(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】炭化水素系溶剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 7/50 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
C11D7/50
(21)【出願番号】P 2020088604
(22)【出願日】2020-05-21
【審査請求日】2023-01-16
(31)【優先権主張番号】10-2019-0065479
(32)【優先日】2019-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】515215276
【氏名又は名称】エスケー ジオ セントリック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】チェ ジョン オプ
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05478630(US,A)
【文献】特開平05-117691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 7/50
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
総量100重量%に対して、C7の飽和炭化水素成分を80重量%以上および芳香族成分を1重量%以下で含み、
総量100重量%に対して、C7の環状飽和炭化水素成分を30重量%以上45重量%以下でさらに含み、下記式1を満たす、炭化水素系溶剤組成物。
[式1]
【数1】
(前記式1中、W
IC7は、前記炭化水素系溶剤組成物の総量100重量%中の、炭素数が7のイソパラフィンの含量であり、W
NC7は、前記炭化水素系溶剤組成物の総量100重量%中の、炭素数が7のノルマルパラフィンの含量である。)
【請求項2】
総量100重量%に対して、C5の飽和炭化水素成分を1重量%以下でさらに含む、請求項1に記載の炭化水素系溶剤組成物。
【請求項3】
総量100重量%に対して、C8の飽和炭化水素成分を1重量%以下でさらに含む、請求項1に記載の炭化水素系溶剤組成物。
【請求項4】
総量100重量%に対して、C7のノルマルパラフィンを5重量%以下でさらに含む、請求項1に記載の炭化水素系溶剤組成物。
【請求項5】
総量100重量%に対して、C7の飽和炭化水素成分を80重量%以上および芳香族成分を1重量%以下で含み、下記式1を満たし、
[式1]
【数2】
(前記式1中、W
IC7
は、前記炭化水素系溶剤組成物の総量100重量%中の、炭素数が7のイソパラフィンの含量であり、W
NC7
は、前記炭化水素系溶剤組成物の総量100重量%中の、炭素数が7のノルマルパラフィンの含量である。)
下記式2をさらに満たす、炭化水素系溶剤組成物。
[式2]
【数3】
(前記式2中、W
ICは、前記炭化水素系溶剤組成物の総量100重量%中のイソパラフィンの含量であり、W
Nは、前記炭化水素系溶剤組成物の総量100重量%中の環状飽和炭化水素成分の含量である。)
【請求項6】
総量100重量%に対して、硫黄(sulfur)を1ppm未満でさらに含む、請求項1に記載の炭化水素系溶剤組成物。
【請求項7】
総量100重量%に対して、C7の飽和炭化水素成分を80重量%以上99.5重量%以下、芳香族成分を0.0001重量%以上1重量%以下、並びに前記C7の飽和炭化水素成分および芳香族成分以外の残りの成分を0.4重量%以上19重量%以下で含む、請求項1に記載の炭化水素系溶剤組成物。
【請求項8】
総量100重量%に対して、
C7の飽和炭化水素成分を80重量%以上99.5重量%以下、
芳香族成分を0.0001重量%以上1重量%以下、
C5の飽和炭化水素成分を0.001重量%以上1重量%以下、
C8の飽和炭化水素成分を0.001重量%以上1重量%以下、および
C6の飽和炭化水素成分を0.1重量%以上17重量%以下で含む、請求項1に記載の炭化水素系溶剤組成物。
【請求項9】
アニリン点が70℃以下である、請求項1に記載の炭化水素系溶剤組成物。
【請求項10】
ASTM D3539に準じて、n-ブチルアセテート(n-BuAc)の蒸発速度を100とした時に、蒸発速度が25~45である、請求項1に記載の炭化水素系溶剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素系溶剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用洗浄溶剤、天然樹脂および合成樹脂重合溶剤、接着剤およびテープ溶剤、医薬反応溶剤として、炭化水素系溶剤が用いられている。
