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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】産業用ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/06 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
B25J9/06 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020119165
(22)【出願日】2020-07-10
(65)【公開番号】P2022015959
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】栗林 保
(72)【発明者】
【氏名】風間 俊道
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/021833(WO,A1)
【文献】特開2012-035408(JP,A)
【文献】特開2015-036186(JP,A)
【文献】中国実用新案第206493523(CN,U)
【文献】特開2013-103330(JP,A)
【文献】特開2017-017355(JP,A)
【文献】国際公開第2016/084178(WO,A1)
【文献】中国実用新案第205415695(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/00-19/00
B29C 45/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平多関節型の産業用ロボットにおいて、
アームの一部を構成する中空状のアーム部と、モータ本体部および前記モータ本体部から水平方向に突出する出力軸を有し前記アーム部の内部に配置されるモータとを備え、
前記出力軸の軸方向は、上下方向に直交する前記アーム部の長手方向と一致しており、
前記アーム部は、前記アーム部の上面を構成する上壁部と、前記アーム部の下面を構成する下壁部と、上下方向と前記アーム部の長手方向とに直交する前記アーム部の短手方向における前記アーム部の側面を構成する2個の側壁部とを備え、
前記モータは、前記アーム部の短手方向における前記アーム部の中心位置に配置され、
少なくとも前記モータ本体部が配置される箇所では、前記上壁部の下面に、上側に向かって窪む上側凹部が形成されるとともに、前記下壁部の上面に、下側に向かって窪む下側凹部が形成され、
前記アーム部の長手方向において前記上側凹部が形成された箇所では、前記上壁部の、前記アーム部の短手方向の両端部の上下方向の厚さは、前記上壁部の、前記上側凹部が形成された部分の上下方向の厚さよりも厚くなっており、
前記アーム部の長手方向において前記下側凹部が形成された箇所では、前記下壁部の、前記アーム部の短手方向の両端部の上下方向の厚さは、前記下壁部の、前記下側凹部が形成された部分の上下方向の厚さよりも厚くなっていることを特徴とする産業用ロボット。
【請求項2】
前記アーム部の長手方向において前記上側凹部が形成された箇所では、前記上壁部の、前記アーム部の短手方向の両端部の上下方向の厚さは、互いに等しくなっており、
前記アーム部の長手方向において前記下側凹部が形成された箇所では、前記下壁部の、前記アーム部の短手方向の両端部の上下方向の厚さは、互いに等しくなっていることを特徴とする請求項1記載の産業用ロボット。
【請求項3】
前記アーム部の長手方向において前記上側凹部および前記下側凹部の少なくともいずれか一方が形成された範囲では、2個の前記側壁部の、前記アーム部の短手方向の厚さは、互いに等しくなっていることを特徴とする請求項1または2記載の産業用ロボット。
【請求項4】
