(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20240626BHJP
F21V 29/503 20150101ALI20240626BHJP
F21V 29/70 20150101ALI20240626BHJP
F21V 29/507 20150101ALI20240626BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20240626BHJP
F21V 17/00 20060101ALI20240626BHJP
F21V 5/00 20180101ALI20240626BHJP
F21W 131/20 20060101ALN20240626BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240626BHJP
【FI】
F21S2/00 610
F21V29/503 100
F21V29/70
F21V29/507
F21V23/00 160
F21V23/00 140
F21V17/00 200
F21V5/00 600
F21W131:20
F21Y115:10 500
(21)【出願番号】P 2020080568
(22)【出願日】2020-04-30
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森下 駿
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-000476(JP,A)
【文献】特開2008-269938(JP,A)
【文献】特開2010-182486(JP,A)
【文献】特開2014-212121(JP,A)
【文献】特開2015-153625(JP,A)
【文献】特開2015-020032(JP,A)
【文献】特表2018-527959(JP,A)
【文献】国際公開第2018/235436(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 29/00
F21V 23/00
F21V 17/00
F21V 5/00
F21W 131/20
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の箇所を照らす照明ユニットと、この照明ユニットを一端に備える支持ユニットと、この支持ユニットの他端を接続し、前記照明ユニットへ電力を供給する電源ユニットとを具備し、
前記照明ユニットは、少なくとも一方が開口した中空の殻部材と、前記殻部材の開口端を封鎖して設けられた集光レンズと、この集光レンズとの間に空隙を持つよう前記殻部材に内包され、前記電源ユニットに電気的に接続されている発光素子と、この発光素子を支持する放熱体とを備え、
前記発光素子は、その発光面を前記集光レンズに対向して配置され、
前記放熱体は、殻部材に内接している照明装置において、
前記殻部材の軸線方向には、殻部材の一端側に開口する小径部と、この小径部に連通する大径部とからなる貫通孔が形成されており、
前記集光レンズは、小径部と大径部の境界部分に当接する円板部と、この円板部の一端側に形成された球面部とを有し、
前記集光レンズの円板部には、前記球面部を囲むようにバッファが形成されていることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
所定の箇所を照らす照明ユニットと、この照明ユニットを一端に備える支持ユニットと、この支持ユニットの他端を接続し、前記照明ユニットへ電力を供給する電源ユニットとを具備し、
前記照明ユニットは、少なくとも一方が開口した中空の殻部材と、前記殻部材の開口端を封鎖して設けられた集光レンズと、この集光レンズとの間に空隙を持つよう前記殻部材に内包され、前記電源ユニットに電気的に接続されている発光素子と、この発光素子を支持する放熱体とを備え、
前記発光素子は、その発光面を前記集光レンズに対向して配置され、
前記放熱体は、殻部材に内接している照明装置において、
前記支持ユニットは、中空の弾性チューブと、この弾性チューブに挿通され、前記電源ユニットと照明ユニットを電気的に接続する電線と、前記弾性チューブに挿通される金属線とを備えており、前記金属線は、人力で湾曲可能かつ、照明ユニットの重さで湾曲しない所定の太さで構成されていることを特徴とする照明装置。
【請求項3】
