(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】ブラインド用減速装置及びブラインド
(51)【国際特許分類】
E06B 9/322 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
E06B9/322
(21)【出願番号】P 2020096521
(22)【出願日】2020-06-02
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000134958
【氏名又は名称】株式会社ニチベイ
(74)【代理人】
【識別番号】100182349
【氏名又は名称】田村 誠治
(72)【発明者】
【氏名】大膳 正明
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-35595(JP,A)
【文献】特開2008-179990(JP,A)
【文献】特開2016-211175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/24 - 9/388
E06B 9/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮蔽材の昇降速度を減速させるブラインド用減速装置であって、
ケースと、
前記ケース内において前記遮蔽材の昇降により回転するローターと、
前記ローターの回転と連動して回転し、ケース内周面に摺接することで制動力が作動する複数のウエイトと、
前記ウエイトを前記ケース内周面の摺接位置から離間させる方向に付勢する弾性部と、
前記ローターに備えられる複数のウエイト支持軸と、
を備え、
複数の前記ウエイト支持軸と前記弾性部は前記ローターの中心部から交互に放射状に延び、前記ローターと一体化するように形成され、
隣り合う前記ウエイト支持軸の間に前記ウエイトが配置され、
前記ウエイトには前記弾性部が係合する係合部が設けられ、
前記弾性部の円周方向への弾性変形により、前記ウエイトは前記ケース内周面の摺接位置へ移動することを特徴とする、ブラインド用減速装置。
【請求項2】
前記ウエイト支持軸は、前記ウエイトを支持するウエイト支持部を備え、
前記ウエイト支持部は、前記ウエイトの外周面を支持することを特徴とする、請求項1に記載のブラインド用減速装置。
【請求項3】
遮蔽材の昇降速度を減速させるブラインド用減速装置であって、
ケースと、
前記ケース内において前記遮蔽材の昇降により回転するローターと、
前記ローターの回転と連動して回転し、ケース内周面に摺接することで制動力が作動する複数のウエイトと、
前記ウエイトを前記ケース内周面の摺接位置から離間させる方向に付勢する弾性部と、
前記ローターに備えられる複数のウエイト支持軸と、
を備え、
前記ウエイト支持軸の円周方向両側に前記弾性部が設けられ、
複数の前記ウエイト支持軸は前記ローターの中心部から放射状に延び、前記ローターと一体化するように形成され、
隣り合う前記ウエイト支持軸の間に前記ウエイトが配置され、
前記弾性部は、前記ウエイト支持軸の円周方向両側に隣接する2つの前記ウエイトに対して付勢力を付与することを特徴とする、ブラインド用減速装置。
【請求項4】
前記ウエイトは、前記ローターが所定回転速度以下になると、前記弾性部の付勢力により前記ケース内周面の摺接位置から離間することを特徴とする、請求項
1~3のいずれかに記載のブラインド用減速装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のブラインド用減速装置を備えたブラインドであって、
ヘッドボックスと、
前記ヘッドボックスから垂下される遮蔽材を昇降させるための昇降コードと、
前記ヘッドボックス内において前記昇降コードの下降方向の移動速度を減速させる
前記ブラインド用減速装置を備えたブレーキユニットと、
を備えたブラインドであって、
前記ブラインド用減速装置は、前記昇降コードの移動に伴って回転するローター部と、前記ローター部の回転と連動して回転し、ケース内周面に摺接することで制動力が作動する複数のウエイト部と、前記ウエイト部を前記ケース内周面の摺接位置から離間させる方向に付勢する弾性部と、
を備え、
