IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 有限会社沖田工業技術開発の特許一覧

特許7510222線状材の製造方法および線状材の製造装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】線状材の製造方法および線状材の製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/00 20060101AFI20240626BHJP
   B30B 11/18 20060101ALI20240626BHJP
   B21F 7/00 20060101ALI20240626BHJP
   C01B 32/168 20170101ALI20240626BHJP
   B22F 5/12 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
H01B13/00 501Z
B30B11/18
B21F7/00 D
C01B32/168
B22F5/12
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2023505128
(86)(22)【出願日】2021-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2021048139
(87)【国際公開番号】W WO2022190579
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2021037698
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】398002259
【氏名又は名称】有限会社沖田工業技術開発
(74)【代理人】
【識別番号】110003373
【氏名又は名称】弁理士法人石黒国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沖田 良成
(72)【発明者】
【氏名】沖田 豊己
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-23586(JP,A)
【文献】特開2008-108583(JP,A)
【文献】特開2015-79671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/00
B30B 11/18
B21F 7/00
C01B 32/168
B22F 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の機能を有する線状材の製造方法において、
自身の内周に、前記機能を有する物質の粉体を収容した長尺の筒体を外周側から圧縮することで、前記粉体を、前記筒体の長手方向に伸びるように線状に収容した状態を保ちつつ圧接させた状態にする圧縮工程を備え、
前記粉体は、昇華性の物質でバインドした状態で前記筒体の内周に収容されており、
前記線状材の製造方法は、
前記筒体の内周に収容された昇華性の物質を、加熱により昇華させるとともに、前記筒体に細孔を設けて昇華により生じた気体を前記筒体の外側へ抜き出す脱気工程を備えることを特徴とする線状材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の線状材の製造方法において、
前記筒体の内周には、カーボンナノチューブの粉体が収容されていることを特徴とする線状材の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の線状材の製造方法において、
前記筒体の内周には、石英ガラスおよびシリコン系化合物の少なくとも一方の粉体が収容されていることを特徴とする線状材の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の内のいずれか1つに記載の線状材の製造方法において、
所定の厚さを有する板状の長尺材料に、長手方向に線状に前記粉体を載せるとともに前記長尺材料を折り曲げて前記粉体を包むことで、前記筒体を形成する形成工程を備える線状材の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の内のいずれか1つに記載の線状材の製造方法において、
所定の厚さを有する板状の長尺材料に、長手方向に線状に粉体を載せるとともに前記長尺材料を折り曲げて前記粉体を包むことで、前記筒体を形成する形成工程を備え、
この形成工程では、前記粉体を昇華性の物質とともに柱状に成形した柱状体として、前記長尺材料に載せ、この柱状体を前記筒体の内周に収容することを特徴とする線状材の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の線状材の製造方法において、
前記柱状体は、長手方向の両端の面が長手方向に対して傾斜していることを特徴とする線状材の製造方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の線状材の製造方法において、
前記脱気工程により抜き出した気体を前記粉体と混合し、前記粉体とともに冷却固化することで前記柱状体を成形する冷却工程を備えることを特徴とする線状材の製造方法。
【請求項8】
所定の機能を有する線状材の製造方法において、
自身の内周に、前記機能を有する物質の粉体を収容した長尺の筒体を外周側から圧縮することで、前記粉体を、前記筒体の長手方向に伸びるように線状に収容した状態を保ちつつ圧接させた状態にする圧縮工程を備え、
前記圧縮工程では、前記筒体を圧縮することにより、前記筒体の素材を部分的に外周側に突き出させ、
前記線状材の製造方法は、
前記圧縮工程で外周側に突き出た部分を曲げることで、前記筒体の外周側に、前記筒体の内周とは別の空間を形成する追加工程を備えることを特徴とする線状材の製造方法。
