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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】表示システム、制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20240626BHJP
   G02F 1/133 20060101ALI20240626BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20240626BHJP
   G02F 1/1368 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
G06F3/041 512
G06F3/041 412
G06F3/041 422
G02F1/133 550
G02F1/1333
G02F1/1368
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022509255
(86)(22)【出願日】2020-11-30
(86)【国際出願番号】 JP2020044534
(87)【国際公開番号】W WO2021192418
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-05-23
(31)【優先権主張番号】P 2020057385
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】秦野 峻
【審査官】木村 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-200886(JP,A)
【文献】特開2018-005882(JP,A)
【文献】特開2014-132445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G02F 1/133
G02F 1/1333
G02F 1/1368
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示およびタッチ検出に共用される複数の共通電極を有する表示装置と、
前記複数の共通電極のそれぞれにタッチ駆動信号を供給する駆動回路と、
前記複数の共通電極のそれぞれから受信した検出信号に基づいて、前記表示装置への物体のタッチを検出するタッチ検出回路と、を備え、
前記タッチ駆動信号は、特定周波数とは異なる周波数の高調波を含み、当該特定周波数の高調波を含まず、
前記駆動回路は、基本波と、前記特定周波数が含まれる所定の周波数帯より低い周波数の1以上の奇数次高調波とを重畳して前記タッチ駆動信号を生成する、
ことを特徴とする表示システム。
【請求項2】
画像表示およびタッチ検出に共用される複数の共通電極を有する表示装置と、
前記複数の共通電極のそれぞれにタッチ駆動信号を供給する駆動回路と、
前記複数の共通電極のそれぞれから受信した検出信号に基づいて、前記表示装置への物体のタッチを検出するタッチ検出回路と、
特定周波数を取得する取得部と、を備え、
前記タッチ駆動信号は、前記特定周波数とは異なる周波数の高調波を含み、当該特定周波数の高調波を含まず、
前記駆動回路は、前記取得部で前記特定周波数が取得された場合、基本波と、当該特定周波数より低い周波数の1以上の奇数次高調波とを重畳して前記タッチ駆動信号を生成する、
ことを特徴とする表示システム。
【請求項3】
前記駆動回路は、前記取得部で前記特定周波数が取得されない場合、基本波と、所定数の奇数次高調波とを重畳して前記タッチ駆動信号を生成する、
ことを特徴とする請求項2に記載の表示システム。
【請求項4】
前記複数の共通電極のそれぞれから受信した前記検出信号にもとづいて、それぞれの共通電極の基準静電容量に関する基準値を導出する制御回路をさらに備え、
前記タッチ検出回路は、前記検出信号と前記基準値にもとづいてタッチを検出する、
ことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の表示システム。
【請求項5】
画像表示およびタッチ検出に共用される複数の共通電極を有する表示装置を制御する制御装置であって、
前記複数の共通電極のそれぞれにタッチ駆動信号を供給する駆動回路と、
前記複数の共通電極のそれぞれから受信した検出信号に基づいて、前記表示装置への物体のタッチを検出するタッチ検出回路と、を備え、
前記タッチ駆動信号は、特定周波数とは異なる周波数の高調波を含み、当該特定周波数の高調波を含まず、
前記駆動回路は、基本波と、前記特定周波数が含まれる所定の周波数帯より低い周波数の1以上の奇数次高調波とを重畳して前記タッチ駆動信号を生成する、
ことを特徴とする制御装置。
【請求項6】
画像表示およびタッチ検出に共用される複数の共通電極を有する表示装置を制御する制御装置であって、
前記複数の共通電極のそれぞれにタッチ駆動信号を供給する駆動回路と、
前記複数の共通電極のそれぞれから受信した検出信号に基づいて、前記表示装置への物体のタッチを検出するタッチ検出回路と、
特定周波数を取得する取得部と、を備え、
前記タッチ駆動信号は、前記特定周波数とは異なる周波数の高調波を含み、当該特定周波数の高調波を含まず、
前記駆動回路は、前記取得部で前記特定周波数が取得された場合、基本波と、当該特定周波数より低い周波数の1以上の奇数次高調波とを重畳して前記タッチ駆動信号を生成する、
ことを特徴とする制御装置。
【請求項7】
画像表示およびタッチ検出に共用される複数の共通電極を有する表示装置の制御方法であって、
前記複数の共通電極のそれぞれにタッチ駆動信号を供給するステップと、
前記複数の共通電極のそれぞれから受信した検出信号に基づいて、前記表示装置への物体のタッチを検出するステップと、を備え、
前記タッチ駆動信号は、特定周波数とは異なる周波数の高調波を含み、当該特定周波数の高調波を含まず、