前記弾性部は、前記遮蔽材が最下限位置から所定高さまで下降したとき、前記ウエイト部を前記ケース内周面の摺接位置から離間させることを特徴とする、ブラインド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラインド用減速装置及びブラインドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のブラインド用減速装置として、実公平1-45353号公報(特許文献1)に示されるものがある。同文献に開示されるブラインド用減速装置は、ロールパイプとは別体のブレーキシュードラムに遠心力で摩擦係合する一対のブレーキシューを有する遠心ブレーキと、増速歯車機構としての遊星歯車装置と、を備えている。かかる構成によれば、遠心ブレーキをロールパイプとは別体とし、遊星歯車機構と共にロールパイプに軸方向に挿脱可能に収容可能である。このため、装置の組付け、点検、交換が簡単にできるという効果を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されるような従来のブラインド用減速装置では、一対のブレーキシューの間にはブレーキシューが所定速度で回転すると制動(ブレーキ)するように調節バネが架設されている。よって、遠心力により開いたブレーキシューは調節バネにより戻る。このように、ブレーキシューの間に調節バネを設けるため部品点数が増大する。また、調節バネは軸心(回転軸)を通って対向するブレーキシューに連結しているため、多数のブレーキシューを設けたい場合には構造が複雑化するという課題があった。
【0005】
そこで本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、部品点数が削減され、構造が簡素化されたブラインド用減速装置及びブラインドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によれば、遮蔽材の昇降速度を減速させるブラインド用減速装置であって、ケースと、前記ケース内において前記遮蔽材の昇降により回転するローターと、前記ローターの回転と連動して回転し、ケース内周面に摺接することで制動力(ブレーキ)が作動する複数のウエイトと、を備え、前記ローター及び前記ウエイトのいずれか一方には弾性部が設けられ、いずれか他方には前記弾性部が係合する係合部が設けられ、前記弾性部は、前記ウエイトを前記ケース内周面の摺接位置から離間させる方向に付勢することを特徴とする、ブラインド用減速装置が提供される。
【0007】
かかる構成によれば、ローター及びウエイトのいずれか一方に設けられた弾性部が、いずれか他方に設けられた係合部に係合することでウエイトをケース内周面から離間するようにしたため、部品点数が削減され、構造を簡素化することができる。また、このような構成により多数のウエイトを配置することができる。
【0008】
本発明は様々な応用が可能である。例えば、前記ウエイトは、前記ローターが所定回転速度以下(低速回転時)になると、前記弾性部の付勢力により前記ケース内周面から離間するようにしてもよい。かかる構成によれば、ローターが所定回転速度以下(低速回転時)になると、弾性部の付勢力により遠心力に抗してウエイトをケース内周面から離間させて制動力(ブレーキ)が作動しないようにできる。制動力は、ボトムレール(遮蔽材)が最下降位置付近まで下降すると作動しないため、ボトムレールを最下降位置まで下降させることができる。
【0009】
また、前記ローターは複数のウエイト支持軸を備えており、隣り合う前記ウエイト支持軸の間に前記ウエイトが配置され、前記弾性部は、隣り合う前記ウエイト支持軸の間に設けられるようにしてもよい。かかる構成によれば、ウエイトが配置されるウエイト支持軸間に弾性部を設けることで、ローターを小型化することができる。
【0010】
また、前記弾性部は、前記ローターと一体化するように形成してもよい。かかる構成によれば、ローターに弾性部を一体化させることで、部品点数を削減できる。
【0011】
また、前記ローターは、前記ウエイトを支持するウエイト支持部を備え、前記ウエイト支持部は、前記ウエイトの外周面を支持するようにしてもよい。かかる構成によれば、ウエイト支持部がウエイトの外周面を支持するため、ウエイトがウエイト支持部に軸支される位置が、ウエイトがケース内周面に接触して制動力を発生する位置に近くなる。よって、ウエイトの振動(回転速度の微変動)による騒音の発生を抑制することができる。
【0012】
また、本発明の第2の観点によれば、ヘッドボックスと、前記ヘッドボックスから垂下される遮蔽材を昇降させるための昇降コードと、前記ヘッドボックス内において前記昇降コードの下降方向の移動速度を減速させるブレーキユニットと、を備えたブラインドであって、前記ブレーキユニットは、前記昇降コードの移動に伴って回転するローターと、前記ローターの回転と連動して回転し、ケース内周面に摺接することで制動力が作動する複数のウエイトと、前記ウエイトを前記ケース内周面の摺接位置から離間させる方向に付勢する弾性部と、を備え、前記弾性部は、前記遮蔽材が最下限位置から所定高さまで下降したとき、前記ウエイトを前記ケース内周面の摺接位置から離間させることを特徴とする、ブラインドが提供される。
【0013】
かかる構成によれば、遮蔽材が下降して最下限位置から所定高さまで到達すると、弾性部がウエイトをケース内周面から離間するようにしたため、昇降コードに作用するブレーキトルクがゼロの状態になり、遮蔽材は最下限位置まで下降することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、部品点数が削減され、構造が簡素化されたブラインド用減速装置及びブラインドを提供することができる。本発明のその他の効果については、後述する発明を実施するための形態においても説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1の実施形態のブラインド100の全体構成を示す正面図である。