【請求項9】
所定の機能を有する線状材の製造方法において、
自身の内周に、前記機能を有する物質の粉体を収容した長尺の筒体を外周側から圧縮することで、前記粉体を、前記筒体の長手方向に伸びるように線状に収容した状態を保ちつつ圧接させた状態にする圧縮工程を備え、
この圧縮工程では、
前記筒体を圧縮することにより、前記筒体の素材を部分的に外周側に突き出させるとともに、前記筒体の外周側に、突き出た部分によって、前記粉体を収容する別の筒体を形成し、前記別の筒体でも前記粉体を圧接することを特徴とする線状材の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の線状材の製造方法において、
前記圧縮工程で得られた、複数の筒体を撚る撚り工程を備えることを特徴とする線状材の製造方法。
【請求項21】
請求項20に記載の線状材の製造装置において、
前記圧縮部で得られた複数の筒体を撚る撚り部を備えることを特徴とする線状材の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、線状材の製造方法および線状材の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、希土類金属、炭素由来のグラファイトやカーボンナノチューブ(CNT)などの導電性が高い物質が周知となっており、これら高導電性の物質を電線の素材として、利用可能にすることが求められている。
また、上記のような高導電性物質を、電線に適した線状に成形する方法には様々な態様が考えられる。例えば、特許文献1には、CNTの撚糸電線を、CNTフォレストから乾式紡糸することにより製造する態様が開示されている。
【0003】
ところで、上記のような電線の原料として高導電性物質の粉体を使用する場合、粉体の状態から線状に成形することにより、物理的特性が変動する可能性がある。そして、このような物理的特性の変動により、導電性が低下する可能性も考えられる。
また、このような、粉体の状態から線状に成形することにより生じる物理的特性の変動は、高導電性物質に限らず、例えば、光ファイバーの素材となり得る石英ガラス、シリコン系化合物等の絶縁性物質についても、可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-133296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本開示は、線状材の製造方法および線状材の製造装置に関し、線状材の原料となる物質を粉体の状態から線状に成形することにより生じる物理的特性の変動を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の製造方法は所定の機能を有する線状材を製造する方法であり、次の圧縮工程を備える。すなわち、圧縮工程では、自身の内周に、当該機能を有する物質の粉体を収容した長尺の筒体を外周側から圧縮することで、粉体を、筒体の長手方向に伸びるように線状に収容した状態を保ちつつ圧接させた状態にする。
また、本開示の第1の製造方法によれば、粉体は、昇華性の物質でバインドした状態で筒体の内周に収容されており、第1の製造方法は、次の脱気工程を備える。すなわち、脱気工程では、筒体の内周に収容された昇華性の物質を、加熱により昇華させるとともに、筒体に細孔を設けて昇華により生じた気体を筒体の外側へ抜き出す。
次に、本開示の第2の製造方法によれば、圧縮工程では、筒体を圧縮することにより、筒体の素材を部分的に外周側に突き出させる。また、第2の製造方法は、次の追加工程を備える。すなわち、追加工程では、圧縮工程で外周側に突き出た部分を曲げることで、筒体の外周側に、筒体の内周とは別の空間を形成する。
また、本開示の第3の製造方法によれば、圧縮工程では、筒体を圧縮することにより、筒体の素材を部分的に外周側に突き出させるとともに、筒体の外周側に、突き出た部分によって、粉体を収容する別の筒体を形成し、別の筒体でも粉体を圧接する。
さらに、本開示の第4の製造方法は、次の撚り工程を備える。すなわち、撚り工程では、第3の製造方法の圧縮工程で得られた、複数の筒体を撚る。
これにより、線状材の製造方法に関し、線状材の原料となる物質を粉体の状態から線状に成形することにより生じる物理的特性の変動を抑制する、という課題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】製造装置のブロック図である(実施例1)。
図2】柱状体の斜視図である(実施例1)。
図3】形成部の内、第1、第2供給部を示す説明図である(実施例1)。
図4図3のIV-IV矢視図である(実施例1)。
図5図3のV-V断面図である(実施例1)。
図6】形成部の内、筒体形成部を示す説明図である(実施例1)。
図7】筒体形成部の位置P1における加工の状態を示す説明図である(実施例1)。
図8】筒体形成部の位置P2における加工の状態を示す説明図である(実施例1)。
図9】筒体形成部の位置P3における加工の状態を示す説明図である(実施例1)。
図10】筒体形成部の位置P4における加工の状態を示す説明図である(実施例1)。
図11】筒体形成部の位置P5における加工の状態を示す説明図である(実施例1)。
図12】筒体形成部の位置P6における加工の状態を示す説明図である(実施例1)。
図13】圧縮部の構成図である(実施例1)。
図14図13のXIV-XIV矢視図である(実施例1)。
図15図13のXV拡大図である(実施例1)。
図16】圧縮部による加工の状態を示す説明図である(実施例1)。
図17】追加部を示す説明図である(実施例1)。
図18】追加部における加工ローラの構成図である(実施例1)。
図19】追加部の位置P11における加工ローラの配置を示す説明図である(実施例1)。