前記モータは、前記アーム部の長手方向における前記アーム部の中間位置に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の産業用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平多関節型の産業用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウエハを搬送する水平多関節型の産業用ロボットが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の産業用ロボットは、半導体ウエハが搭載される2個のハンドと、2個のハンドが先端側に回動可能に連結されるアームと、アームの基端側が回動可能に連結される本体部とを備えている。アームは、本体部に基端側が回動可能に連結される第1アーム部と、第1アーム部の先端側に基端側が回動可能に連結される第2アーム部と、第2アーム部の先端側に基端側が回動可能に連結される第3アーム部とから構成されている。第3アーム部の先端側には、2個のハンドが回動可能に連結されている。
【0003】
また、特許文献1に記載の産業用ロボットは、第2アーム部に対して第3アーム部を回動させる第3アーム部回動機構を備えている。第3アーム部回動機構は、中空状に形成される第2アーム部の内部に配置されるモータを備えている。モータは、モータ本体部と、モータ本体部から水平方向に突出する出力軸とを備えている。モータの出力軸の軸方向は、上下方向に直交する第2アーム部の長手方向と一致している。
【0004】
特許文献1に記載の産業用ロボットでは、第2アーム部は、第2アーム部の上面を構成する上壁部と、第2アーム部の下面を構成する下壁部と、上下方向とアーム部の長手方向とに直交するアーム部の短手方向における第2アーム部の側面を構成する2個の側壁部とを備えている。上壁部の下面には、上壁部とモータ本体部との干渉を防止するための凹部が形成され、下壁部の上面には、下壁部とモータ本体部との干渉を防止するための凹部が形成されている。そのため、この産業用ロボットでは、中空状の第2アーム部の内部に、アーム部の長手方向と出力軸の軸方向とが一致するようにモータが配置されていても、第2アーム部を薄型化すること(すなわち、上下方向で小型化すること)が可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-36186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の産業用ロボットでは、第2アーム部を薄型化するために、第2アーム部の上壁部および下壁部に凹部が形成されており、第2アーム部の上壁部および下壁部の、凹部が形成された部分の厚さ(上下方向の厚さ)が薄くなっている。そのため、この産業用ロボットでは、第2アーム部の強度が低下するおそれがある。また、第2アーム部の強度が低下すると、産業用ロボットの動作時に第2アーム部が変形して、第2アーム部の動作が不安定になるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、アームの一部を構成する中空状のアーム部の内部に、アーム部の長手方向と出力軸の軸方向とが一致するようにモータが配置されていても、アーム部を薄型化すること、および、アーム部の動作を安定させることが可能な産業用ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の産業用ロボットは、水平多関節型の産業用ロボットにおいて、アームの一部を構成する中空状のアーム部と、モータ本体部およびモータ本体部から水平方向に突出する出力軸を有しアーム部の内部に配置されるモータとを備え、出力軸の軸方向は、上下方向に直交するアーム部の長手方向と一致しており、アーム部は、アーム部の上面を構成する上壁部と、アーム部の下面を構成する下壁部と、上下方向とアーム部の長手方向とに直交するアーム部の短手方向におけるアーム部の側面を構成する2個の側壁部とを備え、モータは、アーム部の短手方向におけるアーム部の中心位置に配置され、少なくともモータ本体部が配置される箇所では、上壁部の下面に、上側に向かって窪む上側凹部が形成されるとともに、下壁部の上面に、下側に向かって窪む下側凹部が形成され、アーム部の長手方向において上側凹部が形成された箇所では、上壁部の、アーム部の短手方向の両端部の上下方向の厚さは、上壁部の、上側凹部が形成された部分の上下方向の厚さよりも厚くなっており、アーム部の長手方向において下側凹部が形成された箇所では、下壁部の、アーム部の短手方向の両端部の上下方向の厚さは、下壁部の、下側凹部が形成された部分の上下方向の厚さよりも厚くなっていることを特徴とする。