【
図3】ブレーキユニット140に昇降コード130が転回する状態を上から見た図である。
【
図4】ブレーキ装置180の断面図であり、(a)は制動力が作動する前の状態を示す図であり、(b)は制動力が作動した状態を示す図である。
【
図5】第2の実施形態のブレーキ装置280を示す断面図であり、(a)は制動力が作動する前の状態を示す図であり、(b)は制動力が作動した状態を示す図である。
【
図6】第3の実施形態のブレーキ装置380を示す断面図であり、(a)は制動力が作動する前の状態を示す図であり、(b)は制動力が作動した状態を示す図である。
【
図7】第4の実施形態のブレーキ装置480を示す断面図であり、(a)は制動力が作動する前の状態を示す図であり、(b)は制動力が作動した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係るブラインド100の構成について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態のブラインド100の全体構成を示す正面図である。
【0018】
ブラインド100は、
図1に示したように、ヘッドボックス110と、ヘッドボックス110から垂下されるスラット(遮蔽材)120を昇降させるための昇降コード130と、ヘッドボックス110内において昇降コード130の下降方向の移動速度を減速させるブレーキユニット140と、を備えて構成される。以後の説明において、前後とはブラインド100の前後方向を、左右とはブラインド100の長手方向を、入口とは昇降コード130をスラット120方向からブレーキユニット140に挿入する側を、出口とは昇降コード130をブレーキユニット140から操作部方向(回転操作棒115の方向)へ導出する側を言う。以下、ブラインド100の各部の構成を詳細に説明する。
【0019】
(ヘッドボックス110)
ヘッドボックス110は、図示していない窓枠や天井等にブラケット111を介して固定される。ヘッドボックス110には、
図1に示したように、一般的なブラインドと同様に、複数のスラット120を整列状態に吊下げるラダーコード160の上端が巻取り及び巻解き可能に連結される回転ドラム112と、後述する昇降コード130の移動を拘束可能なストッパ装置113が設けられている。
【0020】
回転ドラム112には、回転軸114が一体に回転するように挿通している。回転軸114は、ヘッドボックス110の一端に設けられる回転操作棒115によって回転駆動される。よって、回転操作棒115によって回転軸114を介して回転ドラム112の回転が操作されることにより、回転ドラム112がラダーコード160の上端を巻取り及び巻解いて、スラット120が傾動する。回転操作棒115内には、昇降コード130が移動可能に挿通している。
【0021】
(スラット120)
複数のスラット120は、開口部を遮蔽したり開放したりする遮蔽材である。複数のスラット120は、
図1に示したように、ラダーコード160によって整列状態に支持されており、ラダーコード160が傾動することによって回転する。
【0022】
(昇降コード130)
昇降コード130は、スラット120を昇降するものである。昇降コード130は、
図1に示したように、ヘッドボックス110の長手方向の複数か所から垂下するように配置され、上端がヘッドボックス110内に導入される。ヘッドボックス110内では、昇降コード130は、ストッパ装置113を介した後に、ヘッドボックス110の適宜位置に設けられたブレーキユニット140を通過してヘッドボックス110から導出される。
【0023】
ヘッドボックス110から導出された各昇降コード130は、前述のように回転操作棒115内を挿通し、回転操作棒115の下端から導出されてつまみ132に連結される。昇降コード130は直接操作するか、つまみ132によって操作される。なお、本実施形態では、昇降コード130は、ストッパ装置113を介した後に、ブレーキユニット140を通過する構成としたが、かかる構成に限定されない。昇降コード130は、ストッパ装置113を介す前に、ブレーキユニット140を通過する構成としてもよい。
【0024】
昇降コード130の下端は、スラット120に設けられた挿通孔(図示せず)を順次挿通するか、スラット120の前後の縁部を通って、スラット120の列の下方に配置されたボトムレール170に連結される。
【0025】
(ブレーキユニット140)
ブレーキユニット140は、スラット120の下降速度を減速させるものである。ブレーキユニット140は、
図1に示したように、ヘッドボックス110内において回転操作棒115の近傍に設けられ、ブレーキユニット140を通過した昇降コード130が回転操作棒115に導入されるようになっている。