図20】追加部の第3曲げ部における加工ローラの位置の変化を示す説明図である(実施例1)。
図21】追加部の第4曲げ部における加工ローラの位置の変化を示す説明図である(実施例1)。
図22】製造装置のブロック図である(実施例2)。
図23】圧縮部の構成図である(実施例2)。
図24図23のXXIV-XXIV矢視図である(実施例2)。
図25図23のXXV拡大図である(実施例2)。
図26】圧縮部による加工の状態を示す説明図である(実施例2)。
図27】撚り部を示す説明図である(実施例2)。
図28】撚り部の構成図である(実施例2)。
図29図28のXXIX-XXIX矢視図である(実施例2)。
図30図28のXXX拡大図である(実施例2)。
図31図28のXXXI拡大図である(実施例2)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示を実施するための形態を以下の実施例により詳細に説明する。
【実施例
【0009】
〔実施例1の構成〕
実施例1の製造方法を図1図21を用いて説明する。
実施例1の製造方法は、例えば、電線のような所定の機能を有する線状材2を製造する方法であり、カーボンナノチューブのような高導電性物質の粉体を材料として採用する。そして、実施例1の製造方法は、以下に説明する形成工程、脱気工程、圧縮工程、追加工程および冷却工程を備える。
【0010】
以下、実施例1の製造方法を製造装置1に基づいて説明する。
なお、製造装置1は、形成工程、脱気工程、圧縮工程、追加工程および冷却工程それぞれの工程を担う形成部3、脱気部4、圧縮部5、追加部6および冷却部7を備える(図1等参照。)。
【0011】
また、製造装置1には、線状材2の材料として、所定の厚さを有する板状の長尺材料8、および、上記の粉体が連続的に供給され、これらの材料は、形成部3、脱気部4、圧縮部5、および、追加部6を、順次、経由して線状材2となる。
以下、形成部3、脱気部4、圧縮部5、追加部6および冷却部7を、形成工程、脱気工程、圧縮工程、追加工程および冷却工程とともに、順次、説明する。
【0012】
形成部3は、形成工程を担う部分であり、形成工程では、所定の厚さを有する板状の長尺材料8に、長手方向に線状に粉体を載せるとともに長尺材料8を折り曲げて粉体を包むことで、筒体9を形成する。ここで、粉体は、昇華性の物質でバインドされた状態で長尺材料8に載り、昇華性の物質とともに筒体9の内周に収容される。より具体的には、粉体は、予め、昇華性の物質とともに柱状に成形された柱状体10として長尺材料8に載り、柱状体10として筒体9の内周に収容される。なお、柱状体10は、後記するように冷却部7において設けられて形成部3に供給される。
【0013】
柱状体10の形状は、例えば、次のような態様である(図2等参照。)。
すなわち、柱状体10の形状は、長手方向の両端の端面10a、10bが長手方向に対して傾斜している斜角柱である。また、端面10a、10bは、同じ形態の長方形であって、対応する4辺が互いに平行である。そして、対応する辺同士の間に形成される4つの側面10c、10d、10e、10fは、それぞれ長手方向に長い平行四辺形であり、側面10c、10e、側面10d、10fはそれぞれ互いに向かい合って平行である。
【0014】
さらに、端面10a、10bの平行四辺形の内、長い方の辺同士の間に形成される側面10c、10eは長手方向に長い長方形である。なお、以下の説明では、端面10a、10bの長い方の2辺において、鋭角状に突き出ている方の辺を鋭角エッジ11と呼び、鈍角状に突き出ているエッジを鈍角エッジ12と呼ぶことがある。
【0015】
以下、形成部3の構成について説明する。
形成部3は、次の第1、第2供給部15、16および筒体形成部17を有する(図1等参照。)。まず、第1供給部15は、柱状体10を供給し、第2供給部16は、長尺材料8を供給する(図3図4等参照。)。
【0016】
第1供給部15は、下側に向かって柱状体10を連続的に供給するものである。より具体的には、第1供給部15は、例えば、端面10aの鋭角、鈍角エッジ11、12がそれぞれ下側、上側に、また、側面10eが下側に、側面10cが上側に位置するように供給する。また、第1供給部15は、後記するように、柱状体10の長手方向が第2供給部16による長尺材料8の供給方向と略一致するように、柱状体10を供給する。
【0017】
第2供給部16は、長尺材料8を長手方向に連続的に供給するものであり、自身が供給した長尺材料8の上側の表面に柱状体10が載るように長尺材料8を供給する。また、第2供給部16は、上記のように、長尺材料8の供給方向が柱状体10の長手方向と略一致するように、長尺材料8を供給する。
【0018】
さらに、第1、第2供給部15、16は、先行する柱状体10の端面10bと後行する柱状体10の端面10aとが突き当たるように、それぞれ柱状体10、長尺材料8を供給する。このとき、後行する柱状体10の端面10aにおける鋭角エッジ11と、先行する柱状体10の端面10bにおける鈍角エッジ12とが略一致しており、後行する柱状体10の端面10aにおける鈍角エッジ12と、先行する柱状体10の端面10bにおける鋭角エッジ11とが略一致している。
【0019】
筒体形成部17は、例えば、柱状体10が載った長尺材料8に、長手方向に沿った折り目を形成しつつ、長尺材料8を折り曲げて筒体9を形成する。ここで、筒体形成部17は、例えば、次のような第1、第2曲げ部19、20を有する(図1図6等参照。)。
【0020】
まず、第1曲げ部19は、長尺材料8の短手方向に関して柱状体10が載っている範囲8Aの両外側の部分8aをそれぞれ上側に折り曲げて側面10d、10fに沿わせる(図5図7図9等参照。)。次に、第2曲げ部20は、上側に折れ曲がった両方の部分8aの内、側面10cから上側に突き出ている部分8aaを下側に折り曲げて側面10cに沿わせ、両方の部分8aaの端同士を突き合わせる(図7図12等参照。)。
