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特許7510254ナノシリカ粒子を含む組成物および療法のためにTリンパ球を活性化する方法におけるそれらの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】ナノシリカ粒子を含む組成物および療法のためにTリンパ球を活性化する方法におけるそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/00 20060101AFI20240626BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240626BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20240626BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240626BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240626BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240626BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240626BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240626BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240626BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240626BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240626BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240626BHJP
   C12M 3/02 20060101ALI20240626BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20240626BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20240626BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
A61K33/00
A61K9/10
A61K31/675
A61K35/17
A61K47/04
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/18
A61K47/26
A61P35/00
A61P37/04
A61P43/00 107
A61P43/00 121
C12M3/02
C12N5/0783
C12Q1/06
G01N33/53 V
G01N33/53 Y
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2019507262
(86)(22)【出願日】2017-08-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2017070183
(87)【国際公開番号】W WO2018029247
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2020-07-28
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-22
(31)【優先権主張番号】1613772.1
(32)【優先日】2016-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1701827.6
(32)【優先日】2017-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518160355
【氏名又は名称】ユナイテッド キングダム リサーチ アンド イノベーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】パウエル,ジョナサン・ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ファリア,ヌーノ・ジョルジ・ロドリゲス
(72)【発明者】
【氏名】ヒューイット,レイチェル・エレイン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィス,ブラッドリー・マイケル
(72)【発明者】
【氏名】バストス,カルロス
【合議体】
【審判長】前田 佳与子
【審判官】岩下 直人
【審判官】井上 千弥子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104825488(CN,A)
【文献】特開2009-155262(JP,A)
【文献】日産化学の機能性材料 無機コロイドの特徴,2016年06月,https://web.archive.org/web/20160613024857/http://www.nissanchem.co.jp:80/products/materials/inorganic/about/
【文献】制御性T細胞が大腸がんの進行に関与していた!―腸内細菌のコントロールによる大腸がん治療に期待―,2016年06月01日,https://web.archive.org/web/20160601142608/https://www.amed.go.jp/news/release_20160426.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-33/44
A61K9/00-9/72
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象/個人に関する療法のためにTリンパ球を活性化する方法における使用のための0.5~10nmの平均直径を有する非晶質のシリカ粒子を含む組成物であって、該活性化されたTリンパ球が癌の処置における使用のためのものであり、そして、該Tリンパ球の活性化が、Tリンパ球によるCD69および/またはCD25の発現における増大により特性付けられる組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該CD69および/またはCD25の発現における増大が、未刺激のベースライン対象と比較して少なくとも20%である、処置の方法における使用のための組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該Tリンパ球が、T細胞である、処置の方法における使用のための組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該Tリンパ球が、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラーT細胞(NKT)またはガンマデルタT細胞である、処置の方法における使用のための組成物。
【請求項5】
請求項1-4のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該Tリンパ球の活性化が、炎症性Th1型応答を誘導することを含む、処置の方法における使用のための組成物。
【請求項6】
請求項1-5のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該Tリンパ球の活性化が、CD40L、LAP/GARPおよび/またはFoxP3から選択される1種類以上のさらなるマーカーの発現を増大させることを含む、処置の方法における使用のための組成物。
【請求項7】
請求項1-6のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、リンパ球の活性化が、IFN-γの発現を増大させることを含む、処置の方法における使用のための組成物。
【請求項8】
請求項1-7のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該組成物が、実質的にリンパ球の増殖を誘導しない、処置の方法における使用のための組
成物。
【請求項9】
請求項1-8のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該シリカ粒子が、2~5nmの平均直径を有する、処置の方法における使用のための組成物。
【請求項10】
請求項1-9のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該組成物が、場合によりポリオール類、糖類ならびに/または第四級アンモニウム塩類、例えばコリンおよびカルニチン、から選択される安定化剤を含む、処置の方法における使用のための組成物。
【請求項11】
請求項1-9のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該組成物が、安定化剤を含まない、処置の方法における使用のための組成物。
【請求項12】
請求項1-11のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該シリカ粒子組成物が、沈殿により得ることができる、処置の方法における使用のための組成物。
【請求項13】
請求項1-12のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該シリカ粒子組成物が、実質的には癌細胞に対して直接細胞傷害性ではない、処置の方法における使用のための組成物。
【請求項14】
請求項1-13のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該方法が、該対象に1以上の特定のT細胞系列または表現型を抑制または増進することができる薬剤を投与することを含む、処置の方法における使用のための組成物。
【請求項15】
請求項14に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該薬剤が、シクロホスファミドである、処置の方法における使用のための組成物。
【請求項16】
請求項1-15のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該組成物が、(i)10.5より大きいpHのシリケート溶液および(ii)酸性緩衝溶液を混合することによるインサイチュ合成によって得られるコロイド状シリカ組成物であって、そして、該コロイド状シリカ組成物が、4.0~8.5のpHを有する、処置の方法における使用のための組成物。
【請求項17】
請求項16に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該組成物が、(i)10.5より大きいpHのシリケート溶液および(ii)酸性緩衝溶液を混合することによるインサイチュ合成によって得られるコロイド状シリカ組成物であって、そして、該コロイド状シリカ組成物が、4.0~6.5のpHを有する、処置の方法における使用のための組成物。
【請求項18】
請求項16に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該組成物が、(i)10.5より大きいpHのシリケート溶液および(ii)酸性緩衝溶液を混合することによるインサイチュ合成によって得られるコロイド状シリカ組成物であって、そして、該コロイド状シリカ組成物が、6.5~8.5のpHを有する、処置の方法における使用のための組成物。
【請求項19】
請求項16-18のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該コロイド状シリカ組成物が、対象への投与のためのものである、処置の方法における使用のための組成物。
【請求項20】
請求項19に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該方法が、該コロイド状シリカ組成物を該対象に該溶液の混合から12分未満で投与することを含む、処置の方法における使用のための組成物。
【請求項21】
請求項1-20のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該組成物が、静脈内投与のためのものである、処置の方法における使用のための組成物。
【請求項22】
請求項16~21のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該酸性緩衝溶液が、塩酸、カルボン酸、例えばクエン酸、または酸性アミノ酸、例えばグリシン、を含む、処置の方法における使用のための組成物。
【請求項23】
請求項3~13のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該方法が、T細胞を含む試料を対象から得て、該試料を該シリカ粒子組成物と接触させて該試料中のT細胞を活性化させ、そして該活性化されたT細胞を該対象に投与することを含む、T細胞療法の方法である、処置の方法における使用のための組成物。
【請求項24】
請求項1-23のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該活性化されたTリンパ球が、ヒトの対象の処置における使用のためのものである、処置の方法における使用のための組成物。
【請求項25】
