(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】燃焼制御システム、燃焼制御方法、情報処理装置、プログラムおよび記録媒体
(51)【国際特許分類】
F23G 5/50 20060101AFI20240626BHJP
F23N 5/00 20060101ALI20240626BHJP
F23N 5/24 20060101ALI20240626BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20240626BHJP
【FI】
F23G5/50 Z
F23N5/00 E ZAB
F23N5/24 106Z
G06N20/00 130
(21)【出願番号】P 2021015794
(22)【出願日】2021-02-03
(62)【分割の表示】P 2020066639の分割
【原出願日】2020-04-02
【審査請求日】2023-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2019163584
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000133032
【氏名又は名称】株式会社タクマ
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井藤 宗親
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 智一
(72)【発明者】
【氏名】藤本 祐希
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-180649(JP,A)
【文献】特開2005-249349(JP,A)
【文献】特開平05-279980(JP,A)
【文献】特開平05-187265(JP,A)
【文献】特開2001-159915(JP,A)
【文献】特開平11-325438(JP,A)
【文献】特開2001-075635(JP,A)
【文献】特開平11-257634(JP,A)
【文献】特開2019-138517(JP,A)
【文献】特開平06-195579(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0233523(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/50
F23N 5/00
F23N 5/24
G06N 20/00
G05B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも燃焼炉に関する状態量を含む学習データと、オペレータが異常と判断したときのオペレータの操作記録を含む手動介入データを含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測し、異常を回避するための手段を予測する異常回避手段予測プログラム、を記憶する第一記憶部と、
前記異常回避手段予測プログラムを用いて、前記燃焼炉に関する状態量が異常か否かを予測し、および異常を回避するための手段を予測する異常予測部と、
前記異常予測部で予測された結果を出力する予測結果出力部と、を有する、燃焼異常予測装置と、
前記燃焼異常予測装置の異常予測部によって、予測された異常を回避するための手段に基づいて、燃焼炉の燃焼を制御する燃焼制御部と、を有し、
異常を回避するための手段の内
、0%から100%の重み付けを設定して実行する部分運転モードを少なくとも有し、前記部分運転モードに従って、前記燃焼制御部が燃焼炉の燃焼を制御する、燃焼制御システム。
【請求項2】
少なくとも燃焼炉に関する状態量を含む学習データと、オペレータが異常と判断したときのオペレータの操作記録を含む手動介入データを含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測し、異常を回避するための手段を予測する異常回避手段予測プログラム、を記憶する第一記憶部と、
前記異常回避手段予測プログラムを用いて、前記燃焼炉に関する状態量が異常か否かを予測し、および異常を回避するための手段を予測する異常予測部と、
前記異常予測部で予測された結果を出力する予測結果出力部と、を有する、燃焼異常予測装置と、
前記燃焼異常予測装置から送られた各種データを受信する受信部と、各種データを記憶する記憶部と、
前記予測された異常を回避するための手段に基づいて、燃焼炉の燃焼を制御する燃焼制御部と、を有し、
異常を回避するための手段の内
、0%から100%の重み付けを設定して実行する部分運転モードを少なくとも有し、前記部分運転モードに従って、前記燃焼制御部が燃焼炉の燃焼を制御する、燃焼制御システム。
【請求項3】
前記燃焼異常予測装置は、
過去の所定期間の前記学習データと、前記過去の所定期間の前記教師データとを用いて異常回避手段予測プログラムを所定の頻度で再学習する再学習部と、
前記再学習部で再学習された新たな異常回避手段予測プログラムを記憶する第二記憶部と、をさらに有し、
前記異常予測部は、再学習されるたびに生成された新たな異常回避手段予測プログラムを用いて予測する、請求項1または2に記載の燃焼制御システム。
【請求項4】
オペレータの操作入力を受け付けるユーザインターフェースを有し、
前記ユーザインターフェースは、オペレータにより判定された異常判定の入力を受け付ける異常判定入力部を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の燃焼制御システム。
【請求項5】
前記ユーザインターフェースは、オペレータによる介入操作の入力を受け付ける介入操作入力部を有する、請求項4に記載の燃焼制御システム。
【請求項6】
前記ユーザインターフェースは、操作ログの表示に対応して、オペレータの判定理由を入力する判定理由入力部を有する、請求項4または5に記載の燃焼制御システム。
【請求項7】
前記第一記憶部は、さらに、少なくとも燃焼炉に関する状態量を含む学習データと、オペレータが異常と判断したときのオペレータの操作記録を含む手動介入データを含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測する異常予測プログラムを記憶し、
前記異常予測部は、さらに、前記異常予測プログラムを用いて、前記燃焼炉に関する状態量が異常か否かを予測し、
