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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】導電性接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/00 20060101AFI20240626BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20240626BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240626BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20240626BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J4/02
C09J11/04
C09J133/00
H01B1/22 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020123302
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2022019451
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2020-11-10
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】397059571
【氏名又は名称】京都エレックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 貴光
(72)【発明者】
【氏名】春日井 崇之
(72)【発明者】
【氏名】落合 信雄
(72)【発明者】
【氏名】留河 悟
【合議体】
【審判長】門前 浩一
【審判官】瀬下 浩一
【審判官】関根 裕
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/171253(WO,A1)
【文献】特開2014-170794(JP,A)
【文献】特開2017-145382(JP,A)
【文献】特開2001-257220(JP,A)
【文献】国際公開第2016/140204(WO,A1)
【文献】特許第5746797(JP,B1)
【文献】特開2020-164744(JP,A)
【文献】特開2013-98230(JP,A)
【文献】特開2006-299184(JP,A)
【文献】国際公開第2012/102077(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
H01B 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュールを構成する太陽電池セルの接着にペーストとして用いられ、基本成分である(A)導電性粉末および(B)硬化性成分、当該(B)硬化性成分とは別の追加の硬化性成分である(C)リン酸含有硬化性成分、並びに添加剤(ホウ素を含有する錯体膜形成樹脂およびゴム成分を除くからなり、
前記(A)導電性粉末として、銀粉、銀合金粉、銀コート銅粉、銀コートニッケル粉、銀コートアルミ粉、または銀コートガラス粉の少なくともいずれかの、銀を含有する粉末が用いられるとともに、
前記(A)導電性粉末は、球状粉とフレーク状粉との組合せであり、球状粉の平均粒径が0.1~10μmの範囲内であり、フレーク状粉の平均粒径が2~20μmであり、
前記(B)硬化性成分が、硬化することでアクリル樹脂となる硬化性組成物であるとともに、さらに重合開始剤としてカーボネート化合物を除く有機過酸化物またはアゾ系開始剤を含有し、
前記(A)導電性粉末を100質量部としたときに前記(B)硬化性成分の含有量が20質量部以上であり、
前記(C)リン酸含有硬化性成分は、下記式(1)または(2)の一般式を有し、分子量が150~1000の範囲内であり、
【化1】
(ただし、上記式(1)または(2)におけるXは、水素原子(H)またはメチル基(CH3 )である。)
前記基本成分である前記(A)導電性粉末および前記(B)硬化性成分の合計量を100質量部としたときに、前記(C)リン酸含有硬化性成分の含有量が0.01質量部以上5質量部以下であることを特徴とする、
導電性接着剤組成物。
【請求項2】
前記(B)硬化性成分が、鎖状アルキル(メタ)アクリレート、環状アルキル(メタ)アクリレート、アルコキシ基含有(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート系ウレタンプレポリマー、(メタ)アクリレートエポキシエステル、アミノ(メタ)アクリレート、または多官能(メタ)アクリレートからなる群の少なくともいずれかに属するアクリル化合物であることを特徴とする、
請求項1に記載の導電性接着剤組成物。
【請求項3】
基材上に印刷機またはディスペンサーにより塗布して用いられるものであることを特徴とする、
