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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】給湯装置およびダイカストマシン
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/30 20060101AFI20240626BHJP
   B22D 17/32 20060101ALI20240626BHJP
   B22D 35/04 20060101ALI20240626BHJP
   B22D 39/02 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
B22D17/30 C
B22D17/32 Z
B22D35/04 Z
B22D39/02 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020099634
(22)【出願日】2020-06-08
(65)【公開番号】P2021192918
(43)【公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【弁理士】
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】本田 友恒
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-069453(JP,A)
【文献】特開平01-154858(JP,A)
【文献】特開昭54-100927(JP,A)
【文献】特開2000-190060(JP,A)
【文献】特開昭51-081729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 15/00 - 17/32
B22D 33/00 - 47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶湯を受け入れるラドルと、
溶湯炉から前記ラドル内に溶湯を汲み上げ、汲み上げた溶湯を射出スリーブ内へ注湯するように前記ラドルを移動させるラドル移動機構と、
前記射出スリーブ内への注湯前の前記ラドル内に汲み上げられた溶湯を検出する溶湯検出部と、
前記溶湯検出部の検出結果に基づき、前記ラドル内の溶湯量を取得する制御部と、を備え
前記溶湯検出部は、ラドル内の溶湯の湯面画像を取得するイメージセンサを含み、
前記制御部は、湯面画像における溶湯の湯面高さ、または、湯面画像における湯面面積に基づいて、前記ラドル内の溶湯量を取得するように構成されている、給湯装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記溶湯検出部による検出後、前記射出スリーブに対する注湯完了以前に、前記ラドル内の溶湯量を取得するように構成されている、請求項1に記載の給湯装置。
【請求項3】
前記溶湯検出部は、前記溶湯炉の上方位置に設けられ、汲み上げ時に前記溶湯炉から引き上げられた前記ラドル内の溶湯を検出する、請求項1または2に記載の給湯装置。
【請求項4】
前記溶湯検出部は、前記溶湯を検出するセンサと、前記センサを内部に収容する筐体と、前記筐体内に冷媒を供給する冷媒配管とを含む、請求項3に記載の給湯装置。
【請求項5】
前記ラドル移動機構は、前記ラドルを保持するアームを含み、
前記溶湯検出部は、前記アームに設けられ、前記ラドルの上方から溶湯を検出する、請求項1または2に記載の給湯装置。
【請求項6】
前記溶湯検出部は、前記溶湯炉から前記射出スリーブまでの前記ラドルの移動軌跡の前半部に属する位置において、前記ラドルの上方から溶湯を検知するように設けられている、請求項1~5のいずれか1項に記載の給湯装置。
【請求項7】
溶湯を受け入れるラドルと、
溶湯炉から前記ラドル内に溶湯を汲み上げ、汲み上げた溶湯を射出スリーブ内へ注湯するように前記ラドルを移動させるラドル移動機構と、
前記射出スリーブ内への注湯前の前記ラドル内に汲み上げられた溶湯を検出する溶湯検出部と、
前記溶湯検出部の検出結果に基づき、前記ラドル内の溶湯量を取得する制御部と、を備え、
前記溶湯検出部は、ラドル内の湯面幅を測定する変位センサを含み、
前記制御部は、前記溶湯検出部が測定した前記湯面幅に基づいて、前記ラドル内の溶湯量を取得するように構成されている、給湯装置。
【請求項8】
前記ラドル内の湯面幅と、前記ラドル内の溶湯量との関係式を記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、検出された湯面幅と、前記関係式とにより、前記ラドル内の溶湯量を取得するように構成されている、請求項7に記載の給湯装置。
【請求項9】
湯面画像における溶湯範囲と、前記ラドル内の溶湯量との関係式、または、湯面画像における湯面面積と、前記ラドル内の溶湯量との関係式を記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、取得された湯面画像における前記溶湯範囲の湯面高さと、前記湯面画像における溶湯範囲と前記ラドル内の溶湯量との関係式とにより、前記ラドル内の溶湯量を取得するか、または、取得された湯面画像における湯面面積と、前記湯面画像における湯面面積と前記ラドル内の溶湯量との関係式とにより、前記ラドル内の溶湯量を取得するように構成されている、請求項に記載の給湯装置。
【請求項10】
射出スリーブ内に溶湯を供給する給湯装置と、
前記射出スリーブに供給された溶湯を射出する射出装置と、
制御部と、を備え、
前記給湯装置は、
溶湯を受け入れるラドルと、
溶湯炉から前記ラドル内に溶湯を汲み上げ、汲み上げた溶湯を前記射出スリーブ内へ注湯するように前記ラドルを移動させるラドル移動機構と、
前記射出スリーブ内への注湯前の前記ラドル内の溶湯を検出する溶湯検出部と、を含み、
前記溶湯検出部は、ラドル内の溶湯の湯面画像を取得するイメージセンサを含み、
前記制御部は、前記溶湯検出部の検出結果に基づき、前記ラドル内の溶湯量を取得するように構成されており、
前記制御部は、湯面画像における溶湯の湯面高さ、または、湯面画像における湯面面積に基づいて、前記ラドル内の溶湯量を取得するように構成されている、ダイカストマシン。
【請求項11】
射出スリーブ内に溶湯を供給する給湯装置と、
前記射出スリーブに供給された溶湯を射出する射出装置と、
制御部と、を備え、
前記給湯装置は、
溶湯を受け入れるラドルと、
溶湯炉から前記ラドル内に溶湯を汲み上げ、汲み上げた溶湯を前記射出スリーブ内へ注湯するように前記ラドルを移動させるラドル移動機構と、
前記射出スリーブ内への注湯前の前記ラドル内の溶湯を検出する溶湯検出部と、を含み、
前記溶湯検出部は、ラドル内の溶湯の湯面幅を測定する変位センサを含み、
前記制御部は、前記溶湯検出部の検出結果に基づき、前記ラドル内の溶湯量を取得するように構成されており、
前記制御部は、前記溶湯検出部が測定した前記湯面幅に基づいて、前記ラドル内の溶湯量を取得するように構成されている、ダイカストマシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、給湯装置およびダイカストマシンに関し、特に、溶湯炉から溶湯を汲み上げるラドルを有する給湯装置およびそのような給湯装置を備えたダイカストマシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、溶湯炉から溶湯を汲み上げるラドルを有する給湯装置を備えたダイカストマシンが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、ラドルを有する給湯装置を備えたダイカストマシンが開示されている。このダイカストマシンは、溶解炉から金属溶湯を汲み上げるラドルと、ラドルにより汲み上げられた金属溶湯が注ぎ入れられる射出スリーブと、射出スリーブ内で射出プランジャを進退させる進退駆動手段と、ラドルから射出スリーブ内に注ぎ入れられた金属溶湯の湯面高さを測定する湯面検出センサーとを備える。このダイカストマシンは、ラドルにより金属溶湯を射出スリーブの給湯口から注ぎ入れた後、磁歪式の湯面検出センサーにより給湯口の上方から給湯口内の湯面高さを測定し、測定された湯面高さから射出スリーブ内の溶湯総量を演算する。得られた溶湯総量は、射出プランジャの射出工程において射出動作を切り替える切替位置の設定に利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-171626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1では、溶湯が射出スリーブ内に注入された後、射出スリーブ内の溶湯の湯面高さ測定が行われるため、溶湯が射出スリーブ内に注入されてから射出プランジャによる溶湯の射出を開始するまでに要する時間が長くなる。その結果、射出スリーブ内での溶湯の温度が低下するという問題点がある。溶湯の温度低下は、成形品の品質低下の要因となる。