前記燃焼制御部は、さらに、前記燃焼異常予測装置の異常予測部によって、予測された燃焼炉に関する状態量が異常か否かの予測結果に基づいて、燃焼炉の燃焼を制御し、
前記燃焼制御システムは、
前記部分運転モードと、さらに、異常予測および/または異常を回避するための手段をオペレータに示し、オペレータがその手段を実行するか否かを判断する支援運転モードおよび/または異常を回避するための手段を自動的に実行する完全自動運転モードとを有し、
いずれかの運転モードが選択可能に構成されており、
選択された運転モードに従って、前記燃焼制御部が燃焼炉の燃焼を制御する、請求項1から6のいずれか1項に記載の燃焼制御システム。
【請求項8】
情報処理装置により実施される燃焼制御方法であって、
少なくとも燃焼炉に関する状態量を含む学習データと、オペレータが異常と判断したときのオペレータの操作記録を含む手動介入データを含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測し、異常を回避するための手段を予測する異常回避手段予測プログラムを用いて、前記燃焼炉に関する状態量が異常か否かを予測し、および異常を回避するための手段を予測する、異常予測ステップと、
前記異常予測ステップで予測された結果を出力する出力ステップと、
前記異常予測ステップによって予測された異常を回避するための手段に基づいて、燃焼炉の燃焼を制御する燃焼制御ステップと、を備え、
異常を回避するための手段の内
、0%から100%の重み付けを設定して実行する部分運転モードを少なくとも有し、
前記部分運転モードに従って前記燃焼制御ステップを実行する、燃焼制御方法。
【請求項9】
過去の所定期間
の前記学習データと、前記過去の所定期間の前記教師データとを用いて異常回避手段予測プログラムを所定の頻度で再学習する再学習ステップを含み、
前記異常予測ステップは、再学習されるたびに生成された新たな異常回避手段予測プログラムを用いて予測する、請求項8に記載の燃焼制御方法。
【請求項10】
前記異常回避手段予測プログラムの予測結果と、オペレータの判断結果とを比較しいずれか一方を選択して教師データを生成する、または
オペレータにより判定される異常判定がない場合に、前記異常回避手段予測プログラムの予測結果をそのまま教師データとして使用する、教師データ生成ステップを含む、請求項8または9に記載の燃焼制御方法。
【請求項11】
前記異常回避手段予測プログラムの予測結果と、オペレータにより判定された異常判定またはオペレータの介入操作とを比較し、前記予測結果の精度を算出する精度算出ステップを含む、請求項8から10のいずれか1項に記載の燃焼制御方法。
【請求項12】
少なくとも1つのプロセッサーと、
前記プロセッサーで実行可能な命令を記憶するためのメモリと、を含み、
前記プロセッサーは、実行可能な命令を実行することにより、請求項8から11のいずれか1項の燃焼制御方法を実現する、情報処理装置。
【請求項13】
燃焼制御プログラムであって、
少なくとも1つのプロセッサーにより、請求項8から11のいずれか1項の燃焼制御方法を実現するプログラム。
【請求項14】
コンピュータ命令が記憶されているコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
前記コンピュータ命令がプロセッサーにより実行されることで、請求項8から11のいずれか1項の燃焼制御方法のステップを実現するコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ごみ焼却装置などの燃焼異常予測装置、燃焼異常予測プログラムおよびそれらを備える燃焼制御システムに関し、例えば、燃焼の異常を予測(推論)し、燃焼制御を行う燃焼制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から3では、機械学習モデルを利用した各種制御方法が開示されている。
特許文献1は、炉内の燃焼状態を判定可能な状態量を炉内の画像情報に基づいて推定する炉内状態量推定装置である。この炉内状態量推定装置は、炉内を撮像した画像に基づいて得られる画像情報であって過去の前記画像に基づいて得られる過去画像情報と、前記過去画像情報で示される燃焼状態に応じた状態量とが対応付けられた学習データの機械学習により作成された推定モデルを利用する。この推定モデルに入力画像情報が入力され、この入力画像情報で示される燃焼状態に応じた推定状態量がこの推定モデルで算出される。これにより、炉内の燃焼状態に応じて、例えば灰中未燃分や、NOx濃度、CO濃度などの状態量は変化するが、炉内の燃焼時の画像情報と、その画像情報が撮像された際の状態量(計測値や推定値)とが対応付けられた学習データの機械学習により作成された推定モデルを用いて、燃焼時の炉内を撮像した画像情報から、その燃焼状態で生じる状態量(推定状態量)を推定する。
【0003】
特許文献2は、廃棄物焼却プラント又はバイオマス燃焼プラントを対象プラントとし、前記対象プラントの性能を示す少なくとも1つの性能管理指標を管理するためのプラント管理支援装置である。このプラント管理支援装置は、対象プラントの状態量及び/又は操作量を計測データとして収集し、収集された複数の第1の時点における前記計測データ及び/又は当該計測データから演算により得られる演算データを説明変数として、複数の前記第1の時点のいずれよりも後の第2の時点における前記性能管理指標を目的変数とする回帰モデルを構築し、この回帰モデルに対して、収集された複数の前記第1の時点のいずれよりも後の第3の時点及び前記第3の時点より前の複数の第4の時点における前記計測データ及び/又は当該計測データから演算により得られる演算データを入力することにより、前記少なくとも1つの性能管理指標の、前記第3の時点より後の第5の時点における予測値を算出する。この構成では、過去の時点t及び該時点tから遡った時点(t-Δt1)、(t-2Δt1)、・・・、(t-nΔt1)における前記説明変数と、前記過去の時点tに対して0より大きい時間幅Δt2を加えた、時点(t+Δt2)における前記性能管理指標との統計的な相関関係に基づいて、現在の時点t0に対する、将来の時点(t0+Δt2)における前記性能管理指標の予測値を、プラントそのものの時間遅れや、計測装置のもつ時間遅れの影響を受けることなく算出する。
【0004】