請求項1-23のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該活性化されたTリンパ球が、非ヒト動物の処置における使用のためのものである、処置の方法における使用のための組成物。
【請求項26】
請求項25に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該活性化されたTリンパ球が、獣医学的使用のためのものである、処置の方法における使用のための組成物。
【請求項27】
請求項26に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該活性化されたTリンパ球が、イヌ、ネコまたはウマの処置における使用のためのものである、処置の方法における使用のための組成物。
【請求項28】
対象または個人の癌の処置における使用のための療法的投与のためのシリカ粒子組成物の有効性を決定するインビトロの方法であって、該方法が、以下の工程:
(a)Tリンパ球の試料を該シリカ粒子組成物と接触させ;
(b)該試料中に存在する該Tリンパ球によるCD69および/またはCD25の発現を決定し;そして
(c)該Tリンパ球によるCD69および/またはCD25の発現における増大を引き起こすシリカ粒子組成物を、療法における使用に適しているものとして同定する;
を含む、方法。
【請求項29】
対象または個人の癌の処置における使用のための療法的投与のためのシリカ粒子組成物の有効性を決定するためのインビトロのアッセイであって、該アッセイが、以下の工程:
(a)Tリンパ球の試料を該シリカ粒子組成物と接触させ;
(b)該試料中に存在する該Tリンパ球によるCD69および/またはCD25の発現を決定し;
(c)CD69および/またはCD25発現の量を、対照値に対して測定または定量化し、該CD69および/またはCD25発現の量が該対照値と比較して増大している場合
、該シリカ粒子組成物を療法的投与に適しているものとして選択する;
を含む、アッセイ。
【請求項30】
請求項28~29のいずれか1項に記載の方法またはアッセイであって、該Tリンパ球によるCD69および/もしくはCD25の発現における増大が、参照値と比較して決定される方法またはアッセイ。
【請求項31】
請求項30に記載の方法またはアッセイであって、該参照値が、未刺激のベースライン対照である方法またはアッセイ。
【請求項32】
Tリンパ球によるCD69および/またはCD25の発現の、シリカ粒子組成物の、癌の処置における療法的有効性に関するマーカーまたはバイオマーカーとしての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノシリカ粒子を含む組成物および療法のためにTリンパ球を活性化する方法におけるそれらの使用に、特に療法における使用のためのシリカ粒子組成物の有効性を特性付けるバイオマーカーに関する。これらのマーカーの使用に基づくアッセイおよびスクリーニング法も、開示され、ナノシリカ組成物または対象に投与される前に生体外で活性化されているTリンパ球を生成および/または送達するためのデバイスおよびキットも、開示される。
【背景技術】
【0002】
ケイ素は、環境的に至る所にある元素であり、西側世界における成人は、現在1日あたり約15~50mgを摂取している。天然に、それは、シリケート類として存在し、ここで、ケイ素は、酸素原子に結合している。ケイ酸およびシリカも、そのような構造に関して用いられる用語である。これらは、最も単純なモノケイ酸(オルトとも呼ばれる)からシリカ粒子までに及ぶ。本明細書において、シリケートおよびシリカという用語は、ケイ素、酸素および水素を含有する材料を意味するように互換的に用いられることができ、それは、他のイオンを含有することもできるが、主にケイ素および酸素を含有し、大きさ、凝集の程度、pH等のような要素により決定される水素含有率を有する。可溶性シリケートの正確な生物学的役割は、まだ理解されていないが、多くの証拠が、結合組織の健康における重要な役割を指し示している(Jugdaohsingh et al., 2008)。典型的な結合組織は、骨、関節、血管、皮膚、毛髪および爪を含むが、骨粗鬆症、骨減少症ならびに他の筋骨格および関節障害、全てのタイプの癌、様々な皮膚の病気、脈管性、心血管性および冠動脈性心疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、アルツハイマー病および様々な形態の認知障害、様々なタイプの感染症、創傷および潰瘍、胃腸、肝臓、腎臓および免疫関連障害ならびにホルモンに関連する変化および障害を含む多様な医学的条件における可溶性またはポリマー性シリケートの食事的、栄養補助的または療法的利益に関する注目に値する証拠も、存在する。シリケートの有益な栄養的および療法的作用は、他の動物、特に他の哺乳類にまで及ぶと思われる。
【0003】
シリケートは、経口栄養補助剤として用いられてきたが、投与後の有効な獲得(吸収)を可能にする配合物の達成は、簡単ではない。その天然に存在する無機形態のケイ素は、オルトケイ酸として可溶性である。しかし、例えば飲料水中のその濃度は、徐々に凝集および/またはサイズが増大し、そうして容易には再溶解されない粒子の重合の開始を防ぐために、比較的低い(≦1.7mM)必要があり、これは、天然条件下ではこれがpH<9における水性シリケートの最大平衡溶解度であるためである。この挙動は、濃縮形態は消化管中で溶解して吸収を可能にせず、一方で希釈形態は結果として大量の栄養補助剤(例えば20~100ml/日)が摂取される必要性をもたらすため、栄養補助用ケイ素の開発をひどく苦しめてきた。
【0004】
通常、特定の化学的部分、例えば配位子が、そうでなければ生理的pHにおいて沈殿するであろう陽イオン/陰イオンに結合して可溶性にするために用いられ得るが、シリケートは、単量体が典型的にはあらゆる他の分子に関してよりもそれ自身に関してより大きい親和性を有する(すなわち自己集合を経る)ため、扱いにくく、ケイ素の濃度がより高いほど、水溶液中でのその自己集合を止めることがより難しくなる。これは、生物学的に利用可能なシリケート組成物を生成するための代わりの戦略につながってきた。
【0005】
しかし、加えて、意図的または偶然の両方で、研究者らは、沈殿したシリケート組成物の生物学的作用を研究してきた。例えば、ポリマー性のナノサイズおよびミクロンサイズのシリケートの細胞への作用が、調べられてきた。
【0006】
米国特許出願公開第2011/0229577号(Kerek)は、殻様構造を有するケイ酸粒子を開示しており、ここで、粒子は、反応混合物のpHがまず低下し、次いで上昇する条件下で凝集し、pH2.1または9.2より大きいpHであると言われている組成物をもたらす。米国特許出願公開第2011/0229577号において記載されている凝集したシリケート組成物は、インビトロ細胞培養物に対して低い毒性を有し、カルシウムATPアーゼポンプの阻害剤であり、全ての細胞型においてアポトーシスを引き起こすものとして記載されている。腫瘍の大きさを低減するためのそのような凝集したシリケート類の使用が、報告されている。
【0007】
高レベルのコリンにより凝塊形成から安定化されているシリカ組成物は、食品栄養補助剤として販売されており、“コリン安定化オルトケイ酸”と呼ばれている(Biosil(商標);塩化コリンで安定化されたオルトケイ酸、国際公開第95/21124号および欧州特許第1 371 289 A号を参照)。
【0008】
米国特許出願公開第2009/0130230号(Stanley)は、炎症性の病気、癌、細菌およびウイルス感染症の処置ならびに感染および未感染創傷の処置のためのそれらの使用を記載している。この参考文献は、処置は先天免疫系の活性化により起こるという仮説を立てている。
【0009】
国際公開第2015/121666号(Medical Research Council)は、安定化剤、例えばポリオール類、糖類および/または第四級アンモニウム塩類、例えばコリンおよびカルニチン、を含むナノシリカ組成物を開示している。特に、国際公開第2015/121666号は、ポリマー性ケイ酸およびナノシリカ粒子を含む安定化されたポリマー性シリケート組成物を生成するためのプロセスを提供しており、ここで、シリケートの重合および粒径の成長は、制御され、結果として得られる粒子は、シリケートの濃度、pHおよび/または安定化剤の組み合わせにより大きさが安定にされている。ある範囲の医学的状態の処置のための、そしてケイ素栄養補助のためのこれらの組成物の使用が、記載されている。
【0010】
Tリンパ球は、体からの感染した細胞および癌性細胞の除去の組織化(CD4+ヘルパーT細胞)および実行(CD8+細胞傷害性T細胞)の両方を直接担当している適応免疫系の細胞である。従って、それらは、免疫系の極めて重要な部分である。インビトロでのシリケートによる多クローン性のヒトT細胞活性化は、1994年に最初に報告され(Ueki et al., 1994)、ケイ肺症のような病気におけるシリケート類のT細胞活性化との現在起こっている関係にもかかわらず、T細胞相互作用の大きさ、構造、程度ならびにシリケートおよびT細胞の相互作用を定めている作用機序は、理解し難いままである(Hayashi et al., 2010, Lee et al., 2012, Kusaka et al., 2014)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許出願公開第2011/0229577号
【文献】国際公開第95/21124号
【文献】欧州特許第1 371 289 A号
【文献】米国特許出願公開第2009/0130230号
【文献】国際公開第2015/121666号
【非特許文献】
【0012】
【文献】Jugdaohsingh et al., 2008
【文献】Ueki et al., 1994
【文献】Hayashi et al., 2010
【文献】Lee et al., 2012
【文献】Kusaka et al., 2014
【発明の概要】
【0013】
概して、本発明は、ポリマー性シリカまたはシリカポリマーとも呼ばれるシリカ粒子、特に0.5nm~20nmの標準的な粒径測定による平均サイズを有するシリカ構造物を含む組成物は、培養物中または全血中のリンパ球を活性化するために用いられることができるという発見に基づいている。この新しく観察された技術的作用は、T細胞活性化が癌、感染および他の慢性疾患に関するシリカ処置の有効性に関するマーカーおよびバイオマーカーとして用いられる可能性を開く。特定の理論により束縛されることを望むわけでは一切ないが、本発明者らは、シリカ粒子はT細胞受容体に結合し、例えば増大しているCD69および/またはCD25発現により検出可能であるようにそれらを部分的に活性化すると信じている。これは、T細胞が、それらが(例えば癌細胞または感染した細胞の)それらの同族の抗原に出会った際に活性化されることを意味する。これは、T細胞が無活動である可能性がより低く、従って活性化が獣医学およびヒト医学の両方において癌または特定の慢性疾患で誘導されるT細胞消耗を克服するために役立つ可能性があることを意味する。
【0014】
慣習的に、一方向において直径100nm未満の一次粒子が、たとえこれが1~100nmで体積により100万倍に及んでいる可能性があっても、大ざっぱに“ナノ”と呼ばれている。さらに、ほとんどの研究者は、単に“ナノ構造状”である凝集体および集塊に焦点を合わせている。真に分散したナノ粒子は、それほど十分に研究されておらず、直径10nm未満の(すなわちタンパク質の大きさの範囲の)ナノ粒子は、生物医学的適用において比較的少ない注目しか受けてこなかった。例えば、広範囲にわたる研究は、シリカ粒子(-Si-O-Si-、それらの最も凝集した形態においてSiOと呼ばれる)は、大きさおよび結晶化度に応じて、非晶質の(不十分に凝集した)大きい粒子に関する穏和な活性から結晶質石英に関する強い炎症促進性(結晶化度にかかわらずナノシリカにより部分的に模倣される作用)までに及ぶ差次的細胞活性を示すことを見出している。しかし、超微細シリカ粒子(直径10nm未満)に基づく研究は、少数しか存在しない。データの不足にもかかわらず、超微細シリカ粒子は、それらの形成が水性単量体性Si(OH)の濃度が約1.7mM総[Si]を超えた際に起こるため、至る所にある。そのような‘過飽和’シリケート製剤を用いて、Stanleyらは、癌が結果として得られる混合物を用いて処置され得ることを教示している。Kerekは、超微細なシリケート粒子が癌の処置において有用である可能性があることを繰り返し、それらの合成に関するいくつかの可能性のある方法を列挙している。
【0015】
従って、第1側面において、本発明は、対象/個人に関する療法のためにTリンパ球を活性化する方法における使用のための0.5~20nmの平均直径を有するシリカ粒子を含む組成物を提供し、ここで、Tリンパ球の活性化は、Tリンパ球によるCD69および/またはCD25の発現における増大により特性付けられる。例として、好ましくはCD69および/またはCD25の発現における増大は、例えば未刺激のベースライン対象と比較して少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%または少なくとも80%である。末梢血単核細胞(PBMC)を用いてCD69および/またはCD25発現を決定するための細胞アッセイが、下記で提供される実施例において記載されているが、これらのバイオマーカーに関する代替のアッセイが、当業者には明らかであろう。
【0016】