【0021】
ここで、第1、第2曲げ部19、20は、両方とも、複数の加工ローラを、材料の進行方向に異ならせて、適宜、配置することで構成されている(以下、第1、第2曲げ部19、20に配置される加工ローラを、それぞれ加工ローラ19R、20Rと呼ぶことがある。)。
【0022】
そして、第1、第2曲げ部19、20は、それぞれの加工ローラ19R、20Rを回転駆動することで長尺材料8に曲げ加工を施す。
なお、第1、第2曲げ部19、20は、それぞれの加工ローラ19R、20Rによる曲げ加工を円滑に行うため、適宜、図示しない支持ローラにより長尺材料8を支持する。
【0023】
まず、第1曲げ部19は、例えば、材料の進行方向に関し、下流側の段階ほど、長尺材料8において両方の部分8aがそれぞれ側面10d、10fに近づくように加工ローラ19Rによる曲げ加工を進める。より具体的には、進行方向の下流側に向かって、第1、第2、第3段階で、部分8aがそれぞれ側面10d、10fに近づく曲げ加工が進むように、複数の加工ローラ19Rが配置されている。
【0024】
例えば、第1段階の曲げ加工が行われる位置P1では、範囲8Aに対して回転軸が30°傾斜するように、部分8aの下側、かつ、範囲8Aの両外側それぞれに加工ローラ19Rが配置されている(図7参照。)。次に、第2段階の曲げ加工が行われる位置P2では、範囲8Aに対して回転軸が60°傾斜するように、部分8aの下側、かつ、範囲8Aの両外側それぞれに加工ローラ19Rが配置されている(図8参照。)。さらに、第3段階の曲げ加工が行われる位置P3では、範囲8Aの両外側に、範囲8Aに対して回転軸が直交するようにそれぞれ加工ローラ19Rが配置されている(図9参照。)。
【0025】
次に、第2曲げ部20は、例えば、材料の進行方向に関し、下流側の段階ほど、長尺材料8の両方の部分8aaが側面10cに近づくように加工ローラ20Rによる曲げ加工を進める。より具体的には、進行方向の下流側に向かって、第4、第5、第6段階で、部分8aaが側面10cに近づく曲げ加工が進むように、複数の加工ローラ20Rが配置されている。
【0026】
例えば、第4段階の曲げ加工が行われる位置P4では、部分8aの内、側面10d、10fそれぞれに沿う範囲に対して回転軸が30°傾斜するように、両方の部分8aの上側それぞれに加工ローラ20Rが配置されている(図10参照。)。次に、第5段階の曲げ加工が行われる位置P5では、部分8aの内、側面10d、10fそれぞれに沿う範囲に対して回転軸が60°傾斜するように、両方の部分8aの上側それぞれに加工ローラ20Rが配置されている(図11参照。)。
【0027】
さらに、第6段階の曲げ加工が行われる位置P6では、部分8aの内、側面10d、10fそれぞれに沿う範囲に対して回転軸が直交するように加工ローラ20Rが配置されている(図12参照。)。そして、第1~第6段階の曲げ加工が施された後、突き合った部分8aaの端同士を溶接して筒体9を形成するとともに、筒体9の内周を封鎖する。
以上により、断面が矩形の筒体9が形成されるとともに、筒体9の内周に柱状体10が連続的かつ線状に収容される。
【0028】
脱気部4は、脱気工程を担う部分であり、脱気工程では、筒体9の内周に収容された昇華性の物質を、加熱により昇華させるとともに、筒体9に細孔を設けて昇華により生じた気体を筒体9の外側へ抜き出す。すなわち、脱気部4では、図示しないヒータにより筒体9を外側から加熱するとともに、筒体9にレーザー光を照射して孔を開ける。これにより、昇華性物質が昇華し、昇華により生じた気体は孔から筒体9の外側に抜き出される。
【0029】
なお、脱気部4の周囲には、昇華により生じたガスを回収する回収容器(図示せず。)が設けられ、筒体9は、回収容器を貫通して通過し、圧縮部5に供給される。また、レーザー光の照射機(図示せず。)は、例えば、回収容器の内部に配置され、照射機は、所定のインターバルごとにレーザー光を筒体9に向かって照射するように、間欠的に作動する。
【0030】
圧縮部5は、圧縮工程を担う部分であり、圧縮工程では、粉体を収容した筒体9を外周側から圧縮することで粉体を圧接して、粉体が有する機能を実質的に発揮できるようにする。すなわち、圧縮部5は、脱気工程を経て筒体9の内周に残った粉体を圧接することで、粉体が有する機能を実質的に発揮できるようにする。
また、圧縮部5では、筒体9を外周側から加圧することにより、筒体9の素材を部分的に外周側に突き出させる。
以下、圧縮部5について詳述する。
【0031】
圧縮部5は、例えば、次のような同一形状の4つの加工ローラ5Ra、5Rb、5Rc、5Rdを有する(図13図14等参照。)。
加工ローラ5Ra~5Rdは、それぞれ、周面を有し、それぞれの周面には、加工ローラ5Ra~5Rdの回転軸の方向の中央が外周側に突き出る頂部5Rat、5Rbt、5Rct、5Rdtが存在する。つまり、加工ローラ5Ra~5Rdは、いわゆるソロバン玉の形状を呈している。
なお、以下の説明では、加工ローラ5Ra、5Rb、5Rc、5Rd、それぞれの回転軸を回転軸5Rax、5Rbx、5Rcx、5Rdxと呼ぶことがある。
【0032】
また、加工ローラ5Ra~5Rdは、回転軸5Rax、5Rbx、回転軸5Rbx、5Rcx、回転軸5Rcx、5Rdx、回転軸5Rdx、5Raxがそれぞれ直交するように組み付けられている。そして、回転軸5Rax~5Rdxを含む加工ローラ5Ra~5Rdの切断面αを想定すると(図14等参照。)、切断面αでは、頂部5Rat~5Rdtにより大まかに区画された中空領域αAが形成されている(図15図16等参照。)。
【0033】
また、加工ローラ5Ra~5Rdは、例えば、切断面αの中空領域αAにおける頂部5Rat~5Rdtの速度ベクトルが同じ方向を指向し、かつ、大きさが同じになるように回転駆動される。これにより、脱気部4を経由した筒体9は、自身の長手方向が切断面αに直交するように、かつ、自身の中心軸9xが中空領域αAの中央を通るように、加工ローラ5Ra~5Rdに引き込まれる。
