(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/49 20070101AFI20240626BHJP
H02M 7/12 20060101ALI20240626BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240626BHJP
【FI】
H02M7/49
H02M7/12 D
H02M7/48 E
(21)【出願番号】P 2021160633
(22)【出願日】2021-09-30
【審査請求日】2023-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】吉野 輝雄
(72)【発明者】
【氏名】山川 智之
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-251933(JP,A)
【文献】特開平11-041931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/49
H02M 7/12
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数の変換器を有し、前記複数の変換器の動作により、交流電力から直流電力への変換及び直流電力から交流電力への変換の少なくとも一方の電力変換を行う主回路部と、
前記主回路部の動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記複数の変換器のそれぞれは、
ハーフブリッジ接続された一対のスイッチング素子と、
前記一対のスイッチング素子に並列に接続された電荷蓄積素子と、
を有し、
前記制御装置は、前記主回路部に前記電力変換を行わせるとともに、前記交流電力の周波数の基本波電流成分に、前記交流電力の周波数の2倍の周波数を有する第2調波電流成分を重畳させた電流を、前記複数の変換器に流すように、前記複数の変換器のそれぞれの前記一対のスイッチング素子のスイッチングを制御
し、
前記制御装置は、前記第2調波電流成分の正側のピーク位相が、前記第2調波電流成分の負側のピーク位相よりも前記基本波電流成分の負側のピーク位相に近付くように、前記第2調波電流成分の位相を設定し、
前記制御装置は、前記複数の変換器に流す前記電流に、前記交流電力の周波数の4倍の周波数を有する第4調波電流成分をさらに重畳させるとともに、前記第4調波電流成分の負側のピーク位相が、前記第4調波電流成分の正側のピーク位相よりも前記第2調波電流成分の正側のピーク位相に近付くように、前記第4調波電流成分の位相を設定し、
前記制御装置は、前記第4調波電流成分の振幅を前記第2調波電流成分の振幅よりも小さくする電力変換装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第2調波電流成分を重畳させた前記電流の大きさを、前記複数の変換器のそれぞれの前記一対のスイッチング素子の許容できる電流の大きさ以下とする請求項
1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第2調波電流成分の最大値を、前記主回路部の定格交流電流の40%以下とする
請求項2記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第2調波電流成分の振幅を、前記基本波電流成分の振幅に対し、単調増加関数とする
請求項1~3のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【請求項5】
直列に接続された複数の変換器を有し、前記複数の変換器の動作により、交流電力から直流電力への変換及び直流電力から交流電力への変換の少なくとも一方の電力変換を行う主回路部と、
前記主回路部の動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記複数の変換器のそれぞれは、
ハーフブリッジ接続された一対のスイッチング素子と、
前記一対のスイッチング素子に並列に接続された電荷蓄積素子と、
を有し、
前記制御装置は、前記主回路部に前記電力変換を行わせるとともに、前記交流電力の周波数の基本波電流成分に、前記交流電力の周波数の2倍の周波数を有する第2調波電流成分を重畳させた電流を、前記複数の変換器に流すように、前記複数の変換器のそれぞれの前記一対のスイッチング素子のスイッチングを制御し、
前記制御装置は、前記第2調波電流成分の負側のピーク位相が、前記第2調波電流成分の正側のピーク位相よりも前記基本波電流成分の正側のピーク位相に近付くように、前記第2調波電流成分の位相を設定す
る電力変換装置。
【請求項6】
直列に接続された複数の変換器を有し、前記複数の変換器の動作により、交流電力から直流電力への変換及び直流電力から交流電力への変換の少なくとも一方の電力変換を行う主回路部と、
前記主回路部の動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記複数の変換器のそれぞれは、
ハーフブリッジ接続された一対のスイッチング素子と、
前記一対のスイッチング素子に並列に接続された電荷蓄積素子と、
を有し、
前記制御装置は、前記主回路部に前記電力変換を行わせるとともに、前記交流電力の周波数の基本波電流成分に、前記交流電力の周波数の2倍の周波数を有する第2調波電流成分を重畳させた電流を、前記複数の変換器に流すように、前記複数の変換器のそれぞれの前記一対のスイッチング素子のスイッチングを制御し、
前記主回路部は、前記交流電力の入力及び前記交流電力の出力の少なくとも一方を行う交流端子を有し、
前記制御装置は、前記第2調波電流成分の振幅指令値と、前記第2調波電流成分の位相指令値と、前記第2調波電流成分の角周波数と、前記複数の変換器と前記交流端子との間のインダクタンス値と、を基に、前記第2調波電流成分の電圧基準を演算することにより、前記第2調波電流成分を重畳させた電流を、前記複数の変換器に流すように、前記複数の変換器のそれぞれの前記一対のスイッチング素子のスイッチングを制御す
る電力変換装置。
【請求項7】
直列に接続された複数の変換器を有し、前記複数の変換器の動作により、交流電力から直流電力への変換及び直流電力から交流電力への変換の少なくとも一方の電力変換を行う主回路部と、
前記主回路部の動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記複数の変換器のそれぞれは、
ハーフブリッジ接続された一対のスイッチング素子と、
前記一対のスイッチング素子に並列に接続された電荷蓄積素子と、
を有し、
前記制御装置は、前記主回路部に前記電力変換を行わせるとともに、前記交流電力の周波数の基本波電流成分に、前記交流電力の周波数の2倍の周波数を有する第2調波電流成分を重畳させた電流を、前記複数の変換器に流すように、前記複数の変換器のそれぞれの前記一対のスイッチング素子のスイッチングを制御し、
前記制御装置は、前記第2調波電流成分の振幅指令値と、前記第2調波電流成分の位相指令値と、前記第2調波電流成分の角周波数と、前記複数の変換器に流れる電流のフィードバック信号と、を基に、前記第2調波電流成分の電圧基準を演算することにより、前記第2調波電流成分を重畳させた電流を、前記複数の変換器に流すように、前記複数の変換器のそれぞれの前記一対のスイッチング素子のスイッチングを制御す
る電力変換装置。
【請求項8】
前記主回路部は、前記交流電力の入力及び前記交流電力の出力の少なくとも一方を行う交流端子を有し、
前記制御装置は、前記第4調波電流成分の振幅指令値と、前記第4調波電流成分の位相指令値と、前記第4調波電流成分の角周波数と、前記複数の変換器と前記交流端子との間のインダクタンス値と、を基に、前記第4調波電流成分の電圧基準を演算することにより、前記第4調波電流成分を重畳させた電流を、前記複数の変換器に流すように、前記複数の変換器のそれぞれの前記一対のスイッチング素子のスイッチングを制御する
請求項1記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記第4調波電流成分の振幅指令値と、前記第4調波電流成分の位相指令値と、前記第4調波電流成分の角周波数と、前記複数の変換器に流れる電流のフィードバック信号と、を基に、前記第4調波電流成分の電圧基準を演算することにより、前記第4調波電流成分を重畳させた電流を、前記複数の変換器に流すように、前記複数の変換器のそれぞれの前記一対のスイッチング素子のスイッチングを制御する
請求項1記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記交流電力は、三相交流電力であり、
前記制御装置は、三相を平衡させた前記第2調波電流成分を前記基本波電流成分に重畳させる
請求項1~7のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の変換器を直列に接続した電力変換装置がある。各変換器は、ハーフブリッジ接続された一対のスイッチング素子と、一対のスイッチング素子に対して並列に接続された電荷蓄積素子と、を有する。このような電力変換装置において、各スイッチング素子や電荷蓄積素子などの各変換器の用品の容量を低減できるようにすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、直列に接続された複数の変換器の用品の容量を低減できる電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、直列に接続された複数の変換器を有し、前記複数の変換器の動作により、交流電力から直流電力への変換及び直流電力から交流電力への変換の少なくとも一方の電力変換を行う主回路部と、前記主回路部の動作を制御する制御装置と、を備え、前記複数の変換器のそれぞれは、ハーフブリッジ接続された一対のスイッチング素子と、前記一対のスイッチング素子に並列に接続された電荷蓄積素子と、を有し、前記制御装置は、前記主回路部に前記電力変換を行わせるとともに、前記交流電力の周波数の基本波電流成分に、前記交流電力の周波数の2倍の周波数を有する第2調波電流成分を重畳させた電流を、前記複数の変換器に流すように、前記複数の変換器のそれぞれの前記一対のスイッチング素子のスイッチングを制御する電力変換装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
直列に接続された複数の変換器の用品の容量を低減できる電力変換装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態に係る制御装置を模式的に表すブロック図である。
【
図4】
図4(a)~
図4(d)は、主回路部の各部の電圧電流波形の一例を模式的に表すグラフである。
【
図5】主回路部の各部の電圧電流の一例を模式的に表すベクトル図である。
【
図6】
図6(a)~
図6(d)は、主回路部の各部の電圧電流波形の一例を模式的に表すグラフである。
【
図7】
図7(a)~
図7(d)は、主回路部の各部の電圧電流波形の一例を模式的に表すグラフである。
【
図8】
図8(a)~
図8(d)は、主回路部の各部の電圧電流波形の一例を模式的に表すグラフである。
【
図9】
図9(a)~
図9(d)は、主回路部の各部の電圧電流波形の一例を模式的に表すグラフである。
【
図10】
図10(a)~
図10(c)は、主回路部の各部の電圧電流波形の一例を模式的に表すグラフである。
【
図11】第2の実施形態に係る制御装置を模式的に表すブロック図である。
【
図12】
図12(a)~
図12(d)は、主回路部の各部の電圧電流波形の一例を模式的に表すグラフである。
【
図13】第3の実施形態に係る制御装置を模式的に表すブロック図である。
【
図14】第4の実施形態に係る制御装置を模式的に表すブロック図である。
【
図15】第5の実施形態に係る制御装置を模式的に表すブロック図である。
【
図16】
図16(a)及び
図16(b)は、第5の実施形態に係る制御装置の動作の一例を模式的に表すグラフである。
【0008】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図1に表したように、電力変換装置10は、主回路部12と、制御装置14と、を備える。電力変換装置10は、例えば、直流送電システムに用いられる。電力変換装置10は、直流送電システムにおいて、交流電力系統2及び一対の直流送電線3、4に接続される。
【0010】
直流送電システムは、例えば、変圧器6を有する。電力変換装置10の主回路部12は、変圧器6を介して交流電力系統2に接続される。交流電力系統2の交流電力は、三相交流電力である。より詳しくは、対称三相交流電力である。変圧器6は、交流電力系統2の三相交流電力を主回路部12に対応した交流電力に変換する。変圧器6は、三相変圧器である。変圧器6は、必要に応じて設けられ、省略可能である。主回路部12には、交流電力系統2の三相交流電力を直接供給してもよい。
【0011】
電力変換装置10は、交流電力系統2から供給された三相交流電力を直流電力に変換し、変換後の直流電力を直流送電線3、4に供給する。また、電力変換装置10は、直流送電線3、4から供給された直流電力を三相交流電力に変換し、変換後の三相交流電力を交流電力系統2に供給する。このように、電力変換装置10は、交流から直流への交直変換、及び、直流から交流への交直変換を行う。
【0012】
例えば、直流送電線3は、直流電力の高圧側の送電線であり、直流送電線4は、直流電力の低圧側の送電線である。電力変換装置10は、直流送電線3側が高圧、直流送電線4側が低圧となるように、変換後の直流電力を直流送電線3、4に出力する。