前記タッチ駆動信号は、基本波と、前記特定周波数が含まれる所定の周波数帯より低い周波数の1以上の奇数次高調波とを重畳して生成される、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項8】
画像表示およびタッチ検出に共用される複数の共通電極を有する表示装置の制御方法であって、
特定周波数を取得するステップと、
前記複数の共通電極のそれぞれにタッチ駆動信号を供給するステップと、
前記複数の共通電極のそれぞれから受信した検出信号に基づいて、前記表示装置への物体のタッチを検出するステップと、を備え、
前記タッチ駆動信号は、前記特定周波数とは異なる周波数の高調波を含み、当該特定周波数の高調波を含まず、
前記特定周波数を取得するステップにおいて、前記特定周波数が取得された場合、前記タッチ駆動信号は、基本波と、当該特定周波数より低い周波数の1以上の奇数次高調波とを重畳して生成される、
ことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タッチ検出機能を有する表示システム、制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザのタッチ位置を検出するためのタッチセンサが表示パネル内に組み込まれたインセル型の表示装置が知られている(たとえば特許文献1参照)。この表示装置では、液晶表示パネルの画素に共通電圧を供給するための共通電極を複数に分割して、これらの共通電極をタッチセンサ電極としても利用する。画像表示期間において共通電圧が複数の共通電極に供給され、タッチ検出期間においてタッチ検出用のタッチ駆動信号が複数の共通電極に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/123813号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インセル型の表示装置において、更なる改善が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の表示システムは、画像表示およびタッチ検出に共用される複数の共通電極を有する表示装置と、複数の共通電極のそれぞれにタッチ駆動信号を供給する駆動回路と、複数の共通電極のそれぞれから受信した検出信号に基づいて、表示装置への物体のタッチを検出するタッチ検出回路と、を備える。タッチ駆動信号は、特定周波数とは異なる周波数の高調波を含み、当該特定周波数の高調波を含まない。
【0006】
本発明の別の態様は、制御装置である。この装置は、画像表示およびタッチ検出に共用される複数の共通電極を有する表示装置を制御する制御装置であって、複数の共通電極のそれぞれにタッチ駆動信号を供給する駆動回路と、複数の共通電極のそれぞれから受信した検出信号に基づいて、表示装置への物体のタッチを検出するタッチ検出回路と、を備える。タッチ駆動信号は、特定周波数とは異なる周波数の高調波を含み、当該特定周波数の高調波を含まない。
【0007】
本発明のさらに別の態様は、制御方法である。この方法は、画像表示およびタッチ検出に共用される複数の共通電極を有する表示装置の制御方法であって、複数の共通電極のそれぞれにタッチ駆動信号を供給するステップと、複数の共通電極のそれぞれから受信した検出信号に基づいて、表示装置への物体のタッチを検出するステップと、を備える。タッチ駆動信号は、特定周波数とは異なる周波数の高調波を含み、当該特定周波数の高調波を含まない。
【発明の効果】
【0008】
上記の態様により、更なる改善を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施の形態に係る表示システムのブロック図である。
図2図1の表示装置の回路構成を概略的に示す図である。
図3図2の共通電極の配置を示す上面図である。
図4図1の表示装置の縦断面図である。
図5図1の制御回路による制御タイミングの一例を示す図である。
図6図6(a)~(j)は、図5に示した制御タイミングにより、画像表示とタッチ検出を実行する場合の具体例を示す図である。
図7図7(a)は、図1の表示システムのタッチ駆動信号の波形を示し、図7(b)は、図7(a)のタッチ駆動信号の周波数成分を示す図である。
図8図1の表示システムのタッチ駆動信号の生成処理を示すフローチャートである。
図9図9(a)は、比較例に係る矩形波のタッチ駆動信号の波形を示し、図9(b)は、図9(a)のタッチ駆動信号の周波数成分を示す図である。
図10図10(a)は、比較例に係る正弦波のタッチ駆動信号の波形を示し、図10(b)は、図10(a)のタッチ駆動信号の周波数成分を示す図である。
図11】第1の実施の形態と比較例に係るタッチ駆動信号による共通電極の寄生容量に充電できる電荷量を示す図である。
図12】第2の実施の形態に係るホストのブロック図である。
図13】第2の実施の形態に係る表示システムのタッチ駆動信号の生成処理を示すフローチャートである。
図14】第3の実施の形態に係る表示システムのタッチ駆動信号の生成処理を示すフローチャートである。
図15】第3の実施の形態に係る表示システムのタッチ駆動信号の別の生成処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示の基礎となった知見)
実施の形態を具体的に説明する前に、基礎となった知見を説明する。インセル型のタッチディスプレイでは、共通電極より観察者側には電極が存在しないため、共通電極より観察者側にタッチセンサ電極が配置されたアウトセル型の表示装置よりもノイズを放射しやすい。そのため、共通電極に供給されたタッチ駆動信号の高調波成分に起因する電磁波の輻射が発生し、この輻射が周囲の受信機などに影響を与える可能性がある。
【0011】
本発明者は、正弦波のタッチ駆動信号を用いることで高調波の輻射を抑制できるが、正弦波のタッチ駆動信号ではタッチ検出感度が低下するという課題を発見した。この課題を解決するために、本開示に係る表示システムは以下のように構成される。