【0009】
本発明の産業用ロボットでは、少なくともモータ本体部が配置される箇所において、上壁部の下面に、上側に向かって窪む上側凹部が形成されるとともに、下壁部の上面に、下側に向かって窪む下側凹部が形成されている。そのため、本発明では、中空状のアーム部の内部に、アーム部の長手方向と出力軸の軸方向とが一致するようにモータが配置されていても、アーム部を薄型化することが可能になる。
【0010】
また、本発明では、モータは、アーム部の短手方向におけるアーム部の中心位置に配置されている。また、本発明では、アーム部の長手方向において上側凹部が形成された箇所では、上壁部の、アーム部の短手方向の両端部の上下方向の厚さは、上壁部の、上側凹部が形成された部分の上下方向の厚さよりも厚くなり、かつ、アーム部の長手方向において下側凹部が形成された箇所では、下壁部の、アーム部の短手方向の両端部の上下方向の厚さは、下壁部の、下側凹部が形成された部分の上下方向の厚さよりも厚くなっている。
【0011】
そのため、本発明では、上壁部に上側凹部が形成され、かつ、下壁部に下側凹部が形成されていても、アーム部の長手方向において上側凹部、下側凹部が形成された箇所では、上壁部と2個の側壁部との境界部分の強度、および、下壁部と2個の側壁部との境界部分の強度を確保することが可能になるとともに、アーム部の短手方向におけるアーム部の強度のバランスを保つことが可能になる。
【0012】
したがって、本発明では、アーム部を薄型化するために、上壁部に上側凹部が形成され、かつ、下壁部に下側凹部が形成されていても、産業用ロボットが動作したときのアーム部の変形を抑制することが可能になり、その結果、アーム部の動作を安定させることが可能になる。すなわち、本発明では、アームの一部を構成する中空状のアーム部の内部に、アーム部の長手方向と出力軸の軸方向とが一致するようにモータが配置されていても、アーム部を薄型化することが可能になるとともに、アーム部の動作を安定させることが可能になる。
【0013】
本発明において、アーム部の長手方向において上側凹部が形成された箇所では、上壁部の、アーム部の短手方向の両端部の上下方向の厚さは、互いに等しくなっており、アーム部の長手方向において下側凹部が形成された箇所では、下壁部の、アーム部の短手方向の両端部の上下方向の厚さは、互いに等しくなっていることが好ましい。このように構成すると、アーム部の長手方向において上側凹部、下側凹部が形成された箇所では、アーム部の短手方向におけるアーム部の強度のバランスを良くすることが可能になる。したがって、アーム部を薄型化するために、上壁部に上側凹部が形成され、かつ、下壁部に下側凹部が形成されていても、産業用ロボットが動作したときのアーム部の変形をより抑制することが可能になり、その結果、アーム部の動作をより安定させることが可能になる。
【0014】
本発明において、アーム部の長手方向において上側凹部および下側凹部の少なくともいずれか一方が形成された範囲では、2個の側壁部の、アーム部の短手方向の厚さは、互いに等しくなっていることが好ましい。このように構成すると、アーム部の長手方向において上側凹部、下側凹部が形成された箇所では、アーム部の短手方向におけるアーム部の強度のバランスを良くすることが可能になる。したがって、アーム部を薄型化するために、上壁部に上側凹部が形成され、かつ、下壁部に下側凹部が形成されていても、産業用ロボットが動作したときのアーム部の変形をより抑制することが可能になり、その結果、アーム部の動作をより安定させることが可能になる。
【0015】
本発明において、モータは、アーム部の長手方向におけるアーム部の中間位置に配置されていることが好ましい。このように構成すると、上壁部に上側凹部が形成され、かつ、下壁部に下側凹部が形成されていても、アーム部の長手方向におけるアーム部の強度のバランスを保つことが可能になる。また、アーム部の長手方向におけるアーム部内部の重量のバランスを良くすることが可能になる。したがって、アーム部を薄型化するために、上壁部に上側凹部が形成され、かつ、下壁部に下側凹部が形成されていても、産業用ロボットが動作したときのアーム部の変形をより抑制することが可能になり、その結果、アーム部の動作をより安定させることが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の産業用ロボットでは、アームの一部を構成する中空状のアーム部の内部に、アーム部の長手方向と出力軸の軸方向とが一致するようにモータが配置されていても、アーム部を薄型化することが可能になるとともに、アーム部の動作を安定させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態にかかる産業用ロボットの側面図である。
