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特許7510250細塵除去用多孔性複合粉体及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】細塵除去用多孔性複合粉体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/85 20060101AFI20240626BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240626BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20240626BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20240626BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20240626BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240626BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20240626BHJP
   C08K 3/10 20180101ALI20240626BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240626BHJP
   C08L 33/12 20060101ALI20240626BHJP
   C08L 25/06 20060101ALI20240626BHJP
   C08L 39/06 20060101ALI20240626BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
A61K8/85
A61K8/81
A61K8/19
A61K8/02
A61Q19/10
C08L101/00
C08K3/08
C08K3/10
C08K3/22
C08L33/12
C08L25/06
C08L39/06
C08L67/04
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019145669
(22)【出願日】2019-08-07
(65)【公開番号】P2020026429
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-04-19
(31)【優先権主張番号】10-2018-0093216
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】506213681
【氏名又は名称】アモーレパシフィック コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
【住所又は居所原語表記】100, Hangang-daero, Yongsan-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ, ヒョンスク
(72)【発明者】
【氏名】キム, ミンキ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ヒョン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】チョン, チャン ジョ
(72)【発明者】
【氏名】チョン, ヘジン
(72)【発明者】
【氏名】チャ, ナリ
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ソン-ウク
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-509420(JP,A)
【文献】特開昭64-068313(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0042823(US,A1)
【文献】特開平01-068313(JP,A)
【文献】特開昭50-144548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00- 90/00
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細塵除去用多孔性複合粉体であって、
前記多孔性複合粉体は、
高分子、及び
前記高分子に含浸された磁性粒子を含み、
前記多孔性複合粉体の粒径は、20~100μmの範囲であり、
前記高分子は、生分解性高分子である細塵除去用多孔性複合粉体。