一般に、本発明者らは、Tリンパ球の活性化は本明細書で記載されるシリカ粒子組成物を用いて達成されることができるが、先行技術において記載された組成物、例えばKerekの教示(上記)に従って作製された組成物またはコリン安定化オルトケイ酸(Biosil(商標))を用いても達成されることはできないことを見出している。
【0017】
一般に、本発明において用いられるナノシリカ組成物との接触により活性化されたTリンパ球は、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、細胞傷害性ナチュラルキラーT細胞またはガンマデルタT細胞のようなT細胞である。これは、ヘルパー(CD4+)T細胞および細胞傷害性(CD8+)T細胞を用いる実験において支持される。あるいは、または加えて、Tリンパ球の活性化は、CD40L、LAP/GARPおよび/またはFoxP3から選択されるT細胞活性化の1以上のさらなるマーカーの発現を増大させる。
【0018】
CD25(分化抗原群25)は、IL-2受容体のアルファ鎖である。それは、活性化T細胞上に存在するI型膜貫通タンパク質である。
CD69(分化抗原群69)は、ヒト膜貫通C型レクチンタンパク質である。Tリンパ球およびナチュラルキラーT(NKT)細胞の活性化は、インビボおよびインビトロの両方において、CD69の発現を誘導する。
【0019】
CD154とも呼ばれるCD40リガンドまたはCD40Lは、主に活性化Tリンパ球上で発現され、TNFスーパーファミリーの分子の一員であるタンパク質である。
LRRC32(ロイシンリッチリピート含有32)としても知られるGARP(糖タンパク質A反復優勢(Repetitions Predominant))は、血小板および活性化FOXP3制御性T細胞上の潜在型TGF-βの表面発現に必須であるタンパク質である。GARPおよび潜在関連ペプチド(LAP)の増大した発現は、制御型Tリンパ球(Treg)の活性化および拡張(expansion)の指標である。
【0020】
スカルフィン(scurfin)としても知られているFoxP3(フォークヘッドボックス(Forkhead box)P3)は、免疫系の応答に関わっているタンパク質である。FOXタンパク質ファミリーのメンバーであるFOXP3は、制御型T細胞(Treg)の発達および機能における制御経路の主要制御因子として機能するようである。
【0021】
あるいは、または加えて、ある場合には、リンパ球の活性化は、IFN-γの発現における増大により同定されることができる。本明細書で記載される実験は、さらに、組成物はリンパ球の活性化を引き起こすが、それらは実質的にリンパ球の細胞増殖を誘導しないことを示している。
【0022】
当該技術で周知であるように、可溶性ケイ酸および次第に凝集するシリケート組成物の間には平衡が存在する。従って、本発明において、“安定化されたポリマー性シリケート組成物”は、本明細書で記載される特性を有するポリマー性ケイ酸およびナノシリケート粒子ならびにそれらがそれを含む組成物中または配合物中で平衡状態にあるケイ酸およびポリケイ酸の可溶性形態を含む。
【0023】
当該技術において、ケイ酸がヒトおよび他の動物における健康および疾患予防または治癒に有益であることを示唆する証拠が、現れている。一般に、本発明の組成物は、ポリマー性シリケート組成物を含み、ここで、ナノシリケート類の成長してより高次のポリシリケート類およびシリケート粒子を形成する自然な傾向が、成長抑制物質として作用することができる、すなわちポリケイ酸が成長してゲルおよびより凝集したシリケート粒子または所望の大きさのポリマーおよび粒子より大きいポリマーおよび粒子を形成する自然な傾向を阻害する有機化合物のような物質の包含により阻害されている。さらに、ある側面において、本発明者らは、このアプローチはその組成物が生理的に許容可能なpH、特に中性もしくは弱酸性pHまたは弱アルカリ性pHにおいて安定であることを意味することを見出している。
【0024】
本明細書で記載される方法のさらなる利点は、合成の間のpH、ケイ素濃度および安定化剤濃度の選択的制御により、粒径が、望ましい粒径に応じて直径0.5nm未満の小さいポリマーから直径10または10nmに至るまで調節されることができること、そしてこれが次いで選択された粒径での対象または動物への投与を可能にするために概説された本発明に従って安定化されることができることである。当業者には、粒径はある範囲の大きさを指すこと、そして本明細書で引用される数は平均直径、最も一般的には粒子のその範囲の平均直径を指すことは、明らかであろう。
【0025】
さらなる側面において、本発明は、対象/個人に関する療法のためにTリンパ球を活性化するための医薬品の調製における0.5~20nmの平均直径を有するシリカ粒子を含む組成物の使用を提供し、ここで、Tリンパ球の活性化は、Tリンパ球によるCD69および/またはCD25の発現における増大により特性付けられる。
【0026】
さらなる側面において、本発明は、対象または個人への療法的投与のためのシリカ粒子組成物の有効性を決定する方法を提供し、その方法は、以下の工程を含む:
(a)Tリンパ球の試料をシリカ粒子組成物と接触させ;
(b)試料中に存在するTリンパ球によるCD69および/またはCD25の発現を決定し;そして
(c)Tリンパ球によるCD69および/またはCD25の発現における増大を引き起こすシリカ粒子組成物を、療法における使用に適しているものとして同定する。
【0027】
さらなる側面において、本発明は、対象または個人への療法的投与のためのシリカ粒子組成物の有効性を決定するためのアッセイを提供し、そのアッセイは、以下の工程を含む:
(a)Tリンパ球の試料をシリカ粒子組成物と接触させ;
(b)試料中に存在するTリンパ球によるCD69および/またはCD25の発現を決定し;
(c)CD69および/またはCD25発現の量を、対照値に対して測定または定量化し、CD69および/またはCD25発現の量が対照値と比較して増大している場合、そのシリカ粒子組成物を療法的投与に適しているものとして選択する。
【0028】
さらなる側面において、本発明は、シリカ粒子組成物の投与を含む療法の有効性を決定するための方法または対象もしくは個人へのその投与のプロトコルを提供し、その方法は、以下の工程を含む:
(a)シリカ粒子組成物またはその投与のプロトコルで処置された対象または個人からのTリンパ球の試料を接触させ;
(b)試料中に存在するTリンパ球によるCD69および/またはCD25の発現を決定し;そして
(c)工程(b)においてTリンパ球によるCD69および/もしくはCD25の発現における増大が観察されている対象もしくは個人を、シリカ粒子組成物もしくはその投与のプロトコルによりうまく処置されたものとして同定し;または
(d)工程(b)においてTリンパ球によるCD69および/もしくはCD25の発現における増大が観察されない対象もしくは個人を同定し、その対象もしくは個人に提供されたシリカ粒子組成物もしくはその投与のプロトコルを修正し;
(e)場合により、対象または個人がシリカ粒子組成物またはその投与のプロトコルによりうまく処置されるまで工程(a)~(d)を繰り返す。
【0029】
本明細書で述べられるアッセイおよび方法において、Tリンパ球によるCD69および/もしくはCD25の発現における増大は、参照値、例えば未刺激のベースライン対照と比較して決定される。
【0030】
さらなる側面において、本発明は、Tリンパ球によるCD69および/もしくはCD25の発現のシリカ粒子組成物の療法的有効性に関するマーカーまたはバイオマーカーとしての使用を提供する。
【0031】
さらなる側面において、本発明は、療法的使用のためのシリカ組成物を生成するためのデバイスを提供し、そのデバイスは、以下のものを含む:
pH>10.5のシリケート溶液を含む第1容器、酸性緩衝溶液を含む第2容器;
シリケート溶液および酸性緩衝溶液の流動を制御するための流動制御手段;ならびに
2種類の溶液が対象への投与の前に混ざるようにコロイド性シリカ組成物を送達するための第1および第2容器と流体連結された出口。
【0032】
一態様において、デバイスは、シリカ組成物のバッチ合成のために用いられ、さらに、溶液を混合してコロイド性シリカ組成物を生成するための第1および第2容器と流体連結された混合チャンバーを含む。あるいは、デバイスが本発明のシリカ組成物のフロー合成のためのものである場合、溶液の混合は、それらが送達される際にその場で、例えば対象への投与の前に静脈内注射ライン中で起こることができる。
【0033】
本発明のさらなる側面において、デバイスは、生体外Tリンパ球療法に適合していることができる。この側面において、デバイスは、さらに、対象から得られたTリンパ球を含む生物学的試料をコロイド性シリカ組成物と接触させて療法のためにTリンパ球の活性化を引き起こすためのチャンバーおよび/または対象から抽出されたTリンパ球を含む試料を接触チャンバーに送達するための、そして活性化されたTリンパ球を対象に戻すための手段を含むことができる。
【0034】
さらなる側面において、本発明は、(i)pH>10.5のシリケート溶液を含む第1容器および(ii)酸性緩衝溶液を含む第2容器ならびに(iii)シリケート溶液および酸性緩衝溶液を混合して4.0~8.5、より好ましくは4.0~6.5のpHを有する療法的に有効なコロイド性シリカ組成物を生成するための説明書、を含むキットを提供する。好ましくは、酸性溶液は、塩酸、カルボン酸、例えばクエン酸または酸性アミノ酸、例えばグリシン、を含む。
【0035】
本発明の態様は、ここで添付の図面を参照して例として、そして限定としてではなく記載されるであろう。しかし、本発明の様々なさらなる側面および態様が、本開示を考慮して当業者には明らかであろう。
【0036】
“および/または”は、本明細書で用いられる場合、2つの明記された特徴または構成要素のそれぞれの、他方を伴うかまたは伴わない具体的な開示として受け取られるべきである。例えば、“Aおよび/またはB”は、(i)A、(ii)Bならびに(iii)AおよびBのそれぞれの具体的な開示として、あたかもそれぞれが本明細書において個々に述べられたかのように受け取られるべきである。
【0037】
文脈が別途指示しない限り、上記で述べられた特徴の記載および定義は、本発明の特定の側面または態様に一切限定されず、記載されている全ての側面および態様に等しく適用される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明のシリカ粒子組成物およびKerek(米国特許出願公開第2011/0229577号)の実施例4に従って合成されたナノシリカ粒子(Si(OMe))によるT細胞活性化。細胞は、ナノ粒子で処理され、活性化が24時間後に評価された。
図2】本発明のシリカ粒子組成物およびch-OSA(登録商標)(コリン安定化オルトケイ酸、BioSil(商標))によるT細胞活性化。
図3】Kerekと比較した本発明のシリカ粒子組成物によるCD4+およびCD8+の発現。
図4】Kerek(+陽性対照、SEB)と比較した本発明のシリカ粒子組成物によるCD4+およびCD8+の発現。
図5】BioSil(商標)と比較した本発明のシリカ粒子組成物によるCD4+およびCD8+の発現。
図6】BioSil(商標)(+陽性対照、SEB)と比較した本発明のシリカ粒子組成物によるCD4+およびCD8+の発現。
図7】(3nmより大きい分散物に関して)アルカリ性ケイ酸ナトリウム溶液の23~40mM Si±塩化ナトリウムの終濃度へのpH中和(pH7)および約20時間のインキュベーションにより、または500mMアルカリ性シリケート溶液のpH0.8~1への調節および約20時間のインキュベーション(3nm未満の分散物)により調製された後細胞培養物に添加された異なる大きさの超微細ナノシリカによるCD4およびCD8 T細胞の活性化(n=>8)。粒子の平均直径(DV0.5)が、報告されている。
図8】‘HS-7’と呼ばれ、アルカリ性ケイ酸ナトリウム溶液の23mM Siの終(fnal)濃度へのpH中和(pH7)および約20時間のインキュベーションにより調製された後細胞培養物に添加された超微細ナノシリカによる異なるTh系列細胞型の活性化(n=6~7)。粒子は、反復分析から平均直径(DV0.5)=3.4~3.8nmを有していた。
図9】suc.uSANS(a)、インサイチュuSANS(b)およびそれらのビヒクル対照(c)の、HUVEC細胞のコンフルエンスへの作用。データはHS7と呼ばれる研究された第3のナノシリカに関しては、それが3つの濃度(1、2および4mM Si)全てにおいて短期間(1時間未満)のインキュベーション後に細胞毒性(すなわち細胞の形状における変化および/または細胞死)を誘導し、4mMの濃度では4~5時間のインキュベーション後に細胞のほとんどが死んでいたため、示されることができないことに注意。より低い濃度のHS7(0.1、0.25および0.5mM Si)を用いた追跡実験では、0.5mM Siにおいてさえも毒性が存在した。
図10】時間経過にわたって測定されたpZap70は、ZAP-70のリン酸化をもたらすT細胞受容体と相互作用するナノシリカに由来するT細胞の急速な活性化を実証している。
図11】モリブデートアッセイにより決定される酸性貯蔵の間のuSANSの化学的不安定性。全ての材料は、室温または4℃で貯蔵された。スクロースで安定化されたuSANS(Suc uSANS)は、pH2.15±0.15または1.5±0.1で貯蔵され、一方で安定化されていない材料(NS uSANS)は、pH 1.5±0.1で貯蔵された。より高いODは、より大きい化学的不安定性(すなわちより凝集していないシリケート類)を示している。
図12】中和(pH7)の際の時間の経過にわたるuSANSの化学的不安定性。モリブデートアッセイが、中和の前(pH2.3)および後(t 0時間~t 6時間)の可溶性シリケート(Si(OH)4)の不安定性をuSANSと比較するために用いられた。