図2図1に示す産業用ロボットの平面図である。
図3図1に示すアーム部の内部の構成を説明するための図である。
図4図3のE部の構成を説明するための図である。
図5図4のF-F方向からアーム部の内部の構成を示す図である
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
(産業用ロボットの概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる産業用ロボット1の側面図である。図2は、図1に示す産業用ロボット1の平面図である。図3は、図1に示すアーム部11の内部の構成を説明するための図である。
【0020】
本形態の産業用ロボット1(以下、「ロボット1」とする。)は、搬送対象物である半導体ウエハ2を搬送するための水平多関節型のロボットであり、半導体製造システムに組み込まれて使用される。ロボット1は、半導体ウエハ2が搭載される2個のハンド4、5と、ハンド4、5が先端側に回動可能に連結されるとともに水平方向に動作するアーム6と、アーム6の基端側が回動可能に連結される本体部7とを備えている。
【0021】
アーム6は、3個のアーム部10~12によって構成されている。アーム部10の基端部は、本体部7に回動可能に連結されている。アーム部11の基端部は、アーム部10の先端部に回動可能に連結されている。アーム部12の基端部は、アーム部11の先端部に回動可能に連結されている。アーム部10~12は、上下方向を回動の軸方向として回動する。アーム部10~12は、中空状に形成されている。本体部7とアーム部10とアーム部11とアーム部12とは、上下方向において、下側からこの順番で配置されている。
【0022】
ハンド4、5は、上下方向から見たときの形状が略Y形状となるように形成されている。ハンド4、5の基端部は、アーム部12の先端部に回動可能に連結されている。ハンド4、5は、上下方向を回動の軸方向として回動する。ハンド4の基端部とハンド5の基端部とは上下方向で重なっている。本形態では、ハンド4が上側に配置され、ハンド5が下側に配置されている。ハンド4、5は、アーム部12よりも上側に配置されている。
【0023】
本体部7は、筐体13と、アーム部10の基端部が回動可能に連結される柱状部材(図示省略)とを備えている。アーム部10の基端部は、柱状部材の上端部に回動可能に連結されている。筐体13の内部には、柱状部材を昇降させるアーム昇降機構(図示省略)が収納されている。アーム昇降機構は、柱状部材が筐体13に収容される位置と、柱状部材が筐体13から上側に突出する位置との間で、アーム6および柱状部材を昇降させる。
【0024】
また、ロボット1は、アーム部10、11を回動させてアーム部10とアーム部11とからなるアーム6の一部を伸縮させるアーム駆動機構と、アーム部11に対してアーム部12を回動させるアーム部回動機構15と、アーム部12に対してハンド4を回動させるハンド駆動機構(図示省略)と、アーム部12に対してハンド5を回動させるハンド駆動機構(図示省略)とを備えている。
【0025】
アーム駆動機構は、筐体13の内部に配置されるモータ(図示省略)、モータの動力を減速してアーム部10に伝達するための減速機(図示省略)、および、モータの動力を減速してアーム部11に伝達するための減速機17等を備えている。減速機17は、アーム部10とアーム部11とを繋ぐ関節部の一部を構成している(図3参照)。減速機17は、たとえば、径方向の中心に貫通孔が形成された中空状の中空波動歯車装置(ハーモニックドライブ(登録商標))である。ハンド駆動機構は、アーム部12の内部に配置されている。ハンド駆動機構は、モータ、および、モータの動力を減速してハンド4、5に伝達するための減速機等を備えている。