【請求項2】
前記生分解性高分子は、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)、及び乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)からなる群より選ばれる1以上である請求項に記載の細塵除去用多孔性複合粉体。
【請求項3】
前記磁性粒子は、Fe、Ni、Co、MnFe、BaO・6Fe、Alの合金、Tiの合金、Cuの合金、及び酸化鉄からなる群より選ばれる1以上である請求項1又は2に記載の細塵除去用多孔性複合粉体。
【請求項4】
前記磁性粒子は、Feである請求項1~の何れか一項に記載の細塵除去用多孔性複合粉体。
【請求項5】
前記磁性粒子の含浸の割合は、前記多孔性複合粉体の全重量を基準にして50~90重量%の範囲である請求項1~の何れか一項に記載の細塵除去用多孔性複合粉体。
【請求項6】
前記多孔性複合粉体の気孔の直径は、100nm~10μmの範囲である請求項1~の何れか一項に記載の細塵除去用多孔性複合粉体。
【請求項7】
前記多孔性複合粉体の孔隙率(porosity)は、30~80%の範囲である請求項1~の何れか一項に記載の細塵除去用多孔性複合粉体。
【請求項8】
前記多孔性複合粉体の磁性の強さは、30~70emu/gの範囲である請求項1~の何れか一項に記載の細塵除去用多孔性複合粉体。
【請求項9】
前記多孔性複合粉体は、粒径が2.5μm以下の細塵を除去することである請求項1~の何れか一項に記載の細塵除去用多孔性複合粉体。
【請求項10】
請求項1~の何れか一項に記載の多孔性複合粉体を含む細塵除去用組成物。
【請求項11】
前記多孔性複合粉体の含量は、前記組成物の総重量を基準にして30~70重量%の範囲である請求項10に記載の細塵除去用組成物。
【請求項12】
当該組成物は化粧料組成物である請求項10又は11に記載の細塵除去用組成物。
【請求項13】
請求項1012の何れか一項に記載の組成物を肌の上に塗布する段階、及び
マグネチックアプリケータを用いて前記多孔性複合粉体を肌から脱着する段階、を含む細塵除去方法。
【請求項14】
請求項1~の何れか一項に記載の多孔性複合粉体の製造方法であって、
高分子を含む溶液を製造する段階と、
磁性粒子を前記高分子を含む溶液に分散させる段階、及び
前記磁性粒子が分散された溶液を噴霧乾燥する段階と、を含む細塵除去用多孔性複合粉体の製造方法。
【請求項15】
前記噴霧乾燥中に前記磁性粒子が分散された溶液を撹拌することである請求項14に記載の細塵除去用多孔性複合粉体の製造方法。
【請求項16】
前記高分子を含む溶液の溶媒は、ジクロロメタン(Dichloromethane anhydrous)、エタノール、及びアセトンからなる群より選ばれる1以上である請求項14又は15に記載の細塵除去用多孔性複合粉体の製造方法。
【請求項17】
前記噴霧乾燥段階の後に、洗浄及び乾燥を行う段階をさらに含む請求項1416の何れか一項に記載の細塵除去用多孔性複合粉体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書には、細塵除去効果に優れる多孔性複合粉体及びその製造方法が開示される。
【背景技術】
【0002】
ほこりが体内に蓄積されると、体内免疫力が低下し且つ心臓疾患や呼吸器疾患といった各種の疾患を誘発することがある。その上に気管支に狭窄を引き起こしたりもし、長期間吸い込むと喘息や肺疾患の有病率、早期死亡率を増加させる。
【0003】
肌はほこりと直接的に触れる身体の最も表側であって、有機体と環境との間のバリアの役割を果たし、汚染への露出が頻繁になると、かかるバリア機能が低下する。特に、細塵は毛穴の20分の1と小さいため、肌中に容易に浸透することができる。実際のところ、細塵のような大気汚染物質は、肌健康に深刻な影響を与えると知られている。短期的には早期老化、水分不足、小じわとしわを増加させ、長期的には取り戻せない肌損傷によって肌が環境的要素から身を保護する機能を喪失するとともに、皮膚癌のような深刻な病気を誘発させることがある。
【0004】
特に、肌の上に堆積しているほこりは、既存の各種のクレンザーを利用してその多くを除去することができるが、毛穴の中に浸透している細塵の除去は容易ではない。よって、毛穴の中に残存している肌に有害で且つ人体に致命的な障害を引き起こす有害物質である細塵を効果的に除去するための機能性複合粉体構造体に関する研究が必要である。また、毛穴の中で作用する原料であることから、刺激フリーで且つ安全な生体親和性素材の選択が重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国特許公開第2014-0118504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一側面において、本発明の目的は、多孔性複合粉体を用いて、肌に付着している細塵が含まれた皮脂などを効果的に多孔性複合粉体に吸引させることである。