図13】様々なインキュベーション期間(1分間~1時間)後のインサイチュで形成されたuSANS(40mM Si)の化学的不安定性。
【発明を実施するための形態】
【0039】
ケイ素の生物学的役割およびシリケート類の化学
証拠は、ケイ酸(単量体性またはポリマー性のどちらでも)はヒトおよび他の動物において健康および疾患の予防または治癒に有益であることを示唆している。しかし、上記のように、当該技術における根本的な問題は、ケイ酸(その単量体は、Si(OH)と表される)が自己集合し、9.0以下のpHおよび水性シリケートの最大溶解度(25℃において1.7mM、Jugdaosingh et al.(上記)の図1を参照)より上の濃度においてそれが不溶性の種を形成することである。当該技術で周知であるように、可溶性ケイ酸および次第に凝集するシリケート種、すなわちモノ-、ジ-およびトリ-ケイ酸、ポリケイ酸ならびにナノシリカ粒子の間に平衡が存在する。ケイ酸の溶液からの成長のプロセスは、単一の単位が大きさにおいて成長してますます発達した(すなわち不安定性、可溶性および/または溶解可能性がより低い)状態になり、そうして添加されたアルカリの非存在下でSi(OH)に戻ることがよりできなくなる発達を含む。成長は、重合、凝塊形成、凝集または可溶性種の表面沈着による大きさの増大を含むことができる。ポリケイ酸の成長は、最終的に適切な条件下でのゲルの形成をもたらす。これらの要因は、水性シリケートのこれらの濃度より上および生理的に関連するpHにおいてシリケート組成物を安定化することを極めて困難にする。
【0040】
従って、シリケートの投与は、その投与量が、濃度および化学形態の両方の点で望ましい作用のために必要とされるように、かつ生理的健康と適合可能であるpHにおいて、かつ健康に有害な作用を有し得るシリケートの永続性ナノ粒子を避けるであろう方法でケイ素を送達しなければならないため、難題である。特に特筆すべきことは、投与量の適用の間、3種類の顕著な変化が、一般に生理的環境により起こることである。第1に、生理的流体による希釈があると考えられ、第2に、pH変化があると考えられ、第3に、イオン強度における変化があるであろう。これらの影響の正味の作用は、投与されたシリケートの挙動を決定するであろう。
【0041】
ナノシリカ組成物およびTリンパ球の活性化
我々は、本発明のナノシリカ組成物、より好ましくはシリカの超微細ナノ粒子(直径10nm未満)は、例えばTリンパ球の表面上のマーカーCD25およびCD69の増大により測定されるようなTリンパ球の活性化を刺激することができることを見出している。特定の理論により束縛されることを望むわけでは一切ないが、本発明者らは、これがナノシリカのCD3-Tリンパ球受容体複合体(本明細書においてCD3-TCR複合体と呼ばれる)への直接的結合により起こると信じている。重要なことだが、大きさはナノシリカ組成物がTリンパ球を活性化することができるかどうかの1つの予測因子であると思われるが、他の要因がこの特性に寄与し得る。例えば、高レベルのコリンによる凝塊形成から安定化されているシリカの超微細ナノ粒子は、食品栄養補助剤として販売されており、コリン安定化オルトケイ酸と呼ばれている(Biosil(商標);塩化コリンで安定化されたオルトケイ酸、国際公開第95/21124号および欧州特許第1 371 289 A号を参照)が、これらは、我々のアッセイにおいてTリンパ球の活性化を刺激することができなかった(図2および5参照)。別の例において、本明細書において実施例4で比較として調製されたKerekにより報告されたナノシリカ(米国特許出願公開第2011/0229577号)は、シリケート塩類のアルカリ性溶液のpH調節により調製された一部の新しく沈殿したナノシリカ類と比較して、CD4 Tリンパ球の非常に弱い活性化誘導剤であり、CD8 Tリンパ球の活性化の中程度の誘導剤であった(図1、3および4参照)。さらなる例は、国際公開第2015/121666号において報告されたスクロース安定化ナノシリカ粒子が、非安定化粒子と同じ方法でCD4およびCD8 Tリンパ球を活性化することができたことである。従って、一側面において、本発明は、Tリンパ球を刺激するためのシリカ粒子組成物の有効性を決定するためのアッセイを、これが単純な物理化学的決定からは明らかではないため、提供する。今度は、これは、CD8およびCD4 Tリンパ球へのあらゆる所望の差次的作用を含め、シリカナノ粒子の活性が選択されることを可能にすることができ、それは、よりよい標的化Tリンパ球活性化療法を可能にすることができる。
【0042】
それでもなお、本発明者らは、Tリンパ球の特定の亜型または‘系列’が、それらの超微細ナノシリカへの曝露により同時に活性化され得ることも見出している。例えば、CD4+ヘルパーT(Th)細胞は、それらが制御に関わっている免疫反応のタイプに応じていくつかの異なるTh系列に都合よく分けられることができる(Geginat et al., 2015)。いわゆるThl CD4+ヘルパー細胞は、細胞傷害性Tリンパ球応答を媒介し、単球を活性化する可能性があり、それらは、IFN-γの産生により特性付けられる(Geginat et al., 2015)。一方で、いわゆる制御性CD4+ヘルパーT細胞(Treg)は、免疫応答の抑制を担当しており、これらは、フォークヘッドボックスP3(FoxP3)タンパク質ならびにLAPおよびGARPの表面発現により同定されることができる(Sakaguchi et al., 2010, Gauthy et al., 2013; Stockis et al., 2009)。一方で、いわゆるTh2 CD4+ヘルパーT細胞は、例えばB細胞応答の媒介を担当している可能性がある。CD154とも呼ばれるCD40リガンドは、Th2細胞上で発現されてB細胞のCD40受容体と会合し、B細胞の増殖および生存を促進する可能性がある(Crotty, 2015; Elgueta et al., 2009)。
【0043】
本発明者らは、多数の系列タイプのTリンパ球がこれらの超微細ナノシリカ粒子によるTリンパ球活性化に感受性であり得ることを見出している(図8)。これは、Tリンパ球がいくつかの療法的適用において用いられることを可能にする。第1に、そのアッセイは、制御性、Th1またはTh2が処置により優先的に選択され得るように、この作用をTリンパ球の1つの系列に向けて選択する、または極性を与えるナノシリカの特定のタイプ/形態を同定するために用いられることができる。例えば、Th1細胞の選択的活性化は、癌またはウイルス性疾患に望ましい可能性がある。Tregの選択的活性化は、自己免疫または炎症性疾患に望ましい可能性がある。
【0044】
第2に、慢性投与により、Tリンパ球の活性化は、全ての、またはさらに言えば選択されたTリンパ球のタイプの‘消耗’、換言すれば活性化の逆行、従って減弱(dampening)(脱活性化)を達成するために療法的に用いられることができる。例えば、これは、古典的な自己免疫、例えば多発性硬化症もしくはリウマチ様関節炎、古典的なTh1、例えばクローン病もしくはリウマチ様関節炎、またはTh2、例えば喘息もしくは潰瘍性大腸炎かどうかにかかわらず、‘炎症性疾患’において療法的に役立つ可能性がある。自己免疫疾患は、Th1またはTh2の偏り(polarisation)を有する可能性があり、従ってリウマチ様関節炎は2回言及されている。
【0045】
第3に、全ての、または選択されたTリンパ球を活性化する、または消耗させるためのシリカ粒子の使用は、特定のT細胞系列または表現型を抑制または増進する療法の同時投与と合わせて用いられ、それにより応答のタイプを選択することができる。例えば、シクロホスファミドによる癌療法のためのT reg Tリンパ球系列の隔絶(Becker et al . , 2013)は、そうしてナノシリカ療法によるエフェクターTリンパ球系列の選択された‘成長’を可能にし、それは、慢性Tリンパ球消耗を回避する計画において実施されることができるであろう。そのような目的のための同時投与は、ナノシリカの投与の前および/または間および/または後であることができ、1種類以上の薬剤を含むことができる。
【0046】
胃腸管からはほとんど吸収されないため、療法用ナノシリカを非経口で送達することが、望ましいであろう(Jugdaohsingh et al., 2000)。静脈内投与は、特に望ましい可能性があることが、認識されている(国際公開第2015121666号)。しかし、これは、血流中での有効な療法的用量を達成するために高濃度で注射され得るナノシリカが、脈管系を裏打ちしている内皮細胞に対して最小限に毒性であることを必要とするであろう。実際、国際公開第2015/121666号において開示されているナノシリカの一形態であるいわゆるuSANS粒子は、最小限に持続性であり、従って以前にStanleyにより米国特許出願公開第2009/0130230号において開示されたナノシリカ(本明細書においてHS7粒子と呼ばれる)よりも内皮細胞に対する毒性が低い。HS7粒子は、0.5mMより上では比較的毒性がより高く、従って療法的用量でのそれらの臨床的適用を低減する。しかし、HS7粒子よりも良好に許容されるにもかかわらず、uSANS粒子は、なお内皮細胞に対して中程度の毒性を示す(図9)。しかし、本発明者らは、ナノシリカによるTリンパ球のゼータ鎖関連プロテインキナーゼ70の急速なリン酸化(pZap70)により実証されるように、ナノシリカ粒子のTCRとの非常に急速な相互作用が存在することを発見しており(図10)、これは、血液または単離された細胞の体外処置がナノシリカを送達するための有用な方法であることを意味する。特に、それらの組織または生体流体からある程度単離されている細胞または全血中に存在するままの細胞のどちらも、長時間体から出ている必要がなく、次いでナノシリカで処置されて療法的使用のために再注入されることができる。これは、ナノシリカによる免疫細胞およびタンパク質結合ならびにナノシリカ粒子のいくらかの溶解が、その再投与の際のナノシリカによる内皮細胞の相互作用および損傷を最小限にすると考えられるため、内皮細胞の損傷を免れさせるであろう。
【0047】
従って、一側面において、本発明は、対象/個人に関する療法のためにTリンパ球を活性化する方法における使用のための平均直径0.5~20nmを有するシリカ粒子を含む組成物を提供し、ここで、その方法は、対象への投与の前にインサイチュ合成によりシリカ粒子の組成物を生成することを含む。本発明の他の側面におけるように、Tリンパ球の活性化は、一般にTリンパ球によるCD69および/またはCD25の発現における増大により特性付けられる。
【0048】
あるいは、または加えて、本発明は、T細胞を含む試料を対象から得て、そのT細胞試料を本発明のシリカ組成物と接触させて試料中のT細胞を活性化させ、そして活性化されたT細胞を対象に投与する(すなわち戻す)ことを含むT細胞療法の方法における使用のための組成物を提供する。
【0049】
本発明に対するさらなる態様として、本発明者らは、最小限に毒性のuSANSがインサイチュ合成により生成されることができること(すなわちバッチ合成またはフロー合成アプローチのどちらかにより臨床適用のほぼ直前に生成されるuSANS)を発見した。これらのインサイチュuSANSは、バッチ合成により準中性緩衝系において生成されることができる。インサイチュ合成は、2つの溶液系を含む:(i)10.5より大きいpHのシリケート溶液(すなわちシリケートはコロイド状ではなく可溶性である)、それは、(ii)酸性緩衝溶液(カルボキシレート、例えばシトレートまたはアミノ酸、例えばグリシンを含む)により中和されている。その2つの溶液の混合は、結果として弱酸性pH4.0および6.5(より好ましくはpH5.0~6.0)をもたらし、次いでクラスター/コロイド性シリケート類(すなわちナノシリカ)が、急速に形成される。これらのコロイドは、徐々により凝集した状態になり、次いで選択された不安定性の点において投与されることができる。好ましくは、インキュベーションは、遅いインキュベーション(バッチインサイチュ合成)に関してpH4.0~6.5、または速いインキュベーション(フローインサイチュ合成)に関してpH6.5~8.5で実施されるであろう。インキュベーションの間のシリケートの濃度は、好ましくは10~100mM、好ましくは20~60mMの範囲である。インキュベーション時間は、好ましくはインサイチュバッチ合成に関して15~60分間またはインサイチュフロー合成に関して10秒間~5分間(すなわち混合および静脈内導入の時点の間の時間の長さ)である。例えば、酸およびシリケート構成要素を混合する際の30分間のインキュベーションは、(i)40mM Si、(ii)室温、(iii)pH5.3(pH試験紙を用いてpH 4.0~5.0として測定された)におけるバッチ合成に適しているであろう。加えて、説明目的のため、フロー合成は、(反応管内で)室温で1分間のインキュベーションしか必要としない可能性があり、pH7.0~8.0において(2種類の構成要素の混合の際に)50mM Siを含むことができる。有用には、本発明者らは、合成条件は本明細書において記載されるモリブデートアッセイ(不安定性アッセイ)の使用により最適な粒子の不安定性に関して微調整されることができることを発見した。
【0050】