【0003】
電子装置の生産および使用時に洗浄用に用いられる炭化水素系溶媒は、不純物の除去のために十分な溶解力を有するとともに、洗浄後の除去のために優れた乾燥性を有するべきであり、人体有害性が低いべきである。
【0004】
そのためには、溶解力の間接的な尺度であるアニリン点が、洗浄に十分な程度に低くなければならず、十分な乾燥性を有するべきである。そのために、炭化水素系溶剤に含まれる構成成分の調節および構成成分間の含量の調節が必要である。
【0005】
また、人体有害性を低減するために、臭気を誘発し、且つ人体有害性のある芳香族成分を除去する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一態様は、優れた溶解力および乾燥性を有するとともに、臭気がなく、人体有害性が少ない炭化水素系溶剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、総量100重量%に対して、C7の飽和炭化水素成分を80重量%以上および芳香族成分を1重量%以下で含み、下記式1を満たす、炭化水素系溶剤組成物を提供する。
【0008】
【0009】
式1中、WIC7は、炭化水素系溶剤組成物の総量100重量%中の、炭素数が7のイソパラフィンの含量であり、WNC7は、炭化水素系溶剤組成物の総量100重量%中の、炭素数が7のノルマルパラフィンの含量である。
【0010】
本発明の一態様に係る炭化水素系溶剤組成物は、総量100重量%に対して、C5の飽和炭化水素成分を1重量%以下で含んでもよい。
【0011】
本発明の一態様に係る炭化水素系溶剤組成物は、総量100重量%に対して、C8の飽和炭化水素成分を1重量%以下で含んでもよい。
【0012】
本発明の一態様に係る炭化水素系溶剤組成物は、総量100重量%に対して、C7の環状飽和炭化水素成分を30重量%以上45重量%以下で含んでもよい。
【0013】
本発明の一態様に係る炭化水素系溶剤組成物は、総量100重量%に対して、C7のノルマルパラフィンを5重量%以下で含んでもよい。
【0014】
本発明の一態様に係る炭化水素系溶剤組成物は、下記式2をさらに満たしてもよい。
【0015】
【0016】
式2中、WICは、炭化水素系溶剤組成物の総量100重量%中のイソパラフィンの含量であり、WNは、炭化水素系溶剤組成物の総量100重量%中の環状飽和炭化水素成分の含量である。
【0017】
本発明の一態様に係る炭化水素系溶剤組成物は、総量100重量%中に硫黄(sulfur)を1ppm未満で含んでもよい。
【0018】
本発明の一態様に係る炭化水素系溶剤組成物は、総量100重量%に対して、C7の飽和炭化水素成分を80重量%以上99.5重量%以下、芳香族成分を0.0001重量%以上1重量%以下、並びにC7の飽和炭化水素成分および芳香族成分以外の残りの成分を0.4重量%以上19重量%以下で含んでもよい。
【0019】
本発明の一態様に係る炭化水素系溶剤組成物は、総量100重量%に対して、C7の飽和炭化水素成分を80重量%以上99.5重量%以下、芳香族成分を0.0001重量%以上1重量%以下、C5の飽和炭化水素成分を0.001重量%以上1重量%以下、C8の飽和炭化水素成分を0.001重量%以上1重量%以下、およびC6の飽和炭化水素成分を0.1重量%以上17重量%以下で含んでもよい。
【0020】
本発明の一態様に係る炭化水素系溶剤組成物は、アニリン点が70℃以下であってもよい。
【0021】
本発明の一態様に係る炭化水素系溶剤組成物は、ASTM D3539に準じてn-ブチルアセテート(n-BuAc)の蒸発速度を100とした時に、蒸発速度が25~45であってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様は、優れた溶解力および乾燥性を有するとともに、臭気がなく、人体有害性が少ない炭化水素系溶剤組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