【0006】
すなわち、溶湯は、ラドルから射出スリーブ内に注入されると、射出スリーブ内で拡がって、表面積(射出スリーブの内面との接触面積および湯面の面積)が増大し、射出スリーブを介して放熱が促進されるため、射出スリーブ内で急激に温度が低下する。溶湯の温度低下により、金型内への湯回り不良(金型のキャビティの隅々まで溶湯が行き渡らないこと)の発生、製品内部に混入する破断チル層(射出スリーブ内で凝固した金属)の増加など、成形品の品質上、望ましくない事象が発生する。
【0007】
また、注入直後の溶湯の湯面には波が生じるが、射出スリーブは長い筒状部材のため、波が減衰するまでに時間がかかる。そのため、波の減衰を待たずに測定する場合には波による湯面高さ測定の誤差が増大しやすく、波の減衰を待つ場合には測定に要する時間が長くなり、溶湯温度の低下をもたらすという不都合も存在する。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、射出スリーブ内の溶湯の温度低下を抑制しつつ射出スリーブへの給湯量を測定することが可能な給湯装置およびダイカストマシンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における給湯装置は、溶湯を受け入れるラドルと、溶湯炉からラドル内に溶湯を汲み上げ、汲み上げた溶湯を射出スリーブ内へ注湯するようにラドルを移動させるラドル移動機構と、射出スリーブ内への注湯前のラドル内に汲み上げられた溶湯を検出する溶湯検出部と、溶湯検出部の検出結果に基づき、ラドル内の溶湯量を取得する制御部と、を備え、溶湯検出部は、ラドル内の溶湯の湯面画像を取得するイメージセンサを含み、制御部は、湯面画像における溶湯の湯面高さ、または、湯面画像における湯面面積に基づいて、ラドル内の溶湯量を取得するように構成されている。
【0010】
この発明の第1の局面による給湯装置では、上記のように、射出スリーブ内への注湯前のラドル内に汲み上げられた溶湯を検出する溶湯検出部と、溶湯検出部の検出結果に基づき、ラドル内の溶湯量を取得する制御部と、を設け、溶湯検出部は、ラドル内の溶湯の湯面画像を取得するイメージセンサを含み、制御部は、湯面画像における溶湯の湯面高さ、または、湯面画像における湯面面積に基づいて、ラドル内の溶湯量を取得するように構成されている。これにより、射出スリーブ内への注湯前に、溶湯炉からラドル内に汲み上げられた溶湯量を取得できる。ラドル内に溶湯が保持された状態で溶湯量を取得できるので、射出スリーブ内への注湯後には待機時間が発生せず、速やかに射出工程を開始することができる。なお、ラドル内では、射出スリーブ内と比べて溶湯の表面積が小さくなり、汲み上げ時のラドルと溶湯炉内の溶湯との接触によりラドル自体の温度も溶湯温度に近づくため、射出スリーブ内と比べて溶湯の温度低下速度は非常に小さい。また、射出スリーブ内の湯面面積と比べて、ラドル内の湯面面積が小さくなるため、ラドル内で湯面に波が生じても、速やかに波が減衰する。そのため、溶湯温度低下を抑制しつつ、速やかに溶湯検出ができる。以上により、射出スリーブ内の溶湯の温度低下を抑制しつつ射出スリーブへの給湯量を測定することができる。
【0011】
上記第1の局面による給湯装置において、好ましくは、制御部は、溶湯検出部による検出後、射出スリーブに対する注湯完了以前に、ラドル内の溶湯量を取得するように構成されている。このように構成すれば、注湯が完了するタイミングまでに、射出スリーブに供給される溶湯の供給量(すなわち、ラドル内の溶湯量)を確実に取得できる。その結果、注湯後の待機時間を発生させることなく、注湯が完了した直後に、得られた溶湯量を用いて射出装置の射出工程を開始することができる。これにより、溶湯温度の低下を効果的に抑制でき、成形品の品質および生産効率を向上させることができる。
【0012】
上記第1の局面による給湯装置において、好ましくは、溶湯検出部は、溶湯炉の上方位置に設けられ、汲み上げ時に溶湯炉から引き上げられたラドル内の溶湯を検出する。このように構成すれば、給湯動作の初期に、溶湯炉から溶湯を汲み上げた際のラドル内の溶湯を検出できる。そのため、溶湯を検出してから、射出スリーブに注湯するまでの時間を、最大限確保できる。ここで、ダイカストマシンによる鋳造サイクルタイムが短くなるほど生産効率が向上することから、制御部が溶湯量を算出するための演算処理に割り当て可能な時間は、短時間となる場合がある。上記構成によれば、検出結果を取得して制御部が溶湯量を算出するまでに十分な時間余裕を確保できるので、待機時間の発生を回避して、高品質、高生産効率での成形品の生産が可能となる。
【0013】
この場合、好ましくは、溶湯検出部は、溶湯を検出するセンサと、センサを内部に収容する筐体と、筐体内に冷媒を供給する冷媒配管とを含む。このように構成すれば、溶湯検出部のセンサに対する、溶湯炉からの熱の影響を効果的に遮断できる。その結果、溶湯検出部を溶湯炉の上方位置に配置する場合でも、熱の影響を受けることなく高精度な溶湯検出ができる。
【0014】
上記第1の局面による給湯装置において、好ましくは、ラドル移動機構は、ラドルを保持するアームを含み、溶湯検出部は、アームに設けられ、ラドルの上方から溶湯を検出する。このように構成すれば、ラドルの移動に伴って溶湯検出部も移動させることができるので、溶湯炉から射出スリーブまでのラドルの移動軌跡における任意の位置およびタイミングで溶湯検出が行える。そのため、溶湯の供給動作に応じて、溶湯検出の位置およびタイミングを容易に最適化できる。
【0015】
上記第1の局面による給湯装置において、好ましくは、溶湯検出部は、溶湯炉から射出スリーブまでのラドルの移動軌跡の前半部に属する位置において、ラドルの上方から溶湯を検知するように設けられている。このように構成すれば、溶湯炉から射出スリーブまでのラドルの移動過程の早い段階で溶湯の検出が行える。そのため、溶湯検出後、注湯完了までの間で、溶湯量の算出処理を行う時間を十分に確保できる。この結果、演算処理の完了待ちの待機時間が発生することを抑制し、効果的に溶湯の温度低下を抑制しつつ、高い生産効率での成形品の生産が可能となる。
【0016】
この発明の第2の局面による給湯装置は溶湯を受け入れるラドルと、溶湯炉からラドル内に溶湯を汲み上げ、汲み上げた溶湯を射出スリーブ内へ注湯するようにラドルを移動させるラドル移動機構と、射出スリーブ内への注湯前のラドル内に汲み上げられた溶湯を検出する溶湯検出部と、溶湯検出部の検出結果に基づき、ラドル内の溶湯量を取得する制御部と、を備え、溶湯検出部は、ラドル内の溶湯の湯面幅を測定する変位センサを含み、制御部は、溶湯検出部が測定した湯面幅に基づいて、ラドル内の溶湯量を取得するように構成されている。このように構成すれば、変位センサによって、ラドル内の溶湯を容易に検出できる。ラドル内の溶湯量に応じて湯面幅が変化するので、得られた湯面幅から、ラドル内の溶湯量を容易に算出することができる。
【0017】
この場合、好ましくは、ラドル内の湯面幅と、ラドル内の溶湯量との関係式を記憶する記憶部をさらに備え、制御部は、検出された湯面幅と、関係式とにより、ラドル内の溶湯量を取得するように構成されている。このように構成すれば、変位センサの測定値(湯面高さまたは湯面幅)とラドル内の溶湯量との関係式を、実験またはシミュレーションにより予め求めておくことにより、装置稼働時には、変位センサの測定値を関係式に当てはめるだけの処理負荷の小さい演算処理で迅速かつ高精度に溶湯量を取得することができる。
【0019】
この場合、好ましくは、湯面画像における溶湯範囲と、ラドル内の溶湯量との関係式、または、湯面画像における湯面面積と、ラドル内の溶湯量との関係式を記憶する記憶部をさらに備え、制御部は、取得された湯面画像における溶湯範囲の湯面高さと、湯面画像における溶湯範囲とラドル内の溶湯量との関係式とにより、ラドル内の溶湯量を取得するか、または、取得された湯面画像における湯面面積と、湯面画像における湯面面積とラドル内の溶湯量との関係式とにより、ラドル内の溶湯量を取得するように構成されている。このように構成すれば、溶湯画像における溶湯範囲とラドル内の溶湯量との関係式を、実験またはシミュレーションにより予め求めておくことにより、装置稼働時には、溶湯画像から求めた溶湯範囲の値を関係式に当てはめるだけで容易に容易かつ高精度に溶湯量を取得することができる。