【0026】
ブレーキユニット140の構成について、
図2及び
図3を参照しながら説明する。
図2は、ブレーキユニット140を示す図である。
図3は、ブレーキユニット140に昇降コード130が転回する状態を上から見た図である。
【0027】
ブレーキユニット140は、
図2に示したように、ユニット化されている。ブレーキユニット140は、昇降コード130が転回される上ローラ141a及び下ローラ141bと、上ローラ141a及び下ローラ141b上で一つの昇降コード130が重複して転回することを防止する分離案内部142と、昇降コード130を上ローラ141a方向に押圧する板バネ144と、上ローラ141a及び下ローラ141bの回転に制動力を付与するブレーキ装置(ブラインド用減速装置)180と、を備えて構成される。
【0028】
(上ローラ141a、下ローラ141b)
上ローラ141a及び下ローラ141bは、昇降コード130が転回されるものである。上ローラ141aと下ローラ141bは、
図2に示したように、左右に間隔をあけて並べられ、上下に段差を設けて配置されている。上ローラ141a及び下ローラ141bは、円筒状の形状であり、昇降コード130が転回されている。上ローラ141aと下ローラ141bの間には分離案内部142が配置されている。上ローラ141aの上部には、板バネ144が配置されている。
【0029】
下ローラ141bの軸心には、
図3に示したように、連動軸145が貫通しており、一体に回転する。連動軸145は、第1連動部146を介してブレーキ軸182に連結されている。よって、ブレーキ装置180の制動力が第1連動部146、連動軸145を介して下ローラ141bに伝達される。第1連動部146は、例えばギアによって構成される。また、上ローラ141aと下ローラ141bは、第2連動部147を介して一体に回転するように回転が伝達される。第2連動部147は、例えばギアによって構成される。
【0030】
(分離案内部142)
分離案内部142は、上ローラ141aと下ローラ141b上を転回する昇降コード130を複数箇所において複数回分離するものである。分離案内部142は、
図2に示したように、上ローラ141aと下ローラ141bをブラインド100の長手方向に分離するように上ローラ141aと下ローラ141bの間に設けられる。分離案内部142は、間隔を空けて並設された棒状の第1分離部142aと第2分離部142bが略U字状に構成されている。
【0031】
分離案内部142は、
図3に示したように、第1分離部142aと第2分離部142bが上ローラ141aと下ローラ141bの軸方向に配置されるように設けられる。昇降コード130は、第1昇降コード130-1が第1分離部142aの外側に配置されており、第2昇降コード130-2が第1分離部142aと第2分離部142bとの間に配置されており、第3昇降コード130-3が第2分離部142bの外側に配置されている。
【0032】
(板バネ144)
上ローラ141aの上部には、
図2に示したように、板バネ144が配置されている。板バネ144の一端はケース148の天井部に連結されている。板バネ144は、上ローラ141aの軸方向ほぼ全長にわたる。よって、板バネ144は、上ローラ141aを転回する第1昇降コード130-1、第2昇降コード130-2及び第3昇降コード130-3の3本の昇降コード130上に配置され、3本の昇降コード130を上ローラ141a方向に押圧する。
【0033】
(ブレーキ装置180)
ブレーキ装置180は、上ローラ141aと下ローラ141bの回転に制動力を付与するものである。ブレーキ装置180は、
図3に示したように、連動軸145、第1連動部146を介して制動力を伝達可能に下ローラ141bに連結されている。ブレーキ装置180の構成について、
図4を参照しながら説明する。
図4は、ブレーキ装置180の断面図であり、(a)はブレーキがかかる前の状態を示す図であり、(b)はブレーキがかかった状態を示す図である。
【0034】
ブレーキ装置180は、
図4に示したように、ブレーキ軸182と、ブレーキ軸182と同心に配置されるケース184と、ケース184内においてスラット120の下降により回転するローター186と、ローター186の回転と連動して回転し、ケース内周面184aに摺接することで制動力(ブレーキ)が作動する複数のウエイト188と、を備える。ローター186とウエイト188は一体化したものとすることもできる。
【0035】
ケース184は、
図4に示したように、円筒形であり、内部にブレーキ軸182、ローター186及びウエイト188が配置されている。ケース184の中心にブレーキ軸182が配置されており、ブレーキ軸182を中心に同心円状にローター186とウエイト188が配置されている。ケース184は、ケース内周面184aがウエイト188と摺接することによりローター186を介してブレーキ軸182に制動力を発生させる。
