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  • 特許-順送加工方法、順送加工装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】順送加工方法、順送加工装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 43/02 20060101AFI20240626BHJP
   B21C 47/26 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
B21D43/02 E
B21D43/02 F
B21D43/02 L
B21C47/26 F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020035783
(22)【出願日】2020-03-03
(65)【公開番号】P2021137829
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 剛之
【審査官】後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-238627(JP,A)
【文献】特開昭50-016650(JP,A)
【文献】実開昭63-202437(JP,U)
【文献】特開2016-083698(JP,A)
【文献】国際公開第2018/220858(WO,A1)
【文献】実開平01-118819(JP,U)
【文献】特開平10-193009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 43/02
B21C 47/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル状のフープ材を回転させながら搬送する搬送する搬送工程と、
搬送されてきた前記フープ材を、幅方向への曲がり量に応じた曲線状の軌跡で送り出す送り出し工程と、
前記フープ材にプレス加工を施すプレス工程と、を含み、
前記フープ材は、幅広の母材を幅方向の中央部分で2つに切断して形成されたものであり、
前記搬送工程では、前記フープ材を、搬送方向に対して切断面が同じ側となるように搬送し、
前記送り出し工程では、前記フープ材の幅方向において直径が異なっているローラを所定の回転量で回転させることにより、曲線状の軌跡で前記フープ材を送り出す順送加工方法。
【請求項2】
前記フープ材は、切断後に同方向に巻回してコイル状に形成されたものであり、
前記搬送工程では、2つに切断されたうちの一方の前記フープ材と他方のフープ材とで、搬送する際の回転方向を逆にする請求項1記載の順送加工方法。
【請求項3】
前記送り出し工程では、回転軸が搬送方向に対して傾斜していて搬送方向におけるプレス機の上流側と下流側のそれぞれに配置された前記ローラを回転させることによって、前記フープ材を送り出す請求項1または2記載の順送加工方法。
【請求項4】
前記フープ材を搬送方向における端部で互いに接合する接合工程を含み、
前記搬送工程では、一方の前記フープ材の末端に他方のフープ材の先端を接合し、複数の前記フープ材を連続して搬送する請求項1から3のいずれか一項記載の順送加工方法。
【請求項5】
幅広の母材を幅方向の中央部分で2つに切断してコイル状に形成されたフープ材を、搬送方向に対して切断面が同じ側となるように装着可能であるとともに、装着された前記フープ材を搬送する際の回転方向を正転および逆転に切り替え可能なアンコイラーと、
前記フープ材にプレス加工を施すプレス機と、
前記フープ材の幅方向において直径が異なっているローラを有し、前記ローラを所定の回転量で回転させることにより、幅方向への曲がり量に応じた曲線状の軌跡で前記フープ材を送り出すフィーダーと、
を備える順送加工装置。
【請求項6】
前記フィーダーは、前記ローラの回転軸が搬送方向に対して傾斜した状態で、搬送方向におけるプレス機の上流側と下流側のそれぞれに設けられている請求項5記載の順送加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、順送加工方法、順送加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばモータを製造する際には、所定幅で帯状に形成されたフープ材を所定のピッチで送りながら段階的にプレス加工を施す順送加工方法、順送加工装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。このようなフープ材は、例えば幅広の母材を所定幅に切断して形成されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-83698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、母材を切断して形成されたフープ材は、幅方向への曲がりが生じることがあり、ミクロン単位での加工精度が求められるプレス加工においては、加工精度の悪化を招くおそれがある。