【0012】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る表示システム1のブロック図である。表示システム1は、自動車などの車両に搭載された車載の表示システム1である一例について説明するが、用途は特に限定されず、携帯機器などに用いてもよい。
【0013】
表示システム1は、ホスト10と、タッチディスプレイ20とを備える。ホスト10は、ラジオ、カーナビゲーション、Bluetooth(登録商標)通信などの各種機能を実行するとともに、タッチディスプレイ20を制御する。ホスト10は、制御装置12、受信機14およびアンテナ16を備える。
【0014】
制御装置12は、たとえばCPUであり、ホストCPUとも呼ばれる。制御装置12は、受信機14を制御するとともに、画像データDDと制御データCDをタッチディスプレイ20に供給し、これらのデータをもとにタッチディスプレイ20を制御する。
【0015】
受信機14は、アンテナ16を介して無線信号を受信する。受信機14は、たとえばラジオ受信機能、GPS受信機能、Bluetooth受信機能の少なくとも1つを含む。受信機14が複数の受信機能を含む場合、アンテナ16は、受信機能毎のアンテナを含むことができる。
【0016】
タッチディスプレイ20は、表示装置22と、制御装置24とを備える。表示装置22は、たとえば、カーナビゲーション画面などが表示される車室内のセンターディスプレイなどとして利用される。
【0017】
表示装置22は、インセル型のIPS(In Plane Switching)方式の液晶表示装置であり、タッチ位置を検出可能である。表示装置22の構成は、例えば、以下に説明する周知の構成となっている。
【0018】
図2は、図1の表示装置22の回路構成を概略的に示す。図2は、各構成要素の概略的な配置も示す。表示装置22は、行方向に延びる複数のゲート線G1,G2,・・・と、列方向に延びる複数のソース線S1,S2,・・・と、複数の画素スイッチング素子30と、複数の画素電極32と、複数の共通電極34とを備える。各画素スイッチング素子30は、薄膜トランジスタであり、ゲート線とソース線の交点付近に画素に対応して設けられる。各画素スイッチング素子30において、ゲートにはゲート線が接続され、ソースにはソース線が接続され、ドレインには画素電極32が接続される。1つの共通電極34に対して、複数の画素スイッチング素子30と複数の画素電極32が配置される。画素電極32と共通電極34との間の電界により液晶層が制御される。共通電極34は、画像表示およびタッチ検出に共用される。そのため、電極の層数を削減して、表示装置22を薄く構成できる。共通電極34は、センサ電極と呼ぶこともできる。
【0019】
図3は、図2の共通電極34の配置を示す上面図である。複数の共通電極34は、マトリクス状に配置される。各共通電極34は、信号線36で制御装置24に接続される。
【0020】
表示装置22は、自己容量方式によりタッチ位置を検出する。表示装置22の表示面に指が近づくと、共通電極34と指の間に静電容量が発生する。静電容量が発生すると共通電極34における寄生容量が増加し、共通電極34にタッチ駆動信号を供給するときの電流が増加する。この電流の変動量にもとづいてタッチ位置が検出される。
【0021】
図4は、図1の表示装置22の縦断面図である。表示装置22は、厚さ方向に沿って順に重ねて配置されるバックライトユニット40、下偏光板42、薄膜トランジスタ基板(以下、TFT基板と呼ぶ)44、液晶層52、カラーフィルタ基板54、上偏光板56、接合層58、および、保護層60を備える。
【0022】
以下の説明では、表示装置22の厚さ方向のうち、TFT基板44に対して保護層60が位置する側を前面側とし、その逆を背面側とする。
【0023】
表示装置22は、バックライトユニット40から出射された光を用いて、画像光を前面側、即ち観察者側に出射する。
【0024】
TFT基板44は、ガラス基板46、ガラス基板46の前面側に配置された複数のゲート電極48、複数のソース電極50、および、複数の共通電極34を有する。図示は省略するが、TFT基板44は、図2の複数のゲート線G1,G2,・・・、複数のソース線S1,S2,・・・、複数の画素電極32および複数の画素スイッチング素子30も有する。TFT基板44の前面側に配置された液晶層52は、画素電極32と共通電極34との間に発生する横方向の電界により制御される。
【0025】
接合層58は、透光性を有し、上偏光板56と保護層60とを接合する。接合層58は、例えば、OCA(Optically Clear Adhesive)などの透明粘着シート、または、OCR(Optically Clear Resin)などの液状の透明樹脂が硬化したものである。
【0026】
保護層60は、表示装置22を保護するための透光性を有する層であり、ガラス基板またはプラスチック基板などで構成される。保護層60は、カバーレンズなどとも呼ばれる。
【0027】
図1に戻る。制御装置24は、たとえばICとして構成され、ホスト10からの制御データCDと画像データDDにしたがって表示装置22を制御する。制御装置24は、制御回路70と、第1駆動回路72と、第2駆動回路74と、タッチ検出回路76とを備える。
【0028】
制御回路70は、たとえばマイコンで構成され、第1駆動回路72と第2駆動回路74の信号生成タイミング、タッチ検出回路76のタッチ検出タイミングなどを制御する。
【0029】
制御回路70は、単位フレーム期間(1フレーム期間)に、表示画像の1フレームが表示装置22に描画され、かつ、1画面のタッチ検出が少なくとも1回実行されるよう、第1駆動回路72、第2駆動回路74およびタッチ検出回路76を制御する。1画面のタッチ検出は、1画面のタッチスキャンとも呼べる。単位フレーム期間は、垂直同期期間とも呼べる。単位フレーム期間の詳細は後述する。