【0034】
これにより、筒体9の断面は、切断面αにおける中空領域αAまでに縮小される。そして、筒体9の断面の縮小に伴い、筒体9の内周の容積が低減され、粉体は、筒体9の内周において圧接される。
【0035】
なお、加工ローラ5Ra~5Rdは、筒体9の進行方向の下流側から視て筒体9の周囲の回転を考えたときに、正転側に向かって、加工ローラ5Ra、5Rb、5Rc、5Rdの順に配置されているものとする。また、加工ローラ5Raの周面の内、頂部5Ratの正回転側に存在する部分を周面5Ra1、負回転側に存在する部分を周面5Ra2と呼ぶことがある。
【0036】
同様に、加工ローラ5Rbの周面の内、頂部5Rbtの正回転側に存在する部分を周面5Rb1、負回転側に存在する部分を周面5Rb2と呼ぶことがあり、加工ローラ5Rcの周面の内、頂部5Rctの正回転側に存在する部分を周面5Rc1、負回転側に存在する部分を周面5Rc2と呼ぶことがあり、加工ローラ5Rdの周面の内、頂部5Rdtの正回転側に存在する部分を周面5Rd1、負回転側に存在する部分を周面5Rd2と呼ぶことがある。
【0037】
これら周面5Ra1~5Rd1、5Ra2~5Rd2は、切断面αにおいて、周面5Ra1、5Rb2、周面5Rb1、5Rc2、周面5Rc1、5Rd2、および、周面5Rd1、5Ra2それぞれの間の隙間が最も小さくなって向かい合っている。
そして、筒体9の断面の縮小に伴い、筒体9の素材の一部が、周面5Ra1、5Rb2、周面5Rb1、5Rc2、周面5Rc1、5Rd2、および、周面5Rd1、5Ra2それぞれの間の隙間に入り込み、筒体9の外周側に突き出る。
【0038】
以下の説明では、周面5Ra1、5Rb2、周面5Rb1、5Rc2、周面5Rc1、5Rd2、および、周面5Rd1、5Ra2それぞれの間の隙間に入り込んで外周側に突き出た部分を、突き出し片22a、22b、22c、22dと呼ぶことがある。
【0039】
追加部6は、追加工程を担う部分であり、追加工程では、突き出し片22a、22b、22c、22dを曲げることで、圧縮後の筒体9の外周側に、筒体9の内周とは筒状の別の空間を形成する。以下、突き出し片22a、22b、22c、22dを曲げることで形成される空間を、それぞれ、空間23a、23b、23c、23dと呼ぶことがある。
【0040】
また、追加部6は、例えば、以下に説明する同一形状の加工ローラ6Ra、6Rb、6Rc、6Rdの組合せを、圧縮後の筒体9の進行方向に沿って、複数段、適宜、配置することで構成されている(図17図21等参照。)。そして、各段階において、加工ローラ6Ra、6Rb、6Rc、6Rdは、それぞれ、突き出し片22a、22b、22c、22dを曲げる。
また、以下の説明では、加工ローラ6Ra、6Rb、6Rc、6Rdそれぞれの回転軸を回転軸6Rax、6Rbx、6Rcx、6Rdxと呼ぶことがある。
【0041】
そして、各段階で、加工ローラ6Ra~6Rdは、回転軸6Rax、6Rbx、回転軸6Rbx、6Rcx、回転軸6Rcx、6Rdx、回転軸6Rdx、6Raxがそれぞれ直交するように組み付けられている(図19等参照。)。また、加工ローラ6Ra~6Rdは、筒体9の進行方向の下流側から視て筒体9の周囲の回転を考えたときに、正転側に向かって、加工ローラ6Ra、6Rb、6Rc、6Rdの順に配置されているものとする。
【0042】
そして、追加部6は、それぞれの段階の加工ローラ6Ra~6Rdを回転駆動することで、突き出し片22a~22dを段階ごとに曲げていき、空間23a~23dを形成する(図19図21等参照。)。なお、追加部6でも、加工ローラ6Ra~6Rdによる曲げ加工を円滑に行うため、適宜、図示しない支持ローラにより突き出し片22a~22dを支持する。
以下、加工ローラ6Raの形状について詳述するが、加工ローラ6Rb~6Rdも加工ローラ6Raと同じ形状である(図18等参照。)。
【0043】
加工ローラ6Raは、自身の外周面において、回転しながら突き出し片22a~22dに圧接する加工面部24を有する。また、加工面部24の母線は、回転軸6Raxに向かって窪む曲線孤であり、この曲線孤の形状は、空間23aの外周壁の外側面の形状に略一致している(図21等参照。)。
【0044】
また、加工ローラ6Raの外周面の内、回転軸6Raxの方向に関して加工面部24の一方側の領域の母線は、円弧形状である。
以下、加工ローラの外周面の内、加工面部24の一方側の領域を停止面部25と呼ぶことがある。また、加工面部24と停止面部25との境をなす周を境界周26と呼ぶことがある。
【0045】
また、加工ローラ6Raの外周面の内、回転軸6Raxの方向に関して加工面部24の他方側は、円筒面27であり、円筒面27は、他方側で加工ローラ6Raの他端面28に滑らかに連続し、一方側で加工面部24の他端に滑らかに連続している。また、円筒面27は、加工面部24の一方側(つまり、停止面部25)よりも大径である。なお、停止面部25は、一方側で加工ローラ6Raの一端面29に滑らかに連続している。
以下、追加部6について、詳述する。
【0046】
追加部6は、次のような第3、第4曲げ部31、32を有し(図1図17等参照。)、第3、第4曲げ部31、32は、両方とも、上記のように加工ローラ6Ra~6Rdを4つで一組とし、一組の加工ローラ6Ra~6Rdを筒体9の進行方向に異ならせて、適宜、配置することで構成されている。
【0047】
また、第3、第4曲げ部31、32は、筒体9の進行方向に関し、下流側に向かって、順次、配置されている。そして、第3、第4曲げ部31、32では、両方とも、筒体9の進行方向に関し、下流側に進むほど、段階的に、突き出し片22a~22dが筒体9に近づくように、加工ローラ6Ra~6Rdによる曲げ加工が進む(図17図19図21等参照。)。
