉の炉内に導く、バーナータイルフレーム導入経路が形成されている。そして、バーナータイルの一端側の開口が、炉体フレーム導入経路の一端側に対向し、且つ、他端側には、内側にフレームホルダーの一端側が挿入されている。
【0033】
バーナータイルの内側に形成されているバーナータイルフレーム導入経路の、中心軸に垂直な断面の形状は、略円形である。
【0034】
バーナータイルの材質は、特に制限されず、SiC質レンガ等が挙げられる。
【0035】
本発明のバーナー構造体では、フレームホルダーは、フレームホルダーフレーム導入経路の中心軸が、バーナーの中心軸の延長線と略重なるように設置されており、且つ、バーナータイルは、バーナータイルフレーム導入経路の中心軸が、バーナーの中心軸の延長線と略重なるように設置されている。なお、本発明のバーナー構造体では、フレームホルダー又はバーナータイルのフレーム導入経路の中心軸が、バーナーの中心軸の延長線に概ね重なっていればよく、フレームホルダー又はバーナータイルのフレーム導入経路の中心軸が、バーナーの中心軸の延長線と略重なるとは、フレームホルダー又はバーナータイルのフレーム導入経路の中心軸が、バーナーの中心軸の延長線に完全に重なる場合と、本発明の効果を損なわない範囲で、フレームホルダー又はバーナータイルのフレーム導入経路の中心軸が、バーナーの中心軸の延長線と少しずれている場合と、を含む。
【0036】
本発明のバーナー構造体では、炉体フレーム導入経路の他端側の最内位置近傍を、バーナーから噴出するフレームの高温部が加熱することができる位置に、フレームホルダーの一端側の開口が位置決めされている。本発明者らは、従来のバーナー構造体では、バーナーから発生するフレームの熱を、炉内で効率的に用いるために、フレームホルダーの開口位置を炉内に近づけるように設計されていたところを、それとは反対に、フレームホルダーの開口位置を炉内から離れる方向に位置させて、バーナーから噴出するフレームの高温部を、炉体フレーム導入経路の他端側の最内位置近傍又は炉体フレーム導入経路の他端側の最内位置に重なる位置に位置させることにより、バーナーによる加熱対象の加熱効率を大きく下げることなく、炉体に溶解銅の再固化物が付着し難くなることを見出した。
【0037】
本発明のバーナー構造体では、バーナーの中心軸方向における、炉体フレーム導入経路の他端側の最内位置からフレームホルダーの一端までの距離が、好ましくは210~280mmである。バーナーの中心軸方向における、炉体フレーム導入経路の他端側の最内位置からフレームホルダーの一端までの距離が、上記範囲にあることにより、バーナーから噴出するフレームの高温部を、炉体フレーム導入経路の他端側の最内位置近傍又は炉体フレーム導入経路の他端側の最内位置に重なる位置に位置させ易くなるので、炉体フレーム導入経路の他端側の最内位置近傍が効率的に加熱されて、バーナーによる加熱対象の加熱効率を大きく下げることなく、炉体に溶解銅の再固化物が付着し難くなる効果が高まる。一方、バーナーの中心軸方向における、炉体フレーム導入経路の他端側の最内位置からフレームホルダーの一端までの距離が、上記範囲未満だと、フレームホルダーの開口の位置が、炉内に近づき過ぎるために、バーナーから噴出するフレームの高温部が、炉体フレーム導入経路の他端側の最内位置近傍を加熱し難くなり、また、上記範囲を超えると、バーナーから噴出するフレームによる溶解対象の加熱効率が低くなり易い。なお、バーナーの中心軸方向における、炉体フレーム導入経路の他端側の最内位置からフレームホルダーの一端までの距離は、バーナーの中心軸に重なる端面で見たときの距離を指す。
【0038】
本発明のバーナー構造体では、炉体フレーム導入経路の他端側の最内位置とフレームホルダーの一端の最内位置とを通る直線と、バーナーの中心軸との角度θが、好ましくは5~8°である。炉体フレーム導入経路の他端側の最内位置とフレームホルダーの一端の最内位置とを通る直線と、バーナーの中心軸との角度θが、上記範囲にあることにより、バーナーから噴出するフレームの高温部を、炉体フレーム導入経路の他端側の最内位置近傍又は炉体フレーム導入経路の他端側の最内位置に重なる位置に位置させ易くなるので、炉体フレーム導入経路の他端側の最内位置近傍が効率的に加熱されて、バーナーによる加熱対象の加熱効率を大きく下げることなく、炉体に溶解銅の再固化物が付着し難くなる効果が高まる。一方、炉体フレーム導入経路の他端側の最内位置とフレームホルダーの一端の最内位置とを通る直線と、バーナーの中心軸との角度θが、上記範囲未満だと、バーナーから噴出するフレームによる溶解対象の加熱効率が低くなり易くなり、また、上記範囲を超えると、フレームホルダーの開口の位置が、炉内に近づき過ぎるために、バーナーから噴出するフレームの高温部が、炉体フレーム導入経路の他端側の最内位置近傍を加熱し難くなる。なお、炉体フレーム導入経路の他端側の最内位置とフレームホルダーの一端の最内位置とを通る直線と、バーナーの中心軸との角度θは、バーナーの中心軸に重なる端面で見たときの角度θを指す。