本発明に対するさらなる態様として、インサイチュuSANSが、フローシステムにより生成されることができる。これは、フローシステムは静脈内送達系または細胞単離/処置システムに連結されることができ、従って合成および送達の間の取り扱い(および汚染の可能性)を最小限にすることができるため、有利である。このフロー合成において、2種類の溶液が、ライン中で混合される:(i)10.5より大きいpHのシリケート溶液(すなわちコロイド状ではなく可溶性シリケート)および(ii)酸性溶液。その2つの流れを組み合わせた際、中性に近いpH(pH6.5~8.0)が、達成され、それは、結果として対象または対象の細胞に対外で直接投与されることができる不安定なシリケート類の急速な形成をもたらす。有用には、このフロー合成システムは、高度に調整可能である。例えば、より凝集した粒子(必要とされる場合)は、より長い反応管を用いることにより生成されることができ、それは結果として対象またはデバイスへの注入の前の(反応管中での)より長いインキュベーション時間をもたらす。
【0051】
有用には、インサイチュuSANSは、T細胞の活性化において最も標準的なuSANSと同じくらい有効であるが、より毒性が低い。特に、有効物質の急速な希釈が存在する静脈内送達に典型的な短い曝露期間にわたって、インサイチュuSANSは、試験された最も高い濃度(4mM;図9)においてさえも毒性の完全な欠如を示している。これらの粒子は、損傷を引き起こすには永続的に内皮細胞と共に存在する必要があり、それは、処置プロトコルでは起こらないであろう。インサイチュuSANSシステムのさらなる利点は、その構成要素溶液の貯蔵寿命が、緩衝剤(例えばシトレート)およびシリケート溶液の両方が極めて安定であるため、事実上‘無限’であることである。これは、低い貯蔵pHおよび場合により安定化剤の存在により安定化されているにもかかわらずモリブデートアッセイにより実証され得るように徐々に不安定性がより低くなる標準的なuSANSとは対照的である(図11)。標準的なuSANSに対するさらなる制限は、それらの低いpHのため、これらの溶液が投与(例えば静脈内送達)前に中和されなければならないことである。しかし、中和の際に、不安定性は急速に低下し、それは、臨床的に望ましくない特徴である。実際、この作用は、中和の直後に測定可能であり、12分後には、コロイドは、もはや臨床的に使用可能ではない(図12)。
【0052】
ナノシリカ組成物
本発明は、場合により1種類以上の安定化剤により安定化された0.5nm~20nmの平均直径を有するシリカ粒子の形態のナノシリカを含む組成物に関する。本出願において記載される発見は、本発明のナノシリカ組成物がT細胞を活性化する方法において用いられることができ、従って特に下記でより詳細に論じられるような癌および感染症の処置における対象または個人のための療法を提供することができることを示している。
【0053】
あるいは、安定化剤を含む安定化されたナノシリカ組成物を含む組成物およびそれらの生成のためのプロセスが、国際公開第2015/121666号(Medical Research Council)において記載されており、それは、参照によりそのまま援用される。本発明のナノシリカ組成物との使用に適した安定化剤の例は、ポリオール類、糖類および/または第四級アンモニウム塩類、例えばコリンおよびカルニチンを含む。特に、国際公開第2015/121666号は、ポリマー性ケイ酸およびナノシリカ粒子を含む安定化されたポリマー性シリケート組成物を生成するためのプロセスを提供し、ここで、シリケート類の重合および粒径の成長は、制御され、結果として得られる粒子は、シリケートの濃度、pHおよび/または安定化剤の組み合わせにより大きさが安定にされている。ある態様において、組成物は、さらに金属陽イオンでドープされていることができ、これは、これらが粒径の成長を誘導することができ、組成物に有用な追加の特性を提供することができるためである。
【0054】
本発明のナノシリカ組成物は、可溶性ポリケイ酸および20nm以下、ある場合においてより好ましくは10nm未満、より好ましくは5nm、4nm、3nm、2nm、1nmまたは0.5nm未満である平均直径を有するナノシリカ粒子を含む。ある態様において、粒子は、約0.5nm~約2nm、または約0.5nm~約3nm、または約0.5nm~約4nm、または約0.5nm~約5nm、または約0.5nm~約10nm、または約0.5nm~約15nm、または約0.5nm~約20nm、または約5nm~約20nm、または約5nm~約15nm、または約5nm~約10nm、または約10nm~約15nm、または約10nm~約20nm、または約15nm~約20nmの範囲であることができる。好ましい組成物は、0.5~10nmの平均直径を有するシリカ粒子および2~5nmの平均直径を有するシリカ粒子を含む。
【0055】
ポリマー性ケイ酸および/またはナノシリカ粒子の不溶性の性質は、上記のモリブデン酸アッセイにより、これは可溶性ケイ酸画分を決定するため、間接的に確証されることができる。一般に、その材料は、可溶性ケイ酸と平衡状態にあると考えられ、典型的な可溶性ケイ酸濃度は、pH9.0未満において約2mM未満である。本発明のナノシリカ組成物は、(例えば、好ましくは50nmより大きい、より好ましくは20nmより大きい平均サイズを有する)より大きいナノ粒子、ポリケイ酸ゲルおよび-OH基が事実上存在しないケイ酸の完全に凝集した形態である二酸化ケイ素(SiO)を含むシリケート類のより凝集した形態と対比され得る。ポリケイ酸の粒子の大きさは、動的光散乱を用いて決定されることができ、その測定は、安定化されない場合、新しく調製された試料に対してなされることが、好ましい。当業者には理解されるであろうように、ポリケイ酸は、他のシリケート種と平衡状態にあるであろう。例えば、そして存在する正確な条件に依存して、これは、より少ない量の可溶性ケイ酸を含み得る。
【0056】
本発明において用いられるナノシリカ粒子の組成物は、一般に水和しており(aquated)、すなわち、それらの合成全体を通して少なくともある程度まで水(例えば少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%、少なくとも20重量%の水)が存在し、好ましくは最終配合物中にも存在し、すなわち、その材料は、乾燥しておらず、または配合およびその後の投与の前にかなり加熱される。しかし、安定化剤または他の配合剤が、水分子をシリケート粒子から追い出す(displaces)ような高い濃度において用いられることができることは、明らかであろう。従って、水は、追い出されることができるが、配合物は、乾燥しない。
【0057】
本発明に従って用いられるナノシリカ粒子の組成物の安定化は、好ましくはそれらの合成からそれらの貯蔵、配合および/または投与までに及ぶ(例えば望まれない凝塊形成の欠如)。
【0058】
本発明に従って用いられるナノシリカ粒子の組成物は、準安定性であり、すなわち、その組成物は、それらの意図される使用の貯蔵寿命の目的に適した安定性を有する。説明として、本発明のポリマー性シリケート組成物は、貯蔵安定性であり、例えば3ヶ月以上、より好ましくは6ヵ月以上、より好ましくは12ヵ月以上、より好ましくは24ヵ月以上安定である。従って、本発明のポリマー性シリケート組成物は、ケイ酸(またはシリケート)分子の部分的凝集により生成されることができる。これらの材料は、分離した凝集していないクラスターまたはコロイドとして準安定性である。
【0059】
本発明のある態様において、ナノシリカ粒子の組成物は、安定化剤、好ましくは糖および/またはポリアルキレングリコールを含む。糖類は、8単糖以下、例えば単量体性、2量体性または3量体性糖類からなるオリゴ糖類を含む。好ましい糖は、スクロースである。糖中の単量体単位の最大数は、その投与が対象において投与の際に免疫応答を誘発しないように選択される。ポリアルキレングリコール類は、ポリエチレングリコール(PEG)およびポリプロピレングリコールを含むポリエーテル化合物のファミリーである。糖類(sugars)(糖類(saccharides))である安定化剤の例は、単量体性、2量体性、3量体性およびポリマー性糖類(sugars)(糖類(saccharide))または対応する糖アルコール類、例えばグルコース、フルクトース、マンノース、スクロース、トレイトール、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトールまたはアドニトールを含む。安定化剤が糖である一部の態様において、それは、ラクトース以外のオリゴ糖である。糖アルコールが用いられる一部の態様において、それは、マンニトール以外である。内部に投与される組成物のための安定化剤としての糖類の使用は、それらがヒトおよび動物の対象への投与に関して安全であるため、本発明において好ましい。
【0060】
ある態様において、1種類より多くの異なる糖(類)またはポリアルキレングリコール(類)、例えば2種類、3種類、4種類もしくは5種類またはより多くの糖類またはポリアルキレングリコール類の組み合わせを、例えばそれらを工程(a)および/または(b)において添加することにより用いることが、可能である。糖および/またはポリアルキレングリコール安定化剤は、一般に0.01M~3.0M、より好ましくは0.03M~2.0M、最も好ましくは0.1M~1.5Mの濃度で添加される。当業者は、ルーチン的な試験を実施して糖類および/またはポリアルキレングリコール類のどの組み合わせがあらゆる所与の状況において最高に機能する(work)かを決定することができる。
【0061】
本発明の安定化されたナノシリカ組成物は、メタケイ酸ナトリウム、ホウ砂、チオ硫酸ナトリウム、炭酸カリウムおよび精製糖を水中に含む組成物を記載している米国特許公開第2003/0206967号(Choi et al.)において開示されている組成物とは区別されることができる。これは、好ましくはpH3.0~9.0、より好ましくは3.0~8.0、より好ましくは5.5~7.5である本発明の安定化されたポリマー性シリケート組成物のpHとは対照的に、結果として約pH13のpHを有する非常にアルカリ性の組成物をもたらす。本発明は安定なシリケートポリマーを生成するためにpHを下げることにより組成物を生成するため、Choi et al.の組成物を作製するために用いられるプロセスは、本発明とは異なる。上記を考慮すると、本発明において用いられるナノシリカ組成物は、メタケイ酸ナトリウム、ホウ砂、チオ硫酸ナトリウム、炭酸カリウムの1以上を含まず、好ましくはホウ砂を含まないことが、好ましい。本発明の好ましいナノシリカ組成物は、コリン無含有および/またはエタノール無含有であることができ、従ってそれぞれKerekにおいて記載されているBiosil(商標)およびシリケート組成物とは異なる。
【0062】
他の側面において、本発明は、カルボン酸を安定化剤として用いることができ、カルボン酸は、C2-10カルボン酸、例えばジカルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、グルタル酸、酒石酸、コハク酸、アジピン酸もしくはピメリン酸またはそれらのイオン化形態(すなわち対応するカルボキシレート)、例えばアジペートであることができる。または、例えばモノカルボン酸、例えばグルコン酸である。安定化剤のさらなる例は、ジカルボン酸であり、それは、式HOOC-R-COOH(またはそのイオン化形態)により表されることができ、式中、Rは、場合により置換されたC1-10アルキル、C1-10アルケニルまたはC1-10アルキニル基である。一般に、RがC1-10アルキル基である、より好ましくはC2-6アルキル基であるカルボン酸の使用が、好ましい。
【0063】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明のナノシリカ組成物が非水性溶媒、例えばアルコールを添加することによりさらに安定化され得ることも見出している。アルコールの好ましい例は、エタノールである。説明として、非水性溶媒は、10~50%v/vまたは20~50%v/vまたは10~20%v/vで添加されることができる。さらに、ある場合には、本発明者らは、スクロースのアルコールとの組み合わせはナノシリカ組成物を安定化するために特に有効であることを見出した。
【0064】
以下の本発明のプロセスの工程の論考において、当業者には、上記のプロセスの工程の一部を並べ替える、および/または工程の一部に関して同時に行うことが可能である可能性があることは、明らかであろう。工程の他のものは、上記で示され、そして下記でさらに説明されるように、任意である。
【0065】
本発明につながる研究において、本発明者らは、出発アルカリ性シリケート溶液のpHが低下する速度、安定化剤、特に糖類もしくはポリアルキレングリコール類を含めること、金属陽イオンの添加および/または非水性溶媒の添加を含むいくつかの要因がナノシリカ組成物の安定性に寄与していることを見出した。ナノシリカ組成物を生成するためのプロセスは、これらのアプローチを単独またはあらゆる組み合わせで用いて、例えば栄養補助剤または療法剤としての使用のための十分な安定性を有するナノシリカ組成物を生成することができる。
【0066】
ある場合には、特にナノシリカの極小粒子(“uSANS”)の生成に関して、アルカリ性シリケート溶液のpHが低下させられる速度は、結果として得られるナノシリカ組成物の安定性に有意な作用を有し得る。好ましくは、pHは、60秒未満、より好ましくは30秒未満、より好ましくは10秒未満、または最も好ましくは5秒未満の期間をかけて(例えばpH4.0または3.0以下のpHまで)低下させられる。代替シリカ粒子組成物HS-7の生成が、下記の実施例において提供されている。
【0067】
