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特許7510280検出器、インプリント装置および物品製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】検出器、インプリント装置および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20240626BHJP
   G03F 9/00 20060101ALI20240626BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20240626BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
G03F9/00 H
G03F9/00 Z
G01B11/00 H
B29C59/02 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020096338
(22)【出願日】2020-06-02
(65)【公開番号】P2021190628
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古巻 貴光
(72)【発明者】
【氏名】吽野 靖行
(72)【発明者】
【氏名】川島 亨
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-343291(JP,A)
【文献】特開2013-102139(JP,A)
【文献】特開2013-175684(JP,A)
【文献】特開2015-206642(JP,A)
【文献】特開2017-204539(JP,A)
【文献】米国特許第05594549(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0100459(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0221556(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0082425(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0329217(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 9/00
G01B 11/00
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面における第1物体と第2物体との相対位置を検出する検出器であって、
前記第1物体に設けられた第1マークと前記第2物体に設けられた第2マークとを照明する照明光学系と、前記照明光学系によって照明された前記第1マークおよび前記第2マークのそれぞれからの回折光の干渉光を検出する検出光学系と、を備え、
前記照明光学系の瞳面には、前記平面の法線に対して傾斜した方向から前記第1マークおよび前記第2マークを照明するように光強度分布が形成され、
前記検出光学系の瞳面は、前記干渉光を通過させる領域と、前記検出光学系の瞳面の中心を含む遮光領域と、を有する
ことを特徴とする検出器。
【請求項2】
前記検出光学系は、前記干渉光を通過させる領域として、前記検出光学系の瞳面の中心から離れた領域に、前記干渉光を通過させる複数の開口を有し、
前記検出光学系の前記瞳面の中心を含む前記遮光領域は、前記複数の開口を囲うように配置された領域を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の検出器。
【請求項3】
前記照明光学系の前記瞳面には、光軸を挟むように配置され第1の対を構成する2つの極と、前記光軸を挟むように配置され第2の対を構成する2つの極とを有するように前記光強度分布が形成され、
前記第1の対を構成する前記2つの極からは、第1偏光が射出され、前記第2の対を構成する前記2つの極からは、前記第1偏光と偏光方向が異なる第2偏光が射出される、
ことを特徴とする請求項に記載の検出器。
【請求項4】
前記検出光学系の前記瞳面は、前記第1偏光によって発生した干渉光を通過させる第1偏光素子が配置された領域と、前記第2偏光によって発生した干渉光を通過させる第2偏光素子が配置された領域とを含む、
ことを特徴とする請求項に記載の検出器。
【請求項5】
互いに交差する第1方向および第2方向によって規定される第1平面における第1物体と第2物体との相対位置を検出する検出器であって、
前記第1物体に設けられた第1マークと前記第2物体に設けられた第2マークとで構成される第1マーク対、および、前記第1物体に設けられた第3マークと前記第2物体に設けられた第4マークとで構成される第2マーク対を照明する照明光学系と、
前記照明光学系によって照明された前記第1マーク対からの第1干渉光、および、前記照明光学系によって照明された前記第2マーク対からの第2干渉光を検出する検出光学系と、を備え、
前記照明光学系の瞳面には、前記第1平面の法線と前記第2方向とによって規定される第2平面に平行で前記法線に対して傾斜した方向から前記第1マーク対を照明し、前記法線と前記第1方向とによって規定される第3平面に平行で前記法線に対して傾斜した方向から前記第2マーク対を照明するように光強度分布が形成され、
前記検出光学系の瞳面は、前記第1干渉光を通過させる領域と、前記第2干渉光を通過させる領域と、前記検出光学系の瞳面の中心を含む遮光領域と、を有する
ことを特徴とする検出器。
【請求項6】
前記検出光学系は、前記第1干渉光を通過させる領域および前記第2干渉光を通過させる領域として、前記検出光学系の瞳面の中心から離れた領域に複数の開口を有し、
前記検出光学系の前記瞳面の中心を含む前記遮光領域は、前記複数の開口を囲うように配置された領域を含む、
ことを特徴とする請求項に記載の検出器。
【請求項7】
前記照明光学系の前記瞳面には、光軸を挟むように配置され第1の対を構成する2つの極と、前記光軸を挟むように配置され第2の対を構成する2つの極とを有するように前記光強度分布が形成され、
前記第1の対を構成する前記2つの極からは、第1偏光が射出され、前記第2の対を構成する前記2つの極からは、前記第1偏光と偏光方向が異なる第2偏光が射出される、
ことを特徴とする請求項に記載の検出器。
【請求項8】
前記検出光学系の前記瞳面は、前記第1偏光によって発生した干渉光を通過させる第1偏光素子が配置された領域と、前記第2偏光によって発生した干渉光を通過させる第2偏光素子が配置された領域とを含む、
ことを特徴とする請求項に記載の検出器。
【請求項9】