請求項1または2に記載の導電性接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性接着剤組成物に関し、特に、接着の対象である被着体同士の間で良好な接着強度を実現することが可能な導電性接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性接着剤(Electrically Conductive Adhesives, ECA)は、近年、電気機器分野または電子機器分野等で広く用いられている。導電性接着剤は、基本的には、導電性粉末および硬化性成分で構成され、硬化性成分の種類または組成等を適宜選択することで、様々な被着体を導電可能に接着することができ、導電性粉末の種類を適宜選択することで、導電性を調節することができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、少なくとも1種類の樹脂成分(硬化性成分)と、ミクロンサイズおよびサブミクロンサイズの導電性粒子(導電性粉末)とを用いた導電性接着剤が記載されている。特許文献1では、樹脂成分として、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、アクリレート樹脂、ビスマレイミド樹脂、シアン酸エステル樹脂、ポリイソブチレン樹脂等を例示しているが、導電性接着剤が硬化したときに、良好な機械的強度または高い熱安定性を実現する点では、樹脂成分として、エポキシ樹脂またはベンゾオキサジン樹脂が有利であることを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2013-541611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
導電性接着剤は、接着性と硬化後の導電性との両立が求められる。特許文献1でも、導電性接着剤の課題の一つとして接着剤の強度を挙げている。ただし、特許文献1では、前記の通り、硬化後の機械的強度については、特定の樹脂を選択することが有利であることを記載しているものの、導電性接着剤に良好な接着性(例えば接着強度)を付与するようなことに関して特に記載がない。特許文献1では、良好な接着性に関係する要因として、導電性粒子をミクロンサイズにした上でその含有量を好適化することが示唆される程度である。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、導電性粉末および硬化性成分を含有する導電性接着剤組成物において、良好な接着強度を実現可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る導電性接着剤組成物は、前記の課題を解決するために、(A)導電性粉末および(B)硬化性成分を含有し、前記(A)導電性粉末を100質量部としたときに前記(B)硬化性成分の含有量が20質量部以上であり、さらに、下記式(1)または(2)の一般式を有し、分子量が150~1000の範囲内である(C)リン酸含有硬化性成分を含有し、
【0008】
【化1】

(ただし、上記式(1)または(2)におけるXは、水素原子(H)またはメチル基(CH3 )である。)
前記(A)導電性粉末および前記(B)硬化性成分の合計量を100質量部としたときに、前記(C)リン酸含有硬化性成分の含有量が0.01質量部以上5質量部以下である構成である。
【0009】
前記構成によれば、(B)硬化性成分に加えて(C)リン酸含有硬化性成分を用いることで、得られる導電性接着剤組成物の接着強度をより良好なものにできるだけでなく、硬化物の低抵抗化を図ることも可能になる。これにより、(A)導電性粉末および(B)硬化性成分を含有する導電性接着剤組成物において、より良好な接着強度を実現できるだけでなく硬化物を低抵抗化することができる。そのため、導電性接着剤組成物の導電性能を良好なものとすることができるので、(A)導電性粉末の含有量を相対的に減少させることができる。それゆえ、(A)導電性粉末および(B)硬化性成分を含有する導電性接着剤組成物において、良好な接着強度を実現可能とするだけでなく、(A)導電性粉末の含有量を減少させても良好な導電性を実現することが可能となる。
【0010】
前記構成の導電性接着剤組成物においては、前記(A)導電性粉末が、銀粉末、銀合金粉末、銀コート粉末の少なくともいずれかである構成であってもよい。
【0011】
また、前記構成の導電性接着剤組成物においては、前記(B)硬化性成分が、アクリル樹脂、もしくは、硬化することでアクリル樹脂となる硬化性組成物である構成であってもよい。
【0012】
また、前記構成の導電性接着剤組成物においては、基材上に印刷機またはディスペンサーにより塗布して用いられるものである構成であってもよい。
【0013】
また、前記構成の導電性接着剤組成物においては、太陽電池モジュールを構成する太陽電池セルの接着に用いられる構成であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、以上の構成により、導電性粉末および硬化性成分を含有する導電性接着剤組成物において、良好な接着強度を実現することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の実施例等において導電性接着剤組成物の硬化後の導電性および接着強度の評価に用いられる評価用導体パターンの構成を模式的に示す平面図である。