特許文献3は、焼却施設に関する情報処理を行う情報処理装置である。この情報処理装置は、焼却施設の稼働状態に関する複数種類の所定のデータを取得し、上記焼却施設で発生が予測される所定の事象について、上記所定のデータの少なくとも一部を、過去に上記焼却施設で上記所定の事象が発生したときの上記所定のデータと当該所定の事象の発生要因との対応関係に基づいて構築された要因予測モデルに対して用いることにより、上記所定の事象の発生要因を特定する。予測対象として、例えば、蒸気量が低下する事象、焼却炉の炉内温度が閾値未満となる事象、焼却炉からの排出ガス中の有害物質(一酸化炭素および窒素酸化物等)の濃度が閾値以上となる事象等がある。確率予測モデルは、過去にゴミ焼却施設を稼働させたときの、ある時点の直前の所定時間(例えば数時間)の稼働状態に関するデータDと、その時点から所定時間後の蒸気量の低下の発生確率との対応関係に基づいて構築されたモデルである。別の確率予測モデルとしては、過去にゴミ焼却施設を稼働させたときに取得、蓄積されたデータDのうち、ある時点の直前の1時間分のデータDと、その直後の30分間に蒸気量が低下した確率との対応関係を特定する。
【0005】
特許文献4は、廃棄物処理プラント設備の運転制御方法である。この運転制御方法は、廃棄物処理プラント設備の運転による各種プラントデータをニューラルネットワークに導き、該ニューラルネットワークで該廃棄物処理プラント設備の運転制御のモデルを学習して学習モデルを作成し、該学習モデルで所定時間後の予測運転制御を行う。、ニューラルネットワークは、各種プラントデータから制御目標の相関関係を導きだし、予測値が制御目標の実績値に近づくように学習モデルを再構築する。学習モデルを所定の設定周期で再構築した学習モデルと更新するか又は当該学習モデルの予測評価を行い該予測評価値が所定値以上外れたら再構築した学習モデルと更新する。接近する所定期間の実運転制御における各種プラントデータを収集しニューラルネットワークに導き、該ニューラルネットワークは該各種プラントデータから制御目標との相関関係を学習し、最新学習モデルを作成する。作成した最新学習モデルに接近する所定期間の運転制御における各種プラントデータを代入して運転制御シミュレーションを行い、該運転制御シミュレーションによる値と実運転制御による値が所定の範囲内か否かを判断し、所定の範囲内であったなら現在の学習モデルを最新学習モデルに切り換え、所定の範囲外であったなら現在の学習モデルで運転制御を継続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-74240号
【文献】特開2018-151771号
【文献】特開2019‐2672号
【文献】特開2005-249349号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的に、ごみ焼却炉における燃焼制御運転では、各種の目標出力値(炉温度、蒸発量、O2濃度など)が予め設定されている。この目標出力値を基準とした運転を行いつつ、運転員が実計測値(「プラントデータ」ともいう。)が目標出力値(炉温度、蒸発量、O2濃度など)を基準とした上閾値および下閾値に近づいてきたら異常であると判断または異常になるだろうと予測し手動介入を行い、目標出力値に戻るように各種操作(空気量、空気温度、ごみ供給量などの制御)を行っている。
つまり、オペレータの熟練度、個人差(異常と判断する自分の基準)、オペレータの状態(健康状態、感情変化)などによって、異常予測には大きな差が生じていると考えられる。
上記特許文献1から4では、オペレータによるばらつきを機械学習によって補うことが期待されているが、機械学習モデルの予測精度にも大きな差がある。特許文献4では、再学習モデルの構築において、(1)所定期間のデータを2分割し一方データで学習して更新学習モデルを構築し、他方データでその更新学習モデルを評価し、良い結果であれば学習モデルを入れ替える手法と、(2)最新学習モデルのシミュレーションと実運転制御との比較で、シミュレーション結果の方がよい結果であれば最新学習モデルに入れ替える手法などを提案しているが、オペレータに起因した予測精度のバラツキを解消するには不十分である。
また、ごみは、季節によるごみ質の変動と、ごみ収集エリアのごみ質の差も大きく、オペレータはこれらの変動要因も考慮した手動介入、つまりは異常判断を行っている。
【0008】
上記実情に鑑み、本発明は、オペレータの異常判断を教師データとする機械学習モデル(プログラム)を構築することで好適に異常を予測可能な燃焼異常予測装置、燃焼異常予測プログラムおよびそれらを備える燃焼制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、オペレータの手動介入の実態について検討した結果、以下の知見を得た。
(1)オペレータは、目標出力値を基準とした正常範囲(「個別正常範囲」という。)を設定している。これはオペレータが独自の判断で設定していたり、または目標出力値を基準としたルールで予め設定されている場合もある。
個別正常範囲は、上記「目標出力値(炉温度、蒸発量、O2濃度など)を基準とした上閾値および下閾値」と同じであってもよく、上閾値よりも低く下限値よりも大きい値であってもよい。
(2)オペレータは、実計測値(プラントデータ(プロセスデータと称することもある))が、個別正常範囲の上限値または下限値に近づいていき、所定の間隔(差)まで近づいたら、運転員はこのまま同条件で運転をつづけていけば実計測値が個別正常範囲から外れるだろうと考える(異常運転になるだろうと予測する)。ここで、重要なのは、この判断時点では、まだ異常運転ではなく、正常運転の範囲であるということである。
そこで、本発明では、教師データとしてオペレータが「異常」と判断した時点までのプラントデータおよびその後の操作データを利用する。つまり、学習モデルは、異常運転となる将来時刻を予測(推定)するのではなく、このまま同条件で続ければ異常になるだろうと考えるオペレータの判断と、その判断をした後のオペレータの操作行動を予測(推定)する。
また、地域差、オペレータの状況、新しい事象の発生、経年変化の影響を考慮し、オペレータの操作ログを教師データに用いた再学習を頻繁に行う。
【0010】
本発明の燃焼異常予測装置は、