基板のショット領域の上のインプリント材とモールドのパターン領域とを接触させ前記インプリント材を硬化させることによって前記インプリント材の硬化物からなるパターンを形成するインプリント装置であって、
前記ショット領域と前記パターン領域との相対位置を検出するように配置された請求項1乃至のいずれか1項に記載の検出器を備え、
前記検出器によって検出される前記相対位置に基づいて前記ショット領域と前記パターン領域とを位置合わせすることを特徴とするインプリント装置。
【請求項10】
請求項に記載のインプリント装置を用いて基板の上にパターンを形成する工程と、
前記工程において前記パターンが形成された基板の加工を行う工程と、
を含み、前記加工が行われた前記基板から物品を得ることを特徴とする物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出器、インプリント装置および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント装置は、基板のショット領域の上のインプリント材とモールドのパターン領域とを接触させインプリント材を硬化させることによってインプリント材の硬化物からなるパターンを基板のショット領域の上に形成する。ショット領域とパターン領域とを位置合わせ(アライメント)するためにショット領域に設けられたマークとパターン領域に設けられたマークとの相対位置が検出されうる。
【0003】
特許文献1には、位置合わせ用のマークを検出する検出器を有するインプリント装置が記載されている。位置合わせ用のマークとしての格子パターンがモールドと基板とにそれぞれ配置されている。モールド側のマークは計測方向に格子ピッチを持つ格子パターンを含む。基板側のマークは、計測方向と計測方向に直交する方向(非計測方向)とにそれぞれ格子ピッチを持つチェッカーボード状の格子パターンを含む。マークに照明を行う照明光学系と、マークからの回折光を検出する検出光学系は、いずれもモールドと基板に垂直な方向から非計測方向に傾いて配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第7292326号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
第1物体に設けられマークと第2物体に設けられたマークとの相対位置の検出において、検出に寄与しない不要光(回折光または散乱光)が発生しうる。検出装置で検出すべき検出信号に不要光が混入すると、相対位置の検出精度が低下しうる。
【0006】
本発明は、相対位置の検出精度を向上させるために有利な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの側面は、平面における第1物体と第2物体との相対位置を検出する検出器に係り、前記検出器は、前記第1物体に設けられた第1マークと前記第2物体に設けられた第2マークとを照明する照明光学系と、前記照明光学系によって照明された前記第1マークおよび前記第2マークのそれぞれからの回折光の干渉光を検出する検出光学系と、を備え、前記照明光学系の瞳面には、前記平面の法線に対して傾斜した方向から前記第1マークおよび前記第2マークを照明するように光強度分布が形成され、前記検出光学系の瞳面は、前記干渉光を通過させる領域と、前記検出光学系の瞳面の中心を含む遮光領域と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、相対位置の検出精度を向上させるために有利な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態を説明する図。
図2】実施形態の効果を説明する図。
図3】実施形態のインプリント装置の構成例を示す図。
図4】実施形態の検出器の構成例を示す図。
図5】施形態の検出器の他の構成例を示す図。
図6】検出器の検出光学系の瞳面の構成例を示す図。
図7】相対位置を検出するための原理を示す図。
図8】マーク対を構成するマークを例示する図。
図9】マーク対からの回折光を示す図。
図10】マーク対を構成するマークを例示する図。
図11】マーク対を構成するマークを例示する図。
図12】散乱光(不要光)の影響を説明する図。
図13】散乱光(不要光)の影響の低減効果を説明する図。
図14】物品製造方法を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
図3には、実施形態のインプリント装置の構成が示されている。インプリント装置1は、半導体デバイスなどの物品の製造に使用されうる。インプリント装置1は、被処理体である基板8のショット領域の上のインプリント材9とモールド7のパターン領域7aとを接触させ、インプリント材9を硬化させることによって、インプリント材9の硬化物からなるパターンを形成する。
【0012】
インプリント材としては、硬化用のエネルギーが与えられることにより硬化する硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。硬化用のエネルギーとしては、電磁波、熱等が用いられうる。電磁波は、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される光、例えば、赤外線、可視光線、紫外線などでありうる。硬化性組成物は、光の照射により、あるいは、加熱により硬化する組成物でありうる。これらのうち、光の照射により硬化する光硬化性組成物は、少なくとも重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、必要に応じて非重合性化合物または溶剤を更に含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。インプリント材は、液滴状、或いは複数の液滴が繋がってできた島状又は膜状となって基板上に配置されうる。また、インプリント材は、スピンコーターやスリットコーターによって基板上に膜状に供給されてもよい。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下でありうる。基板の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、金属、半導体(Si、GaN、SiC等)、樹脂等が用いられうる。必要に応じて、基板の表面に、基板とは別の材料からなる部材が設けられてもよい。基板は、例えば、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスである。
【0013】