【0013】
主回路部12は、交流電力系統2と各直流送電線3、4との間に設けられる。主回路部12は、三相交流電力から直流電力への変換、及び、直流電力から三相交流電力への変換を行う。主回路部12は、例えば、直列に接続された複数の変換器を有するマルチレベル電力変換器である。主回路部12は、例えば、MMC(Modular Multilevel Converter)型の電力変換器である。MMC型の主回路部12は、直列に接続された複数の変換器を有する。各変換器は、ハーフブリッジ接続された一対のスイッチング素子と、各スイッチング素子に並列に接続された電荷蓄積素子と、を有する。主回路部12は、複数の変換器の動作により、電力の変換を行う。主回路部12は、例えば、複数の変換器の各スイッチング素子のスイッチングにより、交直変換を行う。
【0014】
制御装置14は、主回路部12に接続されている。制御装置14は、各スイッチング素子のオン・オフを制御することにより、主回路部12による三相交流電力から直流電力への変換、及び、直流電力から三相交流電力への変換を制御する。
【0015】
主回路部12は、第1及び第2の一対の直流端子20a、20bと、第1~第3の3つの交流端子21a~21cと、第1~第6の6つのアーム部22a~22fと、リアクトル23a~23fと、電流検出器24a~24fと、を有する。
【0016】
第1直流端子20aは、高圧側の直流送電線3に接続される。第2直流端子20bは、低圧側の直流送電線4に接続される。これにより、主回路部12によって変換された直流電力が直流送電線3、4に供給されるとともに、直流送電線3、4から供給された直流電力が主回路部12に入力される。
【0017】
第1アーム部22aは、第1直流端子20aとリアクトル23aとの間に接続される。リアクトル23aは、第1アーム部22aと交流出力端子21aとの間に接続される。リアクトル23bは、交流出力端子21aと第2アーム部22bとの間に接続される。第2アーム部22bは、リアクトル23bと第2直流端子20bとの間に接続される。第1アーム部22a、リアクトル23a、リアクトル23b、及び第2アーム部22bは、各直流端子20a、20bの間に直列に接続される。
【0018】
第3アーム部22cは、第1直流端子20aとリアクトル23cとの間に接続される。リアクトル23cは、第3アーム部22cと交流出力端子21bとの間に接続される。リアクトル23dは、交流出力端子21bと第4アーム部22dとの間に接続される。第4アーム部22dは、リアクトル23dと第2直流端子20bとの間に接続される。第3アーム部22c、リアクトル23c、リアクトル23d、及び第4アーム部22dは、各直流端子20a、20bの間に直列に接続される。第3アーム部22c、リアクトル23c、リアクトル23d、及び第4アーム部22dは、第1アーム部22a、リアクトル23a、リアクトル23b、及び第2アーム部22bに対して並列に接続される。
【0019】
第5アーム部22eは、第1直流端子20aとリアクトル23eとの間に接続される。リアクトル23eは、第5アーム部22eと交流出力端子21cとの間に接続される。リアクトル23fは、交流出力端子21cと第6アーム部22fとの間に接続される。第6アーム部22fは、リアクトル23fと第2直流端子20bとの間に接続される。第5アーム部22e、リアクトル23e、リアクトル23f、及び第6アーム部22fは、各直流端子20a、20bの間に直列に接続される。すなわち、第5アーム部22e、リアクトル23e、リアクトル23f、及び第6アーム部22fは、第1アーム部22a、リアクトル23a、リアクトル23b、及び第2アーム部22bに対して並列に接続されるとともに、第3アーム部22c、リアクトル23c、リアクトル23d、及び第4アーム部22dに対して並列に接続される。
【0020】
主回路部12では、第1アーム部22a、リアクトル23a、リアクトル23b、及び第2アーム部22bによって第1レグLG1が構成され、第3アーム部22c、リアクトル23c、リアクトル23d、及び第4アーム部22dによって第2レグLG2が構成され、第5アーム部22e、リアクトル23e、リアクトル23f、及び第6アーム部22fによって第3レグLG3が構成される。すなわち、この例において、主回路部12は、3レグ、6アームの三相インバータである。第1アーム部22a、第3アーム部22c及び第5アーム部22eは、上側アームである。第2アーム部22b、第4アーム部22d及び第6アーム部22fは、下側アームである。このように、主回路部12は、複数のスイッチング素子によって構成される複数のアーム部及び複数のレグを有する。主回路部12は、例えば、2レグ、4アームの単相インバータなどでもよい。アーム部及びレグの数は、上記に限ることなく、任意の数でよい。なお、各リアクトル23a~23fは、変圧器に置き換えてもよい。
【0021】
第1アーム部22aは、直列に接続された複数の変換器UP1、UP2…UPM1を有する。第2アーム部22bは、直列に接続された複数の変換器UN1、UN2…UNM2を有する。第3アーム部22cは、直列に接続された複数の変換器VP1、VP2…VPM3を有する。第4アーム部22dは、直列に接続された複数の変換器VN1、VN2…VNM4を有する。第5アーム部22eは、直列に接続された複数の変換器WP1、WP2…WPM5を有する。第6アーム部22fは、直列に接続された複数の変換器WN1、WN2…WNM6を有する。
【0022】
但し、以下では、各変換器UP1、UP2…UPM1、UN1、UN2…UNM2、VP1、VP2…VPM3、VN1、VN2…VNM4、WP1、WP2…WPM5、WN1、WN2…WNM6をまとめて呼称する場合に、「変換器CELL」と称す。
【0023】
各アーム部22a~22fにおいて、M1、M2、M3、M4、M5、M6は、直列接続された変換器CELLの台数を表す。各アーム部22a~22fにおいて、直列接続される変換器CELLの台数は、例えば、100台~120台程度である。但し、直列接続される変換器CELLの台数は、これに限ることなく、任意の台数でよい。
【0024】
各アーム部22a~22fに設けられる変換器CELLの台数は、実質的に同じである。例えば、多数の各変換器CELLが接続される場合には、主回路部12の動作に影響のない範囲において、各アーム部22a~22fに設けられる変換器CELLの台数が異なってもよい。例えば、1つのアーム部に100台の変換器CELLを直列に接続する場合、別のアーム部に設ける変換器CELLの台数は、1~2台異なってもよい。
【0025】
電流検出器24aは、第1アーム部22aに流れる電流を検出する。すなわち、電流検出器24aは、第1アーム部22aのアーム電流を検出する。電流検出器24aは、図示を省略した配線などを介して制御装置14に接続されている。電流検出器24aは、検出した第1アーム部22aの電流値を制御装置14に入力する。これにより、制御装置14には、第1アーム部22aの電流値が入力される。
【0026】
以下同様に、電流検出器24bは、第2アーム部22bに流れる電流を検出し、検出した電流値を制御装置14に入力する。電流検出器24cは、第3アーム部22cに流れる電流を検出し、検出した電流値を制御装置14に入力する。電流検出器24dは、第4アーム部22dに流れる電流を検出し、検出した電流値を制御装置14に入力する。電流検出器24eは、第5アーム部22eに流れる電流を検出し、検出した電流値を制御装置14に入力する。電流検出器24fは、第6アーム部22fに流れる電流を検出し、検出した電流値を制御装置14に入力する。
【0027】
電力変換装置10は、電圧検出部25と、電流検出部26と、電圧検出部27と、をさらに有する。電圧検出部25は、交流電力系統2の各相の交流電圧(相電圧)を検出し、検出値を制御装置14に入力する。電圧検出部25は、変圧器6の一次側に設けてもよいし、二次側に設けてもよい。
【0028】
電流検出部26は、交流電力系統2の各相の交流電流(線電流)を検出し、検出値を制御装置14に入力する。電流検出部26は、変圧器6の一次側に設けてもよいし、二次側に設けてもよい。
【0029】
電圧検出部27は、主回路部12の第1直流端子20aと第2直流端子20bとの間の直流電圧を検出する。換言すれば、電圧検出部27は、一対の直流送電線3、4の間の直流電圧を検出する。電圧検出部27は、直流電圧の検出値を制御装置14に入力する。
【0030】
主回路部12では、リアクトル23aとリアクトル23bとの接続点、リアクトル23cとリアクトル23dとの接続点、及び、リアクトル23eとリアクトル23fとの接続点のそれぞれが、交流出力点となる。
【0031】
第1交流端子21aは、リアクトル23aとリアクトル23bとの接続点に接続される。第2交流端子21bは、リアクトル23cとリアクトル23dとの接続点に接続される。第3交流端子21cは、リアクトル23eとリアクトル23fとの接続点に接続される。各交流端子21a~21cは、例えば、変圧器6に接続される。
【0032】
第1交流端子21aは、三相交流電力の交流電力系統2の1つの相に対応する。第2交流端子21bは、三相交流電力の交流電力系統2の第1交流端子21aに対応する相と異なる1つの相に対応する。第3交流端子21cは、三相交流電力の交流電力系統2の第1交流端子21a及び第2交流端子21bに対応する相と異なる1つの相に対応する。
【0033】
以下では、第1交流端子21aに対応する交流電力系統2の相を便宜的にU相と称す。第2交流端子21bに対応する交流電力系統2の相を便宜的にV相と称す。第3交流端子21cに対応する交流電力系統2の相を便宜的にW相と称す。
【0034】
各変換器CELLは、例えば、信号線28を介して制御装置14と接続される。制御装置14は、信号線28を介して変換器CELLに制御信号を入力することにより、変換器CELLの動作を制御する。また、変換器CELLは、例えば、変換器CELLの制御及び動作保護に関する制御信号や保護信号を図示されていない別の信号線を介して制御装置14に入力する。なお、制御装置14と各変換器CELLとの間の通信方式は、上記に限定されるものではない。例えば、直列に接続された複数の変換器CELLをデイジーチェーン接続し、制御装置14は、デイジーチェーン接続された一端の変換器CELL及び他端の変換器CELLのみと通信を行ってもよい。制御装置14と各変換器CELLとの間の通信方式は、制御装置14と各変換器CELLとの間で適切に通信を行うことができる任意の通信方式でよい。
【0035】
図2は、変換器を模式的に表すブロック図である。
図2に表したように、変換器CELLは、一対のスイッチング素子41、42と、一対の整流素子51、52と、一対の駆動回路61、62と、一対の接続端子71、72と、電荷蓄積素子74と、制御回路80と、を有する。
【0036】
各スイッチング素子41、42は、一対の主端子と、制御端子と、を有する。制御端子は、一対の主端子間に流れる電流を制御する。各スイッチング素子41、42には、例えば、IGBTなどの自己消弧素子が用いられる。一対の主端子は、例えば、エミッタ及びコレクタであり、制御端子は、例えば、ゲートである。
【0037】
各スイッチング素子41、42は、一対の主端子間に電流を流せるようにするオン状態と、一対の主端子間に流れる電流を遮断するオフ状態と、を切り替える。オフ状態は、一対の主端子間に完全に電流が流れない状態に限ることなく、例えば、変換器CELLの動作に影響の無い程度の微弱な電流が一対の主端子間に流れる状態でもよい。オフ状態は、換言すれば、一対の主端子間に流れる電流を十分に小さくした状態である。
【0038】
各スイッチング素子41、42には、例えば、ノーマリオフ型の半導体素子が用いられる。各スイッチング素子41、42は、制御端子の電圧が高い状態においてオン状態となり、制御端子の電圧が低い状態においてオフ状態となる。各スイッチング素子41、42は、制御端子の電圧がオン状態よりも低い状態において、オフ状態となる。各スイッチング素子41、42は、例えば、制御端子に正電圧を印加した際にオン状態となり、制御端子の電圧を0Vに設定した際又は制御端子に負電圧を印加した際にオフ状態となる。
【0039】
スイッチング素子42の一対の主端子は、スイッチング素子41の一対の主端子に対して直列に接続される。変換器CELLは、直列に接続された一対のスイッチング素子41、42を有する。変換器CELLは、ハーフブリッジ構成の変換器である。
【0040】
整流素子51は、スイッチング素子41の一対の主端子に対して逆並列に接続されている。整流素子51の順方向は、スイッチング素子41の一対の主端子間に流れる電流の向きに対して逆向きである。同様に、整流素子52は、スイッチング素子42の一対の主端子に対して逆並列に接続されている。整流素子51、52は、いわゆる還流ダイオードである。
【0041】
接続端子71は、スイッチング素子41とスイッチング素子42との間に接続される。接続端子72は、スイッチング素子41のスイッチング素子42に接続された主端子と反対側の主端子に接続される。
【0042】
同一アーム部内の複数の変換器CELLは、一対の接続端子71、72を介して直列に接続される。変換器CELLに対する電力の供給は、各接続端子71、72を介して行われる。スイッチング素子41は、いわゆるローサイドスイッチであり、スイッチング素子42は、いわゆるハイサイドスイッチである。
【0043】
制御回路80は、信号線28を介して制御装置14に接続されている。制御装置14は、各スイッチング素子41、42のオン・オフを制御するための制御信号を信号線28を介して制御回路80に送信する。制御回路80は、入力された制御信号に基づいて、各スイッチング素子41、42のオン・オフを切り替えるための駆動信号を駆動回路61、62に入力する。