【0036】
ローター186は、
図4に示したように、ウエイト188を支持するウエイト支持部186aとウエイト188をケース内周面184aから離間する方向に付勢する弾性部186fと、軸心にブレーキ軸182が一体に回転するように挿通する中心部186eと、を備えている。ウエイト支持部186aは、中心部186eから径方向に放射状に延びるウエイト支持軸186cの先端に形成されている。ウエイト支持部186aは、ケース内周面184aの近傍に配置される。
【0037】
弾性部186fは、中心部186eから径方向に放射状に延びており、ウエイト支持軸186cに並設されている。弾性部186fは、ローター186が所定回転速度以下(低速回転時)になると、ウエイト188をケース内周面184aから離間する方向に付勢するように設けられている。
【0038】
ウエイト188は、
図4に示したように、外周面の形状がケース内周面184aに沿った円弧状外周面188aを形成している。円弧状外周面188aの一端の角に切欠部188bが形成されている。切欠部188bは、正円の一部を切除した切除面csから連続する円周の1/4に当たる円弧状に形成されている。切欠部188bの円の中心がウエイト188の回転中心Cとなる。切欠部188bには、ウエイト支持部186aの一部の面186dが嵌め合わされる。
【0039】
切欠部188bの形状に合わせてウエイト支持部186aも小さく構成されているため、ウエイト188がケース内周面184aに接近するように配置される。よって、ウエイト188の回転中心Cとケース内周面184aとの間隔L1を小さくすることができ、ビビリ振動の発生が抑えられる。
【0040】
また、ウエイト188には、弾性部186fの先端が挿入されて係合する係合部188dが形成されている。係合部188dは、ウエイト188の内周から外周方向へ延びる窪み状に形成されている。
【0041】
ウエイト188は、隣り合う2つのウエイト支持軸186cの間に配置されている。ウエイト188の円弧状外周面188a以外の部分は、2つのウエイト支持軸186c及び弾性部186fにほぼ沿って形成されている。ウエイト188は一方のウエイト支持部186a、ウエイト支持軸186cと弾性部186fには接しているが、他方のウエイト支持軸186cとの間には隙間が形成されている。
【0042】
円弧状外周面188aからは、
図4に示したように、径方向に摺接部188cが突出している。摺接部188cは、ウエイト188が回転したときにケース内周面184aに摺接する。ウエイト188は、ローター186の非回転時には、円弧状外周面188aがケース内周面184aから離間しており(
図4(a)参照)、ローター186の回転時には、摺接部188cがケース内周面184aに摺接する(
図4(b)参照)
【0043】
以上、ブレーキ装置180の構成について説明した。次に、ブレーキ装置180の作用について、従来のブレーキ装置と比較しながら説明する。
【0044】
従来のコード式ブラインドのブレーキ装置は、下降時のボトムレールが最上昇位置に近い高荷重時は高速回転して、大きな遠心力、摩擦力、ブレーキトルクを発生させる。また、ボトムレールが最下降位置に近い軽荷重時は低速回転して、小さな遠心力、摩擦力、ブレーキトルクを発生させる。
【0045】
コード式ブラインドには遠心ブレーキが無くても、製品各部に発生する基礎抵抗があり、降ろしきるためにボトムレールを一定以上の重量にする必要がある。
【0046】
これに遠心ブレーキを搭載すると、軽荷重で低速回転している場合でも、ウエイトとケース内周面が接触している。このため、遠心力はもちろん摩擦力及びブレーキトルクもゼロにはならず、ボトムレールの重量をさらに重くしないと降り切らない場合が発生し、ひいては操作荷重が増大する。
【0047】
これに対して、本実施形態のブレーキ装置180は、
図4(a)の矢印aに示したように、ローター186が回転すると、ウエイト188に遠心力Faが発生する。すると、ウエイト支持部186aに支持されて矢印b方向にウエイト188が回転し、弾性部186fが
図4(a)の矢印c方向に弾性変形する。よって、摺接部188cがケース内周面184aに摺接するため、ウエイト188の摺接部188cとケース内周面184aとの間に摩擦力Fbが発生し、ブレーキトルクが発生する。
【0048】
そして、ローター186の回転が所定回転速度以下(低速回転時)になると、矢印b方向の回転が弱まり、同時に
図4(b)に示す弾性部186fの矢印e方向への付勢力も加わり、ウエイト188は矢印d方向に回転し、ウエイト188がケース内周面184aから離間する。よって、ローター186の回転が所定回転速度以下(低速回転時)になると、ブレーキトルクがゼロになる。このため、ボトムレール170の重量を重くする必要がなく、ボトムレール170は自重で下降できる。
【0049】
以上、ブレーキ装置180の作用について説明した。次に、ブラインド100の動作について、再び