前記支持ユニットの金属線の端部は、前記放熱体に挿入されていることを特徴とする請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記殻部材は、生体適合性を有する金属部材で構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項
3のいずれかに記載の照明装置。
【請求項5】
前記集光レンズは、耐ガンマ線グレードのポリカーボネートで構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項
4のいずれかに記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術箇所となる患部周辺に光を照射し照らす照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
手術箇所の照度は、10,000ルクスから100,000ルクスと定められている。このため、手術室の天井には無影灯等の高照度の照明が備えられ、手術箇所を照らしている。しかし、身体の深部に術部がある場合等においては、周辺組織に遮られて無影灯の光が手術箇所に十分届かず、照度が不足することがある。
【0003】
そのため、特許文献1に示すような照明装置が知られている。この照明装置は、被照射対象から離れた位置に設置される光源と、この光源から被照射対象まで延びるライトガイドからなり、光源から発せられた照射光は、ライトガイド内を伝って被照射対象を照射するよう構成されている。このような照明装置は、被照射対象付近設置されるのが細く構成されたライトガイドのみであるため、術者の邪魔にならないという利点がある。しかしながら、この照明装置には、ライトガイドの伝達損失により、高照度の光源が必要となるため、消費電力が大きいという問題および、ライトガイドを許容曲げ半径以上曲げると照射光がライトガイドの先端まで伝達されない等、照射可能範囲に制限があるという問題があった。また、ライトガイドを用いる照明装置においては、ライトガイドの先端部が高温となるため、熱傷等の原因になるという問題も知られている。
【0004】
また、特許文献2に示されるような照明装置も知られている。この照明装置は、所定の箇所を照明可能な照明ユニットと、この照明ユニットを一端に支持する支持ユニットと、この支持ユニットの他端が接続された電源ユニットとを備えており、照明ユニットを術部付近に設置し、術部を照射するように構成されている。このように照明ユニットが術部を直接照射する照明装置は、ライトガイドによる損失伝達がないため消費電量が小さいという利点および、ライトガイドのように許容曲げ半径がないため設置場所、照射可能範囲の自由度が高いという利点がある。しかしながら、このような照明装置においては、発光素子の発熱量を抑えるために発光素子に大きな電力をかけることができず、結果、照度が不足してしまう等の課題があった。
【0005】
そのため、特許文献3に記載の照明装置が創成されている。この照明装置は、所定の箇所を照明可能な照明ユニットと、この照明ユニットを一端に支持する支持ユニットと、この支持ユニットの他端が接続された電源ユニットとを備えており、前記照明ユニットは、貫通孔が形成された中空の殻部材と、この殻部材の開口端を封鎖する主レンズと、前記殻部材内に殻部材および主レンズと空隙を持って配置された発光素子とから構成されており、発光素子は、発光素子より十分大容量に構成された放熱体に支持されている。このような照明装置は、発光素子の発した熱が放熱体に伝達される構造であるため、発光素子に十分大きい電力を負荷できる。これにより、10,000ルクス以上照度で照射可能という特徴があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-123366号公報
【文献】特表2018-527959号公報
【文献】特願2019-37027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3に記載の照明装置は、光源である発光素子を支持する放熱体がレンズを支持する殻部材との間に空隙を持って配されていた。このため、発光素子とレンズとを同軸上に配置するのが容易ではなく、照明装置の組立てに要する工数が増加してしまう等の問題があった。また、放熱体は、半円柱状に形成された2個の主体部を組み合わせて構成された円柱状部材であったため、さらに組立てに要する工数が増加してしまう等の問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みて創生されたものであり、発熱による発光素子の破損等を防止し、術部を高照度で照明可能かつ、容易に組立可能な照明装置の提供を目的とする。