本明細書および添付図面では、基板8の表面に平行な方向をXY平面とするXYZ座標系において方向を示す。XYZ座標系におけるX軸、Y軸、Z軸にそれぞれ平行な方向をX方向、Y方向、Z方向とし、X軸周りの回転、Y軸周りの回転、Z軸周りの回転をそれぞれθX、θY、θZとする。X方向、Y方向は、それぞれ第1方向、第2方向とも表現されうる。X方向、Y方向は、互いに直交あるいは交差する方向である。
【0014】
インプリント装置1は、例えば、硬化部2と、検出器3と、モールド駆動機構4と、基板駆動機構5と、ディスペンサ(供給部)6と、制御部Cとを備えうる。硬化部2は、基板8のショット領域の上のインプリント材9とモールド7のパターン領域7aとが接触し、ショット領域とパターン領域7aとの間の空間にインプリント材9が充填された後にインプリント材9に対して硬化用のエネルギーを照射する。これにより、インプリント材9が硬化し、インプリント材9の硬化物からなるパターンが形成される。
【0015】
硬化用のエネルギーは、例えば、紫外線であり、この場合、硬化部2は、紫外線は発生する光源と、該光源から射出される紫外線をモールド7のパターン領域7aを介してインプリント材9に照射するための複数の光学素子とを含みる。硬化用のエネルギーの照射領域は、パターン領域7aの面積と同程度、またはパターン領域7aの面積よりもわずかに大きく設定されうる。これは、硬化用のエネルギーの照射領域を必要最小限とすることで、照射によって発生しうる熱に起因してモールド7または基板8が膨張し、インプリント材9に転写されるパターンに位置ずれおよび歪みが発生することを抑制することができる。また、基板8などで反射した硬化用のエネルギーがディスペンサ6に入射すると、ディスペンサ6の吐出部に残留したインプリント材9を硬化させうる。このような観点においても、硬化用のエネルギーの照射領域を必要最小限にすることが望ましい。光源としては、例えば、高圧水銀ランプ、各種エキシマランプ、エキシマレーザーまたは発光ダイオードなどが採用されうる。光源の種類、個数、発生する光の波長は、インプリント材9の特性に応じて適宜選択されうる。
【0016】
モールド7は、基板8あるいはインプリント材9に転写すべきパターンを有するパターン領域7aを有しうる。該パターンは、転写すべき複数のフィーチャ(例えば、ラインパターン、コンタクトパターン等)の形状をそれぞれ有する複数の凹部で構成されうる。モールド7は、硬化用のエネルギー、例えば紫外線を透過する石英などで構成されうる。モールド駆動機構4は、真空吸引力または静電吸引力等によってモールド7を保持するモールドチャックと、該モールドチャックを駆動することによってモールド7を駆動するモールド駆動アクチュエータとを含みうる。モールド駆動機構4は、モールド7を複数の軸(例えば、Z軸、θX軸、θY軸の3軸、好ましくは、X軸、Y軸、Z軸、θX軸、θY軸、θZ軸の6軸)について駆動するように構成されうる。モールド駆動機構4は、更に、モールド7を変形させることによってモールド7のパターン領域7aの形状を補正する形状補正機構を含んでもよい。
【0017】
基板駆動機構5は、真空吸引力または静電吸引力等によって基板8を基板チャックと、該基板チャックを駆動することによって基板8を駆動する基板駆動アクチュエータとを含みうる。基板駆動機構5は、基板8を複数の軸(例えば、X軸、Y軸、θZ軸の3軸、好ましくは、X軸、Y軸、Z軸、θX軸、θY軸、θZ軸の6軸)について駆動するように構成されうる。
【0018】
モールド駆動機構4および基板駆動機構5は、モールド7(あるいはパターン領域7a)と基板8(あるいはショット領域)との相対位置を調整する調整機構を構成しうる。基板8のショット領域の上のインプリント材9とモールド7のパターン領域7aとを接触させる接触動作、硬化したインプリント材9とパターン領域7aとを分離する分離動作は、モールド駆動機構4および/または基板駆動機構5によってなされうる。モールド7と基板8とは、XYZ座標系においてZ方向に間隔を置いて配置され、相対位置の調整(位置合わせ)がなされる第1物体と第2物体との例である。本実施形態で説明される検出器3は、インプリント装置1のみならず、例えば、基板上のレジストに原版のパターンを転写する露光装置等のような他の装置に適用されてもよい。
【0019】
検出器3は、モールド7(あるいは、モールド7のパターン領域7a)に設けられたマーク10と基板8(あるいは、基板8のショット領域)に設けられたマーク11との相対位置を検出するように構成される。モールド7のパターン領域7aには、複数のマーク10が設けられ、同様に、基板8のショット領域にも複数のマーク11が設けられうる。1つのマーク10と1つのマーク11とをマーク対を構成しうる。検出器3によって、複数のマーク対について相対位置を検出することによって、ショット領域とパターン領域7aとの相対位置(位置合わせ誤差)を、X軸、Y軸、θZ軸に関して検出することができる。また、検出器3によって、複数のマーク対について相対位置を検出することによって、ショット領域とパターン領域7aとの形状差(位置合わせ誤差の他の形態)を検出することができる。
【0020】
検出器3の光軸は、基板8の表面に対して垂直になるように配置されうる。検出器3は、モールド7および基板8に配置されたマーク10、11の位置に合わせて、X方向およびY方向に移動可能に構成される。また、検出器3は、マーク10、11のZ方向位置(高さ)に応じてフォーカス動作を行うために、Z方向にも移動可能に構成されうる。あるいは、検出器3には、フォーカス光学系が組み込まれてもよい。制御部Cは、検出器3を使って検出された結果に基づいて、ショット領域とパターン領域7aとが位置合わせされるように基板駆動機構5およびモールド駆動機構4を制御しうる。
【0021】
ディスペンサ6は、基板8の上に未硬化状態のインプリント材9を配置あるいは供給しうる。ディスペンサ6は、インプリント装置1の外部に配置されてよく、この場合、インプリント装置1の外部のディスペンサ6によってインプリント材9が配置された基板8がインプリント装置1に提供される。制御部Cは、硬化部2、検出器3、モールド駆動機構4、基板駆動機構5およびディスペンサ6を制御しうる。他の観点において、制御部Cは、以下のインプリント処理を制御しうる。制御部Cは、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Arrayの略。)などのPLD(Programmable Logic Deviceの略。)、又は、ASIC(Application Specific Integrated Circuitの略。)、又は、プログラムが組み込まれた汎用又は専用のコンピュータ、又は、これらの全部または一部の組み合わせによって構成されうる。
【0022】