アルカリ性シリケート溶液の濃度は、0.05M~1.5M、より好ましくは0.03~2.0M、最も好ましくは0.1M~1.0Mであることが、好ましい。9.5より高いpHの使用も、シリケート類の可溶性を維持するために好ましく、そして好ましくは工程(a)においてアルカリ性シリケート溶液のpHは、約pH10.5以上であり、さらにもっと好ましくは約pH11.5以上である。最終的なポリマー性シリケート組成物において、ケイ素の濃度は、2.5mM以上、5.0mM以上、25mM以上、30mM以上、40mM以上、50mM以上、100mM以上、250mM以上、500mM以上であることができる。最終的な安定化されたポリマー性シリケート組成物において、ケイ素の濃度は、1.5M以下、1.0M以下、500mM以下ならびにこれらの下限および上限の間の範囲であることができる。
【0068】
ある態様において、低下したpHは、生成され得る安定化されたシリケートナノ粒子のタイプに対して作用を有し得る。実施例において示されるように、uSANSまたは5nm以下の平均直径を有する非常に小さい粒子は、pHを10より大きいpHから3.0以下のpHまで急速に下げることにより形成されることができ、1Mに至るまでの濃度のケイ素が用いられることを可能にする。あるいは、SANSまたは小さいナノ粒子は、10nm以下の平均直径を有し、pHを約7.4まで低下させることにより形成されることができる。この場合、約50mM以下のより低い濃度が、用いられることができる。従って、低下したpHは、7.4以下、または3.0以下であることができる。これは、低いpHにおけるuSANSの調製を可能にし、記載されたように、これが必要とされるならば、pHは、uSANSを決定された粒径のSANSまで成長させるために上げられ、大きさは、pHを再度下げることにより安定化される。場合により、安定化剤が、このプロセス中のある段階において必要とされる。これらのプロセスは、当該技術の重要な部分である。
【0069】
ある場合には、安定化された水性懸濁液の長期貯蔵のために、pHは、低下させられることができ、かつ/またはその懸濁液は、希釈されることができる。あるいは、または加えて、非生理的pHでの長期貯蔵の際に、そして対象への投与前に、ナノシリケート懸濁液は、生理的pHに調節される、および/または希釈される、および/または安定化剤を添加されることができる。
【0070】
組成物は、ナノ粒子の粒径が意図される適用に関して十分に安定(20nm未満)なままであろうように、安定化されることができる。例えば、静脈内投与のための配合物の場合、(例えばpH<3および100mM Siの)第1貯蔵溶液の粒径は、貯蔵期間の期間の間安定であると考えられ、次いで一度緩衝された静脈内溶液で希釈されたら、それは、まず適用前数時間の間安定なままであると考えられ、次いで一度投与されたら、それは、凝塊形成を経ないであろう。
【0071】
インサイチュuSANS(シトレート)のバッチ合成のための合成方法論
ストック溶液の調製
構成要素A(HCl+クエン酸):(i)0.307gのクエン酸(MW 192.124)を180mlのUHP水中で溶解させ;(ii)0.783mlの37%HClを撹拌下で添加し;(iii)体積をUHP水で200mlに調節する。
【0072】
構成要素B(80mMケイ酸ナトリウム):2.56mlのケイ酸ナトリウム(約6.25M Si)を、最終体積が200mLになるように水で希釈する。
構成要素C(生理食塩水;任意):4.5gのNaClを、45mlのUHP水中で溶解させ、最終体積が50mlになるようにUHP水で調節する。
【0073】
構成要素A、BおよびC(任意)の滅菌:無菌条件(フローキャビネット)下で、構成要素溶液を0.22μmフィルターを通してシリンジフィルター処理して無菌容器中に入れる。
【0074】
コロイドの調製
工程1:構成要素A(2.5mL)を、構成要素B(2.5mL)と混合する。結果として得られるpHは、pH電極により測定した場合、約5.4(pH試験紙で4.0~5.0)である。
【0075】
工程2:30分間インキュベートする。
工程3(任意):インキュベーション後および投与の直前、構成要素C(0.425mL)が、添加され、混合される。
【0076】
インサイチュuSANS(未緩衝)のインライン合成のための合成方法論
ストック溶液の調製
構成要素A(HCl):(i)1.2mlの37%HClを、最終体積が100mLになるように水で希釈する。
【0077】
構成要素B(50mMケイ酸ナトリウム):0.8mlのケイ酸ナトリウム(Sigma-338443、約6.25M Si)を、最終体積が100mLになるように水で希釈する。
【0078】
コロイドの調製
コロイドを、図6において表されているようなフローシステム中で、30cmの長さを有する反応管を用いて調製する。シリンジポンプAおよびBは、それぞれ1.05および48.5mL/hで作動し、それは、結果として7.55のpHをもたらした。
【0079】
組成物の配合および使用
本発明のナノシリカ組成物は、シリケート含有療法剤としての使用のために配合されることができる。組成物は、ナノシリカ粒子に加えて、薬学的に許容可能な賦形剤、キャリヤー、緩衝剤、安定化剤または当業者に周知の他の材料を含むことができる。そのような材料は、非毒性であるべきであり、ナノシリカ粒子組成物の有効性に干渉するべきではない。
【0080】
本明細書で記載される実験は、本発明のナノシリカ粒子組成物が、バイオマーカーCD69および/またはCD25の発現における、例えばTリンパ球の未処理の対照試料と比較した増大により決定されるようにTリンパ球を直接活性化することができることを実証している。本発明のアッセイおよび方法は、有効な療法的シリカ粒子組成物のスクリーニングおよび開発において、そして対象または個人に施された療法の有効性を決定するために用いられることができる。
【0081】
本発明を用いるTリンパ球の活性化は、これが処置としてであろうと予防としてであろうと、これが対象に療法的利益を有するであろうある範囲の病気または障害の処置において用いられることができ、適切な濃度で投与された際に、本発明において用いられるシリカ粒子組成物は、癌細胞に対して実質的には直接細胞毒性ではないという利点を有する。癌は、黒色腫、皮膚癌、肺癌、膵臓癌、結腸直腸および他の内臓の癌、胃癌、乳癌、リンパ腫、白血病、子宮癌、前立腺癌、食道癌、骨癌、膀胱癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、脳癌、眼癌、卵巣癌、精巣癌、肝臓癌、腎臓癌、頭頸部癌を含み得るが、それらに限定されず、転移癌および原発癌を含む。
【0082】
しかし、本発明の1つの好ましい使用は、癌の処置におけるものであるが、本明細書で記載されるT細胞療法は、他の病気の処置、特に感染、例えば細菌感染またはウイルス感染の処置のために用いられることができる。感染は、ウイルス、レトロウイルスならびに細菌、例えばマイコバクテリア、グラム陽性菌およびグラム陰性菌、ならびに蠕虫、寄生生物および他の感染因子による感染を含むが、それらに限定されない。一過性に安定なシリケートナノ粒子は、それ自体結合組織の健康の増進において有効であり骨粗鬆症、骨折の治癒、関節疾患、皮膚疾患、血管障害において有用である可能性のあるケイ酸の放出のためのリザーバーとしての役目も果たすことができる。
【0083】
従って、投与は、非経口投与によることができ、後者は、特に静脈内投与によることができる。
本発明の組成物の他の医学的使用は、高血圧、糖尿病、骨疾患、心血管疾患、神経変性病理、上記で言及されていない全てのタイプの癌、胃酸過多、骨粗鬆症、歯石、アルツハイマー病、クロイツフェルト・ヤコブ病の処置ならびに創傷治癒のための処置を含む。本発明の組成物の他の医学的使用は、火傷、創傷または病原体もしくは腐食性化学物質の作用による影響を受けた皮膚の処置を含み、それは、日焼けまたは乾癬、湿疹および他の種類の皮膚炎を含むあらゆる皮膚疾患の処置を含む。
【0084】
ある側面において、活性化されたTリンパ球を用いる本発明の医学的使用は、ヒトの対象の処置における使用のためのものである。しかし、ヒトの対象における病気の処置または予防に関する適用を有するのと同様に、本発明は、獣医学の分野においても、例えば非ヒト動物、より特別には非ヒト哺乳類、例えばイヌ、ネコおよびウマの処置における使用に関する適用を有する。
【0085】
液体医薬組成物は、一般に、液体キャリヤー、例えば水、石油、動物もしくは植物油、鉱油または合成油を含む。生理食塩水溶液、デキストロースもしくは他の糖類溶液またはグリコール類、例えばエチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールが、含まれることができる。例えば材料の構成要素の送達を制御するためにシリケート含有栄養補助剤が固体形態で維持される必要がある場合、配合物の構成要素を適宜選択することが必要である可能性がある(例えば材料の液体配合物が作製される場合)。保存剤、安定化剤、緩衝剤、抗酸化剤および/または他の添加剤が、例えばポリマー性シリケート組成物が点滴による対象への投与に適している本発明の態様において必要に応じて含められることができる。
【0086】
療法的適用において、本発明に従って用いられるナノシリカ組成物は、好ましくは個人に“予防的有効量”または“療法上有効量”(場合により、予防は療法と考えられ得るが)で与えられ、これは、個人に対して利益(例えば生物学的利用能)を示すために十分である。投与される実際の量ならびに投与の速度および時間経過は、処置されているものの性質および重症度に依存するであろう。処置の処方、例えば投与量等に関する決定は、一般開業医および他の医師の責任の範囲内であり、典型的には処置されるべき障害、個々の患者の病気、送達の部位、投与の方法および開業医に既知の他の要因を考慮する。上記で言及された技法およびプロトコルの例は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第20版, 2000, Lippincott, Williams & Wilkinsにおいて見付けられることができる。組成物は、処置されるべき病気に応じて単独で、または他の処置との組み合わせで、同時または順次のどちらでも投与されることができる。
【実施例
【0087】
材料および方法
シリカ粒子組成物HS-7の調製
HS-7は、0.1gのケイ酸ナトリウム(カタログ番号338443;Sigma-Aldrich Chemical Co.,ジリンガム、英国)を20gの蒸留脱イオン水(DDW;18ΜΩ/cm)中で希釈し、塩酸(HCl、4~5M)でpH6.7~7.0(pH試験紙、Sigma-Aldrich Co.,カタログ番号P3536)に調節することにより調製された。その分散物は、平衡化するまで室温で16~24そのままにされた。
【0088】
シリカ粒子組成物“uSANS”の調製
極小非晶質ナノシリカ(uSANS)ナノ粒子分散物(1.9nm)が、国際公開第2015/121666号に従って調製された。uSANSは、4mLのケイ酸ナトリウム(カタログ番号338443;Sigma-Aldrich Chemical Co.、ジリンガム、英国)を30mLの蒸留脱イオン水(DDW;18ΜΩ/cm)中で希釈することにより調製された。2mLのHCl(37%)が、混合しながら迅速に添加された。その溶液は、使用前にH2Oで50mLまで希釈され、室温で16~24時間インキュベートされた。
【0089】
米国特許出願公開第2011/0229577号(Kerek)の実施例4に従う比較シリカ組成物
7.4mlのTMOSが、25mlのUHP水と混合された。pHが、酢酸(0.5M)により3.6に調節され、結果として得られた混合物が、油浴中で撹拌下で45Cにおいて5分間インキュベートされた。次に、その懸濁液は、室温で40分間冷却され、pHが、1M HClにより2.0に調節された。最後に、メタノールが、rotavapor(T=40~45C)を用いて除去された。
【0090】
細胞アッセイ
末梢血単核細胞(PBMC)が、National Blood Service(ケンブリッジ、英国)から購入された単一の白血球コーン(cones)から密度勾配遠心分離を用いて単離された。細胞は、凍結媒体(10% DMSO、50% FBS、40% RPMI 1640)中で凍結された。凍結した細胞は、融解され、RPMI中で洗浄され、10% FBS、0.3g/L L-グルタミン、1%ペニシリン-ストレプトマイシンおよび0.01μg/mL DNアーゼを含有するRPMI中で2時間静置された(rested)。細胞は、RPMI+20% FCS中で2×106細胞/mLに再懸濁され、0.5mLがFACS管に入れられた後、0.5mL RPMI+/-1600uMナノシリカ処理(1.0×106細胞/mL、800uMナノシリカを与える)が行われた。細胞は、24時間インキュベートされ、PBS+1% BSAで洗浄され、FACS抗体および生存度マーカー(CD3、CD4、CD8、CD25、CD69、7-AAD生存度マーカー)で染色された。細胞は、即時Cyan-ADPフローサイトメーター上で取得および分析用のSummitソフトウェア(Beckman Coulter)を用いて試料あたり最低400,000事象を取得して分析された。
【0091】
超微細ナノシリカによるCD4およびCD8 T細胞の活性化
末梢血単核細胞(PBMC)が、National Blood Service(ケンブリッジ、英国)から購入された単一の白血球コーンから密度勾配遠心分離を用いて単離された。細胞は、凍結媒体(10% DMSO、50% FBS、40% RPMI 1640)中で凍結された。凍結した細胞は、融解され、RPMI中で洗浄され、10% FBS、0.3g/L L-グルタミン、1%ペニシリンストレプトマイシンおよび0.01μg/mL DNアーゼを含有するRPMI中で2時間静置された。細胞は、RPMI+20% FCS中で2×106細胞/mLに再懸濁され、0.5mLがFACS管に入れられた後、0.5mL RPMI+/-1600uMナノシリカ処理(1.0×106細胞/mL、800uMナノシリカを与える)が行われた。細胞は、24時間インキュベートされ、PBS+1% BSAで洗浄され、FACS抗体および生存度マーカー(CD3、CD4、CD8、CD25、CD69、7-AAD生存度マーカー)で染色された。細胞は、即時Cyan-ADPフローサイトメーター上で取得および分析用のSummitソフトウェア(Beckman Coulter)を用いて試料あたり最低400,000事象を取得して分析された。