【0030】
第1駆動回路72は、制御回路70の制御にしたがい、基準クロック信号を生成する。第1駆動回路72は、制御回路70の制御にしたがい、ホスト10からの画像データDDにもとづいて、生成された基準クロック信号に同期したソース信号SSを生成する。第1駆動回路72は、制御回路70の制御にしたがい、生成された基準クロック信号に同期したゲート信号GSを生成する。
【0031】
第1駆動回路72は、ソース信号SSを表示装置22の複数のソース線に順次供給し、ゲート信号GSを表示装置22の複数のゲート線に順次供給する。
【0032】
第1駆動回路72は、基準クロック信号を第2駆動回路74に供給する。第2駆動回路74は、制御回路70の制御にしたがい、予め定められた固定電圧である基準電圧VCOM、および、基準クロック信号に同期したタッチ駆動信号TXを生成する。第2駆動回路74は、図3の信号線36を介して、基準電圧VCOMまたはタッチ駆動信号TXを表示装置22の全体の複数の共通電極34に供給する。タッチ駆動信号TXの詳細は後述する。
【0033】
タッチ検出回路76は、表示装置22への物体のタッチを検出する。タッチ検出回路76は、制御回路70の制御にしたがい、各共通電極34にタッチ駆動信号TXが供給されたときの当該共通電極34から受信したタッチ検出信号RXに基づいて、当該共通電極34に対応する位置への物体のタッチを検出する。
【0034】
タッチ検出回路76は、タッチ駆動信号TXの各パルスに関して、パルスの立ち上がりから所定期間の間、各共通電極34から受信したタッチ検出信号RXを積分し、積分値と基準値との差分値を導出する。この処理に替えて、または、加えて、タッチ検出回路76は、タッチ駆動信号TXの各パルスに関して、パルスの立ち下がりから所定期間の間、各共通電極34から受信したタッチ検出信号RXを積分し、積分値と基準値との差分値を導出してもよい。1つのタッチ検出期間に1つの共通電極34から受信したタッチ検出信号RXに関して、1つのタッチ検出期間のタッチ駆動信号TXのパルスの数に比例した数の差分値が得られる。それぞれの値は、共通電極34の静電容量と基準静電容量との差分値を表す。タッチ検出回路76は、共通電極34ごとに、これら差分値を平均した値を検出値として算出する。物体のタッチによる共通電極34の静電容量の変化量が大きいほど、検出値は大きくなる。タッチがなく、共通電極34の静電容量の変化量がゼロであれば、検出値はゼロである。
【0035】
タッチ検出回路76は、各共通電極34から受信したタッチ検出信号RXにもとづく検出値と、所定のタッチ検出閾値を比較し、検出値がタッチ検出閾値以上のとき、当該共通電極34の位置にタッチ有りと判定する。これは、タッチが検出されたことに相当する。タッチ検出回路76は、タッチ有りと判定した共通電極34の位置にもとづいて、画面内におけるタッチ位置を検出する。タッチ検出回路76は、検出したタッチ位置の情報を制御回路70に出力する。なお、タッチ検出回路76は、表示装置22の一部の複数の共通電極34の複数の検出値の総和を導出してもよい。この場合、タッチ検出回路76は、検出値の総和がタッチ検出閾値以上のとき、当該検出値の総和に対応する複数の共通電極34の位置にタッチ有りと判定し、タッチ有りと判定した位置にもとづいて、画面内におけるタッチ位置を検出してもよい。
【0036】
制御回路70は、タッチ検出回路76からのタッチ位置の情報にもとづいてタッチ位置の座標データTDを導出し、1画面分のタッチ検出が終了した場合、導出された座標データTDを含むタッチレポートをホスト10の制御装置12に出力する。制御装置12は、座標データTDに応じて各種処理を実行する。
【0037】
制御回路70は、タッチ駆動信号TXの周波数の外来ノイズの量に応じて周波数ホッピングの制御を行う。制御回路70は、タッチ駆動信号TXの周波数のノイズが検出された場合、タッチ駆動信号TXの周波数を変更する。これにより、外来ノイズによるタッチ検出精度や感度の低下を抑制できる。外来ノイズの検出と周波数ホッピングには、周知の技術を利用できる。
【0038】
制御回路70は、上述したタッチの有無の判定に利用される基準値を所定のタイミングで導出する。所定のタイミングは、たとえば、表示システム1の起動時、前回の導出から一定時間が経過した時、周波数ホッピングでタッチ駆動信号TXの周波数を変更する前などを含む。
【0039】
制御回路70は、基準値を導出する場合、タッチ検出回路76に積分値を要求する。積分値の要求に応じて、タッチ検出回路76は、タッチ駆動信号TXのパルスのタイミングごとに、各共通電極34から受信したタッチ検出信号RXを積分し、各共通電極34に関する積分値を制御回路70に出力する。
【0040】
制御回路70は、タッチ検出回路76から出力された複数の積分値にもとづいて、それぞれの共通電極34の基準静電容量に関する基準値を導出する。基準値の導出には、公知の技術を利用できる。たとえば、制御回路70は、共通電極34ごとに、連続する所定数の単位フレーム期間の複数の積分値の統計値を基準値とする。
【0041】
制御装置12、制御回路70の構成は、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働、またはハードウェア資源のみにより実現できる。ハードウェア資源としてアナログ素子、マイクロコンピュータ、DSP、ROM、RAM、FPGA、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてファームウェア等のプログラムを利用できる。
【0042】
以下、制御回路70による表示装置22の制御、および、表示装置22の動作を具体的に説明する。表示装置22は、画面内の複数の共通電極34が複数のグループに分割された複数の表示領域と、画面内の複数の共通電極34が複数のグループに分割された複数のタッチ検出領域とを含む。タッチ検出回路76は、タッチ検出領域ごとにタッチ検出信号RXを受信する。制御回路70は、画面内の複数のタッチ検出領域の1つに対する部分的なタッチ検出と、画面内の複数の表示領域の1つに対する部分的な画像表示とを交互に繰り返して、タッチ検出と画像表示を時分割に制御する。
