(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】巻締め装置
(51)【国際特許分類】
B21D 51/30 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
B21D51/30 B
(21)【出願番号】P 2020044198
(22)【出願日】2020-03-13
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】391035430
【氏名又は名称】東洋製罐グループエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】辺田 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和樹
(72)【発明者】
【氏名】小幡 一元
【審査官】後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-021922(JP,A)
【文献】国際公開第2013/145018(WO,A1)
【文献】特開2003-137392(JP,A)
【文献】特開2003-200910(JP,A)
【文献】特開昭62-244537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 51/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶の上部に載置された蓋を位置決めするチャックユニットと、蓋を缶に巻締めるシーミングユニットとを備えた巻締め装置であって、
前記チャックユニットは、下端部に蓋を位置決めするチャックが装着されたスピンドルと、前記スピンドルを機体ハウジング内において回転自在に支持するとともに潤滑油によって潤滑される軸受と、前記軸受よりも下方位置において前記スピンドルと前記機体ハウジングとの間をシールするための非接触式のオイルシール機構とを有
し、
前記オイルシール機構が、軸受の下方に設けられた傘状のスリンガを有し、
前記オイルシール機構が、巻締め装置の運転時に、前記スリンガの上面から機内ハウジングに向かって潤滑油を遠心力により循環させる戻り流路を有することを特徴とする巻締め装置。
【請求項2】
缶の上部に載置された蓋を位置決めするチャックユニットと、蓋を缶に巻締めるシーミングユニットとを備えた巻締め装置であって、
前記チャックユニットは、下端部に蓋を位置決めするチャックが装着されたスピンドルと、前記スピンドルを機体ハウジング内において回転自在に支持するとともに潤滑油によって潤滑される軸受と、前記軸受よりも下方位置において前記スピンドルと前記機体ハウジングとの間をシールするための非接触式のオイルシール機構とを有し、
前記オイルシール機構が、軸受の下方に設けられた傘状のスリンガを有し、
前記オイルシール機構が、巻締め装置の停止時に、潤滑油を機内ハウジング内下部に向かって流すドレーン構造を有することを特徴とする巻締め装置。
【請求項3】
缶の上部に載置された蓋を位置決めするチャックユニットと、蓋を缶に巻締めるシーミングユニットとを備えた巻締め装置であって、
前記チャックユニットは、下端部に蓋を位置決めするチャックが装着されたスピンドルと、前記スピンドルを機体ハウジング内において回転自在に支持するとともに潤滑油によって潤滑される軸受と、前記軸受よりも下方位置において前記スピンドルと前記機体ハウジングとの間をシールするための非接触式のオイルシール機構とを有し、
前記オイルシール機構が、軸受の下方に設けられた傘状のスリンガを有し、
前記スリンガの下方に、潤滑油を機内ハウジング内に向かって流すためのフェールセーフが形成されていることを特徴とする巻締め装置。
【請求項4】
前記スリンガは、下面に前記スピンドルの軸中心側から外周縁に向かって直線的な放射状または曲線的な放射状に伸びる溝が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の巻締め装置。
【請求項5】
前記スピンドルの周囲における前記スリンガの下方に、上下方向に伸びる侵入防止部材を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の巻締め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミ缶、スチール缶等に飲料等を缶詰めする巻締め装置におけるチャックユニットのスピンドル軸の構造に特徴を有する巻締め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料などが充填された缶を載置する缶載置ユニットと、缶載置ユニットに対向して設けられたチャックユニットと、蓋を缶に巻締めるシーミングロールを備えた巻締め装置は公知である。