この目的を達成するために本発明は、所定の箇所を照らす照明ユニットと、この照明ユニットを一端に備える支持ユニットと、この支持ユニットの他端を接続し、前記照明ユニットへ電力を供給する電源ユニットとを具備し、前記照明ユニットは、少なくとも一方が開口した中空の殻部材と、前記殻部材の開口端を封鎖して設けられた集光レンズと、この集光レンズとの間に空隙を持つよう前記殻部材に内包され、前記電源ユニットに電気的に接続されている発光素子と、この発光素子を支持する放熱体とを備え、前記発光素子は、その発光面を前記集光レンズに対向して配置されている照明装置において、前記放熱体は、殻部材に内接していることが好ましい。このように放熱体が殻部材に内接しているため、放熱体は、殻部材および集光レンズと同軸上に容易に配置可能となるとともに、発光素子から伝達された熱を殻部材に放熱可能となる。なお、前記発光素子は、放熱体に固定された基板に取り付けられており、前記基板は、発光素子と放熱体を伝熱的に接続可能に構成されていることが好ましい。また、前記放熱体の軸方向には、電線経路が貫通しており、この電線経路には、前記電源ユニットと発光素子とを電気的に接続する電線が通過していることが好ましい。これにより、照明ユニットは、放熱体が殻部材に内接している構造と組立ての容易性を保ったまま省スペースな配線構造を実現可能となる。さらに、前記基板にも、前記放熱体の電線経路に連通する電線経路が貫通していることが好ましく、この結果、放熱体と基板との軸線を容易に一致可能となる。
【0009】
また、前記集光レンズには、前記放熱体または前記基板に当接可能な脚部が設けられていることが好ましい。これにより、集光レンズと、放熱体または基板との距離すなわち集光レンズと発光素子との距離が常時一定に保持可能となる。さらに、前記殻部材の軸線方向には、殻部材の一端側に開口する小径部と、この小径部に連通する大径部とからなる貫通孔が形成されており、前記集光レンズは、小径部と大径部の境界部分に当接する円板部と、この円板部の一端側に形成された球面部とを有していることが好ましい。これにより、集光レンズの円板部を殻部材の段部に当接させて固定可能となる。しかも、前記集光レンズの円板部には、前記球面部を囲むようにバッファが形成されていることが好ましい。また、支持ユニットは、中空の弾性チューブと、この弾性チューブに挿通され、前記電源ユニットと照明ユニットを電気的に接続する電線と、前記弾性チューブに挿通される金属線とを備えており、前記金属線は、人力で湾曲可能かつ、照明ユニットの重さで湾曲しない所定の太さで構成されていることが好ましい。さらに、前記支持ユニットの金属線の端部は、前記放熱体に挿入されていることが好ましい。このため、照明ユニットと、支持ユニットとの接続部分で折れることが防止される。しかも、前記殻部材は、生体適合性を有する金属部材で構成されていることが好ましい。その上、前記集光レンズは、耐ガンマ線グレードのポリカーボネートで構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、発光素子を支持する放熱体が殻部材の貫通孔に内接して設けられているため、放熱体から殻部材へ熱が伝達され易く、照明ユニット全体での放熱が可能となる。このため、長時間連続使用した際においても発光素子が高温になることが抑えられ、発光素子の劣化を防止可能等の利点がある。結果、照射面で10,000ルクス以上の照度を長期間確保することが可能になる等の利点がある。同時に、放熱体が殻部材に内接しているため、放熱体を殻部材と同軸上に容易に配置可能となる等の利点がある。また、発光素子が基板に支持されていることおよび、その基板と放熱体とに電線経路が貫通しているため、発光素子を集光レンズと同軸上に容易に設置可能となる等の利点がある。さらに、基板は、発光素子と放熱体とを伝熱的に接続するよう構成されているため、発光素子と放熱体の間に基板を取り付けたにもかかわらず上述の放熱性能を維持可能になる等の利点がある。また、放熱体に電線経路が貫通していることによる、省スペースな配線構造により、前述の放熱性能と照明ユニットの省スペース化の両立が可能等の利点がある。これら効果により、照射面で10,000ルクス以上の照度を長期間維持可能かつ、術部付近に設置されても術者の邪魔になりにくい省スペースの照明装置が容易に組立可能となる等の利点がある。
【0011】