【0043】
図5は、図1の制御回路70による制御タイミングの一例を示す。図5は、単位フレーム期間(1フレーム期間)に、1枚の画像を表示し、1画面分のタッチ検出を2回実行する例を示す。本実施の形態では、60Hz駆動で画像を表示する表示装置22を想定しているため、単位フレーム期間は約16.7(=1/60)msに設定される。タッチレポートレートは120Hzである。
【0044】
図5に示す例では、制御回路70は、画面内に8つの表示領域を形成し、4つのタッチ検出領域を形成する。8つの表示領域は、水平方向に7箇所、スライスされて垂直方向に8等分されて形成される。以下、一番上の表示領域を第1表示領域、上から2番目の表示領域を第2表示領域、・・・、一番下の表示領域を第8表示領域という。4つのタッチ検出領域は、たとえば、垂直方向に3箇所、スライスされて水平方向に4等分されて形成される。以下、一番左のタッチ検出領域を第1タッチ検出領域、左から2番目のタッチ検出領域を第2タッチ検出領域、左から3番目のタッチ検出領域を第3タッチ検出領域、一番右のタッチ検出領域を第4タッチ検出領域という。表示領域の数は「8」に限定されず、タッチ検出領域の数は「4」に限定されない。
【0045】
制御回路70は、単位フレーム期間において、第1表示領域の画像表示、第1タッチ検出領域のタッチ検出、第2表示領域の画像表示、第2タッチ検出領域のタッチ検出、第3表示領域の画像表示、第3タッチ検出領域のタッチ検出、第4表示領域の画像表示、第4タッチ検出領域のタッチ検出、第5表示領域の画像表示、第1タッチ検出領域のタッチ検出、第6表示領域の画像表示、第2タッチ検出領域のタッチ検出、第7表示領域の画像表示、第3タッチ検出領域のタッチ検出、第8表示領域の画像表示、第4タッチ検出領域のタッチ検出の順に制御する。この制御により、制御回路70は、画面内の上半分の画像を表示させている期間に1回目の1画面分のタッチ検出を実行し、画面内の下半分の画像を表示させている期間に2回目の1画面分のタッチ検出を実行する。
【0046】
図6(a)~(j)は、図5に示した制御タイミングにより、画像表示とタッチ検出を実行する場合の具体例を示す。図6(a)は第1表示領域の画像表示、図6(b)は第1タッチ検出領域R1の1回目のタッチ検出、図6(c)は第2表示領域の画像表示、図6(d)は第2タッチ検出領域R2の1回目のタッチ検出、図6(e)は第4表示領域の画像表示、図6(f)は第4タッチ検出領域R4の1回目のタッチ検出、図6(g)は第5表示領域の画像表示、図6(h)は第1タッチ検出領域R1の2回目のタッチ検出、図6(i)は第8表示領域の画像表示、図6(j)は第4タッチ検出領域R4の2回目のタッチ検出をそれぞれ示している。8回の部分画像の表示により、「A」という全体画像が表示される。
【0047】
このように単位フレーム期間は、8つの表示期間と8つのタッチ検出期間とを含む。表示期間とタッチ検出期間は交互に配置される。単位フレーム期間の表示期間の数とタッチ検出期間の数は、それぞれ「8」に限定されない。
【0048】
表示期間の間、第1駆動回路72は、複数のソース線にソース信号SSを供給し、表示対象の表示領域のゲート線にゲート信号GSを供給し、第2駆動回路74は画面内の複数の共通電極34に基準電圧VCOMを供給する。第2駆動回路74は、表示期間にはタッチ駆動信号TXの供給を停止する。
【0049】
第2駆動回路74は、それぞれのタッチ検出期間の間、4つのタッチ検出領域の複数の共通電極34にタッチ駆動信号TXを供給する。第2駆動回路74は、タッチ検出期間には基準電圧VCOMの供給を停止する。
【0050】
タッチ検出回路76は、それぞれのタッチ検出期間の間、検出対象のタッチ検出領域の複数の共通電極34から受信したタッチ検出信号RXにもとづいて、当該検出対象のタッチ検出領域への物体のタッチを検出する。タッチ検出回路76は、タッチ検出期間ごとに検出対象のタッチ検出領域を順次変更し、タッチ検出期間ごとに異なるタッチ検出領域でタッチを検出する。
【0051】
タッチ駆動信号TXは、基本波と、特定周波数とは異なる周波数の高調波とを含み、特定周波数の高調波を含まない。特定周波数は、高調波を抑制すべき周波数であり、受信機14が受信する無線信号の周波数である。具体的には、タッチ駆動信号TXは、特定周波数が含まれる所定の周波数帯の高調波を含まない。所定の周波数帯は、受信機14が受信する無線信号の周波数帯である。
【0052】
なお、「タッチ駆動信号TXが特定周波数の高調波を含まない」とは、タッチ駆動信号TXが、受信機14の受信性能に影響しない程度の微少な特定周波数の高調波成分を含んでもよいことを意味する。微少な特定周波数の高調波成分の値は、実験などにより適宜定めることができる。
【0053】
第2駆動回路74は、基本波と、所定の周波数帯より低い周波数の1以上の奇数次高調波とを重畳してタッチ駆動信号TXを生成する。
【0054】
nを2以上の整数として、重畳可能な高調波の次数を(2n-1)と表す。基本波の基本周波数をFt[kHz]、所定の周波数帯の最も低い周波数をFr[kHz]として、Ft(2n-1)<Frと表せる。よって、2n-1<Fr/Ftである。
【0055】
以下、所定の周波数帯は、一例としてAMラジオの受信周波数帯であり、500k~1700kHzであると想定する。つまりFrは500kHzである。また、一例としてFtを50kHzと想定する。この例では、上記式を満たす最大の(2n-1)は9である。
【0056】