ここで、インプリント処理について説明する。制御部Cは、まず、不図示の基板搬送機構に基板8を基板駆動機構5の基板チャックに搬送させ、基板チャックに基板8を保持させる。続いて、制御部Cは、基板8のショット領域にディスペンサ6によってインプリント材9が配置されるように基板駆動機構5およびディスペンサ6を制御する。続いて、制御部Cは、基板8のショット領域がモールド7の直下に位置するように基板駆動機構5を制御する。続いて、制御部Cは、基板8のショット領域の上のインプリント材9とモールド7のパターン領域7aとが接触するように基板駆動機構5および/またはモールド駆動機構4を制御する。この状態で、制御部Cは、検出器3を使って基板8のショット領域とモールド7のパターン領域7aとの位置合わせ誤差を検出し、その位置合わせ誤差が低減されるように基板駆動機構5および/またはモールド駆動機構4を制御する。制御部Cは、ショット領域とパターン領域7aとの間の空間にインプリント材9が充填されるのを待って、インプリント材9に硬化用のエネルギーが照射されるように硬化部2を制御する。これにより、インプリント材9が硬化し、硬化したインプリント材9からなるパターンが形成される。続いて、制御部Cは、硬化したインプリント材とモールド7のパターン領域7aとが分離されるように基板駆動機構5および/またはモールド駆動機構4を制御する。これにより、1つのショット領域に対するインプリント処理が終了する。制御部Cは、基板8の複数のショット領域に対してインプリント処理がなされるように上記の処理を繰り返し、その後、不図示の基板搬送機構に基板8を基板駆動機構5の基板チャックから回収させる。
【0023】
以下、検出器3について説明する。図4には、検出器3の構成例が示されている。検出器3は、検出光学系21および照明光学系22を含みうる。照明光学系22は、プリズム24等を介して光源23からの光を検出光学系21と同じ光軸上へ導き、マーク10、11を斜めから照明しうる。換言すると、照明光学系22は、マーク10、11を光軸(XY平面の法線(Z軸))に対して傾斜した光線で照明しうる。光源23は、例えばハロゲンランプまたはLEDなどで構成されうる。光源23は、インプリント材9を硬化させる波長の光を含まない光、例えば、可視光線または赤外線を射出しうる。検出光学系21と照明光学系22は、それらを構成する光学部材の一部を共有するように構成されうる。プリズム24は、検出光学系21および照明光学系22の瞳面もしくはその近傍に配置されうる。マーク10、11は、それぞれ格子パターンで構成されうる。検出光学系21は、照明光学系22によって照明されたマーク10、11で回折された回折光同士の干渉により発生する干渉光(干渉縞、モアレ縞)の像を撮像素子25の撮像面に形成しうる。撮像素子25は、例えば、CCDまたはCMOSセンサでありうる。
【0024】
プリズム24は、貼り合わせ面を有し、その貼り合せ面に、照明光学系22の瞳面の周辺部分の光を反射するための反射膜24aを有しうる。反射膜24aは、検出光学系21の瞳の大きさ(あるいは検出NA:NAo)を規定する開口が設けられた開口絞りとして機能しうる。また、反射膜24aは、照明光学系22の瞳面に形成された光強度分布(有効光源分布)を形成する絞りとしても機能しうる。プリズム24は、貼り合せ面に半透膜を有するハーフプリズムで構成されてもよい。プリズム24は、表面に反射膜を有する板状の光学素子で置き換えられてもよい。プリズム24が配置される位置は、検出光学系21および照明光学系22の瞳面もしくはその近傍でなくてもよい。
【0025】
図5には、検出器3の他の構成例が示されている。図5の構成例では、照明光学系22の瞳面PIと検出光学系21の瞳面PDとが互いに離隔して配置されている。照明光学系22の瞳面PIには、照明絞り27が配置され、検出光学系21の瞳面PDには、検出絞り26が配置されている。照明絞り27は、瞳面PIの光強度分布を規定するものであり、例えば、図1に例示されるように、4つの極IL1、IL2、IL3、IL4を有する光強度分布を規定しうる。プリズム24は、例えば、貼り合せ面に半透膜を有するハーフプリズムでありうる。
【0026】
図1には、照明光学系22の瞳面PIに形成された極IL1~IL4を有する光強度分布(有効光源分布)と検出光学系21の瞳面PDとの関係が例示されている。図1では、照明光学系22の極IL1~IL4と検出光学系21の瞳面PDに配置された検出絞り26の開口APとの関係が開口数(NA)で示されている。照明光学系22の瞳面PIにおける光強度分布は、第1の極IL1、第2の極IL2、第3の極IL3、第4の極IL4を有する。4つの極IL1~IL4は、いずれもNApm×NApaの矩形形状である。第1の極IL1と第2の極IL2との中心は、座標(0,0)からそれぞれ+Y方向、-Y方向にNAil離れた位置に配置されている。第3の極IL3と第4の極IL4は、座標(0,0)からそれぞれ+X方向、-X方向にNAil離れた位置に配置されている。すなわち、照明光学系22は、マーク10,11に対して斜めから照明を行うように構成されている。第1の極IL1と第2の極IL2は、XY平面の法線(Z軸)とY方向とによって規定されるYZ平面に平行で該法線に対して傾斜した方向からマーク10、11を照明する光強度分布を瞳面PIに形成する。第3の極IL3と第4の極IL4は、XY平面の法線(Z軸)とX方向とによって規定されるXZ平面に平行で該法線に対して傾斜した方向からマーク10、11を照明する光強度分布を瞳面PIに形成する。
【0027】
マーク10、11に対する光の入射角度θは、式(1)で表わされる。
【0028】
θ=sin-1(NAil)・・・(1)
検出光学系21の瞳面PDに配置された検出絞り26の開口APは、座標(0,0)を中心とする直径2×NAoの円である。照明光学系22および検出光学系21は、NAo、NApa、NAilが式(2)を満足するように構成されうる。すなわち、検出器3は、マーク10、11からの正反射光(ゼロ次回折光)を検出しない暗視野構成を有しうる。
【0029】
NAo<NAil-NApa/2・・・(2)
モアレ縞の発生の原理とモアレ縞を用いたモールド7のパターン領域7aと基板8のショット領域との相対位置(位置合わせ誤差)の検出について説明する。図7(a)、(b)のように格子ピッチが互いに僅かに異なる格子パターン31と格子パターン32とを重ねると、格子パターン31、32からの回折光同士が干渉し、格子ピッチの差を反映した周期を有する図7(c)のような干渉縞(モアレ縞)が発生しうる。モアレ縞は、2つの格子パターン31、32の相対位置に応じて明暗の位置(縞の位相)が変化する。例えば、片方を少しだけX方向にずらすと、図7(c)のモアレ縞が図7(d)のように変化する。モアレ縞は、格子パターン31、32間の実際の相対位置ずれ量を拡大し、大きな周期の縞として発生するため、検出光学系21の解像力が低くても、高い精度で2つ物体間の相対位置を計測することができる。