図1を参照しながら説明する。スラット120を上昇させるときには、つまみ132又は昇降コード130を回転操作棒115から引き下げる。よって、昇降コード130の下端が連結されたボトムレール170が引き上げられて、ボトムレール170とともに下方のスラット120から順次上昇していく。
【0050】
このとき、ブレーキユニット140では、第1連動部146に内蔵されたワンウェイクラッチ(図示せず)の働きにより、ブレーキ装置180と下ローラ141bの接続が解除されるため、上下ローラ141a、141bは回転自在になる。よって、昇降コード130は、上下ローラ141a、141bから抵抗を受けずに移動するため、軽い力で操作することができる。スラット120を停止させたいときには、所望の位置でつまみ132又は昇降コード130から手を離すと、ストッパ装置113が作動して、スラット120を停止させることができる。
【0051】
次に、スラット120を下降させるときには、つまみ132又は昇降コード130を回転操作棒115から若干引き下げて、ストッパ装置113を解除する。この後、つまみ132又は昇降コード130から手を放すと、スラット120及びボトムレール170の自重により昇降コード130の下端が引き下げられて、ボトムレール170とともにスラット120が下降していく。このとき、ブレーキユニット140では、第1連動部146の働きにより、ブレーキ装置180と下ローラ141bが接続されるため、ブレーキ装置180は上下ローラ141a、141bの回転に制動力を付与する。
【0052】
よって、上下ローラ141a、141bに転回された各昇降コード130は、分離案内部142によって交差することなく上下ローラ141a、141bに安定して回転を付与し、上下ローラ141a、141bから抵抗を受けながら移動するため、スラット120及びボトムレール170は減速しながら下降し、最下降位置付近ではブレーキトルクがゼロの状態でボトムレール170は自重で下降する。
【0053】
(第1の実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、ローター186に設けられた弾性部186fが、ウエイト188に設けられた切欠部188d(係合部)に係合することでウエイト188をケース内周面184aから離間するようにしたため、部品点数が削減され、構造を簡素化することができる。また、このような構成により多数のウエイト188を配置することができる。
【0054】
また、ローター186が所定回転速度以下になると、弾性部186fの付勢力により遠心力に抗してウエイト188をケース内周面184aから離間させて制動力が作動しないようにできる。制動力は、ボトムレール170が最下降位置付近まで下降すると作動しないため、ボトムレール170を最下降位置まで下降させることができる。
【0055】
また、ウエイト188が配置されるウエイト支持軸186c間に弾性部186fを設けることで、ローター186を小型化することができる。
【0056】
また、ローター186に弾性部186fを一体化させることで、部品点数を削減できる。
【0057】
(第2の実施形態)
次に、本実施形態に係るブレーキ装置280について、
図5を参照しながら説明する。
図5は、本実施形態のブレーキ装置280を示す図である。本実施形態は、ウエイト288が径方向にスライドする点が第1の実施形態と異なるものである。本実施形態では、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0058】
本実施形態のブレーキ軸282、ケース284は、第1の実施形態のブレーキ軸182、ケース184に対応するものとできるため、説明を省略する。
【0059】
ローター286は、
図5に示したように、ブレーキ軸282が挿通する中心部286eからウエイト支持軸286cが径方向に放射状に延びて形成されている。ウエイト支持軸286cの先端には弾性部286aが形成されている。弾性部286aは、ウエイト支持軸286cの円周方向両側に形成されており、先端が径方向内側に向かって傾斜している。弾性部286aは弾性変形可能に構成されている。弾性部286aは第1の実施形態のウエイト支持部186aと同様に、ケース内周面284aの近傍に配置されている。
【0060】
ウエイト288は、
図5に示したように、円弧状外周面288aの両端の角に弾性部286aの先端が係合する切欠部(係合部)288bが形成されている。円弧状外周面288aはケース内周面284aに接近するように配置される。
【0061】
ウエイト288は、隣り合う2つのウエイト支持軸286cの間に配置されている。ウエイト288と2つのウエイト支持軸286cとの間には隙間が形成されている。ウエイト288の内周面は中心部286eの外周に沿って配置されている。
【0062】
以上、ブレーキ装置280の構成について説明した。次に、ブレーキ装置280の作用について説明する。ローター286が、