そこで、母材を切断して形成されたフープ材を用いる場合において、加工精度が悪化することを抑制できる順送加工方法、順送加工装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
順送加工方法は、コイル状のフープ材を回転させながら搬送する搬送する搬送工程と、フープ材にプレス加工を施すプレス工程と、を含み、フープ材は、幅広の母材を幅方向の中央部分で2つに切断して形成されたものであり、搬送工程では、フープ材を、搬送方向に対して切断面が同じ側となるように搬送する。
【0006】
順送加工装置は、幅広の母材を幅方向の中央部分で2つに切断してコイル状に形成されたフープ材を、搬送方向に対して切断面が同じ側となるように装着可能であるとともに、装着されたフープ材を搬送する際の回転方向を正転および逆転に切り替え可能なアンコイラーと、フープ材にプレス加工を施すプレス機と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の順送加工装置の構成を模式的に示す図
図2】フープ材の製造過程を模式的に示す図
図3】右曲がり材と左曲がり材を説明する図
図4】順送加工方法による工程の流れを示す図
図5】フープ材を送り出す態様を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に示すように、順送加工装置1は、アンコイラー2、レベラー3、接合機4、フィーダー5、およびプレス機6を備えている。なお、図1に示している右曲がりおよび左曲がりについては後述する。この順送加工装置1は、フープ材7にプレス加工を施すことにより、例えば三相同期モータの構成部品である回転子鉄心および固定子鉄心の鉄心片を製造する。また、このような三相同期モータは、例えば高効率化が求められるハイブリッドカーに駆動源として搭載される。ただし、順送加工装置1は、ハイブリッドカー以外の用途に用いられるモータの製造に利用することができるし、モータではなく発電機の製造に利用することもできる。
【0009】
本実施形態の場合、フープ材7は、図2に示すように、幅広の母材8を仮想的な中心線L1にて示す幅方向の中央で2分割するセンタースプリット方式で形成されている。また、母材8は、フープ材7を所定幅で形成するために、外縁部分が仮想線L2に沿って切断されることもある。以下、中心線L1に沿って切断された部位、換言すると、母材8を切断する際に幅方向に等しく力が加わることになる部位を、フープ材7の切断面7aと称する。
【0010】
このようにして形成されたフープ材7には、幅方向への曲がりが生じることがある。なお、図2では、フープ材7に曲がりが生じることを示すため、曲がり具合を意図的に強調した態様で示している。このフープ材7に生じる曲がりは、切断時に加わる外力によって生じると考えられる。そのため、センタースプリット方式で2分割された2つのフープ材7には、互いに幅方向の逆向きに曲がりが生じることになる。また、切断後のフープ材7は、一般的に、それぞれ同方向に巻回されてコイル状に成型される。
【0011】
以下、フープ材7の長手方向に沿った向きを、フープ材7が搬送される向きである搬送方向と称する。また、図2に示す平面視において、搬送方向に対して右側への曲がりが生じている図示下方側のフープ材7を、右曲がり材7Rあるいは右曲がりのフープ材7とも称する。また、図2に示す平面視において、搬送方向に対して左側への曲がりが生じた図示上方側のフープ材7を、左曲がり材7Lあるいは左曲がりのフープ材7とも称する。
【0012】
アンコイラー2は、コイル状のフープ材7を回転させながら巻きほぐして搬送する。本実施形態の場合、アンコイラー2は、センタースプリット方式で切断されたフープ材7を、搬送方向に対して切断面7aが同じ側となるように装着可能であるとともに、装着されたフープ材7を搬送する際の回転方向を正転および逆転に切り替え可能になっている。なお、回転方向を逆向きに切り替える技術的意義については後述する。以下、図1に示す図示時計回りの回転方向を便宜的に正転と称し、図示反時計回りの回転方向を便宜的に逆転と称する。
【0013】
例えば、図1に示す右曲がりの場合、アンコイラー2は、右曲がりのフープ材7を切断面7aが図示奥側となるように装着し、図示時計回りに正転させることでフープ材7を搬送する。また、アンコイラー2は、図1に示す左曲がりの場合、左曲がりのフープ材7を切断面7aが図示奥側側となるように装着し、図示反時計回りで逆転させることでフープ材7を搬送する。ただし、切断面7aが共に図示手前側になるように装着することもでき、その場合には、右曲がり材7Rを逆転、左曲がり材7Lを正転させて搬送することになる。