【0007】
他の側面において、本発明の目的は、磁性粒子を含む多孔性複合粉体とマグネチックアプリケータを用いて、肌と毛穴の中に残存している細塵を効果的に除去することである。
【0008】
他の側面において、本発明の目的は、簡便な工程で磁性粒子が均一に含浸された細塵除去用多孔性複合粉体を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一側面において、本発明は、高分子、及び前記高分子に含浸された磁性粒子を含む細塵除去用多孔性複合粉体を提供する。
【0010】
他の一側面において、本発明は、前述した多孔性複合粉体を含む組成物を提供する。
【0011】
他の一側面において、本発明は、前述した組成物を肌の上に塗布する段階、及びマグネチックアプリケータを用いて前記多孔性複合粉体を肌から脱着する段階を含む細塵除去方法を提供する。
【0012】
他の一側面において、本発明は、前述した多孔性複合粉体の製造方法であって、高分子を含む溶液を製造する段階と、磁性粒子を前記高分子を含む溶液に分散させる段階、及び前記磁性粒子が分散された溶液を噴霧乾燥する段階と、を含む細塵除去用多孔性複合粉体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
一側面において、本発明に係る細塵除去用多孔性複合粉体は、多孔性を有する高分子に磁性粒子を均一に含浸させ、細塵が含まれた皮脂を気孔内部に吸いこませた後、マグネチックアプリケータを用いて肌から容易に脱着させることで肌と毛穴の中に残存している細塵を効果的に除去する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る細塵用多孔性複合粉体を製造するための噴霧乾燥工程の模式図である。
図2a】本発明に係る多孔性複合粉体の電子顕微鏡イメージである。
図2b図2aの表面をさらに拡大して撮影した電子顕微鏡イメージである。
図3a】本発明に係る多孔性複合粉体の吸油量を測定するための吸油量測定装備(S-500、Asahi Souken社製)を撮影した写真である。
図3b図3aの吸油量測定装備の一部を撮影した写真である。
図4】一般の酸化鉄及び本発明に係る多孔性複合粉体(PLGA+酸化鉄)の吸油量(ml/g)を測定した結果である。
図5a】本発明に係る多孔性複合粉体の電子顕微鏡イメージである。
図5b】本発明に係る多孔性複合粉体にPbが含まれた溶液を十分に吸収させた後のEDXマッピングイメージである。
図5c】本発明に係る多孔性複合粉体にCdが含まれた溶液を十分に吸収させた後のEDXマッピングイメージである。
図5d】本発明に係る多孔性複合粉体にHgが含まれた溶液を十分に吸収させた後のEDXマッピングイメージである。
図5e】本発明に係る多孔性複合粉体にAsが含まれた溶液を十分に吸収させた後のEDXマッピングイメージである。
図5f】本発明に係る多孔性複合粉体にSbが含まれた溶液を十分に吸収させた後のEDXマッピングイメージである。
図6a】ティッシュで毛穴模倣体の表面を30回擦ってから、顕微鏡にて毛穴模倣体表面を撮影した写真である。
図6b】ティッシュで包んだ磁石(1000Gauss)で毛穴模倣体の表面を30回擦ってから、顕微鏡にて毛穴模倣体表面を撮影した写真である。
図7】本発明に係る細塵除去用多孔性複合粉体の特徴を簡単に示した図である。
図8】本発明に係る多孔性複合粉体が細塵を除去するメカニズム(細塵シャトル)を示した模式図である。
図9】本発明に係る多孔性複合粉体の磁性を酸化鉄の含量に応じて測定した結果を示したものである。
図10a】本発明に係る多孔性複合粉体の気孔直径と差分侵入の対数値との関係をプロットしたグラフである。
図10b】本発明に係る多孔性複合粉体の空隙率(Porosity)を測定した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
用語の定義
本明細書において「磁性粒子」とは、強磁性(Ferromagnetic、Fe、Ni、Coなど)、フェリ磁性(Ferrimagnetic、Fe、MnFe、BAO6Feなど)、常磁性(Paramagnetic、Al、Ti、Cu合金など)、超常磁性(superparamagnetic、Feなど)など、磁性を持つ粒子であれば磁性の程度や種類に制限されることなく、いずれも含む。また、前記磁性粒子は含浸可能なものであってよい。
【0016】