図2図1に示す評価用導体パターンを構成するパッドにリベットを接着した状態を模式的に示す部分断面図である。
図3】(A)は、本開示に係る導電性接着剤組成物が適用される一例である太陽電池モジュールの構成を示す模式的側面図であり、(B)は、従来の一般的な太陽電池モジュールの構成を示す模式的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の好ましい実施の形態の一例を具体的に説明する。本開示に係る導電性接着剤組成物は、(A)導電性粉末および(B)硬化性成分を含有し、(A)導電性粉末を100質量部としたときに(B)硬化性成分の含有量が20質量部以上である。さらに、本開示に係る導電性接着剤組成物は、後述する式(1)または(2)の一般式を有し、分子量が150~1000の範囲内である(C)リン酸含有硬化性成分を含有しており、(A)導電性粉末および(B)硬化性成分の合計量を100質量部としたときに、当該(C)リン酸含有硬化性成分の含有量が0.01質量部以上5質量部以下の範囲内である。
【0017】
[(A)導電性粉末]
本開示に係る導電性接着剤組成物が含有する(A)導電性粉末は、導電性を有する粉末(粒子)であれば特に限定されない。その材質も特に限定されないが、良好な導電性を実現する観点から相対的に低抵抗の導電性材料を挙げることができる。具体的には、例えば、金、銀、銅、およびこれらの合金を好ましく用いることができる。これらの中でも特に銀を含有する粉末を好適に用いることができる。
【0018】
(A)導電性粉末の具体的な材料構成も特に限定されず、実質的に1種類の金属(または導電性材料)から構成される粉末、複数種類の金属で構成される合金粉末、金属と非金属とで構成される複合材料粉末等が挙げられる。複合材料粉末としては、例えば、非金属粉末または相対的に抵抗が高い金属粉末の表面に、相対的に低抵抗の金属をコートする構成のコート粉末を挙げることができる。
【0019】
(A)導電性粉末の材質として銀を採用する場合には、例えば、銀粉、銀合金粉、銀コート銅粉、銀コートニッケル粉、銀コートアルミ粉、または銀コートガラス粉等を挙げることができる。すなわち、本開示においては、(A)導電性粉末の好ましい一例として、銀粉末、銀合金粉末、銀コート粉末の少なくともいずれかを挙げることができる。
【0020】
(A)導電性粉末の形状も特に限定されず、さまざまな形状を選択して用いることが可能である。代表的には、実質的に球状を有する粉末(球状粉)、フレーク状の粉末(フレーク状粉)、樹状の粉末等を挙げることができる。導電性接着剤組成物の具体的な組成、具体的な用途または具体的な物性等の諸条件にもよるが、球状粉とフレーク状粉とを組み合わせて用いることが好ましい。このように異なる形状の粉末を組み合わせて用いることで、(B)硬化性成分の硬化後に(A)導電性粉末を良好に充填することができる。
【0021】
なお、本開示におけるフレーク状粉とは、部分的に凹凸があり変形が見られても、全体として見た場合に、平板または厚みの薄い直方体に近い形状の粉末であればよい。なお、フレーク状とは、薄片状または鱗片状と言い換えることができる。また、本開示における球状粉とは、部分的に凹凸があり変形が見られても、全体として見た場合に、直方体よりは立方体に近い立体形状の粉末であればよい。なお、球状とは、粒状と言い換えることができる。
【0022】
(A)導電性粉末の具体的な物性も特に限定されず、その平均粒径、比表面積、タップ密度等については公知の範囲内であればよい。このうち平均粒径(メジアン径)については、例えば0.1~10μmの範囲内を挙げることができる。(A)導電性粉末がフレーク状粉である場合には、平均粒径は2~20μmの範囲内であってもよい。なお、(A)導電性粉末の平均粒径の測定方法は特に限定されず、本開示においては後述する実施例で説明するように粒度分布測定装置を用いて測定する方法を採用している。
【0023】
(A)導電性粉末がコート粉末である場合には、コートされる導電性材料(金、銀、銅等の金属)のコート量についても特に限定されない。導電性材料がコートされていない元の粉末の質量を100質量%としたときに、導電性材料のコート量は、例えば、5~30質量%の範囲内であればよく、6~25質量%の範囲内であってもよいし、7.5~20質量%の範囲内であってもよい。
【0024】
本開示に係る導電性接着剤組成物においては、(A)導電性粉末として1種類の粉末のみが用いられてもよいし、2種類以上の粉末が適宜組み合わせられて用いられてもよい。ここでいう(A)導電性粉末の種類とは、材質の違い、形状(球状またはフレーク状)の違いだけでなく、平均粒径の違い等も含まれる。後述する実施例では、(A)導電性粉末として、球状の銀粉(銀粉1、略号A1)とフレーク状の銀粉(銀粉2、略号A2)とを組み合わせた例を挙げている(表1参照)。なお、コート粉末を併用してもよいことは言うまでもない。