【0014】
レベラー3は、搬送方向においてアンコイラー2の下流側に設けられており、アンコイラー2で巻きほぐされたフープ材7に外力を加えることにより、フープ材7を塑性変形させて巻き癖を除去する。
【0015】
接合機4は、搬送したフープ材7の末端と、次に搬送するフープ材7の先端とを接合する。本実施形態の場合、接合機4は、右曲がり材7Rと左曲がり材7Lとを、例えば非磁性のテープを利用して接合する。これにより、右曲がり材7Rと左曲がり材7Lとを連続的に送り出すことが可能になる。
【0016】
フィーダー5は、搬送されてきたフープ材7、より詳細には、レベラー3で巻き癖が除去されたフープ材7を、所定のピッチでプレス機6に送り出す。ここで言うピッチとは、平易に言えば、一回のプレス加工ごとにフープ材7を搬送方向に移動させる際の送り量に相当する。
【0017】
このフィーダー5は、搬送方向におけるプレス機6の上流側と下流側にそれぞれ設けられており、フープ材7の下方に位置するガイドローラ5aと、フープ材7の上方に位置するフィードローラ5bとを備えている。このうち、フィードローラ5bは、後述する図5に示すように、フープ材7の曲がり方向とは逆側が相対的に径大となる円錐台形状に形成されているとともに、その回転軸(J)が円弧の中心を通るように配置されている。なお、ガイドローラ5aも円錐台形状に形成した構成とすることができる。
【0018】
そして、フィーダー5は、ガイドローラ5aとフィードローラ5bでフープ材7を厚み方向に挟み込むとともに、各ローラを同期させて所定の回転量で回転させることにより、フープ材7を所定のピッチ且つ幅方向への曲がり量に応じた曲線状の軌跡でプレス機6に送り出す。このとき、上流側と下流側のフィーダー5は、それぞれ同期して動作する。
【0019】
プレス機6は、上型9および下型10を有する金型11と、上型9を上下動させる駆動機構12とを備えている。上型9には、下面側に突出する図示しない複数のパンチが設けられており、下型10には、後述する図5に示すようにパンチが挿入されるダイ11aが、搬送方向に対して複数、且つ、幅方向に例えば2列で設けられている。この金型11は、一例ではあるが、搬送方向における長さが例えば2000mm程度のものを想定している。その一方で、パンチとダイ11aとは、ミクロン単位の精度で互いに噛み合う。
【0020】
そして、プレス機6は、上型9を下方に移動させてパンチをダイ11aに挿入することにより、つまりは、パンチと大11aとを噛み合わせることにより、フープ材7にプレス加工を施す。プレス加工としては、磁石挿入孔の形成、回転子鉄心用の鉄心片の外縁の打ち抜き、コイル挿入孔の形成、固定子鉄心用の鉄心片の外縁の打ち抜きなどが順次行われる。これにより、フープ材7には、ミクロン単位の加工精度でプレス加工が施される。換言すると、鉄心片を製造する際におけるプレス加工には、ミクロン単位での加工精度が求められる。
【0021】
次に、上記した構成の作用について説明する。
前述のように、幅広の母材8を所定幅に切断して形成されたフープ材7は、幅方向への曲がりが生じることがある。例えば、フープ材7は、搬送方向に沿った2000mmの範囲において、幅方向に0.1mm~0.3mm程度曲がることがある。この曲がり量は、金型11の長さに比べれば僅かに見えるものの、金型11の加工精度に対して一桁以上大きな数値となっている。そのため、フープ材7に生じる曲がりは、ミクロン単位での加工精度が求められるプレス加工において加工精度の悪化を招くおそれがある。
【0022】
そこで、本実施形態の順送加工装置1および以下に説明する順送加工方法では、母材8を切断して形成されたフープ材7を用いる場合において、加工精度が悪化することを抑制している。まず、構成の理解し易くするために、右曲がり材7Rと左曲がり材7Lの切断面7aを同じ側とする技術的意義と、搬送する際の回転方向を逆にする技術的意義とについて説明する。
【0023】
本実施形態では、母材8をセンタースプリット方式で2分割に切断して形成したフープ材7を用いている。そして、発明者らが様々なフープ材7のサンプルを測定した結果、右曲がり材7Rと左曲がり材7Lとでは、曲がりの向きは逆であるものの、その曲がり量には有意差がないことが確認された。これは、各フープ材7は母材8の幅方向のほぼ中央で切断されていることから、切断時には幅方向に概ね均等に力が加わっており、その結果、切断後のフープ材7には、それぞれ幅方向へ逆向きの曲がりがほぼ等しい大きさで形成されたためであると考えられる。換言すると、母材8を2分割して形成されているフープ材7であるからこそ、曲がり量がほぼ同じになっていると考えられる。
【0024】
そのため、図3に平面視として示すように、例えば左曲がり材7Lを表裏反転させた場合には、曲がりの向きとその曲がり量とが、破線にて示している右曲がり材7Rとほぼ同じになり、実質的に右曲がり材7Rと同等に扱えるようになる。なお、ここでは、コイルの表面となる側をフープ材7の表、その反対側をフープ材7の裏としている。