【0026】
アーム部回動機構15は、モータ20と、モータ20の動力を減速してアーム部12に伝達するための減速機21とを備えている。以下、アーム部11およびアーム部回動機構15の具体的な構成について説明する。
【0027】
(アーム部およびアーム部回動機構の構成)
図4は、図3のE部の構成を説明するための図である。図5は、図4のF-F方向からアーム部11の内部の構成を示す図である。
【0028】
アーム部11は、上下方向から見たときの形状が細長い長円形状となる箱状に形成されている。また、アーム部11の先端部とアーム部11の後端部とを除いたアーム部11の大半部分は、上下方向の厚さが薄い扁平な四角筒状に形成されている。以下では、説明の便宜上、上下方向に直交する方向のうちの、長円形状をなすアーム部11の長手方向(図3等のX方向)を「前後方向」とし、上下方向と前後方向とに直交するアーム部11の短手方向(図5等のY方向)を「左右方向」とする。また、以下の説明では、前後方向の一方側である図3等のX1方向側を「前」側とし、その反対側である図3等のX2方向側を「後ろ」側とする。本形態では、前側(X1方向側)がアーム部11の先端側となっており、後ろ側(X2方向側)がアーム部11の基端側となっている。
【0029】
アーム部回動機構15は、上述のように、モータ20と減速機21とを備えている。モータ20は、ステータ等を有するモータ本体部24と、モータ本体部24から突出する出力軸25とを備えている。モータ20は、アーム部11の内部に配置されている。また、モータ20は、アーム部11の内部に固定されている。具体的には、モータ20は、アーム部11の内部に固定されるモータ固定部材26に固定されている。すなわち、モータ20は、モータ固定部材26を介してアーム部11の内部に固定されている。なお、図5では、モータ固定部材26の図示を省略している。
【0030】
出力軸25は、モータ本体部24から水平方向に突出している。具体的には、出力軸25は、モータ本体部24から前側に突出しており、出力軸25の軸方向は、前後方向(すなわち、アーム部11の長手方向)と一致している。図5に示すように、モータ20は、左右方向(アーム部11の短手方向)におけるアーム部11の中心位置に配置されている。本形態では、モータ20の左右方向の中心とアーム部11の左右方向の中心とが左右方向において全く同じ位置に配置されている。なお、本明細書では、モータ20の左右方向の中心とアーム部11の左右方向の中心とが左右方向においてずれていても、そのずれ量が非常に小さい場合には、左右方向におけるアーム部11の中心位置にモータ20が配置されているものとする。
【0031】
図3に示すように、モータ20は、前後方向(アーム部11の長手方向)におけるアーム部11の中間位置に配置されている。具体的には、モータ20は、前後方向におけるアーム部11の略中心位置に配置されている。より具体的には、モータ本体部24の前端部とアーム部11の前後方向の中心とが前後方向において同じ位置に配置されており、モータ本体部24の前後方向の中心は、アーム部11の前後方向の中心よりも後ろ側に配置されている。
【0032】
減速機21は、アーム部11とアーム部12とを繋ぐ関節部の一部を構成している。減速機21は、たとえば、径方向の中心に貫通孔が形成された中空状の中空波動歯車装置(ハーモニックドライブ(登録商標))である。減速機21の入力軸には、かさ歯車27が固定されている。かさ歯車27は、カップリングおよび回転軸を介して出力軸25に取り付けられるかさ歯車28と噛み合っている。モータ20の動力は、かさ歯車27、28等を介して減速機21に伝達される。
【0033】
上述のように、アーム部11は、上下方向から見たときの形状が細長い長円形状となる箱状に形成されている。また、アーム部11の先端部とアーム部11の後端部とを除いたアーム部11の大半部分は、上下方向の厚さが薄い扁平な四角筒状に形成されている。また、アーム部11は、左右方向において対称な形状となっている。アーム部11は、上面に開口部が形成されるとともに下面の一部に開口部が形成されるアーム部本体30と、アーム部本体30の上面に形成される開口部の一部を塞ぐ上カバー31と、アーム部本体30の下面に形成される開口部の一部を塞ぐ下カバー32とを備えている。
【0034】