【0025】
なお、本開示に係る導電性接着剤組成物においては、金、銀、銅等の相対的に低抵抗の金属材料以外の材質で構成される「他の導電性粉末」を(A)導電性粉末として併用してもよい。このような「他の導電性粉末」としては、例えば、ニッケル粉末、アルミニウム粉末、鉛粉末、およびカーボン粉末等を挙げることができる。
【0026】
(A)導電性粉末の製造方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、球状粉であれば、湿式還元法により製造した粉末、電解法やアトマイズ法等、公知の他の方法により製造した球状粉末等を挙げることができるが、特に限定されない。あるいは、フレーク状粉であれば、公知の方法で製造された球状粉を元粉として、当該元粉に公知の機械的処理を施すことによりフレーク状粉を製造することができる。元粉の粒径や凝集度等の物性は、導電性接着剤組成物の使用目的(電極や配線等の種類、あるいはこれら電極や配線等を備える電子部品または電子装置等の種類)に応じて適宜選択することができる。
【0027】
[(B)硬化性成分]
本開示に係る導電性接着剤組成物が含有する(B)硬化性成分は、硬化によって(A)導電性粉末同士を電気的に接続可能にするとともに被着体に接着する硬化性バインダーとして機能するものであればよい。代表的には、熱硬化性の樹脂を挙げることができる。一般的な熱硬化性の樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの中でも、特に、アクリル樹脂を好適に用いることができる。なお、樹脂の種類によっては、硬化前の(B)硬化性成分は、ポリマーではなくモノマーまたはプレポリマーである場合もある。そのため、本開示においては、(B)硬化性成分は、硬化性の樹脂だけでなく、硬化することで樹脂となる硬化性組成物も含む。
【0028】
本開示において(B)硬化性成分として好適に用いられるアクリル樹脂の具体的な種類は特に限定されない。後述する実施例では、3種類のアクリル化合物を組み合わせて(B)硬化性成分として用いているが、1種類または2種類のアクリル化合物を用いてもよいし、4種類以上のアクリル化合物を用いてもよいし、アクリル化合物に重合可能な他のモノマーまたはプレポリマー等を併用してもよい。
【0029】
代表的なアクリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリルレート(アクリレートまたはメタクリレート)、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート(イソペンチル(メタ)アクリレート)、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレート)、ステアリル(メタ)アクリレート(オクタデシル(メタ)アクリレート)等の鎖状アルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の環状アルキル(メタ)アクリレート;1-メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ-ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ-トリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアリール(メタ)アクリレート;フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー等の(メタ)アクリレート系ウレタンプレポリマー;ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートエポキシエステル;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;等が挙げられる。これらアクリル化合物は1種類のみが用いられてもよいし、2種類以上が適宜組み合わせられて用いられてもよい。
【0030】
後述する実施例では、(B)硬化性成分として、3種類のアクリル化合物を併用している。これらのうち化合物1(略号B1)がイソアミルアクリレートであり、化合物2(略号B2)がフェノキシエチルアクリレートであり、化合物3(略号B3)がフェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアンートウレタンプレポリマーである(表2参照)。したがって、本開示においては、(B)硬化性成分がアクリル樹脂(または硬化することでアクリル樹脂となる硬化性組成物)である場合には、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート系ウレタンプレポリマーの組合せを好適な一例として挙げることができる。(B)硬化性成分として複数種類のアクリル化合物を併用する場合に、それぞれのアクリル系化合物の混合比(配合比)は特に限定されない。
【0031】