本明細書において「ほこり」とは、大気中に混ざっている微粒子の総称であって、通常、10mm以下の粒径を有する浮遊物質を意味する。特に、粒径が10μm以下のものを細塵、2.5μm以下のものを超細塵、0.1μm以下のものを極細塵とも言う。ここで、粒径とは、各細塵の粒径の平均値を意味してよい。ほこりは、砂、土、及び花粉といった自然から由来した物質または炭素、炭素燃焼物、金属塩及び重金属といった産業工程から由来した物質などを含む物質である。ほこりの形態は、ヒューム(fume)、ミスト(mist)、煙、蒸気、または煙霧であってよい。
【0017】
本明細書において「粒径」とは、粒子の直径を意味し、定義された粒径の範囲はそれぞれの単一粒子の直径の範囲を意味する。
【0018】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは、特に逆の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含んでよいことを意味する。
【0019】
例示的な具現例の説明
以下、本発明について詳しく説明する。
【0020】
細塵除去用多孔性複合粉体
本発明の例示的な具現例では、高分子、及び前記高分子に含浸された磁性粒子を含む細塵除去用多孔性複合粉体を提供する。
【0021】
従来、多孔性シリカや多孔性高分子粒子を用いて毛穴の中に存在する細塵を皮脂と一緒に吸いこむことは可能であるが、一度毛穴の中に入った多孔性粒子を外部に再び取り出すことは至難であるということが致命的な問題点である。
【0022】
これを克服するために、本発明者らは、多孔性高分子中に磁性を帯びる磁性粒子を均一に含浸して、毛穴の中に浸透して皮脂と混ざっている細塵を毛細管現象によって吸いこんだ後、マグネチックアプリケータを用いて前記多孔性複合粉体を毛穴の外に容易に取り出して肌から安全に脱着させるための細塵除去用多孔性複合粉体を発明した(図8)。
【0023】
具体的に、噴霧乾燥技術を導入すれば、多孔性高分子中に磁性粒子が均一に含浸された複合粉体を単一工程で製造可能であり、当該高分子の場合、肌親和性を極大化させるために生分解性高分子が適用可能であることが本技術の大きな長所である(図7)。
【0024】
一具現例において、前記高分子は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)、及び乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)からなる群より選ばれる1以上であってよく、ジクロロメタン、エタノール、アセトンなどに溶解されるものであれば特に制限されない。
【0025】
一具現例において、前記高分子は生分解性高分子であってよく、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)、及び乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)からなる群より選ばれる1以上であってよく、好ましくは、乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)であってよい。本発明では、生分解性高分子を適用することで、プラスチックマイクロビーズのイシューを排除するとともに、毛穴の中で作用するにもかかわらず肌に対する生体親和性を向上させることができる。
【0026】
一具現例において、前記磁性粒子は、Fe、Ni、Co、MnFe、BaO・6Fe、Alの合金、Tiの合金、Cuの合金、及び酸化鉄からなる群より選ばれる1以上であってよく、好ましくは、Feであってよい。
【0027】
一具現例において、前記多孔性複合粉体の全重量を基準に前記磁性粒子の含浸の割合は、50~90重量%の範囲であってよく、例えば、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上または70重量%以上であってよく、且つ88重量%以下、86重量%以下、84重量%以下、82重量%以下または80重量%以下であってよい。前記含浸の割合が50重量%未満であると、磁性が弱いため毛穴から皮脂を吸いこんだ多孔性複合粉体を取り除き難いことがあり、90重量%を超えると、磁性は増加するものの、皮脂吸油量が減少することがある。
【0028】
一具現例において、前記多孔性複合粉体の粒径は、10~100μmの範囲であってよく、例えば、15μm以上、20μm以上、25μm以上または30μm以上であってよく、且つ95μm以下、85μm以下、80μm以下、75μm以下、70μm以下、65μm以下、60μm以下、55μm以下または50μm以下であってよい。前記粒径が10μm未満であると、肌上の細塵が含まれた皮脂などを十分に吸いこみ難いことがあり、前記粒径が100μmを超えると、実際に肌上への塗布の際に粒子感または異物感が感じられることがある。