また、集光レンズの脚部により集光レンズと発光素子との距離が常時一定であるため、所望の照明位置を的確に照らすことが可能となる等の利点がある。また、集光レンズの円板部を殻部材の段部に当接させて固定する構成により、殻部材に対する集光レンズの傾斜が防止されるため、極めて容易に組立が可能となる等の利点がある。さらに、集光レンズに形成されたバッファと殻部材の間にシーリング材を充填することにより、集光レンズと殻部材との間の気密性を向上させることができる等の利点がある。また、支持ユニットが可撓性と形状維持機能とを有するため、照明ユニットを所望の位置に配置し、照射可能となる等の利点がある。さらに、前記支持ユニットの金属線の一端が前記放熱体の他端に挿入されているため、照明ユニットと支持ユニットとの接続部で折れることが防止される等の利点がある。これらにより、照明ユニットの重さで照射範囲が変更されることを防止可能等の利点がある。また、殻部材は、生体適合性を有する金属部材で構成されており、殻部材と人体との接触時、金属アレルギー等を引き起こす危険性がないため、手術室等人体と接触する可能性を有する箇所でも使用可能となる等の利点がある。さらに、集光レンズがガンマ線を照射されても変色しないため、照明装置に対してガンマ線滅菌が可能となる等の利点がある。
【0012】
また、支持ユニットが可撓性と形状維持機能とを有するため、照明ユニットを所望の位置に配置し、照射可能となる等の利点がある。さらに、前記支持ユニットの金属線の一端が前記放熱体の他端に挿入されているため、照明ユニットと支持ユニットとの接続部で折れることが防止される等の利点がある。これらにより、照明ユニットの重さで照射範囲が変更されることを防止可能等の利点がある。しかも、放熱体に電線経路が貫通していることによる、省スペースな配線構造により、前述の放熱性能と照明ユニットの省スペース化の両立が可能となる。このため、術部付近に照明ユニットを設置可能等の利点がある。また、殻部材は、生体適合性を有する金属部材で構成されており、殻部材と人体との接触時、金属アレルギー等を引き起こす危険性がないため、手術室等人体と接触する可能性を有する箇所でも使用可能となる等の利点がある。さらに、集光レンズがガンマ線を照射されても変色しないため、照明装置に対してガンマ線滅菌が可能となる等の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】本発明に係る照明ユニットの構造を示す要部拡大一部切欠断面図
【
図3】本発明に係る照明ユニットの構造を示す要部拡大一部切欠き断面斜視図
【
図4】本発明に係る照明ユニットの構造を示す
図2の要部拡大A-A線断面図
【
図5】本発明に係る照明ユニットの構造を示す
図2の要部拡大B-B線断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1ないし
図4において1は照明装置であり、この照明装置1は、支持ユニット2と、この支持ユニット2の一端に支持され、所定の箇所を照明可能な照明ユニット3と、前記支持ユニット2の他端が接続された電源ユニット4とを備える。
【0015】
前記支持ユニット2は、
図2に示すように長手方向に延びる中空の弾性チューブ21を備えており、この弾性チューブ21には、電線22,22および銅線23が挿通している。この電線22,22および銅線23は、弾性チューブ21の一端から所定の寸法突出しており、この電線22,22および銅線23の突出部分は、前記照明ユニット3内に挿入されている。また、電線22,22は、導体を絶縁性の皮膜で被覆した一般的なものであり、この電線22,22の他端には、受電コネクタ24が接続されている。さらに、銅線23は、照明ユニット3および支持ユニット2の自重で湾曲せず、なおかつ人力で湾曲させることが可能な太さに設定されている。このため、支持ユニット2は、この銅線23により外力により変形する可撓性と、外力を除いても任意の形状を維持する形状維持機能を有する。
【0016】
前記照明ユニット3は、
図3に示すように軸方向に貫通孔32が形成された中空円筒状の殻部材31を備えており、この殻部材31の貫通孔32は、図示しない被照射対象側(以下、一端側という)に開口する小径部32aと、この小径部32aに連続し、前記支持ユニット2側(以下、他端側という)に開口する大径部32bとから構成されている。この大径部32bは、その穴径が前記小径部32aの穴径より大きく構成されており、これにより、貫通孔32には小径部32aと大径部32bとの境界部分に段部32cが形成されている。この殻部材31の一端には、殻部材31の開口部を封鎖する集光レンズ33が装着されている。