図7(a)は、図1の表示システムのタッチ駆動信号TXの波形を示し、図7(b)は、図7(a)のタッチ駆動信号TXの周波数成分を示す。図示するタッチ駆動信号TXは、基本波、3次高調波、5次高調波、7次高調波、および、9次高調波が重畳された信号である。つまりタッチ駆動信号TXは、9次高調波までの奇数次高調波を含み、9次高調波より高い周波数の高調波を含まない。そのため、受信周波数帯200の電磁波の輻射を抑制できる。タッチ駆動信号TXは、1以上の奇数次高調波を含み、かつ、特定の高調波が除去された非正弦波であるともいえる。
【0057】
具体的な重畳方法は特に限定されないが、たとえば第2駆動回路74は、基本周波数の正弦波のアナログ信号と、基本周波数の3倍、5倍、7倍および9倍の周波数の正弦波のアナログ信号とを生成し、これらのアナログ信号を図示しない加算回路で加算し、加算されたアナログ信号をタッチ駆動信号TXとする。
【0058】
あるいは、第2駆動回路74は、デジタル信号処理により、上記複数の正弦波の数値データにもとづいて合成波形を表すデジタルの数値データを生成し、生成されたデータをD/A(デジタル/アナログ)変換し、変換されたアナログ信号をタッチ駆動信号TXとしてもよい。
【0059】
次に、以上の構成による表示システム1の全体的な動作を説明する。図8は、図1の表示システム1のタッチ駆動信号TXの生成処理を示すフローチャートである。第2駆動回路74は、基本波と、所定の周波数帯より低い周波数の奇数次高調波とを重畳してタッチ駆動信号TXを生成する(S10)。制御回路70は、生成されたタッチ駆動信号TXに対応した基準値を生成する(S12)。
【0060】
ここで、比較例のインセル型のタッチディスプレイについて説明する。比較例では、タッチ駆動信号は矩形波または正弦波である。タッチ駆動信号の周波数は50kHzである。
【0061】
図9(a)は、比較例に係る矩形波のタッチ駆動信号の波形を示し、図9(b)は、図9(a)のタッチ駆動信号の周波数成分を示す。矩形波のタッチ駆動信号は、基本波と複数の奇数次高調波とを含む。500k~1700kHzの受信周波数帯200に11次高調波から33次高調波の成分が含まれる。そのため、これらの高調波成分を含むノイズの輻射がラジオの受信に影響を与える可能性がある。
【0062】
これに対して本実施の形態では、タッチ駆動信号TXは受信周波数帯200の高調波を含まないので、受信周波数帯200の電磁波の輻射を抑制できる。
【0063】
図10(a)は、比較例に係る正弦波のタッチ駆動信号の波形を示し、図10(b)は、図10(a)のタッチ駆動信号の周波数成分を示す。正弦波のタッチ駆動信号は、基本波で構成され、高調波を含まない。そのため、タッチ駆動信号に起因した受信周波数帯200の電磁波の輻射を抑制できる。
【0064】
一方、図9(a)の矩形波と比較して、正弦波の立ち上がりは緩やかであるため、正弦波の立ち上がり時に所定時間で共通電極34の寄生容量に充電できる電荷量が減少する。そのため、タッチ検出信号RXの積分値も減少し、タッチありとタッチなしの積分値の差が減少し、タッチ検出感度が低下する。
【0065】
図11は、第1の実施の形態と比較例に係るタッチ駆動信号TXによる共通電極34の寄生容量に充電できる電荷量を示す。図11では、矩形波による充電電荷量を100%として、正弦波と各種の合成波による充電電荷量の割合を示す。合成波は、基本波と3次高調波の合成波、基本波と3次および5次高調波の合成波、基本波と3次、5次および7次高調波の合成波、基本波と3次、5次、7次および9次高調波の合成波である。
【0066】
たとえば、タッチ駆動信号TXの周波数が50kHzの場合、矩形波の充電電荷量に対して正弦波の充電電荷量は57.2%に低下するが、基本波と3次高調波の合成波では82.6%に改善する。9次高調波まで重畳すると89.8%に増加する。
【0067】
つまり、本実施の形態のタッチ駆動信号TXは、特定周波数とは異なる周波数の奇数次高調波を含むので、正弦波のタッチ駆動信号と比較し、立ち上がりが急になり、その結果、所定時間に共通電極34の寄生容量を充電できる電荷量を増やすことができる。
【0068】
9次までの奇数次高調波のうち1以上の奇数次高調波を基本波に重畳すれば充電電荷量の改善効果はあるが、重畳する奇数次高調波が多いほど充電電荷量を高めることができ、タッチ検出感度を向上できる。
【0069】
本実施の形態によれば、特定周波数の電磁波の輻射を正弦波の場合と同程度に維持した上で、正弦波の場合よりもタッチ検出感度を高めることができる。つまり、輻射ノイズの低減とタッチ検出感度を両立できる。
【0070】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、特定周波数を取得し、取得された特定周波数より低い周波数の奇数次高調波を重畳することが第1の実施の形態と異なる。以下、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0071】
図12は、第2の実施の形態に係るホスト10のブロック図である。ホスト10の制御装置12は、制御部90および取得部92を備える。制御部90は、受信機14を制御し、かつ、受信機14が受信する無線信号の周波数を取得部92に出力する。たとえば制御部90は、ユーザの操作に応じて受信機14のラジオ受信機能を起動し、受信機14の受信周波数をユーザに選局された周波数に制御し、その受信周波数を出力する。受信機14が動作していない場合、制御部90は、受信周波数を取得部92に出力しない。取得部92は、制御部90から出力された受信周波数を特定周波数として取得し、取得した特定周波数を制御回路70に供給する。
【0072】
制御回路70は、取得部92から供給された特定周波数を取得し、その特定周波数とタッチ駆動信号TXの周波数にもとづいて、重畳する奇数次高調波の最大の次数(2n-1)を算出し、算出した最大の次数を第2駆動回路74に供給する。第2駆動回路74は、取得部92で特定周波数が取得された場合、供給された最大の次数にしたがい、基本波と、特定周波数より低い周波数の1以上の奇数次高調波とを重畳してタッチ駆動信号TXを生成する。これにより、特定周波数の輻射を抑制できる。
【0073】