【0020】
この発明の第の局面によるダイカストマシンは、射出スリーブ内に溶湯を供給する給湯装置と、射出スリーブに供給された溶湯を射出する射出装置と、制御部と、を備え、給湯装置は、溶湯を受け入れるラドルと、溶湯炉からラドル内に溶湯を汲み上げ、汲み上げた溶湯を射出スリーブ内へ注湯するようにラドルを移動させるラドル移動機構と、射出スリーブ内への注湯前のラドル内の溶湯を検出する溶湯検出部と、を含み、溶湯検出部は、ラドル内の溶湯の湯面画像を取得するイメージセンサを含み、制御部は、溶湯検出部の検出結果に基づき、ラドル内の溶湯量を取得するように構成されており、制御部は、湯面画像における溶湯の湯面高さ、または、湯面画像における湯面面積に基づいて、ラドル内の溶湯量を取得するように構成されている。
【0021】
この発明の第の局面によるダイカストマシンでは、射出スリーブ内への注湯前のラドル内の溶湯を検出する溶湯検出部を含む給湯装置と、溶湯検出部の検出結果に基づき、ラドル内の溶湯量を取得する制御部と、を設け、溶湯検出部は、ラドル内の溶湯の湯面画像を取得するイメージセンサを含み、制御部は、湯面画像における溶湯の湯面高さ、または、湯面画像における湯面面積に基づいて、ラドル内の溶湯量を取得するように構成されている。これにより、上記第1の局面と同様に、射出スリーブ内の溶湯の温度低下を抑制しつつ射出スリーブへの給湯量を測定することができる。
また、この発明の第4の局面によるダイカストマシンでは、射出スリーブ内に溶湯を供給する給湯装置と、射出スリーブに供給された溶湯を射出する射出装置と、制御部と、を備え、給湯装置は、溶湯を受け入れるラドルと、溶湯炉からラドル内に溶湯を汲み上げ、汲み上げた溶湯を射出スリーブ内へ注湯するようにラドルを移動させるラドル移動機構と、射出スリーブ内への注湯前のラドル内の溶湯を検出する溶湯検出部と、を含み、溶湯検出部は、ラドル内の溶湯の湯面幅を測定する変位センサを含み、制御部は、溶湯検出部の検出結果に基づき、ラドル内の溶湯量を取得するように構成されており、制御部は、溶湯検出部が測定した湯面幅に基づいて、ラドル内の溶湯量を取得するように構成されている。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、上記のように、射出スリーブ内の溶湯の温度低下を抑制しつつ射出スリーブへの給湯量を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】一実施形態によるダイカストマシンの全体構成を模式的に示した図である。
図2】一実施形態による給湯装置の構成を模式的に示した図である。
図3】検出位置におけるラドルと溶湯検出部との位置関係を模式的に示した図である。
図4】湯面画像に基づく湯面範囲の取得を説明するための図である。
図5】溶湯炉の上方位置に設けられる溶湯検出部の構成例を示した図である。
図6】制御部とダイカストマシンの各部との関係を示したブロック図である。
図7】湯面範囲の一例である画像湯面高さと溶湯量との関係を示したグラフである。
図8】溶湯範囲と溶湯量との関係式を説明するためのグラフである。
図9】ラドル内の溶湯の3Dデータを模式的に示した図である。
図10】制御部の制御動作の一例を示したフロー図である。
図11】射出工程を説明するための模式図である。
図12】第2実施形態における溶湯検出部とラドルとの位置関係を模式的に示した図である。
図13図12の例による湯面画像に基づく湯面範囲の取得を説明するための図である。
図14】湯面範囲の一例である湯面面積と溶湯量との関係を示したグラフである。
図15】第3実施形態による溶湯検出部の設置位置を説明するための図である。
図16】溶湯検出部により検出される湯面高さの第1の例を説明するための図である。
図17】溶湯検出部により検出される湯面高さの第2の例を説明するための図である。
図18】第4実施形態による湯面幅の取得方法を説明するための図である。
図19】湯面幅と溶湯量との関係を説明するための図である。
図20】溶湯検出部の設置位置の変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
[第1実施形態]
図1図11を参照して、第1実施形態による給湯装置20を備えるダイカストマシン1の構成について説明する。
【0026】
(ダイカストマシンの構成)
図1に示すように、ダイカストマシン1は、射出装置10と、給湯装置20と、型締装置30と、制御部40とを備える。射出装置10は、射出スリーブ3内の溶湯5を金型2内に射出する。給湯装置20は、射出スリーブ3に溶湯5を供給する。型締装置30は、金型2を保持し、金型2の型開き、型閉じおよび型締めを行う。溶湯5は、液状の金属材料である。
【0027】
ダイカストマシン1は、移動金型2aが水平方向に移動される横型のマシンである。また、ダイカストマシン1は、コールドチャンバ方式のマシンであり、型締装置30に取り付けられた金型2内(キャビティC)に、射出装置10によって溶湯5を射出することによりダイカスト製品(成形品)を製造するように構成されている。
【0028】
金型2は、分割可能に構成され、ダイカスト製品(成形品)を成形するためのキャビティC(空洞部分)を形成するように構成されている。金型2は、移動金型2aと、固定金型2bとを含んでいる。固定金型2bは、型締装置30の固定ダイプレート32に固定されている。移動金型2aは、型締装置30の移動ダイプレート31に取り付けられている。型締装置30は、移動ダイプレート31を固定ダイプレート32に接近または離間する方向(X方向)に移動可能に構成されている。移動ダイプレート31により、移動金型2aが固定金型2bに当接または離間される。キャビティCは、固定金型2bに移動金型2aを当接させることにより形成される。
【0029】
金型2(固定金型2b)には、射出スリーブ3が接続されている。射出スリーブ3は、金型2内のキャビティCに連通している。射出スリーブ3は、射出装置10の後述するプランジャ11をX方向に移動可能に収容するとともに溶湯5を収容可能に構成されている。
【0030】
具体的には、射出スリーブ3は、給湯口3aと、溶湯通路3bとを含んでいる。射出スリーブ3は、筒形状を有している。射出スリーブ3は、X方向に延びている。給湯口3aは、射出スリーブ3の上部に開口し、上方から給湯装置20により溶湯5を溶湯通路3b内に給湯するために設けられている。溶湯通路3bは、射出スリーブ3をX方向に貫通する貫通孔である。溶湯通路3bは、X1方向においてキャビティCに連通している。
【0031】
射出装置10は、プランジャ11と、油圧シリンダ12と、油圧シリンダ12を動作させるための油圧回路13とを含む。
【0032】
プランジャ11は、射出スリーブ3内に供給された溶湯5を射出するように構成されている。
【0033】
具体的には、プランジャ11は、プランジャチップ11aと、プランジャロッド11bとを有している。プランジャチップ11aは、プランジャロッド11bのX1方向側の端部に取り外し可能に取り付けられている。プランジャロッド11bは、X方向に延びる棒形状を有している。プランジャロッド11bは、X2方向側の端部において油圧シリンダ12に接続されている。
【0034】
油圧シリンダ12は、油圧回路13によって供給される油圧によってプランジャ11を移動させることにより、キャビティC内に溶湯5を射出するように構成されている。射出装置10は、油圧回路13の制御により、プランジャ11を射出スリーブ3内でX方向に往復移動させるように構成されている。
【0035】
給湯装置20は、ラドル21と、ラドル移動機構22と、溶湯検出部23と、を含む。給湯装置20は、ラドル21により溶湯炉4から溶湯5を汲み上げて、汲み上げた溶湯5を射出スリーブ3に供給(給湯)するように構成されている。
【0036】
ラドル21は、溶湯5を受け入れる容器である。ラドル移動機構22は、溶湯炉4からラドル21内に溶湯5を汲み上げ、汲み上げた溶湯5を射出スリーブ3内へ注湯するようにラドル21を移動させるように構成されている。
【0037】
溶湯検出部23は、射出スリーブ3内への注湯前のラドル21内の溶湯5を検出するように構成されている。
【0038】
制御部40は、溶湯検出部23の検出結果に基づき、ラドル21内の溶湯量を取得するように構成されている。制御部40は、演算処理を行うプロセッサと、メモリとを含むコンピュータにより構成され、プロセッサがプログラムを実行することにより、制御部として機能する。制御部40は、給湯装置20に設けられ給湯装置20の制御のみを行うように構成されていてもよいし、給湯装置20、射出装置10および型締装置30を含むダイカストマシン1の全体の制御を行うように構成されていてもよい。本実施形態では、制御部40が、ダイカストマシン1の全体の制御を行う例を説明する。