(B)硬化性成分がアクリル樹脂(または硬化することでアクリル樹脂となる硬化性組成物)である場合には、重合開始剤が用いられる。具体的な重合開始剤としては特に限定されないが、代表的には、有機過酸化物またはアゾ系開始剤を挙げることができる。
【0032】
代表的な有機過酸化物としては、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシアセテート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等のパーオキシエステル;メチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド;1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;ジ-t-ブチルパーオキサイド等の字アルキルパーオキサイド;等を挙げることができる。
【0033】
また、代表的なアゾ系開始剤としては、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1'-アゾビス-1-シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル-2,2'-アゾビスイソブチレート、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾジ-t-オクタン、アゾジ-t-ブタン等を挙げることができる。
【0034】
これら重合開始剤は1種類のみを用いてもよいし2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。また、重合開始剤の使用量または使用条件等も特に限定されず、公知の使用量または使用条件で用いればよい。後述する実施例では、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートを用いている(表2参照)。
【0035】
[(C)リン酸含有硬化性成分]
本開示に係る導電性接着剤組成物は、前述した(A)導電性粉末および(B)硬化性成分を基本成分として含有し、さらに追加の硬化性成分として(C)リン酸含有硬化性成分を含有する。この(C)リン酸含有硬化性成分は、下記式(1)または(2)の一般式を有し、分子量が150~1000の範囲内である。なお、下記式(1)または(2)におけるXは、水素原子(H)またはメチル基(CH3 )である。
【0036】
【化2】

つまり、本開示に係る導電性接着剤組成物には、前述した(B)硬化性成分に加えて上記式(1)の化合物または上記式(2)の化合物が配合されていればよく、これら2種類がいずれも配合されてもよいし、互いに反応することによりこれら式(1)または(2)の化合物となるような化合物の組合せが配合されてもよい。
【0037】
また、上記式(1)または(2)のXは水素原子またはメチル基であればよいが、例えば、本開示に係る導電性接着剤組成物が(C)リン酸含有硬化性成分として上記式(1)の化合物を含有する場合に、Xが水素の化合物とXがメチル基の化合物とを含有してもよい。この点は式(2)の化合物も同様である。
【0038】
具体的な(C)リン酸含有硬化性成分としては、アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート(リン酸アクリロイロキシエチル)、メタクロイルオキシエチルアシッドホスフェート(リン酸メタクロイロキシエチル)等を挙げることができる。アクリロイルオキシ基(アクリロイロキシ基)またはメタクロイルオキシ基(メタクロイロキシ基)は、リン酸の3つの水酸基(-OH)のうち1つのみに結合してもよいし(上記式(1))、2つに結合してもよい(上記式(2))。後述する実施例では、リン酸含有化合物1(略号1)が、1つのメタクロイロキシ基がリン酸に結合する構造の化合物であり、リン酸含有化合物2(略号2)が、2つのメタクロイロキシ基がリン酸に結合する構造の化合物である。
【0039】
本開示に係る導電性接着剤組成物は、(A)導電性粉末および(B)硬化性成分からなる基本成分に加えて、(C)リン酸含有硬化性成分を後述する所定の範囲内で配合する。この構成によれば、導電性接着剤組成物が硬化して、被着体同士を導電可能に接着する硬化接着層が形成されたときに、後述するように、その接着性をより一層良好なものにできるだけでなく、当該硬化接着層を低抵抗化できることも明らかとなった。これにより、相対的に(A)導電性粉末の含有量を減少させても、硬化接着層において良好な接着性および導電性を実現することが可能になる。
【0040】
[導電性接着剤組成物の製造および使用]
本開示に係る導電性接着剤組成物の製造方法は特に限定されず、導電性接着剤組成物の分野で公知の方法を好適に用いることができる。代表的な一例としては、前述した各成分を所定の配合割合(質量基準)で配合し、公知の混練装置を用いてペースト化する方法が挙げられる。混練装置としては、例えば、3本ロールミル等を挙げることができる。
【0041】