この集光レンズ33は、貫通孔32の小径部32aより小なる直径の球面部33aと、この球面部33aと一体に形成され、前記小径部32aより大なる直径の円板部33bとを一体成形して成る平凸レンズであり、この集光レンズ33は、球面部33aを外方に向け、円板部33bが貫通孔32の段部32cに当接している。この円板部33bと段部32cとの間は、接着剤等で気密に接着されている。また、前記円板部33bの球面部33aが形成される面には、環状凸部33dが一体形成されている。この環状凸部33dは、前記球面部33aと円板部33bとの境界部分より大なる直径かつ殻部材31の貫通孔32の小径部32aより小なる直径に構成されており、この環状凸部33dと小径部32aとの隙間には、全周に渡って接着剤やシーリング剤(図示せず)が充填されている。一方、前記円板部33bの他端側の面には、殻部材31の軸線と平行に延びる2本の脚部33c,33cが一体に形成されている。この脚部33c,33cは、後述する発光素子36と接触しないよう所定の幅を開けて形成されており、その軸方向の寸法(脚部33c,33cの長さ)は、集光レンズ33の屈折率等に基づいて決定されている。すなわち、発光素子36が発する光の照度が有効照射面(少なくとも10,000ルクスの照度を確保できる面)において均一になり、かつ当該有効照射面が可能な限り広くなるよう設定してある。これにより、円板部33bと発光素子36との間には空気層が形成され、両者が接触しないように構成されている。
【0017】
前記貫通孔32の大径部32bには、この大径部32bの穴径と同径に形成された略円柱状の放熱体34が内接して挿入されている。この放熱体34の一端には、略円板形状の基板35が同心上に固定されており、放熱体34は、この基板35が前記集光レンズ33の脚部33c,33cに当接するよう殻部材31内に固定されている。基板35は、その直径が放熱体34の直径より若干小さく構成された略円板状部材であり、この基板35の集光レンズ33と対向する面(以下、表面という)には、光源である発光素子36が固定されている。このように、脚部33c,33cと基板35と当接することにより、発光素子36と集光レンズ33の円板部33bとの距離が決定される。また、放熱体34および基板35には、その軸方向に溝状の電線経路34b,34bが貫通形成されており、この電線経路34b,34bには、前記支持ユニット2の電線22,22が挿通されている。この電線経路34b,34bを通過した前記電線22,22の一端は、基板35に接続されている。さらに、前記放熱体34の他端部には、
図2に示すように前記支持ユニット2の銅線23とほぼ同径の挿入孔34aが形成されており、この挿入孔34aには、銅線23の一端部が挿入されている。しかも、放熱体34と殻部材31とは、接着剤により固定されており、殻部材31と支持ユニット2の弾性チューブ21とは、収縮チューブ37により固定されている。この収縮チューブ37により、支持ユニット2と照明ユニット3との連結部分の気密性が保たれるため、照明ユニット3および支持ユニット2内に血液等が侵入することが防止されている。なお、放熱体34は、その体積が前記発光素子36よりも遙かに大きく構成されており、これにより放熱体34は、発光素子36の発熱量に対して十分な熱容量を持つように構成されている。
【0018】
前記基板35には、導電パターンで成る接続部35a,35aがプリントされており、この接続部35a,35aには前記発光素子36がはんだ付け等で接続されている。これにより発光素子36は、集光レンズ33の同心上に位置決めされるよう構成されている。この接続部35a,35aには、前記電線経路34b,34bを通過した電線22,22がはんだ付け等により接続されており、これにより、発光素子36は、前記支持ユニット2と電気的に接続される。また、基板35の裏面には、これも導電パターンで成る放熱部35b,35bがプリントされており、この放熱部35b,35bは、基板35の表面から裏面へ貫通形成された導電性のスルーホール(図示せず)により、前記接続部35a,35aと電気的および伝熱的に連続している。この放熱部35b,35bは、
図5に示すように基板35の裏面ほぼ全体に広がる形態を成す。さらに、基板35は、放熱部35b,35bを含む裏面全面に塗布された接着剤により、放熱体34に接着されている。この接着剤は、絶縁性と熱伝導性を兼ね備えたものであり、この接着剤を介して基板35と放熱体34が絶縁されるとともに、後述する発光素子36の発光時の熱を基板35から放熱体34へ放熱することが可能となる。
【0019】