【0044】
駆動回路61は、スイッチング素子41の制御端子に接続されている。駆動回路62は、スイッチング素子42の制御端子に接続されている。駆動回路61、62は、制御回路80から入力された駆動信号に基づいて、各スイッチング素子41、42のオン・オフを切り替える。これにより、制御装置14からの制御信号に応じて、各スイッチング素子41、42のオン・オフが制御される。制御装置14は、各変換器CELL毎に制御信号を生成し、各変換器CELLのそれぞれの各スイッチング素子41、42のオン・オフを制御する。これにより、制御装置14は、主回路部12による電力の変換を制御する。
【0045】
なお、駆動回路61、62及び制御回路80の構成は、上記に限ることなく、各スイッチング素子41、42のオン・オフを制御可能な任意の構成でよい。例えば、制御装置14からの制御信号を駆動回路61、62に直接的に入力してもよい。この場合、制御回路80は、省略可能である。
【0046】
電荷蓄積素子74は、スイッチング素子41及びスイッチング素子42に対して並列に接続される。電荷蓄積素子74は、例えば、コンデンサである。制御回路80は、例えば、電荷蓄積素子74の電圧を測定し、測定した電荷蓄積素子74の電圧値を制御装置14に送信する。
【0047】
スイッチング素子41がオフ状態で、スイッチング素子42がオン状態の時には、電荷蓄積素子74の電圧が各接続端子71、72間に現れる。スイッチング素子41がオン状態で、スイッチング素子42がオフ状態の時には、各接続端子71、72間が導通し、各接続端子71、72間の電圧は、実質的にゼロになる。
【0048】
このように、変換器CELLは、制御装置14からの制御信号に基づく各スイッチング素子41、42のスイッチングにより、電荷蓄積素子74の電圧を各接続端子71、72間に出力する出力状態と、各接続端子71、72間を導通させたバイパス状態と、各スイッチング素子41、42をオフ状態とした停止状態と、を切り替える。
【0049】
各アーム部22a~22fにおいては、出力状態となった変換器CELLの合計の電圧が、各アーム部22a~22fの電圧となる。主回路部12及び制御装置14は、出力状態とする変換器CELLの台数を制御することにより、マルチレベルの電力変換を行う。
【0050】
各スイッチング素子41、42がともにオフ状態の時(変換器CELLが停止状態の時)には、アーム電流の向きによって各接続端子71、72間の電圧が決まる。例えば、接続端子72から接続端子71に向かう向きにアーム電流が流れている時には、整流素子51がオンし、各接続端子71、72間の電圧は、実質的にゼロになる。反対に、接続端子71から接続端子72に向かう向きにアーム電流が流れている時には、整流素子52がオンし、電荷蓄積素子74が充電され、各接続端子71、72間には、電荷蓄積素子74の電圧が現れる。
【0051】
図3は、第1の実施形態に係る制御装置を模式的に表すブロック図である。
図3に表したように、制御装置14は、位相検出回路100と、dq変換回路102と、交流電流指令値作成回路104と、減算器106、108と、制御関数演算器110、112と、dq逆変換回路114と、第2調波振幅作成回路116と、第2調波位相作成回路118と、係数演算器120と、余弦信号発生回路122、124、126と、減算器128、130、132と、係数演算器134と、減算器136と、加算器138と、減算器140と、加算器142と、減算器144と、加算器146と、変換器選択回路148、150、152、154、156、158と、を有する。
【0052】
制御装置14は、電圧検出部25から入力された交流電力系統2の交流電圧フィードバック信号Vufb、Vvfb、Vwfbを位相検出回路100に入力する。位相検出回路100は、入力された交流電圧フィードバック信号Vufb、Vvfb、Vwfbを基に、交流電力系統2の交流電圧に同期した位相信号θ(ωt)を演算する。位相検出回路100は、例えば、PLL(Phase-Locked-Loop)の演算を用いることにより、交流電圧フィードバック信号Vufb、Vvfb、Vwfbから位相信号θ(ωt)を演算する。
【0053】
制御装置14は、電流検出部26から入力された交流電力系統2の交流電流フィードバック信号Iufb、Ivfb、Iwfbをdq変換回路102に入力する。位相検出回路100は、演算した位相信号θをdq変換回路102に入力する。
【0054】
dq変換回路102は、三相の交流電流フィードバック信号Iufb、Ivfb、Iwfbを二相の電流信号に変換する。また、dq変換回路102は、変換後の二相の電流信号に対し、位相信号θを用いてdq変換を行うことにより、交流電圧と平行なp軸成分の電流信号Ip(有効分)と、交流電圧に対して垂直なq軸成分の電流信号Iq(無効分)と、を直流信号として演算する。
【0055】
制御装置14は、出力したい交流電流の振幅指令値Iacと、位相指令値φと、を交流電流指令値作成回路104に入力する。振幅指令値Iac及び位相指令値φは、予め制御装置14に設定してもよいし、制御装置14に設けられた操作部などを介して入力できるようにしてもよいし、ネットワークを介して上位のコントローラなどの外部機器から制御装置14に入力してもよい。制御装置14及び交流電流指令値作成回路104に対する振幅指令値Iac及び位相指令値φの入力方法は、振幅指令値Iac及び位相指令値φを適切に入力可能な任意の方法でよい。
【0056】
交流電流指令値作成回路104は、入力された振幅指令値Iac及び位相指令値φからp軸の電流基準Iprefと、q軸の電流基準Iqrefと、を演算する。交流電流指令値作成回路104は、例えば、次の計算により、p軸の電流基準Iprefと、q軸の電流基準Iqrefと、を演算する。
Ipref=Iac×cosφ
Iqref=Iac×sinφ
【0057】
dq変換回路102は、演算したp軸成分の電流信号Ipを減算器106に入力する。交流電流指令値作成回路104は、演算したp軸の電流基準Iprefを減算器106に入力する。減算器106は、フィードバック信号から求めたp軸成分の電流信号Ipと、p軸の電流基準Iprefと、の誤差(差分)を演算する。減算器106は、演算した誤差を制御関数演算器110に入力する。
【0058】
dq変換回路102は、演算したq軸成分の電流信号Iqを減算器108に入力する。交流電流指令値作成回路104は、演算したq軸の電流基準Iqrefを減算器108に入力する。減算器108は、フィードバック信号から求めたq軸成分の電流信号Iqと、q軸の電流基準Iqrefと、の誤差(差分)を演算する。減算器108は、演算した誤差を制御関数演算器112に入力する。
【0059】
制御関数演算器110は、入力された誤差を基に、p軸成分の電流信号Ipをp軸の電流基準Iprefに近付けるためのp軸の電圧基準Vprefを演算する。制御関数演算器110は、例えば、比例積分の演算により、入力された誤差からp軸の電圧基準Vprefを演算する。換言すれば、制御関数演算器110は、例えば、誤差増幅により、入力された誤差からp軸の電圧基準Vprefを演算する。制御関数演算器110による電圧基準Vprefの演算方法は、例えば、比例演算や比例積分微分の演算などでもよい。制御関数演算器110による電圧基準Vprefの演算方法は、誤差を基に電圧基準Vprefを適切に演算することができる任意の方法でよい。
【0060】
制御関数演算器112は、入力された誤差を基に、q軸成分の電流信号Iqをq軸の電流基準Iqrefに近付けるためのq軸の電圧基準Vqrefを演算する。制御関数演算器112は、例えば、比例積分の演算により、入力された誤差からq軸の電圧基準Vqrefを演算する。制御関数演算器110と同様に、制御関数演算器112による電圧基準Vqrefの演算方法は、誤差を基に電圧基準Vqrefを適切に演算することができる任意の方法でよい。
【0061】
位相検出回路100は、演算した位相信号θをdq変換回路102に入力するとともに、dq逆変換回路114にも入力する。制御関数演算器110は、演算したp軸の電圧基準Vprefをdq逆変換回路114に入力する。制御関数演算器112は、演算したq軸の電圧基準Vqrefをdq逆変換回路114に入力する。
【0062】
dq逆変換回路114は、入力されたp軸の電圧基準Vpref及びq軸の電圧基準Vqrefに対し、位相信号θを用いてdq逆変換を行うことにより、三相のそれぞれの瞬時値の交流電圧基準信号Vuref、Vvref、Vwrefを演算する。
【0063】
制御装置14は、出力したい交流電流の振幅指令値Iacを第2調波振幅作成回路116に入力する。第2調波振幅作成回路116は、入力された振幅指令値Iacを基に、交流電力系統2の交流電流の2倍の周波数を有する第2調波の振幅指令値I2pを演算する。
【0064】
第2調波振幅作成回路116は、例えば、振幅指令値Iacに対して所定の係数を乗算することにより、振幅指令値Iacから第2調波の振幅指令値I2pを演算する。制御装置14は、第2調波電流成分の振幅を、基本波電流成分の振幅に対し、単調増加関数とする。第2調波振幅作成回路116による振幅指令値I2pの演算方法は、例えば、振幅指令値Iacに応じて係数を変化させる非線形の演算方法などでもよい。第2調波振幅作成回路116による振幅指令値I2pの演算方法は、振幅指令値Iacから第2調波の振幅指令値I2pを適切に演算することができる任意の方法でよい。
【0065】
制御装置14は、出力したい交流電流の位相指令値φを第2調波位相作成回路118に入力する。第2調波位相作成回路118は、入力された位相指令値φを基に、交流電力系統2の交流電流の2倍の周波数を有する第2調波の位相指令値φ2を演算する。第2調波位相作成回路118は、例えば、位相指令値φに対して所定の係数を乗算することにより、位相指令値φから第2調波の位相指令値φ2を演算する。第2調波位相作成回路118は、例えば、1に近い係数を位相指令値φに乗算したものにバイアスを加えるような演算をして、第2調波の位相指令値φ2を得てもよい。第2調波位相作成回路118による位相指令値φ2の演算方法は、位相指令値φから第2調波の位相指令値φ2を適切に演算することができる任意の方法でよい。
【0066】
係数演算器120は、位相検出回路100によって演算された位相信号θに係数2を乗算することにより、位相信号θの2倍の角周波数2ωtを演算する。
【0067】
第2調波振幅作成回路116は、演算した振幅指令値I2pを余弦信号発生回路122、124、126に入力する。第2調波位相作成回路118は、演算した位相指令値φ2を余弦信号発生回路122、124、126に入力する。係数演算器120は、演算した角周波数2ωtを余弦信号発生回路122、124、126に入力する。
【0068】
余弦信号発生回路122は、入力された振幅指令値I2p、位相指令値φ2、及び角周波数2ωtを基に、第2調波電流を主回路部12に流すための第2調波出力電圧変調信号V2urefを演算する。
【0069】
例えば、U相の上側アームである第1アーム部22aのリアクトル23aの両端に現れる第2調波成分の電圧ΔV2は、次の(1)式で表すことができる。なお、(1)式において、Lは、リアクトル23aのインダクタンスであり、Iupは、第1アーム部22aに流れるアーム電流である。
【数1】
【0070】
(1)式で表したように、第2調波成分の電圧ΔV2は、振幅指令値I2p、位相指令値φ2、及び角周波数2ωtを余弦波関数に入力して演算した余弦波に、2倍の角周波数2ω及びリアクトル23aのインダクタンスLを乗算することによって演算することができる。U相の下側アームである第2アーム部22bのリアクトル23bの両端に現れる第2調波成分の電圧も同様に演算することができる。余弦信号発生回路122は、このように演算される第2調波成分の電圧ΔV2を、第2調波出力電圧変調信号V2urefとして演算する。
【0071】
第2調波成分の電圧ΔV2(第2調波出力電圧変調信号V2uref)は、換言すれば、重畳したい第2調波成分電流信号の時間微分に比例した信号(dIup/dt)と、各変換器CELLに接続されるリアクトルのインピーダンスに比例した信号(L)と、を乗算して得た電圧補正信号である。
【0072】
同様に、余弦信号発生回路124は、入力された振幅指令値I2p、位相指令値φ2、及び角周波数2ωtを基に、第2調波電流を主回路部12に流すための第2調波出力電圧変調信号V2vrefを演算する。余弦信号発生回路126は、入力された振幅指令値I2p、位相指令値φ2、及び角周波数2ωtを基に、第2調波電流を主回路部12に流すための第2調波出力電圧変調信号V2wrefを演算する。
【0073】
また、この際、余弦信号発生回路124は、余弦信号発生回路122の演算する余弦波の位相に対し、演算する余弦波の位相を120°(2π/3)シフトさせる。余弦信号発生回路126は、余弦信号発生回路124の演算する余弦波の位相に対し、演算する余弦波の位相を120°シフトさせる。換言すれば、余弦信号発生回路126は、余弦信号発生回路122の演算する余弦波の位相に対し、演算する余弦波の位相を240°(4π/3)シフトさせる。
【0074】
このように、余弦信号発生回路122、124、126は、U相、V相、W相のそれぞれに対応する第2調波出力電圧変調信号V2uref、V2vref、V2wrefの余弦波の位相を120°ずつシフトさせて演算する。すなわち、余弦信号発生回路122、124、126は、第2調波電流成分が平衡した状態で主回路部12に流れるように第2調波出力電圧変調信号V2uref、V2vref、V2wrefを演算する。
【0075】