【0092】
超微細ナノシリカによる異なるTh系列細胞型の活性化
末梢血単核細胞(PBMC)が、National Blood Service(ケンブリッジ、英国)から購入された単一の白血球コーンから密度勾配遠心分離を用いて単離された。細胞は、凍結媒体(10% DMSO、50% FBS、40% RPMI 1640)中で凍結された。凍結した細胞は、融解され、RPMI中で洗浄され、10% FBS、0.3g/L L-グルタミン、1%ペニシリンストレプトマイシンおよび0.01μg/mL DNアーゼを含有するRPMI中で2時間静置された。細胞は、RPMI+20% FCS中で2×106細胞/mLに再懸濁され、0.5mLがFACS管に入れられた後、0.5mL RPMI+/-17uLまたは35uLナノシリカ処理(それぞれ1.0×106細胞/mL、400および800uMナノシリカを与える)が行われた。細胞は、24時間インキュベートされ、PBS+1% BSAで洗浄され、FACS抗体および生存度マーカー(CD3、CD4、CD8、CD25、CD69、CD40L、LAP、GARP、7-AAD生存度マーカー)で染色された。FoxP3の細胞内染色のため、細胞膜は、細胞内染色前に細胞膜透過化処理緩衝液で処理された。細胞は、即時Cyan-ADPフローサイトメーター上で取得および分析用のSummitソフトウェア(Beckman Coulter)を用いて試料あたり最低400,000事象を取得して分析された。IFNガンマサイトカイン分析に関して、インキュベーションの終了時に収集された細胞上清が、標準的なELISAキットを製造業者の説明書に従って用いてIFNガンマの存在に関してアッセイされた。
【0093】
ナノシリカの3種類の異なる形態の内皮静脈細胞に対する毒性
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC;ATCC、マナサス、米国)が、液体窒素中での凍結保存から蘇生させられ、完全増殖培地:10%牛胎児血清(FBS‘Gold’;PAA Laboratories、英国)、50μg/mLペニシリンおよびストレプトマイシン(Invitrogen Ltd,Life Technologies 英国)、0.1mg/mLヘパリン(Sigma Aldrich Chemical Co、英国)ならびに0.05mg/mL内皮細胞成長補助剤(Alfa Aesar、英国)を補われたF-12K培地(ATCC)中で維持された。細胞は、Nunc T75培養フラスコ(75cm2;VWR International、英国)中で5%CO2を含有する加湿した雰囲気中で37℃において増殖させられた。実験のため、細胞は、70%コンフルエンスにおいて0.1%トリプシン/0.02% EDTA溶液で剥がされ、48ウェルプレート中にウェルあたり1mLの完全増殖培地と共に蒔かれた。細胞は、増殖してコンフルエントな単層になった。
【0094】
ナノシリカ処理。3種類のナノシリカ調製物が、試験された。これらは、HS7、インサイチュuSANSおよびスクロースuSANSと呼ばれ、それは、それぞれ以下の方法で調製されたナノシリカを指す:
Sue.uSANS:1日齢のuSANSが、500mM Si(OH)4 + 1.5MスクロースをpH0.8~1に急速に酸性化し、即時H20+グルコースで40mMまで希釈することにより調製された(最終的なグルコース濃度136mM)。その分散物は、一夜インキュベートされ、使用直前にpH7に中和された。
【0095】
インサイチュuSANS;(pH5.0;バッチ合成;シトレートで緩衝された)が、1mLの80mM Si(OH)4および1mLのシトレート(8mM、+47mM HCl)を混合することにより調製された。その溶液は、30分間インキュベートされ、0.17mLの10×生理食塩水が、使用前に添加された。
【0096】
これらが、完全増殖培地中で1、2および4mM総Siの最終ケイ素濃度で完全増殖培y胞と比較された-3種類のビヒクル(ナノシリカの調製ごとに1種類)が、4mMナノシリカ処理に対する均等な用量で試験された。それぞれの処理および対照は、6通りで試験された(すなわちn=6)。簡潔には、培地が、6通りのウェルから吸引され、ナノシリカが、完全増殖培地中で希釈され、即時ウェルに添加された(ウェルあたり0.5ml)。
【0097】
ナノシリカまたはビヒクル処理の細胞への添加後、48ウェルプレートはIncuCyte Zoom生細胞画像化システム(Essen Bioscience Inc.、米国)中に置かれ、位相差画像が、68時間の期間にわたって2時間ごとに取得された。
【0098】
ナノシリカによるT細胞におけるpZap70の導入
末梢血単核細胞(PBMC)が、National Blood Service(ケンブリッジ、英国)から購入された単一の白血球コーンから密度勾配遠心分離を用いて単離された。細胞は、凍結媒体(10% DMSO、50% FBS、40% RPMI 1640)中で凍結された。凍結した細胞は、融解され、RPMI中で洗浄され、10% FBS、0.3g/L L-グルタミン、1%ペニシリンストレプトマイシンおよび0.01μg/mL DNアーゼを含有するRPMI中で2時間静置された。T細胞は、未タッチ(untouched)汎T細胞単離キットを用いて富化された。細胞は、RPMI+20% FCS中で2×106細胞/mLに再懸濁され、0.5mLがFACS管に入れられた後、0.5mL RPMI+/-1600uMナノシリカ処理(1.0×106細胞/mL、800uMナノシリカを与える)が行われた。細胞は、0~6時間インキュベートされ、遠心沈殿させられ、NuPage LDS試料緩衝液を用いて溶解させられた。ウェスタンブロット分析が、その溶解物に対してビンキュリン(内部対照、(An et al., 2012; Solan et al., 2003))およびpZap70(Tyr319)に関して染色して実施された。バンドの強度が、積分により定量化され、内部対照の百分率として表された。
【0099】
TCR/CD3複合体がpMHC複合体、スーパー抗原または分裂促進抗体により会合された後、T細胞の活性化が、リン酸化された免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)上に位置するゼータ鎖関連プロテインキナーゼ70(Zap70)のリン酸化により開始される(Love and Hayes, 2010)。次いで、リン酸化されたZap70(pZap70)は、下流のタンパク質をリン酸化し、それは、活性化T細胞の核内因子(NFAT)によるシグナル伝達および活性化されたT細胞応答をもたらす(Chakraborty and Weiss, 2014; Fathman and Lineberry, 2007; Rossy et al., 2012; Wang et al., 2010)。
【0100】
モリブデート溶解アッセイ
モリブデート溶解アッセイは、ポリマー性シリケート組成物の試料を採取し、それを緩衝液中で希釈することを含む。モリブデン酸アッセイは、アッセイの時間経過にわたって緩衝液の分割量中に存在する可溶性シリケートの濃度を決定するために用いられることができる。実施例において示されているように、組成物は、50mM HEPES緩衝液中でpH7.0~7.4において希釈されることができる。典型的なモリブデン酸アッセイは、100μLの試験溶液または標準(Sigma Aldrich Si ICP 30標準、1000mg/Lから調製されたもの)および200μLのモリブデン酸着色溶液(34.5mM Mo(NHMo 4H0として添加された)および0.15M HS0)を用いる。アッセイ溶液は、ウェルプレートに移され、10分間混合される。インキュベーション後、吸光度(400nm)が、測定されることができ、可溶性ケイ酸の濃度が、標準曲線を用いて決定されることができる。
【0101】
モリブデート不安定性アッセイ
7.5μlの40mM Si懸濁液が、96ウェルプレートに移され、非常に迅速に100μLのUHP水、続いて200μLのモリブデン酸溶液(0.15M H2S04中34.5mM NH4Mo7O244H20)が、添加された。400nmにおける吸光度が、17時間の間60秒ごとに測定された。40mMケイ酸の溶液が、アッセイにおける対照として用いられた。
【0102】
溶解アッセイ
全血が、ヘパリンチューブ中に採取され、短時間混合された。さらなるヘパリンが、凝固を防ぐために(0.5mg/mLの濃度まで)添加された。ナノシリカおよび続いて以下のスケジュールに従って希釈された:25秒間16mM、1時間4mM、3時間2mM、そして20時間1mM。処理およびインキュベーション後、赤血球が、溶解され、染色され、FACSが、即時実施された。陽性対照に関して、SEBが、全血に2ug/mLで添加された。このアッセイは、CD4(+)-CD25、CD4(+)-CD69、CD8(+)-CD25およびCD8(+)-CD69の読み出しにより決定されたように、インサイチュuSANS(クエン酸緩衝されたもの、バッチ合成)が標準uSANSと同じ刺激プロフィールを有することを示した。
【0103】
結果
上記の実験は、超微細ナノシリカのみがTリンパ球の慢性的活性化を誘導する(可溶性ケイ酸(Si(OH))もより大きいシリカ粒子(例えば>10nm)もこれを誘導しない)ことを実証している。図1および2は、未刺激のベースライン対照ならびに米国特許出願公開第2011/0229577号に従って生成されたシリケート類(Kerek、図1)および商業的に入手可能なコリン安定化オルトケイ酸組成物であるBiosil(商標)(図2)と比較した24時間のケイ酸および超微細ナノシリカ処理後のヘルパーT細胞上の活性化マーカーCD69の発現を示している。図3~6は、Tリンパ球スーパー抗原SEB(スタフィロコッカス腸毒素B)が陽性対照として用いられたことを加えた類似の比較を示す。本発明のシリカ粒子組成物は、CD25およびCD69活性化マーカー発現レベルを増大させることによりT細胞活性化を誘導することが示された。また、ケイ酸は、T細胞上の活性化マーカーの発現には作用を有しなかった(データは示されていない)。本発明の超微細ナノシリカは、スーパー抗原SEBの慢性的活性化と比較可能なT細胞の慢性的活性化も誘導した。図は、ナノシリカがヘルパー(CD4+)T細胞および細胞傷害性(CD8+)T細胞両方を活性化する(すなわち、それらがナノシリケート曝露の際にCD25およびCD69陽性になる)ことを示している。
【0104】
本明細書で記載された実験は、多数の系列型のT細胞がこれらの超微細ナノシリカ粒子によるT細胞活性化に感受性であり得ることを示している(図8)。
しかし、HS7粒子よりも良好に許容されるにもかかわらず、uSANS粒子は、なお内皮細胞に対して中程度の毒性を示す(図9)。しかし、最小限に毒性のuSANSが、インサイチュ合成により生成されることができる。これは、準中性緩衝系中でのバッチ合成であることができ、あるいはフロー合成によることもできる。これらの結果は、本明細書で記載されたインサイチュ合成法を用いて生成されたuSANSを用いて再現されることもできる。
非限定的に、本発明は、以下の態様を含む。
[態様1] 対象/個人に関する療法のためにTリンパ球を活性化する方法における使用のための0.5~20nmの平均直径を有するシリカ粒子を含む組成物であって、該Tリンパ球の活性化が、Tリンパ球によるCD69および/またはCD25の発現における増大により特性付けられる組成物。
[態様2] 態様1に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該CD69および/またはCD25の発現における増大が、未刺激のベースライン対象と比較して少なくとも20%である、処置の方法における使用のための組成物。
[態様3] 態様1または態様2に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該Tリンパ球が、T細胞である、処置の方法における使用のための組成物。
[態様4] 態様1~3のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該T細胞が、ヘルパーT細胞、制御性T細胞、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラーT細胞(NKT)またはガンマデルタT細胞である、処置の方法における使用のための組成物。
[態様5] 先行する態様のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該リンパ球活性化が、炎症性Th1型応答を誘導することを含む、処置の方法における使用のための組成物。
[態様6] 先行する態様のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該Tリンパ球の活性化が、CD40L、LAP/GARPおよび/またはFoxP3から選択される1種類以上のさらなるマーカーの発現を増大させることを含む、処置の方法における使用のための組成物。
[態様7] 先行する態様のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、リンパ球の活性化が、IFN-γの発現を増大させることを含む、処置の方法における使用のための組成物。