なお、前記殻部材31は、生態適合性を有する金属材料の一例であるステンレス鋼またはチタン合金等から構成されており、前記放熱体34は、軽量、安価かつ比較的熱伝導率が高い金属材料の一例であるアルミニウム合金等から構成されている。また、前記集光レンズ33は、ガンマ線を照射された際に変色や劣化が少ない、耐ガンマ線グレードのポリカーボネート等から構成されている。さらに、前記発光素子36は、表面実装型のLED(発光ダイオード)であり、太陽光に近い光を発する白色発光LEDである。具体的には、光の色を表す色温度が5000~6500Kの範囲内で、太陽光の再現率を表す平均演色評価数Raが95以上のものが好ましく、特に赤色の再現率を表す特殊演色評価数R9が90以上のものが好ましい。
【0020】
前記電源ユニット4は、直接外部の商用電源(以下、電源という)の電源コンセント(図示せず、以下、コンセントという)に接続可能な電源プラグ(図示せず)を備える電源接続部41を有しており、この電源接続部41は、電源から送られてきた交流電流を電圧が一定の直流電流に変換して電気回路42に送電している。この電気回路42は、電源接続部41から送られてきた直流電流の値を所定の値に変換する定流回路42aを備えており、この定流回路42aには、前記発光素子36の照度を調節可能な調光回路42bが接続されている。この調光回路42bは、可変抵抗等により発光素子36に供給される電流値を調節するよう構成された回路であり、可変抵抗の抵抗値を設定したり操作したりするための調光手段42cが接続されていている。このように構成された調光回路42bには、前記支持ユニット2の受電コネクタ24に接続可能な給電コネクタ43に接続されている。この給電コネクタ43は、受電コネクタ24と着脱可能に構成されており、これらコネクタ43,24の接続により、電源ユニット4と支持ユニット2とが電気的に接続される。なお、調光回路42bおよび調光手段42cは、発光素子36に供給される電流のパルス幅を調節するよう構成された回路および当該パルス幅を操作する手段等、他の構成であっても何ら問題ない。
【0021】
次に、上記のように構成された照明装置1の作用を説明する。
電源に接続された前記電源ユニット4を被施術患者の近傍に設置し、この電源ユニット4の給電コネクタ43に、支持ユニット2の受電コネクタ24を接続する。この時、電源から前記電源接続部41に供給された交流電流は、一定電圧の直流電流に変換されて電気回路42に伝えられる。この電気回路42に伝えられた直流電流は、定流回路42aにより発光素子36に適した所定の電流に変換され、支持ユニット2に供給される。この発光素子36に適するように変換された電気は、支持ユニット2の電線22,22から基板35を通じて発光素子36まで供給され、これにより発光素子36が発光する。また、この発光素子36の発光時において、基板35と放熱体34との間が絶縁性を有する接着剤により絶縁されているため、短絡・漏電が防止されている。さらに、電源ユニット4の調光回路42bおよびこの調光回路42bに接続される調光手段42cにより、発光素子36に供給される電流値を調節することが可能であるため、発光素子36の照度を任意に変化させることが可能となる。
【0022】
発光素子36が発した光は、照明ユニット3の集光レンズ33を介して所定範囲の照射面を形成する。この時、基板35は、殻部材31に固定されている放熱体34と集光レンズ33の脚部33c,33cとに挟設されているため、集光レンズ33に対して位置ずれを起こしにくい。同様にこの基板35に接続されている発光素子36も常時所定の位置に位置決め固定されているため、振動等により発光素子36が集光レンズ33に対して位置ずれを起こしたり、振動したりするのを防止可能である。この結果、本照明装置1においては、光の有効照射面、照射範囲および集光レンズ33による集光精度をいずれも均一に保ち、所望の照明位置を的確に照らすことが可能となっている。
【0023】
照明ユニット3で術部を照明する場合には、照射面の照度が10,000ルクスになる光が必要なことから、発光素子36には比較的大きな電力がかけられる。これにより、患部・術部を良好に照明することができる。この術部の照明時において、発光素子36は太陽光に近い光を放つ白色発光LEDであるため、術部周辺の色を鮮明に再現でき、臓器、血液等の色をより正確に再現することが可能であり、患部の識別等を補助することが可能である。
【0024】