【0030】
モアレ縞(干渉光)を検出するために格子パターン31、32を明視野で検出(垂直方向から照明し、垂直方向から回折光を検出)しようとすると、検出器3は、格子パターン31からのゼロ次回折光や格子パターン32からのゼロ次回折光も検出してしまう。格子パターン31、32のどちらか一方からのゼロ次回折光はモアレ縞のコントラストを下げる要因になる。そこで、本実施形態の検出器3は、前述のように、ゼロ次回折光を検出しない暗視野の構成を有しうる。斜めから照明する暗視野の構成でもモアレ縞を検出できるように、モールド7のマーク10および基板8のマーク11の一方が図8(a)のようなチェッカーボード状の格子パターンとされ、他方が図7(a)、(b)のような格子パターンにされうる。モールド7のマーク10および基板8のマーク11のどちらをチェッカーボード状の格子パターンにしても、基本的に同一であるが、以下では、モールド7のマーク10をチェッカーボード状にした場合を例に説明する。
【0031】
図9(a)、(b)は、それぞれモールド(第1物体)7と基板(第2物体)8のX方向(第1方向)に関する相対位置を検出するためのモールド7のマーク(第1マーク)10と基板8のマーク(第2マーク)11を示している。モールド7のマーク10は、X方向にPmm、Y方向にPmnの格子ピッチを有するチェッカーボード状の格子パターン10aを含む。基板8のマーク11は、X方向にのみ、Pmmと異なる格子ピッチPwを有する格子パターン11aを含む。2つの格子パターン10a、11aを重ねた状態で検出器3によってモアレ縞を検出する原理について、図9を用いて説明する。
【0032】
図9(a)、(b)は、格子パターン10aと格子パターン11aをそれぞれX方向、Y方向から見た図である。X方向に関する相対位置を検出するためのモアレ縞は、照明光学系22の瞳面PIにおいてY軸方向に並んだ第1の極IL1、第3の極IL2からの光によって発生する。格子パターン10a、11aによる回折角φは、格子ピッチをd、照明光学系22によって照明される光の波長をλ、回折次数をnとして、以下の式(3)で表わされる。
【0033】
sinφ=nλ/d・・・(3)
したがって、格子パターン10aによるX方向とY方向の回折角をそれぞれφmm、φmnとし、格子パターン11aによる回折角をφwとすると、式(4)~式(6)が成り立つ。
【0034】
sinφmm=nλ/Pmm・・・(4)
sinφmn=nλ/Pmn・・・(5)
sinφw=nλ/Pw・・・(6)
【0035】
まず、図9(a)を参照しながら、非計測方向であるY方向(第2方向)に関する回折光について説明する。格子パターン10aおよび格子パターン11aは、照明光学系22の瞳面PIにおいて非計測方向であるY方向に並んだ第1の極IL1、第3の極IL2からの光によって照明される。格子パターン10a、11aで正反射した光(ゼロ次回折光)D1、D1’は、検出器3が式(2)を満足するために、検出光学系21の瞳PDに配置された検出絞り26の開口APを通過しない。
【0036】
D2、D2’は、モールド7の格子パターン10aでのみ±1次で回折した光を示し、D3は、モールド7の格子パターン10aで+/-1次で回折し、基板8の格子パターン11aで-/+1次で回折した回折光を示している。D3は、検出器3において、モールド7(のパターン領域7a)と基板8(のショット領域)との相対位置の検出に用いられる回折光である。Y方向にPmnの格子ピッチを有するモールド7の格子パターン10aによって角度φmnだけ回折した光D3は、検出光学系21の瞳PDに配置された検出絞り26の開口APを通過し撮像素子25によって検出される。
【0037】
本実施形態では、ゼロ次回折光を除く回折光の中で回折強度が高い回折光、つまり格子パターン10aで+/-1次で回折し、格子パターン11aで-/+1次で回折した回折光D3を検出する。そのためには、検出器3は、PmnとNAo、NAil、NApaが式(7)の条件を満たすように構成される。言い換えると、検出器3は、式(7)を満たす範囲の波長λでY方向への回折光を検出することができる。
【0038】
|NAil-|sinφmn||=|NAil-λ/Pmn|<NAo+NApa/2・・・(7)
最も効率良く回折光D3を検出できるのは、回折光D3がY方向に垂直になる場合である。そこで、光源から射出される光の中心波長をλcとすると、式(8)を満たすように照明光学系22の照明条件とモールド側の格子パターン10aの格子ピッチPmnが調整されうる。
【0039】
NAil-λc/Pmn=0・・・(8)
【0040】
以上のように、Y方向(非計測方向)に関してはモールド7の格子パターン10aが斜めから照明され、格子パターン10aによって非計測方向に回折した回折光が撮像素子25によって検出される。
【0041】
次に、図9(b)を参照しながら、計測方向であるX方向(第1方向)に関する回折光について説明する。照明光学系22の瞳面PIのY軸上に並んだ第1の極IL1、第3の極をIL2からの光は、X軸に垂直な方向から格子パターン10a、11aに入射する。Y方向に関する回折光と同様に、+/-1次の回折光を考えると、モールド7の格子パターン10aで+/-1次で回折し、基板8の格子パターン11aで-/+1次に回折した回折光D3は、PmmとPwが近いために小さい入射角で検出光学系21に入射する。
【0042】
図9(c)に回折光D3の回折の様子を示す。実線の矢印は、モールド7の格子パターン10aで+/-1次で回折し、基板8の格子パターン11aで-/+1次で回折しモールド7を透過した回折光を表わしている。また、点線の矢印は、モールド7の格子パターン10aを透過し、基板側の格子パターン11aで-/+1次で回折し、モールド7の格子パターン10aで+/-1次で回折した回折光を表わしている。このときの回折角φΔは以下の式(9)で表わされる。
【0043】
sinφΔ=λ×|Pw-Pmm|/(PmmPw)・・・(9)
式(9)において|Pw-Pmm|/(PmmPw)=1/PΔとすると、sinφΔは式(10)で表わされる。
【0044】
sinφΔ=λ/PΔ・・・(10)
【0045】
式(10)は、回折光D3によって周期がPΔの干渉縞が現れることを意味する。この干渉縞がモアレ縞であり、その周期は、モールド7の格子パターン10aと基板8の格子パターン11aの格子ピッチの差に依存する。ただし、本実施形態においてはモールド7の格子パターン10aがチェッカーボード状であるため、発生するモアレ縞の周期はPΔ/2となる。このとき、モールド7のパターン領域7aと基板8のショット領域との相対位置は、モアレ縞の明暗の位置に拡大して現れるので、解像力が低い検出光学系21を用いても、高い精度で相対位置を検出することができる。
【0046】