【0039】
(給湯装置の構成)
図2を参照して、給湯装置20の具体的な構造を説明する。
【0040】
〈ラドル〉
図2に示すように、ラドル21は、溶湯5を収容して保持可能な溶湯収容部21aを含んでいる。溶湯収容部21aは、底面および周側面を有し、上部が開放された形状に形成され、内部に溶湯5を受け容れて保持する。ラドル21は、上端部において側方に張り出した接続部21bを有し、接続部21bにおいてラドル移動機構22に取り付けられている。
【0041】
具体的には、ラドル21は、接続部21bに設けられた軸部54gを介して、軸部54gを回転中心として上下に回転(傾斜)可能な状態で、後述するアーム51eに取り付けられている。ラドル21は、軸部54gを回転中心とした回転角度(傾斜角度)を変更することにより、溶湯炉4から汲み上げる溶湯量を調節可能に構成されている。
【0042】
〈ラドル移動機構〉
ラドル移動機構22は、複数のアーム51a~51eを回動可能に連結したリンク機構により構成されている。ラドル移動機構22は、リンク機構を駆動する駆動モータ52aおよび52bを備えている。ラドル移動機構22は、駆動モータ52aおよび52bにより、ラドル21の移動と、軸部54gを中心としたラドル21の回転(傾斜)とを行う。
【0043】
ラドル移動機構22は、溶湯炉4から溶湯5を汲み上げたラドル21を射出スリーブ3に移動させるように構成されている。ラドル移動機構22は、射出スリーブ3の給湯口3a(図1参照)上において、ラドル21を傾斜させることにより、内部に収容された溶湯5を給湯口3a内に注湯する動作を行う。また、ラドル移動機構22は、注湯後のラドル21を溶湯炉4に移動させるように構成されている。
【0044】
複数のアーム51a~51eは、互いに連動して動作するように構成されている。これにより、複数のアーム51a~51eは、予め決められた移動軌跡MLに沿って、ラドル21を溶湯炉4と射出スリーブ3との間において移動させるように構成されている。
【0045】
アーム51aは、チェーンやベルトなどの駆動伝達部材53aを介して、駆動モータ52aに接続されている。アーム51aは、駆動モータ52aからの駆動力により、軸部54aを回転中心とした回転方向であるC1方向およびC2方向に回転するように構成されている。C1方向は、ラドル21を射出スリーブ3に向かって移動させる回転方向である。また、C2方向は、C1方向とは反対方向の回転方向であるとともに、ラドル21を溶湯炉4に向かって移動させる回転方向である。アーム51aの長手方向の一端部は、軸部54aに連結されている。軸部54aは、C1方向およびC2方向に回転可能に、給湯装置本体20aに保持されている。
【0046】
また、アーム51aの長手方向の他端部は、軸部54bを介して、アーム51bの両端間の位置に連結されている。また、アーム51bの長手方向の一端部は、軸部54cを介して、アーム51cの一端部に連結されている。また、アーム51cの長手方向の他端部は、軸部54dを介して、アーム51dの一端部に連結されている。また、アーム51dは、軸部54dを回転中心として回転するように構成されている。軸部54dは、給湯装置本体20aに保持されている。
【0047】
アーム51dの長手方向の他端部は、軸部54eを介して、アーム51eの一端部に連結されている。また、アーム51eの両端間の位置には、軸部54fを介して、アーム51bの長手方向の他端部が連結されている。また、アーム51eの長手方向の他端部には、ラドル21を回転させるための軸部54gを介して、ラドル21の接続部21bが連結されている。
【0048】
なお、アーム51eには、保持部材55aを介して、湯面検知センサ55が取り付けられている。湯面検知センサ55は、溶湯炉4内の溶湯5の湯面位置を検知するために設けられている。湯面検知センサ55は、たとえば通電センサであり、電極棒が溶湯炉4内の溶湯5(炉内湯面)に接触したことを検知する。
【0049】
駆動モータ52aは、ラドル移動機構22を駆動するためのサーボモータである。駆動モータ52bは、ラドル21を駆動するためのサーボモータである。サーボモータは、角度検出器を含む。ラドル21は、チェーンやベルトなどの駆動伝達部材53bを介して、駆動モータ52bに接続されている。駆動モータ52bからの駆動力により、ラドル21が軸部54gを回転中心として回転する。駆動モータ52aおよび52bは共に、給湯装置本体20aに保持されている。
【0050】
〈溶湯検出部〉
溶湯検出部23は、溶湯5を検出するためのセンサ61を含む。センサ61は、たとえばラドル21内の溶湯5までの距離を測定する変位センサや、ラドル21内を撮像するイメージセンサを含みうる。
【0051】
第1実施形態では、センサ61は、ラドル21内の溶湯5の湯面画像80(図4参照)を取得するイメージセンサである。つまり、第1実施形態の溶湯検出部23は、ラドル21の内部を撮像するカメラである。イメージセンサは、たとえばカラー画像を撮像可能であり、CMOSセンサまたはCCDセンサにより構成される。
【0052】
また、上部が開放されたラドル21内に保持された溶湯5を検出するため、溶湯検出部23は、溶湯炉4から射出スリーブ3までのラドル21の移動軌跡MLの上方位置に配置され、ラドル21内の溶湯5を上方から検出するように設けられる。なお、上方位置とは、ラドル21よりも高い位置であり、直上(鉛直上方)に限られない。
【0053】
第1実施形態では、溶湯検出部23は、溶湯炉4から射出スリーブ3までのラドル21の移動軌跡MLの前半部に属する位置において、ラドル21の上方から溶湯5を検知するように設けられている。
【0054】
具体的には、溶湯検出部23は、溶湯炉4の上方位置に設けられ、汲み上げ時に溶湯炉4から引き上げられたラドル21内の溶湯5を検出する。
【0055】
図2の例では、溶湯検出部23は、溶湯炉4の壁部4aの上面上に設置された支持部材70を介して、溶湯炉4の上方位置に保持されている。支持部材70は、溶湯炉4の開口部4bに対して両側に配置された一対の柱部71と、一対の柱部71によって両端を支持された梁部72と、梁部72に固定されて溶湯検出部23を支持するブラケット73と、を含む。なお、図2では、紙面奥側(Y2方向側)の1つの柱部71を図示しており、紙面手前側(Y1方向側)に、他の1つの柱部(図示せず)が配置されている。梁部72が、溶湯炉4の上方を跨がるようにY方向に延びている。梁部72の途中位置に、ブラケット73を介して溶湯検出部23が取り付けられている。これにより、溶湯検出部23は、溶湯炉4の上方位置で、溶湯炉4から引き上げられたラドル21内の溶湯5を検出する。
【0056】
なお、図2では、溶湯検出部23が溶湯炉4の上方位置から斜め下方に向けて撮像するように設けられた例を示している。図3に示すように、溶湯検出部23は、溶湯炉4から引き上げられ、予め設定された所定高さ位置に略水平状態で配置されたラドル21内の溶湯5を撮像する。溶湯検出部23は、溶湯5の湯面5aの縁部が位置するラドル内面に対して、法線方向から湯面画像80(図4参照)を取得するように設けられる。つまり、溶湯検出部23の撮像光軸23aが、湯面5aの縁部におけるラドル内面と略直交するように、溶湯検出部23の設置角度が調整される。なお、汲み上げ時に溶湯炉4から引き上げられたラドル21は、予め設定された所定角度に傾斜されることにより、余分な溶湯5を溶湯炉4内に戻して、傾斜角度に対応した概ね一定量の溶湯量を保持するように調節された後、水平姿勢に戻される。このため、溶湯検出時における湯面5aの位置は、設計値から大きく変動しないと仮定してよい。
【0057】
ここで、溶湯炉4の上方位置は、溶湯炉4内から上昇する熱により高温になりやすい。そこで、図5に示すように、第1実施形態では、溶湯検出部23は、溶湯5を検出するセンサ61と、センサ61を内部に収容する筐体62と、筐体62内に冷媒66を供給する冷媒配管63とを含む。イメージセンサであるセンサ61は、レンズ部64aを含むカメラ本体64内に配置されている。筐体62は、金属製の箱状部材であり、カメラ本体64を内部に収容している。筐体62には、レンズ部64aの正面位置に、画像を取得するための窓部材62aを有する。センサ61は、窓部材62aを介してレンズ部64aに入射した光を検出することにより、湯面画像80を生成する。窓部材62aは、耐熱ガラスなどの耐熱性を有する透明部材である。窓部材62aは、溶湯5から放射される赤外線をカットするためのフィルタを有していてもよい。フィルタは、たとえばNDフィルタである。
【0058】