発光素子36は、上述のように大きな電力が印加されることにより、その特性上比較的従来よりも大きな熱を帯びることとなるが、この熱は発光素子36に接続されている基板35を介して放熱体34に吸収されるため、発光素子36付近の過度の発熱が防止される。この時、基板35は、発光素子36が接続される接続部35a,35aと、放熱体34に接着剤を介して接続されている放熱部35b,35bとが伝熱的に連続する構造であるため、発光素子36と放熱体34とを伝熱的に接続する。結果、発光素子36からの熱を円滑に放熱体34に伝達可能である。また、放熱体34が発光素子36に対して十分に大きな容量を持つものとして構成されているため、長時間の使用においても、発光素子36は、放熱体34に放熱し続けることが可能となり、発光素子36が自身の発する熱により、劣化、破損することが防止される。
【0025】
上述のように放熱体34まで伝達された熱は、放熱体34の一端側から他端側に広がりながら放熱体34が内接している殻部材31に伝達され、外部に放散される。このため、照明ユニット3全体で放熱可能となる。この時、基板35の直径が放熱体34の直径より小さく構成され、基板35と殻部材31との間には隙間(空気層)が存在するため、基板35から殻部材31に熱が伝達されにくい。これらにより、発光素子36からの熱のほとんどが放熱体34に伝達されるため、照明ユニット3の外表面の何処か一点が局所的に高温化するということが防止される。また、放熱体34に伝達された熱の一部は、放熱体34に挿入された銅線23を介して支持ユニット2にも伝達されるため、照明ユニット3の外表面が高温化しにくい。さらに、集光レンズ33の脚部33c,33cが基板35に当接していることにより、基板35に伝達された熱の一部は、集光レンズ33にも伝達されることとなる。しかし、集光レンズ33の円板部33bと発光素子36との間に空気層が形成され、発光素子36から発せられる熱が直接円板部33bに伝達されにくい構造であるため、脚部33c,33cから伝達される熱量より球面部33aが外気に放熱する熱量の方が大きくなる。そのため、集光レンズ33が高温になることが防止されている。これらにより、照明ユニット3の表面温度は、常時摂氏42度未満に維持されることが確認されており、これにより、照明ユニット3および支持ユニット2が被施術患者に接触した場合にも、熱傷等を引き起こす危険がない。以上のような放熱効果を有するため、本発明の照明装置1においては、発光素子36に上記のように大きな電流を長時間印加することが可能となる。この結果、長時間の手術においても、高照度に照明し続けることが可能となる。
【0026】
照明ユニット3で術部を照明する場合には、支持ユニット2を湾曲・屈曲させることにより、所望の位置に照明ユニット3を配置することが可能である。よって、照明すべき術部が転々と変わる場合や、患者の体勢が変更された際などにおいても、その都度術者にとって都合の良い最適な位置、向きに照明ユニット3を自在に配置し、照明したい位置を正確に照らすことが可能となる。このような術部照射時、殻部材31が生体適合性を有するステンレス鋼等で構成されているため、被施術患者と照明ユニット3の接触時に金属アレルギー等を引き起こすことがない。このため、手術室内でも安全に使用可能となる。また、照明ユニット3の放熱体34がアルミニウム合金等で構成されているため、放熱体34全体が銅で構成される場合に比して照明ユニット3を軽量化でき、支持ユニット2を極力小型化することが可能となる。さらに、放熱体34に支持ユニット2の銅線23を挿入した構成であるため、照明ユニット3と支持ユニット2との接続部分で折れること等が防止される。よって、照明ユニット3の重さで、支持ユニット2が照明中に湾曲してしまい、照射範囲が変更されることを防止することが可能になるとともに、照明ユニット3を支える支持ユニット2を極力小型化することが可能となる。しかも、前記電線経路34b,34bに支持ユニット2の電線22,22が収容されるため、放熱体34が殻部材31に内接し、なおかつ発光素子36と電源ユニット4とが電気的に接続可能となる。この結果、上述の放熱性能を維持したまま省スペースに配線可能となるため、照明ユニット3を極力小さくできる。この結果、術部付近に設置しても術者の邪魔にならない等の利点がある。
【0027】