アーム部本体30の下面に形成される開口部は、アーム部本体30の前端部と後端部との2箇所に形成されている。アーム部本体30の下面の前端部の開口部と、アーム部本体30の下面の後端部の開口部との間の部分は、アーム部本体30の下面を構成する平板状の底面部30aとなっている。底面部30aは、底面部30aの厚さ方向と上下方向とが一致するように配置されている。また、図5に示すように、アーム部本体30は、アーム部本体30の左右方向の側面を構成する平板状の2個の側面部30bを備えている。側面部30bは、側面部30bの厚さ方向と左右方向とが一致するように配置されている。
【0035】
上カバー31は、薄板状に形成されている。上カバー31は、アーム部本体30に固定されている。上カバー31は、上カバー31の厚さ方向と上下方向とが一致するように配置されている。アーム部本体30の上面に形成される開口部の前端部は、減速機21によって塞がれている。上カバー31は、アーム部本体30の上面に形成される開口部の、減速機21で塞がれる部分を除いた箇所を塞いでいる。
【0036】
下カバー32は、略薄板状に形成されている。下カバー32は、アーム部本体30に固定されている。下カバー32は、下カバー32の厚さ方向と上下方向とが一致するように配置されている。下カバー32は、アーム部本体30の前端部に形成される開口部を塞いでいる。アーム部本体30の後端部に形成される開口部は、減速機17によって塞がれている。
【0037】
本形態では、上カバー31が、アーム部11の上面を構成する上壁部11aとなっている。また、本形態では、アーム部本体30の底面部30aと下カバー32とによって、アーム部11の下面を構成する下壁部11bが構成されている。また、本形態では、アーム部本体30の側面部30bが、左右方向におけるアーム部11の側面を構成する2個の側壁部11cとなっている。
【0038】
図4等に示すように、少なくともモータ本体部24が配置される箇所では、上カバー31の下面に、上側に向かって窪む上側凹部31aが形成され、底面部30aの上面に、下側に向かって窪む下側凹部30cが形成されている。すなわち、少なくともモータ本体部24が配置される箇所では、上壁部11aの下面に、上側に向かって窪む上側凹部31aが形成され、下壁部11bの上面に、下側に向かって窪む下側凹部30cが形成されている。上側凹部31aは、上壁部11aとモータ本体部24との干渉を防止するために形成され、下側凹部30cは、下壁部11bとモータ本体部24との干渉を防止するために形成されている。
【0039】
上側凹部31aおよび下側凹部30cは、長方形状の窪みである。上下方向から見たときに、上側凹部31aの外形を形成する4つの辺は、前後方向または左右方向と平行になっている。同様に、上下方向から見たときに、下側凹部30cの外形を形成する4つの辺は、前後方向または左右方向と平行になっている。左右方向において、上側凹部31aの左右方向の中心とアーム部11の左右方向の中心とは一致している。また、左右方向において、下側凹部30cの左右方向の中心とアーム部11の左右方向の中心とは一致している。
【0040】
上側凹部31aの左右方向の幅および下側凹部30cの左右方向の幅は、モータ本体部24の左右方向の幅よりも広くなっている。また、上側凹部31aの左右方向の幅および下側凹部30cの左右方向の幅は、上カバー31の左右方向の幅、および、2個の側壁部11cの左右方向の間隔よりも狭くなっている。下側凹部30cの左右方向の幅は、上側凹部31aの左右方向の幅よりも広くなっている。
【0041】
上側凹部31aの前後方向の幅および下側凹部30cの前後方向の幅は、モータ本体部24の前後方向の長さよりも広くなっている。また、下側凹部30cの前後方向の幅は、上側凹部31aの前後方向の幅よりも広くなっている。上側凹部31aの前端および下側凹部30cの前端は、モータ本体部24の前端よりも前側に配置され、上側凹部31aの後端および下側凹部30cの後端は、モータ本体部24の後端よりも後ろ側に配置されている。また、上側凹部31aの前端は、下側凹部30cの前端よりも前側に配置されている。
【0042】