他に定義しない限り、本明細書において用いられる全ての用語(技術および科学的用語を含む)は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者に共通して理解され得る意味で用いられる。明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」としたときに、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。また、単数形は、文章で特に言及しない限り、複数形も含む。
【0024】
本明細書において、「%」は、特に他に定義しない限り、重量%を意味する。
【0025】
本発明の一態様は、優れた溶解力および乾燥性を有するとともに、臭気がなく、人体有害性が少ない炭化水素系溶剤組成物に関し、
総量100重量%に対して、C7の飽和炭化水素成分を80重量%以上および芳香族成分を1重量%以下で含み、下記式1を満たす、炭化水素系溶剤組成物を提供する。
【0026】
【0027】
式1中、WIC7は、炭化水素系溶剤組成物の総量100重量%中の、炭素数が7のイソパラフィンの含量であり、WNC7は、炭化水素系溶剤組成物の総量100重量%中の、炭素数が7のノルマルパラフィンの含量である。
【0028】
本発明の一態様に係る炭化水素系溶剤組成物は、C7の飽和炭化水素成分を80重量%以上で含み、且つC7のイソパラフィンおよびC7のノルマルパラフィン(すなわち、ノルマルヘプタン)の割合が式1を満たすことで、産業用洗浄溶剤などの産業用溶剤として通常用いられるC7の飽和炭化水素成分を多量で含み、有機物質に対する優れた溶解性を有し、優れた乾燥性を有する炭化水素系溶剤組成物を提供することができる。
【0029】
また、C7のイソパラフィンをC7のノルマルパラフィンに比べて過量で含むことで、溶剤の匂いがまろやかになり、蒸発速度に優れる。
【0030】
また、中枢神経系異常などを起こして人体に有害なノルマルヘキサンを少量で含み、且つ発がん性物質である芳香族成分を1重量%以下で含むことで、人体有害性が低く、臭気が少なくて、使用時における安全性を向上させることができる。
【0031】
そのため、産業用洗浄溶剤、天然樹脂および合成樹脂重合溶剤、接着剤およびテープ溶剤、医薬反応溶剤として使用可能である。
【0032】
式1の
【数4】
は、必ずこれに制限されるものではないが、より具体的に、10以上80以下、さらに具体的には、20以上60以下、40以上80以下、または50以上70以下であってもよい。
【0033】
本発明の一態様に係る炭化水素系溶剤組成物は、必ずこれに制限されるものではないが、式1を満たす範囲で、総量100重量%に対して、C7のイソパラフィンを10重量%以上60重量%以下、およびC7のノルマルパラフィンを0.1重量%以上5重量%以下で含んでもよい。
【0034】
より具体的には、総量100重量%に対して、C7のイソパラフィンを30重量%以上60重量%以下、およびC7のノルマルパラフィンを0.5重量%以上3重量%以下で含んでもよく、さらに具体的には、C7のイソパラフィンを50重量%以上55重量%以下、およびC7のノルマルパラフィンを0.8重量%以上1重量%以下で含んでもよい。
【0035】
式1を満たし、且つC7のノルマルパラフィンの含量が上記の範囲を満たすことで、溶剤の匂いがまろやかになり、蒸発速度に優れるとともに、人体有害性および臭気が低減されることができる。
【0036】
本発明の一態様に係る炭化水素系溶剤組成物は、製造過程で不可避に残存することになる硫黄(sulfur)成分を含み得るが、溶剤の全重量中における硫黄成分の含量は1ppm未満であってもよい。
【0037】
溶剤中に硫黄成分が1ppm未満で含まれることで、特有の臭気を発する硫黄成分の含有量が少なく、溶剤の臭気が少なくなることができる。
【0038】
本発明の一態様に係る炭化水素系溶剤組成物は、総量100重量%に対して、C7の飽和炭化水素成分を80重量%以上99.5重量%以下、芳香族成分を0.0001重量%以上1重量%以下、並びにC7の飽和炭化水素成分および芳香族成分以外の残りの成分を0.4重量%以上19重量%以下で含んでもよい。
【0039】
ここで、C7の炭化水素成分および芳香族成分以外の残りの成分は、C5の飽和炭化水素成分、C6の飽和炭化水素成分、およびC8の飽和炭化水素成分を含んでもよい。
【0040】
具体的に、本発明の一態様に係る炭化水素系溶剤組成物は、C5の飽和炭化水素成分を、総量中に1重量%以下で含んでもよい。より具体的には、0.5重量%以下、0.1重量%以下、または0.01重量%以下で含んでもよい。
【0041】