少なくとも燃焼炉に関する状態量(例えばプラントデータ、運転データなど)を含む学習データと、少なくともオペレータの手動介入データ(例えばオペレータが異常と判断したときの異常入力データ)を含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測する異常予測プログラム、および/または、少なくとも燃焼炉に関する状態量(例えばプラントデータ、運転データなど)を含む学習データと、少なくともオペレータの手動介入データ(例えば手動介入した操作ログ)を含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測し、異常を回避するための手段(異常回避手段)を予測する異常回避手段予測プログラム、を記憶する第一記憶部と、
前記燃焼異常予測プログラムを用いて、前記燃焼炉に関する状態量が異常か否かを予測する、および/または、異常回避手段予測プログラムを用いて、前記燃焼炉に関する状態量が異常か否かを予測し、および異常を回避するための手段を予測する異常予測部と、
前記異常予測部で予測された結果(異常の有無および/または異常回避手段)を出力する予測結果出力部と、を有する。
前記異常予測部または前記異常回避手段予測プログラムは、前記異常を回避するための手段と、その手段を推奨するレベルを示す優先度を予測してもよい。
【0011】
前記異常予測部は、リアルタイムまたは予め設定されたタイミングで実行されてもよい。
前記予測結果出力部は、予測結果をリアルタイムに出力してもよく、予め設定されたタイミングで出力してもよく、出力命令または指示入力に応じて出力してもよい。
異常予測部がリアルタイムに実行している場合に、予測結果をリアルタイムに出力してもよく、異常である旨の予測結果が所定期間継続(例えば5分以上、10分以上など)している場合に予測結果を出力してもよい。出力部は、異常である旨の予測結果が短い所定期間内であれば予測結果を出力しないようにできる。これにより、オペレータの手動介入数を低減できるとともに、手動介入した後で燃焼状態に反映されるまでのタイムラグを考慮できる。
【0012】
上記燃焼異常予測装置は、
過去の所定期間の前記学習データと、前記過去の所定期間の前記教師データとを用いて燃焼異常予測プログラム、および/または、異常回避手段予測プログラムを所定の頻度で再学習(チューニング)する再学習部と、
前記再学習部で再学習された新たな燃焼異常予測プログラム、および/または、異常回避手段予測プログラムを記憶する第二記憶部と、をさらに有し、
前記異常予測部は、再学習されるたびに生成された新たな燃焼異常予測プログラムおよび/または異常回避手段予測プログラムを用いて予測する。
前記再学習部は、1日1回程度、所定の時刻で再学習を実行することが好ましい(これを「リアルタイム学習」という。)。
前記第二記憶部は、前記第一記憶部と同じでもよい。
【0013】
上記燃焼異常予測装置は、
学習データ生成部を有していてもよい。
学習データ生成部は、燃焼炉に関する状態量(例えばプラントデータ、運転データなど)のデータを、ノイズ除去などの前処理をしたり、特徴選択をしたり、特徴変換で特徴量を抽出して、学習データとしてもよい。特徴変換は、例えば、主成分分析、非負値行列因子分解、因子分析などが挙げられる。
【0014】
上記燃焼異常予測装置は、
教師データ生成部を有していてもよい。
教師データ生成部は、前記燃焼異常予測プログラムおよび/または前記異常回避手段予測プログラムの予測結果と、オペレータにより判定された異常判定(またはオペレータの介入操作)とを比較していずれか一方を選択して教師データとしてもよい。
「比較しいずれか一方を選択」は、オペレータの指示入力した選択でもよく、教師データ生成部が所定の選択基準で選択してもよい。所定の選択基準は、例えば、決定木などを用いてもよい。また、選択した時刻より後の運転データと、選択した時刻を含みこれより前の運転データとを比較して、(燃焼炉に関する状態量が)良くなっていたときだけ教師データとして(選択した方を)採用してもよい。
上記燃焼異常予測装置は、
オペレータの操作入力を受け付けるユーザインターフェースを有し、
前記ユーザインターフェースは、オペレータにより判定された異常判定の入力を受け付ける異常判定入力部を有していてもよい。
上記燃焼異常予測装置は、
オペレータの操作入力を受け付けるユーザインターフェースを有し、
前記ユーザインターフェースは、オペレータによる介入操作の入力を受け付ける介入操作入力部を有していてもよい。
上記燃焼異常予測装置は、操作ログの表示に対応して、オペレータの判定理由(手動介入した操作項目を選択した理由)を入力する判定理由入力部を備えていてもよい。
前記オペレータの判定理由に、オペレータの操作間違い(誤操作)が含まれていてもよい。操作間違い(誤操作)に係る手動介入の操作は、リアルタイム学習または再学習に使用される教師データから除外するように構成されていてもよい。
【0015】
上記燃焼異常予測装置は、
前記異常回避手段予測プログラムの予測結果と、オペレータにより判定された異常判定またはオペレータの介入操作とを比較し、前記予測結果の精度を算出する精度算出部を有していてもよい。
燃焼異常予測プログラムおよび/または前記異常回避手段予測プログラムの予測結果と、オペレータの判定(異常判定、介入操作)とを以下のように対応づける。「正常」は、「異常判定または介入操作」をしていない状態である。
a: 予測結果が「異常」、オペレータの判定が「異常」
b: 予測結果が「異常」、オペレータの判定が「正常」
c: 予測結果が「正常」、オペレータの判定が「異常」
d: 予測結果が「正常」、オペレータの判定が「正常」
精度の評価指標として、正解率(全データの内、予測結果とオペレータの判定が一致したデータの割合)と再現率(オペレータの判定が異常だったデータの内、予測結果とオペレータの判定の両方が異常としたデータの割合)を使用する。
正解率=(a+d)/(a+b+c+d) (1)
再現率=a/(a+c) (2)
前記精度算出部は、上記正解率および/または再現率を算出してもよい。
前記精度算出部は、予測結果とオペレータの介入操作がいずれも、異常回避操作をするとの結果の場合に、オペレータの操作するタイミング、操作項目、操作量(増減)を比較してもよい。
(i)オペレータの操作するタイミングが所定期間以内か否かを判断し、
(ii)上記(i)で所定期間以内の場合に、お互いの操作項目の一致率を算出し、
(iii)上記(ii)で一致した操作項目の操作量の正解率を算出してもよい。
ここで正解は、例えば、オペレータの介入操作を基準にしてプログラムの予測結果が所定%以内の操作量であれば正解としてもよい。
上記燃焼異常予測装置は、
前記精度算出部で算出された前記精度の結果(例えば、正解率、再現率)を出力する精度結果出力部を有していてもよい。
【0016】