[態様8] 先行する態様のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該組成物が、実質的にリンパ球の増殖を誘導しない、処置の方法における使用のための組成物。
[態様9] 先行する態様のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該シリカ粒子が、0.5~10nmの平均直径を有する、処置の方法における使用のための組成物。
[態様10] 態様9に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該シリカ粒子が、2~5nmの平均直径を有する、処置の方法における使用のための組成物。
[態様11] 先行する態様のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該組成物が、場合によりポリオール類、糖類ならびに/または第四級アンモニウム塩類、例えばコリンおよびカルニチン、から選択される安定化剤を含む、処置の方法における使用のための組成物。
[態様12] 態様1~10のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該組成物が、安定化剤を含まない、処置の方法における使用のための組成物。
[態様13] 先行する態様のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該シリカ組成物が、沈殿により得ることができる、処置の方法における使用のための組成物。
[態様14] 先行する態様のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該活性化されたTリンパ球が、癌の処置における使用のためのものである、処置の方法における使用のための組成物。
[態様15] 態様14に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該シリカ粒子組成物が、実質的には癌細胞に対して直接細胞傷害性ではない、処置の方法における使用のための組成物。
[態様16] 態様1~13のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該組成物が、癌の処置以外のT細胞療法における使用のためのものである、処置の方法における使用のための組成物。
[態様17] 態様16に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該活性化されたTリンパ球が、感染の処置における使用のためのものである、処置の方法における使用のための組成物。
[態様18] 態様1~13のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該活性化されたTリンパ球が、炎症性疾患の処置における使用のためのものである、処置の方法における使用のための組成物。
[態様19] 態様18に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該炎症性疾患が、多発性硬化症、リウマチ様関節炎、クローン病、喘息または潰瘍性大腸炎である、処置の方法における使用のための組成物。
[態様20] 先行する態様のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該方法が、該対象に1以上の特定のT細胞系列または表現型を抑制または増進することができる薬剤を投与することを含む、処置の方法における使用のための組成物。
[態様21] 態様20に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該薬剤が、シクロホスファミドである、処置の方法における使用のための組成物。
[態様22] 先行する態様のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該方法が、該対象への投与の前にインサイチュ合成により該シリカ粒子の組成物を生成することを含む、処置の方法における使用のための組成物。
[態様23] 先行する態様のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該インサイチュ合成が、(i)10.5より大きいpHのシリケート溶液および(ii)酸性緩衝溶液を混合し、4.0~8.5のpHを有するコロイド性シリカ組成物を生成する、ことを含む、処置の方法における使用のための組成物。
[態様24] 態様23に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該インサイチュ合成が、バッチインサイチュ合成プロセスにおいて(i)10.5より大きいpHのシリケート溶液および(ii)酸性緩衝溶液を混合し、4.0~6.5のpHを有するコロイド性シリカ組成物を生成する、ことを含む、処置の方法における使用のための組成物。
[態様25] 態様23に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該インサイチュ合成が、フローインサイチュ合成プロセスにおいて(i)10.5より大きいpHのシリケート溶液および(ii)酸性緩衝溶液を混合し、6.0~8.5のpHを有するコロイド性シリカ組成物を生成する、ことを含む、処置の方法における使用のための組成物。
[態様26] 先行する態様のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該コロイド性シリカ組成物が、対象への投与のためのものである、処置の方法における使用のための組成物。
[態様27] 態様26のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該方法が、該コロイド性シリカ組成物を該対象に該溶液の混合から12分未満で投与することを含む、処置の方法における使用のための組成物。
[態様28] 先行する態様のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該組成物が、静脈内投与のためのものである、処置の方法における使用のための組成物。
[態様29] 態様23~28のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該酸性溶液が、塩酸、カルボン酸、例えばクエン酸、または酸性アミノ酸、例えばグリシン、を含む、処置の方法における使用のための組成物。
[態様30] 態様1~19のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該方法が、T細胞を含む試料を対象から得て、該T細胞試料を該シリカ組成物と接触させて該試料中のT細胞を活性化させ、そして該活性化されたT細胞を該対象に投与することを含む、T細胞療法の方法である、処置の方法における使用のための組成物。
[態様31] 先行する態様のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該活性化されたTリンパ球が、ヒトの対象の処置における使用のためのものである、処置の方法における使用のための組成物。
[態様32] 態様1~30のいずれか1項に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該活性化されたTリンパ球が、非ヒト動物の処置における使用のためのものである、処置の方法における使用のための組成物。
[態様33] 態様32に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該活性化されたTリンパ球が、獣医学的使用のためのものである、処置の方法における使用のための組成物。
[態様34] 態様33に記載の処置の方法における使用のための組成物であって、該活性化されたTリンパ球が、イヌ、ネコまたはウマの処置における使用のためのものである、処置の方法における使用のための組成物。
[態様35] 対象または個人への療法的投与のためのシリカ粒子組成物の有効性を決定する方法であって、該方法が、以下の工程:
(a)Tリンパ球の試料を該シリカ粒子組成物と接触させ;
(b)該試料中に存在する該Tリンパ球によるCD69および/またはCD25の発現を決定し;そして
(c)該Tリンパ球によるCD69および/またはCD25の発現における増大を引き起こすシリカ粒子組成物を、療法における使用に適しているものとして同定する;
を含む、方法。
[態様36] 対象または個人への療法的投与のためのシリカ粒子組成物の有効性を決定するためのアッセイであって、該アッセイが、以下の工程:
(a)Tリンパ球の試料を該シリカ粒子組成物と接触させ;
(b)該試料中に存在する該Tリンパ球によるCD69および/またはCD25の発現を決定し;
(c)CD69および/またはCD25発現の量を、対照値に対して測定または定量化し、該CD69および/またはCD25発現の量が該対照値と比較して増大している場合、該シリカ粒子組成物を療法的投与に適しているものとして選択する;
を含む、アッセイ。
[態様37] シリカ粒子組成物の投与を含む療法の有効性を決定するための方法または該対象もしくは個人へのその投与のプロトコルであって、該方法が、以下の工程:
(a)該シリカ粒子組成物またはその投与のプロトコルで処置された該対象または個人からのTリンパ球の試料を接触させ;
(b)該試料中に存在する該Tリンパ球によるCD69および/またはCD25の発現を決定し;そして
(c)工程(b)において該Tリンパ球によるCD69および/もしくはCD25の発現における増大が観察されている対象もしくは個人を、該シリカ粒子組成物もしくはその投与のプロトコルによりうまく処置されたものとして同定し;または
(d)工程(b)において該Tリンパ球によるCD69および/もしくはCD25の発現における増大が観察されない対象もしくは個人を同定し、その対象もしくは個人に提供された該シリカ粒子組成物もしくはその投与のプロトコルを修正し;
(e)場合により、該対象または個人が該シリカ粒子組成物またはその投与のプロトコルによりうまく処置されるまで工程(a)~(d)を繰り返す;
を含む、方法またはプロトコル。
[態様38] 態様35~37のいずれか1項に記載の方法またはアッセイであって、該Tリンパ球によるCD69および/もしくはCD25の発現における増大が、参照値と比較して決定される方法またはアッセイ。
[態様39] 態様38に記載の方法またはアッセイであって、該参照値が、未刺激のベースライン対照である方法またはアッセイ。
[態様40] Tリンパ球によるCD69および/またはCD25の発現の、シリカ粒子組成物の療法的有効性に関するマーカーまたはバイオマーカーとしての使用。
[態様41] 療法的使用のためのシリカ組成物を生成するためのデバイスであって、該デバイスが、以下:
pH>10.5のシリケート溶液を含む第1容器、酸性緩衝溶液を含む第2容器;
該シリケート溶液および該酸性緩衝溶液の流動を制御するための流動制御手段;ならびに
該2種類の溶液が対象への投与の前に混ざるように該コロイド性シリカ組成物を送達するための該第1および第2容器と流体連結された出口;
を含む、デバイス。
[態様42] 態様41に記載のデバイスであって、該デバイスが、さらに、該溶液を混合してコロイド性シリカ組成物を生成するための該第1および第2容器と流体連結された混合チャンバーを含む、デバイス。
[態様43] 態様41に記載のデバイスであって、該溶液が、対象への投与前に静脈内注射ライン中でインサイチュで混合されるデバイス。
[態様44] 態様41または態様42に記載のデバイスであって、該デバイスが、さらに、対象から得られたTリンパ球を含む生物学的試料を該コロイド性シリカ組成物と接触させて療法のために該Tリンパ球の活性化を引き起こすためのチャンバーを含む、デバイス。
[態様45] 態様44に記載のデバイスであって、該デバイスが、該対象から抽出されたTリンパ球を含む試料を該接触チャンバーに送達するための、そして該活性化されたTリンパ球を該対象に戻すための手段を含む、デバイス。
[態様46] 態様41~45のいずれか1項に記載のデバイスであって、該出口が、該コロイド性シリカ組成物または該活性化されたTリンパ球を該対象に送達するための静脈内注射ラインに連結されている、デバイス。
[態様47] (i)pH>10.5のシリケート溶液を含む第1容器、および(ii)酸性緩衝溶液を含む第2容器、ならびに(iii)該シリケート溶液および酸性緩衝溶液を混合して4.0~8.5のpHを有する療法的に有効なコロイド性シリカ組成物を生成するための説明書、を含むキット。
[態様48] 態様47に記載のキットであって、該酸性溶液が、塩酸、カルボン酸、例えばクエン酸または酸性アミノ酸、例えばグリシン、を含むキット。
【0105】
参考文献:
本明細書において言及された全ての文献は、参照によりそのまま本明細書に援用される。
【0106】
【化1】
【0107】
国際公開第2009/052090号。
米国特許公開第2009/0130230号。
米国特許公開第2013/0149396号。
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米国特許第5,807,951号(日本臓器製薬株式会社)。
国際公開第95/21124号。
欧州特許第1 371 289 A号。
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【0110】
【化2】
【0111】
【化3】
【0112】
【化4】
【0113】
【化5】
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