筐体62には、筐体62を貫通する接続孔62bおよび62cが設けられている。接続孔62bには、カメラ本体64に対する配線64bが挿通されている。接続孔62bには、配線64bを収容したケーブルホース65が取り付けられている。接続孔62cには、冷媒配管63が挿通されている。接続孔62cは、筐体62に1つまたは複数設けられる。図5では、2つの冷媒配管63が、2つの接続孔62cにそれぞれ挿通されている。
【0059】
冷媒配管63は、筐体62の外部の冷媒供給源から、筐体62の内部に冷媒66を供給する。冷媒66は、気体または液体である。冷媒66は、たとえば空気であるが、カメラ本体64を防水ジャケットで覆うなどの防水処理を施した上で、水などの液冷媒を供給してもよい。
【0060】
第1実施形態では、冷媒66は空気である。筐体62の内部には、エアポンプなどにより、筐体62の外部の外気温程度の空気が冷媒66として供給される。冷媒66として空気を用いる場合、筐体62の冷媒漏れ(気密封止)を考慮する必要がないため取り扱いが容易であり、高い断熱性を有するため、筐体62からカメラ本体64への熱伝熱を遮断する作用も得られる。冷媒配管63は、筐体62内で、レンズ部64aに向けて冷媒66を供給するように設けられている。このため、熱の影響を受けやすいレンズ部64aに対して特に低温状態の冷媒66が供給される。冷媒66は、レンズ部64aに向けて吐出された後、筐体62の内部に拡散し、センサ61を含むカメラ本体64を冷却する。冷媒66は、接続孔62bを介してケーブルホース65内を通って排出される。
【0061】
冷媒66は、ダイカストマシン1の稼働中、継続して供給され続ける。このため、筐体62内には、常時、低温の冷媒66の流れが形成される。なお、図5では、2本の冷媒配管63がいずれも供給用配管であるが、冷媒66の供給用配管と冷媒66の排出用配管とを設けてもよい。
【0062】
(制御部)
次に、ダイカストマシン1の各部を制御するための構成を説明する。図6に示すように、第1実施形態では、ダイカストマシン1は、制御部40と、記憶部41と、画像処理部42と、入力部43と、報知部44とを備える。
【0063】
制御部40は、駆動モータ52aの角度検出器52cおよび駆動モータ52bの角度検出器52dの各検出信号に基づいて、ラドル移動機構22の動作制御を行う。画像処理部42は、溶湯検出部23により検出された湯面画像80を画像処理する。記憶部41は、湯面画像80における溶湯範囲と、ラドル21内の溶湯量との関係式90を記憶している。
【0064】
制御部40は、射出装置10に設けられたロッド位置検出器15の検出信号に基づいて、射出動作の制御を行う。制御部40は、取得したラドル21内の溶湯量に基づいて、射出工程の切替位置の設定を行う。これにより、毎回の射出工程において、ラドル21からの溶湯供給量に応じた射出動作制御の最適化が可能となる。入力部43は、ユーザが制御部40に対して操作入力を行うためのキースイッチなどの入力装置を含む。報知部44は、たとえばスピーカ、ランプ、モニタなどにより構成され、ユーザへの報知を行う。
【0065】
〈溶湯量の取得方法〉
次に、溶湯量の取得方法について説明する。図4に示したように、溶湯検出部23により湯面画像80が取得されると、画像処理部42により2値化処理が行われる。画像処理部42は、湯面画像80の輝度値に基づいて、溶湯5の部分と、溶湯5以外の部分とを判別し、2値化する。図4では、白黒の2値化画像を示し、ラドル21内の溶湯5の部分を白、溶湯5以外の部分を黒で示している。
【0066】
制御部40は、2値化処理後の湯面画像80aから、溶湯5が写る溶湯範囲81を取得する。溶湯範囲81は、画像中に写る溶湯5の範囲を表す情報である。溶湯範囲81は、斜め方向から撮像された湯面画像80aでは、画像中の最下点から湯面5aの上端位置までの画像湯面高さHgである。ラドル21内の溶湯5の量が多いほど、画像中の湯面5aの上端位置が上方に移動することから、画像湯面高さHgは、ラドル21内の溶湯量の指標となる。
【0067】
制御部40は、取得された湯面画像80における溶湯範囲81と、記憶部41に記憶された関係式90とにより、ラドル21内の溶湯量Mを取得するように構成されている。
【0068】
関係式90は、実験的手法またはシミュレーションにより予め取得され、記憶部41に記憶されている。具体的には、実験により実際に画像湯面高さHgと、そのときのラドル21内の溶湯量Mとを対応付けて測定する。様々な溶湯量Mで測定結果を取得し、画像湯面高さHgに対応する溶湯量Mを算出するための近似式を関係式90(図6参照)として求める。
【0069】
図7に、画像湯面高さHgと、対応する溶湯量Mとをプロットしたグラフ91を示す。グラフ91は、縦軸が画像湯面高さ(画素数)であり、横軸が溶湯量(g)である。グラフ91において、プロットされた各点が実測値である。溶湯量は、重量でも体積でもよい。
【0070】
グラフ91のプロットから、たとえば線形近似により、関係式90が取得できる。図8は、グラフ91における溶湯量の常用範囲付近に、取得した関係式90を表す近似直線を付したグラフ93を示す。関係式90は、下式(1)で示される。
溶湯量M = a×Hg+b ・・・(1)
傾きaおよび切片bが、近似により取得される定数である。Hgが、湯面画像80から取得された画像湯面高さである。
【0071】
シミュレーションにより関係式90を求める場合、たとえば図9に示すように、ラドル21内の溶湯形状の3D(3次元)データ94を設計情報から作成し、3Dデータ94を高さ位置毎にスライスして溶湯量M(重量または体積)および湯面5aの形状を求める。求めた溶湯量M(重量または体積)および湯面形状と、溶湯検出部23における光学系(レンズの作動距離、倍率、イメージセンサの画素ピッチ)およびラドル21との位置関係のデータ(いずれも既知の定数)とを用いてシミュレーションを行い、画像湯面高さHgに対応する溶湯量Mの理論式を導出することにより、関係式90が取得できる。
【0072】
制御部40は、給湯動作の度に、溶湯検出部23の湯面画像80から溶湯範囲81(画像湯面高さHg)を取得し、取得した画像湯面高さHgを関係式90に代入することによって、ラドル21に汲み上げられた溶湯5の溶湯量Mを算出する。制御部40は、溶湯検出部23による検出後、射出スリーブ3に対する注湯完了以前に、ラドル21内の溶湯量Mを取得するように構成されている。
【0073】
(ダイカストマシンの動作)
次に、図10を参照して、ダイカストマシン1による成形品の生産動作を説明する。
【0074】
ステップS1において、制御部40は、ラドル21により溶湯炉4から溶湯5を汲み上げるように給湯装置20を制御する。給湯装置20は、溶湯炉4の上方位置からラドル21を下降させ、溶湯炉4に収容された溶湯5内にラドル21を沈め、ラドル21内に溶湯5を収容させた後、ラドル21を上昇させて溶湯5内から引き上げるように動作する。
【0075】
ステップS2において、制御部40は、引き上げ動作中または引き上げ動作の後に、ラドル21を所定角度に傾斜させ、ラドル21内の余剰の溶湯5を溶湯炉4内に戻す湯切り動作を行うように、給湯装置20を制御する。
【0076】
ステップS3において、制御部40は、ラドル21を水平状態に戻し、溶湯検出部23による所定の検出高さ位置にラドル21が移動するように、給湯装置20を制御する。ラドル21は、溶湯炉4の直上で、溶湯検出部23に対して図3に示した位置に配置される。
【0077】
ステップS4において、制御部40は、溶湯5の検出を実施するように、溶湯検出部23を制御する。第1実施形態では、溶湯検出部23により湯面画像80が取得される。
【0078】
ステップS5aにおいて、制御部40は、上述した溶湯量の取得処理を実施するとともに、ステップS5bにおいて、注湯動作を開始するよう給湯装置20を制御する。給湯装置20は、溶湯炉4の上方位置から射出スリーブ3の給湯口3aの上方位置までラドル21を移動させ、ラドル21を所定の注湯角度まで傾斜させることにより、給湯口3a内に溶湯5を注湯するように動作する。
【0079】
ステップS6において、注湯動作が完了する。このステップS6以前に、ステップS5aによる溶湯量の取得処理が終了する。ステップS7において、制御部40は、射出工程を開始するように、射出装置10を制御する。射出工程については、後述する。
【0080】
また、制御部40は、ステップS8において、ラドル21を清掃位置(図示せず)に移動するよう給湯装置20を制御し、ステップS9において、エアブローなどによりラドル21内部の清掃を行うように給湯装置20を制御する。制御部40は、ステップS10において、ラドル底部に残留する溶湯5を測定させる。ラドル底部に残留する溶湯5の測定は、溶湯検出部23により実施される。制御部40は、ステップS11において、ラドル底部が清浄であるか否かを判断し、清浄であれば次サイクルの注湯動作のためステップS1に処理を戻す。ラドル底部が清浄でない場合、制御部40は、ステップS12において報知部44による報知処理を行い、ステップS9に処理を戻す。