モールド7の格子パターン10aのみで1次回折した光D2、D2’もしくは基板8の格子パターン11aのみで1次回折した光D4、D4’は、角度φmmあるいはφwで射出される(図9(b))。D2、D2’、D4、D4’は、モアレ縞を発生させずに不要光(ノイズ)となるので、検出光学系21によって検出されないことが望ましい。そのため、式(11)および式(12)を満足するように格子パターン10a、11aの格子ピッチPmm、Pwと検出器3の検出開口APの開口数NAoが調整されうる。
【0047】
NAo+NApm/2<|sinφmm|=λ/Pmm・・・(11)
NAo+NApm/2<|sinφw|=λ/Pw・・・(12)
【0048】
モールド7の格子パターン10aと基板8の格子パターン11aのいずれでもX方向に回折しなかった光(ゼロ次回折光;図9(b)のD1、D1’)は、X軸に対して検出光学系21で検出される角度で射出される。基板8の格子パターン11aで回折せずに基板8での反射の前後でモールド側の格子パターン10aでそれぞれX方向に+/-n次回折と-/+n次回折した(トータルでゼロ次の)回折光D5、D5’も、X軸に対して検出光学系21で検出される角度で射出される。これらの回折光D5、D5’は、モアレ縞を生成せずにモアレ縞のコントラストを低下する要因となる。しかし、本実施形態においては、モールド7の格子パターン10aがチェッカーボード状であるため、隣り合う格子からの回折光D5、D5’の位相がπずれ、互いに打ち消し合う。したがって、回折光D5、D5’の強度は抑制され、高いコントラストでモアレ縞を検出することができる。図9(d)は、図9(a)、(b)を3次元で表わした図である。なお、回折光D5、D5’に関しては強度が抑制されるため記載していない。
【0049】
以上のように、検出光学系21の瞳面PD、あるいは、検出絞り26は、マーク10、11のそれぞれからの所定回折光(1次回折光)の干渉光を透過させ、該干渉光以外の少なくとも一部を遮断するように構成される。
【0050】
ここまででは、モールド7と基板8とのX方向に関する相対位置の検出のためのモアレ縞の検出について説明したが、Y方向に関する相対位置の検出のためのモアレ縞の検出についても、マークと照明の方向をXとYで入れ替えるだけで基本的に同一である。すなわち、モールド7には、図10(a)のように、Y方向に関する相対位置の検出のためのマークとして、X方向にPmn、Y方向にPmmの格子ピッチを有するチェッカーボード状の格子パターン10bが設けられうる。また、基板8には、図10(b)のように、Y方向に関する相対位置の検出のためのマークとして、Y方向のみに、Pmmと異なる格子ピッチPwを有する格子パターン11bが設けられうる。また、Y方向に関する相対位置の検出のためのモアレ縞は、照明光学系22の瞳面PIにおいてX軸上に並んだ第2の極IL2、第4の極IL4からの光によって2つの格子パターン10b、11bを照明することによって発生する。
【0051】
ここまででは、格子パターン10aと格子パターン10bの格子ピッチが互いに同じで、格子パターン11aと格子パターン11bの格子ピッチが互いに同じである例を説明したが、本発明はこれに限定されることはない。すなわち、格子パターン10aと格子パターン10bの格子ピッチが互いに異なっていてもよく、また、格子パターン11aと格子パターン11bの格子ピッチが互いに異なっていてもよい。さらには、検出光学系21の光軸から第1の極IL1、第3の極IL2の中心までの距離と光軸から第2の極IL3、第4の極IL4の中心までの距離は互いに異なっていてもよい。
【0052】
本実施形態の検出器3は、1つのモアレ縞を検出するためにマーク10、11を照明光学系22の瞳PIの2つの領域(極)からの光で斜め方向から照明し、これによって形成されるモアレ縞を垂直方向から検出する。このような構成によれば、1方向のみからマーク10、11を照明してモアレ縞を検出する従来の検出器と比べて、2倍の光量を確保することができる。これにより、検出器3は、2つの物体の相対位置を高い精度で検出することができる。本実施形態の検出器3は、式(7)を満足する範囲の波長λで回折光を検出できることは既に述べたとおりであるが、この波長範囲はできる限り広いことが望ましい。
【0053】
基板8に設けられるマーク11は、基板8の表面に剥き出しになっていることは少なく、複数層(例えば数層から数十層)の積層構造の内部に位置する場合が多い。マーク11の上に透明な物質からなる層が形成されている場合、いわゆる薄膜干渉が起こり、照明光の波長によってはマーク11からの光の強度が非常に弱くなることがある。この場合、照明光の波長λを変えることで、薄膜干渉の条件から外れ、マーク11が見えるようになる。これに基づき、検出器3で観察する場合も照明光の波長λを広い範囲で可変とし、基板8を作成するプロセスによって、最もよく検出できる条件を設定できることが望ましい。決定対象の条件は、マークの格子ピッチ、開口数NA0、第1及び第2の極の中心位置、照明光の波長範囲、中心波長等である。照明光の波長λは光源23としてハロゲンランプのような広帯域に波長を持つ光源を用いてバンドパスフィルタなどで所望の波長帯域を切り出しても良いし、LEDのような単色光光源で中心波長の異なるものを複数備えて切り替えても良い。
【0054】
図11のようにマーク10a、11aからなるマーク対、マーク10bと、11bからなるマーク対を図1のような照明光学系22の瞳面PIの照明絞り27および検出光学系21の瞳面PDの検出絞り26を有する検出器3の視野に同時に入れることができる。これによって、マーク10a、11aからなるマーク対を使ったX方向に関する相対位置検出とマーク10b、11bからなるマーク対を使ったY方向に関する相対位置検出とを1つの検出器3を用いて同時に行うことができる。すなわち、本実施形態では、1つの検出器3(検出光学系21と照明光学系22)によってX、Yの2方向の相対位置情報を簡易な構成で同時に取得することができる。
【0055】
図2を参照しながら本実施形態の効果を説明する。図2(a)は、照明光学系22の瞳面PIの照明絞りの開口および検出光学系21の瞳面PDの検出絞りの開口がともに円形である比較例の検出器の模式図である。図2(b)は、照明光学系22の瞳面PIの照明絞り27の開口が矩形であり、検出光学系21の瞳面PDの検出絞り26の開口APが矩形である本実施形態の検出器3の模式図である。説明を簡易化するために、図2(b)には、照明絞り27の複数の極のうち極IL2に対応する開口のみが示されている。極IL2からの光により照明され、モールド7と基板8とで回折された回折光がD3(+1)とD3(-1)である。D3(+1)、D3(-1)は、極IL2と同じX方向=NApm、Y方向=Napaの大きさで検出絞り26の開口AP通り、撮像素子25によって検出される。