他の発明の燃焼制御システムは、燃焼炉のメイン制御装置として機能する。
燃焼制御システムは、
上記の燃焼異常予測装置を備え、
前記異常結果および/または異常を回避するための手段に基づいて、燃焼炉の燃焼を制御する燃焼制御部と、を有する。
他の発明の燃焼制御システムは、
上記の燃焼異常予測装置から送られた各種データを受信する受信部と、各種データを記憶する記憶部と、
前記異常結果および/または異常を回避するための手段に基づいて、燃焼炉の燃焼を制御する燃焼制御部と、を有する。
上記燃焼制御システムは、
オペレータの操作入力を受け付けるユーザインターフェースを有し、
前記ユーザインターフェースは、オペレータにより判定された異常判定の入力を受け付ける異常判定入力部を有していてもよい。
上記燃焼制御システムは、
オペレータの操作入力を受け付けるユーザインターフェースを有し、
前記ユーザインターフェースは、オペレータによる介入操作の入力を受け付ける介入操作入力部を有していてもよい。
前記ユーザインターフェースは、操作ログの表示に対応して、オペレータの判定理由(手動介入した操作項目を選択した理由)を入力する判定理由入力部を有していてもよい。
前記オペレータの判定理由に、オペレータの操作間違いが含まれていてもよい。操作間違いに係る手動介入の操作は、リアルタイム学習または再学習に使用される教師データから除外するように構成されていてもよい。
上記燃焼制御システムは、上記精度算出部および上記精度結果出力部を備えていてもよい。
【0017】
上記燃焼制御システムは、「異常予測」および/または「異常を回避するための手段」をオペレータに示し、オペレータがその手段を実行するか否かを判断する支援運転モードと、「異常を回避するための手段」を自動的に実行する完全自動運転モードと、「異常を回避するための手段」の内、一部の手段を実行するあるいは0%から100%の重み付けを設定して実行する部分運転モードを有し、いずれかの運転モードが選択可能に構成されており、
選択された運転モードに従って、前記燃焼制御部が燃焼炉の燃焼を制御してもよい。
【0018】
また、他の発明の燃焼異常予測方法は、
少なくとも燃焼炉に関する状態量(例えばプラントデータ、運転データなど)を含む学習データと、少なくともオペレータの手動介入データ(例えばオペレータが異常と判断したときの異常入力データ)を含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測する異常予測プログラムを用いて、前記燃焼炉に関する状態量が異常か否かを予測する、および/または、
少なくとも燃焼炉に関する状態量(例えばプラントデータ、運転データなど)を含む学習データと、少なくともオペレータの手動介入データ(例えば手動介入した操作ログ)を含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測し、異常を回避するための手段を予測する異常回避手段予測プログラムを用いて、前記燃焼炉に関する状態量が異常か否かを予測し、および異常を回避するための手段を予測する、異常予測ステップと、
前記異常予測ステップで予測された結果(異常および/または異常回避手段の予測結果)を出力する出力ステップと、を含む。
上記燃焼異常予測方法は、過去の所定期間の前記学習データと、前記過去の所定期間の前記教師データとを用いて燃焼異常予測プログラム、および/または、異常回避手段予測プログラムを所定の頻度で再学習(チューニング)する再学習ステップを含み、
前記異常予測ステップは、再学習されるたびに生成された新たな燃焼異常予測プログラムおよび/または異常回避手段予測プログラムを用いて予測する。
上記燃焼異常予測方法は、
前記燃焼異常予測プログラムおよび/または前記異常回避手段予測プログラムの予測結果と、オペレータの判断結果とを比較しいずれか一方を選択して教師データを生成する教師データ生成ステップを含んでいてもよい。
前記教師データ生成ステップは、オペレータにより判定される異常判定(またはオペレータの介入操作)がない場合に、前記燃焼異常予測プログラムおよび/または前記異常回避手段予測プログラムの予測結果をそのまま教師データとしてもよい。
前記燃焼異常予測プログラムおよび/または前記異常回避手段予測プログラムの予測結果に基づく自動操作が適切であれば、オペレータは手動介入をする必要がなく、従って、前記燃焼異常予測プログラムおよび/または前記異常回避手段予測プログラムの予測結果が適切な(正しい)場合、データとして、この予測結果のみを教師データとして使用する。つまり、オペレータの介入操作がなければ、予測が正しいとしてそのまま教師データとして使用できる利点がある。
予測結果が正しいことを判断する方法としては、予測前または予測後の所定期間(例えば、数十秒から十数分間の範囲で設定されてもよい)にオペレータの手動介入がなければ、予測結果が正しいと判断し、教師データとして使用する。予測が間違えている場合は、それを補償(カバー)するために予測前または予測後の所定期間(例えば、数十秒から十数分間の範囲で設定されてもよい)にオペレータが手動介入を実施する。このようにして、予測結果が正しいことを判断してもよい。
上記燃焼異常予測方法は、
前記異常回避手段予測プログラムの予測結果と、オペレータにより判定された異常判定またはオペレータの介入操作とを比較し、前記予測結果の精度を算出する精度算出ステップを含んでいてもよい。
上記燃焼異常予測方法は、
精度算出ステップで算出された前記精度の結果を出力する精度結果出力ステップを含んでいてもよい。
【0019】
また、他の発明の情報処理装置は、
少なくとも1つのプロセッサーと、
前記プロセッサーで実行可能な命令を記憶するためのメモリと、を含み、
前記プロセッサーは、実行可能な命令を実行することにより上記燃焼異常予測方法を実現する、情報処理装置である。
【0020】
また、他の発明の燃焼異常予測プログラムは、少なくとも1つのプロセッサーにより、上記燃焼異常予測方法を実現するプログラムである。
また、他の発明のコンピュータ命令が記憶されているコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、前記コンピュータ命令がプロセッサーにより実行されることで、上記記載の燃焼異常予測方法のステップを実現するコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0021】
また、他の発明の異常予測プログラム生成方法は、