図5(a)の矢印f方向に回転すると、ウエイト288が矢印gに示したように、ケース内周面284aの方向にスライドする。すると、弾性部286aが弾性変形して、ウエイト288は、
図5(b)に示したように、円弧状外周面288aがケース内周面284aに摺接し、制動力が発生する。
【0063】
ローター286の回転が所定回転速度以下(低速回転時)になると、矢印g方向の遠心力が弱まり、同時に弾性部286aの付勢力が加わり、
図5(b)の矢印hに示したように、ウエイト288が中心方向にスライドする。よって、ウエイト288はケース内周面284aから離間する。
【0064】
(第2の実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果に加え、弾性部286aが第1の実施形態のウエイト支持部186aと同様の作用も有するため、ローター286の構成をさらに簡単にすることができる。
【0065】
(第3の実施形態)
次に、本実施形態に係るブレーキ装置380について、
図6を参照しながら説明する。
図6は、本実施形態のブレーキ装置380を示す図である。本実施形態は、ウエイト388が径方向にスライドする点が第1の実施形態と異なるものである。本実施形態では、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0066】
本実施形態のブレーキ軸382、ケース384は、第1の実施形態のブレーキ軸182、ケース184に対応するものとできるため、説明を省略する。
【0067】
ローター386は、
図6に示したように、ブレーキ軸382が挿通する中心部386eからウエイト支持軸386cが径方向に放射状に延びて形成されている。ウエイト支持軸386cの軸方向途中位置に弾性部386aが形成されている。弾性部386aは、ウエイト支持軸386cの円周方向両側に形成されており、先端が径方向内側に向かって傾斜している。弾性部386aは径方向に弾性変形可能に構成されている。
【0068】
ウエイト388は、
図6に示したように、円周方向における両側部の厚み方向途中位置に弾性部386aが係合する凹部(係合部)388bが形成されている。凹部388bは、ウエイト388の円周方向に延びている。
【0069】
ウエイト388は、隣り合う2つのウエイト支持軸386cの間に配置されている。ウエイト388と2つのウエイト支持軸386cとの間には隙間が形成されている。ウエイト388の内周面は中心部386eの外周に沿って配置されている。
【0070】
以上、ブレーキ装置380の構成について説明した。次に、ブレーキ装置380の作用について説明する。ローター386が、
図6(a)の矢印i方向に回転すると、ウエイト388が矢印j方向に示したように、ケース内周面384aの方向に移動する。弾性部386aが弾性変形して、ウエイト388は、
図6(b)に示したように、円弧状外周面388aがケース内周面384aに摺接し、制動力が発生する。
【0071】
ローター386の回転が所定回転速度以下(低速回転時)になると、矢印j方向の遠心力が弱まり、同時に弾性部386aの付勢力が加わり、
図6(b)の矢印kに示したように、ウエイト388が中心方向にスライドする。よって、ウエイト388がケース内周面384aから離間する。
【0072】
(第3の実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果に加え、弾性部386aが第1の実施形態のウエイト支持部186aと同様の作用も有するため、ローター386の構成をさらに簡単にすることができる。
【0073】
(第4の実施形態)
次に、本実施形態に係るブレーキ装置480について、
図7を参照しながら説明する。
図7は、本実施形態のブレーキ装置480を示す図である。本実施形態は、ウエイト488とローター486の形状が第1の実施形態と異なるものである。本実施形態では、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0074】
本実施形態のブレーキ軸482、ケース484は、第1の実施形態のブレーキ軸182、ケース184に対応するものとできるため、説明を省略する。
【0075】
ローター486は、
図7に示したように、ブレーキ軸482が挿通する中心部486eからウエイト支持軸486cが径方向に放射状に延びて形成されている。ウエイト支持軸486cの円周方向における両側部には、弾性部490の先端が係合する係合部486dが形成されている。係合部486dは、ウエイト支持軸486cの円周方向に延びる窪みである。弾性部490は、ウエイト488と同じ曲率の円弧状の細長部材であり、ローター486とは別部材である。
【0076】
ウエイト488は、
図7に示したように、厚み方向の途中位置に弾性部490が挿通する挿通孔488bが形成されている。挿通孔488bは、ウエイト488の円弧状外周面488aと同じ曲率の円弧状の細長い孔である。円弧状外周面488aはケース内周面484aに接近するように配置される。
【0077】