【0056】
図2(b)には、極IL2からの光が検出光学系21の瞳面PDのX軸上を通る波長を有する例が示されている。この時の波長λは、式(5)で表され、NAil=Sinφmn=λ/Pmnを満たす。マーク10とマーク11の相対位置の検出に必要な光は、D3(-1)とD3(+1)のみであり、これ以外の光は不要光であるので、該不要光を遮断することで、信号のコントラストを向上させることが可能である。図2(b)、および後に参照する図2(c)、(d)では、検出光学系21の瞳面PDに配置された検出絞り26は、開口APを有し、開口AP以外の部分は、不要光を遮断するように遮断部BPで構成されうる。
【0057】
以下、不要光についての説明を行う。図1に記載された暗視野照明方法では、図12(a)に示されるように、X方向に関する相対位置の検出では、それに寄与しない極IL3、IL4からの光がマークのエッジでX軸上に広く散乱分布をもつ散乱光(不要光)を発生させる。その散乱光が瞳面PDを通過するので、その散乱光による散乱信号がモアレ縞に混入する。また、X方向に関する相対位置の検出のための極IL1、IL2からの光も、マークのエッジで散乱光(不要光)を発生させる。その散乱光も瞳面PDを通過するので、その散乱光による散乱信号がモアレ縞に混入する。図12(b)には、モアレ縞を構成するモアレ信号のX方向の断面図が示されている。マークのエッジからの散乱光(不要光)による散乱信号がX方向のモアレ信号に入り悪影響が現れている。4周期あるモアレ信号のうち2周期は散乱光の影響を受けてしまい、これが検出精度を低下させうる。同様に、Y方向に関する相対位置の検出では、それに寄与しない極IL1、IL2からの光がマークのエッジで散乱光(不要光)を発生させる。また、Y方向に関する相対位置の検出のための極IL3、IL4からの光も、マークのエッジで散乱光(不要光)を発生させる。これらの散乱光による散乱信号がモアレ縞に混入する。
【0058】
以上のように、X方向の相対位置の検出では、極IL3、IL4からの光がマークのエッジで散乱光(不要光)を発生させ、その散乱光が瞳面PD上のY=±NApa/2内の範囲に入射する。また、Y方向の相対位置の検出では、極IL1、IL2からの光がマークのエッジで散乱光(不要光)を発生させ、その散乱光が瞳面PD上のX=±NApa/2内の範囲に入射する。
【0059】
また、相対位置の検出に使用する極からの光も、マークのエッジで散乱光(不要光)を発生させる。X方向の相対位置の検出では、極IL1、IL2からの光がマークのエッジで散乱光(不要光)を発生させ、その散乱光が瞳面PD上のX=±NApm/2内の範囲に入射する。また、Y方向の相対位置の検出では、極IL3、IL4からの光がマークのエッジで散乱光(不要光)を発生させ、その散乱光が瞳面PD上のY=±NApm/2内の範囲に入射する。
【0060】
図2(c)には、λ1~λ2の波長幅で全ての検出光(不要光以外の光)が開口APを通るように検出絞り26を構成した例が示されている。開口APは、X方向がNApm、Y方向がNApa+(λ1-λ2)/Pmnの矩形形状を有する。波長によってY方向の回折角度が変わるため、λ1~λ2の波長の光が開口APを通るように、開口APが(λ1-λ2)/Pmn分だけY方向に広げられている。
【0061】
図2(d)には、検出光学系21の瞳面PDに配置された検出絞り26の開口APの配置と照明光学系22の瞳PIに配置された照明絞り27の極IL1、IL2、IL3、IL4の配置とが示されている。図2(d)に示された構成は、図11に示されているように、X、Y方向の双方に関する相対位置検出に使用されうる。極IL2からの光は、IL2_D3(-1)、IL2_D3(+1)が付された開口APを通して撮像素子25によって検出される。極IL3からの光は、IL3_D3(-1)、IL3_D3(+1)が付された開口APを通して撮像素子25によって検出される。ここで、極IL2からの光の撮像素子25で検出するためには、IL2_D3(-1)、IL2_DS3(+1)が付された開口APのみがあれば十分である。しかし、X、Y方向の相対位置検出を同時に行うためには、IL_D3(-1)、ILD3(+1)が付された開口APも必要である。
【0062】
図2(b)、(c)、(d)に示された構成例では、遮断部BPを有することにより、Y=±NApa/2内の範囲、X=±NApa/2内の範囲における遮断部BPの面積が図1の構成例より大きくされている。これは、不要光を遮断する量を増やすことを意味し、相対位置の検出精度を向上するために有利である。
【0063】
以下、上記の実施形態のいくつかの変形例を説明する。第1変形例では、図6(a)に示される照明絞り27および図6(b)に示される検出絞り26が使用される。図6(a)に示される照明絞り27では、極IL3および極IL4から射出される光をY偏光(Y軸に平行な偏光)とする偏光素子、および、極IL1および極IL2から射出される光をX偏光(X軸に平行な偏光)とする偏光素子が設けられている。X偏光とY偏光は、偏光方向が互いに異なる偏光である。偏光素子は、例えば、偏光板、λ/4板または旋光子でありうる。図6(b)に示される検出絞り26では、L3_D3(-1)およびIL3_D3(+1)が入射する領域にY偏光のみ透過する偏光子が配置され、L2_D3(-1)およびIL2_D3(+1)が入射する領域にX偏光のみ透過する偏光子が配置されている。
【0064】
極IL3および極IL4からの光は、Y偏光であるので、それによって発生する回折光は、検出光学系21の瞳面PDのIL3_D3(-1)およびIL3_D3(+1)が付された領域を透過する。一方、極IL1および極IL2からの光は、X偏光であるので、それによって発生する回折光は、検出光学系21の瞳面PDのIL3_D3(-1)およびIL3_D3(+1)が付された領域を透過することができない。同様に、極IL1および極IL2からの光は、X偏光であるので、それによって発生する回折光は、検出光学系21の瞳面PDのIL2_D3(-1)およびIL2_D3(+1)が付された領域を透過する。一方、極IL3および極IL4からの光は、Y偏光であるので、それによって発生する回折光は、検出光学系21の瞳面PDのIL2_D3(-1)およびIL2_D3(+1)が付された領域を透過することができない。よって、第1変形例によれば、マークのエッジからの不要光を検出光学系21の瞳面PDで遮断することができる。以上のように、照明絞り27と検出絞り26に偏光素子を使用することにより、不要光を遮断しながらX、Y方向のモアレ縞を同時に検出することができる。
【0065】