少なくとも燃焼炉に関する状態量を含む学習データを生成する学習データ生成ステップと、
少なくともオペレータの手動介入データを含む教師データを生成する教師データ生成ステップと、
前記学習データと前記教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測する異常予測プログラムを生成するモデル生成ステップと、を含む。
また、他の発明の異常回避手段予測プログラム生成方法は、
少なくとも燃焼炉に関する状態量を含む学習データを生成する学習データ生成ステップと、
少なくともオペレータの手動介入データを含む教師データを生成する教師データ生成ステップと、
前記学習データと前記教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測し、異常を回避するための手段を予測する異常回避手段予測プログラムを生成するモデル生成ステップと、を含む。
前記教師データ生成ステップは、前記燃焼異常予測プログラムおよび/または前記異常回避手段予測プログラムの予測結果と、オペレータにより判定された異常判定(またはオペレータの介入操作)とを比較していずれか一方を選択して教師データとしてもよい。
前記教師データ生成ステップは、オペレータにより判定される異常判定(またはオペレータの介入操作)がない場合に、前記燃焼異常予測プログラムおよび/または前記異常回避手段予測プログラムの予測結果をそのまま教師データとしてもよい。
前記燃焼異常予測プログラムおよび/または前記異常回避手段予測プログラムの予測結果に基づく自動操作が適切であれば、オペレータは手動介入をする必要がなく、従って、前記燃焼異常予測プログラムおよび/または前記異常回避手段予測プログラムの予測結果が適切な(正しい)場合、データとして、この予測結果のみを教師データとして使用する。つまり、オペレータの介入操作がなければ、予測が正しいとしてそのまま教師データとして使用できる利点がある。
予測結果が正しいことを判断する方法としては、予測前または予測後の所定期間(例えば、数十秒から十数分間の範囲で設定されてもよい)にオペレータの手動介入がなければ、予測結果が正しいと判断し、教師データとして使用する。予測が間違えている場合は、それを補償(カバー)するために予測前または予測後の所定期間(例えば、数十秒から十数分間の範囲で設定されてもよい)にオペレータが手動介入を実施する。このようにして、予測結果が正しいことを判断してもよい。
【0022】
「予測結果出力部」および「精度結果出力部」が出力する形態は、例えば、表示装置への表示、プリンタへのプリント出力、スピーカへの音出力、外部装置へのデータ送信、記憶部へのデータ記憶などを含む。
【0023】
「過去」は、例えば、当日から過去1年間は必要であり、それ以上(例えば、2年、5年、10年など)でもよい。
「所定期間」は、例えば、1日~60日などの一定期間として、自動または手動で設定する。
「燃焼炉に関する状態量」は、例えば、炉内ガス温度、主蒸気流量、炉出口ガス濃度(O2、CO、NOx)、炉内の燃焼画像データなどが挙げられる。
予測される「燃焼異常」は、例えば、炉温上昇、炉温低下、蒸発量上昇、蒸発量低下、CO上昇、NOx上昇などが挙げられる。
「手動介入データ」は、オペレータが異常と判断したときのオペレータの操作記録(手動介入操作ログ)を含む。データはいずれも時刻に紐づいている。
「異常を回避するための手段(異常回避手段)」は、オペレータの操作項目、および操作項目の操作量(増減)を含む。
操作項目は、例えば、空気量、空気温度、燃焼原料供給量、燃焼原料供給速度、給じん装置速度、燃焼ストーカ速度、炉内水噴霧量、排ガス処理用薬剤供給量等が挙げられる。
「知的情報処理技術」は、例えば、機械学習、深層学習、強化学習、深層強化学習などが挙げられる。
機械学習、深層学習、強化学習、深層強化学習のアルゴリズムは、特に制限されず、従来のアルゴリズムを用いてもよい。教師あり学習として、例えば、線形回帰、一般化線形モデル、サポートベクター回帰、ガウス過程回帰、アンサンブル法、決定木、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、判別分析、単純ベイズ、最近傍法などの各種アルゴリズムを採用してもよい。
「表示装置」は、特に制限されず、液晶モニター、有機ELモニター、CRTモニター、スマートフォン、タブレット、汎用パソコンのモニターなどが例示される。
【0024】
上記構成要素は、メモリ、プロセッサー、ソフトウエアプログラムを有する情報処理装置(例えば、コンピュータ、サーバ)や、専用回路、ファームウエアなどで構成してもよい。情報処理装置は、オンプレミスまたはクラウドのいずか一方、あるいは両方の組み合わせであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施形態1の燃焼異常予測装置および燃焼制御システムの一例を示す図である。
【
図2】実施形態1の燃焼異常予測装置および燃焼制御システムの構成要素の機能ブロック図の一例である。
【
図3】実施形態1のリアルタイム学習について説明するフローの一例である。
【
図4】実施形態1の予測結果の出力(画面、データ構造)の一例である。
【
図5】実施形態1の異常予測の入力画面の一例である。
【
図6A】実施形態1の予測精度の算出方法について説明する図の一例である。
【
図6B】実施形態1の予測精度について説明する図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施形態1)
図1は、燃焼異常予測装置30および燃焼制御システム40の構成例を示し、
図2は、燃焼異常予測装置30および燃焼制御システム40の構成要素の機能ブロック図を示す。
実施形態1では、燃焼制御システム40は、ストーカ式焼却炉1の燃焼を制御する。ストーカ式燃焼炉1には、各種センサや計測器(レーザ式O
2分析計など)などが所定の場所に設置されており、測定された各データ(プラントデータ)や、炉内の燃焼状態をカメラで撮像した画像データなどが、通信部11を介してデータサーバ20に送られ、データサーバ20は時系列データとして蓄積する。
燃焼制御システム40は、燃焼に係る所定の目標出力値が設定されており、この目標出力値になるように自動運転されており、目標出力値から大きく外れそうになるとオペレータが手動介入できるようになっている。