【0025】
この場合、右曲がり材7Rと左曲がり材7Lとをその切断面7aが同じ側となるようにアンコイラー2に装着すれば、搬送方向に対する曲がりの向きが同じになる。例えば、右曲がり材7Rを基準とするならば、左曲がり材7Lを上下あるいは左右に反転させた状態でアンコイラー2に装着することにより、切断面7aが同じ側となり、搬送方向に対する曲がりの向きを同じにすることができる。これにより、右曲がり材7Rと左曲がり材7Lは、平面視つまりは金型11でプレス加工が施される状態において、同一形状となるように搬送されることになる。
【0026】
ところで、左曲がり材7Lと右曲がり材7Rとは、切断された後に同方向に巻回されてコイル状に成型されている。そのため、例えば左曲がり材7Lを表裏反転した状態にさせようとすると、一旦コイルを巻きほぐした後、逆方向で巻回する必要があるが、そのような作業には多大な労力を要することになる。
【0027】
そこで、本実施形態では、アンコイラー2を正転および逆転可能としている。具体的には、図3に側面視として示すように、矢印Xにて示すように同方向に巻き取られてコイル状に成型されているフープ材7について、破線にて示すように右曲がり材7Rを正転させていわゆる上出しで搬送する場合には、左曲がり材7Lをアンコイラー2に反転装着し、その状態で左曲がり材7Lを逆転させていわゆる下出しで搬送する。このように搬送する際の回転方向を正転と逆転とに切り替えることにより、左曲がり材7Lを、その表裏を反転させ、搬送方向に対して右曲がり材7Rと同じ向きに曲がりが生じた状態となるように搬送することが可能になる。
【0028】
このような技術的意義に基づいて、本実施形態の順送加工方法では、図4に示すように、ステップS1においてまずフープ材7の曲がり量を測定する。このとき、右曲がり材7Rの曲がり量と左曲がり材7Lの曲がり量がそれぞれ測定される。また、曲がり量の測定は、搬送を行う前に行われていればよい。
【0029】
続いて、ステップS2において、右曲がり材7Rを切断面7aが図1における図示奥側となるようにアンコイラー2に装着し、ステップS3において正転で搬送する。なお、ここでは切断面7aが図1における図示奥側となるように装着している。搬送された右曲がり材7Rは、レベラー3で巻き癖が除去され、フィーダー5によって所定のステップでプレス機6に送り出される。
【0030】
そして、フィーダー5は、ステップS4において、フープ材7を曲線状の軌跡で送り出す。これは、図5に示すように、例えば右曲がり材7Rは搬送方向に対して右曲がりになっているため、下型10の外縁を示す仮想線L3に沿って直線状に送り出すと、下型10の幅方向にずれが生じ、加工精度の悪化を招くおそれがあるためである。このとき、フィーダー5は、所定のピッチでフープ材7を送り出す。
【0031】
そのため、フィーダー5は、フープ材7を、その曲がり量に応じた曲線状の軌跡、本実施形態では例えば半径5kmの円弧状の軌跡(K)に沿うように送り出す。本実施形態の場合、フィードローラ5bは、フープ材7の切断面7a側が径大となる円錐台状に形成されているとともに、その回転軸が円弧の仮想的な中心点Oを通るように配置されている。このため、フィーダー5を動作させた際には、図5の図示上方側と下方側とでフープ材7の送り量が変わることになる。その結果、フープ材7は、円弧状の軌跡に沿うように、また、所定のピッチで送り出されることになる。なお、円弧の半径は一例であり、曲がり量に応じて適宜設定すればよい。
【0032】
そして、図4に示すステップS5において、フープ材7にプレス加工が施される。プレス加工が施されると、ステップS6において、右曲がり材7Rの搬送が終了するかを判定する。ここでは、アンコイラー2に装着された右曲がり材7Rが全て巻きほぐされた状態を終了としている。そして、右曲がり材7Rの搬送が終了していない場合には、ステップS6でNOとなることから、ステップS3に移行して正転での搬送、所定ピッチでの送り出し、およびプレス加工を繰り返す。
【0033】
一方、右曲がり材7Rの搬送が終了する場合には、ステップS6でYESとなることから、ステップS7において左曲がり材7Lを切断面7aが同じ側となるように装着する。続いて、右曲がり材7Rの末端が接合機4に到達すると、ステップS8において、右曲がり材7Rの末端に左曲がり材7Lの先端を接合する。このとき、右曲がり材7Rと左曲がり材7Lとは、例えば粘着テープ13により接合され、互いに繋がった状態になる。
【0034】