前後方向において上側凹部31aが形成された箇所では、上壁部11aの左右方向の両端部(すなわち、上カバー31の左右方向の両端部)の上下方向の厚さ(肉厚)t1、t2(図5参照)は、上壁部11aの、上側凹部31aが形成された部分の上下方向の厚さt3(図5参照)よりも厚くなっている。また、上述のように、アーム部11は、左右方向において対称な形状となっており、前後方向において上側凹部31aが形成された箇所では、上壁部11aの左右方向の両端部の上下方向の厚さt1、t2は、互いに等しくなっている。すなわち、前後方向において上側凹部31aが形成された箇所では、上壁部11aの左右方向の一端部の上下方向の厚さt1と、上壁部11aの左右方向の他端部の上下方向の厚さt2とが等しくなっている。
【0043】
同様に、前後方向において下側凹部30cが形成された箇所では、下壁部11bの左右方向の両端部(すなわち、底面部30aの左右方向の両端部)の上下方向の厚さt4、t5(図5参照)は、下壁部11bの、下側凹部30cが形成された部分の上下方向の厚さt6(図5参照)よりも厚くなっている。また、前後方向において下側凹部30cが形成された箇所では、下壁部11bの左右方向の両端部の上下方向の厚さt4、t5は、互いに等しくなっている。すなわち、前後方向において下側凹部30cが形成された箇所では、下壁部11bの左右方向の一端部の上下方向の厚さt4と、下壁部11bの左右方向の他端部の上下方向の厚さt5とが等しくなっている。
【0044】
また、前後方向において上側凹部31aおよび下側凹部30cの少なくともいずれか一方が形成された範囲では、2個の側壁部11c(すなわち、側面部30b)の左右方向の厚さt7、t8(図5参照)は、互いに等しくなっている。すなわち、前後方向における上側凹部31aの前端と下側凹部30cの後端との間の範囲では、一方の側壁部11cの左右方向の厚さt7と、他方の側壁部11cの左右方向の厚さt8とが等しくなっている。
【0045】
本形態では、厚さt3と厚さt6とが等しくなっている。厚さt3、t6は、たとえば、3(mm)程度である。また、厚さt4、t5は、厚さt1、t2よりも厚くなっている。また、厚さt4、t5と厚さt7、t8とが等しくなっている。
【0046】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、少なくともモータ本体部24が配置される箇所において、上壁部11aの下面に、上側に向かって窪む上側凹部31aが形成され、下壁部11bの上面に、下側に向かって窪む下側凹部30cが形成されている。そのため、本形態では、中空状のアーム部11の内部に、出力軸25の軸方向と前後方向とが一致するようにモータ20が配置されていても、アーム部11を薄型化することが可能になる。
【0047】
本形態では、前後方向(アーム部11の長手方向)において上側凹部31aが形成された箇所では、上壁部11aの左右方向の両端部の上下方向の厚さt1、t2は、上壁部11aの、上側凹部31aが形成された部分の上下方向の厚さt3よりも厚くなっている。また、本形態では、前後方向において下側凹部30cが形成された箇所では、下壁部11bの、左右方向の両端部の上下方向の厚さt4、t5は、下壁部11bの、下側凹部30cが形成された部分の上下方向の厚さt6よりも厚くなっている。すなわち、本形態では、上壁部11aに上側凹部31aが形成され、かつ、下壁部11bに下側凹部30cが形成されていても、前後方向において上側凹部31a、下側凹部30cが形成された箇所では、図5に示すように、アーム部11の左右方向の両端部に、四角溝状(コの字状)の厚肉部分が形成されている。
【0048】
そのため、本形態では、上壁部11aに上側凹部31aが形成され、かつ、下壁部11bに下側凹部30cが形成されていても、前後方向において上側凹部31a、下側凹部30cが形成された箇所では、上壁部11aと2個の側壁部11cとの境界部分の強度、および、下壁部11bと2個の側壁部11cとの境界部分の強度を確保することが可能になるとともに、左右方向におけるアーム部11の強度のバランスを保つことが可能になる。したがって、本形態では、アーム部11を薄型化するために、上壁部11aに上側凹部31aが形成され、かつ、下壁部11bに下側凹部30cが形成されていても、ロボット1が動作したときのアーム部11の変形を抑制することが可能になり、その結果、アーム部11の動作を安定させることが可能になる。