ウエイト488は、隣り合う2つのウエイト支持軸486cの間に配置されている。ウエイト488と2つのウエイト支持軸486cとの間には隙間が形成されている。ウエイト488の内周面は中心部486eの外周に沿って配置されている。弾性部490は、ウエイト488の挿通孔488bを挿通し、両端がウエイト支持軸486cの係合部486dに係合される。弾性部490はウエイト488と一体化した構造としてもよい。
【0078】
以上、ブレーキ装置480の構成について説明した。次に、ブレーキ装置480の作用について説明する。ローター486が、
図7(a)の矢印m方向に回転すると、ウエイト488が矢印n方向に示したように、ケース内周面484aの方向にスライドする。弾性部490が弾性変形して、ウエイト488は、
図7(b)に示したように、円弧状外周面488aがケース内周面484aに摺接し、制動力が発生する。
【0079】
ローター486の回転が所定回転速度以下(低速回転時)になると、矢印n方向の遠心力が弱まり、同時に
図7(b)の矢印pに示したように、弾性部490の付勢力が加わり、ウエイト488が中心に向かって径方向にスライドする。よって、ウエイト488はケース内周面484aから離間する。
【0080】
(第4の実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果に加え、ウエイト支持軸486cと弾性部490とが別体であるため、各部品の構成を簡単にすることができる。
【0081】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0082】
例えば、上記第1の実施形態では、ローター186に設けられた弾性部186fが、ウエイト188に設けられた切欠部188bに係合することでウエイト188をケース内周面184aから離間するようにしたが、本発明はこの例に限定されない。ローター及びウエイトのいずれか一方に弾性部が設けられ、いずれか他方に弾性部が係合する係合部が設けられる構成であればよい。第2~第4の実施形態も同様である。
【0083】
また、上記第1の実施形態では、ウエイト188は、ローター186が所定回転速度以下になると、弾性部186fの付勢力によりケース内周面184aから離間する構成としたが、本発明はこの例に限定されない。部品点数が削減され、構造を簡素化することができれば、任意の設計にすることができる。第2~第4の実施形態も同様である。
【0084】
また、上記第1の実施形態では、ローター186は複数のウエイト支持軸186cを備えており、隣り合うウエイト支持軸186cの間にウエイト188が配置され、弾性部186fは、隣り合うウエイト支持軸186c間に設けられる構成としたが、本発明はこの例に限定されない。部品点数が削減され、構造を簡素化することができれば、任意の設計にすることができる。第2~第4の実施形態も同様である。
【0085】
また、上記第1の実施形態では、ローター186とウエイト188を別体としたが、本発明はこの例に限定されない。部品点数が削減され、構造を簡素化することができれば、任意の設計にすることができる。例えば、ローターとして機能する部分であるローター部とウエイトとして機能する部分であるウエイト部が一体化されていてもよい。第2~第4の実施形態も同様である。
【0086】
以上説明した実施形態・応用例・変形例等は、適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0087】
100 ブラインド
110 ヘッドボックス
111 ブラケット
112 回転ドラム
113 ストッパ装置
114 回転軸
115 回転操作棒
120 スラット(遮蔽材)
130 昇降コード
130-1 第1昇降コード
130-2 第2昇降コード
130-3 第3昇降コード
132 つまみ
140 ブレーキユニット
141a 上ローラ
141b 下ローラ
142 分離案内部
142a 第1分離部
142b 第2分離部
144 板バネ
145 連動軸
146 第1連動部
147 第2連動部
148 ユニットケース
160 ラダーコード
170 ボトムレール
180、280、380、480 ブレーキ装置(ブラインド用減速装置)
182、282、382、482 ブレーキ軸
184、284、384、484 ケース
184a、284a、384a、484a ケース内周面
186、286、386、486 ローター
186a ウエイト支持部
186c、286c、386c、486c ウエイト支持軸
186d 一部の面
186e、286e、386e、486e 中心部
186f、286a、386a、490 弾性部
188、288、388、488 ウエイト
188a、288a、388a、488a、 円弧状外周面
188b 切欠部
188c 摺接部
188d、486d 係合部
288b 切欠部(係合部)
388b 凹部(係合部)
488b 挿通孔
c 回転中心
cs 切除面
Fa 遠心力
Fb 摩擦力
L1 間隔