第2駆動回路74は、特定周波数が高くなるほど、重畳する奇数次高調波の数を増やす。たとえば、特定周波数が500kHzの場合、第2駆動回路74は、基本波と、9次までの4つの奇数次高調波を重畳する。特定周波数が1700kHzの場合、第2駆動回路74は、基本波と、33次までの16の奇数次高調波を重畳する。これにより、特定周波数が高くなるほど、第1の実施の形態と比較して共通電極34の寄生容量の充電電荷量を増やすことができ、タッチ検出感度を向上できる。
【0074】
第2駆動回路74は、取得部92で特定周波数が取得されない場合、基本波と、所定数の奇数次高調波とを重畳してタッチ駆動信号TXを生成する。所定数は、第2駆動回路74の信号生成能力に応じて予め定められている。重畳する奇数次高調波の最大の次数を算出する必要がないため、特定周波数が取得されない場合の処理を簡素化できる。特定周波数が取得されない場合、受信機14は動作していないため、タッチ駆動信号TXは、受信機14の動作中よりも多くの高調波を含んでよい。
【0075】
所定数は、取得部92で特定周波数が取得された場合に重畳される奇数次高調波の最大数より多くてよい。これにより、特定周波数が取得された場合よりも共通電極34の寄生容量の充電電荷量を増やすことができ、タッチ検出感度を向上できる。
【0076】
第2駆動回路74がタッチ駆動信号TXを変更した場合、制御回路70は、タッチの有無の判定に利用される基準値を導出する。これにより、変更されたタッチ駆動信号TXにもとづく共通電極34の寄生容量の充電電荷量に応じた基準値を得ることができ、タッチ駆動信号TXが変更されたことによるタッチの誤検出を抑制できる。
【0077】
図13は、第2の実施の形態に係る表示システム1のタッチ駆動信号TXの生成処理を示すフローチャートである。特定周波数が取得された場合(S20のY)、制御回路70は、Ft(2n-1)<Frを満たす最大の(2n-1)を算出し(S22)、第2駆動回路74は、基本波と(2n-1)次までの高調波を重畳してタッチ駆動信号TXを出力する(S24)。制御回路70は、生成されたタッチ駆動信号TXに対応した基準値を生成する(S26)。S20で特定周波数が取得されない場合(S20のN)、第2駆動回路74は、基本波と所定数の奇数次高調波とを重畳してタッチ駆動信号TXを出力し(S28)、S26に移る。
【0078】
本実施の形態によれば、特定周波数が取得された場合に特定周波数の輻射を抑制でき、特定周波数が取得されない場合に処理を簡素化できる。
【0079】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態では、所定の矩形波における特定周波数の周波数成分を減衰させてタッチ駆動信号TXとすることが第2の実施の形態と異なる。以下、第2の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0080】
第2駆動回路74は、取得部92で特定周波数が取得された場合、基本周波数の矩形波から特定周波数の周波数成分を減衰させてタッチ駆動信号TXを生成する。そのためタッチ駆動信号TXは、特定周波数の高調波を含まない。
【0081】
特定周波数の周波数成分を減衰させる方法は特に限定されないが、たとえば、第2駆動回路74は、矩形波における特定周波数の周波数成分の波形とは逆位相の特定周波数の正弦波を矩形波に合成してタッチ駆動信号TXを生成してもよい。逆位相の特定周波数の正弦波の振幅は、矩形波における特定周波数の周波数成分の大きさに合わせて設定される。特定周波数が矩形波のいずれかの奇数次高調波の周波数と等しい場合、その奇数次高調波がキャンセルされる。特定周波数が矩形波のいずれの奇数次高調波の周波数とも等しくない場合、特定周波数のノイズがキャンセルされる。
【0082】
第2駆動回路74は、取得部92で特定周波数が取得されない場合、矩形波のタッチ駆動信号TXを生成する。つまり、矩形波に対して逆位相の正弦波の合成処理が行われない。これにより、消費電力を削減できる。
【0083】
図14は、第3の実施の形態に係る表示システム1のタッチ駆動信号TXの生成処理を示すフローチャートである。特定周波数が取得された場合(S20のY)、制御回路70は、所定の矩形波をフーリエ変換し、特定周波数の周波数成分を取得する(S30)。第2駆動回路74は、取得された特定周波数の周波数成分をもとに逆位相の正弦波を生成し(S32)、矩形波に生成された逆位相の正弦波を重畳してタッチ駆動信号TXを出力する(S34)。S20で特定周波数が取得されない場合(S20のN)、第2駆動回路74は、矩形波のタッチ駆動信号TXを出力する(S36)。
【0084】
特定周波数の周波数成分を減衰させる別の方法として、第2駆動回路74は、矩形波のデータをデジタルフィルタで構成された図示しないバンドストップフィルタに通し、フィルタの出力データをD/A変換してタッチ駆動信号TXを生成してもよい。これにより、表示システム1の構成の自由度を向上できる。なお、バンドストップフィルタに替えてローパスフィルタを用いてもよい。
【0085】
図15は、第3の実施の形態に係る表示システム1のタッチ駆動信号TXの別の生成処理を示すフローチャートである。特定周波数が取得された場合(S20のY)、第2駆動回路74は、特定周波数に合わせてバンドストップフィルタの阻止帯域を設定し(S40)、矩形波をバンドストップフィルタに通してタッチ駆動信号TXを出力する(S42)。S20で特定周波数が取得されない場合(S20のN)、第2駆動回路74は、矩形波のタッチ駆動信号TXを出力する(S36)。
【0086】
本実施の形態によれば、特定周波数が取得された場合に特定周波数の高調波成分を含まないタッチ駆動信号TXを生成でき、特定周波数が取得されない場合に消費電力を削減できる。
【0087】
以上、本開示について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、また、そうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0088】