【0029】
一具現例において、前記多孔性複合粉体の気孔の直径は、100nm~10μmであってよく、例えば、150nm以上、200nm以上、250nm以上、300nm以上、350nm以上、400nm以上、450nm以上、または500nm以上であってよく、且つ9μm以下、8μm以下、7μm以下、6μm以下、5μm以下、4μm以下、3μm以下、2μm以下、または1μm以下であってよい。前記気孔の直径が100nm未満であると、気孔の内部に細塵が含まれた皮脂を吸いこみ難いことがあり、10μmを超えると、機械的強度が低下して粒子が砕け易くなる可能性が高い。
【0030】
一具現例において、前記多孔性複合粉体の平均気孔直径(Average Pore Diameter、4V/A)は、0.01~2μmであってよく、例えば、0.05μm以上、0.1μm以上、0.2μm以上、または0.3μm以上であってよく、且つ1.7μm以下、1.5μm以下、1.3μm以下、1.1μm以下、0.9μm以下、0.8μm以下、0.7μm以下、0.6μm以下、0.5μm以下、または0.4μm以下であってよい。
【0031】
一具現例において、前記多孔性複合粉体の孔隙率(porosity)は30~80%であってよく、例えば、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上でであってよく、且つ75%以下、70%以下、または65%以下であってよい。前記孔隙率は、実際に細塵を含む皮脂を吸油することができる気孔の全体割合を意味しており、30%未満であると、細塵除去効果が微々たるものとなることがあり、80%を超えると、機械的強度が低下して粒子が砕け易くなる可能性が高い。
【0032】
一具現例において、前記多孔性複合粉体の磁性の強さは、磁力計(Magnetometer)で測定した値が30~70emu/gであってよく、例えば、35emu/g以上、40emu/g以上、45emu/g以上、または50emu/g以上であってよく、且つ65emu/g以下、60emu/g以下、または55emu/g以下であってよい。前記磁性の強さが30emu/g未満であると、肌から細塵を含む皮脂を吸いこんだ本発明に係る多孔性複合粉体を除去し難いことがあり、70emu/gを超えると、マグネチックアプリケータからの前記複合粉体の取り外しが至難となることがある。
【0033】
一具現例において、前記多孔性複合粉体は、粒径が2.5μm以下の細塵を除去することができ、例えば、2μm以下、1.5μm以下、または1μm以下の細塵も除去することができる。本発明に係る多孔性複合粉体は、粒径の小さい細塵が毛穴の中に浸透しても、毛穴の中に皮脂と混ざっている細塵を毛細管現象にて吸いこみ、後述するマグネチックアプリケータを用いて毛穴の外へと容易に取り出すことができるので、肌上の有害物質を簡易に除去することができる。
【0034】
本発明の例示的な具現例では、前述した多孔性複合粉体を含む細塵除去用組成物を提供する。
【0035】
一具現例において、前記組成物の総重量を基準にして前記多孔性複合粉体の含量は、30~70重量%の範囲であってよく、例えば、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上、または50重量%以上であってよく、且つ65重量%以下、60重量%以下、または55重量%であってよい。前記含量が30重量%未満であると、細塵除去効果が微々たるものとなることがあり、70重量%を超えると、異物感が感じられることがあり、肌に有害となることがある。
【0036】
一具現例において、前記組成物は化粧料組成物であってよく、化粧料組成物の外形は化粧品学または皮膚科学的に許容可能な媒質または基剤を含有する。これは局所適用に適合したあらゆる剤形で、例えば、溶液、ゲル、固体、練り無水生成物、水相に油相を分散させて得たエマルジョン、懸濁液、マイクロエマルジョン、マイクロカプセル、微細果粒球若しくはイオン型(リポソーム)及び非イオン型の小胞分散剤の形態で、またはクリーム、スキン、ローション、パウダー、軟膏、スプレー若しくはコンシールスティックの形態で提供されてよい。これらの組成物は、当該分野の通常的な方法によって製造されてよい。また、本発明に係る組成物は、泡沫(foam)の形態で、または圧縮された推進剤をさらに含有したエアロゾル組成物の形態でも用いられてよい。
【0037】