C5の飽和炭化水素成分は、他の炭化水素成分に比べて相対的に発火性が大きいが、本発明の一態様に係る炭化水素系溶剤組成物は、C5の飽和炭化水素成分を非常に少なく含むか、実質的に含まない。これにより、産業用洗浄溶剤、天然樹脂および合成樹脂重合溶剤、接着剤およびテープ溶剤、医薬反応溶剤などとして用いられる際に、火事危険性が非常に減少され、安全性を向上させることができる。
【0042】
本発明の一態様に係る炭化水素系溶剤組成物は、C8の飽和炭化水素成分を総量中に1重量%以下で含んでもよい。より具体的には、0.5重量%以下、または0.3重量%以下で含んでもよい。
【0043】
C8の飽和炭化水素成分は、相対的により小さい炭素数の飽和炭化水素成分に比べて蒸発速度が遅いため、C8の飽和炭化水素成分が溶剤に多く含まれる場合、溶剤の蒸発速度が減少され、乾燥性が低下し得る。
【0044】
本発明の一態様に係る炭化水素系溶剤組成物は、C8の飽和炭化水素成分を非常に少なく含むか、実質的に含まないことで、産業用洗浄溶剤、天然樹脂および合成樹脂重合溶剤、接着剤およびテープ溶剤、医薬反応溶剤などとして用いられる際に、十分な乾燥性を有することができる。
【0045】
本発明の一態様に係る炭化水素系溶剤組成物は、C7の飽和炭化水素成分中のC7の環状飽和炭化水素成分(C7のナフテン(naphthene)成分)を、総量中に30重量%以上45重量%以下で含んでもよい。より具体的には、35重量%以上45重量%以下で含んでもよい。
【0046】
C7の環状飽和炭化水素成分を上記のような含量で含むことで、環状飽和炭化水素の優れた溶解力を十分に活用することができるため、炭化水素系溶剤組成物の優れた溶解力が実現されることができる。一方、本発明の一態様に係る炭化水素系溶剤組成物は、下記式2をさらに満たしてもよい。
【0047】
【0048】
式2中、WICは、炭化水素系溶剤組成物の総量100重量%中のイソパラフィンの含量であり、WNは、炭化水素系溶剤組成物の総量100重量%中の環状飽和炭化水素成分の含量である。
【0049】
環状飽和炭化水素は、イソパラフィンに比べて溶解力に優れるが、臭気を誘発し、人体に有害であるため、十分な溶解力および乾燥性が実現され、且つ臭気および人体有害性を適正レベル以下に維持するための調節が必要である。
【0050】
本発明の一態様に係る炭化水素系溶剤組成物に含まれるイソパラフィンと環状飽和炭化水素成分の含量が前記式2を満たすことで、適正レベルの匂いおよび有害性に調節しながら、ナフテンの優れた溶解力およびイソパラフィンの乾燥性を活用することができる。
【0051】
本発明の一態様に係る炭化水素系溶剤組成物は、必ずこれに制限されるものではないが、前記式2を満たす範囲内で、総量中に、イソパラフィンを40重量%以上60重量%以下、および環状飽和炭化水素を40重量%以上60重量%以下で含んでもよい。より具体的には、イソパラフィンを45重量%以上55重量%以下、および環状飽和炭化水素を45重量%以上55重量%以下で含んでもよい。
【0052】
本発明の一態様に係る炭化水素系溶剤組成物は、総量100重量%に対して、C7の飽和炭化水素成分を80重量%以上99.5重量%以下、芳香族成分を0.0001重量%以上1重量%以下、C5の飽和炭化水素成分を0.001重量%以上1重量%以下、C8の飽和炭化水素成分を0.001重量%以上1重量%以下、およびC6の飽和炭化水素成分を0.1重量%以上17重量%以下で含んでもよい。
【0053】
より具体的には、総量100重量%に対して、C7の飽和炭化水素成分を85重量%以上99.5重量%以下、芳香族成分を0.0001重量%以上0.1重量%以下、C5の飽和炭化水素成分を0.001重量%以上0.5重量%以下、C8の飽和炭化水素成分を0.001重量%以上0.5重量%以下、およびC6の飽和炭化水素成分を0.1重量%以上14重量%以下で含んでもよい。
【0054】
さらに具体的には、総量100重量%に対して、C7の飽和炭化水素成分を94重量%以上99.5重量%以下、芳香族成分を0.0001重量%以上0.1重量%以下、C5の飽和炭化水素成分を0.001重量%以上0.5重量%以下、C8の飽和炭化水素成分を0.001重量%以上0.5重量%以下、およびC6の飽和炭化水素成分を0.1重量%以上5重量%以下で含んでもよい。
【0055】