公知の巻締め装置は、例えば、特許文献1に示すように、缶と蓋の巻締め工程を行うシーミングターレット(1)と、シーミングターレットに巻締め前の缶を供給する搬入コンベア(供給コンベヤ7)と、蓋を供給する蓋供給ユニットの蓋搬送ターレット(供給ターレット3)と、巻締め後の缶をシーミングターレットから搬出するディスチャージターレット(排出ターレット5)と、缶をさらにディスチャージターレットから外部に搬出する搬出コンベア(排出コンベヤ8)を備えている。
シーミングターレット、ディスチャージターレット及び蓋搬送ターレットには、それぞれ外周部に缶及び蓋を個別収容して搬送するポケット(嵌合凹部2、4、6)が設けられている。
シーミングターレットの各ポケットには、缶を載置する缶載置ユニット(リフター17)と、缶載置ユニットに対向して設けられたチャックユニット(シーミングチャック装置10)と、蓋を缶に巻締めるシーミングロール(18、19)が設けられている。
このように構成された巻締め装置では、各ターレット、各コンベアの速度及びタイミングをギヤ等で合わせ、各ポケットに配置された缶載置ユニット、チャックユニット及びシーミングユニットの動作を、ギヤ、カム機構等でシーミングターレットの回転と連動させることで、高速に搬送される缶及び蓋を受渡しながら連続的に巻締めることができる。
【0003】
チャックユニットにおいては、下端部に蓋を位置決めするチャックが装着されたスピンドルが軸受を介して回転自在に設けられている。そして、近年、巻締め装置の高速化に伴ってチャックも高速回転されることが行われており、スピンドルを支持する軸受等の回転動作部は高速回転に耐え得るように潤滑油によって潤滑されている。
【0004】
また、公知の巻締め装置は、例えば、特許文献2および特許文献3に示すように、回転動作部に供給された潤滑油は、缶等の容器や蓋を扱う巻締め作業空間に入り込むと缶や蓋あるいはその内容物が汚染されることになるので、このような潤滑油の巻締め作業空間への入り込みがないように、回転動作部を機内ハウジングで囲って、機内ハウジングの底部で使用済みの潤滑油を溜めることが行われている。機内ハウジングと回転動作部との間には、回転動作部の回転を可能にするために不可避的に嵌合隙間が存在するので、この嵌合隙間から潤滑油が漏れないよう、機内ハウジングと回転動作部との間にはV字形のゴム等で形成された接触式のオイルシールが設けられている。
【0005】
しかしながら、回転軸に摺接する接触式オイルシールの特性上、回転動作部と機内ハウジングとの間を完全にシールすることは至難であり、長期間にわたって運転を継続する間には経年劣化等もあり嵌合隙間が流出経路となって潤滑油が漏れ出てしまうという問題があった。巻締め作業空間への潤滑油漏れが生じると、スピンドルの回転による遠心力によって飛散した潤滑油が缶を汚染し、大量の不良製品を発生させることになることから、滲みだし漏れ出た潤滑油を受け溜めて回収して排出することも提案されている。
また、回転軸に摺接するオイルシールの発熱によりチャックユニットを構成する部品の熱伸びが発生し、巻締め寸法が変化するという悪影響を与えるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭62-244537号公報
【文献】特開2003-137392号公報
【文献】特開2003-200910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するものであって、その目的は、チャックユニットの機内ハウジングから巻締め作業空間への潤滑油の漏れを防止することができ、潤滑油による汚染のある不良製品の発生を防止すると供に、発熱による熱伸びを排除し巻締め寸法を精度良く維持することが可能な巻締め装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の巻締め装置は、缶の上部に載置された蓋を位置決めするチャックユニットと、蓋を缶に巻締めるシーミングユニットとを備えた巻締め装置であって、