【0049】
本形態では、前後方向において上側凹部31aが形成された箇所では、上壁部11aの左右方向の両端部の上下方向の厚さt1、t2が互いに等しくなっており、前後方向において下側凹部30cが形成された箇所では、下壁部11bの左右方向の両端部の上下方向の厚さt4、t5が互いに等しくなっている。また、本形態では、前後方向において上側凹部31aおよび下側凹部30cの少なくともいずれか一方が形成された範囲では、2個の側壁部11cの左右方向の厚さt7、t8は、互いに等しくなっている。
【0050】
そのため、本形態では、前後方向において上側凹部31a、下側凹部30cが形成された箇所では、左右方向におけるアーム部11の強度のバランスを良くすることが可能になる。したがって、本形態では、上壁部11aに上側凹部31aが形成され、かつ、下壁部11bに下側凹部30cが形成されていても、ロボット1が動作したときのアーム部11の変形をより抑制することが可能になり、その結果、アーム部11の動作をより安定させることが可能になる。
【0051】
本形態では、モータ20は、前後方向におけるアーム部11の略中心位置に配置されている。そのため、本形態では、上壁部11aに上側凹部31aが形成され、かつ、下壁部11bに下側凹部30cが形成されていても、前後方向(アーム部11の長手方向)におけるアーム部11の強度のバランスを保つことが可能になるとともに、前後方向におけるアーム部11の内部の重量のバランスを良くすることが可能になる。したがって、本形態では、上壁部11aに上側凹部31aが形成され、かつ、下壁部11bに下側凹部30cが形成されていても、ロボット1が動作したときのアーム部11の変形をより抑制することが可能になり、その結果、アーム部11の動作をより安定させることが可能になる。
【0052】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0053】
上述した形態において、上壁部11aの左右方向の一端部の上下方向の厚さt1と、上壁部11aの左右方向の他端部の上下方向の厚さt2とが異なっていても良い。また、上述した形態において、下壁部11bの左右方向の一端部の上下方向の厚さt4と、下壁部11bの左右方向の他端部の上下方向の厚さt5とが異なっていても良い。さらに、上述した形態において、一方の側壁部11cの左右方向の厚さt7と、他方の側壁部11cの左右方向の厚さt8とが異なっていても良い。
【0054】
上述した形態において、モータ20が前後方向におけるアーム部11の中間位置に配置されているのであれば、モータ本体部24の前後方向の中心とアーム部11の前後方向の中心とが前後方向において同じ位置に配置されていても良いし、モータ本体部24の前後方向の中心がアーム部11の前後方向の中心より前側に配置されていても良い。
【0055】
上述した形態において、アーム部12に代えて、アーム部11の先端部に1個のハンドが連結されていても良い。この場合には、ロボット1は、アーム部11に対してハンドを回動させるハンド駆動機構を備えており、このハンド駆動機構は、アーム部回動機構15と同様に構成されている。
【0056】
上述した形態において、アーム6は、2個のアーム部によって構成されていても良いし、4個以上のアーム部によって構成されていても良い。また、上述した形態において、アーム部12の先端側に取り付けられるハンドの数は1個であっても良い。また、上述した形態において、ロボット1は、半導体ウエハ2以外の搬送対象物を搬送するためのロボットであっても良いし、その他の用途で使用される水平多関節型のロボットであっても良い。
【符号の説明】
【0057】
1 ロボット(産業用ロボット)
6 アーム
11 アーム部
11a 上壁部
11b 下壁部
11c 側壁部
20 モータ
24 モータ本体部
25 出力軸
30c 下側凹部
31a 上側凹部
t1、t2 上壁部の、アーム部の短手方向の両端部の上下方向の厚さ
t3 上壁部の、上側凹部が形成された部分の上下方向の厚さ
t4、t5 下壁部の、アーム部の短手方向の両端部の上下方向の厚さ
t6 下壁部の、下側凹部が形成された部分の上下方向の厚さ
t7、t8 側壁部の、アーム部の短手方向の厚さ
X アーム部の長手方向
Y アーム部の短手方向
図1
図2
図3
図4
図5