本発明の一態様に係る炭化水素系溶剤組成物において、C7の飽和炭化水素成分は、特に制限されるものではないが、2,2,3-トリメチルブタン(2,2,3-trimethylbutane)、2,2-ジメチルペンタン(2,2-dimethylpentane)、2,3-ジメチルペンタン(2,3-dimethylpentane)、2,4-ジメチルペンタン(2,4-dimethylpentane)、3,3-ジメチルペンタン(3,3-dimethylpentane)、3-エチルペンタン(3-ethylpentane)、2-メチルヘキサン(2-methylhexane)、3-メチルヘキサン(3-methylhexane)、n-ヘプタン(n-heptane)、エチルシクロペンタン(ethylcyclopentane)、メチルシクロヘキサン(methylcyclohexane)、1,1-ジメチルシクロペンタン(1,1-dimethylcyclopentane)、1c,3-ジメチルシクロペンタン(1c,3-dimethylcyclopentane)、1t,3-ジメチルシクロペンタン(1t,3-dimethylcyclopentane)、および2t,2-ジメチルシクロペンタン(2t,2-dimethylcyclopentane)から選択される何れか1つまたは2つ以上の混合物を含んでもよい。
【0056】
C7の飽和炭化水素成分中のイソパラフィンは、特に制限されるものではないが、2,2,3-トリメチルブタン(2,2,3-trimethylbutane)、2,2-ジメチルペンタン(2,2-dimethylpentane)、2,3-ジメチルペンタン(2,3-dimethylpentane)、2,4-ジメチルペンタン(2,4-dimethylpentane)、3,3-ジメチルペンタン(3,3-dimethylpentane)、3-エチルペンタン(3-ethylpentane)、2-メチルヘキサン(2-methylhexane)、および3-メチルヘキサン(3-methylhexane)から選択される何れか1つまたは2つ以上の混合物を含んでもよい。
【0057】
C7の飽和炭化水素成分中の環状飽和炭化水素は、特に制限されるものではないが、エチルシクロペンタン(ethylcyclopentane)、メチルシクロヘキサン(methylcyclohexane)、1,1-ジメチルシクロペンタン(1,1-dimethylcyclopentane)、1c,3-ジメチルシクロペンタン(1c,3-dimethylcyclopentane)、1t,3-ジメチルシクロペンタン(1t,3-dimethylcyclopentane)、および2t,2-ジメチルシクロペンタン(2t,2-dimethylcyclopentane)から選択される何れか1つまたは2つ以上の混合物を含んでもよい。
【0058】
本発明の一態様に係る炭化水素系溶剤組成物において、C6の飽和炭化水素は、特に制限されるものではないが、2-メチルペンタン(2-methylpentane)、3-メチルペンタン(3-methylpentane)、2,2-ジメチルブタン(2,2-dimethylbutane)、2,3-ジメチルブタン(2,3-dimethylbutane)、シクロヘキサン(cyclohexane)、ノルマルヘキサン(n-hexane)、および1-メチルシクロペンタン(1-methylcyclopentane)から選択される何れか1つまたは2つ以上の混合物を含んでもよい。
【0059】
本発明の一態様に係る炭化水素系溶剤組成物において、C8の飽和炭化水素は、特に制限されるものではないが、2,2,4-トリメチルペンタン(2,2,4-trimethylpentane)、2,3,4-トリメチルペンタン(2,3,4-trimethylpentane)、ノルマルオクタン(n-octane)、1,1-ジメチルシクロヘキサン(1,1-dimethylcyclohexane)、1,3-ジメチルシクロヘキサン(1,3-dimethylcyclohexane)、およびエチルシクロヘキサン(ethylcyclohexane)から選択される何れか1つまたは2つ以上の混合物を含んでもよい。
【0060】
本発明の一態様に係る炭化水素系溶剤組成物において、芳香族成分は、特に制限されるものではないが、ベンゼン(benzene)、トルエン(toluene)、キシレン(xylene)、ナフタレン(naphtalene)、およびアントラセン(anthracene)から選択される何れか1つまたは2つ以上の混合物を含んでもよい。
【0061】
本発明の一態様に係る炭化水素系溶剤組成物は、ASTM D611に準じて測定した混合アニリン点(mixed aniline point)が70℃以下であってもよい。低い混合アニリン点は、有機物質に対する高い溶解力を意味する。本発明の一態様に係る炭化水素系溶剤組成物は、70℃以下、より具体的には、50℃以下の混合アニリン点を有していて、溶解力に優れる。