燃焼制御システム40は、運転データ(目標出力値)と、操作ログ(手動介入操作データ)とが不図示のメモリに記憶されて通信部41を介してデータサーバ20へ送られ、データサーバ20は時系列データとして蓄積する。データサーバ20は、プラントデータおよび画像データと、運転データおよび操作ログとを時系列データとして対応づけて蓄積する。
【0027】
データサーバ20に蓄積されたプラントデータ(画像データも含む)は、燃焼異常予測装置30へ送られる。
燃焼異常予測装置30は、学習データ生成部31、教師データ生成部32、モデル生成部33を有する。
学習データ生成部31は、プラントデータと運転データを含む学習データを生成する。学習データ生成部31は、プラントデータ、運転データなどの各種データを、ノイズ除去などの前処理をしたり、特徴選択をしたり、特徴変換で特徴量を抽出して、学習データとする。
教師データ生成部32は、オペレータの手動介入データ(例えばオペレータが異常と判断したときの異常入力データ)を含む教師データを生成する。
教師データ生成部32は、オペレータの手動介入データ(例えば手動介入した操作ログ)を含む教師データを生成する。教師データは基本的にはオペレータの手動介入操作である。
別実施形態として、教師データ生成部32は、燃焼異常予測プログラムおよび/または異常回避手段予測プログラムの予測結果と、オペレータにより判定された異常判定(またはオペレータの介入操作)とを比較していずれか一方を選択して教師データにする。選択方法としては、オペレータの指示入力した選択でもよく、教師データ生成部32が所定の選択基準で選択してもよい。
【0028】
モデル生成部33は、ストーカ式焼却炉1に関する状態量(例えばプラントデータ、運転データなど)を含む学習データと、少なくともオペレータの手動介入データ(例えばオペレータが異常と判断したときの異常入力データ)を含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって燃焼異常を予測する異常予測プログラムを生成する。学習データは学習データ生成部31で生成され、教師データは教師データ生成部32で生成される。
また、モデル生成部33は、ストーカ式焼却炉1に関する状態量(例えばプラントデータ、運転データなど)を含む学習データと、少なくともオペレータの手動介入データ(例えば手動介入した操作ログ)を含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって燃焼異常を予測し、異常を回避するための手段(異常回避手段)を予測する異常回避手段予測プログラムを生成する。学習データは学習データ生成部31で生成され、教師データは教師データ生成部32で生成される。
第一記憶部34は、異常予測プログラムおよび異常回避手段予測プログラムを記憶する。
【0029】
異常予測部35は、燃焼異常予測プログラムを用いて、ストーカ式焼却炉1に関する状態量が異常か否かを予測する。
また、異常予測部35は、異常回避手段予測プログラムを用いて、ストーカ式焼却炉1に関する状態量が異常か否かを予測し、異常回避手段を予測する。
また、異常予測部35は、異常回避手段予測プログラムを用いて、異常回避手段と、その異常回避手段を推奨するレベルを示す優先度を予測する。
【0030】
予測結果出力部36は、異常予測部35で予測された結果(異常の有無、異常回避手段、優先度)を出力する。本実施形態では、予測された結果を燃焼制御システム40へ送信し、燃焼制御システム40において不図示の記憶部に記憶され、表示装置45に所定の様式で表示される。
また、本実施形態において予測結果出力部36は、予測結果をリアルタイムに出力する。異常予測部35がリアルタイムに予測を実行している場合に、予測結果(例えば、
図4のデータ)をリアルタイムに出力する。
また別実施形態として、異常予測部35がリアルタイムに予測を実行している場合でも、予測結果出力部36は、異常である旨の予測結果が所定期間継続(例えば5分以上、10分以上など)している場合に予測結果を出力するようにしてもよい。予測結果出力部36は、異常である旨の予測結果が短い所定期間内であれば予測結果を出力しないようにして、オペレータの手動介入数を低減できるとともに、手動介入した後で燃焼状態に反映されるまでのタイムラグを考慮できる。
【0031】
(リアルタイム学習;再学習)
図3は、リアルタイム学習について説明するフローである。
時間軸が上から下に進む中で、燃焼異常予測プログラムおよび/または異常回避手段予測プログラムの予測結果(S1)と、オペレータにより判定された異常判定(S2)とが比較され判定(S3)される。判定方法は、オペレータの指示で選択してもよく、例えば、ランダムフォレストなどの分類や回帰処理を採用する機械学習手段を利用して、より良い方を選択し教師データとする(教師データ生成部32の機能である)。これにより、より良い操作の方が教師データに選択されるため、再学習直前の教師データが正しいものと定義する。より良い方の操作を、手動介入で実行するか実行しないかは自由とする(S4)。例えば、午前0時に再学習を実行する(S5)。再学習を一定時刻に常に行うことで、昨日より精度が向上した燃焼異常予測プログラムおよび異常回避手段予測プログラムが生成される。
また、上記判定方法の別実施形態として、プログラムの予測結果とオペレータによる異常判定とのいずれか一方を選択し、選択した時刻より後の運転データと、選択した時刻を含みこれより前の運転データとを比較して、(燃焼炉に関する状態量が)良くなっていたときだけ教師データとして(選択した方を)採用してもよい。
【0032】
なお、別実施形態として教師データを以下のように生成してもよい。
教師データ生成部32は、オペレータにより判定される異常判定(またはオペレータの介入操作)がない場合に、燃焼異常予測プログラムおよび/または異常回避手段予測プログラムの予測結果をそのまま教師データとしてもよい。
燃焼異常予測プログラムおよび/または異常回避手段予測プログラムの予測結果に基づく自動操作が適切であれば、オペレータは手動介入をする必要がなく、従って、燃焼異常予測プログラムおよび/または異常回避手段予測プログラムの予測結果が適切な(正しい)場合、データとして、この予測結果のみを教師データとして使用する。つまり、オペレータの介入操作がなければ、予測が正しいとしてそのまま教師データとして使用できる利点がある。