本発明の一実施例に係る前記化粧料組成物は、その剤形において特に限定されるところがなく、例えば、柔軟化粧水、収斂化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、アイエッセンス、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、前記化粧料組成物を含むクレンジングティッシュ、パック、パウダー、ボディローション、ボディクリーム、ボディオイル及びボディエッセンスなどの化粧品に剤形化されてよい。
【0038】
本発明の剤形がペースト、クリームまたはゲルである場合には、担体成分として、動物繊維、植物繊維、ワックス、パラフィン、澱粉、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、シリカ、タルクまたは酸化亜鉛等が用いられてよい。
【0039】
本発明の剤形がパウダーまたはスプレーである場合には、担体成分として、ラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、カルシウムシリケートまたはポリアミドパウダーが用いられてよく、特に、スプレーである場合には、さらにクロロフルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタンまたはジメチルエーテルといった推進体を含んでよい。
【0040】
本発明の剤形が溶液または乳濁液である場合には、担体成分として、溶媒、溶媒和剤または乳濁化剤が用いられてよく、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3‐ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコールまたはソルビタンの脂肪酸エステルがある。
【0041】
本発明の剤形が懸濁液である場合には、担体成分として、水、エタノールまたはプロピレングリコールといった液状希釈剤、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル及びポリオキシエチレンソルビタンエステルといった懸濁剤、微小結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガーまたはトラガカントなどが用いられてよい。
【0042】
本発明の剤形が界面活性剤含有クレンジングである場合には、担体成分として、脂肪族アルコールソルフェート、脂肪族アルコールエーテルソルフェート、スルホコハク酸モノエステル、イセチオネート、イミダゾリニウム誘導体、メチルタウレート、サルコシネート、脂肪酸アミドエーテルソルフェート、アルキルアミドベタイン、脂肪族アルコール、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物性油、リノリン誘導体またはエトキシル化グリセロール脂肪酸エステルなどが用いられてよい。
【0043】
本発明の一実施例に係る化粧料組成物には、前記多孔性複合粉体以外に、機能性添加物及び一般的な化粧料組成物に含まれる成分がさらに含まれてよい。前記機能性添加物としては、水溶性ビタミン、油溶性ビタミン、高分子ペプチド、高分子多糖、スフィンゴ脂質及び海藻エキスからなる群より選ばれた成分を含んでよい。
【0044】
本発明に係る化粧料組成物には、さらに、前記機能性添加物とともに、必要に応じて、一般的な化粧料組成物に含まれる成分を配合してもよい。その他に含まれる配合成分としては、油脂成分、保湿剤、エモリエント剤、界面活性剤、有機及び無機顔料、有機粉体、紫外線吸収剤、防腐剤、殺菌剤、酸化防止剤、植物抽出物、pH調整剤、アルコール、色素、香料、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、精製水などが挙げられる。
【0045】
本発明の例示的な具現例では、前述した組成物を肌の上に塗布する段階;及びマグネチックアプリケータを用いて前記多孔性複合粉体を肌から脱着する段階;を含む細塵除去方法を提供する。
【0046】
前記マグネチックアプリケータは、先がちびたさじ状の形態を有していてよいが、これに制限されない。また、ネオジミウム磁石を用いてヘッド部分の底面の表面に2000~4000Gの磁性を呈し得るようにすることができるが、これに制限されない。
【0047】
細塵除去用多孔性複合粉体の製造方法
本発明の例示的な具現例では、前述した多孔性複合粉体の製造方法であって、高分子を含む溶液を製造する段階;磁性粒子を前記高分子を含む溶液に分散させる段階;及び前記磁性粒子が分散された溶液を噴霧乾燥する段階;を含む細塵除去用多孔性複合粉体の製造方法を提供する。
【0048】
具体的に、図1を参照すると、前記高分子をDCMのような有機溶媒に溶解して高分子を含む溶液を準備し、前記溶液に磁性粒子を入れてこれをホモジナイザー(Homogenizer)を用いて分散させることができる。その後、前記磁性粒子が分散された溶液をノズルを介して噴霧乾燥して細塵除去用多孔性複合粉体を製造することができる。