【0062】
本発明の一態様に係る炭化水素系溶剤組成物は、ASTM D3539に準じて、n-ブチルアセテート(n-BuAc)の蒸発速度を100とした時の蒸発速度が25以上45以下であってもよい。本発明の一態様に係る炭化水素系溶剤組成物は、高い蒸発力を有しているため、産業用洗浄溶剤などの産業用溶剤として採択されるに好適である。
【0063】
本発明の一態様に係る炭化水素系溶剤組成物は、初留点60℃以上および乾点105℃以下の蒸留範囲を有してもよい。
【0064】
本発明の一態様に係る炭化水素系溶剤組成物は、例えば、ベンゼン、トルエン、およびキシレンを製造するための芳香族処理工程(BTX process)の原料として用いられるナフサ(naphtha)から製造されることができる。
【0065】
具体的に、芳香族処理工程の前処理工程として通常知られている脱硫工程を経たナフサから、蒸留によりC7の成分を抽出し、水素化工程により芳香族成分を除去し、疑似移動床式吸着分離装置(Simulated Moving Bed、SMB)などの吸着工程によりノルマルパラフィンを除去することで製造されることができる。
【0066】
但し、本発明の一態様に係る炭化水素系溶剤組成物の製造方法はこれに限定されず、本発明の一態様に係る炭化水素系溶剤組成物の組成を満たすように該当成分を配合するなど、当業者が容易に製造できる方法であれば制限されずに可能である。
【0067】
以下、本発明の好ましい実施例および比較例を記載する。しかし、下記実施例は、本発明の好ましい一実施例にすぎず、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【0068】
[実施例および比較例]
脱硫工程を経た脱硫ナフサを原料とし、蒸留によりC6以下およびC8以上の成分を除去し、これを水添反応器に投入して芳香族成分を除去した後、疑似移動床式吸着分離装置(Simulated Moving Bed、SMB)を用いてノルマルパラフィン成分を除去して炭化水素系溶剤を製造した(実施例1)。
【0069】
実施例1の炭化水素系溶剤の組成は、下記表1のとおりである。
【0070】
また、実施例1の溶剤の臭気の程度を評価するために、異なる組成を有する溶剤(比較例1)、および沸点範囲93~156℃のC6~C10脂肪族留分として、硫黄(sulfur)の含量が2.5ppmであるナフサ(naphtha)留分(比較例2)を準備した。
【0071】
比較例1の溶剤は、該当分類の炭化水素成分を配合して製造し、詳細な組成は表2のとおりである。
【0072】
【0073】
【0074】
[実験例1]
実施例1の溶剤に対して下記のように物性を測定し、表3にまとめた。
【0075】
1.混合アニリン点
ASTM D611に準じて測定した。
【0076】
2.蒸留範囲(IBP~DP)
ASTM D86に準じて初留点(IBP、initial boiling point)から乾点(DP、drying point)の範囲を測定した。
【0077】
3.蒸発速度
ASTM D3539に準じて測定し、n-ブチルアセテート(n-BuAc)の蒸発速度を100とした時の蒸発速度を測定した。
【0078】
【0079】
[実験例2]
実施例1の臭気を評価するために、実施例1、比較例1、および比較例2の溶剤に対して、石油化学技術分野に携わっている10人の研究員を対象としてアンケート評価を行った。
【0080】
具体的に、各溶剤を10mLずつ準備し、対象者に2秒間匂いを嗅がせ、下記基準に従って点数を付与した。
【0081】
3点:拒否感がない
2点:拒否感が普通
1点:拒否感が強い
【0082】
各溶剤に対する評価点数の平均を表4にまとめた。
【0083】
【0084】
表3および表4に示されたように、本発明の炭化水素溶剤は、アニリン点が35℃であって優れた溶解力を有し、蒸発速度にも優れるとともに、臭気が少ないことを確認することができる。
【0085】
また、本発明の炭化水素溶剤は、芳香族成分とノルマルパラフィン成分が非常に少ないため、実質的に芳香族成分とノルマルパラフィン成分が除去されて臭気がなく、人体有害性が非常に小さい。
【0086】
また、C8の飽和炭化水素成分を少なく含有して優れた乾燥性を有する。
【0087】
また、C7の環状飽和炭化水素成分を全溶剤中に30重量%以上45重量%以下で含むことで、優れた溶解力を示すとともに、イソパラフィン成分と環状炭化水素成分が適切な割合に維持されるため、人体有害性が小さく、且つ優れた溶解力が維持されることができる。