そして、ステップS9において左曲がり材7Lを逆転で搬送する。これにより、左曲がり材7Lは、右曲がり材7Rと同じ側に曲がった状態で、且つ、その曲がり量が右曲がり材7Rと同じ状態で搬送される。すなわち、左曲がり材7Lを、右曲がり材7Rと同等に扱うことができる。そのため、ステップS10において曲線状の軌跡で送り出す際にも、右曲がり材7Rと同じ態様で送り出すことができる。換言すると、右曲がり材7Rと左曲がり材7Lとで設備の変更や調整を必要とすることなく、ステップS11において連続的にプレス加工を施すことができる。
【0035】
その後、ステップS12において、左曲がり材7Lの搬送が終了するまでステップS9からステップS11までの処理を繰り返し、左曲がり材7Lの搬送が終了すると、工程を終了する。このようにして、母材8を切断して形成されたフープ材7に対し、加工精度の悪化を招くことなくプレス加工を施している。
【0036】
以上説明した順送加工装置1および順送加工方法によれば、次のような効果を得ることができる。
順送加工方法では、コイル状のフープ材7を回転させながら搬送する搬送する搬送工程と、フープ材7にプレス加工を施すプレス工程と、を含み、フープ材7は、幅広の母材8を幅方向の中央部分で2つに切断して形成されたものであり、搬送工程では、フープ材7を、搬送方向に対して切断面7aが同じ側となるように搬送する。
【0037】
これにより、2つに切断されることで幅方向において逆向きに曲がりが生じたフープ材7を、曲がりの向きが同じ側になる状態でプレス機6に搬送することが可能となる。したがって、右曲がり材7Rと左曲がり材7Lに対して設備の変更や調整を必要とすることなく同じ条件でプレス加工を施すことができ、加工精度が悪化することを抑制できる。
【0038】
また、順送加工方法では、フープ材7は、切断後に同方向に巻回してコイル状に形成されたものであり、搬送工程では、2つに切断されたうちの一方のフープ材7と他方のフープ材7とで搬送する際の回転方向を逆にする。一般的に、センタースプリット方式で製造されるフープ材7は、切断後の巻回方向が同じになっている。その場合、右曲がり材7Rと左曲がり材7Lとで回転方向を同じにしてしまうと、一方についてはコイル状の状態から巻きほぐすことができなくなる。そのため、回転方向を逆にすることにより、コイル状の状態から巻きほぐして搬送することができるようになる。
【0039】
また、順送加工方法では、搬送されてきたフープ材7を、幅方向への曲がり量に応じた曲線状の軌跡でプレス機6に送り出す送り出し工程を含む。これにより、直線的に部材が送られてくることが想定されている金型11に対して、実際のフープ材7の形状に即した状態で送り出すことができ、加工精度が悪化することを抑制できる。
【0040】
また、順送加工方法では、フープ材7を搬送方向における端部で互いに接合する接合工程を含み、送り出し工程では、一方のフープ材7の末端に他方のフープ材7の先端を接合し、複数のフープ材7を連続して搬送する。これにより、作業効率を向上させることができる。
【0041】
また、順送加工装置1は、幅広の母材8を幅方向の中央部分で2つに切断してコイル状に形成されたフープ材7を、搬送方向に対して切断面7aが同じ側となるように装着可能であるとともに、装着されたフープ材7を搬送する際の回転方向を正転および逆転に切り替え可能なアンコイラーと、フープ材7にプレス加工を施すプレス機6とを備える。
【0042】
このような順送加工装置1によっても、2つに切断されることで幅方向において逆向きに曲がりが生じたフープ材7を、曲がりの向きが同じ側になる状態でプレス機6に搬送することが可能となる。したがって、右曲がり材7Rと左曲がり材7Lに対して設備の変更や調整を必要とすることなく同じ条件でプレス加工を施すことができ、加工精度が悪化することを抑制できる。
【0043】
また、順送加工装置1は、フープ材7の幅方向において直径が異なっているローラを有し、ローラを所定の回転量で回転させることにより、フープ材7を、幅方向への曲がり量に応じた曲線状の軌跡でプレス機6に送り出すフィーダー5を備える。このような順送加工装置1によっても、直線的に部材が送られてくることが想定されている金型11に対して、実際のフープ材7の形状に即した状態で送り出すことができ、加工精度が悪化することを抑制できる。
【0044】
実施形態では切断面7aが図1における図示奥側になるようにフープ材7を装着する例を示したが、切断面7aが共に図示手前側になるように装着することもできる。その場合、実施形態の例で言えば右曲がり材7Rを逆転、左曲がり材7Lを正転で搬送することにより、実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、正転および逆転は回転方向を便宜的に示すものであり、例えば図1の図示反時計回りを正転とした場合には、図示時計回りが逆転になる。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
図面中、1は順送加工装置、2はアンコイラー、5はフィーダー、6はプレス機、7、7R、7Lはフープ材、7aは切断面、8は母材を示す。
図1
図2
図3
図4
図5