【0049】
このように噴霧乾燥技術を用いて高分子の内部に磁性粒子が均一に含浸された多孔性複合粉体を単一の工程で簡易に製造することができる。
【0050】
このとき、噴霧乾燥器の内部湿度は30%以上に保持し、内部温度は室温を保持してよく、供給量(Feed rate):20%、吸引装置(Aspirator):70%、20atmの条件で噴霧乾燥してよい。
【0051】
一具現例において、前記噴霧乾燥の際、ポンプに流入される前の容器で前記磁性粒子が分散された溶液を撹拌してよく、これにより、噴霧乾燥の前に磁性粒子が沈殿することを防止することができる。
【0052】
一具現例において、前記高分子を含む溶液の溶媒は、ジクロロメタン(Dichloromethane anhydrous)、エタノール及びアセトンからなる群より選ばれる1以上であってよく、好ましくは、ジクロロメタンであってよい。
【0053】
一具現例において、前記噴霧乾燥段階の後に、メタノール洗浄及びトレー乾燥する段階;をさらに含んでいてよく、これにより、残存溶媒を完全に除去した多孔性複合粉体を得ることができる。
【0054】
以下、下記の実施例により本発明をより具体的に説明する。なお、下記の実施例は本発明についての理解を助けるために例示の目的から提供したものであるに過ぎず、本発明の範疇及び範囲がこれに限定されるものではない。
【0055】
実施例 - 細塵用多孔性複合粉体の製造
先ず、磁性粒子(酸化鉄、大東化成工業社製)、乳酸・グリコール酸共重合体(lactic acid/glycolic acid copolymer、PLGA、GALACTIC社製)、ジクロロメタン(DCM、Dichloromethane anhydrous、Sigma-Aldrich社製、純度>99.8%)を準備し、下記のように磁性粒子が含浸された乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)複合粉体(以下、AP球)を製造した。
【0056】
1)PLGA 40gを溶媒DCM 1Lに溶解させた。
2)磁性粒子40gをPLGA溶液に入れた後、ホモジナイザー(Homogenizer)を用いて分散させた。
3)磁性粒子が分散されたPLGA溶液を本出願人自社製作の噴霧乾燥器を用いて噴霧乾燥した(図1参照)。
4)噴霧乾燥器の内部湿度は30%以上に保持し、内部温度は室温を保持した。
5)供給率(Feed rate):20%、吸引装置(Aspirator):70%、20atmの条件で噴霧乾燥した。磁性粒子が分散されたPLGA溶液は噴霧乾燥中に持続的に撹拌機にて撹拌した。
6)噴霧乾燥された磁性粒子/PLGA複合粉体を十分に洗浄した後、乾燥し、残存溶媒を完全に除去した後に収得した。
【0057】
<多孔性複合粉体の表面観察>
図2a及び2bを参照すると、表面写真から直径数百ナノメートルの気孔が形成されており、且つ酸化鉄粒子が密に含浸されていることを確認することができた。そして、酸化鉄:PLGA=80:20のサンプルの場合、1gを500℃で180分間処理して高分子を全て燃やしてから減少した重さを測定する方式にて実際の強熱減量(loss on ignition)を測定した結果、19~21%の水準であり、このことから、複合粉体の内部にも酸化鉄が均一に含浸されているということを確認することができた。
【0058】
<多孔性複合粉体の気孔構造の確認>
AP球のポア構造を確認した結果、図10a及び10bを参照すると、浸透体積(Total Intrusion Volume)は0.62mL/gであって、後述する吸油量測定装備(S-500、Asahi Souken社製、図3a及び3b)を用いて測定された吸油量(0.48mL/g)と類似の水準を示すのが確認された。また、平均気孔直径(Average Pore Diameter(4V/A))は0.33μmであって、前記SEMイメージ上のポアの直径(図2a及び2b)と類似した値を示した。
【0059】
また、実際に皮脂を吸油することができる気孔の全体割合を意味する孔隙率(Porosity)は、実施例の場合は61%の水準であって、これは酸化鉄粒子を80%も含浸しているにも拘わらず、内部気孔構造を保持していることから奏される効果である。
【0060】
実験例 - 吸油量テスト
AP球が細塵を含んでいる皮脂を気孔内部へと有効に吸いこむことができるかどうかを確認するために、保有中の吸油量測定装備(S-500、Asahi Souken社製、図3a及び3b)を用いて、皮脂と最も類似した物性を有するMCTオイル(CAS.No73398-61-5)に対する吸油量を、下記のような方法にてテストし、その結果を図4に示した。
【0061】