図13には、第1変形例において得られる、モアレ縞を構成するモアレ信号のX方向の断面図が示されている。極IL3および極IL4からの光(Y偏光)を検出光学系21の瞳面PDで遮断することによって、極IL1および極IL2からの光(X偏光)のみを撮像素子25によって検出することができる。
【0066】
第1変形例では、極IL3および極IL4から射出される光がY偏光、極IL1および極IL2から射出される光がX偏光であるが、極IL3および極IL4から射出される光がX偏光、極IL1および極IL2から射出される光がY偏光であってもよい。この場合、検出絞り26では、L3_D3(-1)およびIL3_D3(+1)が入射する領域にX偏光のみ透過する偏光素子が配置され、L2_D3(-1)およびIL2_D3(+1)が入射する領域にY偏光のみ透過する偏光素子が配置される。
【0067】
第2変形例では、図6(a)に示される照明絞り27および図6(c)に示される検出絞り26が使用される。図6(a)に示される照明絞り27については、前述のとおりである。図6(c)に示される検出絞り26では、Y=±NAo、X=±NApm/2の範囲にはX偏光を遮断する偏光素子が配置され、X=±NAo、Y=±Napm/2の範囲にはY偏光を遮断する偏光素子が配置されている。X方向に長いマークエッジ、またはX方向に長いラインをIL1、IL2により照明することにより、不要光はY方向に回折する。X偏光のIL1、IL2で照明し発生する不要光は、検出光学系21の瞳面PDにおけるX=±NAo、Y=±NApm/2の範囲に入射しうるが、検出絞り26にX偏光を遮断する偏光素子を配置することで、この不要光を遮断することができる。同様に、Y方向に長いマークエッジ、またはY方向に長いラインをIL3、IL4により照明することにより、不要光はX方向に回折する。Y偏光のIL3、IL4で照明し発生する不要光は、Y=±NAo、X=±NApm/2の範囲に入射しうるが、検出絞り26にY偏光を遮断する偏光素子を入れることで、この不要光を遮断することができる。不要光を検出光学系21の瞳面PDで遮断することにより、検出光のみを撮像素子25で検出することができる。
【0068】
第3変形例では、図6(a)に示される照明絞り27および図6(d)に示される検出絞り26が使用される。図6(a)に示される照明絞り27については、前述のとおりである。図6(d)に示される検出絞り26では、Y=±NAo、X=±NApm/2の範囲にはX偏光を遮断する偏光素子が配置され、X=±NAo、Y=±Napm/2の範囲にはY偏光を遮断する偏光素子が配置される。さらに、瞳面PDには、遮断部BPおよび開口AP1~SP4が設けられていて、IL1、IL2からのX偏光は、開口AP1、AP2を通過する。また、開口AP1、AP2において、IL3、IL4からのY偏光は、Y偏光遮断部(X偏光のみを通過させる偏光素子)によって遮断される。
【0069】
X方向に長いマークエッジ、またはX方向に長いラインをIL1、IL2からのX偏光により照明することにより、不要光はY方向に回折する。X偏光のIL1、IL2で照明し発生する不要光は、検出光学系21の瞳面PDにおけるX=±NAo、Y=±NApm/2に入射しうる。しかし、この領域にX偏光を遮断する偏光素子を配置することで、この不要光を遮断することができる。また、IL3、IL4からのY偏光は、開口AP1、AP2のY偏光遮断部を通ることができない。
【0070】
同様に、IL3、IL4からのY偏光は、開口AP3、AP4を通過する。また、開口AP3およびAP4において、IL1、IL2からのX偏光は、X偏光遮断部(Y偏光のみを通過させる偏光素子)によって遮断される。Y方向に長いマークエッジ、またはY方向に長いラインをIL3、IL4からのY偏光により照明することにより、不要光はX方向に回折する。Y偏光のIL3、IL4で照明し発生する不要光は、X=±NApm/2、Y=±NAoに入射しうる。しかし。この領域にY偏光を遮断する偏光素子を配置することで、この不要光を遮断することができる。また、IL1、IL2からのX偏光は、開口AP3、AP4のX偏光遮断部を通ることができない。
【0071】
第3変形例では、極IL3および極IL4から射出される光がY偏光、極IL1および極IL2から射出される光がX偏光であるが、極IL3および極IL4から射出される光がX偏光、極IL1および極IL2から射出される光がY偏光であってもよい。この場合、X=0上はY偏光を遮断する偏光素子配置され、Y=0上はX偏光を遮断する偏光素子が配置される。
【0072】
第3変形例では、検出光学系21の瞳面PDは、検出光のみを通過させ、不要光を遮断する。第3変形例では、X方向およびY方向に関して相対位置を同時に検出することができるが、X方向およびY方向に関する相対位置の検出が個別に行われてもよい。
【0073】
インプリント装置を用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0074】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0075】
次に、インプリント装置によって基板にパターンを形成し、該パターンが形成された基板を処理し、該処理が行われた基板から物品を製造する物品製造方法について説明する。図14(a)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコンウエハ等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0076】
図14(b)に示すように、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。図14(c)に示すように、インプリント材3zが付与された基板1zと型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを介して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0077】
図14(d)に示すように、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0078】
図14(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。図14(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
【0079】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0080】
1:インプリント装置、3:検出器、7:モールド、7a:パターン領域、8:基板、10:マーク、11:マーク、21:検出光学系、22:照明光学系
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