これにより、各直流端子20a、20bに接続される各直流送電線3、4上においては、三相の第2調波電流成分の和を実質的に0にすることができ、第2調波電流成分が、直流電流に影響を与えてしまうことを抑制することができる。同様に、第2調波電流成分が、交流電力系統2の交流電流に影響を与えてしまうことも抑制することができる。余弦信号発生回路122、124、126は、例えば、第2調波電流成分が主回路部12内の各アーム部22a~22f内を循環する循環電流となるように、第2調波出力電圧変調信号V2uref、V2vref、V2wrefを演算する。
【0076】
dq逆変換回路114は、演算した交流電圧基準信号Vurefを減算器128に入力し、演算した交流電圧基準信号Vvrefを減算器130に入力し、演算した交流電圧基準信号Vwrefを減算器132に入力する。
【0077】
余弦信号発生回路122は、演算した第2調波出力電圧変調信号V2urefを減算器128に入力する。余弦信号発生回路124は、演算した第2調波出力電圧変調信号V2vrefを減算器130に入力する。余弦信号発生回路126は、演算した第2調波出力電圧変調信号V2wrefを減算器132に入力する。
【0078】
減算器128は、基本波交流電流に対応する交流電圧基準信号Vurefから第2調波電流に対応する第2調波出力電圧変調信号V2urefを減算する。これにより、基本波の交流電圧基準信号Vurefに第2調波出力電圧変調信号V2urefを重畳させ、第2調波電流成分を生じさせることができる。
【0079】
同様に、減算器130は、基本波交流電流に対応する交流電圧基準信号Vvrefから第2調波電流に対応する第2調波出力電圧変調信号V2vrefを減算する。減算器132は、基本波交流電流に対応する交流電圧基準信号Vwrefから第2調波電流に対応する第2調波出力電圧変調信号V2wrefを減算する。
【0080】
制御装置14は、電圧検出部27から入力された一対の直流送電線3、4の間の直流電圧Vdの検出値を係数演算器134に入力する。係数演算器134は、入力された直流電圧Vdに係数1/2を乗算することにより、Vd/2を演算する。係数演算器134は、演算したVd/2を減算器136、加算器138、減算器140、加算器142、減算器144、加算器146のそれぞれに入力する。
【0081】
減算器128は、減算結果を減算器136及び加算器138に入力する。減算器130は、減算結果を減算器140及び加算器142に入力する。減算器132は、減算結果を減算器144及び加算器146に入力する。
【0082】
減算器136は、直流電圧Vdの1/2から減算器128の減算結果を減算することにより、第1アーム部22a(U相上アーム)のアーム電圧基準信号Vuprefを演算し、演算したアーム電圧基準信号Vuprefを変換器選択回路148に入力する。
【0083】
加算器138は、直流電圧Vdの1/2に減算器128の減算結果を加算することにより、第2アーム部22b(U相下アーム)のアーム電圧基準信号Vunrefを演算し、演算したアーム電圧基準信号Vunrefを変換器選択回路150に入力する。
【0084】
減算器140は、直流電圧Vdの1/2から減算器130の減算結果を減算することにより、第3アーム部22c(V相上アーム)のアーム電圧基準信号Vvprefを演算し、演算したアーム電圧基準信号Vvprefを変換器選択回路152に入力する。
【0085】
加算器142は、直流電圧Vdの1/2に減算器130の減算結果を加算することにより、第4アーム部22d(V相下アーム)のアーム電圧基準信号Vvnrefを演算し、演算したアーム電圧基準信号Vvnrefを変換器選択回路154に入力する。
【0086】
減算器144は、直流電圧Vdの1/2から減算器132の減算結果を減算することにより、第5アーム部22e(W相上アーム)のアーム電圧基準信号Vwprefを演算し、演算したアーム電圧基準信号Vwprefを変換器選択回路156に入力する。
【0087】
加算器146は、直流電圧Vdの1/2に減算器132の減算結果を加算することにより、第6アーム部22f(w相下アーム)のアーム電圧基準信号Vwnrefを演算し、演算したアーム電圧基準信号Vwnrefを変換器選択回路158に入力する。
【0088】
制御装置14は、第1アーム部22aの各変換器CELLから入力された電荷蓄積素子74の直流電圧フィードバック信号を変換器選択回路148に入力する。変換器選択回路148は、各変換器CELLの直流電圧フィードバック信号及びアーム電圧基準信号Vuprefを基に、出力状態とする変換器CELLの選択を行う。そして、変換器選択回路148は、選択した変換器CELLを出力状態とし、残りの変換器CELLをバイパス状態とするように、第1アーム部22aの各変換器CELLの制御信号を生成し、生成した各制御信号を第1アーム部22aの各変換器CELLに送信する。
【0089】
同様に、変換器選択回路150は、第2アーム部22bの各変換器CELLの直流電圧フィードバック信号及びアーム電圧基準信号Vunrefを基に、出力状態とする変換器CELLの選択を行い、選択結果に応じた制御信号を第2アーム部22bの各変換器CELLに送信する。
【0090】
変換器選択回路152は、第3アーム部22cの各変換器CELLの直流電圧フィードバック信号及びアーム電圧基準信号Vvprefを基に、出力状態とする変換器CELLの選択を行い、選択結果に応じた制御信号を第3アーム部22cの各変換器CELLに送信する。
【0091】
変換器選択回路154は、第4アーム部22dの各変換器CELLの直流電圧フィードバック信号及びアーム電圧基準信号Vvnrefを基に、出力状態とする変換器CELLの選択を行い、選択結果に応じた制御信号を第4アーム部22dの各変換器CELLに送信する。
【0092】
変換器選択回路156は、第5アーム部22eの各変換器CELLの直流電圧フィードバック信号及びアーム電圧基準信号Vwprefを基に、出力状態とする変換器CELLの選択を行い、選択結果に応じた制御信号を第5アーム部22eの各変換器CELLに送信する。
【0093】
変換器選択回路158は、第6アーム部22fの各変換器CELLの直流電圧フィードバック信号及びアーム電圧基準信号Vwnrefを基に、出力状態とする変換器CELLの選択を行い、選択結果に応じた制御信号を第6アーム部22fの各変換器CELLに送信する。
【0094】
これにより、制御装置14によって主回路部12の各変換器CELLの動作を制御することができる。振幅指令値Iac及び位相指令値φに応じた交流電流を主回路部12から出力することができる。さらに、第2調波の振幅指令値I2p及び位相指令値φ2に応じた第2調波電流を主回路部12の各アーム部22a~22fに流すことができる。
【0095】
このように、制御装置14は、第2調波電流成分の振幅指令値I2pと、第2調波電流成分の位相指令値φ2と、第2調波電流成分の角周波数2ωtと、リアクトル23a~23fのインダクタンスL(複数の変換器CELLと交流端子21a~21cとの間のインダクタンス値)と、を基に、第2調波電流成分の電圧基準(第2調波出力電圧変調信号V2uref、V2vref、V2wref)を演算することにより、第2調波電流成分を重畳させた電流を、複数の変換器CELLに流すように、複数の変換器CELLのそれぞれの一対のスイッチング素子41、42のスイッチングを制御する。換言すれば、制御装置14は、第2調波の振幅指令値I2p及び位相指令値φ2に基づくオープンループ制御によって、アーム電流への第2調波電流成分の重畳を制御する。
【0096】
図4(a)~
図4(d)は、主回路部の各部の電圧電流波形の一例を模式的に表すグラフである。
図4(a)は、交流電力系統2の各相の交流電圧(相電圧)の一例を模式的に表す。
図4(a)は、換言すれば、主回路部12の各交流端子21a~21cの交流電圧の一例を模式的に表す。
図4(b)は、交流電力系統2の各相の交流電流(線電流)の一例を模式的に表す。
図4(b)は、換言すれば、主回路部12の各交流端子21a~21cの交流電流の一例を模式的に表す。
図4(c)は、主回路部12の各アーム部22a~22fの電圧(アーム電圧)の一例を模式的に表す。
図4(c)は、より詳しくは、各アーム部22a~22fにおいて直列に接続された複数の変換器CELLの出力する電圧の一例を表す。
図4(c)は、各リアクトル23a~23fの電圧を含まない。
図4(d)は、主回路部12の各アーム部22a~22fの電流(アーム電流)の一例を模式的に表す。
図4(d)は、より詳しくは、各アーム部22a~22fにおいて直列に接続された複数の変換器CELLに流れる電流の一例を表す。
【0097】
なお、
図4(a)及び
図4(b)では、交流電力系統2の各相の交流電圧及び交流電流に位相差が無い状態(有効電力のみを出力している状態)を模式的に表している。また、
図4(c)及び
図4(d)では、便宜的に、第2調波電流を重畳していない状態(基本波成分のみの状態)におけるアーム電圧及びアーム電流を模式的に表している。
【0098】
図4(a)及び
図4(b)に表したように、交流電力系統2の各相の交流電圧Vu、Vv、Vw、及び交流電力系統2の各相の交流電流Iu、Iv、Iwは、電気角で120°ずつずれた波形となる。
【0099】
図4(c)に表したように、主回路部12の各アーム部22a~22fのアーム電圧(端子間電圧)Vup、Vun、Vvp、Vvn、Vwp、Vwnは、直流送電線3、4の間の直流電圧Vdの1/2の直流電圧と各交流端子21a~21cの交流電圧とが重畳した波形となる。また、上アームと下アームとでは、交流成分の位相が反転する。
【0100】
図4(d)に表したように、各アーム部22a~22fに流れるアーム電流Iup、Iun、Ivp、Ivn、Iwp、Iwnは、直流送電線3、4の間の直流電流Idの1/3の直流電流と各交流端子21a~21cの交流電流の1/2とが重畳した波形となる。上アームと下アームとでは、交流成分の位相が反転する。
【0101】
図5は、主回路部の各部の電圧電流の一例を模式的に表すベクトル図である。
図5は、主回路部12から交流電流を出力している状況でのベクトル図の一例を模式的に表す。
図5では、U相の電圧、電流で説明する。V相及びW相についても、U相と同様である。
【0102】
図5に表したように、主回路部12のアーム電圧中の交流電圧成分は、リアクトル23a~23fに流れる交流電流成分により発生する電圧を交流電圧に加算したものになる。交流電流を上下アームで半分ずつ分担するので、1つのリアクトルに流れる交流電流は、主回路部12の出力の1/2となる。従って、U相のリアクトル23a、23bに流れる交流電流は、(1/2)Iuとなる。
【0103】
さらに、リアクトルの電圧位相は、電流位相に対して90°進んだものになるので、リアクトルの電圧VLは、図中の計算式で表すことができる。従って、各変換器CELLとして出力すべき交流電圧成分は、VuとVLとを加算したVuacとなる。
【0104】
各アーム部22a~22fの発生すべき電圧は、この電圧Vuacと直流送電線3、4の間の直流電圧Vdの1/2から計算される。
【0105】
U相上アームである第1アーム部22aの所定の時刻tにおける電圧Vup(t)は、次の(2)式で表すことができる。
【数2】
【0106】
U相下アームである第2アーム部22bの所定の時刻tにおける電圧Vun(t)は、次の(3)式で表すことができる。
【数3】
【0107】
U相上アームである第1アーム部22aの所定の時刻tにおける電流Iup(t)は、次の(4)式で表すことができる。
【数4】
【0108】
U相下アームである第2アーム部22bの所定の時刻tにおける電流Iun(t)は、次の(5)式で表すことができる。
【数5】
【0109】
実際には、リアクトル電圧VLは、交流電圧に対して小さいので、交流系統電圧と変換器交流電圧は、同程度の電圧となる。V相の電圧及び電流は、(2)~(4)式の位相を120°ずらすことで計算することができる。W相の電圧及び電流は、(2)~(4)式の位相を240°ずらすことで計算することができる。
【0110】
次に、第1アーム部22a(U相上アーム)を例に、各変換器CELLの電荷蓄積素子74に流れる電流の平均値、及び各変換器CELLの電荷蓄積素子74の電圧の変動について説明する。他の相に対応する第3アーム部22c(V相上アーム)及び第5アーム部22e(W相上アーム)の動作も、第1アーム部22aの動作と同様である。
【0111】
第1アーム部22aは、U相の交流電圧Vuに等しい交流成分の電圧を出力するため、第1アーム部22aを構成するNttl台の変換器CELLのうち、N台の変換器CELLから直流電圧を出力させる。具体的には、変換器CELL内の上側のスイッチング素子42をオン状態にすることで、変換器CELLの電荷蓄積素子74の電圧を接続端子71と接続端子72との間に出力する。換言すれば、第1アーム部22aは、U相の交流電圧Vuに応じたN台の変換器CELLを出力状態に切り替える。なお、第1アーム部22aの変換器CELLの総数Nttlは、
図1に関して説明した変換器CELLの直列接続数M
1と同じである。
【0112】
Nの計算は、例えば、次のように行う。変換器CELLの電荷蓄積素子74の電圧をVc、所定の時刻tにおけるU相の交流電圧をVu(t)とすれば、所定の時刻tにおいて必要となる変換器CELLの台数N(t)は、次式で表すことができる。
N(t)≒Vu(t)/Vc
【0113】
U相の交流電圧Vuは時間的に変化するので、変換器CELLの台数Nも時間的に変化する。また、直流送電線3、4間の直流電圧Vd、第1アーム部22aの変換器CELLの総数Nttl、電荷蓄積素子74の電圧Vcの関係は、次式で表すことができる。
Vd≒Nttl×Vc
この関係を使うと、次式を得ることができる。
N(t)≒(Vu(t)/Vd)×Nttl
【0114】
ここで、変換器CELLの総数Nttlに対するN(t)の比率をm(t)とすると、m(t)は、次式で表すことができる。