1)測定対象のパウダーの重さを測定した後、サンプルチャンバ(chamber)に投入した。
2)吸油量測定装備が作動を開始すると、オイルポンプがオイルを一滴ずつチャンバ(chamber)の中に落とし、チャンバ(chamber)中では2台のミキサーが回転をしながらパウダーとオイルとを練りこんだ。
3)投入されるオイルの量が増加するに伴い、ミキサーにかかるトルク(Torque)値も増加していき、最大値に達したところで試験を完了した。
4)このとき、最大トルク(Torque)の70%に該当するオイルの量(ml)を試料の量で除算した値をパウダーの吸油量(ml/g)として算出した。具体的に、オイル量14.09ml、試料量29.35gであって、吸油量の値は14.09/29.35=0.48ml/gと算出された。
【0062】
図4を参照すると、酸化鉄自体の吸油量は0.28ml/gであるが、PLGA内部に酸化鉄を含浸させたAP球の場合は吸油量が0.48ml/gとほぼ2倍程度大きく増加することを確認した。これは、AP球が酸化鉄を80%も含有しているにも拘わらず、複合粉体の表面と内部に多数の気孔が形成されていて孔隙率(porosity)が保持されることで生じる効果である。よって、酸化鉄を単独で用いる場合よりはAP球を用いる場合のほうが皮脂に含まれた細塵をより多量吸いこむことができ、且つ、気孔内部に捕獲することから有害な細塵を肌から隔離させる効果が大きいといえる。
【0063】
実験例 - 重金属吸入シミュレーション
細塵がAP球の内部に実際に吸いこまれるかどうかを確認するために、5大重金属スタンダードソリューション(Cd、Hg、Sb、Pb、Asのそれぞれを200ppm)をAP球に1時間十分に吸収させてから乾燥し、SEM-EDX Mapping(電子顕微鏡元素分析)によってそれぞれの元素毎に異なる色相にて定性分析した結果を図5に示した。実験の結果、AP球粒子の内部に5大重金属元素が実際に均一に分布していることを確認することができた。
【0064】
実験例 - 細塵除去性能評価
毛穴模倣体として、複数の50μm直径の人工毛穴及び複数の200μm直径の人工毛穴を有する毛穴模倣体の製造が可能な金属鋳型(metal mold)を製作した後、前記鋳型にポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane、PDMS;SYLGARD(登録商標) 184(Sigma社製、アメリカ)を原料として使用)をコートし、前記PDMSが完全に硬化したときに鋳型から取り出して毛穴模倣体を得た。そして、細塵ミミック素材としては、500nm以下のカーボンブラックナノ粒子を用い、下記のようにAP球の細塵除去性能を評価し、図6に示した。
【0065】
1)MCT(Medium Chain Triglyceride oil)オイルとB.G.(Butylene Glycol)及びカーボンブラックを特定の割合(MCTオイル:B.G.:カーボンブラック=77.9:20.8:1.3)で混合して細塵溶液を製造した。
2)前記1)で製造した細塵溶液とは別に、AP球(PLGA+酸化鉄)とMCTオイルを50:50の割合で混合し、細塵除去用多孔性複合粉体を含む組成物を製造した。
3)毛穴模倣体の表面に細塵溶液を塗った後、その上に細塵除去用多孔性複合粉体を含む組成物を塗布した。
4)ティッシュ及びティッシュで包んだ磁石(1000Gauss)でそれぞれ毛穴模倣体の表面を30回ずつ擦ってから、顕微鏡にてその表面を観察した。
【0066】
図6a及び6bを参照すると、ティッシュだけで除去したときは、毛穴内部のカーボンブラックはほとんど除去されていないのに対し、ティッシュで包んだ磁石で除去したときは、毛穴内部のカーボンブラックが大部分除去されたことを観察することができた。このことから、磁性が与えられた多孔性粒子であるAP球が毛穴模倣体内部のカーボンブラックを吸いこみ、外部から磁力を加えると、簡易に毛穴から脱着が可能であることが確認された。
【0067】
実験例 - 磁性の強さ測定
実施例で製造されたAP球の酸化鉄含浸割合を50重量%、80重量%及び100重量%(100%の場合、単に磁性を相対比較するための酸化鉄サンプル)にし、それによる磁性の強さを測定した。図9を参照すると、磁性の強さは、磁性粒子(酸化鉄)の割合に正比例することを確認することができ、実施例で製造されたように酸化鉄を80重量%含浸する場合、磁性の強さも100%の酸化鉄に対して約80%程度に減少したことを確認した。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図5e
図5f
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10a
図10b