前記チャックユニットは、下端部に蓋を位置決めするチャックが装着されたスピンドルと、前記スピンドルを機体ハウジング内において回転自在に支持するとともに潤滑油によって潤滑される軸受と、前記軸受よりも下方位置において前記スピンドルと前記機体ハウジングとの間をシールするための非接触式のオイルシール機構とを有し、
前記オイルシール機構が、軸受の下方に設けられた傘状のスリンガを有し、
前記オイルシール機構が、巻締め装置の運転時に、前記スリンガの上面から機内ハウジングに向かって潤滑油を遠心力により循環させる戻り流路を有することを特徴とすることにより、前記課題を解決するものである。
また、本発明の巻締め装置は、缶の上部に載置された蓋を位置決めするチャックユニットと、蓋を缶に巻締めるシーミングユニットとを備えた巻締め装置であって、
前記チャックユニットは、下端部に蓋を位置決めするチャックが装着されたスピンドルと、前記スピンドルを機体ハウジング内において回転自在に支持するとともに潤滑油によって潤滑される軸受と、前記軸受よりも下方位置において前記スピンドルと前記機体ハウジングとの間をシールするための非接触式のオイルシール機構とを有し、
前記オイルシール機構が、軸受の下方に設けられた傘状のスリンガを有し、
前記オイルシール機構が、巻締め装置の停止時に、潤滑油を機内ハウジング内下部に向かって流すドレーン構造を有することを特徴とする。
また、本発明の巻締め装置は、缶の上部に載置された蓋を位置決めするチャックユニットと、蓋を缶に巻締めるシーミングユニットとを備えた巻締め装置であって、
前記チャックユニットは、下端部に蓋を位置決めするチャックが装着されたスピンドルと、前記スピンドルを機体ハウジング内において回転自在に支持するとともに潤滑油によって潤滑される軸受と、前記軸受よりも下方位置において前記スピンドルと前記機体ハウジングとの間をシールするための非接触式のオイルシール機構とを有し、
前記オイルシール機構が、軸受の下方に設けられた傘状のスリンガを有し、
前記スリンガの下方に、潤滑油を機内ハウジング内に向かって流すためのフェールセーフが形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の巻締め装置によれば、軸受よりも下方位置においてスピンドルと機体ハウジングとの間をシールするための非接触式のオイルシール機構とを有することにより、回転軸に摺接するシール部材を有さないので、高速で巻締めを行なっても接触式オイルシールの特性に縛られることなく経年劣化の影響を受けずに、チャックユニットの機内ハウジングから巻締め作業空間への潤滑油の漏れを防止することができ、潤滑油による汚染のある不良製品の発生を防止することができて高い生産性が得られる。また、チャックユニットを構成する部品の熱伸びの発生が回避されるので、巻締め寸法を精度良く維持することができる。
本発明に係るオイルシール機構が傘状のスリンガを有する構成によれば、軸受を潤滑して下方に流下した潤滑油を遠心力により容易に機内ハウジング内に連通する戻り流路に流すことができるので、確実に巻締め作業空間への潤滑油の漏れを防止することができる。
本発明に係るスリンガの下面に直線的な放射状または曲線的な放射状に伸びる溝が形成されている構成によれば、スリンガの下面側に流入した潤滑油を遠方の外方側に容易に案内することができて嵌合隙間から潤滑油が漏れることを抑止することができるので、確実に巻締め作業空間への潤滑油の漏れを防止することができる。
本発明に係るスリンガの上面から機内ハウジングに向かって潤滑油を遠心力により循環させる戻り流路を有する構成によれば、潤滑油を遠心力により容易に機内ハウジング内に戻すことができるので、確実に巻締め作業空間への潤滑油の漏れを防止することができる。
【0010】
本発明の巻締め装置の停止時に潤滑油を機内ハウジング内下部に向かって流すドレーン構造を有する構成によれば、巻締め装置の停止した時に軸受に残留して流下してくる潤滑油を容易に機内ハウジング内に戻すことができるので、確実に巻締め作業空間への潤滑油の漏れを防止することができる。
本発明に係るスリンガの下方に液体侵入防止部材を有する構成によれば、軸受を潤滑して下方に流下した潤滑油の巻締め作業空間への漏れを防止することができるとともに、巻締め作業空間からの洗浄液や缶に充填される内容物の蒸気等の機内ハウジング内への侵入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る巻締め装置の構成の一例を示す模式図。
【
図2】本発明の一実施形態に係る巻締め装置の構成の一例を示す断面図。
【