m(t)≒N(t)/Nttl
この関係を使うと、次式を得ることができる。
m(t)≒Vu(t)/Vd
従って、出力すべき交流電圧Vuと直流電圧VdからN(t)を計算することができる。m(t)は、PWM制御の場合の参照信号に相当するものと考えられるので、以降、参照信号m(t)と呼ぶこととする。
【0115】
変換器選択回路148は、アーム内の複数台の変換器CELLの電荷蓄積素子74の直流電圧を一定に保つための制御機能を有し、電荷蓄積素子74の直流電圧が低いものから優先的に上側のスイッチング素子42をオン状態にするという制御を行う。そのような制御を行った場合、参照信号m(t)は、ある短い時間の区間内Tに、ある一つの変換器CELLの上側のスイッチング素子42がオン状態になっている期間Δtの割合を示すとも考えられる。つまり、m(t)≒Δt/Tと考えられる。以下にその理由を示す。
【0116】
区間Tでのアーム電圧Vu(t)を出力するためには、N(t)台の変換器CELLの上側のスイッチング素子42をオン状態にするが、ある瞬間にN(t)台の変換器CELLがそのような状態になれば良く、上側のスイッチング素子42がオン状態になる変換器CELLは、区間Tの間で入れ替わっても良い。
【0117】
上側のスイッチング素子42をオン状態にする期間Δtは、下側のスイッチング素子41はオフ状態であるので、その間アーム電流は変換器CELLの電荷蓄積素子74を流れ、電荷蓄積素子74は充電されて電圧が上昇する。その電圧上昇ΔVは、電荷蓄積素子74の静電容量をC、第1アーム部22aに流れるアーム電流をIup(t)とすると、次式で表すことができる。
ΔV=(1/C)×Δt×Iup(t)
短い期間T中は、Iup(t)の変化は小さく、ほぼ一定と考えると、この計算式でΔVが計算できる。
【0118】
電荷蓄積素子74の電圧が上昇すると、その変換器CELLがNttlの中のN(t)に選ばれる優先順位が下がり、上側のスイッチング素子42はオフ状態、下側のスイッチング素子41はオン状態に切り替えられるので、電荷蓄積素子74の充電は終了する。このような動きが第1アーム部22a内で次々と遅滞なく行われ、各変換器CELLの電荷蓄積素子74の電圧がほぼΔVだけ平均的に上昇すると考えることができる。
【0119】
総数Nttl台の変換器CELLがほぼΔVだけ充電するには、Nttl台の変換器CELLがほぼ同じ充電期間Δtを与えられることになる。ある瞬間に充電する変換器CELLの数はN(t)なので、総数Nttlの変換器CELLがほぼ均等に充電期間Δtを分け合うことを考えると、充電期間Δtは次式で計算される。
Δt=(N(t)/Nttl)×T=m(t)×T
従って、m(t)≒Δt/Tと考えることができる。
【0120】
次に、この関係を使って、区間Tの間の電荷蓄積素子74の電圧の変動を検討すると、次式が得られる。
ΔV=(1/C)×Iup(t)×m(t)×T
この式は、次式に整理することができる。
ΔV=(1/C)×{Iup(t)×m(t)}×T
つまり、電荷蓄積素子74には、ある時刻tで、アーム電流Iup(t)と制御率m(t)の積で表される等価的な平均電流が、変換器CELLの電荷蓄積素子74に流れると考えられる。
【0121】
上記で得られた計算式に基づき、電荷蓄積素子74に流れる電流と電荷蓄積素子74の電圧変動を計算する。
【0122】
U相の交流電圧Vu(t)は、次式で表すことができる。
Vu(t)=Vac×sin(ωt)
また、主回路部12から出力する交流電流Iu(t)は、次式で表すことができる。
Iu(t)=Iac×sin(ωt-φ)
ここで、Vac、Iacは、それぞれ電圧、電流の波高値である。ωは、交流電力系統2の角周波数である。ωは、ω=2πfと表すことができる。fは、交流電力系統2の周波数である。φは、交流電流の交流電圧に対する位相を表す。有効電力だけ出力する場合は、φ=0となる。
【0123】
前述のように、U相上アームである第1アーム部22aの所定の時刻tにおける電圧Vup(t)は、上記の(2)式で表すことができる。第1アーム部22aの所定の時刻tにおける電流Iup(t)は、上記の(4)式で表すことができる。
【0124】
参照信号m(t)は、直流電圧Vdとアーム電圧Vup(t)の関係から、次式で表すことができる。
m(t)≒Vup(t)/Vd
【0125】
従って、変換器CELLの電荷蓄積素子74に流れる平均的な電流Ic(t)は、次式で計算することができる。
Ic(t)=Iup(t)×m(t)=Iup(t)×Vup(t)/Vd
【0126】
電荷蓄積素子74の電圧は、この電流Ic(t)を積分して電荷蓄積素子74の静電容量Cで除算する計算で得ることができる。すなわち、次の(6)式で計算することができる。なお、(6)式において、Vc0は、電荷蓄積素子74の電圧の初期値である。
【数6】
【0127】
図6(a)~
図6(d)は、主回路部の各部の電圧電流波形の一例を模式的に表すグラフである。
図6(a)は、U相の交流電圧Vu、U相上アームのアーム電圧Vup、及びU相下アームのアーム電圧Vunの一例を模式的に表す。
図6(b)は、U相の交流電流Iuの一例を模式的に表す。
図6(c)は、U相上アームのアーム電流Iup、U相下アームのアーム電流Iun、U相上アームの各変換器CELLの電荷蓄積素子74に流れる平均電流、及びU相下アームの各変換器CELLの電荷蓄積素子74に流れる平均電流の一例を模式的に表す。平均電流は、換言すれば、上記の式で求めた電流Ic(t)の一例である。
図6(d)は、U相上アームの各変換器CELLの電荷蓄積素子74の電圧変動、及びU相下アームの各変換器CELLの電荷蓄積素子74の電圧変動の一例を模式的に表す。電圧変動は、換言すれば、上記の(6)式で求めた電荷蓄積素子74の電圧Vc(t)の一例である。より詳しくは、
図6(d)は、(6)式の積分中の変動分だけを取り出して示したものである。
【0128】
なお、
図6(a)~
図6(d)では、交流電力系統2の各相の交流電圧及び交流電流に位相差が無い状態(有効電力のみを出力している状態)を模式的に表している。また、
図6(c)及び
図6(d)では、第2調波電流を重畳していない場合の電荷蓄積素子74の平均電流及び電荷蓄積素子74の電圧変動を例示している。
図6(a)~
図6(d)は、換言すれば、第2調波を重畳する制御を省略した参考の制御装置14の動作の一例である。
【0129】
また、
図6(a)~
図6(d)において、各所の電圧は、直流電圧で除算、各所の電流は交流電流波高値で除算して、正規化した値である。
図6(a)に表したアーム電圧Vupは、直流電圧で除算して正規化した値で示されているので、参照信号m(t)を示しているとも考えられる。
【0130】
図6(a)~
図6(d)に表したように、各アーム部22a~22fに流れるアーム電流の交流成分が、基本波成分のみである場合には、
図6の時刻t1のように、アーム電圧Vup(参照信号m(t))の大きい区間が、アーム電流Iupの負方向の電流の大きい区間と重なる。このため、電荷蓄積素子74の平均電流の波形は、放電方向に大きな電流となる。
【0131】
このように、電荷蓄積素子74の平均電流は、放電方向の電流が大きいので、例えば、
図6の時刻t1~t2で表す区間のように、平均電流を積分して得られる電荷蓄積素子74の電圧低下も大きくなってしまう。換言すれば、電荷蓄積素子74の電圧変動が大きくなってしまう。
【0132】
図7(a)~
図7(d)は、主回路部の各部の電圧電流波形の一例を模式的に表すグラフである。
図7(a)は、U相の交流電圧Vu、U相上アームのアーム電圧Vup、及びU相下アームのアーム電圧Vunの一例を模式的に表す。
図7(b)は、U相の交流電流Iuの一例を模式的に表す。
図7(c)は、U相上アームのアーム電流Iup、U相下アームのアーム電流Iun、U相上アームの各変換器CELLの電荷蓄積素子74に流れる平均電流、U相下アームの各変換器CELLの電荷蓄積素子74に流れる平均電流、及びアーム電流Iup及びアーム電流Iunに重畳した第2調波電流成分Iu2の一例を模式的に表す。
図7(d)は、U相上アームの各変換器CELLの電荷蓄積素子74の電圧変動、及びU相下アームの各変換器CELLの電荷蓄積素子74の電圧変動の一例を模式的に表す。
【0133】
図7(a)~
図7(d)は、制御装置14が、各アーム部22a~22fに流れるアーム電流に第2調波電流成分を重畳させた場合の各部の電圧電流波形の一例を模式的に表している。
図7(a)~
図7(d)の内容は、第2調波電流成分を重畳させている点を除いて、
図6(a)~
図6(d)の内容と同様である。
【0134】
図7(c)に表したように、制御装置14は、第2調波電流成分の正側のピーク位相が、第2調波電流成分の負側のピーク位相よりも基本波電流成分の負側のピーク位相に近付くように、第2調波電流成分の位相を設定する。制御装置14は、例えば、第2調波電流成分の正側のピーク位相が、基本波電流成分の負側のピーク位相と略一致するように、第2調波電流成分の位相を設定する。制御装置14は、例えば、第2調波電流成分の正側のピーク位相を、基本波電流成分の負側のピーク位相に対し、±10°の範囲に設定する。
【0135】
第2調波電流成分の位相は、例えば、第2調波位相作成回路118において基本波電流成分の位相指令値φに乗算する係数を調整することなどによって、設定することができる。これにより、上記のように、第2調波電流成分の正側のピーク位相を、基本波電流成分の負側のピーク位相と略一致させることができる。
【0136】
このように、第2調波電流成分を重畳させることにより、
図7(c)に表したように、第2調波電流成分を重畳させていない場合と比べて、電荷蓄積素子74の平均電流の負方向(放電方向)の電流を小さくすることができる。そして、このように、電荷蓄積素子74の平均電流の負方向の電流を小さくすることにより、電荷蓄積素子74の電圧の低下を小さくすることができる。これにより、
図7(d)に表したように、第2調波電流成分を重畳させていない場合と比べて、電荷蓄積素子74の電圧変動を小さくすることができる。例えば、
図7(d)に表した例では、
図6(d)に表した例と比べて、電荷蓄積素子74の電圧変動を半分程度に抑えることができている。
【0137】
これにより、例えば、静電容量の小さい電荷蓄積素子74を用いても、電荷蓄積素子74の電圧変動を許容値の範囲内に入れることができる。例えば、電荷蓄積素子74の静電容量を小さくすることにより、電荷蓄積素子74の小型化を図ることができる。これにより、各変換器CELLの小型化や軽量化を図ることができ、電力変換装置10の経済性の改善を期待することができる。
【0138】
以上、説明したように、本実施形態に係る電力変換装置10では、制御装置14が、主回路部12に電力変換を行わせるとともに、交流電力系統2の交流電力の周波数の基本波電流成分に、交流電力系統2の交流電力の周波数の2倍の周波数を有する第2調波電流成分を重畳させた電流を、複数の変換器CELLに流すように、複数の変換器CELLのそれぞれの一対のスイッチング素子41、42のスイッチングを制御する。これにより、直列に接続された複数の変換器CELLの用品の容量を低減させることができる。
【0139】
また、
図7(c)に表したように、上記のように、第2調波電流成分の正側のピーク位相を、基本波電流成分の負側のピーク位相と略一致させた場合、第2調波電流成分の正側のピーク位相は、基本波電流成分の正側のピーク位相とも略一致する。このため、上記のように第2調波電流成分を重畳させた場合には、第2調波電流成分を重畳させていない場合と比べて、アーム電流Iup及びアーム電流Iunの正側のピークが大きくなってしまう。
【0140】
このため、制御装置14は、第2調波電流成分の振幅を基本波電流成分の振幅よりも小さくする。制御装置14は、例えば、第2調波電流成分を重畳させたアーム電流Iup及びアーム電流Iunの大きさを、スイッチング素子41、42の許容できる電流の大きさ以下とする。制御装置14は、例えば、第2調波電流成分の最大値を、主回路部12の定格交流電流の40%以下とする。これにより、アーム電流Iup及びアーム電流Iunの正側のピークが大きくなり過ぎてしまうことを抑制することができる。第2調波電流成分の振幅は、例えば、第2調波振幅作成回路116において基本波電流成分の振幅指令値Iacに乗算する係数を調整することなどによって、設定することができる。
【0141】
図8(a)~
図8(d)は、主回路部の各部の電圧電流波形の一例を模式的に表すグラフである。
図8(a)~
図8(d)では、交流電力系統2の各相の交流電圧及び交流電流に位相差が有る状態(無効電力を出力している状態)を模式的に表している。
図8(a)~
図8(d)の内容は、無効電力を出力している点を除いて、
図6(a)~
図6(d)の内容と同様である。
【0142】
図8(a)~
図8(d)に表したように、無効電力を出力するために交流電流Iuの位相が交流電圧Vuの位相からずれている場合には、交流電流Iuの位相ずれにともなって、アーム電流Iup及びアーム電流Iunの波形もずれる。さらに、電荷蓄積素子74に流れる平均電流の負のピークの位相も、交流電圧Vuに対する交流電流Iuの位相のずれと同程度ずれる。そして、電荷蓄積素子74の平均電流の放電方向のピーク位相のずれにともなって、電荷蓄積素子74の電圧変動の傾きが急な部分の位相もずれる。
【0143】
図9(a)~
図9(d)は、主回路部の各部の電圧電流波形の一例を模式的に表すグラフである。
図9(a)~
図9(d)では、交流電力系統2の各相の交流電圧及び交流電流に位相差が有る状態(無効電力を出力している状態)において、アーム電流に第2調波電流成分を重畳させた例を模式的に表している。
図9(a)~