【0081】
〈射出工程〉
図11に示すように、ステップS7の射出工程では、射出スリーブ3内の射出開始位置P0にあるプランジャ11を前進限P3まで前進させることによって、射出スリーブ3内の溶湯5が金型2のキャビティCへ射出される。射出工程には、プランジャ11の位置に応じて低速射出工程、高速射出工程、増圧工程などの各工程が実行される。射出工程は、さらに別の工程を含みうる。射出工程の開始時に、制御部40は、ステップS5aで取得した溶湯量M(すなわち、射出スリーブ3内へ供給された溶湯量)に基づいて、これらの各工程の切替位置を設定する。つまり、高速射出工程開始位置P1と、増圧工程開始位置P2とが、溶湯量Mに基づいて設定される。これにより、各工程の切替位置が、溶湯量Mに応じた最適な位置に設定される。
【0082】
切替位置の設定後、制御部40は、低速射出工程、高速射出工程および増圧工程をそれぞれ実施するように、射出装置10を制御する。これにより、キャビティC内に溶湯5が充填され、凝固する。キャビティC内で凝固した金属が、成形品となる。
【0083】
ステップS7の射出工程の後、図10のステップS13において、制御部40は、型締装置30を制御して型開きを行う。これにより、成形品が取り出される。ステップS14において、制御部40は、型締装置30を制御して型閉じおよび型締を行う。以上の各ステップが終了すると、制御部40は処理をステップS1に戻し、次の生産サイクルを開始する。
【0084】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態の効果について説明する。
【0085】
第1実施形態では、上記のように、射出スリーブ3内への注湯前のラドル21内に汲み上げられた溶湯5を検出する溶湯検出部23と、溶湯検出部23の検出結果に基づき、ラドル21内の溶湯量Mを取得する制御部40と、を設ける。これにより、射出スリーブ3内への注湯前に、溶湯炉4からラドル21内に汲み上げられた溶湯量Mを取得できる。ラドル21内に溶湯5が保持された状態で溶湯量Mを取得できるので、射出スリーブ3への注湯後には待機時間が発生せず、速やかに射出工程を開始することができる。なお、ラドル21内では、射出スリーブ3内と比べて溶湯5の表面積が小さくなり、汲み上げ時のラドル21と溶湯炉4内の溶湯5との接触によりラドル21自体の温度も溶湯温度に近づくため、射出スリーブ3内と比べて溶湯5の温度低下速度は非常に小さい。また、射出スリーブ3内の湯面面積と比べて、ラドル21内の湯面面積が小さくなるため、ラドル21内で湯面5aに波が生じても、速やかに波が減衰する。そのため、溶湯温度低下を抑制しつつ、速やかに溶湯検出ができる。以上により、射出スリーブ3内の溶湯5の温度低下を抑制しつつ射出スリーブ3への給湯量を測定することができる。
【0086】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部40は、溶湯検出部23による検出後、射出スリーブ3に対する注湯完了以前に、ラドル21内の溶湯量Mを取得するように構成されている。これにより、注湯が完了するタイミングまでに、射出スリーブ3に供給される溶湯5の供給量(すなわち、ラドル21内の溶湯量M)を確実に取得できる。その結果、注湯後の待機時間を発生させることなく、注湯が完了した直後に、得られた溶湯量Mを用いて射出装置10の射出工程を開始することができる。これにより、溶湯温度の低下を効果的に抑制でき、成形品の品質および生産効率を向上させることができる。
【0087】
また、第1実施形態では、上記のように、溶湯検出部23は、溶湯炉4の上方位置に設けられ、汲み上げ時に溶湯炉4から引き上げられたラドル21内の溶湯5を検出する。これにより、給湯動作の初期に、溶湯炉4から溶湯5を汲み上げた際のラドル21内の溶湯5を検出できる。そのため、溶湯5を検出してから、射出スリーブ3に注湯するまでの時間を、最大限確保できる。ここで、ダイカストマシン1による鋳造サイクルタイムが短くなるほど生産効率が向上することから、制御部40が溶湯量Mを算出するための演算処理に割り当て可能な時間は、短時間となる場合がある。上記構成によれば、検出結果を取得して制御部40が溶湯量Mを算出するまでに十分な時間余裕を確保できるので、待機時間の発生を回避して、高品質、高生産効率での成形品の生産が可能となる。
【0088】
また、第1実施形態では、上記のように、溶湯検出部23は、溶湯5を検出するセンサ61と、センサ61を内部に収容する筐体62と、筐体62内に冷媒66を供給する冷媒配管63とを含む。これにより、溶湯検出部23のセンサ61に対する、溶湯炉4からの熱の影響を効果的に遮断できる。その結果、溶湯検出部23を溶湯炉4の上方位置に配置する場合でも、熱の影響を受けることなく高精度な溶湯検出ができる。
【0089】
また、第1実施形態では、上記のように、溶湯検出部23は、溶湯炉4から射出スリーブ3までのラドル21の移動軌跡MLの前半部に属する位置において、ラドル21の上方から溶湯5を検知するように設けられている。これにより、溶湯炉4から射出スリーブ3までのラドル21の移動過程の早い段階で溶湯5の検出が行える。そのため、溶湯検出後、注湯完了までの間で、溶湯量Mの算出処理を行う時間を十分に確保できる。この結果、演算処理の完了待ちの待機時間が発生することを抑制し、効果的に溶湯5の温度低下を抑制しつつ、高い生産効率での成形品の生産が可能となる。
【0090】
また、第1実施形態では、上記のように、溶湯検出部23は、ラドル21内の溶湯5の湯面画像80を取得するイメージセンサ(センサ61)を含む。これにより、イメージセンサによって、ラドル21内の溶湯5(湯面5a)を容易に検出できる。ラドル21内の溶湯量Mに応じて湯面画像80中の溶湯範囲81が変化するので、得られた湯面画像80を画像解析することによって、ラドル21内の溶湯量Mを精度よく算出することができる。
【0091】
また、第1実施形態では、上記のように、湯面画像80における溶湯範囲81とラドル21内の溶湯量Mとの関係式90を記憶する記憶部41をさらに備え、制御部40は、取得された湯面画像80における溶湯範囲81と、関係式90とにより、ラドル21内の溶湯量Mを取得するように構成されている。これにより、湯面画像80における溶湯範囲81とラドル21内の溶湯量Mとの関係式90を、実験またはシミュレーションにより予め求めておくことにより、装置稼働時には、湯面画像80から求めた溶湯範囲81の値(画像湯面高さHg)を関係式90に当てはめるだけで容易に容易かつ高精度に溶湯量Mを取得することができる。
【0092】
[第2実施形態]
次に、図12図14を参照して、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、ラドル21の斜め上方から湯面画像80を取得するように構成した上記第1実施形態とは異なり、ラドル21の真上から湯面画像80を取得する例を説明する。第2実施形態において、上記第1実施形態と同様の構成については、上記第1実施形態と同じ符号を用いるとともに説明を省略する。
【0093】
第2実施形態では、図12に示すように、溶湯検出部23が、溶湯炉4(図2参照)の真上の位置に、撮像光軸23aが下向きとなるように設けられている。溶湯検出部23は、たとえば溶湯炉4の上方に配置された支持部材70aから下向きに吊り下げるように設置されている。溶湯検出部23は、溶湯炉4から引き上げられ略水平状態で配置されたラドル21内の溶湯5の湯面5aに対して、法線方向から湯面画像80を取得するように設けられる。つまり、溶湯検出部23の撮像光軸23aが、湯面5aと略直交するように、溶湯検出部23の設置角度が調整される。
【0094】
第2実施形態で取得される湯面画像80は、図13に示すように、ラドル21内の溶湯5の湯面5aを平面的に撮影したものとなる。制御部40は、2値化処理後の湯面画像80aから、溶湯5が写る溶湯範囲81を取得する。この場合、溶湯範囲81は、画像中の湯面面積A(画像中の湯面5aの部分(白色部分)の画素数)である。ラドル21内の溶湯5の量が多いほど、画像中の湯面5aの領域が拡大することから、湯面面積Aは、ラドル21内の溶湯量の指標となる。
【0095】
図14に、湯面面積Aと、対応する溶湯量Mとをプロットしたグラフ92を示す。グラフ92は、縦軸が湯面面積(画素数)であり、横軸が溶湯量(g)である。グラフ92において、プロットされた各点が実測値である。