本照明装置1は、上述のように照明ユニット3が極力小さく構成されているが、放熱体34および基板35に形成された電線経路34b,34bを一致させることにより、基板35を放熱体34と同軸上に容易に固定可能となる。また、基板35の接続部35a,35aが発光素子36を基板35の中心に配置するよう構成されているため、基板35と同軸上に発光素子36を容易に設置可能となる。このため、放熱体34と基板35と発光素子36とが同軸上に固定される。このように基板35および発光素子36を同軸上に支持する放熱体34を殻部材31の貫通孔32に内接させて固定することにより、殻部材31に固定された集光レンズ33と発光素子36とが同軸上に容易かつ高精度に設置可能となる。この結果、上述のように優れた集光性能を有する照明ユニット3を容易に組立可能となる。さらに、集光レンズ33の脚部33c,33cに基板35が当接するよう構成されているため、集光レンズ33と発光素子36との距離を組立時に改めて調節することなく、照射面が広くかつ照射面内に明暗の差が生じないような絶妙な位置を容易に設定可能となり、組み立て効率が向上する。しかも、貫通孔32の段部32cに集光レンズ33の円板部33bを当接させ、固定するよう構成されているため、殻部材31の軸線に対して集光レンズ33が傾き難く、より容易に組立可能な構成となる。このように、集光レンズ33を殻部材31に固定する際、円板部33bと段部32cとの間に塗布される接着材の一部が球面部33a側に押し出されることとなるが、この押し出された接着剤は、殻部材31と環状凸部33dとの隙間に蓄積される。このように環状凸部33dが防護壁の役割を果たすため、球面部33aに接着剤が付着し、集光レンズ33の集光性能が低下することが防止される。その上、環状凸部33dと小径部32aとの隙間に接着剤等を充填することにより、集光レンズ33と殻部材31との間の気密性を確実なものともできる。
【0028】
この照明装置1は、使用後および保管時において、前述のように支持ユニット2と電源ユニット4とが、給電コネクタ43と受電コネクタ24とによって着脱可能に構成されているため、術部付近に設置される支持ユニット2および照明ユニット3のみを、手術後に破棄または滅菌処理することができる。これにより、術部付近で用いる照明ユニット3を常に清潔に保ちつつ、比較的構成が複雑で高価な電源ユニット4については再使用が可能となる。また、集光レンズ33がガンマ線により変色しない耐ガンマ線グレードのポリカーボネートで構成されているため、照明ユニット3および支持ユニット2に対してガンマ線滅菌を行うことが可能となる。さらに、照明時に術部付近に設置される照明ユニット3の殻部材31は、一端側では集光レンズ33が気密に接着され、他端側では収縮チューブ37によって気密性が確保されているため、血液等が支持ユニット2や照明ユニット3の内部に侵入せず、これらによる汚染、短絡等が防止される。
【0029】
なお、本発明に係る照明装置1は、前述したものに限定するものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、殻部材31は、外周面全体を前記収縮チューブ37に被覆されていたり、その一端面に絶縁性の樹脂等が塗布されていたり等、外部に露出している面が絶縁性部材で覆われていてもよい。これにより、万一、電線22,22の導体と殻部材31とが接触してもこれによる短絡、漏電等が防止される。また、支持ユニット2の電線22,22は、弾性チューブ21内に内包される太めの電線(図示せず)と、照明ユニット3の電線経路34b,34bを通過する細めの電線(図示せず)との2本からなるものでもよい。これにより、放熱体34の電線経路34b,34bを細くできるため、放熱体34の体積および放熱体34と殻部材31との接触面積等が増加し、より放熱性能が上昇する等の利点がある。さらに、支持ユニット2の銅線23は、金属線の一例であり、他の金属から構成された金属線であっても良い。しかも、基板35の代わりとして放熱体34の一端面に金属箔が貼付されており、この金属箔に発光素子36および電源ユニット4が接続される構造であってもよい。この場合、前記集光レンズ33の脚部33c,33cは、放熱体34の一端面と当接しており、円板部33bと集光レンズ33との間隔を最適なものに維持する。もちろんこの場合、銅箔は、前記基板35と同様の絶縁性の接着剤により放熱体34に接着されており、漏電等が防止されることが好ましい。また、前記環状凸部33dは、前述のように集光レンズ33と殻部材31との間に接着剤等を蓄積するバッファの一例であり、凹部や段差部等他の形状であっても何ら問題無い。
【符号の説明】
【0030】
1 照明装置
2 支持ユニット
21 弾性チューブ
22 電線
23 銅線
3 照明ユニット
31 殻部材
32 貫通孔
32a 小径部
32b 大径部
32c 段部
33 集光レンズ
33a 球面部
33b 円板部
33c 脚部
33d 環状凸部
34 放熱体
34b 電線経路
35 基板
36 発光素子
37 収縮チューブ
4 電源ユニット