図9(d)の内容は、無効電力を出力している点を除いて、
図7(a)~
図7(d)の内容と同様である。
【0144】
この例においても、制御装置14は、第2調波電流成分の正側のピーク位相が、第2調波電流成分の負側のピーク位相よりも基本波電流成分の負側のピーク位相に近付くように、第2調波電流成分の位相を設定する。制御装置14は、例えば、第2調波電流成分の正側のピーク位相が、基本波電流成分の負側のピーク位相と略一致するように、第2調波電流成分の位相を設定する。また、制御装置14は、例えば、第2調波電流成分の位相を、交流電圧Vuに対する交流電流Iuの位相のずれに応じて調整する。
【0145】
このように、第2調波電流成分をアーム電流に重畳させることにより、
図9(c)に表したように、無効電力を出力している場合においても、有効電力のみを出力している場合と同様に、電荷蓄積素子74の平均電流の負方向(放電方向)の電流を小さくすることができる。
図9(d)に表したように、第2調波電流成分を重畳させていない場合と比べて、電荷蓄積素子74の電圧変動を小さくすることができる。
【0146】
図10(a)~
図10(c)は、主回路部の各部の電圧電流波形の一例を模式的に表すグラフである。
図10(a)は、U相の交流電圧Vu、U相上アームのアーム電圧Vup、及びU相下アームのアーム電圧Vunの一例を模式的に表す。
図10(b)は、U相の交流電流Iuの一例を模式的に表す。
図10(c)は、U相上アームのアーム電流Iup、U相下アームのアーム電流Iun、U相上アームの各変換器CELLの電荷蓄積素子74に流れる平均電流、U相下アームの各変換器CELLの電荷蓄積素子74に流れる平均電流、及びアーム電流Iup及びアーム電流Iunに重畳した第2調波電流成分Iu2の一例を模式的に表す。
【0147】
図10(a)~
図10(c)は、制御装置14の別の動作の一例を模式的に表す。なお、
図10(a)~
図10(c)では、交流電力系統2の各相の交流電圧及び交流電流に位相差が無い状態(有効電力のみを出力している状態)を模式的に表している。
【0148】
図10(c)に表したように、この例において、制御装置14は、第2調波電流成分の負側のピーク位相が、第2調波電流成分の正側のピーク位相よりも基本波電流成分の正側のピーク位相に近付くように、第2調波電流成分の位相を設定する。制御装置14は、例えば、第2調波電流成分の負側のピーク位相が、基本波電流成分の正側のピーク位相と略一致するように、第2調波電流成分の位相を設定する。制御装置14は、例えば、第2調波電流成分の負側のピーク位相を、基本波電流成分の正側のピーク位相に対し、±10°の範囲に設定する。
【0149】
図7(c)に関して説明したように、第2調波電流成分の正側のピーク位相を、基本波電流成分の負側のピーク位相と略一致させた場合には、第2調波電流成分の正側のピーク位相が、基本波電流成分の正側のピーク位相とも略一致し、アーム電流Iup及びアーム電流Iunの正側のピークが大きくなってしまう。
【0150】
これに対して、
図10(c)に表した例では、制御装置14が、第2調波電流成分の負側のピーク位相を、基本波電流成分の正側のピーク位相と略一致させる。このように第2調波電流成分の位相を設定した場合には、第2調波電流成分の振幅に応じて、第2調波電流成分を重畳させていない場合よりも、アーム電流Iup及びアーム電流Iunの正側のピークを小さくすることができる。
【0151】
これにより、例えば、電流定格の小さいスイッチング素子41、42を用いて、より大きな電流定格の主回路部12を実現することができる。例えば、電流定格の小さいスイッチング素子41、42を用いて、主回路部12の定格容量の増大を図ることができ、電力変換装置10の経済性の改善を期待することができる。
【0152】
(第2の実施形態)
図11は、第2の実施形態に係る制御装置を模式的に表すブロック図である。
図11に表したように、制御装置14aは、第4調波振幅作成回路160と、第4調波位相作成回路162と、係数演算器164と、余弦信号発生回路166、168、170と、減算器172、174、176と、をさらに有する。なお、上記第1の実施形態と機能・構成上実質的に同じものについては、同符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0153】
制御装置14aは、出力したい交流電流の振幅指令値Iacを第4調波振幅作成回路160に入力する。第4調波振幅作成回路160は、入力された振幅指令値Iacを基に、交流電力系統2の交流電流の4倍の周波数を有する第4調波の振幅指令値I4pを演算する。
【0154】
第4調波振幅作成回路160は、例えば、振幅指令値Iacに対して所定の係数を乗算することにより、振幅指令値Iacから第4調波の振幅指令値I4pを演算する。制御装置14aは、第4調波電流成分の振幅を、基本波電流成分の振幅に対し、単調増加関数とする。第4調波振幅作成回路160による振幅指令値I4pの演算方法は、例えば、第2調波振幅作成回路116による振幅指令値I2pの演算方法と同様とすることができる。第4調波振幅作成回路160による振幅指令値I4pの演算方法は、振幅指令値Iacから第4調波の振幅指令値I4pを適切に演算することができる任意の方法でよい。
【0155】
制御装置14aは、出力したい交流電流の位相指令値φを第4調波位相作成回路162に入力する。第4調波位相作成回路162は、入力された位相指令値φを基に、交流電力系統2の交流電流の4倍の周波数を有する第4調波の位相指令値φ4を演算する。第4調波位相作成回路162は、例えば、位相指令値φに対して所定の係数を乗算することにより、位相指令値φから第4調波の位相指令値φ4を演算する。第4調波位相作成回路162による位相指令値φ4の演算方法は、例えば、第2調波位相作成回路118による位相指令値φ2の演算方法と同様とすることができる。第4調波位相作成回路162による位相指令値φ4の演算方法は、位相指令値φから第4調波の位相指令値φ4を適切に演算することができる任意の方法でよい。
【0156】
係数演算器164は、位相検出回路100によって演算された位相信号θに係数4を乗算することにより、位相信号θの4倍の角周波数4ωtを演算する。
【0157】
第4調波振幅作成回路160は、演算した振幅指令値I4pを余弦信号発生回路166、168、170に入力する。第4調波位相作成回路162は、演算した位相指令値φ4を余弦信号発生回路166、168、170に入力する。係数演算器164は、演算した角周波数4ωtを余弦信号発生回路166、168、170に入力する。
【0158】
余弦信号発生回路166は、入力された振幅指令値I4p、位相指令値φ4、及び角周波数4ωtを基に、第4調波電流を主回路部12に流すための第4調波出力電圧変調信号V4urefを演算する。
【0159】
U相の上側アームである第1アーム部22aのリアクトル23aの両端に現れる第4調波成分の電圧ΔV4は、例えば、上記の(1)式の振幅指令値I2p、位相指令値φ2、及び角周波数2ωtを、それぞれ振幅指令値I4p、位相指令値φ4、及び角周波数4ωtに置き換えることで、演算することができる。余弦信号発生回路166は、このように演算される第4調波成分の電圧ΔV4を、第4調波出力電圧変調信号V4urefとして演算する。
【0160】
同様に、余弦信号発生回路168は、入力された振幅指令値I4p、位相指令値φ4、及び角周波数4ωtを基に、第4調波電流を主回路部12に流すための第4調波出力電圧変調信号V4vrefを演算する。この際、余弦信号発生回路168は、余弦信号発生回路166の演算する余弦波の位相に対し、演算する余弦波の位相を120°(2π/3)シフトさせる。
【0161】
余弦信号発生回路170は、入力された振幅指令値I4p、位相指令値φ4、及び角周波数4ωtを基に、第4調波電流を主回路部12に流すための第4調波出力電圧変調信号V4wrefを演算する。また、余弦信号発生回路170は、余弦信号発生回路168の演算する余弦波の位相に対し、演算する余弦波の位相を120°シフトさせる。換言すれば、余弦信号発生回路170は、余弦信号発生回路166の演算する余弦波の位相に対し、演算する余弦波の位相を240°(4π/3)シフトさせる。
【0162】
このように、余弦信号発生回路166、168、170は、U相、V相、W相のそれぞれに対応する第4調波出力電圧変調信号V4uref、V4vref、V4wrefの余弦波の位相を120°ずつシフトさせて演算する。すなわち、余弦信号発生回路166、168、170は、第4調波電流成分が平衡した状態で主回路部12に流れるように第4調波出力電圧変調信号V4uref、V4vref、V4wrefを演算する。
【0163】
これにより、各直流端子20a、20bに接続される各直流送電線3、4上においては、三相の第4調波電流成分の和を実質的に0にすることができ、第4調波電流成分が、直流電流に影響を与えてしまうことを抑制することができる。同様に、第4調波電流成分が、交流電力系統2の交流電流に影響を与えてしまうことも抑制することができる。余弦信号発生回路166、168、170は、例えば、第4調波電流成分が主回路部12内の各アーム部22a~22f内を循環する循環電流となるように、第4調波出力電圧変調信号V4uref、V4vref、V4wrefを演算する。
【0164】
余弦信号発生回路166は、演算した第4調波出力電圧変調信号V4urefを減算器172に入力する。余弦信号発生回路168は、演算した第4調波出力電圧変調信号V4vrefを減算器174に入力する。余弦信号発生回路170は、演算した第4調波出力電圧変調信号V4wrefを減算器176に入力する。
【0165】
この例において、減算器128は、基本波交流電流に対応する交流電圧基準信号Vurefから第2調波電流に対応する第2調波出力電圧変調信号V2urefを減算し、減算結果を減算器172に入力する。
【0166】
減算器130は、基本波交流電流に対応する交流電圧基準信号Vvrefから第2調波電流に対応する第2調波出力電圧変調信号V2vrefを減算し、減算結果を減算器174に入力する。
【0167】
減算器132は、基本波交流電流に対応する交流電圧基準信号Vwrefから第2調波電流に対応する第2調波出力電圧変調信号V2wrefを減算し、減算結果を減算器176に入力する。
【0168】
減算器172は、減算器128の減算結果から第4調波電流に対応する第4調波出力電圧変調信号V4urefをさらに減算する。これにより、基本波の交流電圧基準信号Vurefに第2調波出力電圧変調信号V2uref及び第4調波出力電圧変調信号V4urefを重畳させ、第2調波電流成分及び第4調波電流成分を生じさせることができる。
【0169】
同様に、減算器174は、減算器130の減算結果から第4調波電流に対応する第4調波出力電圧変調信号V4vrefをさらに減算する。減算器176は、減算器132の減算結果から第4調波電流に対応する第4調波出力電圧変調信号V4wrefをさらに減算する。
【0170】
減算器172は、減算結果を減算器136及び加算器138に入力する。減算器174は、減算結果を減算器140及び加算器142に入力する。減算器176は、減算結果を減算器144及び加算器146に入力する。
【0171】
これにより、制御装置14aによって主回路部12の各変換器CELLの動作を制御することができる。振幅指令値Iac及び位相指令値φに応じた交流電流を主回路部12から出力することができる。さらに、第2調波の振幅指令値I2p及び位相指令値φ2に応じた第2調波電流、及び第4調波の振幅指令値I4p及び位相指令値φ4に応じた第4調波電流を主回路部12の各アーム部22a~22fに流すことができる。
【0172】
図12(a)~
図12(d)は、主回路部の各部の電圧電流波形の一例を模式的に表すグラフである。
図12(a)は、U相の交流電圧Vu、U相上アームのアーム電圧Vup、及びU相下アームのアーム電圧Vunの一例を模式的に表す。
図12(b)は、U相の交流電流Iuの一例を模式的に表す。
図12(c)は、U相上アームのアーム電流Iup、U相下アームのアーム電流Iun、U相上アームの各変換器CELLの電荷蓄積素子74に流れる平均電流、U相下アームの各変換器CELLの電荷蓄積素子74に流れる平均電流、アーム電流Iup及びアーム電流Iunに重畳した第2調波電流成分Iu2、及びアーム電流Iup及びアーム電流Iunに重畳した第4調波電流成分Iu4の一例を模式的に表す。
図12(d)は、U相上アームの各変換器CELLの電荷蓄積素子74の電圧変動、及びU相下アームの各変換器CELLの電荷蓄積素子74の電圧変動の一例を模式的に表す。
【0173】
図12(a)~
図12(d)は、制御装置14aが、各アーム部22a~22fに流れるアーム電流に第2調波電流成分及び第4調波電流成分を重畳させた場合の各部の電圧電流波形の一例を模式的に表している。
図12(a)~
図12(d)の内容は、第2調波電流成分及び第4調波電流成分を重畳させている点を除いて、
図6(a)~
図6(d)の内容と同様である。
【0174】
図12(c)に表したように、制御装置14aは、第2調波電流成分の正側のピーク位相が、第2調波電流成分の負側のピーク位相よりも基本波電流成分の負側のピーク位相に近付くように、第2調波電流成分の位相を設定する。制御装置14aは、例えば、第2調波電流成分の正側のピーク位相が、基本波電流成分の負側のピーク位相と略一致するように、第2調波電流成分の位相を設定する。制御装置14aは、例えば、第2調波電流成分の正側のピーク位相を、基本波電流成分の負側のピーク位相に対し、±10°の範囲に設定する。
【0175】