【0096】
グラフ92のプロットから、たとえば線形近似により、関係式90が取得できる。図8のグラフ93に示したように、グラフ92における溶湯量の常用範囲付近におけるプロットから、関係式90を表す近似直線を決定できる。関係式90は、下式(2)で示される。
溶湯量M = a×A+b ・・・(2)
傾きaおよび切片bが、近似により取得される定数である。Aが、湯面画像80から取得された湯面面積である。関係式90は、図9に示した3Dデータ94を用いたシミュレーションによっても取得できる。
【0097】
制御部40は、給湯動作の度に、溶湯検出部23の湯面画像80から溶湯範囲81(湯面面積A)を取得し、取得した値を関係式90に代入することによって、ラドル21に汲み上げられた溶湯5の溶湯量Mを算出する。
【0098】
第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。また、第2実施形態の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0099】
[第3実施形態]
次に、図15図17を参照して、第3実施形態について説明する。第3実施形態では、溶湯検出部がイメージセンサ(カメラ)を含むように構成した上記第1および第2実施形態とは異なり、溶湯検出部が変位センサを含む例を説明する。第3実施形態において、上記第1実施形態と同様の構成については、上記第1実施形態と同じ符号を用いるとともに説明を省略する。
【0100】
図15に示すように、第3実施形態では、溶湯検出部23が備えるセンサ111は、ラドル21内の溶湯5の湯面高さを測定する変位センサである。変位センサは、光学センサ、超音波センサ、磁歪センサなど、どのような検出方式のセンサであってもよい。センサ111は、ラドル21内の溶湯5を、湯面5aから離れた位置から非接触で検出する。
【0101】
第3実施形態では、溶湯検出部23は、アーム51eに設けられ、ラドル21の上方から溶湯5を検出するように構成されている。溶湯検出部23は、ブラケット112を介してアーム51eに取り付けられている。このため、第3実施形態の溶湯検出部23は、ラドル移動機構22によって、アーム51eの端部に支持されたラドル21と一体的に移動される。溶湯検出部23は、ラドル21を保持するアーム51eに取り付けられているため、溶湯検出部23とラドル21との距離は一定に維持される。溶湯検出部23の検出方向は、アーム51eの長手方向に沿ってラドル21に向かう方向に設定されている。
【0102】
溶湯検出部23による溶湯5の検出時には、アーム51eが上下方向に沿う姿勢とされ、ラドル21は水平状態とされるように、ラドル移動機構22が制御される。この結果、溶湯検出部23は、図12の例と同様に、湯面5aに対して垂直方向から溶湯5を検出する。第3実施形態では、溶湯検出部23がラドル21とともに移動するため、溶湯5の検出タイミング(検出位置)は特に限定されない。たとえば図2に示したように、溶湯検出部23は、溶湯5の汲み上げ時に溶湯炉4から引き上げられたラドル21内の溶湯5を検出してもよいし、ラドル21の移動軌跡MLの途中で検出してもよい。溶湯検出部23は、移動軌跡MLに沿ったラドル21の移動中に検出してもよい。
【0103】
〈溶湯量の取得〉
第3実施形態では、記憶部41(図6参照)は、予め、ラドル21内の湯面高さとラドル21内の溶湯量Mとの関係式90を記憶している。制御部40は、検出された湯面高さと、関係式90とにより、ラドル21内の溶湯量Mを取得するように構成されている。なお、溶湯検出部23が湯面画像80を取得しない構成においては、図6に示した画像処理部42を設けなくてもよく、制御部40が溶湯検出部23の検出結果を取得すればよい。
【0104】
たとえばセンサ111は、1次元変位センサである。図16に示すように、センサ111は、センサ111からラドル21内の溶湯5の湯面5aまでの距離Lsを測定する。溶湯検出前に予め、空の状態のラドル21の内底面までの距離H0(一定値)が記憶部41に記憶される。これにより、ラドル21内の溶湯5の湯面高さHが、H=H0-Lsとして取得される。湯面高さHは、ラドル21の内底面から湯面5aまでの距離である。図16のグラフ121に示すように、湯面高さHの増大に応じて、溶湯量Mが増大する。上記第1実施形態と同様に、湯面高さHの測定値に応じた溶湯量Mが、実験的にまたはシミュレーションにより取得され、湯面高さHと溶湯量Mとの近似式が関係式90として記憶部41に記憶される。
【0105】
図17に示すように、湯面高さは、ラドル21の上端面から湯面5aまでの距離(L)としてもよい。記憶部41には、予め、センサ111からラドル21の上端面までの距離L0(一定値)が記憶される。これにより、ラドル21内の溶湯5の湯面高さLが、L=Ls-L0として取得される。図17のグラフ122に示すように、湯面高さLの増大に応じて、溶湯量Mが減少する。湯面高さLの測定値に応じた溶湯量Mが、実験的にまたはシミュレーションにより取得され、湯面高さLと溶湯量Mとの近似式が関係式90として記憶部41に記憶される。
【0106】
以上のような構成により、制御部40は、給湯動作の度に、溶湯検出部23から湯面高さHまたはLを取得し、取得した値を関係式90に代入することによって、ラドル21に汲み上げられた溶湯5の溶湯量Mを算出する。
【0107】
第3実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0108】
(第3実施形態の効果)
第3実施形態の効果について説明する。
【0109】
第3実施形態では、上記第1実施形態と同様に、射出スリーブ3内への注湯前のラドル21内に汲み上げられた溶湯5を検出する溶湯検出部23と、溶湯検出部23の検出結果に基づき、ラドル21内の溶湯量Mを取得する制御部40とを設けることにより、射出スリーブ3内の溶湯5の温度低下を抑制しつつ射出スリーブ3への給湯量を測定することができる。
【0110】
また、第3実施形態では、上記のように、ラドル移動機構22は、ラドル21を保持するアーム51eを含み、溶湯検出部23は、アーム51eに設けられ、ラドル21の上方から溶湯5を検出する。これにより、ラドル21の移動に伴って溶湯検出部23も移動させることができるので、溶湯炉4から射出スリーブ3までのラドル21の移動軌跡ML(図1参照)における任意の位置およびタイミングで溶湯検出が行える。そのため、溶湯5の供給動作に応じて、溶湯検出の位置およびタイミングを容易に最適化できる。
【0111】
また、第3実施形態では、上記のように、溶湯検出部23は、ラドル21内の溶湯5の湯面高さ(HまたはL)を測定する変位センサ(センサ111)を含む。これにより、変位センサによって、ラドル21内の溶湯5を容易に検出できる。ラドル21内の溶湯量Mに応じて湯面高さ(HまたはL)が変化するので、得られた湯面高さ(HまたはL)から、ラドル21内の溶湯量Mを容易に算出することができる。
【0112】
また、第3実施形態では、上記のように、給湯装置20が、ラドル21内の湯面高さ(HまたはL)と、ラドル21内の溶湯量Mとの関係式90を記憶する記憶部41を備え、制御部40は、検出された湯面高さ(HまたはL)と、関係式90とにより、ラドル21内の溶湯量Mを取得するように構成されている。これにより、変位センサの測定値(湯面高さH、L)とラドル21内の溶湯量Mとの関係式90を、実験またはシミュレーションにより予め求めておくことにより、装置稼働時には、変位センサの測定値を関係式90に当てはめるだけの処理負荷の小さい演算処理で迅速かつ高精度に溶湯量Mを取得することができる。
【0113】
第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0114】
[第4実施形態]
次に、図15図18および図19を参照して、第4実施形態について説明する。第4実施形態では、溶湯検出部が1次元変位センサを含むように構成した上記第3実施形態とは異なり、溶湯検出部が2次元変位センサを含む例を説明する。第4実施形態において、上記第3実施形態と同様の構成については、上記第3実施形態と同じ符号を用いるとともに説明を省略する。
【0115】