図3】本発明の一実施形態に係る巻締め装置のチャックユニットの構成の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の一実施形態に係る巻締め装置100は、
図1に示すように、缶Cと蓋Fの巻締め工程を行うシーミングターレット101と、シーミングターレット101に巻締め前の缶Cを未回転の状態で搬送供給する搬入コンベア102と、蓋Fを供給する蓋分離ユニット210及び蓋搬送ターレット250からなる蓋供給装置104と、巻締め後の缶CMをシーミングターレット101から搬出するディスチャージターレット107と、缶CMをさらにディスチャージターレット107から外部に搬出する搬出コンベア108を備えている。
シーミングターレット101、ディスチャージターレット107及び蓋搬送ターレット250には、それぞれ外周部に缶C、缶CM及び蓋Fを個別収容して搬送するポケットPが設けられており、搬入コンベア102には、缶Cと個別に係合して搬送するアタッチメント103が設けられている。
シーミングターレット101、ディスチャージターレット107及び蓋搬送ターレット250の回転速度、搬入コンベア102のアタッチメント103の移動速度、及び、各ポケットP、アタッチメント103の連動タイミングは、各ターレット、コンベア間で缶C、缶CM及び蓋Fが円滑に受け渡されるように調整可能に設計されている。
【0013】
缶Cと蓋Fの巻締め工程を行うシーミングターレット101は、
図2に示すように、各ポケットPにそれぞれ、缶Cを載置して回転させる缶載置ユニット350と、缶載置ユニット350に対向して設けられた、缶Cの上部に載置された蓋Fを位置決めするチャック321及び缶Cの上部に載置された蓋Fを押圧すべくチャック321内に上下動可能に嵌合しているノックアウトパッド322を有するチャックユニット320と、蓋Fを缶Cに巻締めるシーミングロール451,452を有するシーミングユニット410とを備えている。
【0014】
シーミングターレット101は、センターシャフト109の周囲に中心軸Xが上下方向に伸びる状態で回転可能に配置され、シーミングターレット101の駆動機構151により回転駆動される。
蓋分離ユニット210、蓋搬送ターレット250、搬入コンベア102は、シーミングターレット101の駆動機構151から機械的に伝動機構を介して駆動される。
【0015】
チャックユニット320は、センターシャフト109の周囲に中心軸Xが上下方向に伸びる状態で回転可能に等角度間隔に缶載置ユニットに対向して配置され、チャック321を下端に支持する回転軸の外面ギヤ323がセンターシャフト109に支持したサンギヤ324に噛合する。チャックユニット320は、センターシャフト109とセンターコラムの回転によって公転し、また、チャック321は、サンギヤ324と外面ギヤ323との噛合により自転する。
チャック321は上下方向に固定的かつ回転可能に設けられており、
図2の中心軸Xの右側に示すように、缶載置ユニット350を上昇させて蓋Fを載置させた缶Cを、ノックアウトパッド322と缶載置ユニット350とによって挟持しながら、チャック321の下端外周面を嵌合させることにより、蓋Fのセンターリングを行なう。
【0016】
チャックユニット320は、下端部に蓋Fを位置決めするチャック321が装着されたチャックスピンドル325を有する。チャックスピンドル325は、
図3に示されるように、シーミングターレット101の中心軸Xを中心として回動するテーブル327の外周部を貫通孔327H内に軸受326を介して回転自在に等角度間隔で貫通して設けられている。各々のチャックスピンドル325は自転するとともにテーブル327によって公転される。
軸受326は、潤滑油によって潤滑される。そして、本実施形態の巻締め装置100は、軸受326よりも下方位置においてチャックスピンドル325とテーブル327との間をシールするための非接触式のオイルシール機構を有し、これにより、機体ハウジング内と缶Cの巻締め作業空間Vとの間をシールしている。
【0017】
オイルシール機構において、チャックスピンドル325の外周における軸受326の下方には、金属製の環状の傘状スリンガ311がチャックスピンドル325とともに回転するようチャックスピンドル325に嵌合して設けられている。傘状スリンガ311は、その上端面が軸受326の下部に位置するとともに、その傘状の下部がチャックスピンドル325の軸中心から径方向外下方に広がる状態に配置されている。