また、制御装置14aは、第4調波電流成分の負側のピーク位相が、第4調波電流成分の正側のピーク位相よりも第2調波電流成分の正側のピーク位相に近付くように、第4調波電流成分の位相を設定する。制御装置14aは、例えば、第4調波電流成分の負側のピーク位相が、第2調波電流成分の正側のピーク位相と略一致するように、第4調波電流成分の位相を設定する。制御装置14aは、例えば、第4調波電流成分の負側のピーク位相を、第2調波電流成分の正側のピーク位相に対し、±10°の範囲に設定する。
【0176】
第4調波電流成分の位相は、例えば、第4調波位相作成回路162において基本波電流成分の位相指令値φに乗算する係数を調整することなどによって、設定することができる。これにより、上記のように、第4調波電流成分の負側のピーク位相を、第2調波電流成分の正側のピーク位相と略一致させることができる。
【0177】
このように、第2調波電流成分及び第4調波電流成分を重畳させることにより、
図12(c)に表したように、第2調波電流成分及び第4調波電流成分を重畳させていない場合と比べて、電荷蓄積素子74の平均電流の負方向(放電方向)の電流を小さくすることができる。そして、このように、電荷蓄積素子74の平均電流の負方向の電流を小さくすることにより、電荷蓄積素子74の電圧の低下を小さくすることができる。これにより、
図12(d)に表したように、第2調波電流成分及び第4調波電流成分を重畳させていない場合と比べて、電荷蓄積素子74の電圧変動を小さくすることができる。
【0178】
これにより、第2調波電流成分のみを重畳させた場合と同様に、例えば、静電容量の小さい電荷蓄積素子74を用いても、電荷蓄積素子74の電圧変動を許容値の範囲内に入れることができる。例えば、電荷蓄積素子74の静電容量を小さくすることにより、電荷蓄積素子74の小型化を図ることができる。これにより、各変換器CELLの小型化や軽量化を図ることができ、電力変換装置10の経済性の改善を期待することができる。
【0179】
さらに、上記のように第4調波電流成分を重畳させることにより、第2調波電流成分のみを重畳させた場合と比べて、第4調波電流成分の振幅に応じて、アーム電流Iup及びアーム電流Iunの正側のピークを小さくすることができる。
【0180】
これにより、例えば、電流定格の小さいスイッチング素子41、42を用いて、より大きな電流定格の主回路部12を実現することができる。例えば、電流定格の小さいスイッチング素子41、42を用いて、主回路部12の定格容量の増大を図ることができ、電力変換装置10の経済性をより改善することが期待できる。
【0181】
また、
図12(c)に表したように、制御装置14aは、第4調波電流成分の振幅を第2調波電流成分の振幅よりも小さくする。制御装置14aは、例えば、第4調波電流成分の振幅を第2調波電流成分の振幅の略二分の一とする。制御装置14aは、例えば、第4調波電流成分の振幅を第2調波電流成分の振幅の40%以上60%以下とする。これにより、第4調波電流成分の重畳によって、アーム電流Iup及びアーム電流Iunの正側のピークをより適切に抑制することができる。
【0182】
第4調波電流成分の振幅は、例えば、第4調波振幅作成回路160において基本波電流成分の振幅指令値Iacに乗算する係数を調整することなどによって、設定することができる。
【0183】
(第3の実施形態)
図13は、第3の実施形態に係る制御装置を模式的に表すブロック図である。
図13に表したように、制御装置14bでは、
図3に表した制御装置14と比べて、余弦信号発生回路122、124、126が省略され、代わりに、第2調波電流指令値作成回路178と、加算器180、181、182と、係数演算器183、184、185と、dq変換回路186と、フィルタ処理回路188と、減算器190、192と、制御関数演算器194、196と、dq逆変換回路198と、が設けられている。
【0184】
制御装置14bでは、第2調波振幅作成回路116が、演算した振幅指令値I2pを第2調波電流指令値作成回路178に入力し、第2調波位相作成回路118が、演算した位相指令値φ2を第2調波電流指令値作成回路178に入力する。また、制御装置14bでは、係数演算器120が、演算した角周波数2ωtをdq変換回路186及びdq逆変換回路198に入力する。
【0185】
第2調波電流指令値作成回路178は、入力された振幅指令値I2p及び位相指令値φ2から第2調波電流成分のp軸の電流基準I2prefと、第2調波電流成分のq軸の電流基準I2qrefと、を演算する。第2調波電流指令値作成回路178は、例えば、次の計算により、第2調波電流成分のp軸の電流基準I2prefと、第2調波電流成分のq軸の電流基準I2qrefと、を演算する。
I2pref=I2p×cos2φ
I2qref=I2p×sin2φ
【0186】
第2調波電流指令値作成回路178は、演算したp軸の電流基準I2prefを減算器190に入力し、演算したq軸の電流基準I2qrefを減算器192に入力する。
【0187】
制御装置14bは、電流検出器24aから入力された第1アーム部22aに流れるアーム電流のアーム電流フィードバック信号Iupfb、及び電流検出器24bから入力された第2アーム部22bに流れるアーム電流のアーム電流フィードバック信号Iunfbを加算器180に入力する。
【0188】
制御装置14bは、電流検出器24cから入力された第3アーム部22cに流れるアーム電流のアーム電流フィードバック信号Ivpfb、及び電流検出器24dから入力された第4アーム部22dに流れるアーム電流のアーム電流フィードバック信号Ivnfbを加算器181に入力する。
【0189】
同様に、制御装置14bは、電流検出器24eから入力された第5アーム部22eに流れるアーム電流のアーム電流フィードバック信号Iwpfb、及び電流検出器24fから入力された第6アーム部22fに流れるアーム電流のアーム電流フィードバック信号Iwnfbを加算器182に入力する。
【0190】
加算器180は、入力されたアーム電流フィードバック信号Iupfbとアーム電流フィードバック信号Iunfbとを加算する。これにより、第2調波電流を含む電流フィードバック信号を得ることができる。加算器180は、加算結果を係数演算器183に入力する。
【0191】
同様に、加算器181は、入力されたアーム電流フィードバック信号Ivpfbとアーム電流フィードバック信号Ivnfbとを加算し、加算結果を係数演算器184に入力する。加算器182は、入力されたアーム電流フィードバック信号Iwpfbとアーム電流フィードバック信号Iwnfbとを加算し、加算結果を係数演算器185に入力する。
【0192】
係数演算器183は、加算器180から入力された電流フィードバック信号に係数1/2を乗算し、乗算結果をdq変換回路186に入力する。同様に、係数演算器184は、加算器181から入力された電流フィードバック信号に係数1/2を乗算し、乗算結果をdq変換回路186に入力する。係数演算器185は、加算器182から入力された電流フィードバック信号に係数1/2を乗算し、乗算結果をdq変換回路186に入力する。
【0193】
dq変換回路186は、各係数演算器183、184、185から入力された三相の電流フィードバック信号を二相の電流信号に変換する。また、dq変換回路186は、変換後の二相の電流信号に対し、第2調波電流の位相信号2ωtを用いてdq変換を行うことにより、p軸成分の電流信号(有効分)と、q軸成分の電流信号(無効分)と、を演算する。dq変換回路186は、演算したp軸成分の電流信号とq軸成分の電流信号とをフィルタ処理回路188に入力する。
【0194】
フィルタ処理回路188は、dq変換回路186から入力されたp軸成分の電流信号及びq軸成分の電流信号に対して、フィルタ処理を行う。上アームのアーム電流と下アームのアーム電流とを加算して得た電流フィードバック信号には、直流電流信号が含まれる。このため、この電流フィードバック信号を用いて演算されたdq変換の出力には、直流項に加え、振動項が現れる。フィルタ処理回路188は、例えば、低域通過フィルタのフィルタ処理を行う回路であり、dq変換回路186の出力に含まれる振動項を減衰させることにより、p軸成分の電流信号及びq軸成分の電流信号の直流項だけを得る。
【0195】
フィルタ処理回路188は、フィルタ処理後のp軸成分の電流信号を減算器190に入力する。また、フィルタ処理回路188は、フィルタ処理後のq軸成分の電流信号を減算器192に入力する。
【0196】
減算器190は、電流フィードバック信号から求めたp軸成分の電流信号と、p軸の電流基準I2prefと、の誤差(差分)を演算する。減算器190は、演算した誤差を制御関数演算器194に入力する。
【0197】
減算器192は、電流フィードバック信号から求めたq軸成分の電流信号と、q軸の電流基準I2qrefと、の誤差(差分)を演算する。減算器192は、演算した誤差を制御関数演算器196に入力する。
【0198】
制御関数演算器194は、入力された誤差を基に、p軸成分の電流信号をp軸の電流基準I2prefに近付けるためのp軸の電圧基準を演算する。制御関数演算器194は、制御関数演算器110と同様に、比例積分の演算などにより、入力された誤差からp軸の電圧基準を演算する。制御関数演算器194は、演算したp軸の電圧基準をdq逆変換回路198に入力する。
【0199】
制御関数演算器196は、入力された誤差を基に、q軸成分の電流信号をq軸の電流基準I2qrefに近付けるためのq軸の電圧基準を演算する。制御関数演算器196は、演算したq軸の電圧基準をdq逆変換回路198に入力する。
【0200】
dq逆変換回路198は、入力されたp軸の電圧基準及びq軸の電圧基準に対し、位相信号2ωtを用いてdq逆変換を行うことにより、第2調波電流を主回路部12に流すための三相のそれぞれの瞬時値の第2調波出力電圧変調信号V2uref、V2vref、V2wrefを演算する。
【0201】
dq逆変換回路198は、演算した第2調波出力電圧変調信号V2urefを減算器128に入力し、演算した第2調波出力電圧変調信号V2vrefを減算器130に入力し、演算した第2調波出力電圧変調信号V2wrefを減算器132に入力する。
【0202】
これにより、基本波の交流電圧基準信号Vuref、Vvref、Vwrefに第2調波出力電圧変調信号V2uref、V2vref、V2wrefを重畳させ、第1の実施形態などと同様に、第2調波電流成分を生じさせることができる。
【0203】
このように、制御装置14は、第2調波電流成分の振幅指令値I2pと、第2調波電流成分の位相指令値φ2と、第2調波電流成分の角周波数2ωtと、複数の変換器CELLに流れる電流のフィードバック信号(アーム電流フィードバック信号Iupfb、Iunfb、Ivpfb、Ivnfb、Iwpfb、Iwnfb)と、を基に、第2調波電流成分の電圧基準(第2調波出力電圧変調信号V2uref、V2vref、V2wref)を演算することにより、第2調波電流成分を重畳させた電流を、複数の変換器CELLに流すように、複数の変換器CELLのそれぞれの一対のスイッチング素子41、42のスイッチングを制御する。
【0204】
換言すれば、制御装置14bは、アーム電流フィードバック信号Iupfb、Iunfb、Ivpfb、Ivnfb、Iwpfb、Iwnfbに基づくクローズドループ制御によって、アーム電流への第2調波電流成分の重畳を制御する。このように、アーム電流に重畳させる第2調波電流成分の制御は、
図3などに関して説明したオープンループ制御に限ることなく、クローズドループ制御でもよい。
【0205】
(第4の実施形態)
図14は、第4の実施形態に係る制御装置を模式的に表すブロック図である。
図14に表したように、制御装置14cは、制御装置14bの構成に加えて、
図11に関して説明した制御装置14aの第4調波振幅作成回路160と、第4調波位相作成回路162と、係数演算器164と、減算器172、174、176と、を有するとともに、第4調波電流指令値作成回路200と、dq変換回路202と、フィルタ処理回路204と、減算器206、208と、制御関数演算器210、212と、dq逆変換回路214と、をさらに有する。
【0206】
制御装置14cでは、第4調波振幅作成回路160が、演算した振幅指令値I4pを第4調波電流指令値作成回路200に入力し、第4調波位相作成回路162が、演算した位相指令値φ4を第4調波電流指令値作成回路200に入力する。また、制御装置14cでは、係数演算器164が、演算した角周波数4ωtをdq変換回路202及びdq逆変換回路214に入力する。
【0207】
第4調波電流指令値作成回路200は、入力された振幅指令値I4p及び位相指令値φ4から第4調波電流成分のp軸の電流基準I4prefと、第4調波電流成分のq軸の電流基準I4qrefと、を演算する。第4調波電流指令値作成回路200は、例えば、次の計算により、第4調波電流成分のp軸の電流基準I4prefと、第4調波電流成分のq軸の電流基準I4qrefと、を演算する。
I4pref=I4p×cos4φ
I4qref=I4p×sin4φ
【0208】
第4調波電流指令値作成回路200は、演算したp軸の電流基準I4prefを減算器206に入力し、演算したq軸の電流基準I4qrefを減算器208に入力する。
【0209】
また、制御装置14cでは、係数演算器183、184、185のそれぞれが、乗算結果をdq変換回路186及びdq変換回路202に入力する。
【0210】
dq変換回路202は、各係数演算器183、184、185から入力された三相の電流フィードバック信号を二相の電流信号に変換する。また、dq変換回路202は、変換後の二相の電流信号に対し、第4調波電流の位相信号4ωtを用いてdq変換を行うことにより、p軸成分の電流信号(有効分)と、q軸成分の電流信号(無効分)と、を演算する。dq変換回路202は、演算したp軸成分の電流信号とq軸成分の電流信号とをフィルタ処理回路204に入力する。