【0048】
まず、第3曲げ部31では、筒体9の進行方向に関して下流側の段階ほど、加工面部24が筒体9に直線的に近づくように加工ローラ6Ra~6Rdが配置されている(図17図19図20等参照。)。
例えば、第1段階の曲げ加工が施される位置P11では、加工ローラ6Ra~6Rdは、それぞれの一端面29を筒体9の中心軸9xに向かって引き延ばしたときに中心軸9xを含むように配置されており、それぞれの加工面部24の他端が、それぞれ突き出し片22a~22dの先端に当接している。
【0049】
次に、第2段階の曲げ加工が施される位置P12では、加工ローラ6Ra~6Rdは、それぞれの一端面29が位置P11の加工ローラ6Ra~6Rdと同様の中心軸9xに対する包含関係を保ちつつ位置P11の加工ローラ6Ra~6Rdよりも距離Laだけ中心軸9xに近い位置に配置されている(図20等参照。)。また、それぞれの加工面部24では、他端から所定の範囲がそれぞれ突き出し片22a~22dに当接している。そして、突き出し片22a~22dそれぞれにおいて加工面部24の当接を受けている部分が加工面部24の形状に沿って折り曲げられている。
【0050】
次に、第3段階の曲げ加工が施される位置P13では、加工ローラ6Ra~6Rdは、それぞれの一端面29が第1、第2段階の加工ローラ6Ra~6Rdと同様の中心軸9xに対する包含関係を保ちつつ第2段階の加工ローラ6Ra~6Rdよりも距離Lbだけさらに中心軸9xに近い位置に配置されている。また、それぞれの停止面部25は、筒体9の外周面に当接しており、停止面部25の当接により、筒体9の外周面は円筒状に成形される。さらに、それぞれの加工面部24では、全範囲がそれぞれ突き出し片22a~22dに当接し、突き出し片22a~22dは加工面部24の形状に沿って折り曲げられている。
【0051】
続いて、第4曲げ部32では、筒体9の進行方向に関して下流側の段階ほど、加工面部24が所定の公転軸の周囲を公転して筒体9に近づくように加工ローラ6Ra~6Rdが配置されている。
例えば、第4段階の曲げ加工が施される位置P14では、加工ローラ6Ra~6Rdは、それぞれの公転軸を中心として、それぞれの加工面部24が位置P13の加工ローラ6Ra~6Rdよりも、例えば、角度θ1(図示せず。)だけ公転して筒体9の外周に近づくように配置されている。また、突き出し片22a~22dは、位置P13に存在するときよりも角度θ1だけ公転して筒体9の外周面に近づいている。
【0052】
次に、第5段階の曲げ加工が施される位置P15では、加工ローラ6Ra~6Rdは、それぞれの公転軸を中心として、それぞれの加工面部24が位置P14の加工ローラ6Ra~6Rdよりも、例えば、角度θ2(図示せず。)だけ公転して筒体9の外周面に当接するように配置されている。また、突き出し片22a~22dは、位置P14に存在するときよりも角度θ2だけ公転し、突き出し片22a、22b、22c、22dの先端は、それぞれ突き出し片22b、22c、22d、22aに当接している。
【0053】
これにより、突き出し片22aの内周側の面と筒体9の外周面との間が封鎖されて空間23aが形成され、同様に、突き出し片22b、22c、22dそれぞれの内周側の面と筒体9の外周面との間が封鎖されてそれぞれ空間23b、23c、23dが形成される。
【0054】
冷却部7は、冷却工程を担う部分であり、冷却工程では、脱気部4により抜き出した気体を粉体と混合し、粉体とともに冷却固化することで柱状体10を成形する。また、冷却部7は、次の吸引ポンプ34および冷凍部35を有する(図1等参照。)。
【0055】
ここで、吸引ポンプ34は、上記した脱気部4の回収容器から回収した昇華性ガスを吸引して冷凍部35に送り込み、また、冷凍部35は、所定の冷凍機(図示せず。)により、回収した昇華性ガス、ならびに、新規に供給された昇華性ガスおよび粉体との混合物を冷却固化して柱状体10を設ける。
【0056】
〔実施例1の効果〕
実施例1の製造装置1は、所定の機能を有する線状材2を製造する装置であり、次の圧縮部5を備える。すなわち、圧縮部5は、自身の内周に、当該機能を担う物質の粉体を収容した長尺の筒体9を、外周側から圧縮することで、当該機能を実質的に発揮できるように粉体を圧接する。
【0057】
これにより、線状材2において当該機能を担う物質の粉体を、筒体9の内周で圧接した状態で長手方向に伸びるように収容することができる。このため、粉体を線状に収容した状態を保ちつつ圧接させた状態で、線状材2を自在に変形することができる。したがって、線状材2において当該機能を担う物質を粉体の状態から線状に成形することにより生じる物理的特性の変動を抑制することができる。
【0058】
また、製造装置1は、次の形成部3を備える。すなわち、形成部3は、所定の厚さを有する板状の長尺材料8に、長手方向に線状に粉体を載せるとともに長尺材料8を折り曲げて粉体を包むことで、筒体9を形成する。
これにより、粉体を筒体9の内周に収容することができる。
【0059】
また、粉体は、昇華性の物質でバインドした状態で筒体9の内周に収容されている。そして、製造装置1は、次の脱気部4を備える。すなわち、脱気部4は、筒体9の内周に収容された昇華性の物質を、加熱により昇華させるとともに、筒体9に細孔を設けて昇華により生じた気体を筒体9の外側へ抜き出す。
これにより、昇華性の物質によるバインディングによって、粉体を長尺材料8に載せる操作を行いやすくなる。また、筒体9の内周に粉体を収容した後、不要になった昇華性の物質を、容易に筒体9の内周から除去することができる。
【0060】
また、形成部3では、粉体を、昇華性の物質とともに柱状に成形した柱状体10として、長尺材料8に載せ、柱状体10を筒体9の内周に収容する。
これにより、粉体を長尺材料8に載せる操作を、さらに行いやすくなる。
【0061】