本開示に係る導電性接着剤組成物においては、前記の通り、(A)導電性粉末の配合量(含有量)は、相対的に少ないことが好ましい。具体的には、本開示に係る導電性接着剤組成物は(A)導電性粉末および(B)硬化性成分を基本成分としているが、この基本成分である2成分のうち(A)導電性粉末を基準の100質量部としたときに(B)硬化性成分の含有量の下限値が20質量部以上であればよく、25質量部以上であってもよいし、30質量部以上であってもよいし、35質量部以上であってもよい。
【0042】
(B)硬化性成分の含有量が20質量部未満であると、導電性接着剤組成物において(A)導電性粉末の含有量が相対的に多くなる。この場合、導電性接着剤組成物を硬化させた硬化接着層の導電性が良好なものになるが、後述するように、(C)リン酸含有硬化性成分を含有させることにより硬化接着層の低抵抗化を図ることができるので、(C)リン酸含有硬化性成分の配合による作用効果を相殺するおそれがある。一方、(B)硬化性成分の含有量の上限値は特に限定されず、導電性接着剤組成物における前記のような諸条件に応じて、求められる導電性を実現できる程度に(B)硬化性成分の含有量を多めに設定することができる。
【0043】
本開示に係る導電性接着剤組成物においては、基本成分に対する(C)リン酸含有硬化性成分の含有量(配合量)は、基本成分の総量((A)導電性粉末および(B)硬化性成分の総量)を100質量部としたときに、0.01質量部以上5質量部以下(0.01~5質量部)の範囲内であればよい。
【0044】
(C)リン酸含有硬化性成分の含有量が0.01質量部未満であると、(C)リン酸含有硬化性成分を配合することによる作用効果(硬化接着層における良好な接着強度の実現および低抵抗化)が十分に得られない可能性がある。また、(C)リン酸含有硬化性成分の含有量が5質量部を超えると、配合量に見合った作用効果が得られないだけでなく、(C)リン酸含有硬化性成分が多くなりすぎて(B)硬化性成分により期待される接着強度等の物性に影響が生じる可能性がある。
【0045】
なお、本開示に係る導電性接着剤組成物においては、必要に応じて、前述した各成分((A)導電性粉末、(B)硬化性成分、(C)リン酸含有硬化性成分以外に、導電性接着剤組成物の分野で公知の各種添加剤を含有してもよい。当該添加剤としては特に限定されないが、具体的には、例えば、溶剤、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、消泡剤、粘度調整剤等を挙げることができる。これら添加剤は本開示の作用効果を妨げない範囲において添加することができる。
【0046】
また、本開示に係る導電性接着剤組成物により硬化接着層となるパターンを形成する方法は特に限定されず、公知の種々の形成方法を好適に用いることができる。代表的には、後述する実施例に示すように、スクリーン印刷法が挙げられ、グラビア印刷法、オフセット印刷法、インクジェット法、ディスペンサー法、ディップ法等の印刷法も適用することができる。したがって、本開示に係る導電性接着剤組成物は、基材上に印刷機またはディスペンサーにより塗布して用いることができるものであればよい。
【0047】
本開示に係る導電性接着剤組成物は、高精細な電極や配線等の形成または電子部品の接着等に広く利用することができる。具体的には、例えば、太陽電池セルの集電電極;チップ型電子部品の内部電極または外部電極;RFID(Radio Frequency IDentification)、電磁波シールド、振動子接着、メンブレンスイッチ、タッチパネル、またはエレクトロルミネセンス等に用いられる部品の電極または配線または接着;等の用途に好適に用いることができる。
【0048】
本開示に係る導電性接着剤組成物は、前述した用途の中でも、特に太陽電池の分野に好適に適用することができる。具体的には、本開示に係る導電性接着剤組成物は、例えば、太陽電池モジュールの接着に好適に用いることができる。
【0049】
図3(B)に示すように、従来では、太陽電池モジュール30は、複数の太陽電池セル31の間をインターコネクタ32と呼ばれるリボン状の配線部材で接続する構成が一般的である。これに対して、近年では、図3(A)に示すように、任意の太陽電池セル21の長辺下面が他の太陽電池セル21の長辺上面に重なるように、複数の太陽電池セル21を部分的に順次重ねて傾斜配置する構成の太陽電池モジュール20も提案されている。このような太陽電池モジュール20では、太陽電池セル21の同士の接続に、インターコネクタ32の代わりに導電性接着剤を用いる。
【0050】
太陽電池セル21の長辺同士を接着するときには、導電性接着剤(硬化後の硬化接着層22)に対しては、良好な接着強度とともに良好な導電性が求められる。太陽電池セル21同士は、互いに長辺という一部で接着されるので、良好な接着強度が得られなければ、複数の太陽電池セル21を接着することにより作製される太陽電池モジュール20の性能に影響が生じる可能性がある。また、良好な導電性がなければ太陽電池セル21の間で良好な導通が実現できなくなり、やはり太陽電池モジュール20の性能に影響が生じる可能性がある。
【0051】
本開示に係る導電性接着剤組成物は、前記の通り、(A)導電性粉末および(B)硬化性成分に加えて(C)リン酸含有硬化性成分を含有している。