【0211】
フィルタ処理回路204は、dq変換回路202から入力されたp軸成分の電流信号及びq軸成分の電流信号に対して、フィルタ処理を行う。フィルタ処理回路204は、フィルタ処理回路188と同様に、dq変換回路202の出力に含まれる振動項を減衰させることにより、p軸成分の電流信号及びq軸成分の電流信号の直流項だけを得る。フィルタ処理回路204は、フィルタ処理後のp軸成分の電流信号を減算器206に入力し、フィルタ処理後のq軸成分の電流信号を減算器208に入力する。
【0212】
減算器206は、電流フィードバック信号から求めたp軸成分の電流信号と、p軸の電流基準I4prefと、の誤差(差分)を演算する。減算器206は、演算した誤差を制御関数演算器210に入力する。
【0213】
減算器208は、電流フィードバック信号から求めたq軸成分の電流信号と、q軸の電流基準I4qrefと、の誤差(差分)を演算する。減算器208は、演算した誤差を制御関数演算器212に入力する。
【0214】
制御関数演算器210は、入力された誤差を基に、p軸成分の電流信号をp軸の電流基準I4prefに近付けるためのp軸の電圧基準を演算し、演算したp軸の電圧基準をdq逆変換回路214に入力する。
【0215】
制御関数演算器212は、入力された誤差を基に、q軸成分の電流信号をq軸の電流基準I4qrefに近付けるためのq軸の電圧基準を演算し、演算したq軸の電圧基準をdq逆変換回路214に入力する。
【0216】
dq逆変換回路214は、入力されたp軸の電圧基準及びq軸の電圧基準に対し、位相信号4ωtを用いてdq逆変換を行うことにより、第4調波電流を主回路部12に流すための三相のそれぞれの瞬時値の第4調波出力電圧変調信号V4uref、V4vref、V4wrefを演算する。
【0217】
dq逆変換回路214は、演算した第4調波出力電圧変調信号V4urefを減算器172に入力し、演算した第4調波出力電圧変調信号V4vrefを減算器174に入力し、演算した第4調波出力電圧変調信号V4wrefを減算器176に入力する。
【0218】
これにより、
図11に関して説明した制御装置14aと同様に、第2調波の振幅指令値I2p及び位相指令値φ2に応じた第2調波電流、及び第4調波の振幅指令値I4p及び位相指令値φ4に応じた第4調波電流を主回路部12の各アーム部22a~22fに流すことができる。このように、アーム電流に重畳させる第4調波電流成分の制御も、オープンループ制御に限ることなく、クローズドループ制御とすることができる。
【0219】
なお、
図11に表した例では、アーム電流に重畳させる第2調波電流成分の制御、及びアーム電流に重畳させる第4調波電流成分の制御の双方を、オープンループ制御としている。また、
図14に表した例では、アーム電流に重畳させる第2調波電流成分の制御、及びアーム電流に重畳させる第4調波電流成分の制御の双方を、クローズドループ制御としている。これに限ることなく、第2調波電流成分の制御をオープンループ制御とし、第4調波電流成分の制御をクローズドループ制御としてもよいし、反対に、第2調波電流成分の制御をクローズドループ制御とし、第4調波電流成分の制御をオープンループ制御としてもよい。
【0220】
(第5の実施形態)
図15は、第5の実施形態に係る制御装置を模式的に表すブロック図である。
図15に表したように、制御装置14dでは、
図4に関して説明した制御装置14の変換器選択回路148、150、152、154、156、158が、PWM制御回路220、222、224、226、228、230に置き換えられている。
【0221】
PWM制御回路220は、第1アーム部22aの各変換器CELL毎にキャリア信号を設定する。第1アーム部22aにNttl台の変換器CELLが直列に接続されている場合、PWM制御回路220は、各変換器CELL毎のNttl個のキャリア信号を設定する。
【0222】
PWM制御回路220は、減算器136から入力されたアーム電圧基準信号Vuprefを参照信号m(t)として用いる。PWM制御回路220は、参照信号m(t)と各キャリア信号とを基に、第1アーム部22aの各変換器CELLの制御信号を生成し、生成した各制御信号を第1アーム部22aの各変換器CELLに送信する。
【0223】
参照信号m(t)は、例えば、正弦波状である。参照信号m(t)の周波数は、交流電力系統2の交流電力の周波数に応じて設定される。すなわち、実際の使用状況に応じた周波数に設定される。参照信号m(t)の周波数は、例えば、50Hzまたは60Hzである。キャリア信号は、例えば、三角波状である。キャリア信号は、鋸波などでもよい。キャリア信号の周波数は、参照信号m(t)の周波数よりも高い。
【0224】
PWM制御回路220は、第1アーム部22aの各変換器CELLのキャリア信号の位相をずらす。PWM制御回路220は、例えば、360/Nttl(度)ずつ位相をずらしたキャリア信号を各変換器CELL毎に設定する。
【0225】
PWM制御回路220は、参照信号m(t)とキャリア信号とを比較する。PWM制御回路220は、参照信号m(t)がキャリア信号未満の時に、スイッチング素子41をオンにし、スイッチング素子42をオフにする。この場合、各接続端子71、72間が、スイッチング素子41で導通し、各接続端子71、72間の電圧は、実質的に0Vになる。そして、PWM制御回路220は、参照信号m(t)がキャリア信号以上の時に、スイッチング素子41をオフにし、スイッチング素子42をオンにする。この場合、各接続端子71、72間には、電荷蓄積素子74の電圧が現れる。
【0226】
PWM制御回路222は、第2アーム部22bの各変換器CELL毎にキャリア信号を設定する。PWM制御回路222は、減算器138から入力されたアーム電圧基準信号Vunrefを参照信号m(t)として用いる。PWM制御回路222は、参照信号m(t)と各キャリア信号とを基に、第2アーム部22bの各変換器CELLの制御信号を生成し、生成した各制御信号を第2アーム部22bの各変換器CELLに送信する。
【0227】
PWM制御回路224は、第3アーム部22cの各変換器CELL毎にキャリア信号を設定する。PWM制御回路224は、減算器140から入力されたアーム電圧基準信号Vvprefを参照信号m(t)として用いる。PWM制御回路224は、参照信号m(t)と各キャリア信号とを基に、第3アーム部22cの各変換器CELLの制御信号を生成し、生成した各制御信号を第3アーム部22cの各変換器CELLに送信する。
【0228】
PWM制御回路226は、第4アーム部22dの各変換器CELL毎にキャリア信号を設定する。PWM制御回路226は、加算器142から入力されたアーム電圧基準信号Vvnrefを参照信号m(t)として用いる。PWM制御回路226は、参照信号m(t)と各キャリア信号とを基に、第4アーム部22dの各変換器CELLの制御信号を生成し、生成した各制御信号を第4アーム部22dの各変換器CELLに送信する。
【0229】
PWM制御回路228は、第5アーム部22eの各変換器CELL毎にキャリア信号を設定する。PWM制御回路228は、減算器144から入力されたアーム電圧基準信号Vwprefを参照信号m(t)として用いる。PWM制御回路228は、参照信号m(t)と各キャリア信号とを基に、第5アーム部22eの各変換器CELLの制御信号を生成し、生成した各制御信号を第5アーム部22eの各変換器CELLに送信する。
【0230】
PWM制御回路230は、第6アーム部22fの各変換器CELL毎にキャリア信号を設定する。PWM制御回路230は、加算器146から入力されたアーム電圧基準信号Vwnrefを参照信号m(t)として用いる。PWM制御回路230は、参照信号m(t)と各キャリア信号とを基に、第6アーム部22fの各変換器CELLの制御信号を生成し、生成した各制御信号を第6アーム部22fの各変換器CELLに送信する。
【0231】
図16(a)及び
図16(b)は、第5の実施形態に係る制御装置の動作の一例を模式的に表すグラフである。
図16(a)は、参照信号m(t)及びキャリア信号の一例を模式的に表す。
図16(b)は、第1アーム部22aに流れるアーム電流Iup(t)、変換器CELLの電荷蓄積素子74に流れる電流瞬時値ic(t)、電荷蓄積素子74の電流平均値、及び電荷蓄積素子74の平均電流Ic(t)の一例を模式的に表す。
【0232】
図16(a)及び
図16(b)は、U相上アームのアーム電流Iup(t)のピーク付近のタイミングを拡大して図示している。変換器CELL中の上側のスイッチング素子42の通電期間Δtは、PWM制御の原理から、Δt=m(t)×Tとなる。
【0233】
上側のスイッチング素子42がオンしているときに、変換器CELLの電荷蓄積素子74に電流が流れるので、電荷蓄積素子74の電流瞬時値ic(t)は、
図16(b)に表したように、台形波状の波形となる。Δtが小さい場合は、アーム電流Iup(t)はほぼ一定と考えられるので、その面積は、変換器CELLの上側の接続端子71から下側の接続端子72に流れるアーム電流Iup(t)に通電期間Δtから得ることができる。
面積=Iup(t)×Δt
【0234】
この面積をPWM制御のキャリア信号の周期Tで除算することにより、電荷蓄積素子74に流れる電流の平均値を次の計算式で得ることができる。
図16(b)では、この平均値を階段状の波形で示している。
Ic(t)=Iup(t)×Δt/T=Iup(t)×m(t)
この式は、第1の実施形態において説明した式と一致する。
【0235】
他の変換器CELLのPWM制御のキャリア信号は少し位相をずらして作られるが、キャリア信号の周波数が十分高ければ、位相差は小さいので、どの変換器CELLでも電荷蓄積素子74の平均電流はほぼ同じ値になる。PWM制御のキャリア信号の周波数が十分高い場合には、
図6や
図7などに表したように、階段状の波形は、ほぼ連続的な波形になる。
【0236】
このように、各変換器CELLのスイッチング素子41、42のオン・オフの切り替えの制御は、電荷蓄積素子74の直流電圧の低いものから優先的に上側のスイッチング素子42をオン状態にする制御に限ることなく、参照信号m(t)とキャリア信号との比較によってスイッチング素子41、42のオン・オフの切り替えを決定するPWM制御でもよい。
【0237】
PWM制御の場合においても、例えば、参照信号m(t)となるアーム電圧基準信号Vuprefに第2調波出力電圧変調信号V2urefを重畳させ、各アーム部22a~22fに第2調波電流を流すことで、上記各実施形態と同様に、各変換器CELLの用品の容量を低減させることができる。なお、PWM制御は、第4調波電流成分をさらに重畳させる場合や、アーム電流の正側のピークを小さくする場合などに用いてもよい。
【0238】
上記実施形態では、主回路部12にMMC型の電力変換器を用いている。主回路部12は、MMC型に限ることなく、例えば、複数の変換器CELLを直列に接続する他の方式の電力変換器でもよい。
【0239】
電力変換装置10は、直流送電システムに限ることなく、交流から直流への変換及び直流から交流への変換が必要な他の任意のシステムなどに適用してもよい。電力変換装置は、例えば、周波数変換装置、直流送電装置、無効電力補償装置、あるいは電力潮流制御装置などでもよい。主回路部12による交直変換は、交流から直流及び直流から交流の双方に限ることなく、交流から直流又は直流から交流の一方のみでもよい。
【0240】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0241】
2…交流電力系統、 3、4…直流送電線、 6…変圧器、 10…電力変換装置、 12…主回路部、 14、14a~14d…制御装置、 20a…第1直流端子、 20b…第2直流端子、 21a…第1交流端子、 21b…第2交流端子、 21c…第3交流端子、 22a…第1アーム部、 22b…第2アーム部、 22c…第3アーム部、 22d…第4アーム部、 22e…第5アーム部、 22f…第6アーム部、 23a~23f…リアクトル、 24a~24f…電流検出器、 25…電圧検出部、 26…電流検出部、 27…電圧検出部、 28…信号線、 41、42…スイッチング素子、 51、52…整流素子、 61、62…駆動回路、 71、72…接続端子、 74…電荷蓄積素子、 80…制御回路、 100…位相検出回路、 102…dq変換回路、 104…交流電流指令値作成回路、 106、108…減算器、 110、112…制御関数演算器、 114…dq逆変換回路、 116…第2調波振幅作成回路、 118…第2調波位相作成回路、 120…係数演算器、 122、124、126…余弦信号発生回路、 128、130、132…減算器、 134…係数演算器、 136…減算器、 138…加算器、 140…減算器、 142…加算器、 144…減算器、 146…加算器、 148、150、152、154、156、158…変換器選択回路、 160…第4調波振幅作成回路、 162…第4調波位相作成回路、 164…係数演算器、 166、168、170…余弦信号発生回路、 172、174、176…減算器、 178…第2調波電流指令値作成回路、 180、181、182…加算器、 183、184、185…係数演算器、 186…dq変換回路、 188…フィルタ処理回路、 190、192…減算器、 194、196…制御関数演算器、 198…dq逆変換回路、 200…第4調波電流指令値作成回路、 202…dq変換回路、 204…フィルタ処理回路、 206、208…減算器、 210、212…制御関数演算器、 214…dq逆変換回路、 220、222、224、226、228、230…PWM制御回路、 CELL…変換器、 LG1…第1レグ、 LG2…第2レグ、 LG3…第3レグ