教師データ生成部32は、予測前または予測後の所定期間(例えば、数十秒から十数分間の範囲で設定されてもよい)にオペレータの手動介入がなければ、予測結果が正しいと判断し、教師データとして使用する。教師データ生成部32は、予測前または予測後の所定期間(例えば、数十秒から十数分間の範囲で設定されてもよい)にオペレータが手動介入を実施していれば、予測結果が間違えていると判断し、手動介入を教師データに使用する。
【0033】
再学習部331は、過去の所定期間(例えば、当日から30日前)の学習データと、過去の所定期間の教師データとを用いて燃焼異常予測プログラム、および/または、異常回避手段予測プログラムを所定の頻度(例えば、1日1回)で再学習(チューニング)する。本実施形態では、直近のデータを使用して毎日チューニングを行うことをリアルタイム学習と称する。また、教師データは
図3の方法で選択した教師データを用いる。チューニング時間は、短いほど好ましく、1時間以内、30分以内、10分が例示される。
第二記憶部341は、再学習部331で再学習された新たな燃焼異常予測プログラムおよび/または、異常回避手段予測プログラムを記憶する。第二記憶部341に記憶される過去のプログラムはそのまま記憶されていてもよく、所定のタイミングで削除されてもよい。第一記憶部34のプログラムも同様である。
異常予測部35は、再学習されるたびに生成された新たな燃焼異常予測プログラムおよび/または異常回避手段予測プログラムを用いて予測する。
【0034】
(予測結果の表示)
燃焼制御システム40は、ユーザインターフェースを有し、ユーザインターフェースは、オペレータにより判定された異常判定の入力を受け付ける異常判定入力部42と、オペレータによる介入操作の入力を受け付ける介入操作入力部43と、操作ログの表示に対応して、オペレータの判定理由(手動介入した操作項目を選択した理由)を入力する判定理由入力部44と、予測結果のデータを表示する表示装置45を有する。異常判定入力部42と介入操作入力部43の具体的な入力画面は省略する。
【0035】
図4は、燃焼異常予測プログラムおよび/または前記異常回避手段予測プログラムで予測された予測結果の一例を示す。
予測結果には、日時、異常の種類、優先度、操作項目、変更項目、増減の別、変化量、単位などが含まれる。
優先度は、異常回避手段を推奨するレベルを示す。
燃焼制御部49は、異常結果および/または異常回避手段に基づいて、ストーカ式焼却炉1の燃焼を制御する。
ここで、オペレータは、異常回避手段の内、一部の手段を選択して介入操作をしてもよく、各手段を0%から100%の重み付けをして介入操作してもよく、異常回避手段のいずれも介入操作に使用しなくともよい。オペレータの介入操作は、操作ログとして記録され、教師データとして使用される。
【0036】
図5は、操作ログの表示と、オペレータが選択した判定理由の入力画面の一例を示す。
No2において、「予測通り」にオペレータが介入操作をしたので、オペレータがチェック「■予測通り」をした。
No1において、「炉温低下」の異常があり、オペレータは「燃焼空気温度」を「増」とする介入操作を行ったので、オペレータがチェック「■炉温低下」をした。
オペレータの判定理由に、オペレータの「操作間違い」の項目が含まれている。「操作間違い」に係る手動介入操作は、リアルタイム学習に使用される教師データから除外するように構成される。
【0037】
(予測精度)
精度算出部46は、異常回避手段予測プログラムの予測結果と、オペレータにより判定された異常判定またはオペレータの介入操作とを比較し、予測結果の精度を算出する。
図6Aは、予測精度の算出方法について説明する一例である。燃焼異常予測プログラムおよび/または前記異常回避手段予測プログラムの予測結果と、オペレータの判定(異常判定、介入操作)とを以下のように対応づける。「正常」は、「異常判定または介入操作」をしていない状態である。
a: 予測結果が「異常」、オペレータの判定が「異常」
b: 予測結果が「異常」、オペレータの判定が「正常」
c: 予測結果が「正常」、オペレータの判定が「異常」
d: 予測結果が「正常」、オペレータの判定が「正常」
精度の評価指標として、正解率(全データの内、予測結果とオペレータの判定が一致したデータの割合)と再現率(オペレータの判定が異常だったデータの内、予測結果とオペレータの判定の両方が異常としたデータの割合)を使用する。
正解率=(a+d)/(a+b+c+d) (1)
再現率=a/(a+c) (2)
【0038】
本実施形態において、精度算出部46は、正解率および再現率を算出する。
図6Bは、実施形態1における予測精度の結果として、正解率および再現率を示す。正解率は97%以上であり、再現率は66%以上であった。
精度結果出力部47は、精度算出部46で算出された精度の結果(正解率、再現率)を出力(例えば、表示装置45に表示)する。
【0039】
(別実施形態)
データサーバ20を省略し、データサーバの機能を、燃焼異常予測装置30の記憶部、または燃焼制御システム40の記憶部で実現してもよい。
モデル生成部33は、異常予測プログラムおよび異常回避手段予測プログラムを生成したが、使用形態に応じていずれか一方を生成してもよい。
燃焼異常予測装置30が、別構成ではなく、燃焼制御システム40に組み込まれていてもよい。
燃焼制御システム40は、異常予測プログラムおよび異常回避手段予測プログラムをメモリに記憶し、異常予測部を有していてもよい。
燃焼異常予測装置30は、燃焼制御システム40の異常判定入力部、介入操作入力部、判定理由入力部、精度算出部、精度結果出力部、表示装置の機能を有していてもよい。
【0040】
(実施形態2)
燃焼制御システム40は、「異常予測」および/または「異常を回避するための手段」をオペレータに示し、オペレータがその手段を実行するか否かを判断する支援運転モードと、「異常を回避するための手段」を自動的に実行する完全自動運転モードと、「異常を回避するための手段」の内、一部の手段を実行するあるいは0%から100%の重み付けを設定して実行する部分運転モードを有し、いずれかの運転モードが選択可能に構成されている。
燃焼制御部49は、選択された運転モードに従って、ストーカ式焼却炉の燃焼を制御する。
【符号の説明】
【0041】
1 ストーカ式焼却炉
20 データサーバ
30 燃焼異常予測装置
31 学習データ生成部
32 教師データ生成部
33 モデル生成部
34 第一記憶部
331 再学習部
341 第二記憶部
35 異常予測部
36 予測結果出力部
40 燃焼制御システム
42 異常判定入力部
43 介入操作入力部
44 表示装置
45 精度算出部
46 精度結果出力部