たとえば、第3の実施の形態において、第2駆動回路74は、第1の実施の形態と同様に特定周波数が含まれる所定の周波数帯の周波数成分を減衰させてタッチ駆動信号TXを生成してもよい。この場合、第2駆動回路74は、矩形波における所定の周波数帯の複数の奇数次高調波のそれぞれに関して、奇数次高調波の波形とは逆位相の正弦波を生成し、生成された複数の逆位相の正弦波を矩形波に合成し、所定の周波数帯の複数の奇数次高調波をキャンセルする。バンドストップフィルタを用いる場合、第2駆動回路74は、フィルタの阻止帯域を所定の周波数帯に設定する。この変形例では、特定周波数を取得する処理が不要となる。
【0089】
また、実施の形態では制御装置24がタッチディスプレイ20に含まれるが、制御装置24はホスト10に含まれてもよい。実施の形態では第1駆動回路72が基準クロック信号を生成するが、第2駆動回路74が基準クロック信号を生成してもよい。単位フレーム期間は、表示装置22のタッチ検出領域の数と同数またはその3倍以上のタッチ検出期間を含んでもよい。これらの変形例では、表示システム1の構成の自由度を向上できる。
【0090】
本開示の一態様に係る表示システムは、
画像表示およびタッチ検出に共用される複数の共通電極を有する表示装置と、
前記複数の共通電極のそれぞれにタッチ駆動信号を供給する駆動回路と、
前記複数の共通電極のそれぞれから受信した検出信号に基づいて、前記表示装置への物体のタッチを検出するタッチ検出回路と、を備え、
前記タッチ駆動信号は、特定周波数とは異なる周波数の高調波を含み、当該特定周波数の高調波を含まない。
この態様によると、輻射ノイズの低減とタッチ検出感度を両立できる。
【0091】
本開示の一態様に係る表示システムにおいて、例えば、
前記駆動回路は、基本波と、前記特定周波数が含まれる所定の周波数帯より低い周波数の1以上の奇数次高調波とを重畳して前記タッチ駆動信号を生成する、としても良い。
この場合、所定の周波数帯の輻射を抑制できる。
【0092】
本開示の一態様に係る表示システムにおいて、例えば、
前記特定周波数を取得する取得部をさらに備え、
前記駆動回路は、前記取得部で前記特定周波数が取得された場合、基本波と、当該特定周波数より低い周波数の1以上の奇数次高調波とを重畳して前記タッチ駆動信号を生成する、としても良い。
この場合、特定周波数の輻射を抑制できる。
【0093】
本開示の一態様に係る表示システムにおいて、例えば、
前記駆動回路は、前記取得部で前記特定周波数が取得されない場合、基本波と、所定数の奇数次高調波とを重畳して前記タッチ駆動信号を生成する、としても良い。
この場合、特定周波数が取得されない場合の処理を簡素化できる。
【0094】
本開示の一態様に係る表示システムにおいて、例えば、
前記特定周波数を取得する取得部をさらに備え、
前記駆動回路は、前記取得部で前記特定周波数が取得された場合、基本周波数の矩形波から前記特定周波数の周波数成分を減衰させて前記タッチ駆動信号を生成する、としても良い。
この場合、特定周波数の高調波成分を含まないタッチ駆動信号を生成できる。
【0095】
本開示の一態様に係る表示システムにおいて、例えば、
前記駆動回路は、前記取得部で前記特定周波数が取得されない場合、前記矩形波の前記タッチ駆動信号を生成する、としても良い。
この場合、消費電力を削減できる。
【0096】
本開示の一態様に係る表示システムにおいて、例えば、
前記駆動回路は、前記取得部で前記特定周波数が取得された場合、前記矩形波における前記特定周波数の周波数成分の波形とは逆位相の当該特定周波数の正弦波を当該矩形波に合成して前記タッチ駆動信号を生成する、としても良い。
この場合、特定周波数の高調波成分を減衰させることができる。
【0097】
本開示の一態様に係る表示システムにおいて、例えば、
前記複数の共通電極のそれぞれから受信した前記検出信号にもとづいて、それぞれの共通電極の基準静電容量に関する基準値を導出する制御回路をさらに備え、
前記タッチ検出回路は、前記検出信号と前記基準値にもとづいてタッチを検出する、としても良い。
この場合、タッチ駆動信号にもとづく基準値を得られるので、タッチの誤検出を抑制できる。
【0098】
本開示の一態様に係る制御装置は、
画像表示およびタッチ検出に共用される複数の共通電極を有する表示装置を制御する制御装置であって、
前記複数の共通電極のそれぞれにタッチ駆動信号を供給する駆動回路と、
前記複数の共通電極のそれぞれから受信した検出信号に基づいて、前記表示装置への物体のタッチを検出するタッチ検出回路と、を備え、
前記タッチ駆動信号は、特定周波数とは異なる周波数の高調波を含み、当該特定周波数の高調波を含まない。
この態様によると、輻射ノイズの低減とタッチ検出感度を両立できる。
【0099】
本開示の一態様に係る制御方法は、
画像表示およびタッチ検出に共用される複数の共通電極を有する表示装置の制御方法であって、
前記複数の共通電極のそれぞれにタッチ駆動信号を供給するステップと、
前記複数の共通電極のそれぞれから受信した検出信号に基づいて、前記表示装置への物体のタッチを検出するステップと、を備え、
前記タッチ駆動信号は、特定周波数とは異なる周波数の高調波を含み、当該特定周波数の高調波を含まない。
この態様によると、輻射ノイズの低減とタッチ検出感度を両立できる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本開示は、タッチ検出機能を有する表示システム、制御装置および制御方法に利用できる。
【符号の説明】
【0101】
1…表示システム、12…制御装置、22…表示装置、24…制御装置、34…共通電極、70…制御回路、72…第1駆動回路、74…第2駆動回路、76…タッチ検出回路、92…取得部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15