この(C)リン酸含有硬化性成分は、硬化接着層22において良好な接着強度を実現することに寄与するが、後述する実施例に示すように、良好な接着強度の実現だけでなく、硬化接着層22の低抵抗化を実現できることも明らかとなった。これにより、太陽電池セル21同士を硬化接着層22で良好に接着できるだけでなく、(A)導電性粉末の含有量を相対的に減少させても良好な導電性を実現することが可能になる。したがって、本開示に係る導電性接着剤組成物は、特に図3(A)に示すような太陽電池モジュール20の製造に良好に適用することができる。
【実施例
【0052】
本発明について、実施例および比較例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。なお、以下の実施例および比較例における物性等の測定・評価は次に示すようにして実施した。
【0053】
[導電性粉末の平均粒径(メジアン径)]
(A)導電性状粉末の平均粒径(メジアン径)はレーザー回折法により評価した。(A)導電性状粉末の試料0.3gを50mlビーカーに秤量し、イソプロピルアルコール30mlを加えた後、超音波洗浄器(アズワン株式会社製USM-1)により5分間処理することで分散させ、粒度分布測定装置(日機装株式会社製マイクロトラックMT3300EXII)を用いて、メジアン径を測定して評価した。
【0054】
[導電性接着剤組成物の導電性および接着強度の評価]
実施例または比較例の導電性接着剤組成物を、図1に示すように、印刷機を用いてアルミナ基板12上に印刷パターン11を印刷した。この印刷パターン11は、1つの配線パターン11aと5つのパッドパターン11dとで構成されている。配線パターン11aは、両端にそれぞれ矩形状の端子11bを有し配線部11cがつづら折り状となっており、配線部11cのアスペクト比は75である。5つのパッドパターン11dは、この配線パターン11aに隣接して一列に並んで配置され、それぞれが2mm×2mmの正方形状となっている。
【0055】
次に、図2に示すように、アルミナ基板12上のパッドパターン11d(2mm×2mm)の上に直径4mmの円形の固定面を有するアルミニウム製のリベット13を載置した。リベット13を載置したアルミナ基板12を、ホットプレートを用いて150℃で30秒間加熱することにより、導電性接着剤組成物(印刷パターン11)を硬化させた(硬化接着層の形成)、導電性および接着強度評価用の試験片を得た。
【0056】
硬化接着層の導電性は配線パターン11aの体積抵抗率により評価した。具体的には、配線パターン11aの膜厚を表面粗さ計(株式会社東京精密製サーフコム480A)で、電気抵抗をデジタルマルチメータ(株式会社アドバンテスト製R6551)で測定し、それら膜厚と電気抵抗と配線部11cのアスペクト比に基づいて、配線パターン11aの体積抵抗率(Ω・cm)を算出し、この体積抵抗率を硬化接着層の抵抗値として評価した。
【0057】
硬化接着層の接着強度はパッドパターン11dに対するリベット13の接着性により評価した。具体的には、パッドパターン11d上に実装したリベット13に対して水平方向に剪断力を加え、パッドパターン11dからリベット13が脱離するときの強度を測定した。強度が15MPaの場合を「〇」、5MPa以上15MPa未満の場合を「△」、5MPa未満の場合を「×」として、硬化接着層の接着強度を評価した。
【0058】
[(A)導電性粉末、(B)硬化性成分および(C)リン酸含有硬化性成分]
以下の実施例または比較例では、(A)導電性粉末として、下記表1に示す2種類のうち2種の粉末を用いた。なお、下記表1並びに表2および表3の略号は、実施例または比較例の成分を表4および表5において示すために用いている。
【0059】
【表1】

また、以下の実施例または比較例では、(B)硬化性成分として、下記表2に示す3種類のアクリル系化合物を組み合わせて用いた。なお、(B)硬化性成分の重合開始剤としては、下記表3に示すものを用いた。
【0060】
【表2】

また、以下の実施例または比較例では、(C)リン酸含有硬化性成分として、下記表3に示す3種類のいずれかのリン酸含有化合物を用いた。
【0061】
【表3】

(実施例1)
表4に示すように、(A)導電性粉末として、表1に示す球状の銀粉1(略号A1)およびフレーク状の銀粉2(略号A2)を用い、(B)硬化性成分として、表2に示す樹脂1(略号B1)、樹脂2(略号B2)および樹脂3(略号B3)を用い、これらを表4に示す配合量(質量部)となるよう配合するとともに、(C)リン酸含有硬化性成分として、表3に示すリン酸含有化合物1(略号C1)を用い、このリン酸含有化合物1を表4に示す配合量(質量部)で配合し、これら各成分を3本ロールミルで混練した。これにより、実施例1の導電性接着剤組成物を調製(製造)した。
【0062】
得られた導電性接着剤組成物について、前記の通り、導電性および接着強度評価用の試験片を作製し、これら試験片により硬化接着層(導電性接着剤組成物)の接着強度および体積抵抗率を評価した。その結果を表4に示す。なお、表4(並びに表5)では、体積抵抗率を「抵抗値」と記載している。