また、柱状体10は、長手方向の両端の面が長手方向に対して傾斜している。
粉体を、昇華性の物質とともに柱状体10に成形する場合、柱状体10の表面近傍では、柱状体10の内部よりも、粉体の質量分率が高くなりやすい。そこで、柱状体10の長手方向の両端の面を長手方向に対して傾斜させることにより、長尺材料8に載った柱状体10同士の継ぎ目を長手方向に延長する。
これにより、粉体の質量分率が、柱状体10同士の継ぎ目において高くなるのを抑制することができる。
【0062】
また、製造装置1は、次の冷却部7を備える。すなわち、冷却部7は、脱気部4により抜き出した気体を粉体と混合し、粉体とともに冷却固化することで柱状体10を成形する。
これにより、昇華性の物質を再利用することができる。
【0063】
また、圧縮部5では、筒体9を圧縮することにより、筒体9の素材を部分的に外周側に突き出させる。そして、製造装置1は、次の追加部6を備える。すなわち、追加部6は、圧縮部5で外周側に突き出た突き出し片22a~22dを曲げることで、筒体9の外周側に、筒体9の内周とは別の空間23a~23dを形成する。
これにより、空間23a~23dに別の物質を充填したり、流通させたりすることができる。このため、例えば、線状材2を電線として使用する場合に、空間に冷媒を流して電線を冷却することができる。
【0064】
〔実施例2〕
実施例2の製造方法を図22図31を用いて説明する。
実施例2の製造方法によれば、圧縮工程では、筒体9を圧縮することにより、筒体9の素材を部分的に外周側に突き出させるとともに、筒体9の外周側に、突き出た部分によって、粉体を収容する別の筒体9を形成し、別の筒体9でも粉体を圧接する。
【0065】
そして、実施例2の圧縮部5は、このような圧縮工程を実現するべく、以下のような構成を有する(図23図26等参照。)。
すなわち、実施例2の圧縮部5は、実施例1の加工ローラ5Ra、5Rb、5Rc、5Rdとは異なる、次のような同一形状の4つの加工ローラ5Ra、5Rb、5Rc、5Rdを有する。
【0066】
つまり、実施例2の加工ローラ5Ra、5Rb、5Rc、5Rdの周面5Ra1、5Rb1、5Rc1、5Rd1には、それぞれ環状の段38a1、38b1、38c1、38d1が設けられている。同様に、周面5Ra2、5Rb2、5Rc2、5Rd2にも、それぞれ環状の段38a2、38b2、38c2、38d2が設けられている(図23等参照。)。
【0067】
また、段38a1と段38b2とは、切断面αにおいて、中空領域αAの外周側で周方向に対向できるように設けられている(図25等参照。)。このため、周面5Ra1、5Rb2の間の隙間が部分的に拡大して、別の中空領域αAaを形成している。そして、段38b1、38c2、段38c1、38d2、および、段38d1、38a2も、同様に、切断面αにおいて、周面5Rb1、5Rc2、周面5Rc1、5Rd2、および、周面5Rd1、5Ra2それぞれの間の隙間を部分的に拡大し、それぞれ、別の中空領域αAb、αAc、αAdを形成している。
【0068】
これにより、切断面αでは、中空領域αAの外周側に、90°の角度間隔、かつ、径方向に関して同じ位置で、中空領域αAa、αAb、αAc、αAdが形成されている。
なお、実施例2では、中空領域αA、αAa~αAdの形状や面積が等しくなるように、段38a1~38d1、38a2~38d2の形状等が設定されている。
【0069】
このような圧縮部5において、実施例1と同様に、加工ローラ5Ra、5Rb、5Rc、5Rdを回転駆動するとともに、筒体9を連続的に供給する。
これにより、筒体9の断面が中空領域αAまで縮小されるとともに、筒体9の素材が部分的に外周側に突き出す。
【0070】
そして、突き出た部分、つまり、実施例1の突き出し片22a~22dに相当する部分の内、中空領域αA、αAa~αAdに存在する部位おいて、粉体を収容する別の筒体9が形成される。また、別の筒体9の内部にも粉体が導入され、別の筒体9の内部でも粉体が圧接される。このため、5本の単線を同時に製造することができる(図26等参照。)。
以下、中空領域αAa、αAb、αAc、αAdそれぞれにおいて形成される筒体9を、筒体9a、9b、9c、9dと呼ぶことがある。
【0071】
また、実施例2の製造方法は、実施例1の追加工程の代わりに、以下に説明する撚り工程を備え、製造装置1は、追加部6の代わりに、撚り工程を担う撚り部41を備える(図22図27等参照。)。そして、圧縮部5で得られた筒体9、9a~9dは、その配置を維持したまま撚り部41に供給される。以下、撚り部41について詳述する。
【0072】
撚り部41は、撚り工程を担う部分であり、撚り工程では、圧縮工程で得られた5本の筒体9、9a~9dを撚る。
ここで、撚り部41は、実施例2の加工ローラ5Ra~5Rdと同様の段38a1~38d1、38a2~38d2を有する4つの加工ローラ41Ra~41Rdを一組とし、複数組を一組ずつ進行方向に異ならせて、適宜、配置することで構成されている(図27図31等参照。)。
【0073】
なお、以下の説明では、加工ローラ41Ra~41Rdそれぞれの頂部を、頂部41Rat、41Rbt、41Rct、41Rdtと呼ぶことがある。また、加工ローラ41Ra、41Rb、41Rc、41Rdそれぞれの回転軸を回転軸41Rax、41Rbx、41Rcx、41Rdxと呼ぶことがある。
【0074】
そして、加工ローラ41Ra~41Rdは、配置される各位置において、回転軸41Rax、41Rbx、回転軸41Rbx、41Rcx、回転軸41Rcx、41Rdx、回転軸41Rdx、41Raxがそれぞれ直交するように組み付けられている(図28等参照。)。また、加工ローラ41Ra~41Rdは、筒体9等の進行方向の下流側から視て筒体9の周囲の回転を考えたときに、正回転側に向かって、加工ローラ41Ra、41Rb、41Rc、41Rdの順に配置されているものとする。
【0075】