テーブル327の貫通孔327Hにおけるシーミングターレット101の中心軸Xから最も離間した位置には、テーブル327内を貫通する戻り流路329の一端(入口)が開口しており、戻り流路329の他端(出口)は、機内ハウジング内に連通している。戻り流路329は、傘状スリンガ311の上面から機内ハウジングに向かって潤滑油を遠心力により循環させるものであり、シーミングターレット101の中心軸Xの径方向外上方に向かって伸びる状態とされている。チャックスピンドル325の自転時においては、軸受326を潤滑した潤滑油が下方に流れて傘状スリンガ311の上面に当たり、その表面を半径方向外側に移動し、テーブル327の回転(シーミングターレット101の公転)による遠心力によって、戻り流路329に沿ってシーミングターレット101の中心軸Xの径方向外方に押し流される(飛ばされる)。
また、テーブル327の貫通孔327Hにおけるシーミングターレット101の中心軸Xから最も近接した位置には、テーブル327内にセンターシャフト109の方向に下方に向かって伸びて機内ハウジング内に連通するドレーン流路(ドレーン構造)318が形成されており、巻締め装置100の停止時に傘状スリンガ311の上面を伝って自然落下により機内ハウジング内下部に向かって潤滑油を流下させることができる。また、傘状スリンガ311の下面(裏面)には、チャックスピンドル325の軸中心側から外周縁に向かって直線的な放射状または曲線的な放射状に伸びる溝が形成されており、溝は複数が周方向に均等に離間して形成されていることが好ましい。曲線的な溝には、円弧状のものや、螺旋状(渦巻き状)の溝も含む。
傘状スリンガ311の下方には、テーブル327の貫通孔327Hの下部に2つのO-リング317,317を介して液密に内接するよう環状部材312が設けられている。傘状スリンガ311は、環状部材312の周方向内側に形成された上方に突出しながら上方に開放された環状溝が形成された環状レール部313の上側及び側周面を覆う状態にラビリンス嵌合されている。このような構成を有することにより、軸受326を潤滑し傘状スリンガ311の上面に案内されて伝い落ちた潤滑油が環状レール部313によってせき止められて環状部材312とチャックスピンドル325との間隙に流れ込むことが防止される。
さらに、テーブル327内の戻り流路329の下方には、環状レール部313から下方及び横方向に屈折して貫通する戻り流路316の出口と対向する位置に、テーブル327内を貫通するフェールセーフ315の一端(入口)が開口しており、フェールセーフ315の他端(出口)は、機内ハウジング内に連通している。フェールセーフ315は、シーミングターレット101の中心軸Xの径方向外上方に向かって伸びる状態とされている。フェールセーフ315においては、傘状スリンガ311を介してテーブル327の回転による遠心力によって戻り流路329に流入せず(飛ばされず)、環状部材312内に残留した潤滑油が遠心力によって機内ハウジング内に戻される。
オイルシール機構は、傘状スリンガ311と、環状部材312と筒状スリーブ330とを有して構成されている。
また、環状部材312の下方には、上部にチャックスピンドル325の軸中心から径方向外方に突出して環状部材312との間を密に閉塞するフリンジ331が形成された、チャックスピンドル325に嵌合する侵入防止部材としての筒状スリーブ330がチャックスピンドル325とともに回転するようチャックスピンドル325に嵌合して設けられている。
【0018】
シーミングユニット410は、公転するロール揺動軸132の下端に中央部を固定したシーミングレバー450の両端に夫々回転するよう枢着されたシーミングロール451,452によって二重巻締を行なう。
二重巻締工程においては、シーミングロール451により蓋Fのカール部分を缶Cのフランジ部分に巻き込む一次巻締を行なった後、シーミングロール452による締め付けによって圧着・接合し、密封を維持する二次巻締を行なう。
【0019】
以上のように構成された巻締め装置100の基本的な動作について説明する。
蓋Fを巻締める前の缶Cは、搬入コンベア102の各アタッチメント103に係合して搬送され、シーミングターレット101の駆動機構151によって回転されるシーミングターレット101に向かう。
一方、蓋Fは、蓋分離ユニット210から1枚ずつ切り出されて蓋搬送ターレット250の各ポケットPに受け渡され、蓋搬送ターレット250の回転により、シーミングターレット101に向かう(
図1参照)。