【0039】
本発明のバーナー構造体における燃料ガスの燃焼条件、つまり、ガス/エアー圧、ガス/エアー流量(燃焼量)、空気比等は、フレームのリフティングが起こらず、燃料ガスを効率よく燃焼させる通常の条件が選択される。そして、本発明のバーナー構造体は、そのような通常の燃焼ガスを効率よく燃焼させる燃焼条件において、上記のバーナーによる加熱対象の加熱効率を大きく下げることなく、バーナータイルに溶解銅の再固化物が付着し難くなる効果を発揮する。
【0040】
また、銅シャフト炉に、本発明のバーナー構造体が設置されている場合において、支燃性ガスを予め加熱するための予熱装置を設けなくてもよいし、あるいは、予熱装置を設けてもよい。
【0041】
以下に、実施例を挙げて、本発明を説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0042】
(実施例及び比較例)
バーナー構造体におけるフレームホルダー位置を表1の通りとした。
【0043】
【表1】
【0044】
先ず、下記の通り、それぞれの種別のバーナー構造体をシャフト炉に設置し、銅溶解を行った。
・溶解帯のバーナー構造体の配置
最下段のバーナー構造体6箇所中、2箇所をNo1バーナー構造体とし、残りの4箇所をNo.2バーナー構造体とした。
・銅溶解
実施期間:1週間
バーナー燃焼条件:燃焼の制御条件(燃焼量、空気比)はNo.1とNo.2で同様である。
【0045】
銅溶解1週間銅溶解を行い、溶解銅の再固化物の付着状況を確認したところ、従来のバーナー構造体であるNo.2バーナー構造体では、溶解銅の再固化物の付着が数日で発生し、都度、除去作業が必要であった。それに対し、本発明のNo.1バーナー構造体では、溶解銅の再固形化物付着が無く、除去作業は不要であった。
【0046】
その後、シャフト炉最下段バーナー全部に、No.1バーナー構造体を適用し、6ヶ月の銅溶解を行った。その結果、いずれのNo.1バーナー構造体においても、溶解銅の再固形化物の付着が無いことを確認した。
また、燃料原単位の悪化や材料品質への悪影響も見られず、問題が無い事を確認した。
【符号の説明】
【0047】
1、30 銅シャフト炉の炉内
2、32 炉体
3、33 バーナー
4、34 バーナータイル
5、35 フレームホルダー
6 炉体フレーム導入経路の他端側の最内位置
7 バーナータイルフレーム導入経路
8、38 フレームホルダーフレーム導入経路
9 フレームホルダーの一端の最内位置
10a、10b 銅シャフト炉のバーナー構造
11 バーナーの中心線の延長線
12 炉体フレーム導入経路の他端側の最内位置とフレームホルダーの一端の最内位置とを通る直線
13 炉壁
14、37 炉体フレーム導入経路
39 溶解銅の再固化物
X バーナーの中心軸方向における、炉体フレーム導入経路の他端側の最内位置からフレームホルダーの一端までの距離
θ 炉体フレーム導入経路の他端側の最内位置とフレームホルダーの一端の最内位置とを通る直線と、バーナーの中心軸との角度
【要約】
【解決課題】バーナータイルに溶解銅の再固化物が付着し難い、銅シャフト炉のバーナー構造体。
【解決手段】銅シャフト炉の外側に設置されているバーナーと、一端側の開口が該炉体フレーム導入経路の一端側に対向し、フレーム導入経路が形成されており、該炉の炉体に設置されているバーナータイルと、一端側が該バーナータイルの他端側から、該バーナータイルの内側に挿入され、該バーナータイルフレーム導入経路に開口し、他端側が該バーナーに連結し、該バーナーから噴出するフレームを該炉の炉内に導く、フレーム導入経路が形成されており、該バーナータイルと該バーナーの間に設置されているフレームホルダーと、を有し、該バーナータイルの最内位置近傍を、該バーナーから噴出するフレームの高温部が加熱することができる位置に、該フレームホルダーの一端側の開口が位置決めされていること、を特徴とする銅シャフト炉のバーナー構造体。
【選択図】図1
図1
図2
図3