また、以下の説明では、加工ローラ41Raの周面の内、頂部41Ratの正回転側に存在する部分を周面41Ra1、負回転側に存在する部分を周面41Ra2と呼ぶことがある。
【0076】
同様に、加工ローラ41Rbの周面の内、頂部41Rbtの正回転側に存在する部分を周面41Rb1、負回転側に存在する部分を周面41Rb2と呼ぶことがあり、加工ローラ41Rcの周面の内、頂部41Rctの正回転側に存在する部分を周面41Rc1、負回転側に存在する部分を周面41Rc2と呼ぶことがあり、加工ローラ41Rdの周面の内、頂部41Rdtの正回転側に存在する部分を周面41Rd1、負回転側に存在する部分を周面41Rd2と呼ぶことがある。
【0077】
そして、段38a1、38b1、38c1、38d1は、それぞれ、周面41Ra1、41Rb1、41Rc1、41Rd1に設けられ、段38a2、38b2、38c2、38d2は、それぞれ、周面41Ra2、41Rb2、41Rc2、41Rd2に設けられている。
【0078】
また、圧縮部5と同様の中空領域αAが、頂部41Rat~41Rdtにより大まかに区画されて形成されている。さらに、中空領域αAの外周側に、90°の角度間隔、かつ、径方向に関して同じ位置で、中空領域αAa、αAb、αAc、αAdが形成されている(図30等参照。)。
以下、撚り部41について、さらに詳述する。
【0079】
撚り部41では、筒体9の進行方向に関し、下流側に進むほど、段階的に、筒体9a~9dが筒体9の周囲で回転しつつ筒体9に近づくように、加工ローラ41Ra~41Rdによる撚り加工が進む。
例えば、まず、第1段階の位置P21では、加工ローラ41Ra~41Rdの中空領域αAa~αAdは、径方向に関して、圧縮部5の加工ローラ5Ra~5Rdよりも距離Lcだけ中空領域αAに近い位置に形成されている(図31等参照。)。
【0080】
次に、第2段階の位置P22では、中空領域αAa~αAdは、径方向に関して、位置P21の中空領域αAa~αAdよりも、距離Ldだけ中空領域αAに近い位置に形成されている(図31等参照。)。また、第3段階の位置P23では、中空領域αAa~αAdは、径方向に関して、位置P22の中空領域αAa~αAdよりも、距離Leだけ中空領域αAに近い位置に形成されている(図31等参照。)。さらに、第4段階の位置P24では、中空領域αAa~αAdは、径方向に関して、位置P23の中空領域αAa~αAdよりも、距離Lfだけ中空領域αAに近い位置に形成されている(図31等参照。)。
【0081】
このような位置P21~P24それぞれにおける加工ローラ41Ra~41Rdに、圧縮部5から供給された筒体9、9a~9dが、次のように供給される。
すなわち、まず、位置P21において、筒体9は、中空領域αAを通過し、筒体9a、9b、9c、9dは、それぞれ、中空領域αAb、αAc、αAd、αAaを通過する。これにより、筒体9a~9dは、圧縮部5の吐出側よりも、筒体9の周囲を90°正回転しつつ、径方向に距離Lcだけ筒体9に近づく。
【0082】
次に、位置P22において、筒体9は、中空領域αAを通過し、筒体9a、9b、9c、9dは、それぞれ、中空領域αAc、αAd、αAa、αAbを通過する。これにより、筒体9a~9dは、位置P21よりも、筒体9の周囲をさらに90°正回転しつつ、径方向に距離Ldだけ筒体9に近づく。
【0083】
次に、位置P23において、筒体9は、中空領域αAを通過し、筒体9a、9b、9c、9dは、それぞれ、中空領域αAd、αAa、αAb、αAcを通過する。これにより、筒体9a~9dは、位置P22よりも、筒体9の周囲をさらに90°正回転しつつ、径方向に距離Leだけ筒体9に近づく。
【0084】
次に、位置P24において、筒体9は、中空領域αAを通過し、筒体9a、9b、9c、9dは、それぞれ、中空領域αAa、αAb、αAc、αAdを通過する。これにより、筒体9a~9dは、位置P23よりも、筒体9の周囲をさらに90°正回転しつつ、径方向に距離Lfだけ筒体9に近づく。
【0085】
そして、撚り部41は、それぞれの段階で加工ローラ41Ra~41Rdを回転駆動することで、筒体9a~9dを筒体9の周囲で回転させつつ、互いに密着させる。これにより、撚り部41は、筒体9、9a~9dを撚り合わせることができる。
また、撚り部41では、筒体9a~9dを筒体9の周囲で回転させつつ撚り合わせるので、筒体9a~9dは、撚り部41を経由することで、実質的に長さが長くなるとともに径が小さくなる。これにより、筒体9a~9dの内周は更に小径になるので、筒体9a~9dの内周では、粉体が、より一層、圧接される。
なお、撚り部41でも、各段階における加工ローラ41Ra~41Rdによる撚り加工を円滑に行うため、適宜、図示しない支持ローラにより筒体9、9a~9dを支持する。
【0086】
〔変形例〕
本願発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形例を考えることができる。
例えば、実施例1、2の製造装置1によれば、4つの加工ローラ5Ra~5Rdを組み合わせて圧縮部5を設けていたが、3つ、または、5つ以上の加工ローラを組み合わせて圧縮部5を設けてもよい。
【0087】
また、実施例1、2の製造装置1によれば、成形部3では、粉体を昇華性の物質とともに柱状に成形した柱状体10として、長尺材料8に載せていたが、粉体のまま長尺材料8に載せてもよい。
さらに、実施例2の製造装置1によれば、撚り部41は、筒体9a~9dを筒体9の周囲で回転させつつ、互いに密着させていたが、筒体9、9a~9dを、それらの断面が同一の周上に並ぶように導いて撚り合わせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 製造装置 5 圧縮部 9 筒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31