図15に示すように、第4実施形態では、溶湯検出部23が備えるセンサ111は、ラドル21内の溶湯5の湯面幅を測定する変位センサである。第4実施形態では、センサ111は、2次元変位センサである。2次元変位センサは、たとえばレーザスキャン方式の変位センサや、イメージセンサでありうる。たとえばレーザスキャン方式の変位センサによって、図18の測定ライン123に沿った測定結果が、グラフ124である。グラフ124の縦軸がセンサ111からの距離Ls(図16図17参照)であり、横軸が測定ライン123に沿った位置である。空の状態のラドル内面の測定結果(図示せず)と比較すると、湯面5aの領域で距離Lsが略一定になるので、ラドル内面と湯面5aとの境界位置B1、B2が検出できる。境界位置B1と境界位置B2との間の距離が、湯面幅Wとなる。制御部40は、センサ111の測定結果に基づいて、ラドル21内の溶湯5の湯面5aにおける湯面幅Wを取得する。なお、湯面5aの幅は、図示したものに限定されず、どの方向の幅を測定してもよい。
【0116】
図19のグラフ125に示すように、湯面幅Wの増大に応じて、溶湯量Mが増大する。上記第3実施形態と同様に、湯面幅Wの測定値に応じた溶湯量Mが、実験的にまたはシミュレーションにより取得され、湯面幅Wと溶湯量Mとの近似式が関係式90として記憶部41に記憶される。
【0117】
このように、第4実施形態では、記憶部41(図6参照)は、予め、ラドル21内の湯面幅Wとラドル21内の溶湯量Mとの関係式90を記憶している。制御部40は、検出された湯面幅Wと、関係式90とにより、ラドル21内の溶湯量Mを取得するように構成されている。
【0118】
第4実施形態のその他の構成は、上記第3実施形態と同様である。
【0119】
(第4実施形態の効果)
第4実施形態の効果について説明する。
【0120】
第4実施形態では、上記第3実施形態と同様に、射出スリーブ3内の溶湯5の温度低下を抑制しつつ射出スリーブ3への給湯量を測定することができる。
【0121】
また、第4実施形態では、上記のように、溶湯検出部23は、ラドル21内の溶湯5の湯面幅Wを測定する変位センサ(センサ111)を含む。これにより、変位センサによって、ラドル21内の溶湯5を容易に検出できる。ラドル21内の溶湯量Mに応じて湯面幅Wが変化するので、得られた湯面幅Wから、ラドル21内の溶湯量Mを容易に算出することができる。
【0122】
また、第4実施形態では、上記のように、給湯装置20が、ラドル21内の湯面幅Wとラドル21内の溶湯量Mとの関係式90を記憶する記憶部41を備え、制御部40は、検出された湯面幅Wと、関係式90とにより、ラドル21内の溶湯量Mを取得するように構成されている。これにより、変位センサの測定値(湯面幅W)とラドル21内の溶湯量Mとの関係式90を、実験またはシミュレーションにより予め求めておくことにより、装置稼働時には、変位センサの測定値を関係式90に当てはめるだけの処理負荷の小さい演算処理で迅速かつ高精度に溶湯量Mを取得することができる。
【0123】
第4実施形態のその他の効果は、上記第3実施形態と同様である。
【0124】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0125】
たとえば、上記第1~第4実施形態では、ダイカストマシン1を横型に構成した例を示したが本発明はこれに限られない。本発明では、ダイカストマシンを縦型に構成してもよい。
【0126】
また、上記第1~第4実施形態では、ダイカストマシン1の全体を制御を行う制御部40が、溶湯量Mの算出を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ダイカストマシン1の全体を制御する制御部と、給湯装置20を制御する制御部とを別個に設けて、いずれかの制御部によって溶湯量を取得するように構成してもよい。
【0127】
また、上記第1および第2実施形態では、溶湯検出部23を溶湯炉4の上方位置に配置した例を示し、上記第3および第4実施形態では、溶湯検出部23をアーム51eに設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、溶湯検出部23は、溶湯炉4から射出スリーブ3までのラドル21の移動軌跡MLに対して上方となる位置に配置されていればよく、上記した位置に限られない。たとえば、図20に示す例では、溶湯検出部23は、射出スリーブ3の給湯口3a付近の上方位置に設けられている。この場合、たとえば溶湯検出部23は、型締装置30のフレームに対してブラケットなどを介して取り付けられ、検出方向が下向きとなるように配置される。溶湯検出部23は、給湯口3aに注湯する直前のラドル21内の溶湯5を検出する。
【0128】
また、上記第3実施形態では、センサ111が1次元変位センサである例を示し、上記第4実施形態ではセンサ111が2次元変位センサである例を示したが、本発明はこれに限られない。センサ111は、3次元変位センサであってもよい。3次元変位センサは、たとえば3Dレーザスキャン方式の変位計や、複数のイメージセンサを備えたステレオカメラでありうる。この場合、センサ111は、ラドル21内の3次元形状を取得する。溶湯検出前に予め、空の状態のラドル21の内部の3次元形状データがセンサ111により取得され、記憶部41に記憶される。ラドル21内に溶湯5が汲み上げられた状態では、ラドル21の内部の湯面5aまでの3次元形状データが取得される。制御部40は、溶湯汲み上げ後の3次元形状データVsと、空の状態のラドル21の3次元形状データV0との差分により、溶湯量Vを取得する(V=V0-Vs)。この場合の溶湯量Vは、溶湯5の体積として取得される。この変形例では、3次元形状データの差分によって溶湯量Vが取得できるので、関係式90を取得しておく必要がない。
【0129】
また、上記第1実施形態では、ラドル21内の溶湯量に基づいて、射出装置10による射出工程の制御を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば制御部40は、溶湯量を取得する度に、取得した溶湯量と、ラドル21の傾斜角によって決定される溶湯量の理論値との差分を求め、給湯装置20の動作状態の判定を行ってもよい。たとえば理論値からの乖離が大きくなる傾向や、溶湯量のばらつきが大きくなる傾向が認められる場合などに、給湯装置20の消耗品の交換等のメンテナンスを行うことを報知部44によりユーザに報知してもよい。これにより、ユーザは、不良品の発生や給湯装置20の不具合の発生の予兆を事前に察知できる。また、たとえば、制御部40は、測定された溶湯量と理論値との差分を用いて、次の溶湯汲み上げ時のラドル21の傾斜角の設定値を補正することによって、汲み上げられる溶湯量を理論値に近づけるフィードバック制御を実行してもよい。
【0130】
また、上記第1および第2実施形態では、イメージセンサ(カメラ)を含む溶湯検出部23によって、ラドル21内の湯面画像80を撮像する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図2に示したように溶湯検出部23が溶湯炉4の上方位置に配置される場合、ラドル21が所定の検出位置に配置されていない状況では、溶湯炉4の内部の画像を撮像できる。そこで、たとえば制御部40は、溶湯炉4内の湯面高さを、撮像画像に基づいて取得してもよい。また、制御部40は、給湯装置20の稼働中の撮像画像を定期的または動画像として取得し、得られた撮像画像に基づいて、給湯動作中のラドル21および溶湯炉4の状態監視を行ってもよい。制御部40は、得られた撮像画像に対して画像解析を行うことにより、ラドル21または溶湯炉4に異常が生じているか否かを判定し、異常が生じた場合にユーザに報知してもよい。
【0131】
また、図20に示した射出スリーブ3の給湯口3a付近の上方位置に溶湯検出部23が配置される構成の場合、給湯口3aを含む周辺領域の撮像画像を取得できる。制御部40は、撮像画像に基づいて、注湯時における給湯口3aの外部への溶湯5の湯こぼれの有無を判定してもよい。制御部40は、たとえば湯こぼれが検出された場合に、注湯時のラドル21の傾斜速度が過大であると判断できるため、ラドル21の傾斜速度を低減するように制御する。これにより、湯こぼれが発生しない範囲で極力短時間での注湯が可能となるように注湯動作を制御できる。また、たとえば制御部40は、給湯口3aの内部にプランジャチップ11aが写り込むように射出装置10を制御し、撮像画像に基づいてプランジャチップ11aおよび射出スリーブ3の内壁面の摩耗状態を判定してもよい。
【符号の説明】
【0132】
1 ダイカストマシン
3 射出スリーブ
4 溶湯炉
5 溶湯
5a 湯面
10 射出装置
20 給湯装置
21 ラドル
22 ラドル移動機構
23 溶湯検出部
40 制御部
41 記憶部
51e アーム
61 センサ(イメージセンサ)
62 筐体
63 冷媒配管
66 冷媒
80、80a 湯面画像
81 溶湯範囲
111 センサ(変位センサ)
H、L 湯面高さ
M、V 溶湯量
ML 移動軌跡
W 湯面幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20