搬入コンベア102、蓋搬送ターレット250の速度、タイミングは、缶Cと蓋Fの中心が合流点Gで一致するように、シーミングターレット101の速度、タイミングに合わせて調整されており、図示しない駆動源から動力が付与された駆動機構151から適宜のギヤ、カム機構等を介して回転が制御された缶載置ユニット350を合流点Gで上昇させることで、プレート360上に載置された缶Cに蓋Fを載置する。
その後、さらに缶載置ユニット350が上昇し、チャック321内のノックアウトパッド322が蓋Fを押さえ、駆動機構151から適宜のギヤ、カム機構等を介して回転が制御されたチャック321が蓋Fに嵌合して蓋Fのセンターリングが行われ、蓋Fが載置された缶Cは、巻締めに必要な一定の軸荷重でプレート360とチャック321及びノックアウトパッド322に挟持される。
そして、シーミングターレット101がさらに回転し、挟持された蓋Fと缶Cが
図1に示す巻締め区間Eに達する前に、プレート360とチャック321が巻締めに必要な回転数まで加速する。
巻締め区間Eを通過中に、シーミングユニット410のロール揺動軸132の下端に固定したシーミングレバー450を揺動させて、両端に夫々回転するよう枢着された1次巻締め用、2次巻締め用の2つのシーミングロール451、452を缶Cとその上部に載置された蓋Fのフランジに対して側方からチャック321に向けて順次押し付けて二重巻締めが行われる。
巻締めが完了した缶CMは、シーミングターレット101からディスチャージターレット107に受け渡され、さらに、ディスチャージターレット107から搬出コンベア108に受け渡されて、検査、梱包等の次工程に搬出される。
【0020】
巻締め装置100の可動時のチャックユニット320においては、チャックスピンドル325がシーミングターレット101の中心軸Xを中心としたテーブル327の回転に伴って公転すると同時に、サンギヤ324と外面ギヤ323との噛合により自転し、その公転と自転とに基づいて、チャック321とシーミングロール451、452と協働して蓋Fを缶Cに巻き締める巻締め動作が行われる。このとき、潤滑油は軸受326を潤滑しながら流下し、傘状スリンガ311の上面から下端部に向かって案内され、チャックスピンドル325の自転とテーブル327の回転による遠心力によって、戻り流路329に沿ってシーミングターレット101の中心軸Xの径方向外方に押し流されて機内ハウジング内に戻される。また、戻り流路329に流されずわずかに環状部材312に残留した潤滑油は、テーブル327の回転による遠心力によって、フェールセーフ315に沿ってシーミングターレット101の中心軸Xの径方向外上方に向かって押し流されて機内ハウジング内に戻される。一方、巻締め装置100の停止時には、軸受326を潤滑した潤滑油は、下方に垂れ落ちて傘状スリンガ311の上面から下端部に向かって自然落下により案内され、さらに自然落下によりドレーン流路318によってセンターシャフト109の方向に機内ハウジング内に向かって戻される。
また、侵入防止部材としてのフリンジ331が形成された筒状スリーブ330により、巻締め作業空間Vを洗浄殺菌する際の洗浄液や蒸気などが環状部材312の下方から貫通孔327Hに侵入したり潤滑油に混入したりしないよう防いでいる。
【符号の説明】
【0021】
100 ・・・ 巻締め装置
101 ・・・ シーミングターレット
102 ・・・ 搬入コンベア
103 ・・・ アタッチメント
104 ・・・ 蓋供給装置
107 ・・・ ディスチャージターレット
108 ・・・ 搬出コンベア
109 ・・・ センターシャフト
132 ・・・ ロール揺動軸
151 ・・・ 駆動機構
210 ・・・ 蓋分離ユニット
250 ・・・ 蓋搬送ターレット
311 ・・・ 傘状スリンガ
312 ・・・ 環状部材
313 ・・・ 環状レール部
317 ・・・ O-リング
315 ・・・ フェールセーフ
318 ・・・ ドレーン流路
320 ・・・ チャックユニット
321 ・・・ チャック
322 ・・・ ノックアウトパッド
323 ・・・ 外面ギヤ
324 ・・・ サンギヤ
325 ・・・ チャックスピンドル
326 ・・・ 軸受
327 ・・・ テーブル
327H・・・ 貫通孔
329 ・・・ 戻り流路
330 ・・・ 筒状スリーブ
331 ・・・ フリンジ
350 ・・・ 缶載置ユニット
360 ・・・ プレート
410 ・・・ シーミングユニット
450 ・・・ シーミングレバー
451 ・・・ シーミングロール(一次巻締)
452 ・・・ シーミングロール(二次巻締)
C ・・・ 缶(蓋巻締前)
F ・・・ 蓋
CM ・・・ 缶(蓋巻締後)
P ・・・ ポケット
E ・・・ 巻締区間
V ・・・ 巻締め作業空間
X ・・・ 中心軸