【0063】
(実施例2~6)
表4に示すように、(C)リン酸含有硬化性成分の含有量を変更するか、表3に示すリン酸含有化合物2(略号C2)を用いるか、(A)導電性粉末および(B)硬化性成分の配合比を変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~6の導電性接着剤組成物を調製(製造)した。
【0064】
得られたそれぞれの導電性接着剤組成物について、前記の通り試験片を作製し、この試験片により硬化接着層(導電性接着剤組成物)の接着強度および体積抵抗率を評価した。その結果を表4に示す。
【0065】
【表4】

(比較例1)
表5に示すように、(C)リン酸含有硬化性成分を含有させない以外は、実施例1と同様にして、比較例1の導電性接着剤組成物を調製(製造)した。
【0066】
得られたそれぞれの導電性接着剤組成物について、前記の通りの試験片を作製し、この試験片により硬化接着層(導電性接着剤組成物)の接着強度および体積抵抗率を評価した。その結果を表5に示す。
【0067】
(比較例2~4)
表5に示すように、(C)リン酸含有硬化性成分として、前記の式(1)または(2)に該当しないリン酸含有化合物3(略号C3)を用いるか(比較例2)、リン酸含有化合物3を用いるとともに(A)導電性粉末および(B)硬化性成分の配合比を変更した(比較例3,4)以外は、実施例1と同様にして、比較例2~4の導電性接着剤組成物を調製(製造)した。
【0068】
得られたそれぞれの導電性接着剤組成物について、前記の通り試験片を作製し、この試験片により硬化接着層(導電性接着剤組成物)の接着強度および体積抵抗率を評価した。その結果を表5に示す。
【0069】
【表5】

(実施例および比較例の対比)
実施例1~6の結果と比較例1の結果との対比から明らかなように、本開示に係る導電性接着剤組成物であれば、(C)リン酸含有硬化性成分を適切に含有することにより、硬化接着層において良好な接着強度を実現できるだけでなく、実施例1~6の結果の方が比較例1の結果よりも明らかに体積抵抗値が低下している。
【0070】
また、比較例2の結果から明らかなように、前述した本開示に係る(C)リン酸含有硬化性成分に該当しない比較用のリン酸含有化合物3を含有する場合では、実施例1~6の結果よりも明らかに体積抵抗値が高くなっている。この点は、比較例4の結果も同様であり、特に、(A)導電性粉末および(B)硬化性成分の配合比が同じである実施例5または6の結果と比較例4の結果とを対比したときに、いずれも良好な接着強度を実現しているものの、比較例4では、体積抵抗値が明らかに高くなっている。
【0071】
ここで、比較例3では、(A)導電性粉末の含有量を実施例1~6よりも相対的に多くしており、これにより比較例3の体積抵抗値は実施例1~6の体積抵抗値と同程度に低下している。しかしながら、比較例3の接着強度は、実施例1~6の接着強度に比較して明らかに劣っている。そのため、(C)リン酸含有硬化性成分を用いることで、(A)導電性粉末の含有量を相対的に減少しても、良好な導電性と良好な接着強度を実現でいることがわかる。
【0072】
このように、本開示に係る導電性接着剤組成物は、(A)導電性粉末および(B)硬化性成分を含有し、(A)導電性粉末を100質量部としたときに前記(B)硬化性成分の含有量が20質量部以上であり、さらに、前述した式(1)または(2)の一般式を有し、分子量が150~1000の範囲内である(C)リン酸含有硬化性成分を含有し(ただし、上記式(1)または(2)におけるXは、水素原子(H)またはメチル基(CH3 )である。)、(A)導電性粉末および(B)硬化性成分の合計量を100質量部としたときに、(C)リン酸含有硬化性成分の含有量が0.01質量部以上5質量部以下である構成である。
【0073】
このような構成によれば、(B)硬化性成分に加えて(C)リン酸含有硬化性成分を用いることで、得られる導電性接着剤組成物の接着強度をより良好なものにできるだけでなく、硬化物の低抵抗化を図ることも可能になる。これにより、(A)導電性粉末および(B)硬化性成分を含有する導電性接着剤組成物において、より良好な接着強度を実現できるだけでなく硬化物を低抵抗化することができる。そのため、(A)導電性粉末の含有量を相対的に減少させても、導電性接着剤組成物の導電性能を良好なものとすることができる。
【0074】
なお、本発明は前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、電気機器分野または電子機器分野において、被着体を導電可能に接着する分野に広く好適に用いることができる。代表的には、太陽電池モジュールを製造する分野等に特に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0076】
11:印刷パターン
11a:配線パターン
11b:端子
11c:配線部
11d:パッドパターン
12:アルミナ基板
13:リベット
20:太陽電池モジュール
21:太陽電池セル
22:硬化接着層
30:太陽電池モジュール
31:太陽電池セル
32:インターコネクタ
図1
図2
図3